JP3823537B2 - 集束電極付電界放出カソード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高精細の電界放出カラーディスプレイなどに用いられる集束電極付電界放出カソードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属または半導体表面の印加電界を109 [ボルト/m]程度にすると、トンネル効果により電子が障壁を通過し常温でも真空中に電子放出が行われる。これを電界放出(Field Emissin)という。
このような原理で電子を放出するカソードを電界放出カソード(Field Emissin Cathode)という。半導体微細加工技術を駆使して、ミクロンサイズの電界放出カソードからなる面放出型の電界放出カソードを作成することが可能となり、電界放出ディスプレイ(Field Emissin Display)、リソグラフィー用電子ビーム装置等の電子放出源として用いられている。
【0003】
電界放出ディスプレイにおいては、カソード基板側とアノード基板側とが所定間隔のギャップを隔てて封着され、内部を真空状態とされている。その電界放出カソードとしてスピント型の冷陰極を用いるものでは、引出電極に正のゲート電圧を印加すると、この引出電極の開口部内に設けられたエミッタチップから電界放出により電子が放出され、正電圧が印加されたアノード電極に到達し、アノード電極を被覆する蛍光体が発光して表示動作が行われる。
その際、集束電極と引出電極とを絶縁層上の同一平面に形成して、電界放出カソードから放出された電子ビームを集束させる集束電極付きの電界放出カソードがある。集束電極を設けることにより電子ビームが隣接する蛍光体ドットやアノード基板のガラス部分に射突する割合を減少させ、位置決め精度の余裕を持たせることができる。
【0004】
図6は、従来の集束電極付電界放出カソードの説明図であり、図6(a)は集束電極付電界放出カソードの平面図、図6(b)はこれに対応するアノ−ド基板側のアノード発光面の平面図である。図中、1は引出電極、3は絶縁層、4は開口部、5はコンタクトホール、41は集束電極、21は蛍光体(赤)、22は蛍光体(緑)、23は蛍光体(青)である。
【0005】
図6(a)に示すように、引出電極1は、集束電極41とともに、絶縁層3の同一平面上に形成されている。引出電極1は長方形状であり、複数の開口部4内にコーン状エミッタが設けられている。集束電極41は、横方向(色選択方向)に等間隔に並んだ長方形の窓抜き部を有し、この窓抜き部内に引出電極1が集束電極41と間隔をおいて配置される。窓抜き部は複数個設けられ、各窓抜き部内に1画素の三原色の1つに対応した1個の引出電極1が設けられ、各引出電極1の開口部4内のエミッタチップから電子ビームが放出される。
【0006】
引出電極1と集束電極41との間隔は、引出電極1の長手方向の間隔bと幅方向の間隔aとが等しくされている。図示の例では、引出電極1に複数の開口部4を縦1列に配列したものを示すが、開口部4の列数および開口部4の個数は特に限定されるものではない。引出電極1は、絶縁層3を貫くコンタクトホール5を介して、カソード基板上に形成された図示しない引出線部に接続され、この引出線部は、集束電極41の下をくぐって、引出電極1および集束電極41と同一平面上に形成された横方向に延びる図示しないゲート配線部に別のコンタクトホールを介して接続される。引出電極1,引出線部,ゲート配線部によりゲート電極が構成される。
【0007】
図6(b)に示すアノード側においては、3個の引出電極1に対向して、それぞれ、長方形状の三原色の蛍光体(赤)21、蛍光体(緑)22、蛍光体(青)23が各々のアノード電極に被覆形成されることにより、ストライプ配列されて1画素を構成する。エミッタチップから放出された電子ビームは、集束電極41により集束作用を受けながら、対応する蛍光体(赤)21、蛍光体(緑)22、蛍光体(青)23に射突して各蛍光体を発光させる。
【0008】
図7は、図6に示した集束電極付電界放出カソードによる電子ビームのスポットの説明図である。アノード基板側における発光面の様子を示している。図中、図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。24,25,26は電子ビームのスポットである。
電子ビームの集束特性を評価した結果、図6に示した集束電極付電界放出カソードを用いると、蛍光体21,22,23の長手方向(画素選択方向)が必要以上に集束されることがわかった。
【0009】
蛍光体21,22,23の長手方向の長さに一致するように電子ビームを集束させた場合、図7(a)に示すように、蛍光体21,22,23の幅方向(色選択方向)の集束が不十分になり、電子ビームのスポット24,25,26が隣接する蛍光体21,22,23を発光させる割合が増加して混色不良となる。色選択方向は、寸法的に画素選択方向よりも条件がきびしいため、位置決め精度の影響を受けやすい。
色選択方向の集束を満足させるために、引出電極1と集束電極41との電位差を大きくすると、図7(b)に示すように、画素選択方向は必要以上に集束するため、発光面積が小さくなり、結果的に面平均輝度が小さくなる。
【0010】
長方形状の引出電極1の開口部に設けられたエミッタチップの数が少ない場合、電子ビームを強く集束するほど、図7(c)に示すように、電子ビームのスポット24,25,26は、画素選択方向にバラツキが生じ易くなる。これも、輝度や色バランス等の表示品位に悪影響を及ぼす。
また、引出電極1と集束電極41との電位差を大きくすると、無効となるゲート電極流入電流が増えるため、引出電極1の長手方向(画素選択方向)の寸法を大きくしてエミッタチップ数を増やすにも限度がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、電子ビームのスポットの縦横比を大きくすることができ、その結果、電子ビームのスポットの縦横比を蛍光体形状および蛍光体配列に応じて設定することができる集束電極付電界放出カソードを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、絶縁層、該絶縁層上に形成された縦長形状の引出電極、前記絶縁層および前記引出電極の積層部分に開けられた複数の開口部、該開口部内に設けられたエミッタチップ、および、前記絶縁層上に集束電極を有する集束電極付電界放出カソードであって、前記集束電極は窓抜き部を有し、前記引出電極は前記窓抜き部内に前記集束電極と間隔をおいて配置され、前記引出電極の長手方向の前記間隔が前記引出電極の幅方向の前記間隔よりも長いものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態の集束電極付き電界放出カソードの構造を説明するための平面図である。図2は、図1に示した構造の切断線A−Aに沿う部分断面図である。図中、図6と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。2は集束電極、11はコーン状エミッタ、12はカソード基板、13は抵抗層である。
この実施の形態の集束電極付き電界放出カソードは、図6,図7を参照して説明した従来のものに比べ、アノード側の蛍光体の縦長形状および色配列に合わせて、引出電極1も縦長形状とするとともに、引出電極1と電子ビームを集束する集束電極2との間隔は、引出電極1の長手方向(色選択方向)の間隔bが幅方向(画素選択方向)の間隔aよりも大きくしたものである。
【0015】
図6を参照して説明した従来技術と同様に、絶縁層3上に形成された引出電極1は長方形状であり、絶縁層3および引出電極1の積層部分に複数の開口部4を有し、この開口部4内にエミッタチップとしてコーン状エミッタ11(図2)が設けられている。集束電極2は、横方向に等間隔に並んだ窓抜き部を有し、この窓抜き部内に引出電極1が集束電極2と間隔をおいて配置されることにより、引出電極1は集束電極2に囲まれている。窓抜き部は、引出電極1の幅方向に3個設けられ、各窓抜き部に引出電極が1つの画素の各色に対応して1個ずつ設けられている。図示の例では、引出電極1に複数の開口部4を縦1列に配列したものを示すが、開口部4の配列数および開口部4の個数は特に限定されるものではない。
【0016】
図2に示すように、引出電極1は、集束電極2とともに、絶縁層3の同一平面上に形成されている。カソード基板12上に抵抗層13が形成され、開口部4における抵抗層13の上にコーン状エミッタ11が形成されている。この断面には現れないが、例えば、図1における集束電極2の窓抜き部の左右の位置にカソード配線部が、カソード基板12の上に縦方向に形成されている。抵抗層13が、このカソード配線部の上を部分的に覆うことにより、コーン状エミッタ11からカソード配線部にカソード電流が流れる。
引出電極1は、コンタクトホール5を介して、カソード基板上に形成された図示しない引出線部に接続され、この引出線部は、集束電極2の下をくぐって、引出電極1および集束電極2と同一平面上に形成され、横方向に延びる図示しないゲート配線部に別のコンタクトホールを介して接続される。カソード配線部とゲート配線部とでマトリクスを構成することにより、電子を放出するコーン状エミッタ11群を選択する。なお、集束電極2に印加する電圧を走査することにより画素の選択を行う場合には、隣接する画素の集束電極2は分離して形成されるが、このような選択が不要な場合には、隣接する集束電極2が一体になるように形成される。
【0017】
図1に示すように、引出電極1と集束電極2との間隔は、引出電極1の長手方向の間隔bが幅方向の間隔aよりも大きくされている。その結果、電子ビームが引出電極1の幅方向よりも長手方向に弱く集束されることになり、電子ビームスポットの縦横比を大きくすることができる。
【0018】
図3は、図1,図2に示した集束電極付き電界放出カソードによる電子ビームのスポットの説明図である。アノード基板側における発光面の様子を示している。図中、図6,図7と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
電子ビームのスポット24,25,26の大きさを、図3(a)に示すように、蛍光体(赤)21,蛍光体(緑)22,蛍光体(青)23の各長手方向の全長に一致するように電子ビームを集束させても、電子ビームの集束が引出電極1の幅方向よりも長手方向に弱いことから、幅方向の集束も蛍光体の幅に一致して満足できるものとなる。また、エミッタチップ11の数が少ない場合、電子ビームを強く集束するほど、図3(b)に示すように、寸法が長い長手方向の電子ビームのスポット24,25,26の長さおよび位置にバラツキが生じ易くなるが、長手方向の集束を弱くすることにより、表示品位への影響が緩和される。
【0019】
図4は、本発明の第2の実施の形態の集束電極付電界放出カソードの構造を説明するための平面図である。図中、図6,図1と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。31はゲート電極、31aは引出線部、31bは引出電極部、32は集束電極である。
この実施の形態の集束電極付き電界放出カソードは、図6,図7を参照して説明した従来のものに比べ、アノード側の蛍光体の縦長形状および色配列に合わせて、引出電極部31bを縦長形状とするとともに、集束電極32は、引出電極31bをこの引出電極31bの幅方向に挟んで配置した構造である。引出電極31bの長手方向(画素選択方向)には集束電極32を設けないようにしている。
【0020】
絶縁層3上に形成された引出電極部31bは長方形状であり、絶縁層3および引出電極31bの積層部分に複数の開口部4を有し、開口部4内にコーン状エミッタが設けられている。引出電極部31bは、長手方向の上下に延びる引出線部31aにより、図示しないゲート配線部に接続されゲート電圧が印加される。引出線部31aは引出電極部31bの幅よりも細くされている。引出電極部31bは、1つの画素の三原色に対応して幅方向に3個設けられる。絶縁層3上に形成された集束電極32も、1つの画素に対して4個設けられたストライプ形状であり、引出電極部31bの長手方向に引出電極部31bよりも長く延びており、3個の引出電極部31bをその幅方向に挟んで配列されている。図示の例では、引出電極部31bに複数の開口部4を縦1列に配列したものを示すが、開口部4の配列数および開口部4の個数は特に限定されるものではない。引出電極部31b、引出線部31aは、集束電極32とともに絶縁層3の同一平面上に形成されている。
【0021】
断面構造の図示は省略するが、カソード基板上に抵抗層が形成され、開口部4における抵抗層の上にコーン状エミッタが形成されている。また、カソード基板12の上には、図4における集束電極32の位置にカソード配線部が形成され、抵抗層がこのカソード配線部の上を部分的に覆うことにより、コーン状エミッタからカソード配線部にカソード電流が流れる。
この図では、引出線部31aを、引出電極部31bおよび集束電極32と同一平面上に上及び下方向に引き出している。しかし、引出線部31aは個々にいずれか一方向にのみ引き出してもよい。また、引出線部31aをカソード基板上に設け、引出電極部31bをコンタクトホールを用いて下層の引出線部31aに接続してもよい。なお、集束電極32に印加する電圧を走査することにより画素の選択を行う場合には、隣接する画素の集束電極32は分離して形成されるが、このような選択が不要な場合には、隣接する集束電極2が一体になるように形成される。
【0022】
図5は、本発明の第3の実施の形態の集束電極付電界放出カソードの構造を説明するための斜視図である。図中、図6,図1,図2と同様な部分には同じ符号を付して説明を省略する。
この実施の形態の集束電極付電界放出カソードは、図1,図2,図3に示した第1の実施の形態のものと比較して、引出電極1と集束電極2とを絶縁層3の異なる高さの平面上に配置し、集束電極2が引出電極1よりもアノード側に近い上層に位置する縦型集束構造である。集束電極2がアノード側に近く配置される結果、集束電圧が同じでも、全方向に集束力を強くすることができる。
【0023】
さらに、引出電極1と集束電極2との水平面上の間隔は、引出電極1の長手方向(色選択方向)の間隔bが幅方向(画素選択方向)の間隔a(図示の例では、a=0)よりも大きくされている。そのため、電子ビームが引出電極1の幅方向よりも長手方向に弱く集束されることになり、第1の実施の形態における図3(a)と同様に、蛍光体(赤)21,蛍光体(緑)22,蛍光体(青)23の各々の長手方向の全長に一致するように電子ビームを集束させても、幅方向の集束も同時に満足できるものとなる。
また、エミッタチップ11の数が少ない場合、電子ビームを強く集束するほど、寸法が長い長手方向の電子ビームのスポット24,25,26にバラツキが生じ易くなるが、図3(b)に示すように表示品位への影響は緩和される。
【0024】
上述した第3の実施の形態は、第1の実施の形態の集束電極付電界放出カソードを縦型集束構造にしたものであるが、図4を参照して説明した第2の実施の形態の集束電極付電界放出カソードを縦型集束構造にしてもよい。
上述した縦型集束構造は、図2に示したような積層構造において、集束電極2のないものをまず形成し、その上層に絶縁層3を再び形成し、その上に集束電極を形成し、その後、引出電極1の上の絶縁層3のみを除去することにより作製することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の集束電極付電界放出カソードによれば、上述した説明から明らかなように、電子ビームのスポットの縦横比を大きくすることができるという効果がある。その結果、蛍光体形状および蛍光体配列に応じて縦横比を設定することができ、特に、高精細の電界放出カラーディスプレイの電界放出カソードに用いると好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の集束電極付電界放出カソードの構造を説明するための平面図である。
【図2】図1に示した構造の切断線A−Aに沿う部分断面図である。
【図3】図1,図2に示した集束電極付電界放出カソードによる電子ビームのスポットの説明図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の集束電極付電界放出カソードの構造を説明するための平面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の集束電極付き電界放出カソードの構造を説明するための斜視図である。
【図6】従来の集束電極付電界放出カソードの説明図であり、図6(a)は集束電極付電界放出カソードの平面図、図6(b)はこれに対応するアノ−ド基板側のアノード発光面の平面図である。
【図7】図6に示した集束電極付電界放出カソードによる電子ビームのスポットの説明図である。
【符号の説明】
1 引出電極、2,32,41 集束電極、3 絶縁層、4 開口部、5 コンタクトホール、21 蛍光体(赤)、22 蛍光体(緑)、23 蛍光体(青)、24,25,26 電子ビームのスポット、11 コーン状エミッタ、12カソード基板、13 抵抗層、31ゲート電極、31a 引出線部、31b 引出電極部
Claims (1)
- 絶縁層、該絶縁層上に形成された縦長形状の引出電極、前記絶縁層および前記引出電極の積層部分に開けられた複数の開口部、該開口部内に設けられたエミッタチップ、および、前記絶縁層上に集束電極を有する集束電極付電界放出カソードであって、
前記集束電極は窓抜き部を有し、
前記引出電極は前記窓抜き部内に前記集束電極と間隔をおいて配置され、前記引出電極の長手方向の前記間隔が前記引出電極の幅方向の前記間隔よりも長いことを特徴とする集束電極付電界放出カソード。
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