JP3823522B2 - エアバッグ起爆許可方法、該方法に用いる起爆許可装置、並びに上記方法が適用されるエアバッグ装置 - Google Patents
エアバッグ起爆許可方法、該方法に用いる起爆許可装置、並びに上記方法が適用されるエアバッグ装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両衝突時に乗員を保護するために装備されるエアバッグの起爆許可方法、該方法に用いる起爆許可装置、並びに上記方法が適用されるエアバッグ装置に関し、特に、車両の組立時等におけるエアバッグの誤作動防止の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種のエアバッグ起爆許可方法として、例えば、実開平4−51849号公報に開示されるように、エアバッグモジュールにエアバッグを展開可能状態と不可能状態とに切替える手動スイッチを設け、エアバッグモジュールを車体側へ組みつけた後に、作業者が上記手動スイッチを操作して、エアバッグを展開可能状態にする方法が知られている。また、特開平7−291086号公報には、エアバッグモジュールを車体側へ組みつけた後にイグニッションキーを予め定めた所定の手順で操作することで、エアバッグを展開可能状態にする方法が開示されており、このものでは、作業者が例えば車両の出荷検査時に上記所定のイグニッションキー操作を行うことで、エアバッグの起爆許可が行われる。
【0003】
さらに、例えば特公平7−112798号公報に開示されるように、運転者側エアバッグモジュールのステアリングホイールへの取り付け部に切替スイッチを設け、該切替スイッチがステアリングホイールへの取り付けに連動して切替え作動されて、エアバッグが展開可能状態になるような起爆許可方法も知られている。
【0004】
さらにまた、例えば特開平3−217357号公報に開示されるように、エアバッグ装置の点火回路中に接続した開閉器を開閉作動させる電子錠を設け、該電子錠に外部から解錠信号を入力して開閉器を閉状態にさせる起爆許可方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記最初(実開平4−51849号公報)の従来例のエアバッグ起爆許可方法では、車両組立ラインにおいて、人為的なミスによるエアバッグの誤作動の可能性が残る一方、その反対にエアバッグが起爆許可されない状態で車両が出荷されてしまうことも起こり得る。また、上記の2番目(特開平7−291086号公報)の方法では、誤作動防止の信頼性は向上するものの、作業者による複雑なイグニッションキー操作が必要になるという新たな不具合が生じる。
【0006】
さらに、上記の3番目(特公平7−112798号公報)の方法では、エアバッグモジュールの組み付け時やその後の車両組立行程で誤って大きな衝撃が加わったときのエアバッグの誤作動を防止し得ないという問題がある。
【0007】
さらにまた、上記最後(特開平3−217357号公報)の方法でも、電子錠からの誤信号、開閉器の接点不良等による誤作動等が考えられるので、誤作動防止の信頼性を向上させる余地が残っている。
【0008】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、センサ出力に基づくエアバッグの展開判定方法に工夫を凝らして、起爆許可のための操作を複雑化することなく、誤作動防止の信頼性のさらなる向上を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の解決手段では、エアバッグ装置に所定の判定演算式により判定演算を行ってエアバッグ展開の要否を判定する判定手段を設け、該判定手段を予め判定演算の実行が不可能な状態にしておいて、外部からの起爆許可信号により判定演算の実行可能な状態に切替えるようにした。
【0010】
具体的には、請求項1記載の発明のエアバッグ起爆許可方法では、車両の衝突度合に関するパラメータ値をセンサにより検出し、該センサからの出力信号に基づいて、判定手段によりエアバッグ展開の要否を判定する所定の判定演算プログラムを実行し、エアバッグの展開が必要と判定したとき、作動出力回路の作動によりエアバッグを展開させるようにしたエアバッグ装置に対し、上記判定演算プログラムにその一部を構成する所定の演算情報を設定しないことで、予め上記判定手段をエアバッグ展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態にしておき、外部からの起爆許可信号の入力により上記所定の演算情報を与えて判定演算プログラムに設定させることで、上記判定手段を判定可能状態に切替えるようにする。
【0011】
この方法によれば、エアバッグ装置の判定手段は予め判定演算の実行が不可能な状態にされているので、万一、センサが大きな衝撃を検出して出力しても、上記判定手段はエアバッグの展開を必要と判定することがなく、このことで、エアバッグ装置の誤作動を確実に防止することができる。また、外部から起爆許可信号を入力するだけで、上記判定手段を容易に判定可能状態に切替えることができる。つまり、起爆許可の操作を煩雑化することなく、誤作動防止の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明における所定の演算情報を、判定演算プログラムにおいて実行される演算式とする。このことで、所定の演算情報が具体化され、判定手段は起爆許可信号の入力を受けるまでは演算式そのものを有していないので、判定演算の実行を確実に阻止できる。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の発明における所定の演算情報を、判定演算プログラムにおいて実行される演算式の係数とする。このことで、所定の演算情報が具体化され、判定手段は起爆許可信号の入力を受けるまでは演算式が定まっていないので、判定演算の実行を確実に阻止できる。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項2記載の発明におけるエアバッグ装置に、判定演算の演算式を記憶した記憶手段を設ける。そして、起爆許可信号は、上記判定手段に上記演算式の記憶手段における読出しアドレスを与えるものとする。
【0015】
このことで、起爆許可信号は所定の演算情報として記憶手段におけるアドレスを与えるものであればよいので、演算式そのものを与える場合に比べて情報量は格段に少なくて済み、外部からの通信に係る負担が軽くなる上、通信時間の短縮が図られる。
【0016】
請求項5記載の発明では、請求項3記載の発明におけるエアバッグ装置に、判定演算の演算式の係数を記憶した記憶手段を設ける。そして、起爆許可信号は、上記判定手段に上記係数の記憶手段における読出しアドレスを与えるものとする。このことで、請求項4記載の発明と同様の作用が得られる。
【0017】
請求項6記載の発明では、請求項1記載の発明と同様のエアバッグ装置に、作動出力回路の故障を診断する故障診断手段を設ける。そして、判定手段を、上記故障診断手段により作動出力回路の故障が診断されたときには判定演算を行わないように構成し、かつ予め上記作動出力回路の疑似故障コードを入力してエアバッグ展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態にしておき、外部から上記疑似故障コードをクリアする起爆許可信号を入力して、上記判定手段を判定可能状態に切替えるようにする。
【0018】
この発明によれば、請求項2〜5のいずれかに記載の発明と同様、起爆許可信号の入力までは判定手段による判定演算の実行を確実に阻止できる。
【0019】
請求項7記載の発明のエアバッグ装置は、車両に装備され、衝突時に乗員を保護するための複数のエアバッグと、該各エアバッグ毎に設けられ、そのエアバッグに高圧気体を供給して展開させるインフレータと、該インフレータに個別に通電して作動させる作動出力回路と、車両の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサと、該センサからの出力信号に基づいて所定の判定演算プログラムを実行し、各エアバッグ毎に展開の要否を判定する判定手段と、該判定手段によりいずれかのエアバッグの展開が必要と判定されたとき、該展開が必要と判定されたエアバッグのインフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段と、外部からの情報により特定される作動出力回路の故障を診断する故障診断手段とを備え、上記判定手段は、上記判定演算プログラムに、その一部を構成する所定の演算情報が設定されていないことで、予め上記全てのエアバッグについて展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態とされていて、上記故障診断手段により正常と診断された作動出力回路に対応するエアバッグについて、外部から入力される起爆許可信号により上記所定の演算情報が与えられることで、判定可能状態に切替えられる構成とする。
【0020】
この構成のエアバッグ装置によれば、請求項1記載の発明と同様の作用が得られる。
【0021】
請求項8記載の発明では、請求項7記載の発明における故障診断手段は、外部からの情報により特定された作動出力回路に対応するエアバッグが未装備の状態、又は上記特定された作動出力回路以外の作動出力回路に対応するエアバッグが誤って装備されている状態のいずれか一方の場合、上記未装備状態又は誤装備状態のいずれか一方の作動出力回路を故障ありと診断する構成とする。この構成によれは、エアバッグの装備仕様と異なる誤った装備状態を検出することができる。
【0022】
請求項9記載の発明のエアバッグ起爆許可装置では、車両に装備され、衝突時に乗員を保護するためのエアバッグと、該エアバッグに高圧気体を供給して展開させるインフレータと、該インフレータに通電して作動させる作動出力回路と、車両の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサと、該センサからの出力信号に基づいて、所定の判定演算式により判定演算を行う判定演算プログラムを実行して、エアバッグ展開の要否を判定する判定手段と、該判定手段によりエアバッグの展開が必要と判定されたとき、上記インフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段とを備え、上記判定手段を、上記判定演算プログラムに、その一部を構成する所定の演算情報が設定されていないことで、予めエアバッグ展開の要否判定を実行不可能な判定不能状態とし、該判定不能状態の判定手段に外部から起爆許可信号を入力して上記所定の演算情報を与えることで、該判定手段を判定可能状態に切替える信号付与手段を設ける構成とする。
【0023】
この構成のエアバッグ起爆許可装置によれば、請求項1記載の発明と同様の作用が得られる。
【0024】
請求項10記載の発明では、請求項9記載の発明における所定の演算情報を、判定演算プログラムにおいて実行される判定演算式とする。このことで、請求項2記載の発明と同様の作用が得られる。
【0025】
請求項11記載の発明では、請求項9記載の発明における所定の演算情報を、判定演算プログラムにおいて実行される判定演算式の係数とする。このことで、請求項3記載の発明と同様の作用が得られる。
【0026】
請求項12記載の発明では、請求項9記載の発明におけるエアバッグ装置には、判定演算式を記憶した記憶手段が設けられ、信号付与手段は、上記判定演算式の記憶手段における読出しアドレスを与えるものであり、判定手段は、起爆許可信号の入力を受けて上記記憶手段から判定演算式を読出す構成とする。このことで、請求項4記載の発明と同様の作用が得られる。
【0027】
請求項13記載の発明では、請求項9記載の発明におけるエアバッグ装置には、判定演算式の係数を記憶した記憶手段が設けられ、信号付与手段は、上記係数の記憶手段における読出しアドレスを与えるものであり、判定手段は、起爆許可信号の入力を受けて上記記憶手段から係数を読出す構成とする。このことで、請求項5記載の発明と同様の作用が得られる。
【0028】
請求項14記載の発明では、請求項9記載の発明と同様のエアバッグ装置に、作動出力回路の故障を診断する故障診断手段が設けられ、判定手段は、上記故障診断手段により作動出力回路に故障があると診断されたときには判定演算を行わないように構成され、かつ初期状態では予め上記作動出力回路の疑似故障コードが入力されてエアバッグ展開の要否判定を実行不可能な判定不能状態にされており、上記判定不能状態の判定手段に外部から上記疑似故障コードをクリアする起爆許可信号を入力して、該判定手段を判定可能状態に切替える信号付与手段を設けたものである。このことで、請求項6記載の発明と同様の作用が得られる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0030】
(実施形態1)
(エアバッグ装置及びエアバッグ起爆許可装置の構成)
図1は、本発明の実施形態1に係るエアバッグラインテスタ(起爆許可装置)Aを示し、このラインテスタAは例えば車両組立ラインの最終工程で出荷検査等を行う検査ラインに設けられるものである。
【0031】
同図において、1は車両2に装備されたセーフティエアバッグシステムのユニット(以下、SASユニットという)3に起爆許可信号を入力して、エアバッグ4a,4a…(図2参照)を展開可能な起爆許可状態にさせるエアバッグテスタ(診断回路特定手段、信号付与手段)である。このエアバッグテスタ1は、各車両2毎に設けられた製造番号カード2aから該車両2の製造番号を読み取り、その製造番号を通信ライン5により接続された生産管理用コンピュータ6に送信する一方、該コンピュータ6から上記製造番号に対応するエアバッグ装備仕様を受信する。また、上記エアバッグテスタ1は、各車両2に搭載されたSASユニット3に通信ライン7及び故障診断用のコネクタ8を介して接続され、各車両2毎のエアバッグの装備情報をSASユニット3に送信する一方、該SASユニット3からその故障診断結果をフィードバックされ、次に、その診断結果に応じてSASユニット3に起爆許可信号を入力するようになっている。尚、9はSASユニット3からの故障診断結果をプリントアウトするプリンタである。
【0032】
上記SASユニット3は、図2にも示すように、正面衝突用の2つのエアバッグモジュール4,4の他に側面衝突用の2つのエアバッグモジュール4,4に接続可能で、4つのエアバッグ4a,4a,4a,4aを同時に作動制御できるようになっている。上記各エアバッグモジュール4は、片側に開口部を有するケース部材4b内の奥側に点火部と爆薬とを内蔵した円筒管状のインフレータ4cが、また開口側には折り畳まれたエアバッグ4aがそれぞれ収容されているもので、ケース部材4bの開口部はエアバッグの展開により容易に破れる紙で塞がれている。尚、上記エアバッグモジュール4,4,…及びSASユニット3によりエアバッグ装置が構成されている。
【0033】
上記SASユニット3には、車両2の衝突時の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサとして、前後方向の減速度Gを検出する衝突センサ11aと、左右方向の減速度Gを検出する衝突センサ11bとが設けられ、また、該衝突センサ11a,11bからの出力信号をI/O部12を介して受けるECU(Electronic Control Unit)13と、該ECU13により作動制御されて各エアバッグモジュール4のインフレータ4cにそれぞれ通電する4つの作動出力回路14,14,14,14と、電子的に書き換え可能な不揮発性メモリ(記憶手段)15とが搭載されている。
【0034】
そして、車両の衝突時には、衝突センサ11a又は11bからの出力信号がECU13に入力され、その信号値に基づいて、ECU13により判定演算プログラムに従って各エアバッグ4a毎に展開の要否が判定される。しかして、展開が必要と判定されたエアバッグ4a,4a…に対応するインフレータ4c,4c,…が作動出力回路14,14,…により通電されると、通電されたインフレータ4cの点火部が点火して爆薬が高速燃焼し、そのときに発生する多量のガスがエアバッグに供給されて、エアバッグが膨張展開される。
【0035】
すなわち、上記ECU13は、衝突センサ11a,11bによる検出値に基づいて各エアバッグ4a,4a…毎に展開の要否を判定する判定手段、及び、該判定手段により展開が必要と判定されたエアバッグのインフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段に対応するものである。また、上記ECU13は、作動出力回路14,14,…の断線や電気的異常を検出する故障判定プログラムを備えていて、故障診断手段としての機能も有している。
【0036】
ここで、本発明の特徴部分として、ECU13の判定演算プログラムには初期状態では判定演算式が設定されておらず、このため、衝突センサ11a,11bからいかなる信号が入力されてもエアバッグ4a,4a…の展開の要否を判定することができない判定不能状態にされている。上記判定演算式は、例えば以下の(数1)に示すようなものとすればよい。
【0037】
【数1】
すなわち、図3に示すように衝突センサ11a,11bによって検出される減速度G(t)に基づいて、同図に仮想線で示す減速度G(t)の立ち上がり時の変化度合dG(t)/dt、同図に点Pとして示す減速度のピーク値G(t)max、及び同図に斜線で示す減速度の積分値をパラメータとし、それぞれに重み付け係数a,b,cを乗算した上で互いに足し合わせる等して判定値Fを求める。そして、この判定値Fが予め設定したしきい値F0以上であれば、衝突方向のエアバッグ4aを展開の必要ありと判定する。
【0038】
上記のような判定演算式がエアバッグテスタ1からの起爆許可信号によってECU13に与えられ、判定演算プログラムに設定されることで、ECU13は、上記衝突センサ11a,11bからの信号に基づいてエアバッグ展開の要否を判定する判定可能状態に切り替えられる。言い換えれば、上記起爆許可信号が入力されるまでは、ECU13がエアバッグ4a,4a…の展開を必要と判定することはあり得ないので、エアバッグ4a,4a…の誤作動を確実に阻止できる。
【0039】
尚、ECU13を判定不能状態と判定可能状態とに切替える方法としては、上述の如く判定演算式そのものを後から設定する代わりに、判定演算式の係数a,b,cを起爆許可信号によって後から与えるようにしてもよい。
【0040】
また、メモリ15に予め判定演算式や係数を電子的に記憶させておいて、起爆許可信号によってそれらの読み出しアドレスを後から与えるようにしてもよい。このようにすれば、判定演算式そのものを与える場合に比べて情報量が格段に少なくて済むので、エアバッグテスタ1や通信ライン7の負担が軽くなる上、通信時間の短縮により車両1台あたりの起爆許可に要する時間も短縮できる。
【0041】
(エアバッグ起爆許可方法)
次に、上記エアバッグ装置及びエアバッグ起爆許可装置を用いたエアバッグ起爆許可方法について図4に基づいて説明する。
【0042】
まず、ステップS1に示すように、エアバッグテスタ1により車両2の製造番号を読み込んで、生産管理用コンピュータ6に送信する。例えば、製造番号はDEMIO−00001であったとする。続いて、ステップS2に示すように、生産管理用コンピュータ6からエアバッグテスタ1へ、車両の製造番号に応じたエアバッグ構成(装備仕様)が送信される。例えば、製造番号DEMIO−00001の車両2のエアバッグ構成は、正面衝突用の2つ(No.2,3)が設定ありで、側面衝突用の2つ(No.1,4)が設定なしになっている。
【0043】
続いて、ステップS3に示すように、エアバッグテスタ1からSASユニット3に対し装備情報が送信される。すなわち、上記エアバッグ構成に基づいて、エアバッグ4aの設定がある正面衝突用の2つ(No.2,3)については故障診断を開始するように特定され、また、エアバッグ4aの設定がない側面衝突用の2つ(No.1,4)は診断不要とされる。
【0044】
上記装備情報の送信を受けたSASユニット3は、ステップS4に示すように、特定された2つのエアバッグモジュール4,4(No.2,3)についての故障診断を実施する。また、特定されなかった2つのエアバッグモジュール4,4(No.1,4)については、エアバッグの設定がないと確定して所定の処理を行う。そして、ステップS5に示すように、故障診断結果がSASユニット3からエアバッグテスタ1に送信される。
【0045】
ここで、例えば、正面衝突用の運転席側エアバッグモジュール4(No.3)の作動出力回路14ついて故障があるとすると、故障診断結果は、助手席側エアバッグモジュール4(No.2)が正常、運転席側エアバッグモジュール4(No.3)が故障ありとなり、また側面衝突用の2つのエアバッグモジュール4,4(No.1,4)が診断結果の回答なしとなる。
【0046】
この診断結果に対し、ステップS6に示すようにエアバッグテスタ1からSASユニット3に対し起爆許可信号が入力され、診断結果が正常であったエアバッグ4a(No.2)についてはECU13の判定演算プログラムに所定の判定演算式が設定されて、エアバッグ4aが展開可能状態にされる。一方、故障ありと診断された運転席側エアバッグモジュール4(No.3)は起爆許可しない。
【0047】
そして、SASユニット3における起爆許可処理が正常に終了すれば、ステップS7に示すように、SASユニット3からエアバッグテスタ1に対しその旨の送信が行われ、続いてステップS8に示すようにエアバッグ起爆許可作業の結果がプリントアウトされる。
【0048】
したがって、この実施形態1のエアバッグ起爆許可方法によれば、SASユニット3のECU13は、初期状態では判定プログラムに判定演算式そのものが設定されていないので、万一、車両組立工程で衝突センサ11a,11bが大きな衝撃を検出して出力するようなことがあっても、作動出力回路14からエアバッグモジュール4に通電されることはあり得ず、このことで、エアバッグ4aの誤展開を確実に防止することができる。
【0049】
また、車両組立ラインの最終工程において、SASユニット13にエアバッグテスタ1から起爆許可信号を入力するだけで、ECU13の判定プログラムに判定演算式を設定して、各エアバッグ4aを展開可能な状態にさせることができる。よって、起爆許可の操作を煩雑化することなく、エアバッグ誤作動防止の信頼性を大幅に向上させることができる。
【0050】
さらに、上記実施形態1では、車両2のエアバッグ構成に基づいて特定された作動出力回路14,14,…の故障がSASユニット3の診断機能により診断され、その診断結果に応じて、装備仕様の通りに装備されかつ正常に動作するエアバッグ4aのみを展開可能な状態にしている。このことで、車両組立ラインの最終工程で、通常のSASユニット3の故障診断及びエアバッグ装備仕様の切替えをエアバッグ起爆許可と兼ねて同時に行うことができる。
【0051】
尚、上記実施形態1では、図4のステップS6に示すように、SASユニット3から送信された診断結果に応じて、診断結果が正常であったエアバッグ4a(No.2)について展開可能な状態にする一方、故障ありと診断された運転席側エアバッグモジュール4(No.3)は起爆許可しないようにしているが、これに限るものではない。すなわち、図5のフローのステップS6′に示すように、診断結果が全て正常な場合にSASユニット3に起爆許可信号を送信する一方、故障診断されたものがあれば、警報を発するようにしてもよい。
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係るエアバッグの起爆許可方法を示す。この実施形態2の方法に用いるエアバッグ装置及びエアバッグ起爆許可装置は実施形態1のもの(図1及び図2参照)と同様のもので、また、エアバッグの起爆許可方法にも同様の手順があるので(図4参照)、以下、装置の同一部分には同一の符号を付して、主にエアバッグの起爆許可方法の異なる手順について詳細に説明する。
【0052】
同図のステップT1及びT2に示す手順は、図4のステップS1及びS2の手順と同一である。続いて、ステップT3に示すように、エアバッグテスタ1からSASユニット3に対して故障診断を開始するよう指令が送られ、この指令を受けたSASユニット3では、ステップT4に示すように、全ての作動出力回路14,14,…の故障診断を実行する。そして、ステップT5に示すように、故障診断結果がSASユニット3からエアバッグテスタ1に送信される。例えば、正面衝突用の2つ(No.2,3)については正常診断がなされ、側面衝突用の2つ(No.1,4)については、エアバッグモジュール4,4が接続されていないので、オープン故障と診断される。
【0053】
上記故障診断結果の送信を受けたエアバッグテスタ1は、ステップT6に示すようにエアバッグ構成と故障診断結果とを比較し、ステップT7に示すように、比較結果に応じた起爆許可信号をSASユニット3に送信する。すなわち、1) 診断結果が正常であり、かつエアバッグの設定ありならば、そのエアバッグ4aについて展開可能な状態にさせる。
【0054】
また、2) 診断結果がオープン故障であり、かつエアバッグの設定なしならば、そのエアバッグ4aは装備仕様通り車両2には装備されていないので、これについては展開が不可能な状態にさせる。同時に、オープン故障という診断結果を無効として正常とみなすようにさせる。
【0055】
さらに、3) 上記1)、2)以外の場合、すなわちエアバッグの設定ありでかつ故障が診断されたものや、エアバッグの設定なしでかつ正常診断されたものについては、実際に作動出力回路14,14,…に何らかの異常があると考えられる。そこで、この場合にはSASユニット3に対し起爆許可信号は出力せず、代わりにワーニングランプの点灯等をさせるような指令を送信し、併せて、エアバッグテスタ1においても何らかの異常警告を行う。
【0056】
具体的に本例では、正面衝突用の2つ(No.2,3)については、ECU13の判定演算プログラムに所定の判定演算式が設定されて、エアバッグ4aが展開可能状態にされる。一方、側面衝突用の2つ(No.1,4)については、故障診断が無効とされて、正常であるとみなされる。
【0057】
そして、ステップT8及びT9の手順はそれぞれ図4のステップS7及びS8の手順と同様に実行され、SASユニット3からエアバッグテスタ1に対し起爆許可処理が正常に終了した旨の送信が行われた後、作業結果がプリントアウトされる。
【0058】
したがって、この実施形態2では、実施形態1と同様、起爆許可の操作を煩雑化することなく、車両組立工程におけるエアバッグ4aの誤展開を確実に防止することができる。
【0059】
また、SASユニット3の診断機能により作動出力回路14,14,…の故障が診断され、その診断結果とエアバッグ装備仕様とを比較することで、装備仕様の通りに装備されかつ正常に動作するエアバッグ4aのみを展開可能な状態にするようにしている。このことで、上記実施形態1と同様、エアバッグ起爆許可をSASユニット3の故障診断及びエアバッグ装備仕様の切替えと兼ねて同時に行うことができる。
(他の実施形態)
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態1では、装備仕様に従って特定されていない点火出力回路14,14については故障診断を実行しないようにしているが、これに限らず、全部の作動出力回路14,14,…を診断した上で、上記の特定されていない点火出力回路14,14,…にエアバッグ4a,4a,…が装備されている場合、この点火出力回路14,14,…を故障と診断するようにしてもよい。このようにすれば、エアバッグ装備の間違いを検出することができる。
【0060】
上記実施形態1及び2では、SASユニット3を4つのエアバッグモジュールと接続可能なものとしているが、これに限らず、接続可能なモジュール数は3つ以下でもよく、その反対に5つ以上でもかまわない。
【0061】
また、上記実施形態1又は2において、SASユニット3におけるECU13の判定プログラムを、作動出力回路14,14,…の故障を診断したときには判定演算を行わないものとしておいて、初期状態では、作動出力回路14,14,…を故障と診断する疑似故障コードを予め入力して判定不能状態にさせ、検査ラインでエアバッグテスタ1からの起爆許可信号により上記疑似故障コードをクリアすることで、エアバッグ4a,4a,…を展開可能な状態にさせるようにしてもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明におけるエアバッグ起爆許可方法によれば、エアバッグ装置にエアバッグ展開の要否を判定する判定手段を設け、該判定手段を予め判定演算の実行が不可能な判定不能状態にすることで、誤作動防止の信頼性を大幅に向上させることができる。しかも、上記判定手段を起爆許可信号により容易に判定可能状態に切替えることができ、このことにより、起爆許可操作の煩雑化を防止することができる。
【0063】
請求項2記載の発明では、判定手段を予め演算式を有しない状態にさせることで、また請求項3記載の発明では、演算式の係数が特定されない状態にさせることで、それぞれ判定演算の実行を確実に阻止できる。
【0064】
さらに、請求項4、請求項5又は請求項6記載の発明によっても同様に判定演算の実行を確実に阻止できる。しかも、上記請求項4又は請求項5記載の発明では、起爆許可信号の通信に係る負担の低減及び通信時間の短縮が図られる。
【0065】
請求項7記載の発明におけるエアバッグ装置によれば、請求項1記載の発明と同様の効果が得られる。
【0066】
請求項8記載の発明によれば、エアバッグの装備の間違いを検出することができる。
【0067】
請求項9〜請求項14記載の発明におけるエアバッグ起爆許可装置によれば、それぞれ請求項1〜請求項6記載の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るエアバッグ起爆許可装置の構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施形態に係るエアバッグ装置の構成を示す図である。
【図3】 衝突センサ出力の時間経過に対する変化、及び判定演算に用いるパラメータを示す説明図である。
【図4】 本発明の実施形態1に係るエアバッグ起爆許可方法の具体的手順を示すフローチャート図である。
【図5】 実施形態1の変形例に係る図4相当図である。
【図6】 本発明の実施形態2に係る図4相当図である。
【符号の説明】
A エアバッグラインテスタ(エアバッグ機動許可装置)
1 エアバッグテスタ(診断回路特定手段、信号付与手段)
2 車両
3 SASユニット(エアバッグ装置)
4 エアバッグモジュール(エアバッグ装置)
4a エアバッグ
4c インフレータ
11 衝突センサ
13 ECU(判定手段、制御手段、故障診断手段)
14 作動出力回路
15 メモリ(記憶手段)
Claims (14)
- 車両の衝突度合に関するパラメータ値をセンサにより検出し、該センサからの出力信号に基づいて、判定手段によりエアバッグ展開の要否を判定する所定の判定演算プログラムを実行し、エアバッグの展開が必要と判定したとき、作動出力回路の作動によりエアバッグを展開させるようにしたエアバッグ装置に対し、
上記判定演算プログラムに、その一部を構成する所定の演算情報を設定しないことで、予め上記判定手段をエアバッグ展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態にしておき、
外部からの起爆許可信号の入力により上記所定の演算情報を与えて判定演算プログラムに設定させることで、上記判定手段を判定可能状態に切替える
ことを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 請求項1において、
所定の演算情報は、判定演算プログラムにおいて実行される演算式であることを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 請求項1において、
所定の演算情報は、判定演算プログラムにおいて実行される演算式の係数であることを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 請求項2において、
エアバッグ装置に、判定演算の演算式を記憶した記憶手段を設け、
起爆許可信号は、上記判定手段に上記演算式の記憶手段における読出しアドレスを与えるものとしたことを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 請求項3において、
エアバッグ装置に、判定演算の演算式の係数を記憶した記憶手段を設け、
起爆許可信号は、上記判定手段に上記係数の記憶手段における読出しアドレスを与えるものとしたことを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 車両の衝突度合に関するパラメータ値をセンサにより検出し、該センサからの出力信号に基づいて、判定手段によりエアバッグ展開の要否を判定する所定の判定演算を行い、エアバッグの展開が必要と判定したとき、作動出力回路の作動によりエアバッグを展開させるようにしたエアバッグ装置に対し、作動出力回路の故障を診断する故障診断手段を設けておき、
上記判定手段を、上記故障診断手段により作動出力回路の故障が診断されたときには判定演算を行わないように構成し、かつ予め上記作動出力回路の疑似故障コードを入力してエアバッグ展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態にしておき、
外部から上記疑似故障コードをクリアする起爆許可信号を入力して、上記判定手段を判定可能状態に切替える
ことを特徴とするエアバッグ起爆許可方法。 - 車両に装備され、衝突時に乗員を保護するための複数のエアバッグと、
上記各エアバッグ毎に設けられ、該エアバッグに高圧気体を供給して展開させるインフレータと、
上記インフレータに個別に通電して作動させる作動出力回路と、
車両の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサと、
上記センサからの出力信号に基づいて所定の判定演算プログラムを実行し、各エアバッグ毎に展開の要否を判定する判定手段と、
上記判定手段によりいずれかのエアバッグの展開が必要と判定されたとき、該展開が必要と判定されたエアバッグのインフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段と、
外部からの情報により特定される作動出力回路の故障を診断する故障診断手段とを備え 、
上記判定手段は、
上記判定演算プログラムに、その一部を構成する所定の演算情報が設定されていないことで、予め上記全てのエアバッグについて展開の要否判定が実行不可能な判定不能状態とされていて、
上記故障診断手段により正常と診断された作動出力回路に対応するエアバッグについて、外部から入力される起爆許可信号により上記所定の演算情報が与えられることで、
判定可能状態に切替えられるように構成されている
ことを特徴とするエアバッグ装置。 - 請求項7において、
故障診断手段は、外部からの情報により特定された作動出力回路に対応するエアバッグが未装備の状態、又は上記特定された作動出力回路以外の作動出力回路に対応するエアバッグが誤って装備されている状態のいずれか一方の場合、上記未装備状態又は誤装備状態のいずれか一方の作動出力回路を故障ありと診断するように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。 - 車両に装備され、衝突時に乗員を保護するためのエアバッグと、
上記エアバッグに高圧気体を供給して展開させるインフレータと、
上記インフレータに通電して作動させる作動出力回路と、
車両の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサと、
上記センサからの出力信号に基づいて、所定の判定演算式により判定演算を行う判定演算プログラムを実行して、エアバッグ展開の要否を判定する判定手段と、
上記判定手段によりエアバッグの展開が必要と判定されたとき、上記インフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段とを備え、
上記判定手段は、上記判定演算プログラムに、その一部を構成する所定の演算情報が設定されていないことで、予めエアバッグ展開の要否判定を実行不可能な判定不能状態とされており、
上記判定不能状態の判定手段に外部から起爆許可信号を入力して上記所定の演算情報を与えることで、該判定手段を判定可能状態に切替える信号付与手段を設けたことを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。 - 請求項9において、
所定の演算情報は、判定演算プログラムにおいて実行される判定演算式であることを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。 - 請求項9において、
所定の演算情報は、判定演算プログラムにおいて実行される判定演算式の係数であることを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。 - 請求項9において、
エアバッグ装置には、判定演算式を記憶した記憶手段が設けられ、
信号付与手段は、上記判定演算式の記憶手段における読出しアドレスを与えるものであり、
判定手段は、起爆許可信号の入力を受けて上記記憶手段から判定演算式を読出すように構成されていることを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。 - 請求項9において、
エアバッグ装置には、判定演算式の係数を記憶した記憶手段が設けられ、
信号付与手段は、上記係数の記憶手段における読出しアドレスを与えるものであり、
判定手段は、起爆許可信号の入力を受けて上記記憶手段から係数を読出すように構成されていることを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。 - 車両に装備され、衝突時に乗員を保護するためのエアバッグと、
上記エアバッグに高圧気体を供給して展開させるインフレータと、
上記インフレータに通電して作動させる作動出力回路と、
車両の衝突度合に関するパラメータ値を検出するセンサと、
上記センサからの出力信号に基づいて、所定の判定演算式により判定演算を行ってエアバッグ展開の要否を判定する判定手段と、
上記判定手段によりエアバッグの展開が必要と判定されたとき、上記インフレータに通電するように作動出力回路を制御する制御手段と、
上記作動出力回路の故障を診断する故障診断手段とを備え、
上記判定手段は、上記故障診断手段により作動出力回路の故障が診断されたときには判定演算を行わないように構成され、かつ初期状態では予め上記作動出力回路の疑似故障コードが入力されてエアバッグ展開の要否判定を実行不可能な判定不能状態とされており、
上記判定不能状態の判定手段に外部から上記疑似故障コードをクリアする起爆許可信号を入力して、該判定手段を判定可能状態に切替える信号付与手段を設けた
ことを特徴とするエアバッグ起爆許可装置。
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