JP3820950B2 - 雰囲気熱処理炉とそのシーズニング方法 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は雰囲気熱処理炉に関し、特に、熱処理開始前の炉乾燥（シーズニング）を簡易に行うことができる雰囲気熱処理炉およびそのシーズニング方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
雰囲気熱処理炉は炉内にH2＋N2等の雰囲気ガスを供給して、無酸化雰囲気の下でステンレス材料の光輝焼鈍等を行うものである。このような熱処理炉では処理中の材料の水分酸化を防止するために、熱処理開始に先立って炉内を十分乾燥させるシーズニングを行っている。この場合、加熱室と異なり、熱源を有しない徐冷室や冷却室をシーズニングするには、加熱室で加熱され高温となった処理材を徐冷室および冷却室へ通して、その材料の放熱によって除冷室等を乾燥するか、あるいはシーズニング専用のヒータ等を除冷室等に設けていた。
【０００３】
一方、雰囲気ガスの使用量を低減してコストダウンを図るために、雰囲気ガスの循環再生を行う循環再生装置を設けることが行われており、その一例を図 ３に示す。図３は横形の雰囲気熱処理炉で、前室１、加熱室２、徐冷室３、冷却室４、および後室５を有しており、ステンレスストリップ等の帯状材が図略のシール装置を経て、前室１から、加熱室２、徐冷室３、冷却室４、後室５へと通過させられて、無酸化雰囲気下で熱処理がなされる。前室１と冷却室４を結ぶ流路６が設けられて、当該流路６中に循環再生装置７が介設されている。循環再生装置７には、前室１に連通する入口７１側よりフィルタ、クーラ、循環ファン、脱酸反応塔、およびドライヤが設けられている。冷却室４へ供給された清浄な雰囲気ガスは、徐冷室３から加熱室２、前室１へと流れた後、流路６を経て循環再生装置７の入口７１に至り、本装置７で脱水、脱酸がなされてその出口７２から流路６を経て再び冷却室４へ戻される。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の雰囲気熱処理炉において、シーズニングのためにダミーの処理材を流すことは手間を要しかつ材料の無駄も生じるという問題があり、また、シーズニング専用のヒータ等を設けることも、ヒータ設置スペースの確保を要することやコストアップになるという問題がある。
【０００５】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、作業の手間や材料の無駄を生じず、かつ特別なヒータ等を設置する必要もなく、シーズニングを簡易に行うことができる雰囲気熱処理炉およびそのシーズニング方法を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本第１発明では、少なくとも加熱室（２）と冷却室（４）を備え、かつ冷却室（４）側から加熱室（２）側へ流通させた雰囲気ガスを、加熱室（２）側から炉外に設けた循環再生装置（７）の入口（７１）へ供給し、再生された雰囲気ガスを循環再生装置（７）の出口（７２）から再び冷却室（４）側へ循環させる流路（６）を設けた雰囲気熱処理炉において、循環再生装置（７）の入口（７１）を冷却室（４）側へ連通させるとともに循環再生装置（７）の出口（７２）を加熱室（２）側へ連通させるように流路（６）を切り替える流路切換手段（８Ａ，８Ｂ）を設ける。
【０００７】
本第１発明において、熱処理開始前のシーズニング時には、循環再生装置の流路を流路切換手段で切り替えて、循環再生装置から雰囲気ガスを加熱室側へ送出し、加熱室のバーナ等で間接加熱された雰囲気ガスを冷却室側へ流通させることにより、従来のようにダミーの処理材を流す手間や特別な熱源を冷却室に設けることなく、冷却室のシーズニングを簡易に行うことができる。
【０００８】
また、本第２発明のシーズニング方法では、炉内に少なくとも加熱室（２）と冷却室（４）を備えるとともに炉外に雰囲気ガス再生用の循環再生装置（７）を備え、熱処理時には雰囲気ガスを冷却室（４）から加熱室（２）へ流通させた後、加熱室（２）から循環再生装置（７）を経て再び冷却室（４）へ循環させるようにした雰囲気熱処理炉のシーズニング方法において、シーズニング時には雰囲気ガスを冷却室（４）から循環再生装置（７）へ流通させた後、循環再生装置（７）から加熱室（２）を経て再び冷却室（４）へ循環させるようにする。本方法によっても本第１発明と同様の効果が得られる。
【０００９】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【００１０】
【発明の実施の形態】
図１に示す横形の雰囲気熱処理炉は、前室１、加熱室２、徐冷室３、冷却室４、および後室５を有しており、ステンレスストリップ等の帯状材は図略のシール装置を経て、前室１から、加熱室２、徐冷室３、冷却室４、後室５へと通過させられて、無酸化雰囲気下で熱処理がなされる。前室１と冷却室４を結ぶ流路６が設けられて、当該流路６中に従来技術で説明したと同様の循環再生装置７が介設されるとともに、その前後位置に三方切換弁８Ａ，８Ｂが設けられている。そして、三方切換弁８Ｂと循環再生装置７の入口７１側との間にバイパス流路６１が、三方切換弁８Ａと循環再生装置７の出口７２側との間にバイパス流路６２がそれぞれ設けられている。
【００１１】
通常の材料熱処理中には、図１に示すように、各三方切換弁８Ａ，８Ｂのａポートとｂポートを連通させ、ｃポートは遮断状態とする。これにより、図１の矢印で示すように、冷却室４へ供給された雰囲気ガスは徐冷室３、加熱室２を経て前室１から流路６を経て循環再生装置７の入口７１へ至り、循環再生装置７で脱水、脱酸がなされて、循環再生装置７の出口７２から流路６を経て再び冷却室４へ戻される。帯状材は既述のように、前室１から、加熱室２、徐冷室３、冷却室４、後室５へと通過させられて、無酸化雰囲気下で熱処理がなされる。
【００１２】
上記熱処理の開始に先立ってシーズニングを行う場合には、三方切換弁８Ａ，８Ｂをそれぞれ図２に示す切換状態にしておく。これにより、三方切換弁８Ａのポートｂと循環再生装置７の入口７１の間、および三方切換弁８Ｂのポートａと循環再生装置７の出口７２の間が遮断される。同時に、三方切換弁８Ａのポートａ，ｃを介して、前室１に接続された流路６部分とバイパス流路６２が連通するとともに、三方切換弁８Ｂのポートｂ，ｃを介して、冷却室４に接続された流路６部分とバイパス流路６１が連通する。この状態で加熱室２の間接加熱源であるラジアントチューブバーナに着火するとともに循環再生装置７を作動させると、炉内の雰囲気ガスは図２の矢印で示すように、循環再生装置７の出口７２から三方切換弁８Ａを経て前室１に至り、加熱室２で昇温させらて徐冷室３および冷却室４へ流通して、放熱によってこれら除冷室３と冷却室４を乾燥させる。雰囲気ガスはその後、冷却室４から三方切換弁８Ｂを経て循環再生装置７の入口７１へ至る。
【００１３】
このようにして、本実施形態においては、循環再生装置７への流路を三方切換弁で切り替えて、加熱室２で加熱された雰囲気ガスを徐冷室３および冷却室４へ流通させることにより、従来のようにダミーの処理材を流す手間や特別な熱源を徐冷室３や冷却室４に設けることなく、これら各室３，４のシーズニングを簡易に行うことができる。
【００１４】
【発明の効果】
以上のように、本発明の雰囲気熱処理炉およびそのシーズニング方法によれば、作業の手間や材料の無駄を生じず、かつ特別なヒータ等を設置する必要もなく、シーズニングを簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態を示す、熱処理時の雰囲気熱処理炉の系統図である。
【図２】本発明の一実施形態を示す、シーズニング時の雰囲気熱処理炉の系統図である。
【図３】従来の雰囲気熱処理炉の系統図である。
【符号の説明】
２…加熱室、４…冷却室、６…流路、６１，６２…バイパス流路、７…循環再生装置、７１…入口、７２…出口、８Ａ，８Ｂ…三方切換弁。

Claims (2)

1. 少なくとも加熱室と冷却室を備え、かつ冷却室側から加熱室側へ流通させた雰囲気ガスを、加熱室側から炉外に設けた循環再生装置の入口へ供給し、再生された雰囲気ガスを循環再生装置の出口から再び冷却室側へ循環させる流路を設けた雰囲気熱処理炉において、循環再生装置の入口を冷却室側へ連通させるとともに循環再生装置の出口を加熱室側へ連通させるように流路を切り替える流路切換手段を設けたことを特徴とする雰囲気熱処理炉。
2. 炉内に少なくとも加熱室と冷却室を備えるとともに炉外に雰囲気ガス再生用の循環再生装置を備え、熱処理時には雰囲気ガスを冷却室から加熱室へ流通させた後、加熱室から循環再生装置を経て再び冷却室へ循環させるようにした雰囲気熱処理炉のシーズニング方法において、シーズニング時には雰囲気ガスを冷却室から循環再生装置へ流通させた後、循環再生装置から加熱室を経て再び冷却室へ循環させるようにしたことを特徴とする雰囲気熱処理炉のシーズニング方法。

Images