JP3820457B2 - マーキング鋼板の製造方法、マーキング方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マーキング鋼板の製造方法、マーキング方法および装置、特に、例えば、薄鋼板の連続生産ラインにおいて、圧延時に生じた押し疵や擦り疵等の欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを鋼板表面に確実に施すことができ、この結果、客先での鋼板の目視検査時において、鋼板に存在する欠陥の有無および位置を容易に認識することができる、マーキング鋼板の製造方法、マーキング方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、薄鋼板の連続生産ラインにおいて、圧延時に鋼板の表面に生じた押し疵や擦り疵等の欠陥は、鋼板生産ラインにおいて、光学式や渦流式等の疵検出器によって検出し、そして、図5に示すように、欠陥位置にインクドット式マーカーや着色ロール式マーカー等のマーカーによってマーキングを、鋼板移動方向に直線状あるいは破線状に施していた。この場合、マーカーは、鋼板上の定位置に固定されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、欠陥位置を示すマーキングは、鋼板移動方向の欠陥位置に対応しているが、鋼板幅方向の欠陥位置には対応していなかった。しかも、マーキングは、欠陥長さよりかなり長いのが通常であった。
【0004】
この結果、出荷後の客先での目視検査において、マーキングは明確に認識することができても、欠陥の程度によっては、欠陥位置を即座に認識することができない場合があった。即ち、図6において、斜線部分のどこかには欠陥があるが、斜線部分のどの位置に欠陥が存在するかが即座に認識することができなかった。
【0005】
また、図7に示すように、鋼板をその幅方向中央部からスリッターによって2分割する場合があるが、分割された一方の鋼板にマーキングが施され、他方の鋼板に欠陥が存在するような場合には、欠陥が検出されない恐れが生じる。
【0006】
従って、この発明の目的は、欠陥を囲むように被検査材の表面にマーキングを施すことによって、出荷後の客先での目視検査において、被検査材に存在する欠陥の有無および位置を即座に認識することができる、マーキング鋼板の製造方法、マーキング方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、被検査材としての鋼板を連続的に生産する鋼板生産工程と、前記鋼板生産工程により生産される移動中の前記被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すマーキング工程を備えた、マーキング鋼板の製造方法において、前記欠陥を検出し、前記欠陥の検出信号に基づいて複数本のマーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことに特徴を有するものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記マーキング工程において使用されるマーカーは、前記被検査材の移動方向上流側マーカーおよび前記被検査材の移動方向下流側マーカーからなり、前記上流側マーカーおよび前記下流側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する方向に沿って移動してマーキングを行なうことに特徴を有するものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記マーキング工程において使用されるマーカーは、左側マーカーおよび右側マーカーからなり、前記左側マーカーおよび右側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する同一線上に沿って互いに独立して移動してマーキングを行なうことに特徴を有するものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記マーカーには、前記マーキングを撮像するためのカメラが設けられ、前記マーカー制御器は、前記カメラからの撮像信号に基づいて、前記マーキングの良否を判定することに特徴を有するものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、移動中の被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すための方法において、前記欠陥を検出し、前記欠陥の検出信号に基づいて複数本のマーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことに特徴を有するものである。
【0012】
請求項6記載の発明は、移動中の被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すための装置において、前記欠陥を検出するための欠陥検出器と、前記被検査材の表面にマーキングを施すための複数本のマーカーと、マーカー制御器とを備え、前記マーカー制御器は、前記欠陥検出器からの前記欠陥の検出信号に基づいて前記マーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことに特徴を有するものである。
【0013】
請求項7記載の発明は、前記マーカーは、前記被検査材の移動方向上流側マーカーおよび前記被検査材の移動方向下流側マーカーからなり、前記上流側マーカーおよび前記下流側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する方向に沿って互いに独立して移動可能であることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項8記載の発明は、前記マーカーは、左側マーカーおよび右側マーカーからなり、前記左側マーカーおよび右側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する同一線上に沿って移動可能であることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項9記載の発明は、前記マーカーには、前記マーキングを撮像するためのカメラが設けられ、前記マーカー制御器は、前記カメラからの撮像信号に基づいて、前記マーキングの良否を判定することに特徴を有するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明のマーキング鋼板は、冷間圧延機、熱間圧延機等からなる鋼板生産工程と、前記鋼板生産工程により生産される移動中の鋼板の表面に、鋼板に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すマーキング工程によって製造される。なお、前記鋼板生産工程と前記マーキング工程と同一ラインあるいは別のラインに設けても良い。
【0017】
次に、上記マーキング鋼板の製造方法において使用される、この発明のマーキング装置の一実施態様について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、この発明のマーキング装置を示すブロック図、図2は、この発明のマーキング装置におけるマーカーの動きを示す概略平面図、図3は、この発明のマーキング装置によってマーキングが施された鋼板表面を示す平面図、図4は、この発明の別のマーキング装置におけるマーカーの動きを示す概略平面図である。
【0019】
図1において、1は、図中矢印方向に連続的に移動する鋼板、2は、渦流深傷器等の欠陥検出器である。欠陥検出器2は、鋼板1の表面に存在する、圧延により生じた押し疵、擦り傷等の欠陥10を検出する。欠陥検出器2は、鋼板1の移動方向と直交する方向(以下、板幅方向という)に亘って設けられ、欠陥10を検出すると共にその板幅方向の位置を検出する。
【0020】
3A、3Bは、鋼板1の表面に欠陥10の位置を示すマーキングを施すためのペン式あるいはスプレー式等のマーカーであり、3Aは、鋼板1の移動方向上流側マーカー、3Bは、鋼板1の移動方向下流側マーカーである。マーカー3A、3Bは、何れも板幅方向に亘り且つ鋼板移動方向に間隔をあけて互いに平行に設けられたガイド部材4に取り付けられ、モーター等を備えた駆動手段5によって板幅方向に沿って互いに独立して往復移動可能である。
【0021】
マーカー3A、3Bには、マーキングを撮像するための照明付きカメラ6A、6Bがマーカー3A、3Bと一体的に取り付けられている。
【0022】
7は、鋼板1の搬送ローラー8に取り付けられたライントラッキング用のパルスジェネレーターである。パルスジェネレーター7からのトラッキングパルスは、後述するマーカー制御器に送られる。
【0023】
9は、マーカー制御器である。マーカー制御器9は、欠陥検出器2からの欠陥の検出信号およびパルスジェネレーター7からのトラッキングパルスに基づいて、マーカー3A、3Bを制御し、かくして、鋼板1の表面に、欠陥10を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施す。また、マーカー制御器9は、カメラ6A、6Bからの撮像信号に基づいて、マーキングの良否を判定する。
【0024】
このように構成されている、この発明のマーキング装置によれば、以下のようにして、鋼板の表面に欠陥位置を示すマーキングが施される。
【0025】
欠陥検出器2によって移動中の鋼板1の欠陥10が検出されると、欠陥10の板幅方向の位置データがマーカー制御器9に送られる。マーカー制御器9は、マーカー3A、3Bを欠陥10の板幅方向位置まで移動させ、次いで、欠陥10と上流側マーカー3Aとの間の距離が所定距離(L1)になった時に、先ず、上流側マーカー3Aを下降させてマーキングを開始させる。そして、上流側マーカー3Aを板幅方向に所定速度で所定距離(L2)だけ往復移動させ、この後、上昇させる。
【0026】
次に、欠陥10と下流側マーカー3Bとの間の距離が所定距離(L1)になった時に、下流側マーカー3Bを下降させてマーキングを開始させる。そして、欠陥10を中心として上流側マーカー3Aの移動軌跡と対称となるように、下流側マーカー3Bを所定速度で所定距離(L2)だけ往復移動させ、この後、上昇させる。
【0027】
これによって、鋼板1の表面には、図3に示すように、欠陥10を囲むように、長さ(L3)、幅(2L2)の楕円状のマーキング11が施される。
【0028】
このように、鋼板1の表面に、欠陥10を囲むように欠陥位置を示すマーキング11が施されるので、客先での鋼板1の目視検査時において、鋼板1に存在する欠陥10の有無および位置を容易に認識することができる。しかも、鋼板1をその板幅方向中央部からスリッターによって2分割するような場合においても、マーキング11が欠陥10と離れた場所に施されることがないので、欠陥10が検出されないといった事態が生じない。
【0029】
なお、マーカー3A、3Bの下降および上昇のタイミングは、パルスジェネレーター7からのトラッキングパルスによる追尾によって行われる。また、マーカー3A、3Bの板幅方向への移動速度及び移動距離(L2)は、予めマーカー制御器9に設定されている。
【0030】
更に、マーカー3A、3Bの作動と同時に、カメラ6A、6Bによってマーキング11が撮像され、マーカー制御器9は、マーキング11の良否を判定する。この判定ロジックは、予めマーカー制御器9に設定されている。これにより、例えば、マーキング11が明瞭に施されていないような場合には、警報等が発せられる。
【0031】
また、マーカー3A、3Bは、上述の例のように、鋼板移動方向に間隔をあけて設ける以外に、図4に示すように、鋼板1の移動方向と直交する方向に1本のガイド部材13を設け、このガイド部材13に左側マーカー14Aおよび右側マーカー14Bを取り付け、両マーカー14A、14Bをモーター等を備えた駆動手段15によりガイド部材13に沿って互いに独立して移動可能にしたものでも良い。
【0032】
以上は、2個のマーカーを用いた例であるが、2本以上であっても良く、また、マーキングが施される被検査材は、鋼板以外の物であっても良い。
【0033】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、欠陥を検出し、この欠陥の検出信号に基づいて複数本のマーカーを制御して、被検査材の表面に、欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことによって、客先での被検査材の目視検査時において、被検査材に存在する欠陥の有無および位置を容易に認識することができ、しかも、被検査材が鋼板等の板状体で、板幅方向中央部からスリッターによって板状体を2分割するような場合においても、マーキングが欠陥と離れた場所に施されることがないので、欠陥が検出されないといった事態が生じない等、種々の有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のマーキング装置を示すブロック図である。
【図2】 この発明のマーキング装置におけるマーカーの動きを示す概略平面図である。
【図3】 この発明のマーキング装置によってマーキングが施された鋼板表面を示す平面図である。
【図4】 この発明の別のマーキング装置におけるマーカーの動きを示す概略平面図である。
【図5】 鋼板上の定位置に固定されたマーカーを示す概略平面図である。
【図6】 従来法によるマーキング範囲を示す平面図である。
【図7】 切断線を境にマーキングと欠陥とが分断された鋼板を示す平面図である。
【符号の説明】
1:鋼板
2:欠陥検出器
3A:上流側マーカー
3B:下流側マーカー
4:ガイド部材
5:駆動手段
6A:カメラ
6B:カメラ
7:パルスジェネレーター
8:搬送ローラー
9:マーカー制御器
10:欠陥
11:マーキング
13:ガイド部材
14A:マーカー
14B:マーカー
15:駆動手段
Claims (9)
- 被検査材としての鋼板を連続的に生産する鋼板生産工程と、前記鋼板生産工程により生産される移動中の前記被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すマーキング工程を備えた、マーキング鋼板の製造方法において、
前記欠陥を検出し、前記欠陥の検出信号に基づいて複数本のマーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことを特徴とする、マーキング鋼板の製造方法。 - 前記マーキング工程において使用されるマーカーは、前記被検査材の移動方向上流側マーカーおよび前記被検査材の移動方向下流側マーカーからなり、前記上流側マーカーおよび前記下流側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する方向に沿って移動してマーキングを行なうことを特徴とする、請求項1記載の、マーキング鋼板の製造方法。
- 前記マーキング工程において使用されるマーカーは、左側マーカーおよび右側マーカーからなり、前記左側マーカーおよび右側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する同一線上に沿って互いに独立して移動してマーキングを行なうことを特徴とする、請求項1記載のマーキング鋼板の製造方法。
- 前記マーカーには、前記マーキングを撮像するためのカメラが設けられ、前記マーカー制御器は、前記カメラからの撮像信号に基づいて、前記マーキングの良否を判定することを特徴とする、請求項2または3記載の、マーキング鋼板の製造方法。
- 移動中の被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すための方法において、
前記欠陥を検出し、前記欠陥の検出信号に基づいて複数本のマーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことを特徴とするマーキング方法。 - 移動中の被検査材の表面に、前記被検査材に存在する欠陥の位置を示すマーキングを施すための装置において、
前記欠陥を検出するための欠陥検出器と、前記被検査材の表面にマーキングを施すための複数本のマーカーと、マーカー制御器とを備え、前記マーカー制御器は、前記欠陥検出器からの前記欠陥の検出信号に基づいて前記マーカーを制御し、かくして、前記被検査材の表面に、前記欠陥を囲むように欠陥位置を示すマーキングを施すことを特徴とするマーキング装置。 - 前記マーカーは、前記被検査材の移動方向上流側マーカーおよび前記被検査材の移動方向下流側マーカーからなり、前記上流側マーカーおよび前記下流側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する方向に沿って移動可能であることを特徴とする、請求項6記載のマーキング装置。
- 前記マーカーは、左側マーカーおよび右側マーカーからなり、前記左側マーカーおよび右側マーカーは、前記被検査材の移動方向と直交する同一線上に沿って互いに独立して移動可能であることを特徴とする、請求項6記載のマーキング装置。
- 前記マーカーには、前記マーキングを撮像するためのカメラが設けられ、前記マーカー制御器は、前記カメラからの撮像信号に基づいて、前記マーキングの良否を判定することを特徴とする、請求項6から8のうちの何れか1つに記載のマーキング装置。
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