JP3819755B2 - 高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 - Google Patents

高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海洋構造物、橋梁などの耐海水、耐海塩粒子性が要求される環境下で使用される溶接鋼構造物、及び化学プラント、食品製造プラントなどの耐塩化物性が要求される環境下で使用される溶接鋼構造物の組立で用いられる高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法に関し、特に、鋼材と同等以上の腐食環境下での耐食性を有し、かつ優れた引張強度、靭性、曲げ延性などの機械的特性及び耐高温割れ性などの溶接性を有する溶接部が経済的に得られる高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の化学プラント、食品製造プラントなどの耐塩化物性、及び海洋構造物、橋梁、石油・天然ガス輸送、あるいは海水利用技術等などの耐海水、耐海塩粒子性が要求される苛酷な腐食環境に耐えられるような耐食材料として、各種のオーステナイト系ステンレス鋼、高合金が開発・適用されつつある。
【0003】
一方、一般に、これらの耐食鋼材を溶接施工して鋼構造物を建造する場合、通常、溶接部の溶接金属は凝固組織のままで使用されるため、同組成の母材と比較してその耐食性が低くなる。したがって、耐食構造物全体の耐食性を向上する上で、構造部材だけでなく溶接部の溶接金属の耐食性を向上させることが重要な課題である。
【0004】
近年、耐海水及び耐塩化物性に優れた耐食材料として、耐食性の向上のためにMoを3.5〜8%程度含有した高耐食性の高Moオーステナイト系ステンレス鋼の適用が増加している。
【0005】
一般に、オーステナイト系ステンレス鋼を溶接する場合に、共金系の溶接材料を用いており、そのため、各種のオーステナイト系ステンレス鋼用の共金系溶接材料が開発されている。しかし、高耐食性の高Moオーステナイト系ステンレス鋼を共金系の溶接材料を用いて溶接すると、溶接金属中のMo含有量が高いために凝固偏析が起こりやすくなり、それによる耐食性の劣化が生じ、これを抑制するために、通常、溶接後の熱処理を行うことが必須となる。さらに、溶接金属中のMo含有量が高い場合には、溶接金属中にσ相などの脆弱な金属間化合物が生成し溶接金属の延性・靭性が低下するという問題も生じる。
【0006】
高耐食性の高Moオーステナイト系ステンレス鋼を溶接する場合のこのような問題を改善するために、最近、共金系の溶接材料に替えて、高Cr−高Mo含有高Ni合金の溶接材料が用いられている。この高Cr−高Mo含有高Ni合金の溶接材料は、Niベースのため、溶接金属中のMoの凝固偏析を抑制すると共に、Ni自体も耐食性を向上させる元素であるため、共金系の溶接材料を用いて溶接する場合に比べて溶接金属の耐食性は向上する。しかし、この高Cr−高Mo含有高Ni合金の溶接材料では、溶接金属がオーステナイト単体となるため、溶接時に高温割れが発生しやすく、さらに、Mo含有量も多いために、室温での機械的特性は強度は高いものの、溶接金属中にσ相などの金属間化合物が生成しやすく延性及び靭性が低い等の問題があり、高耐食性溶接構造用の溶接材料としては充分ではない。
【0007】
また、最近、特公平03−31556号公報、特開平01−293992号公報、特開平07−214374号公報、特開平08−252692号公報等に開示されているように、耐食性や靭性及び延性に有害なCr炭化物及び耐高温割れ性に有害なWまたはMo炭化物を低減するためにNbによるCの固定を用いずC含有量を低減し、耐食性及び強度向上のためにN添加、固溶させることにより、従来溶接材の耐食性、靭性、延性、強度及び耐高温割れ性を改善した高Ni合金溶接材料が開発されている。しかし、目的とする溶接金属特性を得るためには、厳しい成分規制などによる製造コストの増大の問題があり、また、溶接金属の耐食性、靭性、延性及び強度は良好ではあるものの、溶接金属がオーステナイト単相のために耐高温割れ性が発生しやすい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、耐海水及び耐塩化物性に優れた溶接構造物用材料である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼を従来の溶接材料を用いて単に溶接する方法では、耐海水及び耐塩化物性を向上させ、かつ強度、靭性、曲げ延性等の機械的特性及び耐溶接高温割れ性などの溶接作業性を充分に確保できるだけの溶接部を溶接のままで得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、こうした現状を鑑みて、高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼を溶接するに際に腐食環境に晒される面での耐食性に優れ、かつ機械的特性及び耐溶接高温割れ性に優れた溶接部が得られる高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
(1) 化学成分として、質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材を多層盛り片面溶接する際に、開先底部での初層ビード溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1〜3mmまでの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0を満たし、残部Fe及び不可避的成分からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mmから最終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、Nb及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶接ワイヤを用いて溶接することを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+1.5×Si(質量%)
Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+30×C(質量%)
【0012】
(2) 化学成分として、質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材を多層盛り片面溶接する際に、鋼材裏面からの溶込み深さが2mm以上となるように、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、Nb及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った後、引き続き、該初層ビードの上から最終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0を満たし、残部がFe及び不可避的成分からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接することを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+1.5×Si(質量%)
Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+30×C(質量%)
【0013】
(3) 前記オーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接した際に得られる室温状態での溶接金属の組織は、フェライトを20%以下含有するオーステナイト主体の組織であることを特徴とする上記(1)または(2)の何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
【0014】
(4) 前記高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の化学成分として、さらに、質量%でCu:0.5〜1.0%、N:0.1〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)から(3)のうちの何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼を溶接する際に、溶接金属の耐食性は良好であるが、Mo含有量が多いために靭性及び延性が母材に比べて劣ることを特徴とする高Ni合金溶接ワイヤと、Moを含有しないために溶接金属の靭性及び延性は良好であるが、耐食性が母材に比べて劣ることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを種々の条件で組み合わせて溶接を行うことにより溶接継手を作製し、それらの溶接部の諸特性を詳細に調査・検討した。
【0016】
その結果、高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接において、腐食環境に晒される面の溶接部を高Ni合金溶接ワイヤを用いて所定厚みで溶接し、それ以外の溶接部の厚み範囲をMoを含有せず、かつ室温状態での溶接金属組織が20%以下のフェライトを含有したオーステナイト主体組織である溶接金属が得られる成分系のオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤで溶接することにより、腐食環境に晒される面での溶接部の耐食性を確保し、かつ、溶接部全体での引張強度、靭性、曲げ延性などの機械的特性及び耐溶接高温割れ性などの溶接作業性が良好である溶接継手が得られることが明らかとなった。
【0017】
以下に本発明の詳細について説明する。
【0018】
図1(a)及び(b)は、本発明の実施形態の一例を示す溶接継手の断面図であり、何れも下向き姿勢で多層盛り片面溶接する場合で、(a)は、腐食環境に晒される面が鋼材表面の場合、(b)は、腐食環境に晒される面が鋼材裏面の場合を示す。なお、ここでは、説明の便宜上、溶接姿勢が下向き姿勢であることを前提として説明するが、これに限定する訳ではない。
【0019】
本発明の第1の実施形態として、腐食環境1に晒される面が鋼材表面の高Moステンレス鋼2の溶接方法は、図1(a)に示すように、開先底部での初層ビード溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1〜3mmまでの厚み範囲を、後述する強度、靭性、延性などの機械的特性が良好なステンレス鋼溶接金属3が得られるオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mmから最終層までの厚み範囲を、後述する耐食性が良好な高Ni合金溶接金属4が得られる高Ni合金ワイヤを用いて溶接する。これにより、腐食環境に晒される鋼板表面側の溶接部の耐食性が高Ni合金溶接金属によって鋼材並に向上できると共に、それ以外の溶接部の強度、靭性、延性などの機械的特性はオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属によって確保することができる。
【0020】
この発明方法において、高Ni合金溶接金属及びオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の所要特性を確保するためには、それぞれの溶接金属の形成に用いる高Ni合金ワイヤ及びオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤの成分組成を後述のように規定すると共に、高Ni合金溶接金属及びオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属を形成する厚み範囲を規定する必要がある。
【0021】
高Ni合金溶接金属を形成する、つまり高Ni合金ワイヤを用いて溶接する厚み範囲が、鋼材表面の下方1mm未満の場合はオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属による希釈の影響が大きくなって、腐食環境に晒される鋼板表面側の溶接部の耐食性が低下し、鋼材並以上の耐食性を確保できない。一方、高Ni合金溶接金属を形成する、つまり、高Ni合金ワイヤを用いて溶接する厚み範囲が、鋼材表面の下方3mmを超える場合は、溶接部全体に占める高Ni合金溶接金属の体積が大きくなり、溶接部の強度、靭性、延性などの機械的特性が低下する。
【0022】
したがって、本発明では、高Ni合金ワイヤを用いて溶接する厚み範囲を、鋼材表面の下方1〜3mmとし、それ以外の厚み範囲をオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶接する。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態として、腐食環境1に晒される面が鋼材裏面の高Moステンレス鋼の溶接方法は、図1(b)に示すように、鋼材裏面からの溶込み深さが2mm以上となるように、後述する耐食性が良好な高Ni合金溶接金属4が得られる高Ni合金溶接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った後、引き続き、この初層ビードの上から最終層までの厚み範囲を、後述する強度、靭性、延性などの機械的特性が良好なステンレス鋼溶接金属3が得られるオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶接する。これにより、腐食環境に晒される鋼板裏面側の溶接部の耐食性が高Ni合金溶接金属の初層ビードによって鋼材並に向上できると共に、それ以外の溶接部の強度、靭性、延性などの機械的特性はオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属によって確保することができる。
【0024】
高Ni合金溶接金属の初層ビードを形成する、つまり高Ni合金ワイヤを用いて初層ビード溶接する厚み範囲が、鋼材裏面からの溶込み深さで、2mm未満の場合は、初層ビード形成後のオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤによる溶接で再溶融して、高Ni合金溶接金属とオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属が混合した初層ビードが形成されるため、腐食環境に晒される鋼板表面側の溶接部の耐食性が低下し、鋼材並以上の耐食性を確保できない。
【0025】
したがって、本発明では、高Ni合金ワイヤを用いて初層ビード溶接する厚み範囲を、鋼材裏面からの溶込み深さで2mm以上とし、初層ビードの上から最終層までの厚み範囲をオーステナイト系ステンレス鋼ワイヤを用いて溶接する。
【0026】
以下に、本発明の被溶接鋼材である、高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の成分及びその含有量の限定理由について説明する。なお、下記説明における「%」は、特に明記しない限り質量%を意味する。
【0027】
C:Cは鋼材の耐食性、特に溶接熱影響部の耐食性に有害であるが、強度の観点からある程度の含有が必要である。その含有量が0.005%未満では強度確保が難しく、製造コストも高くなるため、0.005%を上限とした。また、その含有量が0.02%を超えると加工性が低下すると共に、耐食性が著しく低下する。そのため、その含有量を0.005〜0.02%に限定した。
【0028】
Si:Siは脱酸剤及び強化元素として鋼材中に添加されるが、その含有量が0.3%未満ではその効果が十分ではなく、その含有量が0.8%超では延性・靭性が大きく低下する。そのため、その含有量を0.3〜0.8%に限定した。
【0029】
Mn:Mnも鋼製造時に脱酸元素として鋼中に添加するが、その含有量が0.3%未満では効果が十分ではなく、一方、その含有量が1.0%超では鋼板の加工性が劣化する。そのため、その含有量を0.3〜1.0%に限定した。
【0030】
P:Pは不可避的不純物であり、多量に存在すると鋼材の熱間加工性、延性を低下させるので少ない方が望ましく、その含有量の上限を0.03%とした。
【0031】
S:Sも不可避的不純物であり、多量に存在すると鋼材の熱間加工性、延性及び耐食性を低下させるので少ない方が望ましく、その含有量の上限を0.015%とした。
【0032】
Mo:Moは鋼中に固溶して耐食性及び強度を向上させる元素である。特に耐食性向上の効果を十分ならしめるためには3.5%以上必要であるが、一方、8%を超えて含有すると、鋼中での延性・靭性に有害な金属間化合物の生成を著しく促進する。そのため、その含有量を3.5〜8.0%に限定した。
【0033】
Cr:Crは鋼の耐食性を付与する主要元素であり、その効果を十分ならしめるためには18%以上の含有量が必要である。一方、Cr量が25%超では、延性、靭性に有害な金属間化合物の生成を促す。そのため、その含有量を18〜25%に限定した。
【0034】
Ni:Niはオーステナイト安定元素であると共に耐食性を向上する作用も有する。高Moステンレス鋼であってもその組織がフェライト単相、あるいはフェライト+オーステナイト二相からなる場合には、耐食性及び延性・靭性が必ずしも高くなく、また、組織中にフェライト相が存在すると脆弱な金属間化合物が析出しやすくなるので、本発明ではミクロ組織がオーステナイト単相となるようにその含有量を15〜22%に限定した。
【0035】
なお、ここで、ミクロ組織は、エッチングの後に直接組織観察する方法もしくはフェライトメーターのような磁気的測定により判定できる組織である。
【0036】
以上が本発明で対象とする高Moオーステナイト系ステンレス鋼の基本成分であり、他の成分は特に限定されるものではないが、必要に応じて、他の成分を含有できる。
【0037】
以上が、本発明が対象とする、高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の基本成分であるが、必要に応じて以下の1種または2種の元素を以下の含有範囲で含有することができる。
【0038】
Cu:Cuは、鋼材の耐食性と強度を高めるのに顕著な効果があり、その含有量が0.5以上の添加が有効であるが、その含有量が1.0%超の添加では熱間加工性を低下させ、また、耐食性も害する。そのため、その含有量を0.5〜1.0%に限定した。
【0039】
N:Nも鋼材の耐食性と強度を高めるのに有効な元素であり、その効果を十分ならしめるには0.1%以上の添加が必要である。一方、その含有量が0.3%超では、鋼板の製造性が著しく低下するため、その含有量が0.1〜0.3%に限定した。
【0040】
以下に、本発明の溶接方法で用いる溶接ワイヤの成分及びその含有量の限定理由について説明する。なお、下記説明における「%」は、特に明記しない限り質量%を意味する。
【0041】
先ず、本発明の溶接方法で用いるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤの成分及びその含有量の限定理由を述べる。
【0042】
C:Cは溶接金属の強度向上の観点から0.001%以上含有させる。一方、その含有量が0.1%超では溶接金属の加工性、靭性が著しく低下すると共に、溶接のままの状態及び再熱を受けるとCrなどと結合し、これらの領域の耐食性を著しく劣化させる。そのため、その含有量を0.001%〜0.1%に限定した。
【0043】
Si:Siは脱酸元素として添加されるが、その含有量が0.01%未満ではその効果が十分でなく、一方、その含有量が1.5%超では溶接金属のフェライト相の延性低下に伴い、靭性が大きく低下すると共に、溶接時の溶融溶込みも減少し、実用溶接上の問題になる。したがって、その含有量を0.01〜1.5%に限定した。
【0044】
Mn:Mnは脱酸元素として添加するが、その含有量が0.01%未満では効果が十分でなく、一方、その含有量が2.0%を超えて添加すると溶接金属の加工性が低下する。そのため、その含有量を0.01〜2.0%に限定した。
【0045】
Cr:Crはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、溶接金属の強度と耐食性に寄与する。その含有量が20%未満では十分な強度が得られず、また、その含有量が25%超では延性・靭性が低下するため、その含有量を20〜25%に限定した。
【0046】
Ni:Niはオーステナイト系ステンレス鋼の主要元素であり、溶接金属のオーステナイト相を生成・安定にする。その含有量が10%未満では溶接金属のオーステナイトの安定能が下がり、冷却中にマルテンサイトへ変態して靭性が低下する。一方、その含有量が15%超ではオーステナイト単相となって溶接高温割れが発生する。そのため、その含有量を10〜15%に限定した。
【0047】
S:Sは不可避的不純物であり、多量に存在すると溶接部の耐高温割れ性、熱間加工性、延性及び耐食性を低下させるので少ない方が望ましく、その含有量を0.01%を上限として制限する。
【0048】
P:Pも不可避的不純物であり、多量に存在すると凝固時の耐高温割れ性及び靭性を低下させるので少ない方が望ましく、その含有量を0.03%を上限として制限する。
【0049】
本発明では、溶接金属の強度、靭性、曲げ延性などの機械的特性を確保するために、オーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤの基本成分を以上のように規定すると共に、さらに、溶接金属の高温割れ防止の観点から室温時の溶接金属組織として、フェライトが20%以下特に11%以下含有するオーステナイト主体組織にさせることが必要である。
【0050】
本発明者らの実験の結果、室温時の溶接金属組織がオーステナイト単相とならず、フェライトが20%以下含有するオーステナイト主体の組織となるための溶接ワイヤの成分系としては、オーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤの成分含有量がさらに、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0の関係式を満足させる必要があることが判明した。
【0051】
ここで、Cr当量及びNi当量は、以下の(1)式及び(2)式でそれぞれ規定させるものである。
Figure 0003819755
したがって、本発明で使用するオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤの成分含有量が1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0の関係式を満足するように規定する。
【0052】
次に、本発明の溶接方法で用いる高Ni合金ワイヤの成分及びその含有量の限定理由を述べる。
【0053】
C:Cは溶接金属の強化元素として0.001%以上添加する。一方、Cは高Ni溶接金属においては、特にCrと結合しやすく、その含有量が0.01%を超えると粒界等に炭化物として析出し、耐食性や延性・靭性を阻害すると共に、Mo、Wとも結合して耐溶接高温割れ性も低下させる。
【0054】
したがって、C含有量を0.001〜0.01%に限定した。
【0055】
Si:Siは、溶製時に脱酸元素として0.01%以上含有されるが、多量に含有すると溶接熱サイクル中に高Cr−高Mo系の金属間化合物であるσ相の析出を著しく促進し、その結果、耐食性や延性・靭性が低下する。
【0056】
したがって、Siについてもできるだけ低減するため、その含有量の上限を0.2%とした。
【0057】
Mn:Mnは脱酸元素であり、同時に溶接金属中のNの固溶も促進するため、0.01%以上の含有が必要であるが、一方、多量に含有すると耐食性等に有害な金属間化合物の析出も促進するため、その含有量を0.01〜2.0%に限定した。
【0058】
S、Pはいずれも不可避的不純物元素であり、両者とも溶接高温割れ感受性を著しく阻害する元素である。また、多層溶接や補修溶接等の多重熱サイクル中に粒界脆化も促進する。また、Sは熱間加工性に著しく影響を及ぼす。したがって、両元素ともできるだけ低減する必要があり、いずれもその含有量の上限を0.01%とした。
【0059】
Cr:Crは溶接金属の耐食性を付与する主要元素であり、その効果を十分ならしめるためには14%以上が必要である。一方、多量に含有するとワイヤの製造性が著しく低下すると共に、耐食性に有害な金属間化合物の析出を促す。それらを考慮して上限を25%とし、14〜25%に限定した。
【0060】
Ni:Niは溶接金属のマトリックスを構成する主要元素である。溶接金属の耐食性の確保、凝固のまま組織中でのMo、Wの偏析の低減の観点から、少なくとも55%以上の含有が必要であるが、Cr等合金元素を表記の量含有するためには75%が上限であるため、その含有量を55〜75%に限定した。
【0061】
Mo:Moはいずれもマトリックスに固溶して、溶接金属の耐食性、強度を向上させる。その効果を十分ならしめるためには6%以上必要であるが、一方、16%を超えて含有すると、溶接金属中で耐食性、延性・靭性に有害な金属間化合物の生成を著しく促進するため、その含有量を6〜16%に限定した。
【0062】
Nb、W:Nb、Wはいずれも溶接金属の強度を向上させる。その効果を十分ならしめるためにはそれらの成分のうちの1種または2種の合計含有量として1%以上必要であるが、一方、4%を超えて含有すると、耐食性、延性・靭性に有害な金属間化合物の生成を著しく促進するため、その含有量を1〜4%に限定した。
【0063】
Cu:Cuは、硫黄環境等の非酸化性環境や中性環境での溶接金属の耐食性を改善する元素であり、0.1%以上の添加が必要であるが、多量に含有すると熱間加工性を低下させるため溶接ワイヤの製造性を害する上、塩化物含有酸化性環境での耐食性も害することから、これらを考慮して上限を3%とし、その含有量を0.1〜3%とした。
【0064】
Co:Coは通常Ni合金では不可避的に0.1%未満含有されるが、0.1%以上添加することにより、溶接金属の強度の改善が図られる。他方、5%を超えて含有すると溶接ワイヤの製造性が低下する。したがって、その含有量を0.1〜5%に限定した。
【0065】
N:Nはマトリックスに固溶して、溶接金属の耐食性、強度を向上させる。その効果を十分ならしめるにはその含有量が0.1%以上必要であるが、一方、0.3%を超えて含有させると溶接ワイヤの製造性が著しく低下し、また、窒化物等の析出により溶接金属の耐食性も低下する。そのため、その含有量を0.1〜0.3%に限定した。
【0066】
以上が本発明の主要な構成要件である。
【0067】
なお、本発明が対象とする被溶接鋼材は、溶接する場合の少なくとも何れか1方の被溶接鋼材が上記成分を有する高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼であれば良く、この高耐食性高Moオーステナイトステンレス鋼同士の溶接は勿論のこと、高耐食性高Moオーステナイトステンレス鋼とその他のオーステナイトステンレス鋼または普通鋼との異材との溶接にも適用できる。
【0068】
また、本発明の多層盛り片面溶接の溶接方法としては、特に限定する必要はなく、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接、プラズマ溶接、サブマージアーク溶接の何れでも良く、また、溶接が自動、半自動、手動のいずれでも本発明の効果が発揮される。
【0069】
また、本発明の多層盛り片面溶接の溶接方法に適用される溶接ワイヤは、その成分組成が本発明の範囲内であれば、ソリッドワイヤでもフラックス入りワイヤでも適用できる。
【0070】
また、溶接姿勢も下向き、立向き、横向き、上向き、のいずれでも良く、また、継手形状も突合わせ溶接、すみ肉溶接のいずれでも良く、特に限定されるものではない。
【0071】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を説明する。
【0072】
表1に母材として用いた高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼板の化学成分及びミクロ組織を示す。この鋼板は、最終板厚:6mmでの圧延後、1150℃で溶体化熱処理が施されたものであり、臨界孔食発生温度で70℃以上の耐食性を有する。
【0073】
この高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼板の突合せ端部に、開先角度:60゜、ルートフェース:0.5mmのY開先を設け、表2に示すオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(S−1〜S−4)または高Ni合金溶接ワイヤ(N−1〜N−4)の成分を有する、ワイヤ径:1.2φの溶接ワイヤを用いて、腐食環境に晒される面が鋼材表面の場合の実施例として表3に示す条件で、腐食環境に晒される面が鋼材裏面の場合の実施例として表4に示す条件でそれぞれ前述の図1(a)及び(b)に示されるように溶接し、溶接継手を作製した。溶接は、2%O2+98%Arガスを用いたMIG溶接を用い、溶接電流:140〜200A、アーク電圧:16〜27V、溶接速度:20〜35cm/minの条件で行った。
【0074】
【表1】
Figure 0003819755
【0075】
【表2】
Figure 0003819755
【0076】
【表3】
Figure 0003819755
【0077】
【表4】
Figure 0003819755
【0078】
得られた溶接継手は、以下の方法で耐食性及び機械的特性を調査した。
【0079】
耐食性を評価するための試験片は、溶接継手から、いずれも溶接部を中央に含むよう30×30mmの大きさを採取後、余盛を削除して元厚(6mm)のまま用い、腐食環境としては、JIS−G0578−1981に定める6%塩化第二鉄+0.05N塩酸水溶液を用いた。耐食性の評価は、試験片を5℃間隔で管理された腐食環境に24時間浸漬し、評価面側に孔食の発生しない最高温度を塩化物環境での臨界孔食発生温度(CPT)と定義し、その臨界孔食発生温度により評価した。
【0080】
一方、溶接継手の引張強度、靭性、曲げ延性の機械的特性は、それぞれ溶接継手の引張試験、溶接金属のシャルピー衝撃試験、溶接継手の表・裏曲げ試験の結果から評価した。
【0081】
溶接部の引張強度は、溶接継手から余盛を削除した試験片(1号試験片、JIS−Z3121−1961)を採取し、引張試験を行い、その結果から引張強度を求めた。
【0082】
溶接部の靭性は、溶接方向に垂直方向から2mmVノッチ5mmサブサイズシャルピー試験片を採取し、0℃にてシャルピー衝撃試験を行い、その結果から吸収エネルギーを求めた。
【0083】
溶接部の曲げ延性は、溶接継手から溶接方向に垂直方向から余盛を削除した試験片(5t×30w×250L mm)を採取し、溶接部を表または裏からローラ曲げ(JIS−Z 3124−1960、曲げ半径:R=10mm)試験を行い、その結果から溶接継手の曲げ延性を評価した。
【0084】
また、溶接高温割れ感受性は、C型ジグ拘束突合せ溶接割れ試験(JIS−Z3155−1974)により評価した。
【0085】
表3及び表4にそれぞれの腐食試験結果、機械試験結果及び高温割れ試験の結果も示す。
【0086】
表3及び表4から明らかなように、本発明範囲内の溶接条件、つまり、本発明範囲内の成分のN−1〜3の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相当する最終層(試験No1〜3)または初層ビード(試験No.10〜12)を本発明範囲内の厚みで溶接し、それ以外の溶接部の厚み範囲を本発明範囲内の成分を有するS−1のオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接した、試験No1〜3及び10〜12の本発明例は、全て、耐食性、引張強度、靭性及び曲げ延性の機械的特性、耐高温割れ性の要求特性を同時に満足できた。
【0087】
一方、試験No4、8、13、及び17の比較例は、本発明範囲から外れた成分のN−4の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相当する最終層(試験No4)または初層ビード(試験No.13)を溶接したり、本発明範囲内の成分の高Ni合金ワイヤを用いて本発明範囲から低く外れた厚みで最終層(試験No8)または初層ビード(試験No.17)を溶接したために、何れも本発明例に比較して、耐食性が低下し、目標よする母材並の耐食性が得られなかった。
【0088】
試験No5〜7及び14〜16の比較例は、本発明範囲内の成分のN−2の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相当する最終層または初層ビードを本発明内の厚みで溶接しているが、それ以外の溶接部の厚み範囲の溶接を本発明範囲から外れた成分のオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤ(S−2〜4)を用いて溶接したために、試験No5、14は、引張強度が低下し、試験No6、15は、引張強度及び耐溶接高温割れ性が低下し、試験No7、16は靭性、曲げ延性及び耐溶接高温割れ性が低下し、目標とする溶接金属の機械的特性及び溶接特性が得られなかった。
【0089】
また、試験No9の比較例は、本発明範囲内の成分のN−2の高Ni合金ワイヤを用いて腐食環境に晒される面の溶接部に相当する最終層を溶接しているが、その溶接の厚み範囲が本発明範囲から外れているために、それ以外の溶接部の厚み範囲に形成されたオーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の特性が充分に発揮できず、溶接部全体の靭性、曲げ延性及び耐溶接高温割れ性が低下した。
【0090】
以上から、本発明の高耐食高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方の適用により、耐食性のみならず機械的特性、耐溶接高温割れ性にも優れた良好な溶接部が得られことが判った。
【0091】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接において、腐食環境に晒される面での耐食性に優れ、かつ、耐溶接高温割れ性及び機械的特性に優れる溶接部が得られるものであり、産業の発展に貢献するところが極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す溶接継手の断面図であり、何れも下向き姿勢で多層盛り片面溶接する場合で、(a)は、腐食環境に晒される面が鋼材表面の図であり、(b)は、腐食環境に晒される面が鋼材裏面の図である。
【符号の説明】
1 腐蝕環境
2 高Moステンレス鋼
3 ステンレス鋼溶接金属
4 高Ni合金溶接金属

Claims (4)

  1. 化学成分として、質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材を多層盛り片面溶接する際に、開先底部での初層ビード溶接及び該初層ビードの上から鋼材表面の下方1〜3mmまでの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0を満たし、残部Fe及び不可避的成分からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接後、引き続いて、鋼材表面の下方1〜3mmから最終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらに、Nb及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶接ワイヤを用いて溶接することを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
    但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+1.5×Si(質量%)
    Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+30×C(質量%)
  2. 化学成分として、質量%で、C:0.005〜0.02%、Si:0.3〜0.8%、Mn:0.3〜1.0%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Mo:3.5〜8.0%、Cr:18〜25%、Ni:15〜22%を含有し、残部が鉄及び不可避的成分からなり、かつミクロ組織がオーステナイト単相である高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼材を多層盛り片面溶接する際に、鋼材裏面からの溶込み深さが2mm以上となるように、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.01%、Si:0.01〜0.2%、Mn:0.01〜2%、S:0.01%以下、P:0.01%以下、Cr:14〜25%、Ni:55〜75%、Mo:6〜16%を含有し、さらにに、Nb及びWのうちの1種または2種の合計量:1〜4%、Cu:0.1〜3%、Co:0.1〜5%、及びN:0.1〜0.3%のうちの1種または2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的成分からなる高Ni合金溶接ワイヤを用いて開先底部の初層ビード溶接を行った後、引き続き、該初層ビードの上から最終層までの厚み範囲を、化学成分として、質量%で、C:0.001〜0.1%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.01〜2.0%、Cr:20〜25%、Ni:10〜15%を含有し、Sを0.01%以下、Pを0.03%以下に制限し、かつ、1.14×Cr当量−Ni当量≧9.0を満たし、残部がFe及び不可避的成分からなるオーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接することを特徴とする高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
    但し、Cr当量=Cr(質量%)+Mo(質量%)+1.5×Si(質量%)
    Ni当量=Ni(質量%)+0.5×Mn(質量%)+30×C(質量%)
  3. 前記オーステナイト系ステンレス鋼溶接ワイヤを用いて溶接した際に得られる室温状態での溶接金属の組織は、フェライトを20%以下含有するオーステナイト主体の組織であることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
  4. 前記高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の化学成分として、さらに、質量%でCu:0.5〜1.0%、N:0.1〜0.3%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1から3のうちの何れか1項に記載の高耐食性高Moオーステナイト系ステンレス鋼の溶接方法。
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