JP3814766B2 - 光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの製造法 - Google Patents

光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの製造法に関する。
詳しくは、本発明は、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)から特定の酵素を用いて光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)を効率的に製造する方法、該化合物を塩基で処理することにより光学活性な置換スチレンオキシド(IV)を簡便に製造する方法、及び、該化合物を塩基で処理して光学活性な置換スチレンオキシド(IV)を得、次いでアミン化合物を反応させることにより、光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノール(V)を製造する方法に関する。
これらの化合物は、光学活性な医・農薬またはそれらの合成中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール及び光学活性な置換スチレンオキシドの製造法としては、3−クロロフェナシルクロライドを不斉ボラン還元して光学活性な2−クロロ−(3−クロロフェニル)エタノールを生成させ、次いでこれを閉環して光学活性な3−クロロスチレンオキサイドを製造する方法(J.Med.Chem.,35,3081(1992))、及び、置換フェナシルハライドを微生物により不斉還元して光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを生成させ、次いでこれを閉環して光学活性な置換スチレンオキシドを製造する方法(特開平4−218384)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記製造法は強催涙性で毒性の高い置換フェナシルハライドを使用するため操作性及び廃棄物処理等に問題点がある上に、前者においては、1)反応試薬として高価でありかつ不安定で取り扱いの困難なボランを用いること、2)高価な光学活性配位子を用いること、3)生成物の光学純度が85%eeと十分でないこと等の難点があり、後者においては、生成物の光学純度は95%ee以上と満足行くものの、原料濃度が1%以下という低濃度でしか行えないこと等の難点があるため、工業的製造法としては満足の行くものではない。
本発明の課題は、医・農薬またはそれらの中間体として有用である、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを工業的に有利に製造する方法を提供し、加えて、光学活性な置換スチレンオキシドまたは光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノールを簡便に製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)を、酵素による立体選択的エステル化により光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステル(VI)と対掌体の光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)とに光学分割し、それぞれの光学活性体を分離採取することにより光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類化合物が得られること、上記方法で得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)を塩基で処理し閉環させ、光学活性な置換スチレンオキシド(IV)を生成せしめ、次いでアミン化合物と反応させることにより、医薬として有用である光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノール(V)を簡便に製造することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、一般式(I)
【0005】
【化6】
Figure 0003814766
【0006】
(式中、Xは塩素原子又は臭素原子を示す。また、R1 、R2 及びR3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、シアノ基又は、ニトロ基を示し、それぞれ同一でも又異なってもよい。また、上記置換基のうち2つがアルキル基又はアルコキシの場合は、それらが一体となって環を形成しても良い。但し、R1 、R2 及びR3 が同時に水素原子であることはない。)で表わされる2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを、カルボン酸無水物の存在下、立体選択的エステル交換能を有する酵素と接触させることを特徴とする一般式(II)
【0007】
【化7】
Figure 0003814766
【0008】
(式中、X、R1 、R2 及びR3 は式(I)と同義である。)で表わされる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの製造方法、該製造方法により得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)をさらに塩基で処理することを特徴とする光学活性な置換スチレンオキサイド(IV)の製造方法、及び、該光学活性な置換スチレンオキサイド(IV)を、次いでアミンと反応させることを特徴とする光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノール(V)の製造方法に存する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(1) 光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)の製造方法
本発明の製造方法は、一般式(I)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールとアシル供与体であるカルボン酸無水物に立体選択的エステル交換能を有する酵素を作用させることにより行われる。本反応は、下記反応式−1で示されるように、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの(S)体のみがエステル化され、(R)体はそのままアルコール体として得られる。これらの反応混合物は必要に応じて、各々分離することにより高純度の各光学活性体を採取することができる。
【0010】
【化8】
Figure 0003814766
【0011】
また、上記一般式(VI)の化合物は、その立体を保持したまま脱保護を行えば、(S)体の光学活性アルコールとして各種反応に用いることもできるし、プロトン性溶媒中、酸触媒を用いてラセミ化することにより、本反応の出発原料(I)として、リサイクル使用することもできる。
本発明の方法の原料としては、一般式(I)
【0012】
【化9】
Figure 0003814766
【0013】
で表される化合物を用いる。
上記一般式(I)中、Xは塩素原子又は臭素原子であり、R1 、R2 及びR3は水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基;フルオロメチル基、ジフロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基等の炭素数1〜5のハロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、ブトキシ基、2−メチルブトキシ基、ペントキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;シアノ基;または、ニトロ基である。このうち好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜2のハロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基であり、特に好ましくは、ハロゲン原子である。また、R1 、R2 及びR3は、それぞれ同一でも又異なってもよい。また、上記置換基のうち2つがアルキル基またはアルコキシの場合は、それらが一体となってアルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基を形成していてもよい。但し、R1 、R2 及びR3 が同時に水素原子であることはない。
【0014】
本発明に用いられる2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールとしては、具体的に、
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3,5−ジクロロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−メトキシフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−シアノフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−ニトロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3,5−ジクロロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−メトキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−シアノフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−ニトロフェニル)エタノール、
等が挙げられ、好ましくは、
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3,5−ジクロロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−メトキシフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3,5−ジクロロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−トリフルオロメチルフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−メトキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−メトキシフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)エタノール、
であり、さらに好ましくは
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−ブロモ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−ブロモフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)エタノール、
2−クロロ−1−(3−ヨードフェニル)エタノール、
が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる、一般式(I)で表される化合物は、例えば、1,2−ジハロ−1−置換フェニルエタンを水溶液中で、場合によりヨウ化物を触媒として用いることにより加水分解する方法、アセトフェノン系化合物を水素化ホウ素ナトリウム等を用いて還元する方法等により、容易に合成することができる。
本発明の方法に用いられるカルボン酸無水物としては、一般式(III)
【0016】
【化10】
Figure 0003814766
【0017】
で表されるものを用いる。
上記一般式(III)中、R4及びR5は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアシル基及び炭素数6〜10でありそのうち1〜3個はN、O、Sのいずれかで置き換わっていてもよい芳香族基のいずれかから選択される置換基で置換されていてもよい、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基または炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルケニル基、あるいは、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基及び炭素数1〜5のアシル基のいずれかから選択される置換基で置換されていてもよい、炭素数6〜10でありそのうち1〜3個はN、O、Sのいずれかで置き換わっていてもよい芳香族基である。R4 及びR5 は、それらが一体となって環を形成していてもよく、この場合R4 とR5 をあわせて炭素数2〜3の炭素環を形成しているのが好ましい。このうち好ましくは、ハロゲン、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアシル基及びフェニル基のいずれかから選択される置換基で置換されてもよい炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルケニル基、あるいは、ハロゲン原子で置換されていても良い、フェニル基又はピリジル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12の直鎖のアルキル基である。
【0018】
ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられ;炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、ブトキシ基、2−メチルブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられ;アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基等が挙げられ;炭素数6〜10でありそのうち1〜3個はN、O、Sのいずれかで置き換わっていてもよい芳香族基としては、フェニル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0019】
炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、2−エチルペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−ウンデシル基、n−トリデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘプタデシル基等が挙げられ;炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロぺニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−(1−ブテニル)基、2−(2−ブテニル)基、1−ペンテニル基、2−(1−ペンテニル)基、2−(2−ペンテニル)基、1−ヘキセニル基、2−(1−(4−メチルペンテニル)基、2−(2−(4−メチルペンテニル)基等が挙げられ;更に炭素数6〜10でありそのうち1〜3個はN、O、Sのいずれかで置き換わっていてもよい芳香族基としては、フェニル基またはピリジル基等が挙げられる。
【0020】
このうち、カルボン酸無水物として具体的には、無水酢酸、無水クロロ酢酸、無水ブロモ酢酸、無水メトキシ酢酸、無水エトキシ酢酸、無水フェニル酢酸、無水クロロフェニル酢酸、無水プロピオン酸、無水クロロプロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水カプロン酸、無水カプリル酸、無水カプリン酸、無水ラウリン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水クロトン酸、無水安息香酸、無水クロロ安息香酸、無水ピコリン酸、無水クロロピコリン酸等が挙げられ、またR4 及びR5が一体となったものとしては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等が挙げられる。好ましくは、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水カプロン酸、無水カプリル酸、無水カプリン酸、無水ラウリン酸が挙げらる。反応速度、酵素の繰り返し使用のしやすさ、及び後処理の簡便さ等の点からさらに好ましくは、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸、無水カプロン酸、無水カプリル酸、無水カプリン酸が挙げられる。
【0021】
これらカルボン酸無水物の使用量は、ラセミ体の2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)に対し0.5〜100当量用いられる。
本発明に用いられる立体選択的エステル交換能を有する酵素としては、微生物由来のリパーゼが用いられる。特に好ましくは、シュードモナス(Pseudomonas)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、キャンディダ(Candida)属またはリゾプス(Rhizopusu)属に属する微生物由来のリパーゼである。このうち、反応性または光学異性体の選択性からさらに好ましくは、シュードモナス(Pseudomonas)属またはアルカリゲネス属(Alcaligenes)に属する微生物由来のリパーゼである。
【0022】
シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物由来のリパーゼとして、具体的には、トヨチーム.LIP(東洋紡績(株)社製固定化リパーゼ)、リパーゼPS(天野製薬社製)、リパーゼAK(天野製薬社製)等が挙げられ、アルカリゲネス属(Alcaligenes)に属する微生物由来のリパーゼとして、具体的には、リパーゼPL(名糖産業社製)、リパーゼQL(名糖産業(株)社製)が挙げられる。また、これらの酵素としては、菌体、菌体処理物、培養上清液、培養液、粗酵素液、精製酵素液等をアセトン処理または、凍結乾燥処理などにより乾燥させたものを直接用いてもよいし、それらをさらに担体に固定化した後に用いてもよい。
【0023】
また、これらの酵素は、遺伝子組換えの技術によって酵素の遺伝子を導入された組換え菌によって生産されるものでも構わない。
本発明における酵素の使用量は、ラセミ体の2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)に対し、0.01〜200重量%用いられ、好ましくは1〜50重量%である。
なお、酵素の固定化時あるいは酵素反応時に、酵素に対し0.01〜100重量%のショ糖脂肪酸エステルを共存させると、酵素反応における反応性、立体選択性が向上し、生産性及び生成物の光学純度が高くなるため好ましい。ショ糖脂肪酸エステルとしては、通常、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミスチリン酸等の炭素数10〜24の高級脂肪酸とショ糖との部分エステルが挙げられる。
【0024】
添加量としては酵素に対して0.01〜100重量%の間で用いられる。酵素の固定化方法は結合、吸着、沈着及び包括等のいずれでも良いが例えば、0.001〜0.1モルの濃度の緩衝液中に0.01〜1wt%濃度になるようにショ糖脂肪酸エステルを溶かし、ショ糖脂肪酸エステルに対し0.1〜20倍当量の酵素を溶かして1時間から2日間撹拌して十分に接触させた後、この液に固定化担体を酵素に対して1〜1000倍当量添加して1〜7日間おいて十分に吸着させる。これを凍結乾燥あるいは風乾等により乾燥させて固定化酵素を製造する。このときに用いられる緩衝液としては酵素の活性発現に適したものであればいずれでもかまわないが、好ましくはトリスバッファー、りん酸バッファー、グッド緩衝液等が挙げられる。固定化担体としては酵素が固定化される担体であればいずれの担体でも良いが、例えば珪藻土、活性炭、シリカゲル、多孔性ガラス、イオン交換樹脂等が挙げられる。固定化担体の形状は微粒子状、ビーズ状、膜状、繊維状、などいずれの形でも良いが、好ましくは微粒子状、あるいは、ビーズ状である。
【0025】
緩衝液のpHは4〜10、好ましくは6〜9である。固定化する際の温度は1〜50℃、好ましくは4〜20℃の間である。酵素の反応時に疎水性多孔質物質、2糖類、界面活性剤を一種あるいはそれ以上反応系に添加すると、酵素反応における反応性、立体選択性が向上し、生産性及び生成物の光学純度が高くなるため好ましい。
疎水性多孔質物質としてはモレキュラーシーブス、活性炭、セライト、等が挙げられる。添加量は酵素に対し0.1〜100重量倍量用いられる。
2糖類はラクトース、シュークロース、マルトース、トレハロースといったものが挙げられる。添加量は酵素に対し0.1〜100重量倍量用いられる。界面活性剤としてはシュガーエステルのほかにCHAPS(ナカライテスク社製)、NonidetP−40、Brij58(シグマ社製)、n−Octyl−b−thioglucoside、n−Heptyl−b−thioglucoside(同人化学社製)、Tween20、Tween40、Tween80(花王社製)、TritonX−100、TritonN−101(アルドリッチ社製)等が挙げられる。
【0026】
本反応では、無溶媒または有機溶媒の存在下で反応を行うが、溶媒を用いた方が酵素の活性低下をおさえるためには好ましい。反応に用いられる溶媒としては、特に制限されるものではないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が用いられ、好ましくはエーテル系溶媒または炭化水素系溶媒が用いられる。
【0027】
溶媒の使用量としては、一般式(I)で表される2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールに対し、通常、重量比で0〜100倍量であり、生産性の点から好ましくは、0.01〜20倍量であり、特に好ましくは0.05〜10倍量である。本発明の方法では、比較的高濃度でも良好な反応を行うことができる。
本反応の反応様式としては、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)とアシル供与体であるカルボン酸無水物(III)の混合物に立体選択的エステル交換能を有する酵素を懸濁させ、攪拌或いは振盪することにより行ってもよいし、酵素をカラムに充填し、これに2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)とカルボン酸無水物(III)の混合物を流通させることによっても行うことができる。反応終了後、酵素を濾別または遠心分離により除去し、濾液を濃縮した後、抽出、蒸留またはカラムクロマトグラフィー等により精製すれば高純度の光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール類化合物(II)及び光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステル(VI)が得られる。また、濾別した酵素は、そのまま次の酵素反応に再び使用できる。
【0028】
反応は、好気性雰囲気下でも、嫌気性雰囲気下でも行なうことができ、反応温度は通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃の範囲であり、反応時間は通常1時間〜数日間の範囲である。
本反応により得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)の光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業株式会社製、Chiralcel−OJ、溶出溶剤:ヘキサン−イソプロパノール(10:1〜50:1)、流速1.0ml/分、検出220nm)により決定することができる。
【0029】
また、上記酵素反応により副生する、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステル(VI)は、通常、酵素反応終了後または後述の閉環反応後に分離し、これをを脱保護して光学活性アルコールとした後、プロトン性溶媒中、酸触媒を用いてラセミ化することにより一般式(I)で表される化合物に変換し、リサイクル使用することもできる。
脱保護反応に用いられる、プロトン性溶媒としては、特に制限されるものではないが、水、あるいは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。プロトン性溶媒の使用量としては、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステルに対し、等モル以上用いることが好ましい。
【0030】
また、酸触媒としては、特に制限されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化スズ、三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられ、好ましくはブレンステッド酸であり、特に好ましくは後述のラセミ化反応と共通して用いることができる、硫酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸が挙げられ、更に好ましくは安価で工業的にも用いやすい硫酸が挙げられる。酸触媒の使用量としては、原料エステルに対し、0.001モル以上用いることが好ましい。
【0031】
反応は、常圧または加圧下で行うことができ、反応温度が−20〜200℃、好ましくは0〜150℃、特に好ましくは20〜120℃の範囲で、5分間〜100時間程度で実施される。
さらに、ラセミ化反応は水溶媒中で行われるが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、吉草酸メチル、カプロン酸メチル等のエステル系溶媒から選ばれる有機溶媒を共存させてもよい。このうち好ましくは、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
溶媒の使用量としては、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールに対し、重量比で0.01〜100倍量程度用いる。
【0032】
また、酸触媒としては、ブレンステッド酸が通常用いられ、特に硫酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸が好ましい。この場合、水に対する触媒濃度が低いとラセミ化速度が遅く、高濃度では原料の光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの分解が併発する。このため、硫酸水を用いる場合には、通常、水に対して20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは40〜60重量%の濃度で行われる。
【0033】
上記脱保護反応及びラセミ化反応においては、それぞれ反応終了後、塩析あるいは抽出等の操作により生成物を単離し、蒸留、カラムクロマトグラフィー等により精製することができる。また、上記反応においては、溶媒と触媒を選択することにより、脱保護反応終了後、得られる(S)−2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを単離することなくそのままラセミ化反応を行うこともできる。
(2) 光学活性な置換スチレンオキシドの製造法
上記微生物反応により得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)は、塩基で処理することにより閉環させ、一般式(IV)
【0034】
【化11】
Figure 0003814766
【0035】
(式中、R1 、R2及びR3 は式(I)と同義である。)で表わされる光学活性な置換スチレンオキシドに変換することができる。なお、上記微生物反応では、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステル(VI)が副生するが、本反応では、これを分離することなく、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)との混合物のまま反応に供することもできる。この場合、単離精製工程を減らすことができ、工業的にも好ましい。
【0036】
閉環反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等アルカリ金属炭酸塩等の無機塩基、あるいは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノン−5−エン(DBN)等のアミン化合物;などの有機塩基等が挙げられるが、反応収率及び後処理の簡便さの点で、無機塩基が好ましく、中でも、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属炭酸塩等が好適に用いられる。塩基の使用量は、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)に対し1〜10当量、好ましくは1〜5当量用いられる。
【0037】
上記閉環反応は、無溶媒または溶媒の存在下で行われる。反応に用いられる溶媒としては、特に制限されるものではないが、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が用いられ、好ましくはエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒が用いられる。閉環反応に用いる溶媒は、上記酵素反応で用いた溶媒と同一でも異なってもよい。使用する溶媒量は、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)に対し重量比で0〜100倍量、生産性の点から好ましくは0〜20倍量である。
【0038】
閉環反応は、常圧または加圧下で行われ、また、用いる塩基の種類により異なるが、通常、−50〜150℃、好ましくは0〜50℃の範囲で5分間〜24時間反応させることにより行われる。
反応終了後、得られる光学活性な置換スチレンオキシド(IV)は、蒸留等の簡単な手段で単離することができる。本反応により得られる光学活性な置換スチレンオキシドの光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業株式会社製、ChiralpackAD、溶出溶剤:ヘキサン−イソプロパノール(1000:0.4)、流速1.0ml/分、検出220nm)により決定することができる。
【0039】
また、上記酵素反応での副生物である、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールエステル(VI)共存下で反応を行った場合には、該エタノールエステルは、蒸留での高沸点物として分離されるので、上述の脱保護反応及びラセミ化反応を行い、原料の2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(I)として、酵素反応にリサイクル使用することができる。
【0040】
(3)光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノールの製造方法
さらに、上記反応で得られた光学活性な置換スチレンオキシド(IV)は、アミン化合物と反応させることにより、下記一般式(V)で表される光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノールに変換することができる。
【0041】
【化12】
Figure 0003814766
【0042】
(式中、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は芳香族基で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、該芳香族基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基で置換されていても良い。)
【0043】
アミン化合物としては、スチレンオキシドと反応しうる、アンモニア、あるいは、1級又は2級アミンであれば特に限定されないが、好ましくは、アンモニア、あるいは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキルアミンが挙げられる。該アルキルアミンとしては、フェニル基又はピリジル基等の芳香族基で置換されていてもよく、該芳香族基としては、更にハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基で置換されていても良い
【0044】
アミン化合物と上記スチレンオキシドとの反応は、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒中で加熱する方法(Eur.J.Med.Chem.,29,259−267(1994)、J.Med.Chem.,35,3081−3084(1992))等の常法により容易に行うことができる。
上記2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノール(V)は、下記一般式(VII)等で示されるような糖尿病薬及び抗肥満薬等の医薬品として有用であり、本発明の方法によれば、安価で安全な原料から簡便な操作により効率的に上記化合物を合成することができる。
【0045】
【化13】
Figure 0003814766
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
また、本実施例においては、光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業株式会社製、Chiralcel−OJ、溶出溶剤:ヘキサン−イソプロパノール(10:1〜50:1)、流速1.0ml/分、検出220nm)により決定し、光学活性な置換スチレンオキシドの光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセル化学工業株式会社製、ChiralpackAD、溶出溶剤:ヘキサン−イソプロパノール(1000:0.4)、流速1.0ml/分、検出220nm)により決定した。
【0047】
製造例1 2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
3−クロロ−α、β−ジブロモエチルベンゼン996gにヨウ化カリウム10.8g及び水3.5Lを加え、遊離するヨウ素を追い出しながら49時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、分離した油層を分取した後、水洗して中性とし、2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール714gを得た。
【0048】
実施例1 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール100mg(0.4mmol)にリパーゼQL(名糖産業(株)社製)30mg、無水酢酸40mg(0.4mmol)にジイソプロピルエーテルを加え全量を1mlとし、35℃で72時間反応を行った。反応終了後、酵素を濾別し、濾液を減圧濃縮した。濃縮液を 1HNMRにて分析したところ、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール及び(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテートがほぼ2:3の割合で生成していた。濃縮液を薄層シリカゲルクロマトグラフィーにて分取し、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール〔α〕D 20 =−25.6°、C=1.05)及び(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテート(〔α〕D 20 =+40.4°、C=0.60)が得られた。(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの光学純度をキラルHPLCにて分析したところ100%eeであった。
【0049】
実施例2、3
リパーゼQLの量を10mg、酸無水物を無水プロピオン酸39mg(0.3mmol)または無水酪酸47mg(0.3mmol)に変更した以外は、上記と同様の操作で反応を行った。それぞれの反応の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
Figure 0003814766
【0051】
実施例4〜8 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
各種酸無水物0.3mmolを用い、反応時間を122時間にした以外は、実施例2と同様にして反応を行った。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
Figure 0003814766
【0053】
実施例9〜16 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール100mg(0.4mmol)、トヨチームLIP(東洋紡績(株)社製)20mg、各種酸無水物0.3mmolを用い、ジイソプロピルエーテルを加え全量を1mlとしそれぞれ反応温度27℃にて98時間反応を行った。結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
Figure 0003814766
【0055】
実施例17及び比較例1 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール100mg(0.4mmol)、リパーゼQL(名糖産業(株)社製)10mg、アシル化剤としてプロピオン酸無水物39mg(0.3mmol)またはプロピオン酸ビニル30mg(0.36mmol)を用い、t−ブチルメチルエーテルを加え全量を1mlとし、それぞれ反応温度35℃で22時間反応を行った。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
Figure 0003814766
【0057】
実施例18及び比較例2 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール100mg(0.4mmol)、トヨチームLIP(東洋紡績(株)社製)10mg、アシル化剤としてn−カプリン酸無水物100mg(0.31mmol)またはラウリル酸ビニル61mg(0.27mmol)を用い、ジイソプロピルエーテルを加え全量を1mlとし、それぞれ反応温度27℃にて30時間反応を行った。反応終了後、遠心濾過して反応上清を取り除き、そこに新しく2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール、アシル化剤、ジイソプロピルエーテルを加え全量を1mlとし、同様の反応を2回繰り返した。各回の初速度及びトータルの活性値を表5に示す。なお、初速度は、1回目の反応での初速度を100%としたときの相対値(%)で示す。
【0058】
【表5】
Figure 0003814766
活性=アシル化された2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの全量(g)/使用した全酵素量(g)
【0059】
実施例19〜24 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニルエタノールの合成
トヨチームLIP(東洋紡社製)5mg、無水カプロン酸0.052ml、2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール50mg、各添加物5mgをそれぞれ混合し、ジイソプロピルエーテルで全量を0.5mlとして27℃にて68時間反応を行った。結果を表6に示す。
【0060】
【表6】
Figure 0003814766
【0061】
実施例25、26 (R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの合成
リポプロテインリパーゼ(東洋紡社製リパーゼ)20mg、シュガーエステルS570(三菱化学食品製)5mgを20mM TES−Naバッファー5mlに溶解し、4℃で20時間撹拌した。さらにHyflo Super−Cel(和光純薬製)2gを添加して4℃で20時間接触させてから、凍結乾燥して固定化リパーゼを得た(S570品とする)。
得られた固定化酵素20mg、モレキュラーシーブス4A10mg、無水酪酸0.049mlあるいはカプロン酸無水物0.060ml、2‐ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール100mgを混合し、ジイソプロピルエーテルで全量1.0mlとして27℃にて反応を行った。
また上記固定化酵素の代わりにトヨチームLIP(Lot.54010)20mgを用いる以外は同様に反応を行った。
【0062】
【表7】
Figure 0003814766
【0063】
実施例27 (R)−3−クロロスチレンオキシドの合成
2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノール50gにリパーゼQL(名糖産業(株)社製)10g、無水プロピオン酸19.5gにt−ブチルメチルエーテル330mlを仕込み、35℃で22時間反応を行った。反応終了後、リパーゼを濾別し、濾液に1M水酸化ナトリウム水溶液260gを加え、1時間そのまま室温で撹拌した。反応終了後、有機層を分取し、水及び飽和食塩水で洗浄し、中性とした。ガスクロマトグラフィーにて反応液を分析したところ、(R)−3−クロロスチレンオキシドと(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルプロピオネートが生成していることが確認された。このときの(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの転化率は100%であり、(R)−3−クロロスチレンオキシドの収率は98%であった。有機層を減圧下濃縮後、蒸留し、(R)−3−クロロスチレンオキシド13.2g(沸点77℃/3mmHg、〔α〕20 D =−11.6°、C=0.40)を得た。本化合物の2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールからの収率は、40.6%であった。なお、(R)−3−ロスチレンオキシドの光学純度を光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、98.6%eeであった。
【0064】
実施例28 (R)−3−クロロスチレンオキシドの合成
(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールと(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテートの混合物(1:1)50mgをジクロロメタン2mlに溶解し、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対して当量の1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデク−7−エン(DBU)15mgを作用させた。室温で30分間反応させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、(R)−3−クロロスチレンオキシドが(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対し88%の収率で生成していた。この時、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの転化率は92%であった。
【0065】
実施例29 (R)−3−クロロスチレンオキシドの合成
(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールと(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテートとの混合物(1:1)50mgをジクロロメタン2mlに溶解し、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対して当量の1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(DABCO)11mgを作用させた。還流下1時間反応させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、(R)−3−クロロスチレンオキシドが(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対し6%の収率で生成していた。この時、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの転化率は7%であった。
【0066】
実施例30 (R)−3−クロロスチレンオキシドの合成
(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールと(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテートとの混合物(1:1)50mgをジクロロメタン2mlに溶解し、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対して当量のトリエチルアミン10mgを作用させた。還流下10時間反応させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、(R)−3−クロロスチレンオキシドが(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対し32%の収率で生成していた。この時、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの転化率は58%であった。
【0067】
実施例31 (R)−3−クロロスチレンオキシドの合成
(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールと(S)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エチルアセテートとの混合物(1:1)50mgをジメチルホルムアミド2mlに溶解し、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対して当量のK2 CO3 14mgを作用させた。50℃で2時間反応させた後、反応液をガスクロマトグラフィー分析したところ、(R)−3−クロロスチレンオキシドが(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールに対し58%の収率で生成していた。この時、(R)−2−ブロモ−1−(3−クロロフェニル)エタノールの転化率は92%であった。
実施例28〜31の結果を纏めて表8に示す。
【0068】
【表8】
Figure 0003814766
【0069】
【発明の効果】
本発明によれば、2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを特定の酵素により分割し、光学活性2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを簡便に得ることができる。また、これを分離することなく塩基で処理することにより光学活性な置換スチレンオキシドが、更にアミン化合物を反応させることにより光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノールを得ることができ、これらは、医薬、農薬またはそれらの中間体として有用な化合物である。

Claims (5)

  1. 一般式(I)
    Figure 0003814766
    (式中、Xは塩素原子又は臭素原子を示す。また、R1 、R2 及びR3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、シアノ基又は、ニトロ基を示し、それぞれ同一でも又異なってもよい。但し、R1 、R2 及びR3 が同時に水素原子であることはない。)で表わされる2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールを、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸及び無水カプロン酸から選択されるカルボン酸無水物の存在下、シュードモナス(Pseudomonas)属またはアルカリゲネス(Alcaligenes)属に属する微生物由来のリパーゼと接触させることを特徴とする一般式(II)
    Figure 0003814766
    (式中、X、R1 、R2 及びR3 は式(I)と同義である。)で表わされる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノールの製造方法。
  2. 上記置換基R1 、R2 及びR3が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜2のハロアルキル基または炭素数1〜5のアルコキシ基であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 請求項1記載の製造方法により得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)を更に塩基で処理することを特徴とする、一般式(IV)
    Figure 0003814766
    (式中、R1 、R2 及びR3 は式(I)と同義である。)で表わされる光学活性な置換スチレンオキシドの製造方法。
  4. 塩基としてアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属炭酸塩を用いることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 請求項1記載の製造方法により得られる光学活性な2−ハロ−1−(置換フェニル)エタノール(II)を更に塩基で処理し、生成した光学活性な置換スチレンオキシド(IV)を次いでアミン化合物と反応させることを特徴とする、一般式(V)
    Figure 0003814766
    (式中、R1 、R2 及びR3は式(I)と同義であり、R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子又は芳香族基で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基であり、該芳香族基はハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基で置換されていても良い。)で表される光学活性な2−アミノ−1−(置換フェニル)エタノールの製造方法。
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