JP3813709B2 - 重荷重用空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トラック、バス等に用いて好適な重荷重用空気入りタイヤ、とくにはそのトレッドパターンの改良に関するものであり、すぐれたウェット性能を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】
重荷重用空気入りタイヤのリブタイプのトレッドパターンとしては、図4に例示するように、トレッド周方向に連続する複数本の周方向主溝41をもって複数本のリブ42をトレッド踏面部に区画するとともに、トレッド側部のショルダーリブ42を除く他の各リブ42に、傾向的にトレッド幅方向に延びるサイプ43を、そして各ショルダーリブ42に、傾向的にトレッド周方向に延びるサイプ44を、もとに周方向に間隔をおいて形成したものがある。
【0003】
しかるに、サイプの両端がリブ内で終了するこの空気入りタイヤでは、サイプ縁による水膜の切断およびサイプ内への水の取り込みに基づくウェット性能の向上は期し得ても、路面上に多量の水が存在する場合、いいかえれば、サイプ内に水を取り込んでなお、路面上に多くの水が残留する場合には、すぐれたウェット性能の発揮を望み得べくもなかった。
【0004】
そこで、サイプのトレッド表面側部分に、トレッド踏面部への開口幅が2〜3mm、深さが2mm程度の細溝を重ねて形成し、この細溝によってウェット性能の向上を図る試みもなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かかる提案技術では、ウェット性能のそれなりの向上は認められるものの、サイプおよび細溝のいずれもが、主溝に連通することなくリブ内で終了していることから、ウェット性能の、所期したほどの向上をもたらすことができず、また、トレッド踏面部の摩耗によってその細溝が消滅した場合のウェット性能の急激な低下が不可避となるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、それの目的とするところは、細溝の存在下にてはもちろん、その細溝が消滅してなおすぐれたウェット性能を確保することができる重荷重用空気入りタイヤを提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の重荷重用空気入りタイヤは、トレッド踏面部に形成されて周方向に連続して延びる、たとえば4本の細溝によって5本のリブを区画し、それらの各リブに、主溝よりはるかに浅い深さを有し、トレッド周方向に対して50〜70度の範囲の角度で延在する細溝を設けるとともに、各細溝の溝底に、それに沿って延びるサイプを形成して、細溝およびサイプの少なくとも一端を主溝に開口させるとともに、細溝の主溝への開口部で、リブの鋭角側部分に隅切部を設け、この隅切部の深さを細溝より深くしてなるものである。
【0008】
この空気入りタイヤでは、細溝およびサイプの少なくとも一端、好ましくは両端を主溝に開口させることで、細溝から主溝への円滑なる排水を確保して、タイヤのウェット性能を大きく向上させることができ、また、細溝の消滅後においてなお、サイプから主溝への排水を十分円滑ならしめて、ウェット性能の急激な低下のうれいなしに、トレッド部の摩耗の末期に至るまで、良好なウェット性能を確保することができる。
【0009】
またこのタイヤでは、細溝およびサイプのそれぞれを、トレッド周方向に対し、50〜70度の範囲の角度で延在させことにより、接地面内での水の流れ方向と、細溝の延在方向とがほぼ一致することになるので、排水性能の一層の向上を実現することができる。すなわち、上記角度範囲を外れた場合には、排水性能の向上効果が小さい。
【0010】
しかもこのタイヤでは、細溝の、主溝への開口部分で、リブの鋭角側部分に隅切部を設けることで、その隅切部により、一の細溝から排出された水の、隣接リブの細溝への入り込みをより容易ならしめるとともに、上記鋭角側部分の、隣接面内での弾性変形に起因する、細溝の閉塞のおそれを排除し、また、鋭角側部分の存在に起因する偏摩耗の発生を防止することができる。
【0011】
そしてさらには、前記隅切部の深さを、細溝のそれより深くすることにより、細溝の消滅後にもなお、エッジ成分の確保を可能ならしめ、併せて、残存するサイプから主溝への円滑なる排水を確保することができる。
【0012】
ここで好ましくは、各細溝およびサイプを、それの延在途中の少なくとも一箇所で屈曲させ、これにより、タイヤへのスリップアングルの付与時における路面グリップ力を高める。
【0013】
このような空気入りタイヤにおいてより好ましくは、隣接するリブ内のそれぞれの細溝の相互を、それらの仮想延長線分上にほぼ位置させ、これによって、リブ内から排出した水を、主溝内に効率良く流動させることに加え、隣接するリブ内の細溝をも介して流動させて、踏面外への排水を、より一層迅速かつ円滑ならしめる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、この発明の一の実施形態を示すトレッドパターンの展開図である。
ここで、タイヤの内部補強構造は、一般的な重荷重用ラジアルタイヤのそれと同様であるので、図示は省略する。
【0015】
ここでは、トレッド踏面部に、周方向に直線状に連続して延びる4本の主溝1を設けて、それらの主溝間および、最も側端側に位置するショルダー主溝1とトレッド端との間のそれぞれに総計5本のリブ2を区画する。なお、ショルダー主溝1内には、図1(b)に主溝横断方向の断面図で示すように、トレッド踏面部の輪郭線に対して段下りをなし、リブ2から独立して周方向に連続する偏摩耗犠牲部3を設けることもでき、この偏摩耗犠牲部3は、タイヤへの荷重の作用時に、接地面内で路面にすべり接触して、トレッド踏面部に不可避的に生じる偏摩耗を、局部的に、しかもタイヤ性能に影響を及ぼすことなく封じ込めるべく機能する。
【0016】
またここでは、各リブ2に、主溝1よりはるかに浅い深さを有し、トレッド周方向に対して50〜70度の範囲の角度で延在する細溝4を周方向に間隔をおいて設けるとともに、各細溝4の溝底に、それに沿って延びるサイプ5を設ける。図1(c)は、センターリブとショルダーリブとの間の中間リブ2におけるそれらの横断面図であり、細溝4は、主溝1に比してはるかに狭い溝幅を有し、その溝底に設けたサイプ5の半径方向内端は、主溝1の溝底の半径方向位置とほぼ同等位置に達する。
【0017】
このような細溝4およびサイプ5にあって、センターリブ2に形成されたものは、その延在途中で、タイヤ赤道線に重なる中央部分6aと、この中央部分6aの両端から相互にほぼ平行に延在してそれぞれの主溝1に開口する直線状傾斜部分6bとを有してなり、また、中間リブ1に形成されたそれらは、リブ2の側端側に偏った山もしくは谷を具えるほぼ「ヘ」 字状またはそれの倒立形状を有し、その両端でそれぞれの主溝1に開口する。
【0018】
そして、ショルダーリブ2に設けた細溝4およびサイプ5は、それらの一端で主溝1に開口するとともに、リブ内にて終了する他端の近傍に、トレッド幅方向に近づく向きに屈曲した端部分を有してなる。
【0019】
ところで、このような屈曲部を有する細溝4およびサイプ5の、トレッド周方向に対する延在角度は、それらの各延在部分の、トレッド周方向に対する鋭角側の角度の平均値をもって表わすものとし、この場合、センターリブ2に設けた細溝4およびサイプ5の中央部分6aのように、トレッド周方向に延びる部分は、角度の測定対象から除外するものとする。
【0020】
さらに図示例では、隣接するリブ2のそれぞれの細溝4の相互を、それらの仮想延長線上にほぼ位置させ、また、細溝4の主溝1への開口部分で、リブ2の鋭角側部分に隅切部7を設け、より好ましくはその隅切部7の深さを、細溝4の深さより深くする。
【0021】
図2は、この発明の他の実施形態を示す図であり、これは中間リブ2に設けた細溝4およびサイプ5を、トレッド端側の主溝1だけに開口させるとともに、それの延在形態を、センターリブ2の直線状傾斜部分6bとほぼ平行をなす直線状としたものであり、その他のパターン構成は、先に述べたところと同様としたものである。
【0022】
このように構成してなる空気入りタイヤによれば、それぞれの細溝およびサイプが主溝に開口することで、先にも述べたように、細溝4から主溝1への迅速にして円滑な排水を実現してウェット性能を大きく向上させることができ、また、タイヤの摩耗に伴う細溝4の消滅後にもなお良好なウェット性能を確保することができる。その上、細溝4およびサイプ5の、トレッド周方向に対する角度を50〜70度の範囲とすることで、排水効率をさらに高めて、タイヤのウェット性能をより一層向上させることができる。
【0023】
そして、細溝4およびサイプ5のそれぞれを、延在途中の少なくとも一箇所で屈曲させた場合には、車両の旋回走行時の、トレッド幅方向の路面入力成分に対し、路面グリッブ力を有利に向上させることができ、また、隣接するリブのそれぞれの細溝の相互を、それらの仮想延長線分上にほぼ位置させた場合には、とくには、一の細溝から、隣接リブの細溝内への排水の流入を円滑ならしめて、排水効率をより高めることができる。
さらに、排水効率の向上は、隅切部7の形成によって一層顕著なものとなる。
【0024】
(実施例)
以下にこの発明の実施例を、ウェット路面上での制動性能および旋回性能との関連において説明する。
サイズが295/80 R22.5のタイヤに標準リムを組付けるとともに、単輪装着時の最高空気圧を充填した状態で実車走行を行い、制動性能については、初速度(40,60,80 km/h )を与え、ブレーキを踏んだ後、停車するまでにすべった距離を測定することにより評価し、また、旋回性能については、20〜30mの半径の円旋回を行ったときの、旋回タイム及び横加速度を測定することにより評価した。
【0025】
ここで、実施例タイヤ1は、図1に示すトレッドパターンを有するものとし、また、トレッド踏面幅を118.5mm、主溝幅を15.0および14.5mm、主溝深さを17.4mm、細溝幅を3.0mm、細溝深さを2.0mm、細溝底からのサイプ深さを13.1mmとするとともに、それぞれの細溝およびサイプの、トレッド周方向に対する角度を、センターリブで70度、中間リブで60度そしてショルダーリブで50度としたものである。
【0026】
実施例タイヤ2は、図2に示すトレッドパターンを有するものとし、中間リブの細溝およびサイプのトレッド周方向に対する角度を70度とした点を除き、寸法諸元を実施例タイヤ1と同一としたものである。
【0027】
また、比較タイヤは、図3に示すトレッドパターンを有するものとし、全ての細溝およびサイプを、リブ内で終了させた点において、実施例タイヤ1と構成を異にするものである。
【0028】
そして従来タイヤは、図4に示すトレッドパターンを有するものとした。なおここで、周方向主溝の幅および深さはそれぞれ13.5mmおよび14.7mmとした。
【0029】
これらの各タイヤの制動性能および旋回性能のそれぞれは、従来タイヤをコントロールとして指数評価したところ表1に示す通りとなった。
なお、表中の指数値は大きいほどすぐれた結果を示すものとした。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
前記実施例からも明らかなように、この発明によれば、細溝およびサイプの、トレッド周方向に対する角度を50〜70度の範囲とするとともに、それらの少なくとも一端を主溝に開口させ、また、細溝の、主溝への開口部分で、リブの鋭角側部分に隅切部を設け、そして、この隅切部の深さを、細溝より深くすることで、ウェット性能の著しい向上を実現することができ、また、細溝の消滅後においてなお、サイプの、主溝への開口下で、良好なウェット性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一の実施形態を示すトレッドパターン展開図である。
【図2】この発明の他の実施形態を示すトレッドパターン展開図である。
【図3】比較タイヤを示すトレッドパターン展開図である。
【図4】従来タイヤを示すトレッドパターン展開図である。
【符号の説明】
1 主溝
2 リブ
3 偏摩耗犠牲部
4 細溝
5 サイプ
6a 中央部分
6b 傾斜部分
7 隅切部
Claims (3)
- トレッド踏面部に形成されて周方向に連続して延びる主溝により区画される複数本のリブのそれぞれに、主溝よりはるかに浅い深さを有し、トレッド周方向に対して50〜70度の範囲の角度で延在する細溝を設け、各細溝の溝底に、それに沿って延びるサイプを形成して、細溝およびサイプの少なくとも一端を主溝に開口させるとともに、細溝の主溝への開口部分で、リブの鋭角側部分に隅切部を設け、この隅切部の深さを、細溝より深くしてなる重荷重用空気入りタイヤ。
- 各細溝およびサイプを、それの延在途中の少なくとも一箇所で屈曲させてなる請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
- 隣接するリブのそれぞれの細溝の相互を、それらの仮想延長線分上にほぼ位置させてなる請求項1もしくは2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
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