JP3802978B2 - 映写スクリーン用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁面などの平面に貼りつけて、OHPプロジェクターや液晶プロジェクター等の映写機の映写用のスクリーンとして使用し得る映写スクリーン用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、掲示板等の多くの人に情報を提供するための簡易な手段として、黒板が使用されてきた。黒板は、チョークを用いて容易に文字や図形を描く(または書く)ことができ、布等の消去具で拭き取ることにより容易に消去することができる。しかしながら、チョークを用いて文字、図形等を描く際、あるいは描いた図形等を拭き取る際、チョークの粉塵が黒板周辺に浮遊するため、人体の呼吸器に悪影響を与えるとの問題がある。
【0003】
このため、この黒板に代わるものとして、チョークの粉塵の発生のない白色ボード(ホワイトボード)が一般に使用されるようになってきている。白色ボードは、一般に、アルミニウム等の金属板の基材の上に白色塗料等の白色樹脂層(インク受領層)が形成されたものである。白色ボードは、水溶性あるいはアルコール可溶性の親水性のインクで、容易に文字や図形を描くことができ、布等の消去具で拭き取ることにより容易に消去することができる。
さらに、最近では、複写記録装置が付設された白色ボードである電子白板などの表示装置も市販され、学校、企業等で広く使用されている。通常、これらの表示装置は、白色の基材上に紫外線硬化性樹脂により形成された透明樹脂層(インク受領層)からなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、白色ボードを使用している学校、企業等では、OHPプロジェクターや液晶プロジェクター等の映写機を使用する機会が多い。従って、これらの映写用のスクリーンが必要であるが、これらのスクリーンは高価であり、またその設置場所も必要である。このため、安価で、設置するためのスペースを余り必要としないスクリーンが求められている。
【0005】
本発明の目的は、防眩性にも優れ、映写された画像が見やすく、さらに黒板や壁の表面への設置が容易な映写スクリーン用シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、紙の一方の表面にポリマーと白色顔料からなる映写層が設けられてなる映写スクリーン用シートであり、該映写層の表面の60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度のいずれもが、1〜60の範囲にあり、かつその表面の水に対する接触角が50〜80度の範囲にあることを特徴とする映写スクリーン用シートにある。
本発明において、60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度とは、JIS−K−7105−1981に記載の方法によって得られる60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度を意味する。
上記の表面の水に対する接触角は、25℃における値である。
【0007】
本発明の映写スクリーン用シートの好ましい態様は下記の通りである。
1)ポリマーが、芳香族系ポリエステル(特に非晶質の芳香族系ポリエステル)である。
2)映写層が、未延伸の芳香族系ポリエステルフィルムからなる。
3)映写層の表面粗さ(Ra)が、カットオフ値0.8mmにおいて0.3〜3μmの範囲にある。
4)映写層が、更に紙の他方の面にも設けられている。
5)映写層又は紙の表面に、罫線及び/又は目盛りが設けられている。
6)紙の他方の表面に粘着剤層が設けられている。
7)紙の他方の表面と粘着剤層との間に、上記映写層と同一の構成を有するポリマー層が設けられている。
【008】
8)映写層の層厚が、5〜100μmの範囲にある。
9)白色顔料が、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウムまたはタルクである。
10)白色顔料の平均粒径が0.1〜1μmの範囲にある。
11)映写層の表面の光沢度が、1〜40の範囲(特に1〜30の範囲)にある。
12)映写層表面の水に対する接触角が60〜80度の範囲(特に65〜80度の範囲)にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の映写スクリーン用シートは、紙の一方の表面に画像を投影する映写層が設けられた基本構造(好ましくは更に紙の他方の表面に粘着剤層が設けられた基本構造)を有する。
【0010】
本発明の映写スクリーン用シートの代表的な構成例を図1に示す。
紙11の一方の表面に、映写層12aが設けられ、そして紙11の他方の表面にも映写層12bが設けられている。映写層は、一方のみに設けてもよい。映写層を両側に設けることにより、表裏いずれの側でも映写スクリーンとして使用することができ、また反り防止効果が得られ、さらにシートの強度も向上する。
【0011】
本発明の映写スクリーン用シートの代表的な別の構成例を図2に示す。
紙21の一方の表面に、映写層22aが設けられ、そして紙21の他方の表面に、ポリマー層22b(通常、映写層22aと同様の構成)及び粘着剤層23がこの順で設けられ、更に粘着剤層23上に離型シート24が貼付されている。ポリマー層は形成されなくてもよいが、これにより反り防止効果が得られ、またシートの強度も向上する。さらに、離型シート24の設置も任意である。
【0012】
本発明のシートの映写層の表面には、罫線あるいは目盛り、又はその両方を印刷することが好ましい。罫線は、表作成等に使用してもよいし、目盛りは、壁等にシート貼り付ける場合、適当な大きさに裁断するために利用することができる。罫線、目盛は、実線、点線等どのような表記でも良い。またポリマー層又は紙の表面に上記罫線あるいは目盛りを形成しても良い。
罫線、目盛りの印刷濃度は、遠くからシートを見た場合には見えない程度に薄くすることが好ましい。即ち、OHPプロジェクターや液晶プロジェクター等の映写機の映写用のスクリーンとして使用する際に、映像の邪魔にならないように罫線、目盛りの印刷濃度を調整することが好ましい。
【0013】
本発明では、映写層の表面の60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度のいずれもが、1〜60の範囲にあり、かつその表面の水に対する接触角が50〜80度の範囲にある。このような特性を有する映写層の表面は光沢度が比較的低く、防眩性に優れている。このような光沢度は、後述するように、白色顔料を添加することにより得ることができる。
【0014】
上記特定の光沢度及び接触角を有する映写層は、OHPプロジェクターや液晶プロジェクター等の映写機の映写用のスクリーンとして使用することができる。即ち、投影された映像は、映写層が防眩性に優れているので非常に見易い映像となる。従って、上記映写層は、映写スクリーンの映写層として好適に使用することができる。
【0015】
本発明の映写スクリーン用シートを構成する紙11、21としては、原紙、原紙の両面に表面サイズ剤が塗布されたもの、コート紙及びアート紙を挙げることができる。原紙は、針葉樹、広葉樹等から得られる天然パルプを主原料に、必要に応じて、クレー、タルク、炭酸カルシウム、尿素樹脂微粒子等の填料;ロジン、アルキルケテンダイマー、高級脂肪酸、エポキシ化脂肪酸アミド、パラフィンワックス、アルケニルコハク酸等のサイズ剤;デンプン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド等の紙力増強剤;硫酸バンド、カチオン性ポリマー等の定着剤;等を添加したものが一般に使用される。また、界面活性剤、エポキシ化脂肪酸アミド(上記サイズ剤用以外の)等の柔軟化剤を添加してもよい。あるいは、天然パルプに代えて合成パルプを使用して得られた紙も使用することができ、また、天然パルプと合成パルプの混合物から得られた紙も使用することができる。
【0016】
本発明では使用される紙は、コート紙、原紙の両面に表面サイズ剤が塗布されたものが好ましい。
【0017】
上記原紙表面に塗布される表面サイズ剤(または液)は、一般にポリビニルアルコール及び/又はその変性物の水溶液である。この水溶液は、更に、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、セルロースサルフェート、ゼラチン、カゼイン等の高分子化合物;塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の金属塩;グリセリン、ポリエチレングリコール等の吸湿性物質;染料等の着色剤;蛍光増白剤等の増白物質;苛性ソーダ、アンモニア水、塩酸、硫酸、炭酸ナトリウム等のpHコントロール剤を添加しても良い。また、必要に応じて、界面活性剤、エポキシ化脂肪酸アミド等の柔軟化剤及び顔料を添加してもよい。
【0018】
表面サイズ剤(液)を原紙に含浸させる方法は、サイズプレス、タブサイズあるいはゲイトロールコースターを用いて塗布することによって行なうことができる。
【0019】
上記紙の上に設けられる映写層は、ポリマーと白色顔料からなる層である。
ポリマーの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル(芳香族系ポリエステルが好ましい)、シンジオタクチックポリスチレン等のポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドを挙げることができる。
【0020】
本発明においては、映写層のポリマーは、ポリエステルが好ましく、特にアモルファスポリエステルが好ましい。映写層は、一般に紙に上記ポリエステルを溶融押出して、ラミネート(いわゆるエキストルージョンラミネート)することにより形成される。映写層と紙とのラミネートは、ホットメルトラミネート、ドライラミネートあるいはウエットラミネート等の方法を利用してもよい。
上記ポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールから合成される種々のポリエステル、及びカプロラクトンの開環重合により得られるポリエステル等、特に限定されることなく使用することができる。
【0021】
ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とそれらのアルキルエステル;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸とそれらのアルキルエステル、そしてトリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能性カルボン酸またはそれらのアルキルエステルなどを挙げることができる。
【0022】
グリコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びトリエチレングリコール等のアルキレングリコールの縮合体、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、分子量150〜20000のポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びビスフェノールAの両端にn個のエチレンオキサイドが付加したもの(n:1〜10)等を挙げることができる。
【0023】
上記材料から得られるポリエステルとしては芳香族ポリエステルが好ましい。さらに、主たる構成単位がエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレートからなるポリエステル(即ち、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN))、及びエチレンテレフタレート及びエチレン−2,6−ナフタレートの両方の単位を含むポリエステル(共重合体)を挙げることができる。特に、PETが好ましい。
【0024】
上記ポリエステルの映写層は、一般に紙に上記ポリエステルを溶融押出して、ラミネートすることにより形成される。このように溶融押出しされたポリエステルは、一般にアモルファス(非晶質)となる。このようなアモルファスポリエステルを得るための溶融押出条件は、ポリエステルの融点より20℃以上高い温度でダイ(例、Tダイ)より溶融されたポリエステル膜を、40℃以下に保持されたチルトロール上に、吐出することにより一般に行うことができる。チルトロール上に吐出されたポリエステル膜上に、ロールにより搬送された紙がラミネートされ、紙上に映写層が形成される。
【0025】
上記ポリエステルの溶融押出しは、紙の両面に行なうことができる。その際、粘着剤層は、ポリエステル樹脂層の上に設けられる。上記ポリエステルの紙両面への溶融押出しは、上記工程を二度繰り返して行なうことができる。
【0026】
溶融ポリエステルが吐出される紙の表面は、紙とポリエステル膜との接着性を向上させるために、紙(好ましくはコート紙、サイジング紙)表面を前もって表面処理(例、CO基を増加させる処理)を行うことが好ましい。
上記表面処理としては、ガス炎による火炎処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理、アルキルチタネート等によるアンカーコート処理を挙げることができる。特にコロナ放電処理が簡便で好ましい。コロナ処理の場合、水との接触角が70度以下になるように一般に処理される。
【0027】
アンカーコートに使用される材料としては、有機チタン系化合物、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂を挙げることができる。有機チタン系化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等のアルキルチタネート;ブトキシチタニウムステアレート等のチタンアシレート;チタニウムアセチルアセトネート等のチタンキレートなどを挙げることができる。イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等を挙げることができる。
【0028】
映写層に含まれる白色顔料の例としては、二酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルクが挙げられる。
【0029】
白色顔料の平均粒径は、一般に0.01〜5.0μmの範囲にあり、0.1〜3.0μmの範囲が好ましい。また上記顔料は、一般に映写層中にポリマーに対して1〜100重量%の量で含まれているのが一般的で、5〜60重量%の範囲が好ましい。上記顔料を含むポリエステルからなる映写層も、前記と同様にポリエステルと顔料を押出機(例、一軸または二軸混練押出機)内で溶融混合した後、溶融押出しをチルドロール上に行なって、紙とラミネートすることにより形成される。映写層は、上記ポリエステル等のポリマーの溶液、あるいはポリマーと顔料の分散液を、紙上に塗布、乾燥することにより形成しても良い。
【0030】
映写層の層厚は、5〜100μmの範囲(特に10〜80μmの範囲)が好ましい。上記厚さが5μm未満の場合、および100μmを超えた場合は、共に高速押出による紙とのラミネートが安定して行うことが困難となる。
【0031】
また、映写層の表面粗さ(Ra)は、カットオフ値0.8mmにおいて0.3〜3μmの範囲にあることが好ましい。
【0032】
映写層が設けられていない側の表面(裏面)には、粘着剤層を設けることができる。また、裏面にも映写層(あるいはポリマー層)が設けられている場合は、その上に設けられる。粘着剤層は、一般に、粘着剤溶液を塗布、乾燥することにより形成される。
【0033】
粘着剤の主成分としては、ゴム系ポリマー(例、スチレン/ブタジエン共重合体、ポリイソブチレン)、アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル等が使用される。通常、粘着付与剤(例、ロジン、ロジンエステル、エステルガム、クマロン樹脂、クマロン/インデン樹脂、テルペン樹脂、単価水素樹脂、油溶性フェノール樹脂);軟化剤(例、脂肪酸エステル、動植物油脂、ワックス、石油重質成分);及び顔料(例、亜鉛華)が更に上記主成分に加えられる。所望により、充填剤、老化防止剤、安定剤等を更に用いてもよい。
【0034】
粘着剤層の層厚は、一般に1〜50μmの範囲にあり、3〜30μmの範囲が好ましい。
【0035】
上記粘着剤層の表面には、離型紙等の離型シートが貼付されていることが好ましい。即ち、紙のおもて面に映写層が設けられ、裏面に粘着剤層及び離型シートが設けられた筆記ボード用シートは、例えば、ロール状に巻き取られ、使用に当たってはそのロールから必要な分だけカットして、離型シートを剥して黒板や壁等に貼りつけることにより、貼りつけた箇所を筆記ボードとして使用することができる。
【0036】
上記離型シートは、一般に、紙やプラスチックフィルムの表面にステアリン酸塩、シリコーン、石鹸等の離型剤の層を形成したものである。離型シートは、この離型剤の層を粘着剤層の表面に重ね合わせて、積層され、粘着剤層が露出しないように保護する。
【0037】
【実施例】
以下、実施例にて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)80重量部とタルク(長径方向の平均粒径:2.0μm)20重量部とを、二軸混練押出機で分散混合した後、Tダイから300℃で冷却されたチルドロール上に吐出して白色フィルムを形成させた後、チルドロールと隣接して設けられたニップロール上に送られた表面が火炎処理されたコート紙(坪量157g/m2 、厚さ160μm;エスプリコートFAM、日本製紙(株)製)にラミネートして、アモルファスPETのポリマー層(厚さ:30μm)をコート紙上に積層した。上記チルドロールは、Ra=15μmの表面粗さを有するものを用いた。
【0039】
次に、ポリマー層が設けられなかった紙の裏側の表面(裏面)に、下記の組成の粘着剤層形成用塗布液を、ナイフロールコータで塗布し、乾燥することにより、厚さ10μmの粘着剤層を形成して、紙の表面にポリマー層及び粘着剤層が形成された映写スクリーン用シートを作製した。次いで、この映写スクリーン用シートの粘着剤層を、別に用意した離型紙の離型剤層の面と接するようにしてロール状に巻き取って離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。
【0040】
(粘着剤層形成用塗布液)
スチレン/ブタジエン共重合体(固形分として) 100重量部
亜鉛華 5重量部
油溶性フェノール樹脂(固形分として) 12重量部
エステルガム(固形分として) 40重量部
パラフィンオイル 25重量部
クマロンインデン樹脂(固形分として) 40重量部
ノルマルヘキサン 500重量部
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様にして、アモルファスPETのポリマー層(厚さ:30μm)が一方の表面に設けられたコート紙を得た。ただし、コート紙としては、一方の表面に罫線が印刷されたものを使用した。
次いで、ポリエチレンテレフタレート(PET)80重量部とタルク(長径方向の平均粒径:2.0μm)20重量部とを、二軸混練押出機で分散混合した後、Tダイから300℃で冷却されたチルドロール上に吐出して白色フィルムを形成させた後、チルドロールと隣接して設けられたニップロール上に送られた上記インク受量層を有するコート紙の裏面にラミネートして、アモルファスPETとタルクからなるポリマー層(厚さ:30μm)がコート紙の両面に積層されたシートを得た。
【0042】
次に、一方の映写層上に、実施例1と同様にして厚さ10μmの粘着剤層を形成して、紙の両側にポリマー層及びその一方に粘着剤層が形成された映写スクリーン用シートを作製した。次いで、この映写スクリーン用シートの粘着剤層を、別に用意した離型紙の離型剤層の面と接するようにしてロール状に巻き取って離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。
【0043】
[実施例3]
実施例2と同様にして、アモルファスPETとタルクを含むポリマー層(厚さ:30μm)がコート紙の両面に積層されたシートを得た。ただし、コート紙としては、実施例1と同様、罫線が印刷されていないものを使用し、得られたシートの一方のポリマー層の表面に電子写真複写機で罫線を印刷した。
次いで、実施例2と同様に、罫線のない側のポリマー層上に粘着剤層を形成し、離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。
【0044】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)にポリプロピレン10重量%を加えた混合物を延伸することにより内部に空隙を形成して作成した白色フィルムを、加熱されたスチールロール上に送り、またスチールロールと相対して設けられたゴムロール上に、表面が火炎処理され、その上に接着剤層が形成されたコート紙(坪量157g/m2 、厚さ160μm;エスプリコートFAM、日本製紙(株)製)を送って積層することにより、白色延伸フィルムのポリマー層(厚さ:30μm)を有するコート紙を作製した。その後の工程は、実施例1と同様にして行ない、離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。
【0045】
[比較例2]
空隙を有する白色延伸フィルムの代わりに、ポリエチレンテレフタレート(PET)に炭酸カルシウム粉末10重量%を加えた混合物を延伸することにより得た白色フィルムを用いた以外は比較例1と同様にして離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。
【0046】
[比較例3]
空隙を有する白色延伸フィルムの代わりに、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに白色塗料の塗布層を設け、更に塗布層上に紫外線樹脂を硬化させた保護層を形成したフィルムを用いた以外は比較例1と同様にして離型紙付き映写スクリーン用シートを作製した。但し、ラミネートの際は、保護層と反対側の面を紙と重ね合わせた。
【0047】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた映写スクリーン用シートを以下のようにして評価した。
(1)光沢度
映写スクリーン用シートのポリマー層(映写層)の表面の光沢度を、JIS−K−7105−1981に記載された方法に従って、60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度について測定した。光沢計として、HANDY GLOSS METER (HG−246、スガ試験機(株)製)を使用した。
【0048】
(2)接触角
映写スクリーン用シートを25℃の恒温室に1時間放置した後、ポリマー層の表面の水に対する接触角を、25℃にて接触角測定器(協和界面科学(株)製)を用いて測定した。
【0049】
(3)表面粗さ(Ra)
映写スクリーン用シートのポリマー層(映写層)の表面粗さ(Ra)を、サーフコム(東京精密(株)製)を用いて、カットオフ値0.8mmにて測定した。
【0050】
(4)視認性
ホワイトボード用マーカー黒(PM92D(黒)太字、コクヨ(株)製)を用いて、上記シートのポリマー層表面に一辺3cmの正方形内に文字を書いた。その文字の正面から蛍光灯を照射して照度300ルックス程度にし、ポリマー層表面の法線から45度の方向で2m離れた位置からその文字を見て、その文字が判別ができるかどうかにより評価した。
AA:文字の判別が可能である。
BB:文字の判別が困難である。
CC:文字の判別が不可能である。
【0051】
(5)筆記性
ホワイトボード用マーカー黒(PM92D(黒)太字、コクヨ(株)製)を用いて、上記シートのポリマー層表面に一辺3cmの正方形内に文字を書いた。その文字に滲み、あるいははじきがあるかどうかを観察し、下記のように評価した。
AA:滲み、はじきが無い。
BB:滲みまたははじきがある。
【0052】
(6)消去性
ホワイトボード用マーカー黒(PM92D(黒)太字、コクヨ(株)製)を用いて、上記シートのポリマー層表面に一辺3cmの正方形内に文字を書いた。その文字を乾いた木綿布で2回ふき取り、その文字の消去が可能かどうかにより評価した。
AA:消去可能。
BB:消去不可能。
【0053】
(7)映写性
上記シートを壁面に貼り付け、このシート上に、光学濃度1.2の黒画像が印刷されたOHPフィルムの画像をOHPプロジェクター(富士写真フイルム(株)製)Fujix OHP EZ−2を用いて、2mの距離から映写した。
シート上に形成された映像について、その像が鮮明さについて下記のように評価した。
AA:映像が見る角度にかかわらず鮮明である。
BB:映像が見る角度によりやや不鮮明になる。
CC:映像が見る角度により不鮮明になる。
【0054】
上記評価結果を表1に示す。
【0055】
表1
────────────────────────────────────
光沢度 接触 表面 視認 筆記 消去 映写
60度 40度 角 粗さ 性 性 性 性
(%) (%) (度)(Ra;μm)
────────────────────────────────────
実施例1 13 12 74 0.9 AA AA AA AA
実施例2 13 12 74 0.9 AA AA AA AA
実施例3 13 12 74 0.9 AA AA AA AA
────────────────────────────────────
比較例1 30 40 100 0.1 BB BB AA CC
比較例2 30 20 45 0.1 BB AA BB CC
比較例3 75 65 74 0.02 CC AA AA CC
────────────────────────────────────
【0056】
表1から明らかなように、実施例で得られた映写スクリーン用シートは、映写性が優れており、映写スクリーン用シートとして使用することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の映写スクリーン用シートは、上記のように防眩性に優れているため、OHPプロジェクターや液晶プロジェクター等の映写機のスクリーンとして使用することができる。
【0058】
さらに、本発明の映写スクリーン用シートは、支持体に紙を使用しているため、既存の黒板や壁の表面に貼りつける際、その表面に対する追随性に優れており、施工が容易である。また、紙を使用しているので破棄した場合も分解し易く、また焼却も容易であることからエコロジーの点でも好ましいといえる。また、上記シートに汚れや、傷がついて、使用できなくなった場合、極めて容易に、しかも安価に張り替えることができる。
【0059】
特に、映写スクリーン用シートの映写層としてアモルファス芳香族ポリエステルフィルム(特にアモルファスPETフィルム)を用いた場合、罫線等を印刷する時の印刷適性が良好であり、またシートに高い剛度を与えるので施工の際、皺が発生し難いとの利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の映写用スクリーン用シートの代表的構成例を示す概略図である。
【図2】 本発明の映写用スクリーン用シートの別の代表的構成例を示す概略図である。
【符号の説明】
11、21 紙
12a、22a、22b ポリマー層(映写層)
12b ポリマー層
23 粘着剤層
24 離型シート
Claims (9)
- 紙の一方の表面にポリマーと白色顔料からなる映写層が設けられてなる映写スクリーン用シートであり、該映写層の表面の60度鏡面光沢度及び45度鏡面光沢度のいずれもが、1〜60の範囲にあり、かつその表面の水に対する接触角が50〜80度の範囲にあることを特徴とする映写スクリーン用シート。
- 上記映写層の表面のいずれの光沢度もが、1〜40の範囲にある請求項1に記載の映写スクリーン用シート。
- 上記映写層の表面のいずれの光沢度もが、1〜30の範囲にある請求項1に記載の映写スクリーン用シート。
- 上記ポリマーが、芳香族系ポリエステルである請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の映写スクリーン用シート。
- 上記映写層が、未延伸の芳香族系ポリエステルフィルムからなる請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の映写スクリーン用シート。
- 上記映写層の表面粗さが、カットオフ値0.8mmにおいて0.3〜3μmの範囲にある請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の映写スクリーン用シート。
- 上記映写層が、更に紙の他方の面にも設けられている請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の映写スクリーン用シート。
- 紙の他方の表面に粘着剤層が設けられている請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の映写スクリーン用シート。
- 紙の他方の表面と粘着剤層との間に、更に上記映写層と同一の構成を有するポリマー層が設けられている請求項8に記載の映写スクリーン用シート。
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