JP3797092B2 - 天然ガス車両の燃料容器保持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然ガスを燃料としてエンジンを駆動する天然ガス車両の燃料容器保持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日においては、環境への影響を考慮して天然ガスを燃料としてエンジンを駆動する天然ガス車両が実用化されるに至っている。この天然ガス車両の燃料に用いられる天然ガスは、圧縮されて燃料容器内に充填されることから、燃料容器は耐高圧性が要求される。このため、溶接技術を用いて車体に固定することは、燃料容器に対する部分的な脆弱化を招くことを考慮して、溶接技術を用いることなく、例えば図6及び図7に示す保持構造にて車体に保持するようにしている。
【0003】
すなわち、燃料容器100は、円筒状の胴部101と、この胴部101の両端部(前端部のみ図示)に設けられた半円球状のドーム部102、及びこのドーム部102の前端頂部に突設されたエンドプラグ103とで構成され、車体前後方向に配置されている。前記胴部101は、図外のバンドにより車体に固定されるとともに、車体に固定された矩形状の枠体からなる構造部材111により囲繞されている。
【0004】
この構造部材111の相対向する上枠部112と下枠部113には、各々前方に延びる計4本のねじ切りパイプ120の後端部が螺着されている。各ねじ切りパイプ120の前端部には、板状構造部材130がナット140により前方移動を規制された状態で取り付けられている。板状構造部材130には、前記ドーム部102の前端所要部分を受容し得る円形の開口部131が設けられており、この開口部131の縁部には、緩衝部材132が嵌着されている。
【0005】
かかる構成において、車両の前面衝突時に燃料容器100が前方移動した際には、ドーム部102の表面が緩衝部材132を介して板状構造部材130の開口縁部に圧接し、これにより燃料容器100の前方移動が規制される。また、このときドーム部102は、板状構造部材130に設けている開口部131のエッジに直接圧接することなく、緩衝部材132を介して圧接することから、ドーム部102が板状構造部材130との直接接触により傷付くこともなく、燃料容器100の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の燃料容器保持構造においては、燃料容器100の傷付きを防止しつつ前方移動を規制するために、4本ものねじ切りパイプ120、開口部131を有する板状構造部材130、及び緩衝部材132を必要としている。したがって、部品点数及び組み付け工数が多いばかりでなく、板状構造部材130に開口部131を形成し、その開口縁部に緩衝部材132を嵌着させる等、製造工程も複雑であり、これらに起因して製造コスト上のデメリットが生ずる。しかも、板状構造部材130の開口縁部とドーム部102との直接接触による傷付きを防止すべく、緩衝部材132が不可欠となる。
【0007】
さらに、燃料容器100は、前端部において周囲を4本のねじ切りパイプ120より取り囲まれることから、燃料容器100の径は、これら4本のねじ切りパイプ120より取り囲まれる空間内に収まることが要求され、燃料容器100の容量を大きく取ることができない。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構造でありながら、燃料容器の容量に制約を与えずに、燃料容器の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することのできる天然ガス車両の燃料容器保持構造を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明にあっては、円筒状の胴部と、該胴部の前端部に設けられた半円球状のドーム部、及び該ドーム部の前端に突設されたエンドプラグとを有する燃料容器が車体前後方向に配設される天然ガス車両において、
【0010】
前記燃料容器の胴部を車体に締結する一方、断面略円形の部材により形成され、前記エンドプラグの周囲に位置し、該エンドプラグの近傍にてその一側部側に回り込む前記胴部よりも小径の屈曲部と、この屈曲部の両端部に延設されて前記エンドプラブの他側部側に延びる一対の延在部とを有する移動規制部材を設け、該移動規制部材を前記延在部の端部にて車体に固定してある。
【0011】
かかる構成において、この天然ガス車両が前面衝突すると、燃料容器は慣性により前方移動する。すると、これに伴って、燃料容器の前端部に設けられているドーム部の前記屈曲部と対向している部位が該屈曲部と圧接する。ところで屈曲部及び延在部が設けられている移動規制部材は、該屈曲部の両端部に延設されてエンドプラブの他側部側に延びる一対の延在部の端部にて車体に固定されている。したがって、ドーム部が更に前進すると屈曲部は、ドーム部に押されて屈曲部の角度が前方に開くように変形され、エンドプラグに近づき、エンドプラグの一側部側に引っ掛かる。しかし、一対の延在部の端部は車体に固定されているため、燃料容器の前方移動が規制される。
【0012】
このとき、移動規制部材は、断面略円形の部材であってエッジを具備するものではないことから、緩衝部材を必要とすることなく、燃料容器の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することができる。また、移動規制部材は、パイプ材等の断面略円形の部材を曲げ加工して屈曲部を形成すれば容易に製造することができることから、製造工程が極めて簡単であり、部品点数及び組み付け工数は少ない。また、移動規制部材の延在部は、エンドプラブの他側部側に延びていることから、エンドプラグの一側部側、つまり燃料容器の一側部側は開放されており、燃料容器の容量に制約を与えることもない。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に従って説明する。図1に示すように、天然ガス車両1の床下には、圧縮天然ガスが充填される燃料容器2が車体前後方向(矢印Fは前方を示し、矢印Rは後方を示す)に配置されている。この燃料容器2は、図2〜図4に示すように、円筒状の胴部3と、この胴部4の両端部(前端部のみ図示)に設けられた半円球状のドーム部4、及びこのドーム部4の前端頂部に突設されたエンドプラグ5とで構成されている。エンドプラグ5には、燃料容器2に沿って前後方向に延在するリリーフ配管6の前端部が固定されている。
【0014】
また、天然ガス車両1の床下部には、前後方向延在する車体フレーム7が設けられており、この車体フレーム7には、前後一対の車体取付ブラケット8、9が固定されている。車体取付ブラケット8、9は、略L字状であって閉断面形状であり、垂直部10と水平部11とを一体的に有し、垂直部10にてボルト12により車体フレーム7に固定されている。
【0015】
また、両車体取付ブラケット8、9の水平部11間には、連結部材13が架橋されており、これにより両車体取付ブラケット8、9は連結部材13を介して連結されている。さらに、図5に示すように、前方側の車体取付ブラケット8の水平部11には、前方に突出する固定部14が設けられている。この固定部14は、上面壁15と、この上面壁15の両側縁に垂下する長尺壁16と短尺壁17とを一体的に有している。
【0016】
前記連結部材13には、マウントブラケット18が固定されている。このマウントブラケット18の両端部には、燃料容器2の胴部3周面に沿って張設されたバンド19が、張力調整ボルト20、20を介して係止されている。これにより、燃料容器2は胴部3においてバンド19により、マウントブラケット18及び連結部材13を介して、車体取付ブラケット8、9に締結されている。
【0017】
一方、燃料容器2の前部には、断面略円形のパイプ材を曲げ加工することにより製造された移動規制部材21が配置されている。この移動規制部材21には、図示のようにエンドプラグ5の周囲に位置し、エンドプラグ5の側方近傍にてその一側部側に回り込むとともにドーム部4の表面に対して離間を設けて配置され、燃料容器2の胴部3よりも小径であるU字状の屈曲部22と、この屈曲部22の両端部に延設されてエンドプラブ5の他側部側に延びる一対の延在部23、24とを有している。この両延在部23、24は、図3、図4に示すように、燃料容器2に沿って後方に延びる後部延在部25と、該後部延在部25と前記屈曲部22との間の前部延在部26とから構成されている。
【0018】
一方の延在部23の後端部には、図5に示したように断面略L字状の第1ブラケット27が溶接により固定されており、この第1ブラケット27には、ウェルドナット28が溶着されている。そして、前記固定部14の長尺壁16の長穴(図示せず)に挿通されたボルト29を、ウェルドナット28に螺合することにより、第1ブラケット27は固定部14に固着されている。
【0019】
また、他方の延在部24の後端部には、図2に示したように、平板状の第2ブラケット30が溶接により固定されており、この第2ブラケット30には前後方向に一対の長穴31が設けられている。この長穴31に挿通され、かつ、車体取付ブラケット8の垂直部10に溶着されたウェルドナット(図示せず)に螺合されたボルト32により、第2ブラケット30は車体取付ブラケット8の垂直部10に固着されている。
【0020】
以上の構成にかかる本実施の形態において、この天然ガス車両1が前面衝突すると、燃料容器2は慣性により前方移動する。すると、これに伴って、燃料容器2の前端部に設けられているドーム部4の前記屈曲部22と隙間を有して対向している部位が前方移動により該屈曲部22と当接する。ところでこの屈曲部22及び前部延在部26が設けられている移動規制部材21は、延在部23、24の後端部(後部延在部25の端部)にて車体取付ブラケット8に固定されている。したがって、ドーム部4が屈曲部22に当接後、更に前進すると屈曲部22はドーム部4に押されて屈曲部22の角度が前方に開くように変形され、エンドプラグ5に近づき、屈曲部22はエンドプラグ5の一側部側に引っ掛かり、又、延在部23、24の後端部は車体取付ブラケット8に固定されているため、燃料容器2の前方移動が規制される。
【0021】
このとき、屈曲部22とエンドプラグとが引っ掛かることにより生じた荷重は、後部延在部25を有する両延在部23、24に対して、せん断方向ではなく引っ張り方向に作用することから、移動規制部材21がパイプ材で成形されていても、充分な耐荷重性を確保することができる。
【0022】
また、移動規制部材21は、断面略円形のパイプ材であってエッジを具備するものではないことから、緩衝部材132(図7参照)を必要とすることなく、燃料容器2の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することができる。さらに、移動規制部材21は、パイプ材を曲げ加工して屈曲部22等を形成すれば容易に製造することができることから、製造工程が極めて簡単であり、部品点数及び組み付け工数が少ない。また、移動規制部材21の延在部23、24は、エンドプラブ5の他側部側に延びていることから、エンドプラグ5の一側部側、つまり図3において燃料容器2の一側部側は開放されており、燃料容器2の容量に制約を与えることはない。
【0023】
しかも、移動規制部材21は、屈曲部22がエンドプラグ5の側方近傍にてその一側部側に回り込む配置形態であれば、エンドプラグ5を中心に360°いずれの方向に配置しても、前述したように燃料容器2の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することが可能となる。したがって、移動規制部材21はエンドプラグ5を中心に360°の配置自由度を有し、これにより異なる車体構造であっても汎用的に適用することができる。
【0024】
加えて、保守あるいは修理に際して、移動規制部材21あるいは燃料容器2を取り外す必要が生じた場合には、前記ボルト29、32を各々螺脱させる。これにより、移動規制部材21と車体取付ブラケット8及び固定部14との結合が解除されて、移動規制部材21を取り外すことができる。このとき、移動規制部材21は、両端部に個別の延在部23、24を有する開放状の部材であることから、リリーフ配管6を取り外さなくても、移動規制部材21を取り外すことができる。
【0025】
また、再度移動規制部材21を取り付ける場合にも同様に、リリーフ配管6を取り外さずに、移動規制部材21の一方の延在部24をリリーフ配管6の下方に差し入れてから、前記ボルト29、32による固定作業を行えば、リリーフ配管6を取り外すことなく、再装着を行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、移動規制部材21をパイプ材で形成するようにしたが、断面略円形の部材であればパイプ材に限らず、中実状の部材であってもよい。また、屈曲部22の形状はU字状に限らず、L字状でも良いし、あるいはV字状であってもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、断面略円形の部材により形成され、燃料容器の前端部に設けられたエンドプラグの周囲に位置し、該エンドプラグの近傍にてその一側部側に回り込む前記燃料容器の胴部よりも小径の屈曲部と、この屈曲部の両端部に延設されて前記エンドプラブの他側部側に延びる一対の延在部とを有する移動規制部材を設け、該移動規制部材を前記延在部の端部にて車体に固定するようにした。したがって、断面略円形の部材を曲げ加工する簡易な構成により、前面衝突時における燃料容器の前方移動を規制することが可能となる。よって、部品点数及び組み付け工数を少なくして、製造コストの低減を図りつつ、前面衝突時における燃料容器の前方移動を規制することができる。
【0028】
また、断面略円形の部材を用いるようにしたことから、緩衝部材を必要とすることなく、燃料容器の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することができる。さらに、移動規制部材は、前記屈曲部と前記一対の延在部とからなり、延在部は、エンドプラブの他側部側に延びていることから、エンドプラグの一側部側、つまり燃料容器の一側部側は開放されており、燃料容器の容量に制約を与えることはない。よって、燃料容器の容積を大きくとることも自在に可能となる。
【0029】
さらに、移動規制部材は、屈曲部がエンドプラグの側方近傍にてその一側部側に回り込む配置形態であれば、エンドプラグを中心に360°いずれの方向に配置しても、燃料容器の傷付きを防止しつつ前方移動を規制することが可能となる。したがって、移動規制部材はエンドプラグを中心に360°の配置自由度を有し、これにより異なる車体構造であっても汎用的に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)本発明の一実施の形態における燃料容器の配置形態を示す側面透視図、
(B)は同底面図である。
【図2】同実施の形態を示す斜視図である。
【図3】同実施の形態を示す側面図である。
【図4】同実施の形態を示す正面図である。
【図5】図2のA部拡大斜視図である。
【図6】従来技術を示す斜視図である。
【図7】図6のSA−SA線断面図である。
【符号の説明】
1 天然ガス車両
2 燃料容器
3 胴部
4 ドーム部
5 エンドプラグ
7 車体フレーム
8 車体取付ブラケット
9 車体取付ブラケット
19 バンド
21 移動規制部材
22 屈曲部
23 延在部
24 延在部
Claims (1)
- 円筒状の胴部と、該胴部の前端部に設けられた半円球状のドーム部、及び該ドーム部の前端に突設されたエンドプラグとを有する燃料容器が車体前後方向に配設される天然ガス車両において、
前記燃料容器の胴部を車体に締結する一方、断面略円形の部材により形成され、前記エンドプラグの周囲に位置し、該エンドプラグの近傍にてその一側部側に回り込む前記胴部よりも小径の屈曲部と、この屈曲部の両端部に延設されて前記エンドプラブの他側部側に延びる一対の延在部とを有する移動規制部材を設け、該移動規制部材を前記延在部の端部にて車体に固定したことを特徴とする天然ガス車両の燃料容器保持構造。
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