JP3796026B2 - 基礎杭と基礎フーチングの接合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート造の構造物における基礎杭と基礎フーチングとの接合技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート造の構造物における基礎は、従来技術においては例えば図5に示すような構造を有する。まず参照符号101は地中に構築された鉄筋コンクリートからなる基礎杭であり、この基礎杭101の杭頭101a上には基礎フーチング102が構築され、この基礎フーチング102から鉛直上方に躯体のコンクリート脚柱103が、また隣接する基礎フーチング102同士を連結する基礎梁104が水平方向に延在されている。
【0003】
基礎フーチング102の構築においては、基礎杭101が現場造成杭である場合、この基礎杭1の杭頭101aの上端面から多数の杭頭主筋101bを突出させ、杭頭101a上に水平断面面積がこの杭頭101aの水平断面面積よりも大きな基礎フーチング102を構築して前記杭頭主筋101bを埋設状態とする。すなわち、多数の杭頭主筋101bを介して杭頭101a上に基礎フーチング102を定着すると共に、基礎フーチング102の水平断面面積を杭頭101aの水平断面面積よりも大きくすることによって接合強度を増大させ、剛接合としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来技術による基礎杭と基礎フーチングの接合構造においては、次のような問題が指摘される。
(1) 基礎杭101の杭頭101aと基礎フーチング2とを剛接合とするために多数の鉄筋(杭頭主筋101b)が必要である。
(2) 基礎フーチング102の施工の際に、基礎杭101の杭頭101aの外周部から突出した多数の杭頭主筋101bによって、例えば前記杭頭101aの上端面の斫り(はつり)等を行うことが容易でなく、作業の阻害になっていた。
(3) 基礎フーチング102が杭頭101aに剛接合となっており、しかも体積が大きいので、地震の際に基礎杭101に生じる水平応力が杭頭101aに集中し、このため、各基礎フーチング2間を繋いで柱脚103のモーメントや水平剪断力に抵抗させるための基礎梁104もその断面面積を大きくしたり鉄筋を多く用いる等して著しく強度を高める必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような事情のもとになされたもので、その技術的課題とするところは、補強用の鉄筋等、使用材料を節減すると共に、施工を容易にし、しかも十分な強度を有する建築物の基礎構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。
すなわち本発明に係る基礎杭と基礎フーチングの接合構造は、鉄筋コンクリートからなる基礎杭とこの基礎杭上に構築された基礎フーチングとに跨がって複数のアンボンドPC鋼材が挿入され、このアンボンドPC鋼材は、下端部が前記基礎杭のコンクリート内に定着されると共に上端部が前記基礎フーチングに緊張手段を介して係止され、中間部分が前記基礎杭と基礎フーチングの対向面の中央部で収束するように「く」の字形に屈曲した状態で挿入される。本発明の構成において、アンボンドPC鋼材は緊張手段によって所要の緊張力を与えられ、基礎杭の杭頭と基礎フーチング間での水平剪断力及び引き抜き力に対して抗力を発揮するものである。そしてこのアンボンドPC鋼材は、長手方向中間部分が前記基礎杭と基礎フーチングの対向面の中央部で収束するように「く」の字形に屈曲した状態で挿入されているため、ほぼピン接合に近い状態となり、多数の杭頭主筋で定着する場合のような剛接合とはならないため、地震等の際に基礎杭に生じる水平応力の杭頭への集中が有効に防止される。
【0007】
本発明において付加される一層好ましい構成においては、基礎杭の杭頭上端面と基礎フーチングの下端面との間に緩衝ゴム材が介在される。この緩衝ゴム材は基礎杭の杭頭と基礎フーチングとの固定度を小さくするので、地震等において地盤から基礎上の躯体への伝達震動を小さくし、また、この時に杭頭に生じる水平方向の曲げ応力を有効に吸収する。
【0008】
更に、本発明において付加される一層好ましい他の構成においては、前記基礎フーチングの水平断面面積が前記基礎杭の水平断面面積よりも小さいものとする。すなわち、上述のように、剛接合としないために基礎フーチングの水平断面面積を基礎杭の水平断面面積よりも小さくすることで、この基礎フーチングの体積が減少して水平方向の加速度が加わった際の慣性質量が小さくなり、このことも、地震等の際に基礎杭に生じる水平応力の杭頭への集中を有効に防止するのに大きく寄与する。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1乃至図4は本発明に係る基礎杭と基礎フーチングの接合構造の好ましい一実施形態を示すものである。まず図1及び図2において、参照符号1は現場造成の鉄筋コンクリート製の基礎杭、参照符号2はこの基礎杭1の杭頭1a上に構築された独立基礎フーチング、参照符号3はこの基礎フーチング2から鉛直上方に構築された躯体の柱脚、参照符号4は隣接する基礎フーチング2同士を水平に連結する基礎梁である。なお、基礎杭1、基礎フーチング2及び基礎梁4は地中に構築されている。
【0010】
基礎杭1は水平断面が円形であって、外周近傍に円周方向所定間隔で鉛直方向に延びる杭主筋11及びこれを取り巻く多数の肋筋12等の鉄筋が埋設されている。基礎フーチング2は、その水平断面が、対角線長さが基礎杭1(杭頭1a)の直径とほぼ等しい略正方形であって、すなわち基礎フーチング2の水平断面面積は杭頭1aの水平断面面積よりも小さいものとなっている。そしてこの基礎フーチング2の高さは従来と特に変わらないから、その体積は、図5に示す従来のものに比較して著しく小さくなっている。
【0011】
柱脚3は水平断面が基礎フーチング2の水平断面より小さい略正方形であって、外周近傍に所定間隔で埋設された鉛直方向に延びる柱主筋31及びこれを取り巻く多数の肋筋32等の鉄筋を有する。基礎梁4はその長手方向と直交する断面が略長方形であって、外周近傍に所定間隔で埋設された前記長手方向に延びる梁主筋41及びこれを取り巻く多数の肋筋42等の鉄筋を有する。柱脚3の柱主筋31の下端31aは基礎フーチング2の下端近傍に達しており、基礎梁4の梁主筋41の両端(図では一端のみ示される)41aは柱脚3の下端近傍及び基礎フーチング2の下端近傍に達しており、両主筋31,41は溶接等によって結合されている。
【0012】
基礎杭1の杭頭1aと基礎フーチング2の間には、緩衝ゴム材5が介装されている。また、この実施形態においては杭主筋11の上端部11aによって基礎フーチング2を基礎杭1上に定着しているものではなく、前記杭頭1aと基礎フーチング2との連結は複数(図示の例においては8本)のアンボンドPC鋼材6によって行われている。
【0013】
アンボンドPC鋼材6は、良く知られているように、PC鋼撚り線にグリースを塗布し、その外周にポリエチレンシース63を被覆したもので、それぞれ基礎杭1の杭頭1aと基礎フーチング2に跨がって埋設され、下端部は定着具61を介して基礎杭1(杭頭1a)のコンクリート内に定着されており、基礎フーチング2の上肩の四隅近傍に達する上端部には緊張金物62が取り付けられており、この緊張金物62によって適宜緊張力が付与された状態に係止されている。前記各アンボンドPC鋼材6は、図3に一層明確に示されるように、緩衝ゴム材5の中央部を貫通して、基礎杭1と基礎フーチング2の対向面中央部で互いに収束するように「く」の字形の屈曲状態で挿入されている。
【0014】
この実施形態においては、先に説明したように、基礎杭1の杭頭1aと基礎フーチング2が、その対向面中央部で互いに収束するように挿入されたアンボンドPC鋼材6によってピン接合に近い状態となっており、また基礎フーチング2の体積、言い換えれば質量が従来に比較して著しく小さいので、水平方向の加速度が加わった際の基礎フーチング2の慣性質量が小さいものとなる。しかも、前記杭頭1aと基礎フーチング2との間に介在している緩衝ゴム材5はその弾性によって伝達震動を減少させる作用を有する。このため、地震等の際に基礎杭1に生じる水平方向の曲げ応力の杭頭1aへの集中が有効に防止される。またこのため、各基礎フーチング2間を繋いで柱脚3の傾斜方向のモーメントや剪断力に抵抗させるための基礎梁4の強度も従来より小さくて良く、すなわち基礎梁4の断面面積を従来より小さくしたり、鉄筋による補強量を減少させることができる。
【0015】
上記接合構造とするには、まず現場造成(地盤の鉛直穿孔及びコンクリートの現場打ち)によって基礎杭1を構築する際に、下端部に定着具61を取り付けた複数のアンボンドPC鋼材6を、その下半部が基礎杭1の杭頭1aのコンクリート中に埋設状態となるように、かつ杭頭1aの上端中央位置で各アンボンドPC鋼材6が互いに収束状態となるように配設する。次に基礎杭造成用コンクリートを打設してそれが硬化したら、杭頭1aの上面の斫り(はつり)作業を行うが、杭頭1aの上面外周部には杭主筋11が突出しておらず、中央部からアンボンドPC鋼材6の束が突出しているだけであるため、作業が容易である。また、アンボンドPC鋼材6は、下端の定着具61のみが、硬化したコンクリートに定着一体化される。
【0016】
上記斫り作業後は、基礎杭1の杭頭1aの上面に緩衝ゴム材5を敷設し、このとき予め前記緩衝ゴム材5に開設された孔に、前記杭頭1aの上面から突出したアンボンドPC鋼材6の上半部を通す。次に基礎フーチング2、柱脚3及び基礎梁4を構築するための型枠(図示省略)を組み立て、この型枠内に柱主筋31、梁主筋41及び肋筋32,42等の配筋作業を行う。先に説明したように、基礎フーチング2は従来に比較して体積が小さく、しかも基礎梁4の断面面積も従来より小さくても良いので、その構築のための型枠材やコンクリートの量を節減できるばかりでなく、基礎フーチング2及び基礎梁4を構築するための地盤の根切量も少なくて済む。
【0017】
基礎フーチング2を構築するための型枠の組立や配筋作業に際しては、各アンボンドPC鋼材6の上半部を互いに外側へ開くように、すなわち図3のように屈曲させ、シース63の上端から突出したアンボンドPC鋼材6本体の上端部を基礎フーチング2の上肩の四隅となる部分に位置させ、前記各アンボンドPC鋼材6の上端部に凹部形成部材(図示省略)を嵌め込む。そして前記型枠内にコンクリートを打設することによって、基礎フーチング2、柱脚3及び基礎梁4を構築する。
【0018】
打設したコンクリートが硬化して基礎フーチング2等が構築されたら、型枠を撤去する。そして図4に示すように、基礎フーチング2の上肩四隅部分に埋設状態となっている凹部形成部材をアンボンドPC鋼材6の上端から取り外すことによって形成される凹部2a内で、クサビ状の緊張金物62を緊張することによって各アンボンドPC鋼材6に適宜緊張力を与える。またこれによって同時に、緩衝ゴム材5に適当な圧縮力が与えられる。その後、前記凹部2a内はモルタル詰めされる。
【0019】
なお、本発明は、図示の実施形態によって限定的に解釈されるものではない。例えば、アンボンドPC鋼材6の本数等は必要な連結強度等を考慮して決められるものであり、また、基礎フーチング2の断面形状における対角線長さと杭頭1aの直径が必ずしも略同等である必要はない。
【0020】
【発明の効果】
本発明に係る基礎杭と基礎フーチングの接合構造によると、次のような効果が実現される。
(1) 基礎杭の杭頭と基礎フーチングが剛接合とならず、しかも基礎フーチングの体積を従来より小さくすることができるので、地震等の際に基礎杭に生じる水平応力の杭頭への集中を有効に防止することができる。
(2) 緩衝ゴム材が伝達振動を吸収するので、地震等の際に生じる建物の衝撃を緩和する効果がある。
(3) 現場造成の基礎杭の杭頭に設ける鉄筋量を減少させることができ、しかも杭頭の上端面の斫り(はつり)等の作業が容易になる。
(4) 基礎フーチング及び基礎梁の体積を減少できるので、その構築に使用する型枠材や、コンクリートの打設量や、地盤の根切量を少なくなり、施工コストを節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基礎杭と基礎フーチングの接合構造の好ましい一実施形態を示す部分的な鉛直断面図である。
【図2】図1におけるII−II線の位置で切断した水平断面図である。
【図3】上記実施形態におけるPC鋼材の挿入形態を示す説明図である。
【図4】上記実施形態においてPC鋼材に緊張力を与える緊張金物の挿入空間の形成方法を示す説明図である。
【図5】従来技術による基礎杭と基礎フーチングの接合構造を示す部分的な斜視図である。
【符号の説明】
1 基礎杭
1a 杭頭
2 基礎フーチング
5 緩衝ゴム材
6 アンボンドPC鋼材
61 定着具
62 緊張金物
Claims (3)
- 鉄筋コンクリートからなる基礎杭とこの基礎杭上に構築された基礎フーチングとに跨がって複数のアンボンドPC鋼材が挿入され、
このアンボンドPC鋼材は、下端部が前記基礎杭のコンクリート内に定着されると共に上端部が前記基礎フーチングに緊張手段を介して係止され、中間部分が前記基礎杭と基礎フーチングの対向面の中央部で収束するように「く」の字形に屈曲した状態で挿入されていることを特徴とする基礎杭と基礎フーチングの接合構造。 - 基礎杭の杭頭上端面と基礎フーチングの下端面との間に緩衝ゴム材が介在されていることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭と基礎フーチングの接合構造。
- 基礎フーチングの水平断面面積が基礎杭の水平断面面積よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の基礎杭と基礎フーチングの接合構造。
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