JP3794983B2 - X線顕微鏡の電子加速空間構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線を照射し光電変換面に形成させた陰影に対応して発生する電子像を加速して拡大投影することによりX線像を観察するようにしたX線顕微鏡における電子加速空間の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、X線顕微鏡は、波長が短く透過力の強いX線を光源として物体の高分解能透過像を得ることができる測定器として使用されてきた。
X線顕微鏡には、像を拡大するためフレネル・ゾーンプレートや斜入射ミラーなどのX線結像素子を用いてX線ビーム自体を拡大収束させる方式があるが、収束力が小さくX線拡大光学系の焦点距離が長くなるため装置が大きくなったり、像拡大率を任意に調整できないため対象物の観察位置を特定する光学顕微鏡などを併用する必要があるなどの問題があった。また、集光効率が悪いため放射光のような強力なX線光源を必要とした。
【0003】
一方、点光源の近くに試料を置いて光源から発散して試料を透過したX線の投影像を観察する投影拡大法もあるが、X線源の大きさによる半影ぼけと試料による回折ぼけを避けることができないため、分解能の実用的な限界は0.1〜0.2μm程度とされ、測定対象に大きな制約があった。
なお、感光板に試料を密着させてX線を照射し、現像後の画像を光学系で拡大して観察する密着法は、X線拡大光学系を使用しないので収差が無く試料と感光板が密着しているのでぼけが小さいため、原理的に容易に高分解能画像を得ることができるが、現状では感度が極めて低いため強力なX線源が必要となる。また、X線画像を拡大して観察するためには、真空容器から感光板を取り出し現像した上で、さらに別の光学顕微鏡などで観察するので、繁雑な作業を必要とする。
【0004】
このような従来のX線顕微鏡の欠点を克服するものとして、本願出願人は既に特願2001−235678により、光電変換面に試料を密着させて背後からX線を照射し光電変換面から発生する電子を引き出し拡大して電子検出素子面に結像させて可視像として提示する新しい形式のX線顕微鏡装置を開示している。
開示されたX線顕微鏡は、図4に原理を示すように、試料を透過したX線を光電変換素子に当てて発生させた電子を強力な電界で引出して加速したのち、電子流を対物電磁レンズと投射電磁レンズを用いた電子イメージ拡大装置により拡大して蛍光面やCCD素子面など電子線検出素子面に投影して可視像化するものである。
【0005】
開示されたX線顕微鏡によれば、現像などの手間をかけずに、リアルタイムで高分解能のX線透過画像を得ることができる。
また、従来のX線顕微鏡では硬X線を用いたコントラストの明確な像しか得られなかったが、開示装置では試料を透過したX線を光電変換素子で電子に変換するので、X線吸収能の差を反映した濃淡画像を作成することができ、また軟X線による観察も可能である。このため、取得するX線像の情報量が格段に増大し、また生物の生体観察を行うこともできるようになった。
【0006】
開示装置は、収束力の弱いX線光学系を利用するものと異なり、十分収束力のある電子イメージ拡大装置を使用するため装置全体が小型になり、試料を光電変換面に密着してセットするのでぼけのないX線透過像を得ることができる。
さらに、開示X線顕微鏡の電子イメージ拡大装置は、電磁コイルの電流を調整することにより画像倍率を変更することができるので、微小な部分を観察する場合にも低い倍率で目標位置を確認してから倍率を上げて目的の画像を得るようにして対象を的確にとらえて観察することができる。
【0007】
なお、磁界レンズにおいても、光学レンズと同様に、物体距離aと映像距離bおよび倍率Mの間にM=b/aの関係がある。したがって、対物電磁レンズと2個の投射電磁レンズを組合わせたときの顕微鏡の倍率Mは、
M=M=(b/a)(b/a)(b/a)
で求められる。ここで、添字1、2、3はそれぞれ対物レンズ、第1の投射レンズ、第2の投射レンズを表す。
【0008】
図5に上記X線顕微鏡の1例における磁気レンズ群を通過するときの電子軌道解析結果を示す。図は横軸に適当に基点を決めて測った電子ビーム軸方向の距離、縦軸に軸からの距離を示す。電子は磁場により回転しながら収束拡大するが、図は、回転を無視して電子の運動を軸からの距離の変化のみで表示したものである。
ここでは、対物電磁レンズをほぼ27mmの位置、第1投射電磁レンズをほぼ130mmの位置、第2投射電磁レンズをほぼ185mmの位置、画像観察部をほぼ210mmの位置に設置した場合について解析している。
【0009】
半径0.01mmの電子ビームは最大磁束密度が約0.14Tになる対物レンズで一旦絞られた後拡大してピーク磁束密度が約−0.2Tの第1投射レンズで再び拡大され、ピーク磁束密度が約+0.2Tの第2投射レンズで半径が約2.25mmの電子ビームまでに拡大されて、蛍光面で観察される。画像としての総合倍率は、約225倍になる。
なお、磁界レンズでは電子が回転するため、逆方向に励磁した1対のコイルを投射レンズとして使用することにより回転を相殺して、正立した画像を得るようにしている。
【0010】
高倍率で高性能のX線顕微鏡装置を少しでも小型化するため、電磁レンズの倍率を高める必要がある。電磁レンズは、最大磁束密度が高いほどまたピークの幅が狭いほど強いレンズとなり倍率が高くなる。したがって、強いレンズをつくるには、コイルの巻数や励磁電流を大きくすること、ポールピースのギャップを狭くすること、内径を小さくすることなどが効果がある。
【0011】
試料の位置は、対物レンズと投射レンズの組合わせによる拡大像が蛍光面に結像するように決める。装置構造を単純化するため、試料と電磁レンズと蛍光面の位置は変えないことが好ましい。
たとえば、投射レンズを高倍率にしておいて、ピントが甘いときは、対物レンズの電磁コイルの励磁電流を調整し倍率Mを変化させてピントを合わせる方法を使用する。
なお、設計と調整の簡単化のため、2個の投射レンズを同じ形状とし同じ励磁電流を流すようにすると、それぞれ同じ倍率になり、M=Mが成立する。
【0012】
ところで、光電変換を利用したX線顕微鏡では、光電変換面で発生する電子に強い電界を掛けるほど、電子の速度が速くなり波長が短くなるので、分解能があがり、ぼけ・歪みなどの収差も低減する。しかし、磁界による偏向力は速度に比例するにもかかわらず、電子の慣性力が速度の2乗に比例して増加するので屈折量が増加しないため、電磁レンズの倍率は電子速度が高くなると低下する。
したがって、同じ倍率のまま電子速度を高めて分解能や収差を改善しようとすると、装置が大型になる問題がある。
【0013】
また、対物電磁レンズの倍率Mを大きくして光電変換面とレンズの間の物体距離aを小さくすると、光電変換面で発生する電子を引出して加速する電子加速空間が短くなる。電子を十分加速するためには強い電界が必要であるが、小さい電極間距離に高電位差が生じると放電が起って必要な電界状態を作ることができなくなり、結局十分な効果が得られない。
なお、光電変換面に生ずる電子像を引出すときに光電変換面から電子が放出される方向に分布があるため、ぼけなど収差が生じやすい。これを防止するため、電子が広がらないうちに、対物電磁レンズを作用させて収束させることが好ましい。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、X線を照射して試料の影を光電変換面に投影することにより生成した電子像を加速して蛍光面に拡大投影することによりX線像を観察するようにしたX線顕微鏡において、電子速度を十分高めると共に高倍率の対物電磁レンズの作用を備えた電子加速空間構造を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のX線顕微鏡の電子加速空間構造は、アノードと試料ホルダに挟まれ1対の円環状のポールピースを外側に配したもので鏡筒の入口に設けられる。
導電性のアノードは、非磁性体物質から形成され、中心部に鏡筒に接続する開口が設けられた平坦な底面と、鏡筒の軸を中心軸とし軸に平行な円筒形の側壁を有する。
ポールピース上極は内周面をアノードの側壁の外周に接するように配置され、ポールピース下極は鏡筒の軸に垂直な円環状の平面を有し、この平面がアノードの底面の外壁に対向するように配置されている。
【0016】
また、試料ホルダはアノード側壁の内径より小さい径を持った導電性の筒体で、軸に対してほぼ垂直に形成され中心部に開口を設けた前面を有し、試料ホルダの試料の位置が鏡筒の軸とほぼ一致するようにかつ前面がアノードの底面に平行に設置されている。
この電子加速空間では、試料ホルダとアノードの間に電位差を与えると中心軸に沿って平行な電界が発生し、さらにポールピース上極とポールピース下極の間に磁束を発生させると試料ホルダとアノードの間に回転対称な磁場が発生する。
【0017】
本発明の電子加速空間構造は、筒型の試料ホルダと円筒型のアノードが回転対称に組合わされ、かつ試料ホルダの前面とアノードの底面がほぼ平行に対向するように配置されているので、試料ホルダとアノードの間に発生する電界は中心軸近傍では十分に平行になっている。
試料ホルダ前面部には光電変換面が把持されていて、開口の奥に電子放出面が露出しているので、放出された電子は平行電界によって光軸から逸脱することなく光軸に沿って直線的に引出され加速される。
なお、試料ホルダの外径はアノードの側壁内径より小さくするので、アノードの内壁面と試料ホルダの外面の間に高電圧が掛っても放電しないだけの距離を確保することができる。
【0018】
また、ポールピース上極とポールピース下極の間に形成される磁気ギャップにより対物レンズ用磁界が構成される。
ポールピース上極はアノード側壁の外に配置され内周面が加速空間の軸をめぐるように取囲み、ポールピース下極はアノード底面の外から加速空間の内側に向いて配置されているため、ポールピース上極の内周面とポールピース下極の平面の間に発生する磁束のため、電子加速空間内に強い磁場勾配が存在するようになる。また、光軸に沿って観察したときに、磁束密度のピークを光電変換面に近い位置に配置することができる。
【0019】
このように、本発明の電子加速空間構造では、加速用電界が働く加速空間内に対物レンズ用磁界を重畳して配置するので、十分な電子加速領域を確保すると共に電子流が拡散する前に収束させることにより結像電子量を確保して収差を減少させ、また低速領域で対物レンズを作用させるため十分大きな倍率の画像を容易に形成することができる。
【0020】
なお、試料ホルダとポールピース上極の位置は、試料ホルダの前面が中心軸上、ポールピース上極の内周面に囲まれるように配置することが好ましい。
対物レンズ用磁界を強くするためには、ポールピース上極の先端面とポールピース下極の側面の距離が短いほどよいが、アノードを挿入するため両者間距離を十分短くすることはできない。このため、光電変換面がポールピースの端面に近接するように配置して、磁界の強化をある程度抑制しても光電変換面により近い位置に磁束密度のピークが出現するようにすることが好ましい。
【0021】
また、試料ホルダの前面には、中心位置にX線が照射する光電変換面を露出させる開口が設けられるが、この開口部は緩やかに面取りして、アノード底面にほぼ平行に対向する陰極面としかつ鋭角縁を除去して、電子加速空間における平行電界を乱さないようにすることが好ましい。
さらに、光電変換面を一体に組込んだ試料スライドを使用する場合は、試料スライドを受け溝に置いて軸部に穴の空いたキャップをねじ込んで試料スライドを前面側から押えるようにすることが便利である。このような構造を有する試料ホルダを用いるときは、キャップの前面をほぼ平坦に形成してアノード底面に対向する陰極面とすることが好ましい。
【0022】
なお、ポールピース上極の内周面の軸方向内側の側面はテーパ状に形成することが好ましい。ポールピースの面から発生する磁束が、できるだけ光電変換面に近いところに集中するようにすることにより、電子加速空間内により好ましい磁束密度分布を形成させることができる。
また、アノードの鏡筒に接続する開口部にピンホールを有するアパーチャーピースを取付けることが好ましい。普通の光学系と同様、中心軸近傍の電子ビームのみを鏡筒内に受入れるようにすることで、収差を小さくする効果がある。
【0023】
さらに、鏡筒の外壁の少なくとも端部が前記アノードと一体に形成されていることが好ましい。
鏡筒は電子ビームの通過する高真空通路を形成するもので、アノード底面との直角度が重要になる。また、電子加速空間との磁気レンズが形成される部分では磁束密度を高めるため極めて薄く形成されている。また、磁気コイルなどを設置する大気圧部分に対する隔膜になっている。したがって、従来は、鏡筒をアノードに溶接接合していたが、アノードに対して正確に直角になるように、かつ真空漏れが生じないようにし、また、接合部に突起があると平行電界の形成に障碍となる放電が起るのでバリが生じないようにするなど、高度の製作技術が必要であった。
しかし、1個の金属塊から削り出してアノード部分と鏡筒を一体に形成することにより、真空漏れやバリなどの問題が無くなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、本実施例のX線顕微鏡用電子加速空間構造を示す断面図、図2は電子加速空間における電界の状態を示す図面、図3は電子加速空間における磁束密度と電子ビーム軌跡の関係を説明する図面である。
本発明の電子加速空間構造は、X線像を電子像に変換して観察するX線顕微鏡において、光電変換面で発生する電子を加速する空間で、電磁レンズが配置された鏡筒の入口に配置される。
本実施例の電子加速空間構造は、対物レンズを形成するポールピースが周囲に配置されて初段の収束拡大工程を加速空間内で行うことに特徴がある。
【0025】
図1に示すように、電子加速空間1は、筐体11、試料ステージ13、試料ホルダ21、アノード31により囲まれた空間である。
筐体11は、試料の交換を行うときに使用する試料室2の空間をかこうもので、電磁コイルなどを収納した電子イメージ拡大部の筐体と接合されている。筐体11は、電子線軌道を中心とした円形の穴を有する仕切壁12を備え、試料ステージ13が仕切壁12に固定されている。試料ステージ13は試料ホルダ21を挿入して固定するもので、電気絶縁性材料で形成され、試料ホルダ21の軸がX線中心軸とほぼ一致するように支持し、軸が一致しないときは軸方向を維持しながら軸位置を調整することができる機構を備えている。
【0026】
試料ホルダ21は筒形をしており、中心軸に沿ってX線が通過する孔が設けられていて、先端にホルダピース22を備える。ホルダピース22の先端にはキャップ23が係合して試料ホルダ21の先端面に設けられた溝にはめ込まれた試料スライド24を固定することができるようになっている。
試料スライド24は、X線を透過するコロジオン膜などの基板の上に導電性のある金と光電変換性能のよいヨウ化セシウムなどからなる2重薄膜層を蒸着して形成したもので、X線透過薄膜の上に観察する試料を載せて、試料を載せた面がX線が入射する側に来るようにセットする。
なお、ホルダピース22は試料ホルダ21の本体にネジで係合し、押えナットで締め固めることによって、試料スライド24の軸方向の位置を調整して固定できるようになっている。
【0027】
仕切壁12と電磁コイル41を収納する筐体の間にアノード31のフランジ部分が挟持されている。アノード31は、中心部に壺形の凹みを有する。凹みは中心軸に対してほぼ垂直な底面32とこれにほぼ垂直な側壁33により形成されている。
側壁33は非磁性体で、断面が真円で電子ビームの軸と中心軸を共通にした円筒形をしていて、内壁と試料ホルダ21の外壁の間に適当な距離をとって両者間に必要な水準の高電圧を掛けても放電がおきないようにしている。
【0028】
底面32は導電性の非磁性体で、ほぼ平坦に形成され、中心には電子イメージ拡大部の鏡筒4に電子を入射する穴が開いている。
鏡筒4は非磁性体の薄いチューブで、底面32に対して気密に固定されている。
底面32の開口にはアパーチャ板34を挿入したアパーチャホルダ35が挿嵌されている。アパーチャ板34は、中心にたとえば直径0.3mmとか0.5mmなどの小さな穴が設けられたプレートで、鏡筒4に進入する電子線を近軸成分のみに制限して収差を改善するものである。
ピンホールの径は測定条件により変更する必要があるので、アパーチャホルダ35は適当なジグを使って鏡筒4の前方から比較的簡単に脱着できるように構成する。
【0029】
側壁33の外壁に、円環状のポールピース上極42の内側先端面が接するように配置されている。ポールピース上極42の内側先端面は高い真円度を持った滑らかな曲面に仕上げられている。また電子線進行方向下流側の側面は、対向するポールピース下極43に近い部分を削ぎ落して中心軸に向ったテーパを形成している。
また、ポールピース下極43は、アノード31の底面32の裏側に設けられ、電子ビーム軸に垂直な面を底面32の裏面にほぼ接するように配置されている。
ポールピース上極42とポールピース下極43は、電磁コイル41を取囲むように構成されたヨーク44の1隅を開けてその端部にそれぞれ接合してあり、電磁コイル41を励磁するとポールピース間のギャップに大量の磁束を発生して電子加速空間1内に強力な磁界を形成し、電子流を収束拡大する磁気レンズとして作用する。
【0030】
アノード31は、試料室2部分の筐体11あるいは電磁コイルの筐体を介して接地されている。
試料ホルダ21には直流電源装置の負電極端子が接続されていて、−20kV程度までの負電圧が印加される。試料ホルダ21に負電圧を印加すると、接地されたアノード31と負電位のホルダピース22の部分が対向するため、電子加速空間1内に、図2に示すような回転対称の電場を形成する。この電場は、中心軸の近くでは軸に垂直な等電位面が平行して並んだ形になっている。
X線照射により試料スライド24の光電変換膜中に発生する電子は、電子加速空間1中の電界により引出され、加速して鏡筒4中に進入する。X線を中心部に照射すると、発生する電子流は中心軸の近傍を走行するが、平行電界によって加速するため、電子軌道が中心軸から大きく逸れることがない。
【0031】
なお、アパーチャホルダ35は、電子加速空間1の側に鋭い縁がないように面取り加工してほぼ平らな面とし、また底面32から大きく突出しないようにして、電子加速空間内に生成する電界を乱さないようにしている。
電子加速空間1に挿入される試料ホルダ21の先端部は軸に垂直な平坦面に形成することが好ましい。また、試料スライド24の表面を電子加速空間1に露出させるための穴の縁は鋭角な部分をなくすため面取り加工が施されている。
【0032】
図3は、本実施例の電子加速空間構造における磁束密度と電子ビーム軌跡の関係を説明する図面である。図3の横軸は任意の基点から測定した距離で、図3(a)は縦軸に中心軸からの距離を取って、平行電子流が進入したときの電子流の形状変化を示し、図3(b)は電子流の形状変化状態に対応する電子加速空間構造の位置を略図に示し、図3(c)は縦軸に磁束密度をとって、電子の進行軸に沿った磁束密度変化を示す。
【0033】
電子加速空間1の軸位置にある電子流に、ポールピース上極42とポールピース下極43で形成される磁束を作用させると、電子流は図3に示すような形状変化を示して収束拡大する。
磁束密度はポールピース上極42とポールピース下極43の中間位置にピークPがある分布を持っているので、中心軸に沿って走行する電子に対して軸方向に偏向させる力を及ぼし対物レンズの作用を有する。レンズ倍率は、ピークPにおける最大磁束密度が高くピーク幅Hが小さくてピークが鋭いほど大きくなる。
【0034】
また、電子は光電変換面24に近いほど遅いので、磁束密度のピークPが光電変換面24に近いほどレンズ効果は大きい。
このため、ポールピース上極42の下流側側面はテーパに形成してポールピース下極43の間に磁束が繋がりにくくすることにより、磁束密度ピークPが光電変換面24に近づくようにする。
【0035】
光電変換面24は磁束密度が変化している領域にあるので、表面から放出される電子は多少中心軸に向って収束する方向に運動し、鋭い磁束密度ピークPの部分で最も曲率を大きくして収束し、収束点を通過すると同じ勢いで拡大する。電子加速空間1の対物レンズにより、半径0.01mmの電子流が次の第1投射レンズの位置では半径約0.1mmの電子流に拡大し、第2投射レンズを通って蛍光面に投射される位置では約2.3mmになる。
【0036】
なお、電子加速空間1における電界Eが強いほど電子波長λが短くなる。一方、分解能は波長λの3/4乗に比例するとされ、球面収差や色収差は電界Eに反比例するとされるので、高電圧をかけるほど電子像の品質が向上する。
しかし、電極間距離が狭すぎると電極間に放電が生じ有効な電界を維持することができないため、ホルダピース22のキャップ23とアノード底面32の距離やアノード側壁33とホルダピース22の外周との距離は余り小さくすることができない。
【0037】
一方、この距離を大きくすると、外壁33の外に配置されるポールピース42が電子軌道から離れるので、電子流の位置に高い磁束密度を生成することができない。
このため、両者の距離には適当な妥協点が存在し、本実施例ではキャップ23先端面とアノード底面32の距離をほぼ6mmとし、ホルダピース22外周とアノード側壁33の距離をほぼ6mmとして良好な結果を得ている。
【0038】
なお、鏡筒4は対物レンズ用電磁コイル41が配置される部分と2個の投射レンズ用電磁コイルが配置される部分を貫通して設置されて、電子流を蛍光面に導くものである。鏡筒4の外側には、対物レンズと投射レンズの間に収差を減少させるためのスティグマコイル45や偏向コイルが設けられている。
アノード31と鏡筒4は溶接により接合することができる。ただし、底面32に対する直角度や溶接部からの真空漏れがないように製作するには高度な技術が必要である。また、溶接部周辺のバリを処理して電界分布を乱さないようにしなければならない。
【0039】
そこで、アノード31と鏡筒4を一体に構成して、1塊の非磁性材料から削り出して製作するようにしてもよい。このように一体化して機械加工により製作すると、直角度を保証して真空漏れやバリのない部品とすることが比較的容易である。
特に、対物レンズ領域と投射レンズ領域の間に真空遮断弁を設けて、操業中は同じ真空にし、試料室2および電子加速空間1を大気に解放して試料交換などを行うときには真空を遮断して下流側の真空を維持するようにして、操業準備の容易化を図るようにしたものでは、鏡筒4を真空遮断弁の位置で分割するので、アノード31に接合する薄い鏡筒4部分が短くなるので、アノード31と一体に加工することがより容易になる。
【0040】
上記実施例に基づいた説明は、本発明の技術的思想を具現化する装置の1例について行われたもので、本発明を実施するための構成には種々の変形があることはいうまでもない。
たとえば、アノードの側壁は円筒形に形成されているが、試料ホルダとの間に放電が起らない程度の距離を保持できればよいので、たとえば中膨れの太鼓形であってもよい。
【0041】
また、アパーチャホルダは底面から突出しないようにして、電子加速空間内により平行度のよい電界分布を形成させるようにしてもよい。
あるいは、試料ホルダにセットした試料スライドをキャップで押えるのではなく、内側から押込んで止めるようにしてもよい。
また、試料スライドの裏面に金属メッシュを当てて、これと試料ホルダを導通させて負電圧を掛け、電界が光電変換膜の後ろ側から作用するようにすることにより、電子がより容易に放出されるようにしてもよい。
さらに、対物レンズや投射レンズはそれぞれ電磁ギャップを複数複合して形成したものであってもよい。
【0042】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明のX線顕微鏡用電子加速空間構造は、光電変換面から電子を引き出し加速する高電界領域に対物レンズを形成する磁束密度ピークを配置するので、従来より短い装置で、電子速度を十分高めると共に高倍率の対物レンズを使って、収差が少なく高分解能のX線像を形成して観察するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例のX線顕微鏡用電子加速空間構造を説明する断面図である。
【図2】本実施例の電子加速空間における電界の状態を示す図面である。
【図3】本実施例の電子加速空間における磁束密度と電子ビーム軌跡の関係を説明する図面である。
【図4】本発明を適用するX線顕微鏡の構成を説明する概念図である。
【図5】X線顕微鏡の磁気レンズ群を通過するときの電子束径変化解析結果を示す図面である。
【符号の説明】
1 電子加速空間
2 試料室
4 鏡筒
11 筐体
12 仕切壁
13 試料ステージ
21 試料ホルダ
22 ホルダピース
23 キャップ
24 試料スライド
31 アノード
32 アノード底面
33 アノード側壁
34 アパーチャ板
35 アパーチャホルダ
41 電磁コイル
42 ポールピース上極
43 ポールピース下極
44 ヨーク
45 スティグマコイル

Claims (7)

  1. アノードと試料ホルダに挟まれ1対の円環状のポールピースを外側に配し鏡筒の入口に設けられるX線顕微鏡用電子加速空間構造であって、該アノードが非磁性体物質から形成され中心部に該鏡筒に接続する開口が設けられた平坦な底面と該鏡筒の軸を中心軸とし軸に平行な円筒形の側壁を有し、ポールピース上極が内周面を該側壁の外周に接するように配置され、ポールピース下極が前記鏡筒の軸に垂直な円環状の平面を有し該平面が前記底面の外壁に対向するように配置され、前記試料ホルダが前記側壁の内径より小さい径を持った導電性の筒体で前記軸にほぼ垂直に形成され中心部に開口を設けた前面を有し、該試料ホルダの中心軸が前記鏡筒の軸と一致しかつ該前面が前記底面に平行に設置されたもので、該試料ホルダと前記アノードの間に電位差を与えて前記中心軸に沿って平行な電界を発生させ、前記ポールピース上極と下極の間に磁束を発生させて前記試料ホルダと前記アノードの間に回転対称な磁場を発生させて使用することを特徴とする電子加速空間構造。
  2. 前記試料ホルダの前面が前記ポールピース上極の内周面に囲まれる位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の電子加速空間構造。
  3. 前記試料ホルダの前面の開口が面取りされていることを特徴とする請求項1または2記載の電子加速空間構造。
  4. 前記試料ホルダの前面は試料スライドを前面側から押えるキャップの前面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子加速空間構造。
  5. 前記ポールピース上極の内周面の軸方向内側の側面がテーパ状に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子加速空間構造。
  6. 前記アノードの鏡筒に接続する開口部にピンホールを有するアパーチャーピースを取付けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子加速空間構造。
  7. 前記鏡筒の外壁の少なくとも端部が前記アノードと一体に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電子加速空間構造。
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