JP3792765B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファジー推論で旋回状態を検出し、最適な制御を行なう自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の自動変速機では、エンジン負荷を示すスロットル開度と車速を基に予め設定されているシフトパターンで変速位置を決定するようになっている。
【0003】
通常のシフトパターンは、直進での変速位置が最適になるように設定されているため、車両が旋回する際に、不必要なアップシフトが行なわれてシフトハンティングを繰り返しドライバに不快感を与えるといった問題があり、また、不必要なアップシフトのため、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合、再びダウンシフトをしてから加速が行なわれるためスムーズな加速ができないといった問題がある。
【0004】
このため、特開平4−88258号公報では、横加速度、あるいは、車速と操舵角をパラメータとして形成した旋回判断マップにより旋回状態か非旋回状態かを判定し、旋回状態の場合にはトルクコンバータの容量可変制御を禁止すると共に歯車変速機の変速制御も禁止することにより、旋回中においてドライバがアクセル操作をしてもドライバが望む駆動力をスムーズに得られると共に安定した車両挙動を得ることができるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先行技術では、横加速度を用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合は、新たに横加速度センサを設ける必要がある。また、横加速度を用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合、旋回状態と非旋回状態の判断閾値の設定が困難で、さらに、旋回判断マップを用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合も、旋回状態域と非旋回状態域の境界線の設定が困難であり、これら判断閾値あるいは境界線の設定によっては、制御効果が十分に得られないといった問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限のメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態での変速位置を最適に設定することができる自動変速機の制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による自動変速機の制御装置は、車速を検出する車速検出手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、所定の運転条件で車速とエンジン負荷とに基づき予め設定したシフトパターンで変速位置を決定し出力する変速位置決定出力手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前輪と後輪の回転数の差を算出する前後輪差回転数算出手段と、前輪と後輪の回転数の差と車速とエンジン負荷のそれぞれについて、予め設定しておいたメンバシップ関数に基づき、各メンバシップ値を定めるメンバシップ値設定手段と、予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値から旋回走行の適合度を求める旋回適合度演算手段と、上記旋回走行の適合度に応じて上記シフトパターンを設定する変速状態設定手段とを備えたものである。
【0008】
上記自動変速機の制御装置は、まず、車速検出手段で車速を、エンジン負荷検出手段でエンジン負荷をそれぞれ検出し、前後輪差回転数算出手段で前輪と後輪の回転数の差を算出する。次に、メンバシップ値設定手段で、前輪と後輪の回転数の差と車速とエンジン負荷のそれぞれについて、予め設定しておいたメンバシップ関数に基づき、各メンバシップ値を定め、旋回適合度演算手段で予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値から旋回走行の適合度を求め、変速状態設定手段で上記旋回走行の適合度に応じて上記シフトパターンを設定する。そして、変速位置決定出力手段は、所定の運転条件で車速とエンジン負荷とに基づき予め設定したシフトパターンで変速位置を決定し出力する。
【0009】
また、請求項2記載の本発明による自動変速機の制御装置は、請求項1記載の自動変速機の制御装置において、上記変速状態設定手段は、上記旋回走行の適合度に応じてアップシフトを禁止するものである。
【0010】
このため、請求項2記載の本発明による自動変速機の制御装置では、請求項1記載の自動変速機の制御装置において、変速位置決定出力手段は、変速状態設定手段で上記旋回走行の適合度に応じてアップシフトが禁止されている場合には、アップシフトをしない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図7は本発明の実施の形態を示し、図1は自動変速機の制御装置の機能ブロック図、図2は自動変速機の制御装置の概略構成を示す説明図、図3は通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの説明図、図4はシフトパターン設定手順のフローチャート、図5はシフトパターン決定のフローチャート、図6は各メンバシップ関数の説明図、図7は通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの切換えのヒステリシスの説明図である。
【0012】
図2において、符号1はエンジンを示し、このエンジン1の吸気系には、スロットルバルブを内設したスロットルボディ2が介装され、このスロットルボディ2の上流側にエアフローメータ3を介してエアークリーナ4が取付けられている。
【0013】
また、上記エンジン1の出力側には自動変速機5が設けられており、この自動変速機5は、トルクコンバータ6、変速機構部7、油圧回路8、制御部(トランスミッションコントロールユニット、以下、トランスミッションをT/Mと略称)9とから主に構成されている。
【0014】
上記トルクコンバータ6には、コンバータケース内にフロントデファレンシャルユニット(図示せず)が共に格納されている。
【0015】
また、上記変速機構部7には、例えば、前進4段、後退1段に形成され、変速を行なうための各種油圧クラッチや、各種油圧ブレーキ等が設けられている。
【0016】
上記油圧回路8は、上記T/Mコントロールユニット9によりON−OFFされる変速制御用のソレノイドA10、ソレノイドB11や、上記トルクコンバータ6のロックアップ制御用の図示しないロックアップソレノイド等の複数のソレノイドと、これらソレノイドにより開閉され油圧経路を所定に形成する複数のバルブが設けられている。
【0017】
すなわち、前進4段の変速は、上記ソレノイドA10、ソレノイドB11のON−OFFの組合わせで形成される油圧経路で上記変速機構部7の所定の油圧クラッチが動作され行なわれる。また、上記ロックアップソレノイドのON−OFFにより形成される油圧経路でロックアップクラッチが動作され、上記トルクコンバータ6のロックアップの実行、解除が行なわれる。
【0018】
上記T/Mコントロールユニット9は、マイクロコンピュータとその周辺回路で形成されており、このT/Mコントロールユニット9には、上記スロットルボディ2に設けられたスロットルボディの開度を検出するエンジン負荷検出手段としてのスロットル開度センサ12、上記フロントデファレンシャルユニットから回転信号を前輪の回転数NF として検出する前輪回転数センサ13、T/M出力軸5aの回転数を後輪の回転数NR として検出する後輪回転数センサ14、シフトレンジ位置を検出するインヒビタスイッチ15等が接続されている。尚、上記各センサ12、13、14およびインヒビタスイッチ15は、エンジンおよびトランスミッションに必要な他の多くの制御においても用いられるものである。
【0019】
また、上記T/Mコントロールユニット9からの出力信号は、図示しない駆動回路に出力されて、上記ソレノイドA10、ソレノイドB11等の複数のソレノイドを制御可能に形成されている。
【0020】
上記T/Mコントロールユニット9は、図1に示すように、車速算出部21、前後輪差回転数算出部22、メンバシップ値設定部23、旋回適合度演算部24、変速状態設定部25および変速位置決定出力部26から主要に構成されている。尚、上記T/Mコントロールユニット9は、さらにロックアップ制御、ライン圧制御、変速タイミング制御、…等、その他の制御に必要な部分も有しているが説明では省略する。
【0021】
上記車速算出部21は、上記後輪回転数センサ14からの信号が入力され、後輪の回転数NR を所定に変換して車速Vを算出し、この車速Vを、上記メンバシップ値設定部23および上記変速位置決定出力部26に出力するように形成されている。すなわち、車速検出手段は、上記後輪回転数センサ14と上記車速算出部21とで形成されている。尚、車両によっては上記車速算出部21に、上記前輪回転数センサ13からの信号が入力されるようにして、前輪の回転数NF を所定に変換して車速Vを算出するようにしても良く、また、上記車速算出部21に、上記前輪回転数センサ13と上記後輪回転数センサ14からの信号が入力されるようにして、前輪の回転数NF と後輪の回転数NR とから車速Vを算出するようにしても良い。
【0022】
上記前後輪差回転数算出部22は、上記前輪回転数センサ13と上記後輪回転数センサ14からの信号が入力され、これら入力された前輪回転数NF と後輪回転数NR の差、すなわち前後輪差回転数ΔNを算出し、上記メンバシップ値設定部23に出力する前後輪差回転数算出手段として形成されている。
【0023】
また、上記メンバシップ値設定部23は、上記前後輪差回転数算出部22から前後輪差回転数ΔN、上記車速算出部21から車速V、上記スロットル開度センサ12からエンジン負荷としてスロットル開度θt が入力され、これら前後輪差回転数ΔN、車速V、スロットル開度θt のそれぞれについて、過去の走行頻度を基に予め設定しておいた各メンバシップ関数(例えば、図6)に基づき、各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt を定め、上記旋回適合度演算部24に出力するメンバシップ値設定手段として形成されている。
【0024】
上記前後輪差回転数ΔNについてのメンバシップ関数は、図6(a)に示すように、前後輪差回転数ΔNが大きくなるほどメンバシップ値GΔNが大きくなるように形成されており、これは、前輪と後輪の回転数が大きいほど、旋回らしさが高い(旋回状態である可能性が高い)ことを示す。
【0025】
また、上記車速Vについてのメンバシップ関数は、図6(b)に示すように、車速Vが、一定の速度(図中Va 、例えば30km/h)以上になるとメンバシップ値GVが小さくなり、旋回らしさが低く(旋回状態である可能性が低く)なり、さらに、ある一定の速度(図中Vb 、例えば60km/h)以上では、旋回らしさが0になる(旋回状態である可能性がない)ように形成されている。すなわち、旋回を確実に安定して行なうには、車速Vを落とすことから、この車速Vについてのメンバシップ関数が定められている。
【0026】
さらに、上記スロットル開度θt についてのメンバシップ関数は、図6(c)に示すように、スロットル開度θt が大きくなるほどメンバシップ値Gθt が小さくなり、旋回らしさが低く(旋回状態である可能性が低く)なるように形成されており、ドライバがアクセルペダルを踏みながら旋回することが少ないことを示す。
【0027】
上記旋回適合度演算部24は、予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt から旋回走行の適合度Gs を求め、上記変速状態設定部25に出力する旋回適合度演算手段として形成されている。上記ファジールールは、旋回状態の定義を「前後輪差回転数が大きく、且つ、車速が低く、且つ、スロットル開度が小さい」とし、少なくとも旋回らしさを表現する要因すべて(GΔN,GV,Gθt )を満足する値、すなわち、GΔN,GV,Gθt の最小値を旋回適合度Gs とするものである。
【0028】
上記変速状態設定部25は、上記旋回適合度Gs に応じて上記変速位置決定出力部26に旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンのどちらかを設定する変速状態設定手段として形成されている。また、図7に示すように、上記旋回時専用パターンから通常のシフトパターンへの切換えは、上記旋回適合度Gs が下方基準値GL 以下になったときに行なわれ、上記通常のシフトパターンから上記旋回時専用パターンへの切換えは、旋回適合度Gs が上方基準値GH 以上になったときに行なわれるようにヒステリシスが設定されている。
【0029】
例えば、図3に示すように、1→2速、2→3速、3→4速のそれぞれのアップ線において、高速側に設定される実線の部分が上記旋回時専用のシフトパターンであり、低速側に設定される破線の部分が上記通常のシフトパターンであり、上記旋回時専用のシフトパターンが設定されるとアップシフトしずらく設定される。このため、車両の旋回時に上記旋回時専用のシフトパターンが設定されると不要なアップシフトが防止され、シフトハンティングが防止されるようになっている。また、不要なアップシフトが防止されることから、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合は、ダウンシフトをすることなく加速が行なわれスムーズな加速が可能になる。すなわち、上記変速状態設定部25は、上記旋回適合度Gs から、現在の走行状態が旋回状態か通常の走行状態(非旋回状態)かを判定して、旋回状態の場合は、アップシフトしずらくシフトパターンを設定するようになっている。
【0030】
尚、本発明の実施の形態では、1→2速、2→3速、3→4速のそれぞれのアップ線の特性形状は、通常のシフトパターンの低速側領域をカットして旋回時専用のシフトパターンを形成しているが、これに限定することなく、例えば、上記各アップ線をそのまま高速側に移動したものを旋回時専用のシフトパターンとしても良く、通常のシフトパターンとは全く形状が異なりアップシフトしずらい特性形状のものを旋回時専用のシフトパターンとしても良い。さらに、本発明の実施の形態では、上記変速状態設定部25が上記変速位置決定出力部26にシフトパターンを設定するように形成されているが、上記変速状態設定部25を、上記変速位置決定出力部26に上記旋回適合度Gs に応じ、旋回状態の際にアップシフトを禁止させるように形成しても、ほぼ同様の効果が得られる。また、旋回適合度Gs から旋回状態を旋回状態と通常の状態(非旋回状態)の2通りの状態で判定するようにしているが、さらに細かく判定して(例えば、急旋回状態、通常旋回状態、通常走行状態)、それぞれについてのシフトパターンを設定するようにしても良い。
【0031】
上記変速位置決定出力部26は、前記車速算出部21から速度V、スロットル開度センサ12からスロットル開度θt 、インヒビタスイッチ15からシフトレンジ位置、変速状態設定部25からシフトパターンがそれぞれ入力され、上記シフトレンジ位置での変速位置を、上記速度Vとスロットル開度θt に基づき上記シフトパターンを参照して決定し、駆動回路(図示せず)に対して前記ソレノイドA10、ソレノイドB11のON−OFF信号を出力し、上記変速機構部7を設定変速にさせる変速位置決定出力手段として形成されている。
【0032】
次に、シフトパターン設定手順を図4のフローチャートで説明する。
このフローチャートは所定時間毎に実行され、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、前輪回転数センサ13から前輪回転数NF を、後輪回転数センサ14から後輪回転数NR を、スロットル開度センサ12からスロットル開度θt を読み込み、S102に進み、車速算出部21で、上記後輪回転数NR を所定に変換して車速Vを算出し、前後輪差回転数算出部22で、上記前輪回転数NF と上記後輪回転数NR の差、すなわち前後輪差回転数ΔNを算出する。
【0033】
次いでS103に進み、上記前後輪差回転数ΔN、車速V、スロットル開度θt のそれぞれについて、対応するメンバシップ関数(図6)に基づき、各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt を設定する。すなわち、このS103は、メンバシップ値設定部23での処理を示す。
【0034】
その後、S104に進み、上記各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt にファジールール(GΔN,GV,Gθt の最小値を選定する)を適応して、旋回適合度Gs を設定する。このS104の処理は、旋回適合度演算部24で行なわれる処理である。
【0035】
次いで、S105に進んで、上記旋回適合度Gs に基づき、後述するシフトパターン決定ルーチンで旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンのどちらかを決定し、S106に進んで、上記決定したシフトパターンを変速位置決定出力部26に設定する。このS105とS106は、変速状態設定部25で行なわれる処理である。
【0036】
そして、上記変速位置決定出力部26は、上記設定されたシフトパターンを用いて前述の如く変速制御を行なう。
【0037】
上記シフトパターン決定ルーチンは、図5に示すように、まず、S201で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンか否か判定し、通常パターン(非旋回状態のパターン)の場合はS202に進み、旋回時専用パターンの場合はS203に進む。
【0038】
上記S201でS202に進むと、旋回適合度Gs と上方基準値GH とが比較され、旋回適合度Gs が上方基準値GH に達しない場合(Gs <GH の場合)はS204に進み、そのままシフトパターンを通常のパターンに決定し、旋回適合度Gs が上方基準値GH 以上の場合(Gs ≧GH の場合)はS205に進み、シフトパターンを旋回時専用パターンに決定する。
【0039】
一方、上記S201でS203に進むと、旋回適合度Gs と下方基準値GL とが比較され、旋回適合度Gs が下方基準値GL 以下の場合(Gs ≦GL の場合)はS204に進み、シフトパターンを通常のパターンに決定し、旋回適合度Gs が下方基準値GL より大きい場合(Gs >GL の場合)はS205に進み、シフトパターンをそのまま旋回時専用パターンに決定する。
【0040】
このように、本発明の実施の形態によれば、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限の3つのメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態、非旋回状態におけるシフトパターンをそれぞれ最適に設定でき、旋回時における不要なアップシフトを防止することができる。このため、シフトハンティングが防止されるとともに、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合は、ダウンシフトをすることなく加速が行なわれスムーズな加速が可能になる。また、不要なアップシフトとダウンシフトがなくなるため、トランスミッションを構成する部品への負荷頻度が低減される。さらに、滑り易い路面状況で転舵するような状態では、不要なアップシフトが生じた後のダウンシフトが生じると駆動力変化が大きくなりタイヤがスリップし易くなるが、これを有効に防止できる。また、不要なアップシフトがなくなるため、ドライバのアクセルワークが軽減され、ドライバへの負担も低減できる。
【0041】
次に、図8は上記発明の実施の形態のシフトパターン決定手順の変形例を示すフローチャートである。すなわち、上記発明の実施の形態では、前記変速状態設定部25で行なわれるシフトパターンの決定は、上方基準値GH と下方基準値GL で定めたヒステリシスに基づいて行なうようになっているが、本変形例では、旋回時専用のシフトパターンから通常のシフトパターンへの切換えが、車速と前後輪差回転数とが設定条件を満たした際に行なわれ、通常のシフトパターンから旋回時専用のシフトパターンへの切換えが、旋回適合度が設定値以上になった場合に行なわれるようになっており、この手順のみ異なるものである。
【0042】
図8のシフトパターン決定手順において、まず、S301で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンか否か判定する。
【0043】
そして、通常パターン(非旋回状態のパターン)の場合はS302に進み、旋回適合度Gs が設定値Gsc以上か否か判定し、旋回適合度Gs が設定値Gscに達しない場合(Gs <Gscの場合)は非旋回状態と判定してS303に進み、シフトパターンを通常のパターンに決定する。
【0044】
また、上記S302で、旋回適合度Gs が設定値Gsc以上の場合(Gs ≧Gscの場合)は旋回状態と判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。
【0045】
一方、上記S301で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンの場合はS305に進み、車速Vが設定車速VC 以上か否か判定し、車速Vが設定車速VC 以上の場合(V≧VC の場合)はS306に進み、車速Vが設定車速VC に達しない場合(V<VC の場合)は、旋回状態が継続していると判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。
【0046】
上記S305でV≧VC の場合と判定されS306に進むと、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下か否かの判定が行なわれ、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc より大きい場合(ΔN>ΔNc の場合)は、旋回状態が継続していると判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。また、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下の場合(ΔN≦ΔNc の場合)はS307に進み、旋回時専用のパターンを解除して通常のパターンに決定する。
【0047】
すなわち、本変形例では、車速Vが設定車速VC 以上、かつ、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下の場合に、旋回時専用のパターンを解除して通常のパターンに決定するようになっている。
【0048】
このような手順で旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンの切換えを行なうようにしたため、ドライバビリティの向上と車両挙動の安定化を図ることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限のメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態、非旋回状態におけるシフトパターンをそれぞれ最適に設定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動変速機の制御装置の機能ブロック図
【図2】自動変速機の制御装置の概略構成を示す説明図
【図3】通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの説明図
【図4】シフトパターン設定手順のフローチャート
【図5】シフトパターン決定のフローチャート
【図6】各メンバシップ関数の説明図
【図7】通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの切換えのヒステリシスの説明図
【図8】シフトパターン決定手順の変形例を示すフローチャート
【符号の説明】
1 エンジン
5 自動変速機
6 トルクコンバータ
7 変速機構部
8 油圧回路
9 トランスミッションコントロールユニット
10 ソレノイドA
11 ソレノイドB
12 スロットル開度センサ
13 前輪回転数センサ
14 後輪回転数センサ
21 車速算出部
22 前後輪差回転数算出部
23 メンバシップ値設定部
24 旋回適合度演算部
25 変速状態設定部
26 変速位置決定出力部
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファジー推論で旋回状態を検出し、最適な制御を行なう自動変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の自動変速機では、エンジン負荷を示すスロットル開度と車速を基に予め設定されているシフトパターンで変速位置を決定するようになっている。
【0003】
通常のシフトパターンは、直進での変速位置が最適になるように設定されているため、車両が旋回する際に、不必要なアップシフトが行なわれてシフトハンティングを繰り返しドライバに不快感を与えるといった問題があり、また、不必要なアップシフトのため、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合、再びダウンシフトをしてから加速が行なわれるためスムーズな加速ができないといった問題がある。
【0004】
このため、特開平4−88258号公報では、横加速度、あるいは、車速と操舵角をパラメータとして形成した旋回判断マップにより旋回状態か非旋回状態かを判定し、旋回状態の場合にはトルクコンバータの容量可変制御を禁止すると共に歯車変速機の変速制御も禁止することにより、旋回中においてドライバがアクセル操作をしてもドライバが望む駆動力をスムーズに得られると共に安定した車両挙動を得ることができるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記先行技術では、横加速度を用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合は、新たに横加速度センサを設ける必要がある。また、横加速度を用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合、旋回状態と非旋回状態の判断閾値の設定が困難で、さらに、旋回判断マップを用いて旋回状態か非旋回状態かを判定する場合も、旋回状態域と非旋回状態域の境界線の設定が困難であり、これら判断閾値あるいは境界線の設定によっては、制御効果が十分に得られないといった問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限のメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態での変速位置を最適に設定することができる自動変速機の制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の本発明による自動変速機の制御装置は、車速を検出する車速検出手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、所定の運転条件で車速とエンジン負荷とに基づき予め設定したシフトパターンで変速位置を決定し出力する変速位置決定出力手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前輪と後輪の回転数の差を算出する前後輪差回転数算出手段と、前輪と後輪の回転数の差と車速とエンジン負荷のそれぞれについて、予め設定しておいたメンバシップ関数に基づき、各メンバシップ値を定めるメンバシップ値設定手段と、予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値から旋回走行の適合度を求める旋回適合度演算手段と、上記旋回走行の適合度に応じて上記シフトパターンを設定する変速状態設定手段とを備えたものである。
【0008】
上記自動変速機の制御装置は、まず、車速検出手段で車速を、エンジン負荷検出手段でエンジン負荷をそれぞれ検出し、前後輪差回転数算出手段で前輪と後輪の回転数の差を算出する。次に、メンバシップ値設定手段で、前輪と後輪の回転数の差と車速とエンジン負荷のそれぞれについて、予め設定しておいたメンバシップ関数に基づき、各メンバシップ値を定め、旋回適合度演算手段で予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値から旋回走行の適合度を求め、変速状態設定手段で上記旋回走行の適合度に応じて上記シフトパターンを設定する。そして、変速位置決定出力手段は、所定の運転条件で車速とエンジン負荷とに基づき予め設定したシフトパターンで変速位置を決定し出力する。
【0009】
また、請求項2記載の本発明による自動変速機の制御装置は、請求項1記載の自動変速機の制御装置において、上記変速状態設定手段は、上記旋回走行の適合度に応じてアップシフトを禁止するものである。
【0010】
このため、請求項2記載の本発明による自動変速機の制御装置では、請求項1記載の自動変速機の制御装置において、変速位置決定出力手段は、変速状態設定手段で上記旋回走行の適合度に応じてアップシフトが禁止されている場合には、アップシフトをしない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図7は本発明の実施の形態を示し、図1は自動変速機の制御装置の機能ブロック図、図2は自動変速機の制御装置の概略構成を示す説明図、図3は通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの説明図、図4はシフトパターン設定手順のフローチャート、図5はシフトパターン決定のフローチャート、図6は各メンバシップ関数の説明図、図7は通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの切換えのヒステリシスの説明図である。
【0012】
図2において、符号1はエンジンを示し、このエンジン1の吸気系には、スロットルバルブを内設したスロットルボディ2が介装され、このスロットルボディ2の上流側にエアフローメータ3を介してエアークリーナ4が取付けられている。
【0013】
また、上記エンジン1の出力側には自動変速機5が設けられており、この自動変速機5は、トルクコンバータ6、変速機構部7、油圧回路8、制御部(トランスミッションコントロールユニット、以下、トランスミッションをT/Mと略称)9とから主に構成されている。
【0014】
上記トルクコンバータ6には、コンバータケース内にフロントデファレンシャルユニット(図示せず)が共に格納されている。
【0015】
また、上記変速機構部7には、例えば、前進4段、後退1段に形成され、変速を行なうための各種油圧クラッチや、各種油圧ブレーキ等が設けられている。
【0016】
上記油圧回路8は、上記T/Mコントロールユニット9によりON−OFFされる変速制御用のソレノイドA10、ソレノイドB11や、上記トルクコンバータ6のロックアップ制御用の図示しないロックアップソレノイド等の複数のソレノイドと、これらソレノイドにより開閉され油圧経路を所定に形成する複数のバルブが設けられている。
【0017】
すなわち、前進4段の変速は、上記ソレノイドA10、ソレノイドB11のON−OFFの組合わせで形成される油圧経路で上記変速機構部7の所定の油圧クラッチが動作され行なわれる。また、上記ロックアップソレノイドのON−OFFにより形成される油圧経路でロックアップクラッチが動作され、上記トルクコンバータ6のロックアップの実行、解除が行なわれる。
【0018】
上記T/Mコントロールユニット9は、マイクロコンピュータとその周辺回路で形成されており、このT/Mコントロールユニット9には、上記スロットルボディ2に設けられたスロットルボディの開度を検出するエンジン負荷検出手段としてのスロットル開度センサ12、上記フロントデファレンシャルユニットから回転信号を前輪の回転数NF として検出する前輪回転数センサ13、T/M出力軸5aの回転数を後輪の回転数NR として検出する後輪回転数センサ14、シフトレンジ位置を検出するインヒビタスイッチ15等が接続されている。尚、上記各センサ12、13、14およびインヒビタスイッチ15は、エンジンおよびトランスミッションに必要な他の多くの制御においても用いられるものである。
【0019】
また、上記T/Mコントロールユニット9からの出力信号は、図示しない駆動回路に出力されて、上記ソレノイドA10、ソレノイドB11等の複数のソレノイドを制御可能に形成されている。
【0020】
上記T/Mコントロールユニット9は、図1に示すように、車速算出部21、前後輪差回転数算出部22、メンバシップ値設定部23、旋回適合度演算部24、変速状態設定部25および変速位置決定出力部26から主要に構成されている。尚、上記T/Mコントロールユニット9は、さらにロックアップ制御、ライン圧制御、変速タイミング制御、…等、その他の制御に必要な部分も有しているが説明では省略する。
【0021】
上記車速算出部21は、上記後輪回転数センサ14からの信号が入力され、後輪の回転数NR を所定に変換して車速Vを算出し、この車速Vを、上記メンバシップ値設定部23および上記変速位置決定出力部26に出力するように形成されている。すなわち、車速検出手段は、上記後輪回転数センサ14と上記車速算出部21とで形成されている。尚、車両によっては上記車速算出部21に、上記前輪回転数センサ13からの信号が入力されるようにして、前輪の回転数NF を所定に変換して車速Vを算出するようにしても良く、また、上記車速算出部21に、上記前輪回転数センサ13と上記後輪回転数センサ14からの信号が入力されるようにして、前輪の回転数NF と後輪の回転数NR とから車速Vを算出するようにしても良い。
【0022】
上記前後輪差回転数算出部22は、上記前輪回転数センサ13と上記後輪回転数センサ14からの信号が入力され、これら入力された前輪回転数NF と後輪回転数NR の差、すなわち前後輪差回転数ΔNを算出し、上記メンバシップ値設定部23に出力する前後輪差回転数算出手段として形成されている。
【0023】
また、上記メンバシップ値設定部23は、上記前後輪差回転数算出部22から前後輪差回転数ΔN、上記車速算出部21から車速V、上記スロットル開度センサ12からエンジン負荷としてスロットル開度θt が入力され、これら前後輪差回転数ΔN、車速V、スロットル開度θt のそれぞれについて、過去の走行頻度を基に予め設定しておいた各メンバシップ関数(例えば、図6)に基づき、各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt を定め、上記旋回適合度演算部24に出力するメンバシップ値設定手段として形成されている。
【0024】
上記前後輪差回転数ΔNについてのメンバシップ関数は、図6(a)に示すように、前後輪差回転数ΔNが大きくなるほどメンバシップ値GΔNが大きくなるように形成されており、これは、前輪と後輪の回転数が大きいほど、旋回らしさが高い(旋回状態である可能性が高い)ことを示す。
【0025】
また、上記車速Vについてのメンバシップ関数は、図6(b)に示すように、車速Vが、一定の速度(図中Va 、例えば30km/h)以上になるとメンバシップ値GVが小さくなり、旋回らしさが低く(旋回状態である可能性が低く)なり、さらに、ある一定の速度(図中Vb 、例えば60km/h)以上では、旋回らしさが0になる(旋回状態である可能性がない)ように形成されている。すなわち、旋回を確実に安定して行なうには、車速Vを落とすことから、この車速Vについてのメンバシップ関数が定められている。
【0026】
さらに、上記スロットル開度θt についてのメンバシップ関数は、図6(c)に示すように、スロットル開度θt が大きくなるほどメンバシップ値Gθt が小さくなり、旋回らしさが低く(旋回状態である可能性が低く)なるように形成されており、ドライバがアクセルペダルを踏みながら旋回することが少ないことを示す。
【0027】
上記旋回適合度演算部24は、予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt から旋回走行の適合度Gs を求め、上記変速状態設定部25に出力する旋回適合度演算手段として形成されている。上記ファジールールは、旋回状態の定義を「前後輪差回転数が大きく、且つ、車速が低く、且つ、スロットル開度が小さい」とし、少なくとも旋回らしさを表現する要因すべて(GΔN,GV,Gθt )を満足する値、すなわち、GΔN,GV,Gθt の最小値を旋回適合度Gs とするものである。
【0028】
上記変速状態設定部25は、上記旋回適合度Gs に応じて上記変速位置決定出力部26に旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンのどちらかを設定する変速状態設定手段として形成されている。また、図7に示すように、上記旋回時専用パターンから通常のシフトパターンへの切換えは、上記旋回適合度Gs が下方基準値GL 以下になったときに行なわれ、上記通常のシフトパターンから上記旋回時専用パターンへの切換えは、旋回適合度Gs が上方基準値GH 以上になったときに行なわれるようにヒステリシスが設定されている。
【0029】
例えば、図3に示すように、1→2速、2→3速、3→4速のそれぞれのアップ線において、高速側に設定される実線の部分が上記旋回時専用のシフトパターンであり、低速側に設定される破線の部分が上記通常のシフトパターンであり、上記旋回時専用のシフトパターンが設定されるとアップシフトしずらく設定される。このため、車両の旋回時に上記旋回時専用のシフトパターンが設定されると不要なアップシフトが防止され、シフトハンティングが防止されるようになっている。また、不要なアップシフトが防止されることから、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合は、ダウンシフトをすることなく加速が行なわれスムーズな加速が可能になる。すなわち、上記変速状態設定部25は、上記旋回適合度Gs から、現在の走行状態が旋回状態か通常の走行状態(非旋回状態)かを判定して、旋回状態の場合は、アップシフトしずらくシフトパターンを設定するようになっている。
【0030】
尚、本発明の実施の形態では、1→2速、2→3速、3→4速のそれぞれのアップ線の特性形状は、通常のシフトパターンの低速側領域をカットして旋回時専用のシフトパターンを形成しているが、これに限定することなく、例えば、上記各アップ線をそのまま高速側に移動したものを旋回時専用のシフトパターンとしても良く、通常のシフトパターンとは全く形状が異なりアップシフトしずらい特性形状のものを旋回時専用のシフトパターンとしても良い。さらに、本発明の実施の形態では、上記変速状態設定部25が上記変速位置決定出力部26にシフトパターンを設定するように形成されているが、上記変速状態設定部25を、上記変速位置決定出力部26に上記旋回適合度Gs に応じ、旋回状態の際にアップシフトを禁止させるように形成しても、ほぼ同様の効果が得られる。また、旋回適合度Gs から旋回状態を旋回状態と通常の状態(非旋回状態)の2通りの状態で判定するようにしているが、さらに細かく判定して(例えば、急旋回状態、通常旋回状態、通常走行状態)、それぞれについてのシフトパターンを設定するようにしても良い。
【0031】
上記変速位置決定出力部26は、前記車速算出部21から速度V、スロットル開度センサ12からスロットル開度θt 、インヒビタスイッチ15からシフトレンジ位置、変速状態設定部25からシフトパターンがそれぞれ入力され、上記シフトレンジ位置での変速位置を、上記速度Vとスロットル開度θt に基づき上記シフトパターンを参照して決定し、駆動回路(図示せず)に対して前記ソレノイドA10、ソレノイドB11のON−OFF信号を出力し、上記変速機構部7を設定変速にさせる変速位置決定出力手段として形成されている。
【0032】
次に、シフトパターン設定手順を図4のフローチャートで説明する。
このフローチャートは所定時間毎に実行され、まず、ステップ(以下、「S」と略称)101で、前輪回転数センサ13から前輪回転数NF を、後輪回転数センサ14から後輪回転数NR を、スロットル開度センサ12からスロットル開度θt を読み込み、S102に進み、車速算出部21で、上記後輪回転数NR を所定に変換して車速Vを算出し、前後輪差回転数算出部22で、上記前輪回転数NF と上記後輪回転数NR の差、すなわち前後輪差回転数ΔNを算出する。
【0033】
次いでS103に進み、上記前後輪差回転数ΔN、車速V、スロットル開度θt のそれぞれについて、対応するメンバシップ関数(図6)に基づき、各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt を設定する。すなわち、このS103は、メンバシップ値設定部23での処理を示す。
【0034】
その後、S104に進み、上記各メンバシップ値GΔN,GV,Gθt にファジールール(GΔN,GV,Gθt の最小値を選定する)を適応して、旋回適合度Gs を設定する。このS104の処理は、旋回適合度演算部24で行なわれる処理である。
【0035】
次いで、S105に進んで、上記旋回適合度Gs に基づき、後述するシフトパターン決定ルーチンで旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンのどちらかを決定し、S106に進んで、上記決定したシフトパターンを変速位置決定出力部26に設定する。このS105とS106は、変速状態設定部25で行なわれる処理である。
【0036】
そして、上記変速位置決定出力部26は、上記設定されたシフトパターンを用いて前述の如く変速制御を行なう。
【0037】
上記シフトパターン決定ルーチンは、図5に示すように、まず、S201で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンか否か判定し、通常パターン(非旋回状態のパターン)の場合はS202に進み、旋回時専用パターンの場合はS203に進む。
【0038】
上記S201でS202に進むと、旋回適合度Gs と上方基準値GH とが比較され、旋回適合度Gs が上方基準値GH に達しない場合(Gs <GH の場合)はS204に進み、そのままシフトパターンを通常のパターンに決定し、旋回適合度Gs が上方基準値GH 以上の場合(Gs ≧GH の場合)はS205に進み、シフトパターンを旋回時専用パターンに決定する。
【0039】
一方、上記S201でS203に進むと、旋回適合度Gs と下方基準値GL とが比較され、旋回適合度Gs が下方基準値GL 以下の場合(Gs ≦GL の場合)はS204に進み、シフトパターンを通常のパターンに決定し、旋回適合度Gs が下方基準値GL より大きい場合(Gs >GL の場合)はS205に進み、シフトパターンをそのまま旋回時専用パターンに決定する。
【0040】
このように、本発明の実施の形態によれば、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限の3つのメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態、非旋回状態におけるシフトパターンをそれぞれ最適に設定でき、旋回時における不要なアップシフトを防止することができる。このため、シフトハンティングが防止されるとともに、旋回終了時にドライバが加速を要求した場合は、ダウンシフトをすることなく加速が行なわれスムーズな加速が可能になる。また、不要なアップシフトとダウンシフトがなくなるため、トランスミッションを構成する部品への負荷頻度が低減される。さらに、滑り易い路面状況で転舵するような状態では、不要なアップシフトが生じた後のダウンシフトが生じると駆動力変化が大きくなりタイヤがスリップし易くなるが、これを有効に防止できる。また、不要なアップシフトがなくなるため、ドライバのアクセルワークが軽減され、ドライバへの負担も低減できる。
【0041】
次に、図8は上記発明の実施の形態のシフトパターン決定手順の変形例を示すフローチャートである。すなわち、上記発明の実施の形態では、前記変速状態設定部25で行なわれるシフトパターンの決定は、上方基準値GH と下方基準値GL で定めたヒステリシスに基づいて行なうようになっているが、本変形例では、旋回時専用のシフトパターンから通常のシフトパターンへの切換えが、車速と前後輪差回転数とが設定条件を満たした際に行なわれ、通常のシフトパターンから旋回時専用のシフトパターンへの切換えが、旋回適合度が設定値以上になった場合に行なわれるようになっており、この手順のみ異なるものである。
【0042】
図8のシフトパターン決定手順において、まず、S301で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンか否か判定する。
【0043】
そして、通常パターン(非旋回状態のパターン)の場合はS302に進み、旋回適合度Gs が設定値Gsc以上か否か判定し、旋回適合度Gs が設定値Gscに達しない場合(Gs <Gscの場合)は非旋回状態と判定してS303に進み、シフトパターンを通常のパターンに決定する。
【0044】
また、上記S302で、旋回適合度Gs が設定値Gsc以上の場合(Gs ≧Gscの場合)は旋回状態と判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。
【0045】
一方、上記S301で現在設定されているシフトパターンが旋回時専用パターンの場合はS305に進み、車速Vが設定車速VC 以上か否か判定し、車速Vが設定車速VC 以上の場合(V≧VC の場合)はS306に進み、車速Vが設定車速VC に達しない場合(V<VC の場合)は、旋回状態が継続していると判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。
【0046】
上記S305でV≧VC の場合と判定されS306に進むと、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下か否かの判定が行なわれ、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc より大きい場合(ΔN>ΔNc の場合)は、旋回状態が継続していると判定してS304に進み、シフトパターンを旋回時専用のパターンに決定する。また、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下の場合(ΔN≦ΔNc の場合)はS307に進み、旋回時専用のパターンを解除して通常のパターンに決定する。
【0047】
すなわち、本変形例では、車速Vが設定車速VC 以上、かつ、前後輪差回転数ΔNが設定前後輪差回転数ΔNc 以下の場合に、旋回時専用のパターンを解除して通常のパターンに決定するようになっている。
【0048】
このような手順で旋回時専用のシフトパターンと通常のシフトパターンの切換えを行なうようにしたため、ドライバビリティの向上と車両挙動の安定化を図ることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、旋回状態を検出するための特別なセンサを追加することなく、また、必要最小限のメンバシップ関数でファジー推論により車両の旋回状態を精度良く検出し、旋回状態、非旋回状態におけるシフトパターンをそれぞれ最適に設定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動変速機の制御装置の機能ブロック図
【図2】自動変速機の制御装置の概略構成を示す説明図
【図3】通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの説明図
【図4】シフトパターン設定手順のフローチャート
【図5】シフトパターン決定のフローチャート
【図6】各メンバシップ関数の説明図
【図7】通常のシフトパターンと旋回時専用シフトパターンの切換えのヒステリシスの説明図
【図8】シフトパターン決定手順の変形例を示すフローチャート
【符号の説明】
1 エンジン
5 自動変速機
6 トルクコンバータ
7 変速機構部
8 油圧回路
9 トランスミッションコントロールユニット
10 ソレノイドA
11 ソレノイドB
12 スロットル開度センサ
13 前輪回転数センサ
14 後輪回転数センサ
21 車速算出部
22 前後輪差回転数算出部
23 メンバシップ値設定部
24 旋回適合度演算部
25 変速状態設定部
26 変速位置決定出力部
Claims (2)
- 車速を検出する車速検出手段と、エンジン負荷を検出するエンジン負荷検出手段と、所定の運転条件で車速とエンジン負荷とに基づき予め設定したシフトパターンで変速位置を決定し出力する変速位置決定出力手段とを備えた自動変速機の制御装置において、
前輪と後輪の回転数の差を算出する前後輪差回転数算出手段と、前輪と後輪の回転数の差と車速とエンジン負荷のそれぞれについて、予め設定しておいたメンバシップ関数に基づき、各メンバシップ値を定めるメンバシップ値設定手段と、予め設定したファジールールを基に上記各メンバシップ値から旋回走行の適合度を求める旋回適合度演算手段と、上記旋回走行の適合度に応じて上記シフトパターンを設定する変速状態設定手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 上記変速状態設定手段は、上記旋回走行の適合度に応じてアップシフトを禁止することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
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- 1996-01-12 JP JP428696A patent/JP3792765B2/ja not_active Expired - Fee Related
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