JP3787590B2 - ろ材およびそれを用いたエアフィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はろ材およびそれを用いたエアフィルターに関する。さらに詳しくは、本発明は、湿式抄紙シートとポリテトラフルオロエチレン多孔質膜との積層体からなる、難燃性でガス発生量の少ないろ材、およびこのものを用いてなるクリーンルームなどのHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターやULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルターなどとして好適なエアフィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
クリーンルーム等のHEPAフィルターやULPAフィルターなどに用いられる高性能エアフィルターろ材は、従来、チョップドストランドガラス繊維およびマイクロガラス繊維を混合して湿式抄紙法で抄造した後、バインダーを付与して強度を強くする方法で作製されていたが、この方法で作製されたろ材は、ガラス繊維で構成されているために、半導体分野やバイオ分野などで使用される場合、微量の酸、アルカリなどとの接触によりガラス繊維表面が侵食され、ろ材から微量のホウ素やリンなどが漏出し、半導体等の電子分野における製品やバイオ系製品の性能悪化を招くことが問題視されている。また、ろ材に弾性がなく、折り加工時や衝撃が加わった際にガラス繊維が折れて脱落するという欠点がある。さらに、使用済みのろ材を廃棄する場合、焼却してもほとんど減容しないことから不燃ゴミ問題も深刻である。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、ガラス繊維を一切使用せずにポリプロピレン等を原料としてメルトブロー法で作製した不織布に、直流高電圧を印加してエレクトレット化することにより捕集効率を高めたエレクトレットろ材が開示されている(特開平5−7713号公報、特開平6−128858号公報、特公平5−10962号公報)。この方法で作製されたエレクトレットろ材は、静電気引力により捕集効率を高めていることから圧力損失を低く抑えることが可能であり、かつ燃焼可能というメリットもある。しかしながら、次に示すような条件下では捕集効率の低下が懸念されている。
▲1▼高温高湿度条件下
▲2▼アルコールなどの有機溶剤にさらされた場合
▲3▼ろ材に粉塵が堆積した場合
そのため半導体産業などにおいては、重要な部位に使用されるには至っていないのが実状である。
【0004】
上記問題を解決するために、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと略記する)多孔質膜を用いたろ材が開発されている。しかしながら、このPTFE多孔質膜は、厚みが1〜50μmと非常に薄くて柔軟であるために、単独でろ材として使用することは極めて困難である。したがって、通常補強用の支持体層を積層して使用している。例えば特開平9−206568号公報、特開平10−211409号公報ではPTFE多孔質膜に補強材、補強用支持体層を積層している。
【0005】
しかしながら、これらの公報においては、補強材や補強用支持体の難燃性及びそれらからのガス発生量を抑えることについては全く触れておらず、通気性を悪化させないことと、フィルターとして加工する際の折り適性を向上させるために、該補強材や補強用支持体が使用されており、その結果、難燃性に劣ったり、フィルターからのガス発生量が多かったりするなどの問題が生じる。そこで、不織布からなる補強材を使用し、熱処理することによりガス発生量を抑えるろ材が提案されているが(特開平11−137931号公報)、難燃性については全く触れておらず、実施例のエアフィルターろ材では難燃性は得られていない。
【0006】
一方、厨房用のレンジフードや換気扇フィルター用として、難燃性繊維を使用し、かつ難燃剤を含浸付与した難燃性フィルターが開示されている(特開平11−169617号公報)。しかしながら、このフィルターは用途が全く異なるものであり、ガスの発生については触れていない。
このように、難燃性を有すると共に、ガス発生量の少ないろ材およびフィルターは、まだ見出されていないのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、フィルターとして加工する際の折り適性が良好であって、難燃性を有すると共に、ガス発生量の少ないろ材、およびこのものを用いてなるエアフィルターを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分として含む繊維混合物を湿式抄紙してなるシートと、PEFE多孔質膜との積層体であって、特定の難燃性状とガス発生性状を有するろ材により、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分として含む繊維混合物を湿式抄紙してなるシートからなる補強用支持体と、PTFE多孔質膜との積層体であって、JIS L1091A−1法による難燃性が区分3であり、かつ120℃で20分間加熱した際の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下、BHTと略記する)とフタル酸ジブチル(以下、DBPと略記する)の合計ガス発生量が、ガスクロマトグラフィー質量分析法に基づき、10μg/g以下であることを特徴とするろ材を提供するものである。
本発明はまた、上記ろ材を用いてなるエアフィルターをも提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のろ材は、難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分として含む繊維混合物を湿式抄紙してなるシートからなる補強用支持体と、PTFE多孔質膜との積層体からなるものである。そして、本発明においては、該ろ材は、JIS L1091A−1法(45°ミクロンバーナ法)により、炭化時間、残炎時間、残じん時間および炭化面積を測定して判定した難燃性が、区分3である。さらに120℃で20分間加熱した際のBHTとDBPの合計ガス発生量が、ガスクロマトグラフィー質量分析法に基づき、10μg/g以下である。なお、ガス発生量の測定方法については、後で詳細に説明する。
【0011】
本発明のろ材における湿式抄紙シートにおいて、必須成分の1つとして用いられる難燃性繊維としては、難燃性試験法JIS K7201A−1法に従って測定したLOI値が26以上であればよく、特に制限されず、様々なものを用いることができる。
【0012】
このような難燃性繊維としては、例えばポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドヒドラジン、ポリヒドラジンおよびポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3、4−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維の中から選ばれる少なくとも1種、あるいは塩化ピニルおよび/または塩化ビニリデンを共重合させてなる難燃性アクリル系繊維、ポリクラール繊維およびポリ塩化ビニル繊維の中から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられる。これらの中で、特に好ましい難燃性繊維は、塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを共重合させてなる難燃性アクリル系繊維、ポリクラール繊維およびポリ塩化ビニル繊維である。
【0013】
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを共重合させてなる難燃性アクリル系繊維は、アンチモン系化合物やハロゲン原子を含んだものがさらに好ましい。その理由として、ポリマー中にハロゲン原子が存在するとポリマー自身の加熱分解によってハロゲン化水素を発生し、このハロゲン化水素がOHラジカルをトラップして難燃効果を発現すると同時に発生する水により難燃性が高まる。また、アンチモン系化合物として、例えば五酸化アンチモンが存在するとポリマーとの反応によって生成する二酸化炭素が難燃性を更に向上させる。このため可燃性の熱接着性繊維と併用しても難燃性を保つことができる。
【0014】
この難燃性繊維の繊維径および繊維長については特に制限はないが、繊維径は、通常0.5〜5.0デニール、好ましくは1.0〜2.0デニールであり、繊維長は、通常1〜10mm、好ましくは3〜7mmの範囲である。また、シート中の難燃性繊維の含有量は、通常30〜90重量%、好ましくは50〜85重量%の範囲である。この含有量が30重量%未満では良好な難燃性が得られないし、90重量%を超えるとシートの引張強度や腰が不十分となる。
【0015】
該湿式抄紙シートにおいて、もう1つの必須成分として用いられる熱接着性繊維は、通常シートの引張強度、引き裂き強度、腰(硬さ)を向上させるために使用されるが、本発明ではPTFE多孔質膜との積層体を作製する場合の接着強度を高める役割も同時に果たす。
【0016】
シートを作製する段階では、乾燥工程にて熱接着性繊維同士及びその他の繊維との交点を接着することにより各種強度を高める働きをする。乾燥工程では熱接着性繊維の融点以上に加温する必要があり、シリンダードライヤーを使用した乾燥機では、通常90〜150℃の範囲内である。しかし、エアドライヤー方式の乾燥機の場合には、熱風温度が200℃以上に達する装置もあるが、シート全体の温度が90〜150℃程度になるようにコントロールできれば何ら差し支えない。
【0017】
下記に示すメルティ4080の場合、芯の融点が約260℃、鞘の融点が約110℃である。したがって110℃以上の温度で鞘部の低融点ポリエステルが軟化し溶融する。軟化や溶融した鞘部に接する繊維が接着することによりシートの強度を向上させるものである。シートの生産性や経済性を考慮すると、乾燥用のシリンダードライヤー温度は、鞘部の融点よりも10〜20℃程度高いのが好ましく、この場合120〜130℃が望ましい。
【0018】
熱接着性繊維の融点は、ドライヤーへの負荷を小さくし、かつ少ない熱エネルギーで融着することが望ましいことから、おおむね70〜130℃であるため、ドライヤーの温度は90〜150℃の範囲が好ましい。150℃を超えた過剰な加熱は熱エネルギーの無駄になるばかりでなく、熱接着性繊維から溶融した部分が滴下して繊維の交点に留まりにくくなり、逆にシートの強度低下を招く場合がある。また、過剰な溶融によりシートがシリンダードライヤーに貼り付いたり、ドライヤー直後のロールに溶融物が貼り付くなどのトラブルが発生する。
【0019】
熱接着性繊維は、シートの強度等を向上させる役割ばかりでなく、シートとPTFE多孔質膜との積層体を形成させる際に行う熱ラミネートや熱エンボス加工時に、熱接着性繊維が軟化、溶融して該多孔質膜との接着力を高める働きをする。
【0020】
熱接着性繊維としては、芯鞘タイプ(コアシェルタイプ)、並列タイプ(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。例えば、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(商品名:ダイワボウNBF−H:大和紡績社製)、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ(商品名:ダイワボウNBF−E:大和紡績社製)、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(商品名:チッソESC:チッソ社製)、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ(商品名:メルテイ4080:ユニチカ社製)などが挙げられる。
また、ビニロンバインダー繊維(VPB107−1:クラレ社製)などの熱水溶融タイプなども使用できる。
【0021】
熱接着性繊維の繊維径は特に限定されないが、0.3〜5デニールであることが好ましく、より好ましくは0.5〜2デニールである。繊維径が0.3デニール未満ではシートの圧力損失が高くなり、フィルターの寿命が短くなる原因となる。また、繊維径が5デニールを超えるとシート中の繊維の段階的な繊維径分布に空洞部ができ、ろ材の圧力損失は低くなるものの、捕集効率が低下するおそれがある。また、その他の繊維との融着面積が少なくなりシートの強度向上が少ない。この熱接着性繊維の繊維長は、通常1〜10mm、好ましくは3〜7mmの範囲である。シート中の熱接着性繊維の含有量は、通常5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲である。この含有量が5重量%未満では良好な引張強度、腰が得られないし、60重量%を超えるとシートの難燃性が不十分となる。
【0022】
本発明においては、前記の難燃性繊維と熱接着性繊維を含む繊維混合物を湿式抄紙してシートを作製するが、該繊維混合物としては、繊維径10μm以下の繊維を含むものが好ましい。そのためには、例えば前記難燃性繊維の一部を繊維径10μm以下とするのが有利である。繊維径10μm以下の繊維は、湿式抄紙の際にその他の繊維とのネットワークを形成することにより湿式抄紙後の未乾燥のシートに適度な引張強度を与え、スムーズに乾燥ゾーンへと送ることを可能とするばかりでなく、乾燥後のシートの捕集効率を高める効果がある。特にポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドヒドラジン、ポリヒドラジン、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3、4−ジフェニルエーテルテレフタルアミド、PTFE等からなる繊維は、非常に剛直であることから、均質化装置等で叩解した場合でも繊維が寸断されることなく縦方向に裂かれて細繊化(フィブリル化)が進むため、ろ材に適用した場合に圧力損失を低く抑えると共に、捕集効率を高めることが可能となる。また素材が難燃性であるために難燃性ろ材には好適である。
【0023】
また、難燃性はないものの捕集効率を高めるために繊維径10μm以下のレーヨン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、木材パルプ等からなる繊維であっても、難燃性を阻害しない範囲内で配合することができる。
【0024】
繊維径10μm以下の繊維の具体的な例としては、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−400S(ダイセル化学工業製)、パルプを均質化装置でフィブリル化したセリッシュKY−100S(ダイセル化学工業製)、リンターを均質化装置でフィブリル化したPC−310S(ダイセル化学工業製)、アクリル繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−410S(ダイセル化学工業製)、ポリエチレン繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−420S(ダイセル化学工業製)、ポリプロピレン繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−430S(ダイセル化学工業製)などが挙げられる。さらには、コートルズ社のセルロースステープル(商品名:リヨセル)をビーターやディスクリファイナー、PFIミルなどの叩解機でフィブリル化した繊維などが挙げられる。
シート中の繊維径10μm以下の繊維の含有量は、1〜40重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、3〜35重量%である。
【0025】
本発明においては、前記の難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分として含む繊維混合物を湿式抄紙してシートを作製するが、上記繊維混合物には、一般の不織布に通常用いられる他の繊維を、所望により、本発明の目的が損なわれない範囲で配合することができる。
【0026】
湿式抄紙法については特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。まず、該繊維混合物を、固形分濃度が、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下になるように、パルパーなどの分散タンク内で分散水に投入し、十分に撹拌して均一に分散させる。この撹拌、分散処理は、集束している繊維を開繊する目的も有するが、同時にBHTやDBP等の発生ガスの根源となる繊維表面付近に残存する油剤、可塑剤、酸化防止剤等を繊維から離脱させるものである。
【0027】
この分散処理においては、繊維を均一に分散させるために、界面活性剤を用いることが望ましいが、シート作製後のガス発生量に対する影響を考慮して使用量、種類を選択することが肝要である。
【0028】
均一に混合分散した繊維の分散安定性を向上させるために、アニオン性のポリアクリルアミド系粘剤を繊維分散液中に添加することにより、湿式抄造後のシートの地合はさらに向上する。
【0029】
次に、このようにして分散処理したのち、水中に分散した繊維を、さらに水で0.01〜0.5重量%程度に希釈してから、従来一般紙や湿式不織布の製造において慣用されている各種抄紙機、例えば長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機などを用いて抄造する。上記のようにさらに希釈することにより繊維の洗浄効果が高くなり、例えば、0.01重量%で抄造した場合は未処理の場合と比較して約10000倍の水で洗浄していることになり、繊維表面付近の離脱しやすい油剤、可塑剤等は洗い流される。抄造する場合、通常白水(脱水した水)は循環して使用するが、循環により白水中の油剤、可塑剤等の濃度が上昇し繊維に再度付着することもあるため、この場合、極力新水を使用することが望ましい。
【0030】
抄造した後の乾燥は、シートに配合した熱接着性繊維の融点以上に加熱して接着させシート強度を高めることが目的であるが、乾燥後にシートから発生するガスの量を低減させる役割も果たす。シートがろ材やフィルターに加工されて使用される場合の温度条件、例えば、クリーンルーム等であれば極端に過酷な条件であっても80℃以下であると考えられる。その場合、シートを80℃を超える温度で加熱することにより繊維内部に残存する油剤、可塑剤、酸化防止剤等を予めこの段階で放出させることにより、実際に使用する条件下でのガス発生量を少なくする役割を果たすものである。乾燥する温度は、前述したように熱接着性繊維の融点以上であることが肝要であり、90℃〜150℃の範囲が好ましい。しかし、エアフード型のドライヤー等の場合や抄造速度が非常に速くシートに十分な熱量を与えられない場合等は加熱が150℃を超えても何ら差し支えない。乾燥機としては、例えばシリンダードライヤー、スルードライヤー、赤外線ドライヤーなどを用いることができる。
このようにして得られたシートの坪量は、通常10〜100g/m2、好ましくは15〜50g/m2の範囲である。
【0031】
本発明のろ材に用いられる該シートは、用途によりさらに強度、腰を向上させるために、湿式抄紙し、乾燥した後、難燃性やガス発生量の影響を考慮した上で各種バインダーを付与することが可能である。
【0032】
このバインダーとしては、例えば、アクリル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、エポキシ系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、SBR系ラテックス、NBR系ラテックス、エポキシ樹脂系バインダー、フェノール樹脂系バーンダー、ポリビニルアルコール、デンプン、一般的に製紙工程で使用される紙力剤などが挙げられ、これらを単独、あるいは架橋剤と併用して使用することができる。
【0033】
湿式抄紙して乾燥処理した後、付与するバインダー量は、シートの坪量に対して、通常20重量%以下である。20重量%を超えると、強度、腰は強くなるものの捕集性能が低下すると共に、圧力損失が高くなり、寿命が短くなるおそれがある。
また、用途に応じてさらにシートに撥水性、さらなる難燃性を付与させるために、撥水剤、難燃剤を付与してもよい。
【0034】
本発明のろ材は、このようにして得られたシートとPTFE多孔質膜との積層体からなるものであって、積層数としては2層以上であればよく、特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができる。例えば超高性能エアフィルター(ULPA)用ろ材の場合、シート/PTFE多孔質膜/シート/PTFE多孔質膜/シートとで5層を積層して使用することができる。
【0035】
また、該PTFE多孔質膜の厚さ、孔の径および空孔率などについては特に制限はなく、得られるろ材の用途に応じて適宜選択されるが、厚さは、通常1〜100μm、好ましくは1〜50μmの範囲である。
【0036】
積層方法としては、接着剤を使用する方法もあるが、接着剤を使用した場合、ろ材のミクロポアを埋めてしまい、その結果圧力損失が上昇し寿命が短くなるおそれがあるため、熱ラミネート法が好ましい。本発明に係るシートに配合されている熱接着性繊維はシート作製時の乾燥工程(90〜150℃)で一度軟化、溶融して繊維同士またはその他の繊維との交点が接着しているが、熱ラミネートの際に乾燥工程で加熱された以上の温度が加わると再度軟化、溶融することから熱融着繊維と多孔質膜との交点で接着する。そのため、熱ラミネートの温度は、シート作製時の乾燥工程の温度より高くするのがよい。熱エネルギーコストと接着性を考慮し、150〜180℃の範囲が好ましい。しかし、接着性が不良の場合やラミネート速度が非常に早くシートに熱が伝導しにくい場合には、180℃を超えた温度で処理するのが有利である。
【0037】
本発明のエアフィルターは、このようにして作製されたろ材を用いて得られたものであり、例えば中性能エアフィルター、HEPAフィルター、ULPAフィルターなどとして用いられる。本発明のエアフィルターは、難燃性で、かつガス発生量が少なく、例えばクリーンルームなどに好適に用いることができる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
実施例1
繊維の一部が繊維径10μm以下であるポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維(日本アラミド社製:トワロン1097)、難燃性アクリル繊維(スーパーバルザー:三菱レイヨン社製)、熱接着性繊維(商品名:メルテイ4080、2d×5mm:ユニチカ社製)、ビニロンバインダー繊維(VPB107−1:クラレ社製)を各々重量比10:65:20:5で配合し、分散水に対する繊維の固形分濃度0.2重量%で30分間分散した後、更に0.04重量%に水で希釈して乾燥重量で30g/m2になるように25cm角の角型手抄き器で抄紙後、温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥させて積層用シートを得た。
【0040】
次いで、得られた積層用シート2枚の間に厚さ10μmのPTFE多孔質膜(ミクロテックスNTF1432:日東電工社製)を挟み、熱ラミネートしてろ材を得た。
【0041】
比較例1
市販のポリエステル/ポリエチレンの芯鞘繊維(芯:ポリエステル、鞘:ポリエチレン)からなるスパンボンド不織布(ユニチカ社製エルベスS0303WDO、坪量30g/m2)2枚の間にPTFE多孔質膜(ミクロテックスNTF1432:日東電工社製)を挟み、熱ラミネートしてろ材を得た。
【0042】
上記の実施例1および比較例1で作製したろ材について、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
<難燃性>
繊維製品の燃焼性試験方法(JIS L 1091)のA−1法(45゜ミクロバーナ法)により、炭化時間、残炎時間、残じん時間、炭化面積を測定して区分1、区分2,区分3を判定した。(区分1が難燃性が不良であり、区分3が難燃性が最も良い)
【0043】
<ガス発生量>
▲1▼発生ガスサンプリング方法
加熱装置には日本分析工業社製JHS−100パージ&トラップ式キューリーポイントヘッドスペースサンプラーを用い、120℃で20分間試料を加熱して発生させたガスを吸着剤(テナックスTA:GLサイエンス社製)に吸着させ、吸着したガスを358℃で10秒間加熱して脱着させ、このガスをガスクロマトグラフィー(HP社製GC6890及び5890)を用いて分析し、BHTとDBPのトータル量(μg/g)を算出した。
【0044】
▲2▼ガスクロマトグラフィー測定条件
カラム:J&W社製DB−1 0.25mmφ×30m
カラム温度:45℃(3分)→10℃(1分)→260℃(10分)
注入口温度:200℃
検出器:FDI
パージガス:ヘリウム
【0045】
<圧力損失>
圧力損失(Pa)は、ろ材に空気を風速5.3cm/秒で通気させた際の通気抵抗を水中マノメーターで測定した。
【0046】
<捕集効率>
捕集効率(%)は、DOPエアロゾル(フタル酸ジオクチル、粒径0.3μm)粒子を発生させ、この粒子を含有する空気を風速5.3cm/秒で通気させ、ろ材の前後で空気をサンプリングし、それぞれの粒子濃度をマルチダストカウンターで測定し下記式1より算出した。
A(%)={(B−C)/B}×100 ・・・(式1)
A:捕集効率
B:ろ過前の粒子数
C:ろ過後の粒子数
【0047】
【表1】
【0048】
上記実施例1で作製したろ材に用いられた積層用シートは、繊維状態の段階で湿式抄紙の特徴である水への分散工程があるため、ここで約500倍の水で分散することにより希釈洗浄され、更に5倍(トータル2500倍)に希釈されてシート化されていることから、繊維表面付近の離脱し易い油剤、可塑剤等は洗い流される。更に乾燥工程で水分の蒸発と共にBHT、DBP等のガスもシート内から放出され、得られたシート内に残存するBHT、DBP等が減少しており、積層用シート2枚の間にPTFE多孔質膜を挟み熱ラミネートしてろ材とした場合でも、ガス発生量の少ない積層用シートに挟まれているため難燃性が区分3であり、ガス発生量も非常に少なかった。
【0049】
比較例1のろ材は、市販のポリエステル/ポリエチレン芯鞘繊維からなるスパンボンド不織布2枚の間にPTFE多孔質膜を挟み熱ラミネートしたろ材である。難燃性は区分1で非常に悪かった。また、スパンボンド不織布は水への分散工程がないため、ガス発生量が多かった。
【0050】
実施例2
実施例1の配合で幅450mmの円網テスト抄紙機で作製した坪量30g/m2の積層用シート2枚の間にPTFE多孔質膜(ミクロテックスNTF1432:日東電工社製)を挟み、熱ラミネートして得たろ材を(縦305mm)×(横305mm)×(奥行き150mm)のフィルターにプリーツ数61で組み込んだ。フィルターに組み込む際のプリーツ加工性、形態安定性は良好であった。
【0051】
【発明の効果】
本発明のろ材は、繊維状態の段階で湿式抄紙の特徴である水への分散工程、抄紙工程トータルで約2500〜10000倍に希釈されてシート化されていることから、繊維表面付近の離脱し易い油剤、可塑剤等は洗い流される。更に乾燥工程で水分の蒸発と共にBHT、DBP等のガスもシート内から放出され、したがってろ材内に残存するBHT、DBP等が減少する。また、難燃性繊維を必須とするシートとPTFE多孔質膜とを用いているため、難燃性が区分3で良好である。
Claims (6)
- 難燃性繊維と熱接着性繊維を必須成分として含む繊維混合物を湿式抄紙してなるシートからなる補強用支持体と、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜との積層体であって、JIS L1091A−1法による難燃性が区分3であり、かつ120℃で20分間加熱した際の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールとフタル酸ジブチルの合計ガス発生量が、ガスクロマトグラフィー質量分析法に基づき、10μg/g以下であることを特徴とするろ材。
- 難燃性繊維が、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−p−ベンズアミド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドヒドラジン、ポリヒドラジンおよびポリ−p−フェニレンテレフタルアミド−3、4−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のろ材。
- 難燃性繊維が、塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンを共重合させてなる難燃性アクリル系繊維、ポリクラール繊維およびポリ塩化ビニル繊維の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のろ材。
- 繊維混合物が、繊維径10μm以下の繊維を含む請求項1、2または3に記載のろ材。
- 湿式抄紙してなるシートが、繊維混合物を水で0.01〜0.5重量%に希釈してから抄造し、その後90〜150℃に乾燥して得られたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のろ材。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のろ材を用いてなるエアフィルター。
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