JP3787334B2 - 平版印刷版原版 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷法は水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方式であり、これに使用される平版印刷版の印刷版面には、水を受容して油性インキを反撥する領域(以下、この領域を「非画像部」という。)と、水を反撥して油性インキを受容する領域(以下、この領域を「画像部」という。)とが形成される。
【0003】
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)は、その表面が非画像部を担うように使用されるため、親水性および保水性が優れていること、更にはその上に設けられる画像記録層との密着性が優れていること等の相反する種々の性能が要求される。
支持体の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。また、支持体の保水性が低すぎると、印刷時に湿し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生する。よって、いわゆる水幅が狭くなる。
【0004】
一方、非画像部においては、汚れにくさを維持するため、不要なインキが付着しないように、表面の凹凸形状がなだらかである方が好ましいが、表面の凹凸形状をなだらかにすると、画像記録層と支持体との密着性が低下し、耐刷性が低下する。即ち、耐汚れ性と耐刷性とは、トレードオフの関係にある。
【0005】
これらの性能の良好な平版印刷版用支持体を得るためには、アルミニウム板の表面を砂目立て(粗面化処理)して凹凸を付与するのが一般的である。この凹凸については、様々な形状が提案されている。
例えば、特許文献1には、支持体が大小ピットの二重構造を有し、大ピットが均一性を有しかつ小ピットの平均開口径が0.2μm以上、0.8μm以下であり、かつ小ピットの深さと開口径の比が0.2以下である平版印刷版が提案されている。
しかしながら、この平版印刷版は、画像記録層と支持体との間の密着性が低く、耐刷性に劣るという問題があった。
【0006】
また、平版印刷版は、一般に、平版印刷版原版に露光および現像を施して得ることができるが、適切な露光および現像を行うにあたり、平版印刷版原版の感度が重要な特性となっている。
この感度の向上等を目的として、特許文献2には、キノンジアジド化合物とトリアジン化合物を含有する特定の感光層を有する平版印刷版において、支持体表面の凹凸の程度の指標である表面積差、平均粗さおよび明度を特定範囲に規定することが提案されている。
しかしながら、この平版印刷版に用いられている支持体上に、熱により画像形成することができる画像記録層を設けると、感度に劣るという問題があった。
【0007】
また、平版印刷版を用いての印刷中においては、作業者が版面の非画像部の光り具合を目視で観察して、インキと湿し水の量のバランスを調整している。したがって、光り具合の観察しやすさ、即ち、いわゆる水上がりの見やすさは、平版印刷版の重要な特性となっている。
【0008】
このように、平版印刷版原版には、感度ならびに平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性および水上がりの見やすさに優れることが望まれている。しかしながら、これらの特性のいずれにも優れる平版印刷版原版は知られていなかった。
【0009】
ところで、平版印刷版の耐刷性を向上させる手段として、現像後の後加熱処理(以下「バーニング処理」という。)により画像記録層を硬化させることが知られている。そして、バーニング処理により耐刷性が大幅に向上する画像記録層として、ノボラック樹脂を主体とする画像記録層が知られている。
しかしながら、このようなノボラック樹脂を主体とする画像記録層を有する平版印刷版原版は、感度および耐汚れ性と、耐刷性とのバランスをとることが困難であった。
【0010】
したがって、感度ならびに平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性および水上がりの見やすさのいずれにも優れ、好ましくは更にバーニング処理後の耐刷性(以下「バーニング耐刷性」という。)にも優れる平版印刷版原版が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】
特開平11−99758号公報
【特許文献2】
特開平8−123014号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、感度ならびに平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性および水上がりの見やすさのいずれにも優れ、好ましくは更にバーニング耐刷性にも優れる平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく、特定の塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理により、平版印刷版用支持体の表面形状および表面のSi原子付着量を特定の範囲とした場合に、感度ならびに平版印刷版としたときの耐刷性、耐汚れ性および水上がりの見やすさがいずれも優れたものになることを見出した。
また、本発明者は、上記平版印刷版用支持体を用いれば、ノボラック樹脂を主体とする画像記録層を用いた場合であっても、感度および耐汚れ性と、耐刷性とのバランスがとれ、バーニング処理による耐刷性の大幅な向上の効果を享受することができることを見出した。
更に、本発明者は、上記平版印刷版用支持体を用いれば、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有せず、非還元糖と塩基とを含有するpH9.0〜13.5の現像液を用いて現像した場合であっても、感度および耐汚れ性と、耐刷性とのバランスがとれることを見出した。また、この現像液を用いると、現像時にカスやヘドロの発生を防止することができるため、現像液の安定性が大幅に向上することも見出した。
そして、本発明者は、これらの知見に基づき、本発明を完成させた。
【0014】
即ち、本発明は、以下の(1)および(2)を提供する。
【0015】
(1)アルミニウム板に少なくとも塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理、陽極酸化処理およびアルカリ金属ケイ酸塩処理を施して得られる平版印刷版用支持体上に、熱により画像形成することができる画像記録層を設けてなる平版印刷版原版であって、
前記塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理が、前記アルミニウム板のウェブを略水平方向に搬送しつつ電気化学的粗面化処理を施す装置により、交流を用いて、前記アルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量が300〜600C/dm 2 となるように行われ、
前記平版印刷版用支持体が、前記塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理により形成された、平均開口径2〜10μmの大ピットと平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットとを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ、前記小ピットの開口径に対する深さの比の平均が0.2〜0.6であり、
前記平版印刷版用支持体について、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、下記式(1)により求められる表面積差ΔS50が20〜40%であり、
前記平版印刷版用支持体の表面のSi原子付着量が1.0〜15.0mg/m2 であり、
前記画像記録層が、ノボラック樹脂を30質量%以上含有する、平版印刷版原版。
【0016】
ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
【0018】
(2)上記(1)に記載の平版印刷版原版に露光した後、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有せず、非還元糖と塩基とを含有するpH9.0〜13.5の現像液を用いて現像して平版印刷版を得る平版印刷版の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、平均開口径2〜10μmの大ピットと平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットとを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ、前記小ピットの開口径に対する深さの比の平均が0.2〜0.6であり、
原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、下記式(1)により求められる表面積差ΔS50が20〜40%であり、
表面のSi原子付着量が1.0〜15.0mg/m2 である。
【0020】
ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
【0021】
<表面の砂目形状>
本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、平均開口径2〜10μmの大ピットと平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットとを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ、前記小ピットの開口径に対する深さの比の平均が0.2〜0.6である。
【0022】
平均開口径2〜10μmの大ピットは、湿し水の水膜の厚さより深い凹凸となるため、支持体表面に大ピットが存在していると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、水上がりの見やすさが優れたものになる。これにより、版面に供給する湿し水の量を調整しやすくなる。大ピットが存在しないと、凹凸が少なくなるため、湿し水の表面が平滑になってしまい、水上がりの見やすさが劣ってしまう。大ピットの平均開口径が小さすぎる場合も同様である。大ピットの平均開口径が大きすぎると、感度、耐刷性および耐汚れ性のバランスをとることが困難となる。大ピットの平均開口径は、2μm以上であり、4μm以上であるのが好ましく、また、10μm以下であり、8μm以下であるのが好ましい。
【0023】
平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットは、主にアンカー(投錨)効果によって画像記録層を保持し、耐刷性を付与する機能を有する。小ピットの平均開口径が大きすぎると、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数が減るため、耐刷性が低下する場合がある。また、平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットは、均一な水膜を形成させ、耐汚れ性を改良する役割も果たす。小ピットの平均開口径は、0.05μm以上であり、0.1μm以上であるのが好ましく、また、0.8μm以下であり、0.6μm以下であるのが好ましい。
【0024】
本発明においては、小ピットの開口径に対する深さの比の平均を0.2〜0.6にすることにより、良好な耐刷性および耐汚れ性を得る。小ピットの開口径に対する深さの比の平均が小さすぎると、耐刷性に劣る場合がある。小ピットの開口径に対する深さの比の平均は、0.2以上であり、0.3以上であるのが好ましく、また、0.6以下であり、0.5以下であるのが好ましい。
【0025】
本発明に用いられる平版印刷版用支持体において、表面の大ピットの平均開口径、小ピットの平均開口径、ならびに、小ピットの開口径の標準偏差および開口径に対する深さの平均の測定方法は、以下の通りである。
【0026】
(1)大ピットの平均開口径
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率1000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている大ピットを50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0027】
(2)小ピットの平均開口径
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小ピットを50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
【0028】
(3)小ピットの開口径に対する深さの比の平均
小ピットの開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において開口径0.8μm以下の小ピットを20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
【0029】
また、本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、上記式(1)により求められる表面積差ΔS50が20〜40%である。
ΔS50は、幾何学的測定面積S0 50 に対する粗面化処理による実面積Sx 50の増加の程度を示すファクターである。ΔS50が大きくなると、画像記録層との接触面積が大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができる。ΔS50を大きくするためには、小さな凹凸を表面に多数設けることが有効である。このように小さな凹凸を表面に多数設ける方法としては、例えば、塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理、高濃度かつ高温の硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理が好適に挙げられる。機械的粗面化処理や、通常の硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理によってもΔS50は大きくなるが、その程度は小さい。
本発明においては、ΔS50は20%以上であり、25%以上であるのが好ましい。ΔS50は大きすぎると耐汚れ性が低下するため、40%以下であり、35%以下であるのが好ましい。
【0030】
本発明の平版印刷版用支持体において、ΔS50を求める方法は、以下の通りである。
【0031】
(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測定
本発明においては、ΔS50を求めるために、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。即ち、平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、セイコーインスツルメンツ社製;NCH−10、NANOSENSORS社製;または、AC−160TS、オリンパス社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の50μm□を512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
【0032】
(2)ΔS50の算出
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 50とする。表面積差ΔS50は、得られた実面積Sx 50と幾何学的測定面積S0 50 とから、上記式(1)により求められる。
【0033】
更に、本発明に用いられる平版印刷版用支持体は、表面のSi原子付着量が1.0〜15.0mg/m2 である。
Si原子付着量は、蛍光X線分析装置(XRF:X−ray Fluorescence Spectrometer)を用いて検量線法により測定される単位面積あたりのSi原子の質量である。Si原子付着量が少なすぎると感度および耐汚れ性に劣る場合があり、また、多すぎると耐刷性に劣る場合がある。
本発明において、Si原子付着量は、1.0mg/m2 以上であり、3.0mg/m2 以上であるのが好ましく、また、15.0mg/m2 以下であり、10.0mg/m2 以下であるのが好ましい。なお、上記数値は、アルミニウム板がSi原子を含有する場合、含有されるSi原子量を補正した後のものである。
【0034】
検量線を作成するための標準試料としては、例えば、既知量のSi原子を含有するケイ酸ナトリウム水溶液を、アルミニウム板の上の30mmφの面積内に均一に滴下した後、乾燥させたものを用いることができる。蛍光X線分析の条件の例を以下に示す。
【0035】
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh、測定スペクトル:Si−Kα、管電圧:50kV、管電流:50mA、スリット:COARSE、分光結晶:RX4、検出器:F−PC、分析面積:30mmφ、ピーク位置(2θ):144.75deg.、バックグランド(2θ):140.70deg.および146.85deg.、積算時間:80秒/sample
【0036】
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明に用いられるアルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分として微量の異元素を含む合金板、またはアルミニウムがラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムの中から選ばれる。アルミニウム板に含まれる微量の異元素は、元素周期表に記載されているものの中から選択される1種以上で、その含量は0.001〜1.5質量%である。
アルミニウム合金に含まれる異元素の代表例としては、ケイ素、鉄、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、チタン、バナジウムが挙げられる。通常は、アルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載されている従来公知の素材のもの、例えば、JIS A1050材、JIS A3005材、JIS A1100材、JIS A3004材、国際登録合金 3103A、または、引っ張り強度を増す目的でこれらに5質量%以下のマグネシウムを添加した合金を用いる。
【0037】
また、本発明に用いられるアルミニウム板は、飲料缶等をスクラップして再生した不純物の多く含まれる地金を圧延して得られるアルミニウム板であってもよい。
後述する製造方法においては、上記微量元素が多く含まれていても、塩酸水溶液中での電気化学的粗面化処理で均一な砂目形状(ハニカムピット)が得られる。
【0038】
本発明においては、DC鋳造法から中間焼鈍処理および/または均熱処理を省略して製造されたアルミニウム板、連続鋳造法から中間焼鈍処理を省略して製造されたアルミニウム板を用いることもできる。
【0039】
アルミニウム板の厚みは0.05〜0.8mmであるのが好ましく、0.1〜0.6mmであるのがより好ましい。
【0040】
本発明の平版印刷版用支持体の製造においては、上記アルミニウム板に、塩酸を含有する水溶液中での電気化学的粗面化処理を含む表面処理を施して平版印刷版用支持体を得るのが好ましいが、この表面処理には、更に各種の処理が含まれていてもよい。なお、本発明に用いられる各種の工程においては、その工程に用いられる処理液の中に使用するアルミニウム板の合金成分が溶出するので、処理液はアルミニウム板の合金成分を含有していてもよく、特に、処理前にそれらの合金成分を添加して処理液を定常状態にして用いるのが好ましい。
【0041】
本発明においては、後述する各処理を組合わせて粗面化することができるが、各電気化学的粗面化処理の前には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理の後には、アルカリエッチング処理またはデスマット処理を施すのが好ましく、また、アルカリエッチング処理とデスマット処理とをこの順に施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング処理は、省略することもできる。
本発明においては、これらの処理の前に機械的粗面化処理を施すのも好ましい。また、各電気化学的粗面化処理を2回以上行ってもよい。また、これらの後に、封孔処理、親水化処理等を施すのも好ましい。
【0042】
特に、表面処理が、アルカリエッチング処理、デスマット処理、塩酸水溶液の中での電気化学的粗面化処理、アルカリエッチング処理および/またはデスマット処理、陽極酸化処理、親水化処理をこの順に含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
この場合、親水化処理が、アルカリ金属ケイ酸塩を用いるのは、本発明の好ましい態様の一つである。また、この場合、表面処理が、最初のアルカリエッチング処理の前に、機械的粗面化処理を含むのは、本発明の好ましい態様の一つである。
【0043】
以下、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、デスマット処理、電気化学的粗面化処理、陽極酸化処理、封孔処理および親水化処理のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0044】
<機械的粗面化処理>
本発明においては、機械的粗面化処理は電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。機械的粗面化処理によりアルミニウム板の表面積が増大する。
まず、アルミニウム板をブラシグレイニングするに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための脱脂処理、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。ただし、圧延油の付着が少い場合は脱脂処理は省略することができる。
引き続いて、1種または毛径が異なる少なくとも2種のブラシを用いて、研磨スラリー液をアルミニウム板表面に供給しながら、ブラシグレイニングを行う。
【0045】
機械的な粗面化処理については、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載されている。該ブラシグレイニングにおいて初めに用いるブラシを第1ブラシと呼び、最終に用いるブラシを第2ブラシと呼ぶ。図1において、51はアルミニウム板、52および54はローラ状ブラシ、53は研磨スラリー液、55、56、57および58は支持ローラである。該グレイン時、図1に示すように、アルミニウム板51を挟んでローラ状ブラシ52および54と、それぞれ二本の支持ローラ55、56および57、58を配置する。二本の支持ローラ55、56および57、58は互の外面の最短距離がローラ状ブラシ52および54の外径よりそれぞれ小なるように配置され、アルミニウム板51がローラ状ブラシ52および54により加圧され、2本の支持ローラ55、56および57、58の間に押し入れられる様な状態でアルミニウム板を一定速度で搬送し、かつ研磨スラリー液53をアルミニウム板上に供給してローラ状ブラシを回転させることにより表面を研磨することが好ましい。
【0046】
本発明に用いられるブラシは、ローラ状の台部にナイロン、ポリプロピレン、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を均一な毛長および植毛分布をもって植え込んだもの、ローラ状の台部に***を開けブラシ毛束を植込んだもの、チャンネルローラ型のもの等が好ましく用いられる。その中でも好ましい材料はナイロンであり、好ましい植毛後の毛長は10〜200mmである。なおブラシローラに植え込む際の植毛密度は1cm2 あたり30〜1000本が好ましく、更に好ましくは50〜300本である。
該ブラシの好ましい毛径は、0.24〜0.83mmであり、更に好ましくは0.295〜0.72mmである。毛の断面形状は円が好ましい。毛径が0.24mmよりも小さいとシャドウ部での耐汚れ性が悪くなり、0.83mmよりも大きいとブランケット上の耐汚れ性が悪くなる場合がある。毛の材質はナイロンが好ましく、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10等が用いられるが、引っ張り強さ、耐摩耗性、吸水による寸法安定性、曲げ強さ、耐熱性、回復性等でナイロン6・10が最も好ましい。
【0047】
ブラシの本数は、好ましくは1本以上10本以下であり、更に好ましくは1本以上6本以下である。ブラシローラは特開平6−135175号公報に記載されているように毛径の異なるブラシローラを組み合わせてもよい。
つぎに、ブラシローラの回転は好ましくは100rpmから500rpmで任意に選ばれる。支持ローラはゴムまたは金属面を有し真直度のよく保たれたものが用いられる。ブラシローラの回転方向は図1に示すようにアルミニウム板の搬送方向に順転に行うのが好ましいが、ブラシローラが多数本の場合は一部のブラシローラを逆転としてもよい。ブラシの押し込み量は、ブラシの回転駆動モーターの負荷で管理することが好ましく、回転駆動モータの消費電力が1.0〜15kW、更に2〜10kWとなるように管理することが好ましい。
【0048】
本発明において、上記太いブラシで粗面化した後、細いブラシで処理することにより、親水性、保水性および密着性のすべてを兼備えた支持体が得られて好ましい。その場合、湿し水が少ない場合のシャドー部のつぶれがないため水幅が広く、地汚れが発生しにくく、更に画像記録層との密着劣化がないことである。
本発明に用いられる研磨スラリー液は、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、火山灰、軽石、カーボランダム、金剛砂等の平均粒子径1〜50μm(好ましくは20〜45μm)の研磨剤を、比重1.05〜1.3となるような範囲で水に分散させたものが好ましい。平均粒子径とは、スラリー液中に含まれる全研磨材の体積に対し、各径の粒子の占める割合の累積度数をとったとき、累積割合が50%となる粒子径をいう。
なお、機械的な粗面化後の中心線平均粗さ(Ra )は0.3〜1.0μmとなる様に処理されることが好ましい。
もちろんスラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式等を用いてもよい。その他の方式としては、特開昭55−074898号公報、特開昭61ー162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている。
【0049】
このようにアルミニウム板をブラシグレイニングした後、ついで、アルミニウム板の表面を化学的にエッチングしておくことが好ましい。この化学的エッチング処理は、ブラシグレイニング処理されたアルミニウム板の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑等を取り除く作用を有し、その後に施される電気化学的な粗面化をより均一に、しかも効果的に達成させることができる。
【0050】
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。アルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜を除去することを目的として、また、機械的粗面化処理を行った場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、滑らかなうねりを持つ表面を得ることを目的として行われる。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
【0051】
かかる化学的エッチング方法の詳細は、米国特許第3,834,398号明細書に記載されている。より具体的に説明すると、アルミニウムを溶解し得る溶液、より具体的にはアルカリの水溶液へ浸せきする方法である。
上記のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等が含まれる。塩基の水溶液を使用するとエッチング速度が早い。
【0052】
化学的エッチングは、これらのアルカリの0.05〜40質量%(質量%)水溶液を用い、40℃〜100℃の液温において5〜300秒処理するのが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は1〜30質量%が好ましく、アルミニウムは勿論アルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜10質量%含有していてよい。アルカリ水溶液としては、特にカセイソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温〜95℃で、1〜120秒間処理することが好ましい。
【0053】
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
アルミニウム板の化学的なエッチング量としては片側のアルミニウム板の溶解量が0.001〜30g/m2 が好ましく、より好ましくは、1〜15g/m2 であり、特に好ましくは、3〜12g/m2 である。
【0054】
<酸性エッチング処理>
酸性エッチング処理は、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の後に行うのが好ましい。また、上記電気化学的粗面化処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行う場合は、アルカリエッチング処理の後に酸性エッチング処理を行うのも好ましい。
アルミニウム板に上記アルカリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング処理を施すと、アルミニウム板表面のシリカを含む金属間化合物または単体Siを除去することができ、その後の陽極酸化処理において生成する陽極酸化皮膜の欠陥をなくすことができる。その結果、印刷時にチリ状汚れと称される非画像部に点状のインクが付着するトラブルを防止することができる。
【0055】
酸性エッチング処理に用いられる酸性水溶液としては、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する水溶液が挙げられる。中でも、硫酸水溶液が好ましい。酸性水溶液の濃度は、50〜500g/Lであるのが好ましい。酸性水溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に含有される合金成分を含有していてもよい。
【0056】
酸性エッチング処理は、液温を60〜90℃、好ましくは70〜80℃とし、1〜10秒間処理することにより行うのが好ましい。このときのアルミニウム板の溶解量は0.001〜0.2g/m2 であるのが好ましい。また、酸濃度、例えば、硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度は、常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。好ましいアルミニウムイオン濃度は0.1〜50g/Lであり、特に好ましくは5〜15g/Lである。
また、酸性エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
【0057】
<酸性水溶液中でのデスマット処理(第1デスマット処理)>
化学的なエッチングをアルカリ水溶液を用いて行うと、一般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので、この場合にはリン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理する。酸性水溶液の濃度は0.5〜60質量%が好ましい。更に酸性水溶液中にはアルミニウムはもちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜5質量%が溶解していてもよい。
また、デスマット処理液として、電気化学的な粗面化処理で発生した廃液、陽極酸化処理で発生した廃液を用いることが特に好ましい。
【0058】
液温は常温から95℃で実施され、30〜70℃が特に好ましい。処理時間は1〜120秒が好ましく、特に1〜5秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。ニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗は、デスマット処理液が、次の工程で用いる液と同じ種類の液、または同じ組成の液を用いるときは省略することができる。
また、電気化学的な粗面化処理に用いる装置で、電極の溶解防止と粗面化形状のコントロールのために補助陽極槽を使用するとき、補助陽極槽をアルミニウム板に交流が流れて電気化学的粗面化処理を行う槽の前に持ってくる場合は、電気化学的な粗面化処理の前の酸性水溶液中でのデスマット工程を省略することもできる。
【0059】
<電気化学的粗面化処理>
本発明における電気化学的粗面化処理は、塩酸を含有する水溶液(以下「塩酸を主体とする水溶液」ともいう。)中での電気化学的粗面化処理に特徴がある。
これらの特定条件下における電気化学的な粗面化処理および陽極酸化処理、必要により、親水化処理、機械的粗面化処理、本明細書で説明する各表面処理を行うことにより、本発明の目的を達成することができる。
また、電気化学的な粗面化処理は複数回行ってもよいし、前記塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を行う前または後に、硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を行ってもよい。
以下、電気化学的粗面化処理について説明する。
【0060】
(1)塩酸を主体とする水溶液
本発明でいう塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜30g/Lの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
塩酸水溶液は、液温15〜50℃、塩酸を1〜30g/L含有する水溶液に、アルミニウム塩(塩化アルミニウム、AlCl3 ・6H2 O)を10〜300g/Lの割合で添加してアルミニウムイオン濃度を1〜30g/Lにした水溶液であることが特に好ましい。このような塩酸水溶液を用いて電気化学的粗面化処理を行うと、該粗面化処理による表面形状が均一になり、低純度のアルミニウム圧延板(合金成分を多く含むアルミニウム板または合金成分を調製していないアルミニウム板)を使用しても、該粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに優れた耐刷性および印刷性能(耐汚れ性)を両立できる。
ここで、塩酸水溶液は、塩酸を5〜20g/L含有するのが好ましく、8〜15g/L含有するのが特に好ましい。
添加する塩化アルミニウム6水和物は、10〜300g/Lであるのが好ましく、50〜200g/Lであるのがより好ましく、80〜150g/Lであるのが特に好ましい。
塩化アルミニウム6水和物を添加した塩酸水溶液のアルミニウムイオン濃度は、1〜30g/Lであるのが好ましく、5〜20g/Lであるのがより好ましく、8〜15g/Lであるのが特に好ましい。
塩酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものが用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流が用いられる。塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、300600C/dm2 の範囲から選択でき
【0061】
(2)硝酸を主体とする水溶液
本発明でいう硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/Lの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/L〜飽和まで添加して使用することができる。また、銅と錯体を形成する化合物を1〜200g/Lの割合で添加することもできる。硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。次亜塩素酸や過酸化水素を1〜100g/L添加してもよい。
液温15〜90℃、硝酸を5〜15g/L含有する水溶液にアルミニウム塩(硝酸アルミニウム)を添加してアルミニウムイオンが3〜50g/Lにした水溶液であることが特に好ましい。硝酸を主体とする水溶液中への添加物、装置、電源、電流密度、流速、温度としては公知の電気化学的な粗面化に使用するものが用いることができる。電気化学的な粗面化に用いる電源は交流または直流が用いられるが、交流が特に好ましい。硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化でアルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量は、電気化学的な粗面化処理が終了した時点で、10〜1000C/dm2 の範囲から選択でき、100〜500C/dm2 が好ましく、150〜300C/dm2 が特に好ましい。
【0062】
(3)電気化学的粗面化処理
電気化学的な粗面化処理とは、酸性水溶液中で、アルミニウム板とこれに対向する電極との間に、直流または交流を加えて電気化学的に粗面化処理することをいう。本発明では、塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理においては、交流が用いられ、硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理においては、交流が特に好ましいが、該交流は単相、二相、三相等のいずれでもよい。また、交流と直流とを重畳した電流を用いることもできる。
電解処理槽は公知のものがいずれも使用でき、電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理においては、フラット型の電解槽が使用される。電解処理槽は複数個設けてもよい。また、酸またはアルカリ水溶液中でのエッチング処理、酸性水溶液中でのデスマット処理、酸または中性塩水溶液中でのアルミニウム板のカソード電解処理等を挟んで電気化学的な粗面化処理を繰り返し行ってもよい。
【0063】
a)アルミニウム板への給電方法
アルミニウム板への給電方式はコンダクタロールを用いた直接給電方式またはコンダクタロールを用いない液給電方式(間接給電方式)を用いることができる。電解槽内を通過する電解液はアルミニウムウェブの進行とパラレルでもカウンターでもよい。ひとつの電解槽には1個以上の交流電源が接続することができる。間接給電方式を用いるときは、特公平6−37716号公報、特公平5−42520号公報に記載されている補助陽極を用いた方法で、アルミニウム板に加わる陽極時の電気量と陰極時の電気量の比を調整することが好ましい。補助陽極に流れる電流はサイリスタ、ダイオード、GTO等の整流素子を用いて制御することが特に好ましい。特公平6−37716号公報に記載されている方式を用いれば、電気化学的な粗面化反応が行われる主極のカーボン電極に対向するアルミニウム板表面における交流電流の陽極時の電気量と陰極時の電気量(電流値)を容易に制御できる。また、電源装置制作上も変圧器の偏磁の影響も小さく非常にコスト的に有利である。
【0064】
サイン波を用いた電気化学的な粗面化を行うときの電流値の制御方法は、変圧器、可変式誘導電圧調整器等を併用して用い、電解に用いる電流値を可変式誘導電圧調整器にフィードバックして行う。そのとき、電流値を制御する方法では特開昭55−25381号公報に記載されているように、サイリスタで位相制御する方式を併用することもできる。
【0065】
電気化学的な粗面化処理ではアルミニウム板と電極の距離と液流速が一定でないと電流の偏りが発生しやすく、その結果アルミニウム表面の処理ムラとなって平版印刷版用支持体として適さないものが製造されてしまう。その問題点を解決するために、内部に液たまり室を設け、アルミニウムウェブの巾方向に1〜5mmの液吹き出し用のスリットを設けた給液ノズルを用いることができる。また、複数の液たまり室を設け、それぞれの液たまり室につながる配管にはバルブと流量計を設けてそれぞれのスリットから吹き出す液量を調整することを行うのが特に好ましい。
アルミニウムウェブと電極の距離は5〜100mm、特に8〜15mmが好ましい。この距離を一定に保つために特公昭61−30036号公報に記載されている、走行するウェブを摺動しうる面に静圧を利用してウェブを摺動面に圧接させつつ走行させる方式が用いられる。または特開平8−300843号公報に記載されているように直径の大きなローラーを用いて電極とアルミニウム板の距離を一定に保つ方法も用いることができる。
【0066】
直接給電方式を用いるときは、特開昭58−177441号公報に記載されているようなコンダクタロールを用い、特開昭56−123400号公報に記載されている装置で電気化学的に粗面化処理することが好ましい。コンダクタロールはアルミニウムウェブの上面または下面に設けることが可能であるが、アルミニウム板の上面に設け、ニップ装置にてアルミニウム板に押しつけるようにするのが特に好ましい。アルミニウム板がコンダクタロールに接する長さは、アルミ進行方向に対して1〜300mmが好ましい。アルミニウム板を挟んでコンダクタロールに対向するパスロールはゴム製のロールであることが好ましい。押しつけ圧、ゴムロールの硬度はアークスポットの発生しない条件で任意に設定する。コンダクタロールをアルミニウム板の上面に設置することで、コンダクタロールの交換作業および点検作業が簡単になる。コンダクタロールの端部には給電ブラシを回転体に摺動させながら通電する方式を用いるのが好ましい。
アルミニウム板に押しつけられたコンダクターロールにはアークスポットの発生を防止するために常に電気化学的な粗面化に用いる電解液と同じ組成、同じ温度の電解液により常に冷却することが好ましい。電解液の中に異物が入るとアークスポットの原因になりやすいので、冷却に用いるスプレーに濾布等を巻いたり、スプレー管の上流側の配管にメッシュの細かいフィルターを入れるなどするのが好ましい。
【0067】
b)交流を用いた電気化学的な粗面化
電気化学的な粗面化に用いる交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、三角波等を用いることができるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。周波数は0.1〜500Hzが好ましく、40〜120Hzが更に好ましく、45〜65Hzが特に好ましい。
台形波を用いる場合は、電流が0からピークに達するまでの時間tpは0.1〜2msecが好ましく、0.2〜1.5msecが特に好ましい。電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが0.1未満であると電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる。2msecより大きくなると、電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり均一な粗面化が行われにくくなる。電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taが交流の周期Tに占める割合(本発明において「duty」という。)ta/Tは、0.33〜0.66が好ましく、0.45〜0.55が更に好ましく、0.5が特に好ましい。
アルミニウム板の表面には、カソード反応時に、水酸化アルミニウムを主体とする酸化皮膜が生成し、更に、酸化皮膜の溶解や破壊が生じることがある。そして、酸化皮膜の溶解や破壊が生じると、溶解や破壊が生じた部分は、次のアルミニウム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始点となる。したがって、交流のdutyの選択は均一な電解粗面化処理を行う点で、特に重要である。
【0068】
主極に対向するアルミニウム板に加わる電気量は、アルミニウム板がカソード反応時の電気量Qc とアノード反応時の電気量Qa の比Qc /Qa が0.9〜1.0の範囲であり、好ましくは、0.92〜0.98であり、特に好ましくは、0.94〜0.96である。Qc /Qa がこの範囲であると、粗面化処理による処理ムラが発生せず、平版印刷版としたときに耐刷性および印刷性能(耐汚れ性)を両立できる。また、Qc /Qa が1.0超では、電極が溶解する場合がある。この電気量比のコントロールは電源が発生する電圧を制御して行うことができる。
電解粗面化処理を、主極のアノード電流を分流する補助電極を有する交流電解槽を用いて行う場合には、特開昭60−43500号公報および特開平1−52098号公報に記載されているように、補助電極に分流するアノード電流の電流値を制御することにより、Qc /Qa を制御することができる。
電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側Ia 、カソードサイクル側Ic ともに10〜200A/dm2 が好ましい。Ia /Ic は0.5〜3の範囲にあることが好ましい。
本発明で交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽またはフラット型が特に好ましい。電極はカーボンを主電極とし、補助陽極としてフェライトを用いることが特に好ましい。
また、交流電解槽を複数台直列に配設した電解粗面化処理装置も好適に用いることができる。
【0069】
補助陽極を有する電解槽は、主極を有する電解槽の前または後に設置することができるが、特に塩酸を主体とする電気化学的な粗面化工程で用いる補助電極を有する電解槽は、主極を有する電解槽の前に持ってくることが、処理ムラの発生を低減できる点で好ましい。
また、補助電極を有する電解槽の入口(液面)と主極を有する電解槽の入口(液面)までの距離があまり長いと塩酸の化学的な溶解反応でアルミニウム板中の金属間化合物が溶解して深い穴となり、その部分の画像記録層が厚塗りとなって印刷時のムラとなる。そのためアルミニウム板が補助電極を有する電解槽の入口(液面)から主極を有する電解槽の入口(液面)までの時間を3秒以下とすることが好ましい。
【0070】
電解粗面化処理においては、1または2以上の交流電解槽において、1つの電解槽内で極性の異なる電源端子につながれた、主極と主極の間のアルミニウム板と、これらの主極との間に交流が流れない休止期間を1回以上設け、前記休止期間の長さを0.001〜0.6秒とすると、ハニカムピットがアルミニウム板の表面全体に均一に形成されるので好ましい。より好ましくは0.005〜0.55秒、更に好ましくは0.01〜0.5秒である。
直列に配置された2以上の交流電解槽を用いる場合には、一の交流電解槽と他の交流電解層との間におけるアルミニウム板に交流が流れない時間を0.001〜20秒とするのが好ましい。より好ましくは0.1〜15秒、更に好ましくは1〜12秒である。
【0071】
図2に、本発明に好適に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例の断面模式図を示す。図2において、2は交流電解槽、4A、4Bおよび4Cはそれぞれ主極、6Aおよび6Bはそれぞれ搬送ローラ、8Aは導入ローラ、8Bは導出ローラ、100は電解粗面化処理装置である。電解粗面化処理装置100は、アルミニウムウェブWを略水平方向に搬送しつつ三相の交流(以下「三相交流電流」ともいう。)を印加して電解粗面化処理を施す電解粗面化処理装置である。
【0072】
電解粗面化処理装置100は、アルミニウムウェブWの搬送方向aに沿って延在し上面が開放された浅い箱状の交流電解槽2と、交流電解槽2の底面近傍に搬送方向aに沿って、アルミニウムウェブWの搬送経路である搬送面Tに対して平行に配設された三つの板状の主極4A、4Bおよび4Cと、交流電解槽2の内部における搬送方向aに対して上流側(以下、単に「上流側」という。)および搬送方向aに対して下流側(以下、単に「下流側」という。)の端部近傍に配設され、交流電解槽2内部においてアルミニウムウェブWを搬送する搬送ローラ6Aおよび6Bと、交流電解槽2の上方における上流側に位置し、アルミニウムウェブWを交流電解槽2の内部に導入する導入ローラ8Aと、交流電解槽2の上方における下流側に位置し、交流電解槽2内部を通過したアルミニウムウェブWを交流電解槽2の外部に導出する導出ローラ8Bとを備える。交流電解槽2内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。
主極4A、4Bおよび4Cは、それぞれ三相の交流を発生させる交流電源TacのU端子、V端子およびW端子に接続されている。したがって、主極4A、4Bおよび4Cに印加される交流は、位相が120°ずつずれている。
【0073】
電解粗面化処理装置100の作用について以下に説明する。
アルミニウムウェブWは、導入ローラ8Aによって交流電解槽2の内部に導入され、搬送ローラ6Aおよび6Bによって搬送方向aに沿って一定速度で搬送される。
交流電解槽2の内部において、アルミニウムウェブWは、主極4A、4Bおよび4Cに対して平行に移動するとともに、主極4A、4Bおよび4Cから交流を印加される。これにより、アルミニウムウェブWにおいて、アノード反応とカソード反応とが交互に起き、アノード反応が起きているときには主にハニカムピットが生じ、カソード反応が起きているときには主に水酸化アルミニウムの皮膜が生じて、表面が粗面化される。
主極4A、4Bおよび4Cに印加される交流は、上述したように位相が120°ずつずれているから、主極4Bにおいては、主極4Aの位相(U相)よりも120°遅れた位相(V相)でアノード反応とカソード反応とが繰り返され、主極4Cにおいては、主極4Bよりも120°遅れた位相(W相)でアノード反応とカソード反応とが繰り返される。
したがって、アルミニウムウェブWにおいては、周波数の同一の単相の交番波形電流を印加した場合に比べて、3倍の頻度でアノード反応とカソード反応とが繰り返されるから、高い搬送速度および電流密度で電解粗面化処理を行う場合においても、幅方向の縞であるチャタマークが生じにくい。
【0074】
図3に、本発明に好適に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の他の一例の断面模式図を示す。図3において、図2と同一の符号は、図2において前記符号が示す要素と同一の要素を示し、10は補助電解槽、12は補助電極、14Aおよび14Bは搬送ローラ、16Aは導入ローラ、16Bは導出ローラ、102は電解粗面化処理装置、Th1、Th2およびTh3はサイリスタである。
電解粗面化処理装置102は、上述した電解粗面化処理装置100が備える交流電解槽2の前段に補助電解槽10を配設した電解粗面化処理装置である。
補助電解槽10は、上面が開放された箱型であり、底面近傍に、アルミニウムウェブWの搬送面Tに対して平行に板状の補助電極12が設けられている。
補助電解槽10の上流側壁面の近傍と下流側壁面の近傍とには、アルミニウムウェブWを補助電極12の上方において搬送する搬送ローラ14Aおよび14Bが配設されている。また、補助電解槽10の上方における上流側には、アルミニウムウェブWを補助電解槽10の内部に導入する導入ローラ16Aが設けられ、補助電解槽10の上方における下流側には、補助電解槽10内部を通過したアルミニクムウェブWを外部に導出する導出ローラ16Bが設けられている。補助電解槽10内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。
【0075】
交流電源TacのU相、V相およびW相は、それぞれ補助電極12に接続され、U相、V相およびW相のそれぞれと補助電極12との間には、サイリスタTh1、Th2およびTh3が介装されている。サイリスタTh1、Th2およびTh3は、いずれも点弧時に交流電源Tacから補助電極12に向って電流が流れるように接続されている。したがって、サイリスタTh1、Th2およびTh3のいずれを点弧したときも、補助電極12にはアノード電流が流れるから、サイリスタTh1、Th2およびTh3を位相制御することにより、補助電極12に流れるアノード電流の電流値を制御することができ、したがって、Qc /Qa の値も制御することができる。
【0076】
図4に、本発明に好適に用いられるラジアル型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例の断面模式図を示す。図4において、20は交流電解槽、26Aおよび26Bはそれぞれ主極、34は補助電解槽、35は上流側案内ローラ、36は補助電極、22は交流電解槽本体、22Aは開口部、24は送りローラ、28Aおよび28Bはそれぞれ給液ノズル、30Aは上流側案内ローラ、30Bは下流側案内ローラ、32は溢流槽、34Aは補助電解槽の底面、104は電解粗面化処理装置、Th4およびTh5はそれぞれサイリスタである。
電解粗面化処理装置104は、酸性水溶液が貯留される交流電解槽本体22を備える交流電解槽20と、交流電解槽本体22内部に収容され、水平方向に伸びる軸線の周りに回転可能に配設され、アルミニウムウェブWを、図4における左方から右方に向かって、搬送方向aで送る送りローラ24とを備えている。交流電解槽本体22内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。
交流電解槽本体22の内壁面は、送りローラ24を囲むように略円筒状に形成されており、前記内壁面上には、半円筒状の主極26Aおよび26Bが送りローラ24を挟んで設けられている。主極26Aおよび26Bは、複数の小電極に分割され、それぞれの小電極の間には、絶縁性のスペーサーが介装されている。小電極は、例えば、グラファイトや金属を用いて形成することができ、スペーサーは、例えば、塩化ビニル樹脂により形成することができる。スペーサーの厚さは1〜10mmであるのが好ましい。また、図4においては簡略的に示したが、主極26Aおよび26Bのいずれにおいても、スペーサーにより分割された小電極のそれぞれが交流電源Tacに接続されている。
【0077】
交流電解槽20の上部には、アルミニウムウェブWを交流電解槽本体22に導入し、また、導出するための開口部22Aが形成されている。交流電解槽本体22における開口部22Aの近傍には、交流電解槽本体22に酸性水溶液を補充する給液ノズル28Aが設けられている。また、給液ノズル28Bも別途設けられている。
交流電解槽20の上方における開口部22A近傍には、アルミニウムウェブWを交流電解槽本体22内部に案内する一群の上流側案内ローラ30Aと、交流電解槽本体22内で電解粗面化処理されたアルミニウムウェブWを外部に案内する一群の下流側案内ローラ30Bとが配設されている。
【0078】
交流電解槽20においては、交流電解槽本体22の下流側に隣接して溢流槽32が設けられている。溢流槽32内部には、上述した酸性水溶液が貯留されている。溢流槽32は、交流電解槽本体22から溢流した酸性水溶液を一時貯留し、交流電解槽本体22における酸性水溶液の液面の高さを一定に保持する機能を有する。
【0079】
交流電解槽本体22の前段(上流)には、補助電解槽34が設けられている。補助電解槽34は、交流電解槽本体22よりも浅く、底面34Aが平面状に形成されている。そして、底面34A上には、円柱状の補助電極36が複数本儲けられている。補助電解槽34内部には上述した酸性水溶液が貯留されている。
補助電極36は、白金等の高耐食性の金属、フェライト等により形成されているのが好ましい。また、補助電極36は板状であってもよい。
補助電極36は、交流電源Tacにおける主極26Aが接続される側に、主極26Aに対して並列に接続され、中間には、サイリスタTh4が、点弧時に交流電源Tacにおける前記側から補助電極36に向かって電流が流れるように接続されている。
また、交流電源Tacにおける主極26Bが接続された側も、サイリスタTh5を介して補助電極36に接続されている。サイリスタTh5も、点弧時に交流電源Tacにおける主極26Bが接続された側から補助電極36に向かって電流が流れるように接続されている。
サイリスタTh4およびTh5のいずれを点弧したときも、補助電極36にはアノード電流が流れる。したがって、サイリスタTh4およびTh5を位相制御することにより、補助電極36に流れるアノード電流の電流値を制御することができ、したがって、Qc /Qa の値も制御することができる。
【0080】
電解粗面化処理装置104の作用について以下に説明する。
図4における左方から、アルミニウム板Wは、まず、上流側案内ロ一ラ35によって補助電解槽34内に案内され、ついで、上流側案内ローラ30Aによって交流電解槽本体22に案内される。そして、送りローラ24によって図4における左方から右方に向かって送られ、下流側案内ロ一ラ30Bにより導出される。
交流電解槽本体22および補助電解槽34の内部において、アルミニウムウェブWは、主極26Aおよび26Bに印加された交流電流と、補助電極36に印加されたアノード電流とにより、主極26Aおよび26Bに面する側の表面が粗面化され、ほぼ均一なハニカムピットが形成される。
【0081】
(4)粗面化処理に用いる廃液のリサイクル
各粗面化処理に用いた液(廃液)は可能な限りリサイクルすることが好ましい。
アルミニウムイオンが溶けたカセイソーダ水溶液では晶析法によるアルミニウムとカセイソーダの分離を行うことができる。アルミニウムイオンが溶けた硫酸水溶液、硝酸水溶液または塩酸水溶液では電気透析法やイオン交換樹脂による硫酸または硝酸の回収を行うことができる。
アルミニウムイオンが溶けた塩酸水溶液では特開2000−282272号公報に記載されているような蒸発による回収を行うこともできる。
本発明では、電気化学的粗面化処理で用いた電解液の廃液をデスマット処理に用いるのが好ましい。
また、電気化学的な粗面化処理、または、陽極酸化処理の前に行うデスマット処理は、デスマット処理の後に行う粗面化処理または陽極酸化処理と同じ種類の液を用いることが好ましく、同じ組成の液を用いることが特に好ましい。そうすることで、デスマット処理とその次の工程の間に設ける水洗工程を省略することができ、設備の簡素化と廃液量の低減が可能となる。
【0082】
<アルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理(第2アルカリエッチング処理)>
電気化学的粗面化処理の後で第2アルカリエッチング処理を行うのが好ましい。この処理により、アルミニウム板の表面形状が均一で耐刷性および印刷性能に優れた平版印刷版が得られる。
第2アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、エッチングを行う。アルカリの種類、アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法およびそれに用いる装置は、アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、アルカリエッチング処理の場合と同様のものが挙げられる。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、0.01〜80質量%であるのが好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜60秒であるのが好ましい。
第2アルカリエッチング処理においては、アルミニウム板(電解粗面化処理を施した面)の溶解量は、好ましくは、0.001〜30g/m2 であり、より好ましくは、0.1〜10g/m2 であり、特に好ましくは、0.2〜5g/m2 である。
【0083】
<酸性水溶液中でのデスマット処理(第2デスマット処理)>
第2アルカリエッチング処理の後に第2デスマット処理を行うのが好ましい。
第2デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板をリン酸、塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法は、第1デスマット処理の場合と同様のものが挙げられる。
第2デスマット処理および第3デスマット処理においては、酸性溶液として、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸溶液の廃液を用いるのが好ましい。また、該廃液の代わりに、硫酸濃度が100〜600g/L、アルミニウムイオン濃度が1〜10g/Lであり、液温が30〜90℃である硫酸溶液を用いることもできる。
第2デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、第2デスマット処理の処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。第2デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
【0084】
<陽極酸化処理>
アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。
それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 の範囲が適当である。1g/m2 よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付きやすくなって、同時にきずの部分にインキが付着する、いわゆるきず汚れが生じやすくなる。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウムエッチ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッチの部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2 以下であることが好ましい。
【0085】
硫酸水溶液中での陽極酸化については、特開昭54−128453号公報および特開昭48−45303号公報に詳しく記載されている。硫酸濃度10〜300g/L、アルミニウムイオン濃度1〜25g/Lとすることが好ましく、50〜200g/Lの硫酸水溶液中に硫酸アルミニウムを添加してアルミニウムイオン濃度を2〜10g/Lとすることが特に好ましい。液温は30〜60℃が好ましい。直流法を用いるとき、電流密度1〜60A/dm2 、特に5〜40A/dm2 が好ましい。連続的にアルミニウムシートを陽極酸化する場合は、アルミニウム板の焼けと呼ばれる電流集中を防ぐために最初5〜10A/dm2 の低電流密度で陽極酸化処理を行い、後半に行くに従い徐々に電流密度を上げて30〜50A/dm2 になるまで、またはそれ以上に電流密度を設定することが特に好ましい。電流密度は5〜15ステップで徐々に上げることが好ましい。各ステップごとには独立した電源装置を持ち、この電源装置の電流値で電流密度をコントロールする。給電方法はコンダクタローラを用いない液給電方式が好ましい。特開2001−11698号公報にはその一例が示されている。
【0086】
硫酸水溶液中にはアルミニウム板に含まれる微量成分元素が少量溶解していてもよいのはもちろんである。陽極酸化処理中の硫酸水溶液にはアルミが溶出するため、工程の管理のためには硫酸濃度とアルミニウムイオン濃度を管理する必要がある。アルミニウムイオン濃度を低く設定すると陽極酸化を行う硫酸水溶液の更新を頻繁に行わなければならず、廃液量が増えて経済的でないばかりでなく環境面でも問題である。また、アルミニウムイオン濃度を高く設定すると電解電圧が高くなり電力コストがかさみ経済的でない。好ましい陽極酸化の硫酸濃度、アルミイオン濃度、液温としては、
(その1)
硫酸濃度 100〜200g/L(更に130〜180g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に3〜7g/L)
液温30〜50℃(更に33〜45℃)
(その2)
硫酸濃度 50〜125g/L(更に80〜120g/L)
アルミニウムイオン濃度 2〜10g/L(更に3〜7g/L)
液温40〜70(更に50〜60℃)
である。
【0087】
陽極酸化処理でのアルミニウム板電への給電方式は、コンダクタロールを用いて直接アルミニウム板に給電する直接給電方式と、電解液を通じてアルミニウム板に給電する液給電方式がある。
直接給電方式はライン速度30m/min以下の比較的低速かつ低電流密度の陽極酸化装置で、間接給電方式はライン速度30m/minを超える高速かつ高電流密度の陽極酸化装置で用いられることが多い。
間接給電方式は、連続表面処理技術(総合技術センター、昭和61年9月30日発行)の289頁にあるように、山越型またはストレート型の槽レイアウトを用いることができる。高速かつ高電流密度になるとコンダクタロールとアルミニウムウェブ間のスパーク発生の問題が発生するため、直接給電ロール方式は不利である。
直接給電方式、間接給電方式ともに、アルミニウムウェブ内の電圧ドロップによるエネルギーロスを少なくする目的で、陽極酸化処理工程は二つ以上に分離し、それぞれの電解装置の給電槽と酸化槽、またはコンダクタロールと酸化槽の間に直流電源を接続して用いることが特に好ましい。
直接給電方式を用いる場合は、コンダクタロールはアルミを用いるのが一般的である。ロールの寿命を長くするために、特公昭61−50138号公報に記載されているような、工業用純アルミニウムを用いて鋳造したのち、高温均質化処理を施してAl−Fe系晶出物をAl3 Feの単一層として耐食性を向上させたものを用いることが特に好ましい。
陽極酸化処理工程においては大電流を流すため、ブスバーに流れる電流により発生する磁界により、アルミニウム板にローレンツ力が働く。その結果ウェブが蛇行する問題が生じるため、特開昭57−51290号公報に記載されているような方法を用いることが特に好ましい。
【0088】
また、アルミニウム板には大電流が流れるため、アルミニウム板自身を流れる電流による磁界により、アルミニウム板の幅方向において中央に向かってローレンツ力が働く。その結果アルミニウム板に折れが発生しやすくなるため、陽極酸化処理槽内に直径100〜200mmのパスローラーを100〜3000mmピッチで複数設け、1〜15度の角度でラップさせてローレンツ力による折れを防止する方法をとることが特に好ましい。
また、陽極酸化皮膜はアルミニウム板の幅方向で生成量が異なり、エッチに近づくほど生成量が多くなり厚さが厚くなる。その結果巻き取り装置にてアルミニウム板をうまく巻きとれない問題が生じる。これを解決するには、特公昭62−30275号公報または特公昭55−21840号公報に記載されている方法で液流を撹拌することにより解決できる。その方法においても不十分な場合は、アルミニウム板の巻き取り装置を0.1〜10Hzの周期で5〜50mmの振幅でアルミニウムウェブの幅方向にオシレートさせて巻き取る方法を併用して用いることが特に好ましい。
【0089】
硫酸法では通常、直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜10g/m2 の範囲が適当である。一般的平版印刷版材料の場合、陽極酸化皮膜量は1〜5g/m2 で、1g/m2 よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付きやすくなって、同時に傷の部分にインキが付着する、いわゆる傷汚れが生じやすくなる。また、陽極酸化皮膜量が多くなると、アルミニウム板のエッチ部分へ酸化皮膜が集中しやすくなるので、アルミニウム板のエッチの部分と中心部分の酸化皮膜量の差は、1g/m2 以下であることが好ましい。連続的な陽極酸化処理は液給電方式を用いるのが一般的である。アルミニウム板に電流を通電するための陽極としては、鉛、酸化イリジウム、白金、フェライト等を用いることができるが、酸化イリジウムを主体とするものが特に好ましい。酸化イリジウムは熱処理により基材に被覆される。基材としてはチタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム等のいわゆるバルブ金属が用いられるが、チタンまたはニオブが特に好ましい。前記バルブ金属は比較的電気抵抗が大きいため、芯材に銅を用い、その周囲にバルブ金属をクラッドすることが特に好ましい。銅の芯材にバルブ金属をクラッドする場合は、あまり複雑な形状のものは作れないので、各パーツに分割して作成した電極部品を、酸化イリジウムを被覆した後にボルトおよびナット等で希望の構造となるように組み立てるのが一般的である。
【0090】
本発明では、デスマット処理液の送液設備、濃度調整設備を簡素化し、設備コストを低減できる点で、陽極酸化処理で生じる酸廃液は、デスマット処理(第1、第2および第3デスマット処理)に用いるのが好ましい。
【0091】
<親水化処理>
親水化処理は、平版印刷版用支持体の製造に一般的に用いられる公知の親水化処理を用いることができるが、アルカリ金属ケイ酸塩で処理するのが好ましく、以下に詳細に説明する。
陽極酸化処理された支持体は、水洗処理された後、現像液への陽極酸化皮膜の溶解抑制、画像記録層成分の残膜抑制、陽極酸化皮膜強度向上、陽極酸化皮膜の親水性向上、画像記録層との密着性向上等を目的に、以下のような処理を行うことができる。そのひとつとしては陽極酸化皮膜をアルカリ金属のケイ酸塩水溶液と接触させて処理するシリケート処理が挙げられる。この場合、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度は0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜15質量%であり、より好ましくは0.8〜3.0質量%であり、25℃でのpHが10〜13.5である水溶液に5〜80℃、好ましくは10〜70℃、より好ましくは15〜50℃で0.5〜120秒間接触させる。接触させる方法は、浸せきでもスプレーによる吹き付けでも、いかなる方法によってもかまわない。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液はpHが10より低いと液はゲル化し、13.5より高いと陽極酸化皮膜が溶解されてしまう場合がある。
本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等が使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpH調整に使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等がある。なお、上記処理液にはアルカリ土類金属塩または第IVA族(4族)金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩等の水溶性塩が挙げられる。第IVA族(4族)金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム等が挙げられる。アルカリ土類金属または第IVA族(4族)金属塩は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は、0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.05〜5.0質量%である。
【0092】
<封孔処理>
他には、各種封孔処理も挙げられ、一般的に陽極酸化皮膜の封孔処理方法として知られている、水蒸気封孔、沸騰水(熱水)封孔、金属塩封孔(クロム酸塩/重クロム酸塩封孔、酢酸ニッケル封孔等)、油脂含浸封孔、合成樹脂封孔、低温封孔(赤血塩やアルカリ土類塩等による)等を用いることができるが、印刷版用支持体としての性能(画像記録層との密着性や親水性)、高速処理、低コスト、低公害性等の面から水蒸気封孔が比較的好ましい。その方法としては、例えば特開平4−176690号公報にも記載されている加圧または常圧の水蒸気を連続または非連続的に、相対湿度70%以上、蒸気温度95℃以上で2〜180秒程度陽極酸化皮膜に接触させる方法等が挙げられる。他の封孔処理法としては、支持体を80〜100℃程度の熱水またはアルカリ水溶液に浸せきまたは吹き付け処理する方法や、これに代えるか、または引き続き、亜硝酸溶液で浸せきまたは吹き付け処理することができる。亜硝酸溶液に含有する亜硝酸塩等の例としては、例えばLiO2 、NaNO2 、KNO2 、Mg(NO2 2 、Ca(NO2 2 、Zn(NO3 2 、Al(NO2 3 、Zr(NO2 4 、Sn(NO2 3 、Cr(NO2 3 、Co(NO2 2 、Mn(NO2 2 、Ni(NO2 2 等が好ましく挙げられ、特にアルカリ金属硝酸塩が好ましい。亜硝酸塩等は2種以上併用することもできる。
【0093】
処理条件は、支持体の状態およびアルカリ金属の種類により異なるので一義的には決定できないが、例えば亜硝酸ナトリウムを用いた場合には、濃度は一般的には0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜2質量%、浴温度は一般的には室温から約100℃前後、より好ましくは60〜90℃、処理時間は一般的には15〜300秒、より好ましくは10〜180秒のそれぞれの範囲から選択すればよい。亜硝酸水溶液のpHは8.0〜11.0に調製されていることが好ましく、8.5〜9.5に調製されていることが特に好ましい。亜硝酸水溶液のpHを上記の範囲に調製するには、例えばアルカリ緩衝液等を用いて好適に調製することができる。該アルカリ緩衝液としては、限定はされないが例えば炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合水溶液、塩化ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液、塩酸と炭酸ナトリウムの混合水溶液、四ホウ酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの混合水溶液等を好適に用いることができる。また、上記アルカリ緩衝液はナトリウム以外のアルカリ金属塩、例えばカリウム塩等も用いることができる。以上のような、シリケート処理または封孔処理を施した後、画像記録層との密着性をアップさせるために特開平5−278362号公報に記載されている酸性水溶液処理と親水性下塗りを行うことや、特開平4−282637号公報や特開平7−314937号公報に記載されている有機層を設けてもよい。
【0094】
本発明の平版印刷版用支持体の製造においては、上記処理の他に、以下の処理を行うこともできる。
【0095】
<アルミニウム板の水洗方法>
アルミニウム板を酸またはアルカリ水溶液中での処理、または研磨剤を用いて機械的に粗面化した後には、薬液や研磨剤をアルミニウム板表面から除去する目的で洗浄工程を設けるのが常法である。
洗浄は薬液の種類、組成の異なる処理槽の中間に設けるのが普通であるが、処理槽から洗浄工程に入る時間、または、洗浄から次の処理槽に入るまでの時間は10秒以下が好ましく、0.1〜10秒が特に好ましい。10秒を超えると表面の化学的な変性が進み、処理ムラが発生しやすくなる場合がある。
また水洗工程を挟んだ処理槽と処理槽の間隔は、アルミニウムウェブの通過時間で15秒以下、特に5秒以下が好ましい。15秒を超えると表面の化学的な変性が進んで次工程で均一な粗面化処理が行われにくくなる場合がある。
アルミニウム板を洗浄するにあたっては、以下の方法を用いることが好ましく、排水量を減少させるという目的で、ドライアイスパウダーを用いた水洗方式が好ましい。
【0096】
(1)水による洗浄
平版印刷版用支持体の洗浄方法としては、ニップローラーにて液切りした表面を、スプレーチップから噴射した水を用いて洗浄する方法を用いるのが一般的である。水はアルミニウム板の走行方向の下流に向かって45〜90度の角度で噴射することが好ましい。水の噴射圧力は、噴射ノズル直前の圧力で、通常0.5〜5kg/cm2 、液温は10〜80℃が好ましい。走行するアルミニウム板の移動速度は20〜200m/minであることが好ましい。アルミニウム板に吹き付けられる水の液量は、ひとつの洗浄工程で0.1〜10L/m2 の液量が吹き付けられることが好ましい。一つの洗浄槽には、アルミニウム板の表面に最低2本以上、裏面に最低2本以上のスプレー管から洗浄水が噴射される。一つのスプレー管にはピッチ50〜200mmの間隔でスプレーチップが5〜30本設置される。スプレーチップの噴霧角度は10〜150度、アルミニウム板とスプレーチップ噴射面の間隔は10〜250mmが好ましい。スプレーチップの噴霧の断面形状(スプレーパターン)は環状、円形、楕円形、正方形、長方形等があるが、円形もしくは惰円形または正方形もしくは長方形が好ましい。流量分布(アルミニウム板の表面における噴霧の水量分配状態)は環状分布、均等分布、山型分布等があるが、スプレーチップをスプレー管に複数並べて使用するときは、幅全域での均一な流量分布を容易にする山型分布が好ましい。流量分布は噴霧圧力とスプレーチップとアルミニウム板の距離により変化する。噴霧の粒子径はスプレーチップの構造、噴霧圧力、噴霧量によって変わるが、10〜10000μm、特に100〜1000μmが好ましい。スプレーノズルの材質は高速で流れる液体に対して耐摩耗性があることが好ましい。その材質は真鍮、ステンレス、セラミック等が用いられるが、セラミックノズルが特に好ましい。
スプレーチップを設置したスプレーノズルはアルミニウム板の進行方向に対して45〜90度に配置することができるが、スプレーパターンの中心のうち長さが長い方の中心線がアルミニウム板の進行方向と直角になるようにすることが好ましい。
水洗処理工程を通過する洗浄時間は、工業的に10秒以下が好ましく、特に好ましくは0.5〜5秒が好ましい。
【0097】
(2)ドライアイスパウダーを使った洗浄
ドライアイスパウダーをアルミニウム板の両面に噴射して洗浄する方法には、特開平10−66905号公報に記載されているような公知のショットブラスト装置を用いることができる。噴射ノズルは特開平10−28901号公報、特開平10ー28902号公報に記載されているような公知の噴射ノズルをアルミニウム板の両面に複数個並べることができる。噴射ノズルは横一直線に配置してもよいが、アルミニウム板表面の噴射パターンがアルミニウム板の巾方向で重なるように斜めに設置することが好ましい。噴射ノズルとアルミニウム板の間隔は1〜100mmが好ましく、特に10〜50mmが好ましい。
また、パウダー状のドライアイスを製造する方法は実開平7−38104号公報に記載されているような製造装置を用いることができる。噴射用の気体はGN2ガス、または空気を用いることができる。パウダー状のドライアイスは1〜1000μmであり、その平均粒径は10〜100μmが好ましい。噴射ノズル一個あたりのLCO2 (液化炭酸ガス)供給量は0.1〜1kg/minが好ましく、その供給圧力は1〜20MPaが好ましい。アルミニウム板での洗浄圧力は1〜20MPaが好ましい。
【0098】
<パスロールの材質>
ロールは、表面にメッキ処理またはライニング処理された公知の鉄鋼、メッキ、電解コンデンサ、平版印刷版原版等の連続生産ラインに用いる金属ロール、樹脂ロール、ゴムロール、不織布ロールから選定して用いることができる。
ロールの材質、表面の物性値は薬液やそのときのアルミニウム表面の状態に応じて耐食性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等を考慮して選定する。金属ロールではハードクロムメッキロールが一般的に用いられる。ゴムロールでは天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ニトリルゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴム等はもちろんそれらに微量の添加物を添加したものを用いることができる。ゴムロールの国際ゴム硬さ(JIS K6253に規定)は60〜90が特に好ましい。
【0099】
上記に詳細に説明した平版印刷版用支持体の製造方法によれば、低純度のアルミニウム板(合金成分を多く含むアルミニウム板または合金成分を調製していないアルミニウム板)を用いた場合であっても、表面の凹凸が均一な平版印刷版用支持体を得ることができる。また、上述した平版印刷版用支持体の製造方法により得られた平版印刷版用支持体は、後述するように画像記録層を設け本発明の平版印刷版原版とすると、これを製版して平版印刷版としたときに、印刷性能に優れ、かつ、耐刷性に優れる。
【0100】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、上述した平版印刷版用支持体上に、熱により画像形成することができる画像記録層を設けて得ることができる。
【0101】
<下塗層>
本発明においては、このようにして得られた平版印刷版用支持体上に、画像記録層を設ける前に、必要に応じて、例えば、ホウ酸亜鉛等の水溶性金属塩のような無機下塗層や、有機下塗層を設けてもよい。
【0102】
有機下塗層に用いられる有機化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;スルホ基を側鎖に有する重合体および共重合体;ポリアクリル酸;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩;黄色染料が挙げられる。中でも、酸基を有する構成成分を有する高分子化合物が好適に用いられ、特に、酸基を有する構成成分とともにオニウム基を有する構成成分をも有する高分子化合物が好適に用いられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0103】
(酸基を有する構成成分を有する高分子化合物)
酸基を有する構成成分を有する高分子化合物に用いられる酸基としては、酸解離指数(pKa )が7以下の酸基が好ましく、より好ましくは−COOH、−SO3 H、−OSO3 H、−PO3 2 、−OPO3 2 、−CONHSO2 、−SO2 NHSO2 −であり、特に好ましくは−COOHである。酸基を有する構成成分は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記高分子化合物は、主鎖構造がアクリル樹脂やメタクリル樹脂やポリスチレンのようなビニル系ポリマー、ウレタン樹脂、ポリエステルまたはポリアミドであることをポリマーが好ましい。中でも、主鎖構造がアクリル樹脂やメタクリル樹脂やポリスチレンのようなビニル系ポリマーが好ましい。
【0104】
また、上記高分子化合物がオニウム基を有する構成成分を有する場合には、オニウム基として好ましいものは、周期律表15族(第VB族)または16族(第VIB族)の原子を含有するオニウム基であり、より好ましくは窒素原子、リン原子または硫黄原子を含有するオニウム基であり、特に好ましくは窒素原子を含有するオニウム基である。
上記高分子化合物は、上記のようなオニウム基を有する構成成分を1モル%以上含むのが好ましく、5モル%以上含むのがより好ましい。オニウム基を有する構成成分が1モル%以上含まれると、密着性が一層向上する。
【0105】
また、オニウム基を有する構成成分を有する上記高分子化合物は、酸基を有する構成成分を20モル%以上含むのが好ましく、40モル%以上含むのがより好ましい。酸基を有する構成成分が20モル%以上含まれると、アルカリ現像時の溶解除去が一層促進され、酸基とオニウム基との相乗効果により密着性がなお一層向上する。また、オニウム基を有する構成成分は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0106】
下塗層の形成に用いられる上記高分子化合物は、構成成分、組成比または分子量の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0107】
つぎに、酸基を有する構成成分とともにオニウム基を有する構成成分をも有する高分子化合物の代表的な例を以下に示す。なお、ポリマー構造の組成比はモル百分率を表す。
【0108】
【化1】
Figure 0003787334
【0109】
【化2】
Figure 0003787334
【0110】
【化3】
Figure 0003787334
【0111】
【化4】
Figure 0003787334
【0112】
【化5】
Figure 0003787334
【0113】
下塗層の形成に用いられる上記高分子化合物は、一般にはラジカル連鎖重合法を用いて製造することができる(“Textbook of Polymer Science”3rd ed.(1984)F.W.Billmeyer,AWiley−Interscience Publication参照)。
【0114】
上記高分子化合物の分子量は広範囲であってもよいが、光散乱法を用いて測定したとき、重量平均分子量(Mw )が500〜2,000,000であるのが好ましく、1,000〜600,000の範囲であるのがより好ましい。また、この高分子化合物中に含まれる未反応モノマー量は広範囲であってもよいが、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0115】
(下塗層形成用高分子化合物の製法等)
つぎに、酸基を有する構成成分とともにオニウム基を有する構成成分をも有する高分子化合物の合成例を、上記で挙げたp−ビニル安息香酸とビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドとの共重合体(上記No.1)を例にとって示すが、他の高分子化合物も同様の方法で合成することができる。
【0116】
p−ビニル安息香酸(北興化学工業社製)146.9g(0.99mol)、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド44.2g(0.21mol)および2−メトキシエタノール446gを1L容の三つ口フラスコに取り、窒素気流下かくはんしながら、加熱し75℃に保った。この溶液に2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.76g(12mmol)を加え、かくはんを続けた。2時間後、更に、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル2.76g(12mmol)を加え、かくはんを続けた。2時間かくはんした後、室温まで放冷した。この反応液をかくはん下、12Lの酢酸エチル中に注いだ。析出した固体をろ取し、乾燥させた。その収量は189.5gであった。得られた固体について光散乱法で分子量測定を行った結果、重量平均分子量(Mw )は3.2万であった。
【0117】
(下塗層の形成)
下塗層は、上記高分子化合物を、上述した平版印刷版用支持体の上に種々の方法で塗布することにより設けることができる。
下塗層を設ける方法としては、例えば、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤またはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記高分子化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持体上に塗布し乾燥させて設ける方法、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤またはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記高分子化合物を溶解させた溶液に、平版印刷版用支持体を浸せきさせて高分子化合物を吸着させた後、水等によって洗浄し乾燥させて設ける方法が挙げられる。
【0118】
前者の方法では、上記高分子化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布等のいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05%〜5質量%であり、浸せき温度は20℃〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸せき時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。
【0119】
上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質;塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機スルホン酸、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸、安息香酸、クマル酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸等の種々の有機酸性物質;ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド等の有機酸クロライド等によりpHを調整し、pH0〜12、より好ましくはpH0〜5の範囲で使用することもできる。
下塗層を形成する高分子化合物の乾燥後の被覆量は、2〜100mg/m2 が適当であり、好ましくは5〜50mg/m2 である。上記被覆量が2mg/m2 よりも少ないと十分な効果が得られない場合がある。また、100mg/m2 よりも多い場合も同様である。
【0120】
<画像記録層>
熱により画像形成することができる画像記録層としては、例えば、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、無処理タイプが好適に挙げられる。以下、好適に用いられるサーマルポジタイプの画像記録層について説明する。
【0121】
サーマルポジタイプの画像記録層は、(A)水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂(以下「アルカリ可溶性樹脂」という。)と、(B)赤外線吸収剤とを含有する。
【0122】
(A)アルカリ可溶性樹脂
サーマルポジタイプの画像記録層に使用できる(A)アルカリ可溶性樹脂は、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、共重合体またはこれらの混合物を包含する。酸性基に関しては、あらかじめ酸性基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、およびそれらを併用する方法のいずれの方法で導入してもよい。
【0123】
アルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されず、例えば、プラスチック・エージ(株)「フェノール樹脂」、アイピーシー(株)「フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化および応用」、日刊工業新聞社「プラスチック材料講座15 フェノール樹脂」、工業調査会(株)「プラスチック全書15 フェノール樹脂」等の成書に記載されているフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体;特開平7−28244号公報に記載されているスルホニルイミド系ポリマー;特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー;特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂;特開平2−866号公報に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いることができる。
中でも、下記(1)〜(6)の酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、アルカリ性現像液に対する溶解性および溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0124】
(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R)(以下「活性イミド基」という。)
(4)カルボキシ基(−CO2 H)
(5)スルホ基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 2
【0125】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0126】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール性ヒドロキシ基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、および(4)カルボン酸基のうち少なくとも一つを有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール性ヒドロキシ基、(2)スルホンアミド基および(4)カルボン酸基のうち少なくとも一つを有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュードおよび画像記録層の膜強度の点からより好ましい。
【0127】
上記(1)〜(6)の酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0128】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4′−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを用いてもよい。)、または、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0129】
本発明においては、フェノール類として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノールおよびレゾルシノールのうち少なくとも1種を用い、アルデヒド類またはケトン類として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドおよびプロピオンアルデヒドのうち少なくとも1種を用いた重縮合体が好ましい。特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20である混合フェノール類、または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60である(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0130】
なお、本発明に好適に用いられるサーマルポジタイプの画像記録層には溶剤抑止剤を含有させることが好ましい。その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20である混合フェノール類、または、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40である(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0131】
また、フェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂として、フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマーの重合体を挙げることができる。
フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性ヒドロキシ基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。
【0132】
また、酸基前駆体を重合し、高分子化した後で酸基へと誘導してもよい。例えば、酸基前駆体としてp−アセトキシスチレンを重合した後、エステル部を加水分解しフェノール性ヒドロキシ基へと誘導してもよい。
また、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体も好適に例示することができる。
【0133】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ一つ以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基またはビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基とを分子内に有する低分子化合物が好ましい。例えば、下記一般式(I)〜(V)で表される化合物が挙げられる。
【0134】
【化6】
Figure 0003787334
【0135】
式中、X1 およびX2 は、それぞれ−O−または−NR7 −を示す。R1 およびR4 は、それぞれ水素原子または−CH3 を表す。R2 、R5 、R9 、R12およびR16は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。R3 、R7 およびR13は、水素原子またはそれぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。また、R6 およびR17は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示す。R8 、R10およびR14は、水素原子または−CH3 を表す。R11およびR15は、それぞれ単結合、または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基もしくはアラルキレン基を表す。Y1 およびY2 は、それぞれ単結合または−CO−を表す。具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0136】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ一つ以上有する化合物を挙げることができる。
【0137】
【化7】
Figure 0003787334
【0138】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0139】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホ基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホ基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0140】
上記(1)〜(6)から選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0141】
前記共重合体は、共重合させる上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、アルカリ可溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効果が十分達成されないことがある。
【0142】
化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m13)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0143】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族ヒドロキシ基を有するアクリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類、
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート等のアルキルアクリレート、
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、
【0144】
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドまたはメタクリルアミド、
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類、
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、
【0145】
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類、
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類、
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類、
【0146】
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド、
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等、
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー(例えば、特願2001−115595号明細書、特願2001−115598号明細書等に記載されている化合物)。
【0147】
本発明においてアルカリ可溶性樹脂が、前記(1)フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマー、(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマー、(3)活性イミド基を有する重合性モノマー、(4)カルボン酸基を有する重合性モノマー、(5)スルホ基を有する重合性モノマー、および(6)リン酸基を有する重合性モノマーの単独重合体または共重合体の場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」という。)が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
また、本発明においてアルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜100,000であり、数平均分子量が200〜50,000のものが好ましい。特願2001−126278号明細書に記載されているような低分子成分、特に残存モノマー成分の比率が少ないノボラック樹脂を用いてもよい。
【0148】
これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、画像記録層全固形分中、30〜99質量%、好ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90質量%の添加量で用いられる。
アルカリ可溶性樹脂の添加総量が30質量%未満であると画像記録層の耐久性が悪化する場合があり、また、99質量%を超えると感度および画像形成性の観点で好ましくない場合がある。
【0149】
アルカリ可溶性樹脂を併用する場合、どのような組み合わせを用いてもよいが、特に好適な例としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するポリマーとスルホンアミド酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性ヒドロキシ基を有するポリマーとカルボン酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性ヒドロキシ基を有するポリマー2種以上の併用、例えば、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、特開2000−241972号公報に記載されている芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂等との併用を挙げることができる。
【0150】
(B)赤外線吸収剤
本発明に用いられる赤外線吸収剤は、光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する物質であれば、吸収波長域を限定されないが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から、波長700〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料または顔料が好ましく挙げられる。
【0151】
染料としては、市販の染料および「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、ナフタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、(チオ)ピリリウム塩、金属チオレート錯体、インドアニリン金属錯体系染料、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料、分子間CT色素等の染料が挙げられる。
【0152】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許第434,875号明細書に記載されているシアニン染料等を挙げることができる。
【0153】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩、特公平5−13514号公報および同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0154】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)および(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0155】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。更に、下記一般式(a)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましい。また、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明に好適に用いられる画像記録層用組成物に使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、かつ、安定性、経済性に優れるため好ましい。
【0156】
【化8】
Figure 0003787334
【0157】
一般式(a)中、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、アルキル基上にはアルコキシ基、アリール基、アミド基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、スルホ基およびカルボキシ基からなる群から選択される置換基を有してもよい。Y1 およびY2 は、それぞれ独立に、酸素、硫黄、セレン、ジアルキルメチレン基または−CH=CH−を表す。Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基を表し、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子およびアルコキシカルボニル基からなる群から選択される置換基を有してもよく、Y1 およびY2 と隣接した連続2炭素原子で芳香環を縮環してもよい。
【0158】
Xは電荷の中和に必要なカウンターイオンを表し、色素カチオン部がアニオン性の置換基を有する場合は必ずしも必要ではない。
Qはトリメチン基、ペンタメチン基、ヘプタメチン基、ノナメチン基およびウンデカメチン基からなる群から選択されるポリメチン基を表す。露光に用いる赤外線に対する波長適性と安定性の点からペンタメチン基、ヘプタメチン基またはノナメチン基が好ましく、いずれかの炭素上に連続した三つのメチン鎖を含むシクロヘキセン環またはシクロペンテン環を有することが安定性の点で好ましい。
【0159】
Qはアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、アリール基、オキシ基、イミニウム塩基および下記一般式(2)で表される置換基からなる群から選択される基で置換されていてもよい。好ましい置換基としては、塩素原子等のハロゲン原子、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基、フェニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
【0160】
【化9】
Figure 0003787334
【0161】
式中、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表し、Y3 は酸素原子または硫黄原子を表す。
【0162】
一般式(a)で示されるシアニン色素のうち、波長800〜840nmの赤外線で露光する場合は、特に好ましいものとしては下記一般式(a−1)で示されるヘプタメチンシアニン色素を挙げることができる。
【0163】
【化10】
Figure 0003787334
【0164】
一般式(a−1)中、X1 は、水素原子またはハロゲン原子を表す。R1 およびR2 は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1 およびR2 は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1 とR2 とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0165】
Ar1 およびAr2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1 およびY2 は、それぞれ独立に、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3 およびR4 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシ基、スルホ基が挙げられる。R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za - は、電荷の中和に必要な対アニオンを示し、R1 〜R8 のいずれかがアニオン性置換基で置換されている場合は、Za - は必要ない。好ましいZa - は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオンおよびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオンおよびスルホン酸イオンである。上記一般式(a−1)で示されるヘプタメチン色素は、サーマルポジタイプの画像記録層に好適に用いることができ、特にフェノール性ヒドロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂と組み合わせたいわゆる相互作用解除型のサーマルポジタイプの画像記録層に好ましく用いられる。
【0166】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するもののほか、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0167】
【化11】
Figure 0003787334
【0168】
【化12】
Figure 0003787334
【0169】
【化13】
Figure 0003787334
【0170】
上記以外の赤外線吸収剤としては、特開2001−242613号公報に記載されている複数の発色団を有する染料、特開2002−97384号公報、米国特許第6,124,425号明細書に記載されている高分子化合物に共有結合で発色団が連結された色素、米国特許6,248,893号明細書に記載されているアニオン染料、特開2001−347765号公報に記載されている表面配向性基を有する染料等を好適に用いることができる。
【0171】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0172】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0173】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0174】
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくない場合があり、また、10μmを超えると画像記録層の均一性の点で好ましくない場合がある。
【0175】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0176】
これらの顔料または染料は、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料または染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなる傾向があり、また50質量%を超えて配合すると、配合量の増加にしたがって記録層の均一性や、記録層の耐久性に好ましくない影響を与えるおそれがでてくる。また、用いられる染料または顔料は単一の化合物であっても、2種以上の化合物を混合したものでもよく、複数の波長の露光機へ対応するために、吸収波長の異なる染料または顔料を併用することも好ましく行われる。
【0177】
(C)その他の成分
画像記録層用組成物中には、更に必要に応じて、感度を高めるための環状酸無水物、フェノール類、有機酸類;露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料、その他のフィラー等を含有させることができる。
【0178】
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されているように無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4 −テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸等がある。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0179】
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類等があり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸等が挙げられる。
上記の環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類の画像記録層用組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0180】
露光後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する感光性化合物と、酸と塩を形成して色調を変える有機染料との組み合わせを挙げることができる。
露光によって酸を放出する感光性化合物は、光分解して酸性物質を発生する化合物の光分解生成物である。例えば、特開昭50−36209号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニド;特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ビロンやトリハロメチル−s−トリアジン;特開昭55−62444号公報に記載されている種々のo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩等を挙げることができる。
これらの化合物は、単独でまたは混合して使用することができ、その添加量は、組成物全質量に対し、0.3〜15質量%の範囲が好ましい。
【0181】
酸と塩を形成して色調を変える有機染料は、上記感光性化合物と相互作用することによってその色調を変える有機染料である。
このような有機染料としては、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、チアジン系、オキサジン系、フェナジン系、キサンテン系、アントラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系の色素を用いることができる。
【0182】
具体的には、例えば、ブリリアントグリーン、エオシン、エチルバイオレット、エリスロシンB、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、フェノールフタレイン、1,3−ジフェニルトリアジン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、オレンジIV、ジフェニルチオカルバゾン、2,7−ジクロロフルオレセイン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、フエナセタリン、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、オイルブルー#603〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルピンク#312〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッド5B〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルスカーレット#308〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドOG〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルレッドRR〔オリエント化学工業(株)製〕、オイルグリーン#502〔オリエント化学工業(株)製〕、スピロンレッドBEHスペシャル〔保土谷化学工業(株)製〕、ビクトリアピュアーブルーBOH〔保土谷化学工業(株)製〕、パテントピュア−ブルー〔住友三国化学工業(株)製〕、スーダンブルーII〔BASF社製〕、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ファーストアッシドバイオレットR、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチル−アミノ−フェニルイミノナフトキノン、p−メトキシベンゾイル−p′−ジエチルアミノ−o′−メチルフェニルイミノアセトアニリド、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルイミノアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロンが挙げられる。
【0183】
特に好ましい有機染料は、トリアリールメタン系染料である。トリアリールメタン系染料では、特開昭62−2932471号公報、特許第2969021号公報に記載されているような対アニオンとしてスルホン酸化合物を有するものが特に有用である。
これらの染料は単独でまたは混合して使用することができ、添加量は画像記録層用組成物の総質量に対して0.3〜15質量%が好ましい。また必要に応じて他の染料、顔料と併用でき、その使用量は染料および顔料の総質量に対して70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0184】
画像記録層用組成物中には、画像のインキ着肉性を向上させるための疎水基を有する各種樹脂、例えば、オクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、t−ブチルフェノール−ベンズアルデヒド樹脂、ロジン変性ノボラック樹脂、これら変性ノボラック樹脂のo−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等;塗膜の可撓性を改良するための可塑剤、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ブチルグリコレート、リン酸トリクレジル、アジピン酸ジオクチル等の各種添加剤を種々の目的に応じて含有させることができる。これらの添加量は組成物全質量に対して、0.01〜30質量%の範囲が好ましい。
【0185】
組成物中には、皮膜の耐摩耗性を更に向上させるための公知の樹脂を含有させることができる。これらの樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。これらは単独でまたは混合して使用することができる。添加量は組成物全質量に対して、2〜40質量%の範囲が好ましい。
【0186】
組成物中には、現像のラチチュードを広げるために、特開昭62−251740号公報および特開平4−68355号公報に記載されているような非イオン性界面活性剤、特開昭59−121044号公報および特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0187】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコールおよびその誘導体類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールエーテル誘導体類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー類、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコールアルキルアミン類、ポリエチレングリコールアルキルアミノエーテル類、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル類、グリセリン脂肪酸エステルおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビタン脂肪酸エステルおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、ソルビット脂肪酸エステルおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、ペンタエリスリット脂肪酸エステルおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、グリセロールボレイド脂肪酸エステルおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、脂肪酸アルカノールアミドおよびそのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、フィトステロールのポリエチレンオキサイド付加物類、フィトスタノールのポリエチレンオキサイド付加物類、植物油のポリエチレンオキサイド付加物類、ラノリンのポリエチレンオキサイド付加物類、ラノリンアルコールのポリエチレンオキサイド付加物類、密蝋誘導体のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体のポリエチレンオキサイド付加物類、パーフルオロ基を側鎖に有するアクリル系オリゴマーであるフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0188】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アモーゲンK(商品名、第一工業製薬(株)製、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型)、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、レボン15(商品名、三洋化成(株)製、アルキルイミダゾリン系)が挙げられる。
上記非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤の画像記録層用組成物中に占める割合は0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%である。
【0189】
組成物中には、塗布面質を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を含有させることができる。
好ましい添加量は、全組成物の0.001〜1.0質量%であり、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。
【0190】
組成物中には、黄色系染料を含有させることができる。中でも、417nmの吸光度が436nmの吸光度の70%以上である黄色系染料が好ましい。
【0191】
画像記録層用組成物から平版印刷版原版を得る場合には、上述した平版印刷版用支持体上に画像記録層として設ける。画像記録層用組成物は、下記の有機溶剤の1種または2種以上を混合したものに溶解され、または分散され、支持体に塗布されて乾燥される。
有機溶剤としては、公知のものを用いることができるが、沸点40〜200℃、特に60〜160℃の範囲のものが、乾燥の際における有利さから選択される。
【0192】
有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−またはイソ−プロピルアルコール、n−またはイソ−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メトキシベンゼン等の炭化水素類;エチルアセテート、n−またはイソ−プロピルアセテート、n−またはイソ−ブチルアセテート、エチルブチルアセテート、ヘキシルアセテート等の酢酸エステル類;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼン等のハロゲン化物;イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコール、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール等の多価アルコールとその誘導体;ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の特殊溶剤が挙げられる。これらは単独でまたは混合して使用される。塗布する組成物中の固形分の濃度は、2〜50質量%とするのが適当である。
【0193】
[平版印刷版原版の製造]
画像記録層用組成物の塗布方法としては、例えば、ロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、グラビアオフセットコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティング、スプレーコーティング等の方法が用いられる。塗布量は、乾燥後の質量にして0.3〜4.0g/m2 が好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は小さくて済むが、膜強度は低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、耐刷性が向上する。
【0194】
支持体上に塗布された画像記録層用組成物の乾燥は、通常加熱された空気によって行われる。加熱は30〜200℃、特に、40〜140℃の範囲が好適である。乾燥の温度は乾燥中一定に保たれる方法だけでなく段階的に上昇させる方法も実施しうる。また、乾燥風は除湿することによって好結果が得られる場合もある。加熱された空気は、塗布面に対し0.1〜30m/秒、特に0.5〜20m/秒の割合で供給するのが好適である。
【0195】
<バックコート>
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物および特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解させ、重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3 4 Si(OC2 5 4 、Si(OC3 7 4 、Si(OC4 9 4 等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手しやすく、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液性に優れており特に好ましい。
【0196】
[平版印刷版の製造]
<露光>
上記のようにして作成された平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
【0197】
<現像液>
本発明の平版印刷版原版の現像処理に好適に用いられる現像液は、pH9.0〜13.5、好ましくはpH10.0〜13.2の現像液である。現像液(以下、補充液も含めて「現像液」という。)には、従来公知のアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第三リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第二リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム等の無機アルカリ塩が挙げられる。
【0198】
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も挙げられる。
これらのアルカリ水溶液は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0199】
上記のアルカリ水溶液のうち、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有せず、非還元糖と塩基とを含有するpH9.0〜13.5の現像液を用いるのが好ましい。この現像液(いわゆる「ノンシリケート現像液」)を用いると、現像時にカスやヘドロの発生を防止することができるため、現像液の安定性が大幅に向上する。また、画像記録層の表面を劣化させることがなく、かつ画像記録層の着肉性をより良好な状態に維持することができる。
【0200】
この現像液は、主成分として、少なくとも1種の非還元糖と、少なくとも1種の塩基とを含有し、かつ、pH9.0〜13.5であるのが好ましい。
非還元糖とは、遊離のアルデヒド基およびケトン基を有さず、還元性を示さない糖類である。具体的には、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体および糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類され、いずれも好適に用いられる。
トレハロース型少糖類としては、例えば、サッカロース、トレハロースが挙げられる。
配糖体としては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体が挙げられる。
糖アルコールとしては、例えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシットおよびアロズルシットが挙げられる。
【0201】
また、非還元糖としては、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、および、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)も好適に用いられる。
【0202】
中でも、特に好ましい非還元糖は、糖アルコール、サッカロース、還元水あめであり、特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用があることと、低価格であることで好ましい。
これらの非還元糖は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用でき、それらの現像液中に占める割合は0.1〜30質量%が好ましく、更に好ましくは、1〜20質量%である。濃度が低すぎると、十分な緩衝作用が得られない場合がある。濃度が高すぎると、高濃縮化しにくく、また原価アップの問題が出てくる。なお、還元糖を塩基と組み合わせて使用した場合、経時的に褐色に変色し、pHも徐々に下がり、よって現像性が低下するという問題点がある。
【0203】
非還元糖に組み合わせる塩基としては、従来公知のアルカリ剤が使用できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム等の無機アルカリ剤が挙げられる。
また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン等の有機アルカリ剤も挙げられる。
これらのアルカリ剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0204】
これらの中で好ましいのは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。その理由は、非還元糖に対するこれらの量を調整することにより広いpH領域でpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
これらのアルカリ剤は現像液のpHを9.0〜13.5の範囲になるように添加され、その添加量は所望のpHならびに非還元糖の種類および添加量によって決められるが、より好ましいpH範囲は10.0〜13.2である。
【0205】
現像液には、更に、糖類以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を併用することができる。かかる緩衝液として用いられる弱酸としては、解離定数(pKa)が10.0〜13.2のものが好ましい。
このような弱酸は、Pergamon Press社発行の「IONISATION CONSTANTS OF ORGANIC ACIDS IN AQUEOUS SOLUTION」等に記載されているものから選ぶことができる。
【0206】
例えば、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール−1(pKa12.74)、トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロエタノール(同12.24)等のアルコール類、ピリジン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−アルデヒド(同12.05)等のアルデヒド類、サリチル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイドロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.34)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノール(同11.27)、p−クレゾール(同10.27)、m−クレゾール(同10.09)等のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物、2−ブタノンオキシム(同12.45)、アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグリオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.35)等のオキシム類、アデノシン(同12.56)、イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シトシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.1)、キサンチン(同11.9)等の核酸関連物質、他に、ジエチルアミノメチルホスホン酸(同12.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸(同12.5)等の弱酸が挙げられる。
【0207】
これらの弱酸の中で好ましいのは、スルホサリチル酸、サリチル酸である。これらの弱酸に組み合わせる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムが好適に用いられる。これらのアルカリ剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。上記の各種アルカリ剤は濃度および組み合わせによりpHを好ましい範囲内に調整して使用される。
【0208】
現像液には、現像性の促進、現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性の向上を目的として、必要に応じて、アルキレンオキシド付加化合物、界面活性剤、有機溶剤等を添加できる。
アルキレンオキシド付加化合物としてはポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレントリエタノールアミン等が挙げられる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性の界面活性剤が挙げられる。
【0209】
界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等のノニオン性界面活性剤;
【0210】
脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等のアニオン界面活性剤;
【0211】
アルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等のカチオン性界面活性剤;
カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホべタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類等の両性界面活性剤が挙げられる。
以上に例示した界面活性剤の中で「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
【0212】
更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基含有ウレタン等のノニオン型が挙げられる。
【0213】
上記の界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
【0214】
現像液には、種々の現像安定化剤を用いることができる。好ましい例として、特開平6−282079号公報に記載されている糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキルアンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩およびジフェニルヨードニウムクロライド等のヨードニウム塩が挙げられる。
更には、特開昭50−51324号公報に記載されているアニオン界面活性剤または両性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載されている水溶性カチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質を挙げることができる。
更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭60−111246号公報に記載されているポリオキシエチレンブロック重合型またはポリオキシプロピレンブロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129750号公報のポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合物、特開昭61−215554号公報に記載されている重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸またはアルコールに4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加化合物と水溶性ポリアルキレン化合物等が挙げられる。
【0215】
有機溶剤としては、水に対する溶解度が約10質量%以下のものが適しており、好ましくは5質量%以下のものから選ばれる。例えば、1−フェニルエタノール、2−フェニルエタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノール、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキシベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコール、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノールおよび4−メチルシクロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミンおよびN−フェニルジエタノールアミン等を挙げることができる。
【0216】
有機溶剤の含有量は使用液の総質量に対して0.1〜5質量%である。その使用量は界面活性剤の使用量と密接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これは界面活性剤の量が少なく、有機溶剤の量を多く用いると有機溶剤が完全に溶解せず、したがって、良好な現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0217】
現像液には更に還元剤を加えることができる。これは印刷版の汚れを防止するものである。好ましい有機還元剤としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メトール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾルシン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジン等のアミン化合物が挙げられる。更に好ましい無機の還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸水素酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チオ硫酸および亜ジチオン酸等の無機酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
これらの還元剤のうち汚れ防止効果が特に優れているのは亜硫酸塩である。これらの還元剤は使用時の現像液に対して好ましくは、0.05〜5質量%の範囲で含有される。
【0218】
現像液には更に有機カルボン酸を加えることもできる。好ましい有機カルボン酸は炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸である。脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸等があり、特に好ましいのは炭素数8〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する不飽和脂肪酸でも、枝分かれした炭素鎖のものでもよい。芳香族カルボン酸としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等にカルボキシ基が置換された化合物で、具体的には、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等があるがヒドロキシナフトエ酸は特に有効である。
【0219】
上記脂肪族および芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウム塩やカリウム塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。本発明で用いる現像液の有機カルボン酸の含有量は特に限定されないが、0.1質量%より低いと効果が十分でなく、また10質量%以上ではそれ以上の効果の改善が図れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解を妨げることがある。したがって、好ましい添加量は使用時の現像液に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜4質量%である。
【0220】
現像液には、更に必要に応じて、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、硬水軟化剤等を含有させることもできる。
硬水軟化剤としては例えば、ポリリン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸および1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸等のアミノポリカルボン酸およびそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシタエン−1,1−ジホスホン酸、それらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩を挙げることができる。
【0221】
このような硬水軟化剤はそのキレート化と使用される硬水の硬度および量によって最適値が変化するが、一般的な使用量を示せば、使用時の現像液に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。添加量が少なすぎると添加の目的が十分に達成されず、多すぎると色抜け等の画像部への悪影響が発生する場合がある。現像液の残余の成分は水である。現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は、各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。
【0222】
この現像液には更に、現像性の促進や現像カスの分散および印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて、前述の種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
【0223】
<後処理>
上述した現像液で現像処理されて得られる平版印刷版は、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガム、デンプン誘導体等を主成分とするフィニッシャー、保護ガム液等で後処理を施される。平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0224】
<自動現像機>
近年、型版および印刷業界では製版作業の合理化および標準化のため、平版印刷版原版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、平版印刷版原版を搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの平版印刷版原版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像および後処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって平版印刷版原版を浸せき搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水としで再利用する方法も知られている。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼動時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
このような処理によって得られた平版印刷版は、印刷機に設置され、多数枚の印刷に用いられる。
【0225】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.平版印刷版用支持体の作成
(平版印刷版用支持体A)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(JIS A1050材)に、以下の(a)〜(g)の各種表面処理を連続的に行い、平版印刷版用支持体Aを得た。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0226】
(a)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度30g/L、アルミニウムイオン濃度10g/L、温度60℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を10秒間行い、アルミニウム板を0.5g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0227】
(b)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度12g/L水溶液(アルミニウムイオンを10g/L含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0228】
(c)電気化学的粗面化処理
50Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸15g/L水溶液(アルミニウムイオンを10g/L含む。)、温度30℃であった。交流電源波形は正弦波であり、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図3に示すものを使用した。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
電流密度は電流のピーク値で16A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で400C/dm2 であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0229】
(d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度36g/L、アルミニウムイオン濃度10g/Lの水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を35℃で10秒間行い、アルミニウム板を0.1g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0230】
(e)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを10質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を10秒間行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0231】
(f)陽極酸化処理
直流電解による陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行い、平版印刷版用支持体を得た。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度10質量%(アルミニウムイオンを5.0質量%含む。)、温度20℃であった。電流密度は6A/dm2 であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2 であった。
陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.44μmであった。
【0232】
(g)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体を温度20℃の3号ケイ酸ソーダの1.0質量%水溶液の処理槽の中に10秒間浸せきさせることで、アルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。
【0233】
(平版印刷版用支持体B)
上記(c)において、電流密度を12A/dm2 、電気量を300C/dm2 とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Bを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.34μmであった。
【0234】
(平版印刷版用支持体C)
上記(c)において、電流密度を24A/dm2 、電気量を600C/dm2 とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Cを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.34μmであった。
【0235】
(平版印刷版用支持体D)
上記(c)において、図2に示した電解槽を使用して電気化学的粗面化処理を行い、上記(d)において、カセイソーダ水溶液の温度を30℃とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Dを得た。
【0236】
(平版印刷版用支持体E)
上記(c)において、図2に示した電解槽を使用して電気化学的粗面化処理を行い、上記(d)において、カセイソーダ水溶液の温度を45℃とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Eを得た。
【0237】
(平版印刷版用支持体F)
上記(g)において、3号ケイ酸ソーダ水溶液の濃度を0.2質量%とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Fを得た。
【0238】
(平版印刷版用支持体G)
上記(g)において、3号ケイ酸ソーダ水溶液の濃度を2.5質量%とし、温度を50℃とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Gを得た。
【0239】
(平版印刷版用支持体H)
上記(c)において、電流密度を12A/dm2 、電気量を50C/dm2 とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Hを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.24μmであった。
【0240】
(平版印刷版用支持体I)
上記(g)において、3号ケイ酸ソーダ水溶液の濃度を2.5質量%とし、温度を80℃とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Iを得た。
【0241】
(平版印刷版用支持体J)
上記(g)を行わなかった以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Jを得た。
【0242】
(平版印刷版用支持体K)
上記(d)において、カセイソーダ水溶液の温度を60℃とした以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Kを得た。
【0243】
(平版印刷版用支持体L)
上記(a)および(b)の代わりに、下記(h)、(i)および(j)を順次行った以外は、平版印刷版用支持体Aと同様の方法で、平版印刷版用支持体Kを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.55μmであった。
【0244】
(h)機械的粗面化処理
図1に示した装置を使って、研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0245】
(i)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を10秒間行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0246】
(j)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0247】
(平版印刷版用支持体M)
上記(h)において、研磨剤として、ケイ砂の代わりに、平均粒径50μm、最大粒径は150μmのパミスを用い、ブラシの回転数を250rpmとし、上記(i)において、アルミニウムの溶解量を8g/m2 とし、上記(c)、(d)および(e)の代わりに、下記(k)、(l)および(m)を行った以外は、平版印刷版用支持体Lと同様の方法で、平版印刷版用支持体Mを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.55μmであった。
【0248】
(k)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は図5に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽は図4に示すものを使用した。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0249】
(l)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を60℃で行い、アルミニウム板を1.0g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0250】
(m)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0251】
(平版印刷版用支持体N)
上記(h)を行わず、上記(l)において、カセイソーダ水溶液の温度を32℃とし、アルミニウム溶解量を0.2g/m2 とした以外は、平版印刷版用支持体Mと同様の方法で、平版印刷版用支持体Nを得た。陽極酸化処理後の平版印刷版用支持体の表面粗さRa は、0.25μmであった。
【0252】
2.平版印刷版用支持体の表面形状の測定
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面のピットについて、下記(1)〜(3)の測定を行った。
結果を第1表に示す。なお、第1表中、「−」は、該当する平均開口径のピットがなかったことを示す。
(1)大ピットの平均開口径
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率1000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている大ピットを50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0253】
(2)小ピットの平均開口径
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において小ピットを50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
【0254】
(3)小ピットの開口径に対する深さの比の平均
小ピットの開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50000倍で撮影し、得られたSEM写真において開口径0.8μm以下の小ピットを20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出した。
【0255】
3.平版印刷版用支持体の表面形状のファクターの算出
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面について、以下のようにしてΔS50を求めた。
結果を第1表に示す。
【0256】
(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測定
原子間力顕微鏡(SP13700、セイコー電子工業社製)により表面形状を測定し、3次元データを求めた。以下、具体的な手順を説明する。
平版印刷版用支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用した。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(AC−160TS、オリンパス社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定した。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求めた。
計測の際は、表面の50μm□を512×512点測定した。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとした。
【0257】
(2)ΔS50の算出
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sx 50とした。表面積差ΔS50は、得られた実面積Sx 50と幾何学的測定面積S0 50 とから、上記式(1)により求めた。
【0258】
4.平版印刷版用支持体の表面のSi原子付着量の測定
各平版印刷版用支持体の表面のSi原子付着量を蛍光X線分析装置を用い、検量線法により測定した。結果を第1表に示す。なお、第1表中の値は、アルミニウム板に含有されるSi原子量を補正してある。
【0259】
検量線を作成するための標準試料としては、既知量のSi原子を含有するケイ酸ナトリウム水溶液を、アルミニウム板の上の30mmφの面積内に均一に滴下した後、乾燥させたものを用いた。蛍光X線分析の条件を以下に示す。
【0260】
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh、測定スペクトル:Si−Kα、管電圧:50kV、管電流:50mA、スリット:COARSE、分光結晶:RX4、検出器:F−PC、分析面積:30mmφ、ピーク位置(2θ):144.75deg.、バックグランド(2θ):140.70deg.および146.85deg.、積算時間:80秒/sample
【0261】
5.平版印刷版原版の作成
(実施例1〜7および比較例1〜7)
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにしてサーマルポジタイプの画像記録層を設けて、第1表に示される実施例1〜7および比較例1〜7の平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
【0262】
平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2 であった。
【0263】
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0264】
【化14】
Figure 0003787334
【0265】
更に、下記組成の感熱層塗布液を調製し、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、この感熱層塗布液を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.8g/m2 になるよう塗布し、乾燥させて感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0266】
<感熱層塗布液組成>
・ノボラック樹脂(m−クレゾール/p−クレゾール=60/40、重量平均分子量7,000、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.90g
・メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸共重合体(モル比35/35/30) 0.10g
・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.1g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.05g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にしたもの 0.02g
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−780F、大日本インキ化学工業社製、固形分30質量%) 0.0045g(固形分換算)
・フッ素系界面活性剤(ディフェンサF−781F、大日本インキ化学工業社製、固形分100質量%) 0.035g
・メチルエチルケトン 12g
【0267】
【化15】
Figure 0003787334
【0268】
6.平版印刷版原版の評価
上記で得られた平版印刷版原版の感度ならびに平版印刷版の耐刷性、バーニング処理後の耐刷性(バーニング耐刷性)、耐汚れ性および水上がりの見やすさを下記の方法で評価した。
【0269】
(1)感度
得られた平版印刷版原版をCreo社製のTrendSetterを用いて、ドラム回転速度150rpmでビーム強度を2〜13Wまで変化させて画像状に描き込み(画像記録)を行った。
その後、下記組成のアルカリ現像液AおよびBのいずれかを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。なお、実施例6にはアルカリ現像液Aを用い、その他の実施例および比較例にはアルカリ現像液Bを用いた。なお、アルカリ現像液AはpH13.2、アルカリ現像液BはpH13.3であった。
現像不良の画像記録層の残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像ができたビーム強度により感度を評価した。ビーム強度が小さいほど感度が高い。結果を第1表に示す。
【0270】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2 ・K2 O(K2 O/SiO2 =1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000) 0.5質量%
・水 95.0質量%
【0271】
<アルカリ現像液B組成>
・D−ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル(重量平均分子量1,000) 0.5 質量%
・水 96.15質量%
【0272】
(2)耐刷性
得られた平版印刷版原版をCreo社製TrendSetterを用いてドラム回転速度150rpm、ビーム強度10Wで画像状に描き込みを行った。
その後、上記アルカリ現像液AおよびBのいずれかを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー940Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像し、平版印刷版を得た。なお、実施例6にはアルカリ現像液Aを用い、その他の実施例および比較例にはアルカリ現像液Bを用いた。
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を第1表に示す。
【0273】
(3)バーニング処理後の耐刷性
耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版の版面を富士写真フイルム(株)製のバーニング整面液BC−3で拭いた後、約240℃で7分間、バーニング処理を行った。その後、水洗し、富士写真フイルム(株)製ガムGU−7を水で体積を2倍に希釈した液で版面を処理した。
その後、耐刷性の評価の場合と同様に、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、バーニング処理後の耐刷性(バーニング耐刷性)を評価した。結果を第1表に示す。
【0274】
(4)耐汚れ性
耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を用い、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
結果を第1表に示す。ブランケットの汚れの少ないものから多いものまでを○、△、×の3段階で評価した。
【0275】
(5)水上がりの見やすさ
耐刷性の評価の場合と同様にして得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機に取り付け、湿し水の供給量を増加させながら版面の非画像部の光り具合を目視で観察し、光り始めたときの湿し水の供給量で検版性(水上がりの見やすさ)を評価した。
結果を第1表に示す。光り始めたときの湿し水の供給量が多いものから少ないものまでを○、△、×の3段階で評価した。
【0276】
第1表から明らかなように、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜7)は、感度ならびに平版印刷版としたときの耐汚れ性、耐刷性および水上がりの見やすさのいずれにも優れる。
また、ノボラック樹脂を30質量%以上含有する画像記録層を有する本発明の平版印刷版原版(実施例1〜7)は、上記特性に加え、バーニング耐刷性にも優れる。
更に、露光した後、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有せず、非還元糖と塩基とを含有するpH9.0〜13.5の現像液を用いて現像した場合(実施例1〜5および7)であっても、感度、耐汚れ性、耐刷性および水上がりの見やすさのいずれにも優れる平版印刷版が得られた。
【0277】
【表1】
Figure 0003787334
【0278】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の平版印刷版原版は、感度ならびに平版印刷版としたときの耐汚れ性、耐刷性および水上がりの見やすさのいずれにも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作成における機械的粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作成に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作成に用いられるフラット型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の他の一例を示す断面図である。
【図4】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作成に用いられるラジアル型交流電解槽を備える電解粗面化処理装置の一例を示す断面図である。
【図5】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
2、20 交流電解槽
4A、4B、4C、26A、26B 主極
6A、6B、14A、14B 搬送ローラ
8A、16A 導入ローラ
8B、16B 導出ローラ
10、34 補助電解槽
12、36 補助電極
22 交流電解槽本体
22A 開口部
24 送りローラ
28A、28B 給液ノズル
30A 上流側案内ローラ
30B 下流側案内ローラ
32 溢流槽
34A 補助電解槽の底面
35 上流側案内ローラ
51 アルミニウム合金板
52、54 ローラ状ブラシ
53 研磨スラリー液
55、56、57、58 支持ローラ
100、102、104 電解粗面化処理装置
a 搬送方向
T 搬送面
ac 電源
Th1、Th2、Th3、Th4、Th5 サイリスタ
W アルミニウムウェブ
ta アノード反応時間
tb カソード反応時間
tc 電流が0からピークに達するまでの時間
Ia アノードサイクル側のピーク時の電流
Ic カソードサイクル側のピーク時の電流

Claims (2)

  1. アルミニウム板に少なくとも塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理、陽極酸化処理およびアルカリ金属ケイ酸塩処理を施して得られる平版印刷版用支持体上に、熱により画像形成することができる画像記録層を設けてなる平版印刷版原版であって、
    前記塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理が、前記アルミニウム板のウェブを略水平方向に搬送しつつ電気化学的粗面化処理を施す装置により、交流を用いて、前記アルミニウム板が陽極反応にあずかる電気量が300〜600C/dm 2 となるように行われ、
    前記平版印刷版用支持体が、前記塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理により形成された、平均開口径2〜10μmの大ピットと平均開口径0.05〜0.8μmの小ピットとを重畳した構造の砂目形状を表面に有し、かつ、前記小ピットの開口径に対する深さの比の平均が0.2〜0.6であり、
    前記平版印刷版用支持体について、原子間力顕微鏡を用いて、表面の50μm□を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により求められる実面積Sx 50と、幾何学的測定面積S0 50 とから、下記式(1)により求められる表面積差ΔS50が20〜40%であり、
    前記平版印刷版用支持体の表面のSi原子付着量が1.0〜15.0mg/m2 であり、
    前記画像記録層が、ノボラック樹脂を30質量%以上含有する、平版印刷版原版。
    ΔS50=(Sx 50−S0 50 )/S0 50 ×100(%) (1)
  2. 請求項に記載の平版印刷版原版に露光した後、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有せず、非還元糖と塩基とを含有するpH9.0〜13.5の現像液を用いて現像して平版印刷版を得る平版印刷版の製造方法。
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