JP3785231B2 - 中空プラスチック成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は中空プラスチック成形品、特に曲形状の大型成形品に好適な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図7に示すように、自動車Cのリアボディたとえば、トランクリッドTの上面にスポイラーSを設けることがある。このスポイラーSは、自動車の外観を向上させるとともに走行時の安定性を高める効果を有し、車種によって種々の形状のものが取り付けられる。特に、スポーツタイプの自動車にあっては、大型のものが好まれている。
【0003】
このようなスポイラーSは、軽量なものが好ましいことから、公知のブロー成形により製造された中空プラスチック成形品が多い。図8にかかる中空プラスチック成形品の製造例を示す。
まず、パーティング面41,41に成形品形状を形成するキャビティ42,42が形成されたブロー成形型40,40の前記パーティング面41間に、パリソン成形装置43から溶融状態のパリソンPを押し出し、前記パーティング面41で挟む。前記パリソンPは、図9に示すように、キャビティ42の最大幅Wを満たすように太さDの調整がなされている。前記パリソンP内に圧縮気体を吹き込むことによって、パリソンPを膨らませキャビティ42,42の形状に賦形し冷却する。成形後、前記パリソンPのキャビティ42外側部分すなわち、パーティング面41によって挟まれていた部分Qは、製品バリとして取り除かれる。
【0004】
しかるに、従前の装置では、キャビティ42の最大幅に合わせたパリソンを用い、キャビティからはみ出した余分なバリを後から除去しているため、その作業に手間取る問題があった。なお、除去されたバリは、パリソン等の成形材料としてリサイクルされる。さらに、従前の設備では、押し出すパリソンの太さに限界があり、前記した大型スポイラーなど、大きく曲がった形状の成形品にあっては、押出設備や押出条件を変更しなければ成形が困難な場合がある。また、かかる曲形状では、バリとして除去する部分がさらに多くなるため、その除去作業が面倒であった。なお、金型を三次元的に移動させて折曲形状のプラスチック管を成形する方法も開示されているが、金型を移動させるための装置が複雑でかつ高価になるのみならず、大型化する問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点を解決するために提案されたものであって、特に、大きく曲がった形状の中空プラスチック成形品を成形するに際し、パリソン成形設備は従来のものを使用することができ、加えて、複雑な装置を必要とせずしかも成形品のバリを少なくしてバリ除去作業を省略しもしくは簡略にすることができる、新規な中空プラスチック成形品の製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1で提案される中空プラスチック成形品の製造方法は、パーティング面に曲形状のキャビティが形成されたブロー成形型の前記パーティング面間にパリソンを下降させて、該パリソンをブロー成形型のパーティング面で挟み、前記パリソン内に圧縮気体を吹き込んでパリソンをキャビティ形状に膨らませる中空プラスチック成形品の製造方法において、前記パーティング面間を下降してくるパリソンの側面に対して前進後退するパリソン誘導部材をブロー成形型外に複数設け、前記パーティング面間を下降してくるパリソンの側面を、前記パリソンの下降に伴い前記複数のパリソン誘導部材を順次前進させることにより押して前記パーティング面のキャビティ形状に沿うようにパリソンを誘導し、該パリソンの側面を前記パーティング面のキャビティの縁に立設されたパリソン保持ピンに当接させて前記パリソンをキャビティ形状に沿わせて保持し、前記前進により前記パーティング面間に位置することになったパリソン誘導部材を前記ブロー成形型外に後退させた後、前記ブロー成形型を閉じてパリソン内に圧縮空気を吹き込むことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明に用いられる装置の一例を型開きして示す斜視図、図2はパリソン誘導部材の一例を示す斜視図、図3は本発明の製造方法の一実施例を示す図であって、パリソンをキャビティ形状に沿わせる状態を段階的に示す概略図、図4は同じく製造方法を示す図であって、型閉め後パリソン内に圧縮気体を吹き込む状態を示す概略図、図5は他の装置の要部を示す断面図、図6はその型閉め状態を示す断面図である。
【0008】
図1に示す中空プラスチック成形品の製造装置10は、ブロー成形型11とパリソン誘導装置20とを備え、公知のパリソン押出装置(図示せず)とともに用いられる。
ブロー成形型11は、そのパーティング面12に曲形状を有する成形品キャビティ13が形成されており、2つのブロー成形型11が開閉自在に配置され、型閉めにより前記パーティング面12で合わされて一の製品キャビティが形成されるようになっている。
【0009】
前記パーティング面12の少なくとも一方のキャビティ13の縁には、パリソン保持ピン14が立設されている。このパリソン保持ピン14は、前記ブロー成形型11,11の対向するパーティング面12の間に押し出されて下降するパリソンPを、前記キャビティ13の曲形状に略沿うように曲げて保持するためのもので、当該キャビティ13の形状に応じて適当な位置に適当数設けられる。本実施例において、前記キャビティ13は、図のような三日月形をしており、パリソン保持ピン14は、キャビティ上部の曲部C1の内側のパーティング面に2本、下部の曲部C2の内側のパーティング面に一本設けられている。
【0010】
一方、他方のブロー成形型11のパーティング面12には、前記パリソン保持ピン14の位置に対応して、ピン収納孔15が設けられている。このピン収納孔15は、ブロー成形型01の型閉め時に前記パリソン保持ピン14の先端が入って、型の合着圧締を妨げないようにするためのもので、パリソン保持ピン14の先端を収納した際に両方の型のパーティング面12が密着する深さに形成される。
【0011】
また、パリソン誘導部材20は、パリソン成形装置から略直下に下降するパリソンPの側面を押し、キャビティ13の形状に合わせて曲がるように誘導するためのもので、本体21とアーム22とからなり、公知のシリンダ装置などからなる駆動機構23により前記パーティング面12間またはブロー成形型11,11の上下でパリソンPに向けて前進後退する。図2にこのパリソン誘導部材20の一例を示す。このパリソン誘導部材20の本体21は略円筒状に形成され、ベアリング24により前記アーム22の先端に回動自在に取り付けられる。前記本体21を回動自在とすることにより、パリソンPを押圧した際の抵抗が少なくなってその下降を妨げることがなく、パリソンPにしわなどが発生するのを防ぐ。なお、前記保持ピン14についてもその外周は回動できるようにすることが好ましい。
【0012】
次に前記パリソン誘導部材20の作動について説明する。このパリソン誘導部材20は、キャビティ13の曲形状に合わせてブロー成形型11の外部に設けられており、パリソンPの下降に伴いその側面を押して曲げ、キャビティ13形状に沿わせるように誘導する。前記キャビティ13の曲部C1,C2には、パリソン保持ピン14が立設されているので、誘導されたパリソンPは、このパリソン保持ピン14に側面が当接して曲がり形状が保持される。その後、前記パリソン誘導部材20は駆動機構23により型外へ後退する。なお、この例において、ブロー成形型11の下方に位置するパリソン誘導部材20aについては、ブロー成形型11の型閉めの邪魔にならないため、型閉めに際して後退させない。
前記パリソン誘導部材20は、前記キャビティ13の形状およびそのパリソン保持ピン14の位置に合わせて適宜に設けられるが、パリソンPを押して曲げるものであるから、曲げる方向の後方に設けられている。
【0013】
次に、図3および図4にしたがって、この製造装置を用いた中空プラスチック成形品の製造方法について説明する。なお、各図の符号において、図1と同一の符号は同一の部材を示す。
まず、図3(A)に示すように、パリソン成形装置18から押し出した溶融状態のパリソンPを、型開きし対向しているブロー成形型11,11のパーティング面12間に下降させる。前記パリソンPがキャビティ13の曲部C1に至ると、同図(B)に示すように、最上のパリソン保持ピン14より上方に位置する最上のパリソン誘導部材20Aが、前記パリソンPの側面に対し前進して該パリソンPの側面を押圧し、前記キャビティ13の形状に沿って屈曲するようにパリソンPを誘導する。その後前記パリソン誘導部材20Aは、型外へ後退するのであるが、前記キャビティの曲部C1の内側にはパリソン保持ピン14が立設されているので、押圧が解除されたパリソンPの側面は前記パリソン保持ピン14と当接し、その屈曲形状が保持される。
続いて、パリソンPの下降とともに、同図(C)に示すように、その下のパリソン誘導部材20Bが前進してパリソンPの側面を押し、パリソンPをキャビティ13形状に沿って屈曲させる。屈曲したパリソンPは、パリソン保持ピン14によりその形状が保持される。
さらにパリソンPが下降してキャビティ13の曲部C2へ至ると、同図(D)に示すように、最下のパリソン誘導部材20Cが前進し、パリソンPの側面を押して屈曲させ曲部C2の形状に沿わせる。なお、本実施例では、曲部C2の形状を誘導するパリソン誘導部材20Cは、ブロー成形型20の下側に設けられており、完全に型閉めされるまでパリソンPの側面を押して持ち上げ、パリソン保持ピン14に当接させている。
【0014】
各パリソン誘導部材20は、所定の曲形状のキャビティ13に沿わせてパリソンPを曲げて前記パリソン保持ピン14に保持した後、それぞれ駆動機構23により前記パーティング面12に略平行に移動し型外へ後退する。その状態で、図4(A)に示すように、前記ブロー成形型11が閉じられる。前記パリソン保持ピン14が設けられていない方のブロー成形型11には、ピン収納孔15が設けられているので、型閉めにより前記パリソン保持ピン14の先端が収納され強固かつ確実に型閉めすることができる。続いて、前記公知のブロー成形法に従いパリソン内に窒素ガスまたは空気などの圧縮気体が吹き込まれる。同図(B)に示すように、前記圧縮気体Gは、前記キャビティ13内でパリソンPを膨らませ、当該キャビティ13の形状にパリソンPを賦形する。
【0015】
しかる後、冷却し、ブロー成形型11を開いて成形品を取り出す。得られた成形品は、パリソンPがあらかじめ所定のキャビティの曲形状に沿って曲げられているので、パーティング面12によって挟まれることによりできる製品バリは、キャビティの縁に沿って僅かに形成されただけであり、材料の無駄を大幅に減らすことができる。しかも、キャビティの屈曲幅に合わせてパリソンを太くする必要がないので、そのための設備などは不要であり従来設備をそのまま使用することができ、極めて経済的である。
【0016】
図5は他の製造装置の一例を示したものである。この装置におけるブロー成形型31は、パリソン保持ピン34がパーティング面32から突出および収納自在に構成されている。本実施例では、ブロー成形型31内に設けられたスプリング35により、パリソン保持ピン34をその先端がパーティング面32から突出するように付勢し、弾性的にパーティング面32内に押し込めることができるようにしている。この例において、パリソン保持ピン34の先端と対向する他方のブロー成形型のパーティング面には、図1に示すようなピン収納孔15が不要である。
【0017】
前記パリソン保持ピン34は、パリソン誘導装置(図示せず)によってキャビティ33の曲形状に誘導されて屈曲されたパリソンを保持した後、図6から理解されるように、型閉めにより、他方のパーティング面32で押されるとブロー成形型31内に自動的に収納される。成形終了後、ブロー成形型31を開けば、前記スプリング35の弾性により、前記パリソン保持ピン34がパーティング面32から自動的に突出する。
なお、前記パリソン保持ピンをシリンダ装置等の他の機構によってパーティング面から突出および収納自在に構成してもよい。
【0018】
【発明の効果】
以上図示し説明したように、この発明の中空プラスチック成形品の製造方法によれば、ブロー成形型のパーティング面間に下降してくるパリソンをキャビティの曲形状に合わせて屈曲させて保持しておいてから閉型および圧搾気体の吹き込みを行なう。したがって、パリソンはキャビティ(製品)の最大屈曲幅(量)に係わらず、ブロー成形により製品の幅(径)となり得る径のものであればよく、屈曲程度の大なる製品の製造に際しても、パリソンの押出設備を特別に大きくする必要がない。しかも、従来バリとして除去されていた部分を大幅に減らしてバリ除去作業を省略または簡略することができる。
【0019】
さらに本発明の製造方法に用いられる装置は、パリソンをキャビティ形状に沿って誘導するパリソン誘導部材と、前記パリソンを保持するパリソン保持ピンがパーティング面に設けられたブロー成形型とよりなるものであるから、従来におけるパリソンの押出設備などをなんら変更する必要がない。また、パリソンの誘導および保持機構も簡単でしかも確実に所望形状に屈曲させることができるので、曲形状からなる中空プラスチック成形品を効率よく経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる装置の一例を型開きして示す斜視図である。
【図2】 パリソン誘導部材の一例を示す斜視図である。
【図3】 本発明の製造方法の一実施例を示す図であって、パリソンをキャビティ形状に沿わせる状態を段階的に示す概略図である。
【図4】 同じく製造方法を示す図であって、型閉め後パリソン内に圧縮気体を吹き込む状態を示す概略図である。
【図5】 他の装置の要部を示す断面図である。
【図6】 その型閉め状態を示す断面図である。
【図7】 一般的な自動車を後から見た斜視図である。
【図8】 中空成形品の製造例を示す概略断面図である。
【図9】 そのキャビティとパリソンとの関係を示す概略図である。
【符号の説明】
10 中空プラスチック成形品の製造装置
11 ブロー成形型
12 パーティング面
13 キャビティ
14 パリソン保持ピン
15 ピン収納孔
20 パリソン誘導部材
P パリソン
Claims (1)
- パーティング面に曲形状のキャビティが形成されたブロー成形型の前記パーティング面間にパリソンを下降させて、該パリソンをブロー成形型のパーティング面で挟み、前記パリソン内に圧縮気体を吹き込んでパリソンをキャビティ形状に膨らませる中空プラスチック成形品の製造方法において、
前記パーティング面間を下降してくるパリソンの側面に対して前進後退するパリソン誘導部材をブロー成形型外に複数設け、前記パーティング面間を下降してくるパリソンの側面を、前記パリソンの下降に伴い前記複数のパリソン誘導部材を順次前進させることにより押して前記パーティング面のキャビティ形状に沿うようにパリソンを誘導し、該パリソンの側面を前記パーティング面のキャビティの縁に立設されたパリソン保持ピンに当接させて前記パリソンをキャビティ形状に沿わせて保持し、前記前進により前記パーティング面間に位置することになったパリソン誘導部材を前記ブロー成形型外に後退させた後、前記ブロー成形型を閉じてパリソン内に圧縮空気を吹き込むことを特徴とする中空プラスチック成形品の製造方法。
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