JP3780539B2 - 酸素濃度センサの劣化検出装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、内燃機関における排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサの劣化検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関における空燃比制御は、一般的に各気筒の排気集合部に配置された酸素濃度センサにより現在の排気ガス中の酸素濃度を検出し、それにより定まるこの時の燃焼における混合気空燃比に基づき、燃料噴射量を補正して実際の混合気空燃比を所望範囲内に維持するものである。一般的な酸素濃度センサは、その特性上、排気ガス中の酸素濃度の変化に対して、瞬間的にその出力を変化させることはできず、ある程度の応答遅れを有している。
【0003】
このような応答遅れが、酸素濃度センサの長期使用に伴い所定値以上となると、現在の燃料噴射量補正に使用される酸素濃度センサの出力は、かなり以前の混合気空燃比に基づくものとなり、制御される空燃比がハンチングしたりして良好な空燃比制御を実現できない可能性がある。この時には、運転者に警報を出す等の対策が必要であり、特開昭57−124248号公報には、全気筒同時に燃料噴射量を意図的に増減させて1サイクル単位で空燃比を所定変動波形に基づき変化させ、それに応じて変化する酸素濃度センサの出力変動波形を空燃比の所定変動波形と比較することにより酸素濃度センサの現在の応答遅れ、すなわち酸素濃度センサの劣化程度を検出する酸素濃度センサの性能評価装置が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
内燃機関を長期使用すると、燃料噴射弁から噴射された燃料が衝突する位置には、通常、デポジットが付着している。このようなデポジットは、噴射された燃料の一部を吸収すると共に既に吸収している燃料の一部を排出するように機能し、定常運転等で燃料噴射量が一定に維持されていれば、吸収する燃料量と排出する燃料量とがバランスして、噴射された燃料量と同量の燃料が気筒内へ供給される。しかしながら、燃料噴射量を変化させた時には、前述のバランスが崩れ、気筒内へ供給される燃料量を正確に把握することができない。
【0005】
それにより、前述の従来技術において、酸素濃度センサの劣化程度検出に際して、燃料噴射量を意図的に増減させると、前述のデポジットの影響により実際の空燃比は所定変動波形で変化してはおらず、それと酸素濃度センサの出力変動波形とを比較しても正確な酸素濃度センサの劣化程度を検出することができない。
【0006】
従って、本発明の目的は、燃料衝突位置にデポジットが付着していても、酸素濃度センサの劣化程度を正確に検出することができる酸素濃度センサの劣化検出装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、多気筒内燃機関の排気管集合部に配置された酸素濃度センサと、機関定常運転時の所定期間において、少なくとも一つの気筒の空燃比を他の気筒の空燃比とは異ならせて各気筒の燃料噴射量を固定する燃料噴射量制御手段と、前記所定期間における燃料噴射量に基づく空燃比変動波形と前記酸素濃度センサの出力変動波形とを比較して前記酸素濃度センサの応答遅れに基づく劣化程度を検出する劣化程度検出手段、とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による請求項2記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、前記劣化程度検出手段により検出された前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき、前記酸素濃度センサの出力を利用する内燃機関制御における補正を実施する補正手段を具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による請求項3記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、前記燃料噴射量制御手段によって各気筒毎に燃料噴射量が固定された当初は、前記劣化程度検出手段による前記酸素濃度センサの劣化程度の検出を停止する停止手段を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による請求項4記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、前記劣化程度検出手段により検出された前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき前記酸素濃度センサの異常可能性を判断する異常可能性判断手段と、前記異常可能性判断手段により前記酸素濃度センサの異常可能性が判断された時に、前記少なくとも一つの空燃比と他の気筒の空燃比との差を大きくするように燃料噴射量を補正して固定する燃料噴射量補正手段と、前記燃料噴射量補正手段により燃料噴射量が補正された後に前記劣化程度検出手段により検出される前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき前記酸素濃度センサの異常を断定する異常断定手段、とを具備することを特徴とする。
【0011】
【作用】
前述の請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、機関定常運転時の所定期間において、燃料噴射量制御手段が、少なくとも一つの気筒の空燃比を他の気筒の空燃比とは異ならせて各気筒の燃料噴射量を固定するために、噴射燃料衝突位置にデポジットが付着していても、各気筒毎に噴射された燃料量だけが確実に各気筒内へ供給され、燃料噴射量に基づきこの所定期間における正確な空燃比変動波形を得ることができ、劣化程度検出手段が、この空燃比変動波形と酸素濃度センサの出力変動波形とを比較して酸素濃度センサの応答遅れに基づく劣化程度を検出する。
【0012】
また、前述の請求項2記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、補正手段が、劣化程度検出手段により検出された酸素濃度センサの劣化程度に基づき、酸素濃度センサの出力を利用する内燃機関制御における補正を実施するために、この内燃機関制御が酸素濃度センサの劣化に伴い不正確となることは防止される。
【0013】
また、前述の請求項3記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、停止手段が、燃料噴射量制御手段によって各気筒毎に燃料噴射量が一定に維持された当初は燃料噴射量の変更に伴うデポジットの影響により正確な空燃比変動波形を得ることができないために、この時の劣化程度検出手段による酸素濃度センサの劣化程度の検出を停止する。
【0014】
また、前述の請求項4記載の酸素濃度センサの劣化検出装置は、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置において、さらに、異常可能性判断手段が、劣化程度検出手段により検出された酸素濃度センサの劣化程度に基づき酸素濃度センサの異常可能性を判断し、異常可能性判断手段により酸素濃度センサの異常可能性が判断された時には、燃料噴射量補正手段が、少なくとも一つの空燃比と他の気筒の空燃比との差を大きくするように燃料噴射量を補正して固定するために、その後における劣化程度検出手段による酸素濃度センサの劣化程度の検出がさらに正確となり、異常断定手段が、この正確な酸素濃度センサの劣化程度に基づき酸素濃度センサの異常を断定する。
【0015】
【実施例】
図1は、本発明による酸素濃度センサの劣化検出装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。同図において、1は四気筒エンジンであり、その点火順序は一番気筒#1、三番気筒#3、四番気筒#4、二番気筒#2の順となっている。2はサージタンクであり、四本の吸気管3によってエンジン1の各気筒と接続される。また、サージタンク2の吸気上流側には、スロットル弁4が配置された上流側吸気通路5が接続されている。各吸気管3には、各気筒毎に燃料を噴射するための燃料噴射弁6が配置されている。
【0016】
エンジン1の各気筒には排気管7が接続され、排気管7の集合部7aには排気ガス中の酸素濃度(但し、混合気空燃比がリッチである場合にはその程度に応じたマイナス値となる)を検出するための酸素濃度センサ8が配置されている。20は、酸素濃度センサ8の出力に基づく空燃比制御と、酸素濃度センサ8の劣化検出とを担当する制御装置であり、機関運転状態を把握するための各センサ、例えば、吸入空気量を測定するためのエアフローメータ21、機関回転数を測定するための回転センサ22、機関温度として冷却水温を測定するための冷却水温センサ23等が接続されている。
【0017】
制御装置20によって行われる空燃比制御は一般的なものであり、酸素濃度センサ8の出力に基づき定まる混合気空燃比が機関運転状態に応じて決定される所望範囲内となるように、各燃料噴射弁6の燃料噴射量がフィードバック制御される。このような空燃比制御において、酸素濃度センサ8の長期使用により、応答遅れ(以下、時定数)が大きくなると、空燃比のハンチングを起こす等の問題を生じるために、酸素濃度センサ8の時定数を検出して劣化程度を把握し、劣化により酸素濃度センサが異常となれば、これを運転者に知らせて、異常の酸素濃度センサを早期に交換することが必要である。このための酸素濃度センサの劣化検出は、図2に示す第1フローチャートに従って制御装置20により行われる。第1フローチャートは機関始動と共に実行され、所定時間毎に繰り返されるものである。
【0018】
まず、ステップ101において、フラグFが0であるかどうかが判断される。フラグFは機関停止と共に0にリセットされるものであり、当初、この判断は肯定されてステップ102に進む。ステップ102において、酸素濃度センサ8が活性化しているかどうかが、一般的な方法、例えば機関始動後の経過時間が所定時間以上であるか、又は冷却水温が所定温度以上であるか等によって判断される。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時にはステップ103に進む。
【0019】
ステップ103において、前述の空燃比制御が実行されているかどうかが判断される。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時にはステップ104に進む。ステップ104において、冷却水温THWがTHW1より高くTHW2より低いかどうかが判断される。これは、エンジン1が暖機後でありオーバーヒートしていない正常状態であることを判断している。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時にはステップ105に進む。ステップ105において、ステップ104の判断が肯定された後の積算吸入空気量QTが所定値QT1以上であるかどうかが判断される。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時には、エンジン1の燃焼が十分に安定している時であり、ステップ106に進む。
【0020】
ステップ106において、機関回転数N及び吸入空気量Qが一定であることにより現在の運転状態が定常運転状態であるかどうかが判断される。この判断が否定される時にはそのまま終了するが、肯定される時にはステップ107に進み、フラグFを1に設定する。次に、ステップ108において、計算上、一番気筒及び三番気筒の空燃比が理論空燃比λよりリッチな空燃比λ1となるように、また二番気筒及び四番気筒の空燃比が理論空燃比λよりリーンな空燃比λ2となるように、所定期間の間、現在の吸入空気量Qに基づき各燃料噴射弁6の燃料噴射量を決定し、この燃料噴射量を固定して噴射する第1燃料噴射量固定制御を実行する。
【0021】
次にステップ109において、ステップ108の燃料噴射量固定制御での各気筒毎の燃料噴射回数nが所定回数n1以上であるかどうかが判断される。この判断は肯定されるまで繰り返されてステップ110に進む。ステップ110において、ステップ109が肯定されてからの燃料噴射量に基づき算出される第1空燃比変動波形と、排気ガスが酸素濃度センサ8に到達する時間を考慮して酸素濃度センサ8の出力に基づき算出される第2空燃比変動波形とを比較する。第1空燃比変動波形は、図3に示すように、連続して点火される一番気筒及び三番気筒の燃焼において理論空燃比λよりリッチな空燃比λ1であり、その後に連続して点火される四番気筒及び二番気筒の燃焼において理論空燃比λよりリーンな空燃比λ2である。
【0022】
エンジンの長期使用によって、燃料噴射弁6からの噴射される燃料の衝突位置、例えば、吸気弁の傘裏部には、デポジットが付着している可能性がある。前述の第1空燃比変動波形は、このようなデポジットが存在しても、ステップ108の燃料噴射量固定制御で各気筒毎の燃料噴射量は固定されており、各気筒において、噴射された燃料の一部がデポジットに吸収されるが、それと同量の燃料がデポジットから排出され、噴射された燃料量と同量の燃料が気筒内へ供給されて混合気が形成されるために、実際の空燃比変動に一致するものである。ステップ108の燃料噴射開始直後は、燃料噴射量がそれ以前の燃料噴射量に対して変化する可能性があり、この時にはデポジットによる燃料吸収量とデポジットからの燃料排出量とが等しくなく、噴射された燃料量に対応する空燃比とならないために、ステップ109により、この時の空燃比変動を第1空燃比変動波形に含めないようになっている。
【0023】
ステップ110における二つの波形の比較には、一般的に行われているように、バンドパスフィルタを使用して両者の振動成分を抽出し、第1空燃比変動波形の振動成分に対する第2空燃比変動波形の振動成分のクロススペクトル値Sを算出する。このクロススペクトル値Sは、両者の位相差及び振幅差に基づき算出される値である。
【0024】
次に、ステップ111に進む。クロススペクトル値Sは、ステップ108の燃料噴射量制御が実行されている所定期間の機関回転数Nと吸入空気量Qとに応じて変化する値であるために、次式によりクロススペクトル値Sの正規化が実施される。
S’= A*S+B
ここで、A,Bは図4及び図5に示す第1及び第2マップから決定される変数である。図4において、Aは、実験に基づき、機関回転数Nに関して、低回転数から所定回転数まで徐々に小さくなりその後回転数の上昇に伴い徐々に大きくなるように、また吸入空気量Qに関して、所定回転数を境に低回転側では吸入空気量が少ないほど大きく高回転側では吸入空気量が少ないほど小さくなるように設定されている。一方、図5において、Bは、実験に基づき、吸入空気量が少なく低回転ほど大きくなるように設定されている。
【0025】
次にステップ112に進み、図6に示す第3マップから正規化されたクロススペクトル値S’により酸素濃度センサ8の時定数Kが決定され、ステップ113に進む。ステップ113において、決定された時定数Kが所定値K1以上であるかどうかが判断され、この判断が肯定される時には、酸素濃度センサ8は、かなり劣化しており、応答遅れが大きいために、良好な空燃比制御が実現不可能であるとして、ステップ114において、酸素濃度センサ8の異常を運転者に警報する。また、ステップ113における判断が否定される時には、酸素濃度センサ8は正常であり、そのまま終了する。
【0026】
このようにして、第1フローチャートによれば、酸素濃度センサ8の現在の正確な時定数Kが検出され、それに基づき酸素濃度センサの正確な劣化判断が実施される。本フローチャートは、所定時間毎に繰り返されるが、ステップ107においてフラグFが1に設定された後は、ステップ101における判断が否定されるために、機関始動から停止の間で、1回だけ酸素濃度センサ8の時定数Kが決定される。本フローチャートにおいて、時定数Kの決定に際して、気筒間で空燃比にある程度の差を設けるために、二つの気筒はリッチ空燃比に、また残りの二つの気筒はリーン空燃比とするようになっており、それにより各気筒の空燃比と理論空燃比との差を小さくすることができ、比較的良好な燃焼が行われる。しかしながら、各気筒においてこの時に多少の燃焼悪化及びトルク変動がは発生するために、本フローチャートのように、機関運転中において時定数の決定を1回だけとして、燃焼悪化及びトルク変動を最小限にすることが好ましい。
【0027】
図7は、酸素濃度センサ8の劣化検出のための第2フローチャートである。第1フローチャートとの違いについてのみ以下に説明する。本フローチャートにおいて、ステップ208での燃料噴射量固定制御は、計算上、一番気筒及び三番気筒の空燃比が前述の空燃比λ1よりは理論空燃比λに近いリッチな空燃比λ1’となるように、また二番気筒及び四番気筒の空燃比が前述の空燃比λ2よりは理論空燃比λに近いリーンな空燃比λ2’となるように、所定期間の間、現在の吸入空気量Qに基づき各燃料噴射弁6の燃料噴射量を決定し、燃料噴射量を固定して噴射する第2燃料噴射量固定制御を実行するようになっている。ステップ209以降同様な処理が続き、ステップ213においてフラグFが1であるかどうかが判断され、当初、この判断は肯定されてステップ214に進み、決定された時定数Kが所定値C2以上であるかどうかが判断され、この判断が否定される時にはそのまま終了する。ここで使用された所定値C2は、第1フローチャートのステップ113における所定値C1より小さな値である。
【0028】
第2フローチャートのこれまでの処理において、酸素濃度センサ8の時定数Kの決定に際しての気筒間の空燃比の差は、第1フローチャートに比較して小さくされており、その分、算出されるクロススペクトル値S’には誤差を多く含んでおり、それを基に決定される時定数Kも誤差を多く含むことになる。このように決定された時定数Kであっても、所定値C2より小さければ、酸素濃度センサ8は劣化していないと判断することがでる。
【0029】
誤差を含む時定数Kが所定値C2以上である時には、酸素濃度センサ8が劣化している可能性があり、ステップ215に進み、フラグFを2に設定した後、ステップ216において、第1フローチャートのステップ108と同様な第1燃料噴射量固定制御を実施した後、ステップ209以降の処理が繰り返され、ステップ212において再び酸素濃度センサ8の時定数Kが決定され、ステップ213に進む。現在フラグFは2であるために、この判断が否定されてステップ217に進み、第1フローチャートのステップ113と同様な判断が実行されて酸素濃度センサ8の劣化が判断される。
【0030】
このように、本フローチャートによれば、各気筒の空燃比を理論空燃比近傍として決定される時定数Kによって、酸素濃度センサ8が劣化している可能性があるかどうかを判断し、劣化の可能性がある時にだけ第1フローチャートと同様に決定される時定数Kによって、酸素濃度センサ8が劣化しているかどうかが確実に判断されるために、酸素濃度センサ8が完全に正常である場合には、酸素濃度センサの劣化検出に際して空燃比変動を小さくすることができ、第1フローチャートに比較してこの時の燃焼悪化及びトルク変動を低減することができる。
【0031】
ところで、燃料噴射弁から噴射された燃料の一部が前述のデポジット吸収されて気筒内へ供給されず、これまでにデポジットに吸収された燃料の一部がデポジットから排出されて気筒内へ供給されることを考慮して、機関運転にかかわらず、所望空燃比を実現するように燃料噴射量を制御することが知られており、この制御には、燃料挙動を示す次式が使用される。
fwk+1 = Pfwk + Rfik
fck = (1−P)fwk +(1−R)fik
ここで、fwはデポジットに吸収されている燃料量、fiは燃料噴射量、fcは気筒内へ供給された燃料量であり、係数Pはデポジットに吸収されている燃料のうち気筒内へ供給されない割合、係数Rは噴射された燃料のうちデポジットに吸収される割合をそれぞれ示している。
【0032】
前述の制御は、このような式を現代制御理論等を使用して解き、燃料噴射量fiを決定するものであるが、この制御を正確なものにするためには、燃料性状等により変化する前述の二つの係数P,Rを的確に設定することが必要である。そのために、前述の二つの式を変形して求まる次式が使用される。
P(fik −fck )+R(fik+1 −fik )=fik+1 −fck+1
【0033】
この式を使用しての係数P,Rの算出は、第1フローチャートにより正確な酸素濃度センサ8の時定数Kが決定された後の機関定常運転時に実行されるようになっている。機関運転毎に係数P,Rを算出すれば、機関停止時に異なる性状の燃料が給油されても、また酸素濃度センサ8の時定数Kが変化しても常に的確な値となる。係数P,Rの算出方法は、各気筒の燃料噴射量fiを適当に変化させると共に、この時の気筒内へ供給される燃料fcを酸素濃度センサ8の出力とエアフローメータ21によって測定される吸入吸気量Qを基に算出することにより、複数のPとRを含む方程式を求めてPとRを算出するものである。
【0034】
このようにして算出された係数P,Rは、現在の機関回転数Nと吸入空気量Qとに応じて変化する値であるために、前述のクロススペクトル値Sと同様に次式による正規化が必要である。
P’= WP+X
R’= YR+Z
ここで、W,Yは、クロススペクトル値の正規化に使用した第1マップと同様な傾向を示すそれぞれのマップから決定される値であり、X,Zは、クロススペクトル値の正規化に使用した第2マップと同様な傾向を示すそれぞれのマップから決定される値である。
【0035】
このように正規化された係数P’,R’は、その算出に酸素濃度センサ8の出力が使用されているために、その時定数Kの影響を受けており、次式によって補正されて最終的な値P”,R”として前述の燃料挙動に基づく燃料噴射量制御に使用される。
P”= P’+ M
R”= R’+ L
ここで、M,Lは、図8及び図9に示す第4及び第5マップにより酸素濃度センサ8の時定数Kを基に決定される値である。このように、酸素濃度センサ8の時定数Kが正確に把握されると、酸素濃度センサの出力を使用する色々な制御を正確なものにすることができる。
【0036】
第1及び第2フローチャートにおいて、酸素濃度センサの時定数を決定するための気筒毎の空燃比は、一番気筒及び三番気筒において理論空燃比よりリッチしに、二番気筒及び四番気筒において理論空燃比よりリーンとしたが、これは本発明を限定するものではなく、各気筒の燃料噴射量を固定してデポジットの影響を無くし、燃料噴射量と吸入空気量とから正確な空燃比変動波形を算出することができれば良く、従って、少なくとも一つの気筒の空燃比を他の気筒の空燃比とは異なるものにすればよく、例えば、各気筒毎に空燃比を異ならせてもよい。
【0037】
また、本発明は、吸気通路噴射式内燃機関に限定されず、筒内噴射式内燃機関であってもピストン頂面等にデポジットが付着することがあり、噴射された全ての燃料より混合気が形成されるとは限らないために、本発明を適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
このように、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置によれば、機関定常運転時の所定期間において、燃料噴射量制御手段が、少なくとも一つの気筒の空燃比を他の気筒の空燃比とは異ならせて各気筒の燃料噴射量を固定するために、噴射燃料衝突位置にデポジットが付着していても、デポジットに吸収される燃料量とデポジットから排出される燃料量とがバランスするために、所定期間における正確な空燃比変動波形を得ることができ、劣化程度検出手段が、この空燃比変動波形と酸素濃度センサの出力変動波形とを比較して酸素濃度センサの応答遅れに基づく劣化程度を検出するために、この酸素濃度センサの劣化程度はかなり正確なものとなる。
【0039】
また、請求項2記載の酸素濃度センサの劣化検出装置によれば、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置の効果に加えて、補正手段が、劣化程度検出手段により検出された酸素濃度センサの劣化程度に基づき、酸素濃度センサの出力を利用する内燃機関制御における補正を実施するために、この内燃機関制御が酸素濃度センサの劣化に伴い不正確となることは防止され、常に良好な制御が実施可能である。
【0040】
また、請求項3記載の酸素濃度センサの劣化検出装置によれば、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置の効果に加えて、停止手段が、燃料噴射量制御手段によって各気筒毎に燃料噴射量が固定された当初は燃料噴射量の変更に伴うデポジットの影響により正確な空燃比変動波形を得ることができず、この時の劣化程度検出手段による酸素濃度センサの劣化程度の検出を停止するために、酸素濃度センサの劣化検出がさらに高精度に実施可能である。
【0041】
また、請求項4記載の酸素濃度センサの劣化検出装置によれば、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置の効果に加えて、異常可能性判断手段が、劣化程度検出手段により検出された酸素濃度センサの劣化程度に基づき酸素濃度センサの異常可能性を判断し、それによって酸素濃度センサの異常可能性が判断された時には、燃料噴射量補正手段が、少なくとも一つの空燃比と他の気筒の空燃比との差を大きくするように燃料噴射量を補正し、その後における劣化程度検出手段による酸素濃度センサの劣化程度の検出がさらに正確となり、異常断定手段が、この正確な酸素濃度センサの劣化程度に基づき酸素濃度センサの異常を断定するために、酸素濃度センサの異常可能性がない時には、請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置に比較して、大きな空燃比変動が必要なく、この時の燃焼悪化及びトルク変動をかなり低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による酸素濃度センサの劣化検出装置が取り付けられた内燃機関の概略図である。
【図2】酸素濃度センサの劣化検出のための第1フローチャートである。
【図3】実際の空燃比変動に相当する第1空燃比変動波形を示す図である。
【図4】クロススペクトル値を正規化するための変数Aを決定するための第1マップである。
【図5】クロススペクトル値を正規化するための変数Bを決定するための第1マップである。
【図6】酸素濃度センサの時定数Kを決定するための第3マップである。
【図7】酸素濃度センサの劣化検出のための第2フローチャートである。
【図8】デポジットへの燃料吸収を考慮した燃料噴射制御に使用される係数Pの補正値をMを決定する第4マップである。
【図9】デポジットへの燃料吸収を考慮した燃料噴射制御に使用される係数Rの補正値をLを決定する第5マップである。
【符号の説明】
1…エンジン
3…吸気管
6…燃料噴射弁
7…排気管
8…酸素濃度センサ
20…制御装置
Claims (4)
- 多気筒内燃機関の排気管集合部に配置された酸素濃度センサと、機関定常運転時の所定期間において、少なくとも一つの気筒の空燃比を他の気筒の空燃比とは異ならせて各気筒の燃料噴射量を固定する燃料噴射量制御手段と、前記所定期間における燃料噴射量に基づく空燃比変動波形と前記酸素濃度センサの出力変動波形とを比較して前記酸素濃度センサの応答遅れに基づく劣化程度を検出する劣化程度検出手段、とを具備することを特徴とする酸素濃度センサの劣化検出装置。
- さらに、前記劣化程度検出手段により検出された前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき、前記酸素濃度センサの出力を利用する内燃機関制御における補正を実施する補正手段を具備することを特徴とする請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置。
- さらに、前記燃料噴射量制御手段によって各気筒毎に燃料噴射量が固定された当初は、前記劣化程度検出手段による前記酸素濃度センサの劣化程度の検出を停止する停止手段を具備することを特徴とする請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置。
- さらに、前記劣化程度検出手段により検出された前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき前記酸素濃度センサの異常可能性を判断する異常可能性判断手段と、前記異常可能性判断手段により前記酸素濃度センサの異常可能性が判断された時に、前記少なくとも一つの気筒の空燃比と前記他の気筒の空燃比との差を大きくするように燃料噴射量を補正して固定する燃料噴射量補正手段と、前記燃料噴射量補正手段により燃料噴射量が補正された後に前記劣化程度検出手段により検出される前記酸素濃度センサの劣化程度に基づき前記酸素濃度センサの異常を断定する異常断定手段、とを具備することを特徴とする請求項1記載の酸素濃度センサの劣化検出装置。
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