JP3776563B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波診断装置、特に生体内運動体(例えば血流)の運動情報を画像表示する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の断層画像や血流画像を表示する超音波診断装置が医療の分野において活用されている。超音波診断装置としては各種の装置が実用化されている。近年では、カテーテル状の超音波探触子を血管内に挿入し、血管内において超音波診断を実現できる装置もある。かかる装置は、血管の2次元断層画像や血流の2次元ドプラ画像を表示するものである。
【0003】
ドプラ情報は、生体内における運動体からのエコーに含まれるドプラシフトを計測することにより抽出され、そのドプラ情報を解析することによって、血流に関する速度(瞬時平均速度)、パワー、分散値(速度の分散値)などの運動情報が取得される。ここで、従来の2次元ドプラ画像は、血流の運動方向ごとに例えば赤色及び青色を割り当て、かつ、各方向の速度を色の濃さで表現したものである。この場合、必要に応じて、速度の分散値の大きさが他の色相の混合により表現される。従来装置において、パワーは、一般にそれ単独でパワースペクトラム(各速度のパワー成分を輝度で表した速度分布)として表示される。
【0004】
周知のように、計測される血流速度は、実際の血流の速度(速度ベクトル)の内で超音波ビームに沿った成分に相当する。よって、各超音波ビームと血流のなす角度が異なれば、各超音波ビーム上において計測される速度は異なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなカテーテル状の超音波探触子を利用して血流の運動情報を画像化する場合、従来においては、2次元ドプラ画像として各計測点(サンプル点)の速度が表示されていた。
【0006】
しかし、速度表示では血流の運動方向も表示されるため、血管の走行状態によっては、例えば順方向に流れている血流であるにもかかわらず、部分的に逆流が生じているものとして表現されてしまう場合があった。このため、診断時に目障りであり、また違和感があるという問題があった。
【0007】
そこで、流れの向きによらないパワーのみの2次元表示や速度の絶対値のみの2次元表示などを採用することも考えられるが、その場合には、他の血管との癒着などに起因し、実際に血液の逆流が発生している場合に、それを画像表現できないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、2次元ドプラ画像を表示する場合に、見掛け上の逆流については順流と同様の画像表現を行うことができるとともに、実際に逆流が生じている場合にはその逆流を画像表現できるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、超音波の送受波により得られた受信信号に含まれるドプラ情報を処理して超音波画像を表示する超音波診断装置において、前記ドプラ情報に基づいて各サンプル点ごとに乱流の有無を判定する乱流判定手段と、各サンプル点についての運動情報の表示に当たって、前記乱流が判定されないサンプル点については第1の画像表示を選択し、前記乱流が判定されたサンプル点については前記第1の画像表示とは異なる第2の画像表示を選択する選択手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、各サンプル点(又は各ピクセル)ごとに適切な表示形式が選択され、すなわち、乱流でなければ第1の画像表示が選択され、乱流(主として逆流)であれば第2の画像表示が選択される。乱流では速度分布が広がるため、乱流の判定は速度の分散値を利用するのが望ましい。
【0011】
よって、本発明によれば、従来の2次元速度表示において指摘されていた見掛け上の逆流の問題を解消でき、しかも実際に乱流が生じているような場合にその乱流を明確に表現できる。
【0012】
本発明の好適な態様では、前記第1の画像表示では流れの方向によらない色付けが行われ、前記第2の画像表示では流れの方向に依存した色付けが行われることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、乱流が生じているような場合に、それがどのような状態であるかを表現できる。例えば、全体としての流れの方向を主方向と定義した場合に、乱流中における各サンプル点での流れの向きや強さなどを色合い(例えば、色相、輝度、彩度など)で表現できる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明は、超音波の送受波により得られた受信信号に含まれるドプラ情報を処理して超音波画像を表示する超音波診断装置において、前記ドプラ情報に基づいてパワーの演算を行うパワー演算手段と、前記ドプラ情報に基づいて速度の演算を行う速度演算手段と、前記ドプラ情報に基づいて分散値の演算を行う分散演算手段と、各サンプル点ごとに、前記分散値の大きさに従って前記パワーの画像表示又は前記速度の画像表示を選択する選択手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、各サンプル点ごとにその分散値の大きさに従ってパワーの画像表示又は速度の画像表示が選択される。パワーの画像表示では、流れの向きが無視されるため見掛け上の逆流の問題は解消される。速度の画像表示では、流れの向きも表現されるため、乱流の発生とその乱流の向きを表現できる。よって、疾病診断上、有益な画像情報を提供できる。
【0016】
なお、速度の画像表示に当たっては、速度の絶対値を表示してもよい。この場合には、パワーの画像表示と異なる表示形態を設定するのが望ましい。
【0017】
本発明の好適な態様では、前記選択手段は、前記分散値が所定値より小さい通常サンプル点については前記パワーの画像表示を選択し、前記分散値が所定値より大きい乱流サンプル点については前記速度の画像表示を選択することを特徴とする。
【0018】
本発明の好適な態様では、前記パワーの画像表示と前記速度の画像表示ではそれぞれ異なる色が利用されることを特徴とする。各画像表示における色合いが異なれば、逆流を明確に表現できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1は超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【0021】
超音波探触子10は、本実施形態において血管内に挿入されるカテーテル状の超音波探触子であり、これについては後に図2を用いて詳述する。この超音波探触子10によって血管内において超音波が送波され、運動体としての血流にて反射されたエコーが超音波探触子10によって受波される。
【0022】
送受信部12は超音波探触子10に対して送信信号を供給すると共に、超音波探触子10からの受信信号に対して増幅などの処理を実行する回路である。
【0023】
送受信部12から出力された受信信号は、ドプラ情報演算部14に入力される。このドプラ情報演算部14は、受信信号中におけるドプラ情報すなわち運動情報を演算によって抽出する回路であり、例えば自己相関演算などを実行する回路で構成される。なお、図1には示されていないが、送受信部12から出力された受信信号に基づいて二次元の断層画像を形成する回路を設けることもできる。そして、その二次元の断層画像を後に説明する二次元のドプラ画像と合成して表示器32に表示してもよい。
【0024】
ドプラ情報演算部14から出力されるドプラ情報は、分散値演算部16、パワー演算部18及び速度演算部20に入力されている。ここで、分散値演算部16は、ドプラ情報演算部14から出力されたドプラ情報に基づいて速度の広がりに関する分散値を演算する回路である。パワー演算部18はドプラ情報演算部14から出力されたドプラ情報に基づいてパワーを演算する回路である。速度演算部20は、ドプラ情報演算部14から出力されたドプラ情報に基づいて血流の速度(平均速度)を演算する回路である。これらの演算部16,18,20はそれ自体公知の回路である。
【0025】
パワー画像処理部22はパワー演算部18から出力されたパワーに対してパワー画像を形成するための回路であり、具体的には後述するように、パワーの大きさに合わせて所定色の輝度を決定している。また、速度画像処理部24は、速度演算部20から出力された速度に応じて速度画像を形成するものであり、具体的には速度の正方向及び負方向のそれぞれに対して所定色の輝度を決定している。そして、パワー画像処理部22から出力されたパワー画像及び速度画像処理部24から出力された速度画像は信号切換器30に入力され、以下に説明するように各サンプル点(ピクセル)ごとに、いずれかの画像表示すなわち表示形式が選択されている。
【0026】
なお、速度画像処理部24には分散値演算部16からの分散値も入力されており、速度画像の形成に当たってはその分散値が反映されるような画像処理が実行されている。具体的にはパワーや速度の色付けで用いない色を分散値に応じて混色させるような画像処理が実行されている。
【0027】
表示形式選択部26は、各サンプル点ごとに、分散値に基づいて信号切換器30の動作を制御している。具体的には、基準値メモリ28に格納された基準値よりも分散値が小さい場合には、当該サンプル点についてはパワー画像が選択され、一方、分散値が基準値よりも大きい場合には当該サンプル点について速度画像が選択される。したがって、各サンプル点、換言すれば各ピクセルごとにいずれかの表示形式が選択されることになる。この場合に、普通に流れている血流についてはパワー画像による表示形式によって画像表示が行われ、逆流などの乱流に対しては速度画像によって画像表示が行われることになる。したがって、そのような2種類の画像形式よって構築されたドプラ画像を見ることによって、上述したように、目障りな見掛け上の逆流などの影響を受けずに、実際に発生している逆流などを明確に認識することが可能となる。パワー画像処理部22及び速度画像処理部24における色付けの手法については後に詳述する。
【0028】
図2には、図1に示した超音波探触子10の具体例が示されている。超音波探触子10は血管200内に挿入されるカテーテル40と、カテーテル40内で回転する回転ワイヤ42と、回転ワイヤ42の先端部に設けられた超音波振動子44と、を含むものであり、更に、図示されていない回転ワイヤを回転駆動する駆動モータなどを含んでいる。
【0029】
超音波振動子44は、回転ワイヤ42の中心軸に対して一定の角度傾斜して設けられており、このため超音波ビーム100と回転ワイヤ42の中心軸とは一定角度で交差している。したがって、回転ワイヤ42を回転させれば、円錐形状のデータ取り込み領域を形成できる。仮に、超音波ビーム100の向きを回転ワイヤ42の軸方向と直交する方向に向けると、血液の流れに対して超音波ビーム100が直交してしまい、ドプラ情報を取得できないという問題があり、一方、超音波ビーム100を回転ワイヤ42の軸方向と並行に設定すると二次元的なデータの取り込みを行えないという問題があり、以上のような点を考慮して超音波ビーム100の向きが設定されている。
【0030】
図3には、図2に示した超音波探触子10によって例えば屈曲した大動脈内において超音波診断を実行した場合の問題が示されている。図3に示されるように、血管200は部分的に屈曲しており、このような状態において超音波ビームを回転走査させると、ある方向の超音波ビーム100Aとそれとは別の方向の超音波ビーム100Bとでは同一の血流でありながら異なった極性の速度成分が検出されてしまう。すなわち、本来的には超音波探触子10に対して近づく血流の流れであるのに、超音波ビーム100B上ではあたかも逆方向に流れる血流のように観測されてしまう。このような状態において、従来のように単に速度を二次元表示すると、血管内における部分的な領域で実際には起こっていない逆流の表現がなされてしまい、診断上支障があるという問題がある。
【0031】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置においてはパワー画像を利用している。すなわち、各サンプル点におけるパワーを画像化すればパワー自体は極性を有していないため見掛け上の逆流という問題を効果的に防止することが可能である。すなわち、例えば図3に示すような状態においてパワーに赤色を対応付ければ、血管内を全て赤色で表示することが可能であり、従来のように部分的に逆方向の色(青色)の着色が生じるような問題を解消できる。
【0032】
ただし、常に各サンプル点についてパワーを画像化すると、図4に示すような場合に問題が生じる。図4においては、血管200Aと血管200Bとが部位210において癒着しており、この血管200Bからの血流が血管200Aへ若干流れ込んでいる。このような状態において、血管200Aに超音波探触子10を挿入して超音波診断を実行し、各サンプル点についてパワーの画像のみを形成すると、癒着した部位210における血液の逆流を画像化することができないという問題が生じる。そこで、図1に示す実施形態では、図4に示すような実際に逆流が生じている場合には当該サンプル点についての表示形式を速度の表示形式に切り換えることによって上記問題を解決している。この場合に、そのような逆流が発生すると、分散値が大きくなるため、表示形式の選択に当たっては分散値が判断材料とされている。
【0033】
すなわち、図1に示したように、分散値が基準値よりも小さい通常のサンプル点についてはパワーの表示形式が選択され、一方、分散値が基準値よりも大きい乱流サンプル点については、速度の画像表示が選択されている。このように、各サンプル点ごとに乱流すなわち逆流の有無の判定を行うことによって、見掛け上の逆流に惑わされない実際の血液の流れに忠実なドプラ画像を構築することができ、これによって疾病診断精度を向上することができる。
【0034】
図5には、パワー画像処理部22及び速度画像処理部24における色付け関数が示されている。この図5に示す例では、速度画像処理部24は、(A)に示す色付け関数にしたがって速度の色付けを実行している。この例では、速度の正方向において徐々に黄色の輝度が大きくなるように設定され、一方速度の負方向にしたがって徐々に緑の輝度が大きくなるように設定されている。また、(B)に示すように、パワー画像処理部22においては、パワーが大きくなるにしたがって徐々に赤色の輝度が大きくなるように色付け関数が設定されている。
【0035】
このような関数を利用することによって、通常の血流の表現においては赤色を基本として利用でき、血管内におけるある部位で乱流が生じていたような場合には各サンプル点ごとの流れの方向にしたがって黄色あるいは緑色の着色を施すことが可能となる。この結果、多くの場合には赤色の中に緑色の点が密集して表れ、それによって逆流が生じていることを一目瞭然に把握できる。また、順流であっても極めて高速な流れなどは黄色で表現されるため、そのような状態も容易に把握することができる。もちろん、図5に示した例では、速度の正及び負方向のそれぞれに対して異なる色を設定したが、いずれの方向においても同一の色例えば青色を設定することもできる。あるいは、速度の絶対値を演算し、その絶対値に対して特定の色例えば青色を定義することもできる。更に、血管内における全体としてみたとき血流の流れを主方向として定義し、その主方向についてはパワーと同じ色で速度を表現し、主方向と異なる方向についてはパワーと異なる色を用いて表現することもできる。この場合には、主方向を判定する回路などを設け、更にその主方向を判定する回路から出力された信号を速度画像処理部24に入力して、その色付け処理を制御させればよい。なお、色付けに当たっては各種の関数を採用することができる。
【0036】
上記の実施形態では、超音波振動子が回転する構成が示されていたが、非回転型の超音波探触子が利用される場合にも本発明を適用できる。また、上記の実施形態では、超音波振動子が傾斜して配設されていたが、本発明はそれには限定されない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、二次元ドプラ画像を表示する場合に、見掛け上の逆流に影響されずに、実際の逆流を明確に表現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】 超音波探触子の具体的な構成を示す説明図である。
【図3】 見掛け上の逆流が発生する問題を示す説明図である。
【図4】 血管の癒着による血液の逆流を示す図である。
【図5】 色付け関数を示す説明図である。
【符号の説明】
10 超音波探触子、14 ドプラ情報演算部、16 分散値演算部、18 パワー演算部、20 速度演算部、22 パワー画像処理部、24 速度画像処理部、26 表示形式選択部、30 信号切換器。
Claims (4)
- 超音波の送受波により得られた受信信号に含まれるドプラ情報を処理して超音波画像を表示する超音波診断装置において、
前記ドプラ情報に基づいて各サンプル点ごとに乱流の有無を判定する乱流判定手段と、
各サンプル点についての運動情報の表示に当たって、前記乱流が判定されないサンプル点については第1の画像表示を選択し、前記乱流が判定されたサンプル点については前記第1の画像表示とは異なる第2の画像表示を選択する選択手段と、
を含み、
前記第1の画像表示は流れの方向によらない表示であり、前記第2の画像表示は流れの方向に依存した表示であることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置において、
前記第1の画像表示では流れの方向によらない色付けが行われ、前記第2の画像表示では流れの方向に依存した色付けが行われることを特徴とする超音波診断装置。 - 超音波の送受波により得られた受信信号に含まれるドプラ情報を処理して超音波画像を表示する超音波診断装置において、
前記ドプラ情報に基づいてパワーの演算を行うパワー演算手段と、
前記ドプラ情報に基づいて速度の演算を行う速度演算手段と、
前記ドプラ情報に基づいて分散値の演算を行う分散演算手段と、
各サンプル点ごとに、前記分散値の大きさに従って前記パワーの画像表示又は前記速度の画像表示を選択する選択手段と、
を含み、
前記選択手段は、前記分散値が所定値より小さい通常サンプル点については前記パワーの画像表示を選択し、前記分散値が所定値より大きい乱流サンプル点については前記速度の画像表示を選択することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項3記載の装置において、
前記パワーの画像表示と前記速度の画像表示ではそれぞれ異なる色が利用されることを特徴とする超音波診断装置。
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