JP3767836B2 - 変形可能ミラー及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、反射面の変形が可能な変形可能ミラーに関し、詳しくは、異なる厚さの光ディスクに対する正確な記録再生動作を可能とする変形可能ミラーに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクは多量の情報信号を高密度で記録することができるため、オーディオ、ビテオ、コンピュータ等の多くの分野において利用が進められている。図17は、これらの装置に用いられる光ピックアップの一例を示す構成図である。
【0003】
この図17に示す光ピックアップ100において、半導体レーザー101から出射した光はコリメーターレンズ102により平行光103になる。平行光103はビームスプリッター104に入射して直進し、4分の1波長板105を通り、反射ミラー106で反射されて、対物レンズ107に入射する。対物レンズ107に入射した光は集光され、回転モーター113の駆動軸によって支持された光ディスク108の情報記憶媒体面上に光スポット109を形成する。
【0004】
次に、光ディスク108で反射した反射光110は、再び、対物レンズ107と反射ミラー106及び4分の1波長板105を通って、ビームスプリッター104に入射する。この反射光110は4分の1波長板105の作用により、偏光ビームスプリッター104で反射して、絞りレンズ111を通り、光検出器112に受光される。光検出器112は、反射光線の光強度を検出することによって再生信号を検出する。
【0005】
このような構成の光ピックアップに用いられる対物レンズ107は光ディスク108の厚みを考慮して設計されている。しかしながら、この設計値と異なる厚みの光ディスクに対しては、球面収差が生じて結像性能が劣化し記録や再生が不可能となる。
【0006】
従来、コンパクトディスクやビデオディスク、あるいはデータ用のISO規格の光磁気ディスク装置等に用いられる光ディスクの厚みは、ほぼ同(約1.2mm)であった。このため、一つの光ピックアップで種類の異なる光ディスク(コンパクトディスク、ビデオディスク、光磁気ディスク等)を記録再生することが可能であった。
【0007】
ところで、近年、光ディスクのより高密度化を図るために、(1)対物レンズの開口数(NA)を大きくして光学的な分解能を向上させる方法や、(2)記録層を多層に設ける方法が検討されている。
【0008】
上記の(1)のように、対物レンズのNAを大きくすると、集光ビーム径は反比例して小さくなるが、ディスクの傾きの許容誤差を通常のNAを有する対物レンズと同程度に収めるためには、ディスクの厚さを薄くする必要がある。例えば対物レンズのNAを0.5から0.6にすると、ディスクの厚さを1.2mmから0.6mmに減少させなければ、ディスクの傾きの許容誤差を同程度に収めることができない。
【0009】
しかしながら、このようにディスクを薄くした場合、その薄い光ディスクに対応する対物レンズを使用して、厚い光ディスクを記録再生すると、球面収差が増大して結像点が広がってしまい、記録再生が困難となる。したがって、厚い光ディスクとの間で互換性を保つことができなくなり、光ピックアップを2個使い薄い光ディスクと厚い光ディスクを別々の光ピックアップで記録再生せざるを得なくなる、
また、上記(2)のように、複数の記録層をある程度の厚さの透明層を介して設けた多層ディスクを用いる場合も、1枚のディスクで記録容量が大幅に増加する。しかしながら、対物レンズから見た各記録層の位置が異なるため、1つの光ピックアップでは正確な情報の記録再生ができない。
【0010】
このような問題点を解決する手段として、変形可能ミラーにより基板厚さを補正する方法が知られている。(特開平5−151591号公報)。
【0011】
図18は、この変形可能ミラーを用いた光学装置の光学系を示している。この図18において、ビーム103は、半導体レーザー101から出射され、コリメータレンズ102、ビームスプリッター101、4分の1波長板105を透過し、ビームスプリッター202に到達する。更に、このビーム103は、ビームスプリッター202及び4分の1波長板201を透過して変形可能ミラー200に達する。
【0012】
変形可能ミラー200は、そのミラー表面を変形可能に構成されており、厚いディスクのときには、変形可能ミラー駆動回路203によって、ミラー表面を変形し、ビーム103に対して、ディスクが厚くなったことによって発生する球面収差を打ち消すような球面収差を与える。このビーム103は、4分の1波長板201を通って戻り、ビームスプリッター202で反射されて対物レンズ107に達する。対物レンズ107に入射した光は、集光され、光ディスク108の情報記録媒体面上に光スポット109を形成する。
【0013】
次に、光ディスク108で反射した反射光は、再び対物レンズ107とビームスプリッター202、4分の1波長板201、変形可能ミラー200及び、4分の1波長板105を通って、ビームスプリッター104に入射する。この反射光110は、ビームスプリッター104で反射して、絞りレンズ111を通り、光検出器112で受光される。光検出器112は、反射光線の光強度を検出することによって再生信号を検出する。
【0014】
図19は、特開平5−151591号公報に記載の変形可能ミラー200の具体的な構成を示す図であり、これは「“Adaptive optics for optimization of image resolution”(“Applide Optics”,vol.26,pp.3772-3777,(1987),J.P.Gaffarel等)」に記載されたものである。
【0015】
この変形可能ミラー200は、表面にミラー面300を形成した変形プレート301と、変形プレート301の裏側の数箇所を加圧する各圧電アクチュエータ302と、変形プレート301、各圧電アクチュエータ302、変形プレート301を固定するベース基板等から構成され、各圧電アクチュエータ302に印加する電圧を変えることにより、変形プレート301上を所望の量だけ変位させ、そのミラー面300を所望の形状に変形させる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図19に示す各圧電アクチュエータ302を用いた変形可能ミラーでは、圧電アクチュエータ302の駆動電圧に誤差が発生すると、その変位にも誤差が生じる。特に、各圧電アクチュエータ302の駆動電圧にそれぞれの誤差があると、変形ミラー300が所望の面から大きく外れてしまう。
【0017】
また、環境温度が変化すると、熱膨張の影響を受け、各圧電アクチュエータ302の変位に誤差を生じ、ミラー面300が所望のミラー面からずれてしまうという問題がある。
【0018】
更に、収差補正を行う光ビームの直径は4mm程度であって、変形可能ミラーの正確な変形を実現するには、多数の圧電アクチュエータ302を直径4mmの範囲に設けねばならず、構成が複雑化し、かつ組み立てが煩雑になり、また変形可能ミラー本体が大型化し、光ピックアップも大きくなってしまう。
【0019】
そこで、この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、制御が容易であって、環境温度の影響を受け難く、高精度にミラー面を変形させ保持することが可能であると共に、小型で簡単な構造で、安価に製造可能な変形可能ミラー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
また、この発明の他の目的は、変形性を向上でき、結果的に局部的に大きな応力が発生することがなく、その寿命を向上できる変形可能ミラー及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の変形可能ミラーは、入射光を反射する反射面を表面に有する膜状の可撓性部材と、単結晶Si基板によって形成され、該可撓性部材の外周を支持するために、内側に開口部が形成された支持枠と、支持枠に前記可撓性部材を介して対向配置されており、前記開口部の内部に対向して、前記可撓性部材の弾性変形を許容する空間を形成する円形領域内に曲面部が設けられた基板とを備え、前記支持枠の前記開口部が八角形に形成され前記可撓性部材は、前記反射面が平坦な状態で前記開口部および前記空間を覆うように、前記支持枠に支持されており、前記基板の前記曲面部は、前記可撓性部材が弾性変形して該曲面部に密着することにより、前記開口部を介して前記反射面へ入射する光に予め定められた収差を与えるように形成されていることを特徴とする
【0022】
この様な構成によれば、曲面部の断面形状に倣って可撓性部材の反射面が変形する。このため、曲面部の形状精度を高く維持しておけば、反射面の変形形状を精度よく決定することができ、収差補正を精度よく行うことができる。
【0023】
また、可撓性部材の外周縁部を縁取る支持枠内側の開口部を八角形に形成しているので、変形時には、この可撓性部材に加わる応力を該可撓性部材の全体に略均等に分布させることができ、この可撓性部材の変形性が向上し、かつ、その寿命が向上する。また、無変形時に、この可撓性部材の反射面を平面に保持し易く、この状態を安定に持続することができる。この支持枠内側の開口部の形状としては、正八角形が最も望ましい。
【0024】
一方、曲面部の形状は、予め指定された収差を補正できるものであれば良い。この変形可能ミラーを搭載した光学装置においては、可撓性部材の反射面を平面に保持し、この可撓性部材の反射面への入射光に収差を与えない状態と、可撓性部材を参照面基板の曲面部に吸い寄せて、この可撓性部材を弾性変形させ、この可撓性部材の反射面への入射光に予め定められた収差を与える状態を選択的に設定することができ、これによって光学的に異なる複数の光を生成することができる。
【0025】
前記支持枠は、{100}面、及び〔110〕方位のオリエンテーションフラットに対して平行な辺を有することが好ましい
【0026】
また、本発明は、前記変形可能ミラー製造方法であって、単結晶Si基板を、八角形の開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し該エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の相互に平行な2つの辺と該2つの辺に垂直な2つの辺との4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿った状態になるとともに、該開口の正八角形の他の4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする
【0027】
この様な条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0028】
前記エッチング工程の前に、前記単結晶SI基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶SI基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成しても良い。
【0029】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板の表面を平らにしておけば、ここに積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、エッチングを終了した後には、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0030】
前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の前記{110}面に沿う4つの辺の長さが相互に等しく、かつ該八角形の前記{100}面に沿う他の4つの辺の長さが相互に等しいのがよい。
【0031】
これによって、支持枠の開口部を形作る八角形の{110}面上の4つの辺が相互に等しく、かつ該八角形の{100}面上の他の4つの辺が相互に等しくなり、この八角形の形状が整う。
【0032】
前記エッチングマスクにおける前記開口部の八角形の前記{110}面に沿う4つの辺のそれぞれの長さをAとし、かつ該八角形の前記{100}面に沿う他の4つの辺のそれぞれの長さをBとすると、A<Bであるのが良い。
【0033】
これによって、支持枠の開口部を形作る八角形を良好に再現することができる。
【0034】
より好ましくは、前記支持枠の厚みをTとし、支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L>2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の各辺の長さA及びBは、次式(1)及び(2)で表される
A=L−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(1)
B=L+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(2)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【0035】
また、本発明は、前記変形ミラーの製造方法において、単結晶Si基板を、四角形の開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し、該エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形の4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする
【0036】
ここでは、支持枠の開口部がやや小さく、上記エッチングマスクを形作る八角形の{110}面に沿う4つの辺の長さAが0(A=0)であることを前提としており、この請求項8に記載の条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0037】
前記エッチング工程の前に、前記単結晶Si基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶Si基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成しても良い。
【0038】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板に積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、エッチングを終了した後には、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0039】
前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形は、正方形であるのが良い。
【0040】
より好ましくは、前記支持枠の厚みをTとし、該支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L=2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、前記エッチングマスクにおける前記開口の正方形の一辺の長さCは、次式(3)で表される
C=4*T*(1/tan(54.7°)+√(2))±6% …(3)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【0041】
また、本発明は、前記変形可能ミラー製造方法において、単結晶Si基板を、開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し、前記エッチングマスクの前記開口は、四角形の領域と、この四角形の領域の各角からそれぞれ対角線方向に沿って放射状に延びるくさび形領域とを有し、前記エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の相互に対向する各くさび形領域の頂点同士を結ぶ対角線のそれぞれが前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿った状態であって、前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形の領域の各辺が前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする
【0042】
ここでは、支持枠の開口部が非常に小さいことを前提としており、この請求項10に記載の条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0043】
前記エッチング工程の前に、前記単結晶Si基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶Si基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成しても良い。
【0044】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板に積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0045】
好ましくは、前記支持枠の厚みをTとし、該支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L<2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、
前記エッチングマスクにおける前記開口の相互に対向する各くさび形領域の頂点同士を結ぶ対角線のそれぞれの長さD、該開口における四角形の領域の相互に対向する各辺の離間距離E、及び四角形の領域における各くさび形領域間に位置する各辺の長さFは、次式(4)、(5)及び(6)で表される
D=L*(1+√(2))+2*T/tan(54.7°)±6% …(4)
E=L*(1+√(2))−2*T±6% …(5)
F=L …(6)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1乃至図4は、この発明の変形可能ミラーの第1実施形態を示している。図1は、この第1実施形態の変形可能ミラーを示す平面図、図2は、図1のX−X線に沿って破断した変形可能ミラーを示す断面図、図3は、図1の変形可能ミラーを示す底面図、図4は、図1の変形可能ミラーを分解して示す分解斜視図である。
【0047】
この変形可能ミラー1は、シリコン基板50、このシリコン基板50の裏面側に取り付けられた可撓性部材2、及びその下方に配置された参照面基板6を有している。シリコン基板50は、その内側が八角形に開口された開口部53を有しており、この開口部53の中心は、図1上でシリコン基板50の形状中心から左側に少し偏位している。
【0048】
可撓性部材2は、図4に示すように、開口部53よりも少し大きな正方形をなし、その外周縁部がシリコン基板50の平坦な支持面に固着されている。より具体的には、この可撓性部材2の外周縁部をシリコン熱酸化膜51aを介してシリコン基板50の支持面に固着している。また、この可撓性部材2は、引張応力を加えられ、平坦となった状態で、シリコン基板50に固着されている。
【0049】
この可撓性部材2は、開口部53の内側で変形可能であるため、この可撓性部材2の変形可能な領域が開口部53と同じく八角形となる。
【0050】
ここで、図2に示すように、可撓性部材2は上部電極層8とその上に積層された反射膜10で構成されている。上部電極層8は、例えば8μm程度の厚みを有するNi膜で作製されている。また、反射膜10は、例えば1μm程度の厚みを有するAu、Al等の薄膜で作製されている。
【0051】
なお、反射膜10を無くして上部電極層8の表面をそのまま反射面として利用することも可能である。この場合は、部品点数を削減でき、製造コストの低減に寄与できる利点がある。
【0052】
参照面基板6は、図4に示すように円筒状をなし、例えばガラスモールド法で作製されている。参照面基板6では、可撓性部材2と対向する側に、下部電極層12、配線部55、配線パッド56及びスペーサ層54を形成し、これらの上に絶縁層9を形成している(図2を参照)。下部電極層12、配線部55及び配線パッド56は連続している。
【0053】
図2に示すように、参照面基板6の表側外周の支持面は平坦になっており、その内側に凹凸面(曲面部)3を形成し、ここに下部電極層12を形成している。また、平坦になった支持面の外周端には面取り部59を設け、支持面に配線部55を形成し、面取り部59に配線パッド56を形成している。この面取り部59には絶縁層9を設けていない。従って、面取り部59上の配線パッド56には絶縁層9が付着していない(図2参照)。
【0054】
下部電極層12とスペーサ層54は、例えば0.1μm程度の厚みを有するAlで作製され、絶縁層9は、例えば0.5μm程度の厚みを有する酸化シリコンで作製されている。
【0055】
ここで、配線パッド56は、下部電極層12へ電圧を印加するための配線部55と後述する下部電極用パッド58とを電気的に接続するために設けられている。なお、配線部55及び配線パッド56は下部電極層12と同じ厚み・材料で形成されている。
【0056】
シリコン基板50と参照面基板6は、シリコン基板50側の上部電極層8と参照面基板6側の下部電極層12が互いに対向するように接着剤で接着されている(図2参照)。より具体的には、平坦な支持面同士を密着して接着している。可撓性部材2は、スペーサ54上の絶縁層9の上面と、配線部55上の絶縁層9の上面で同じ高さで接触し、平面性を維持する。
【0057】
前記接着剤には、例えば導電性のエポキシ系接着剤が用いられ、図2に示すように接着剤57aと接着剤57bによって、シリコン基板50と参照面基板6が相互に固定される。また、図2に示すように、接着剤57aは、参照面基板6の面取り部59上の配線パッド56と、シリコン基板50の裏面上に熱酸化膜51aを介して設けられた下部電極用パッド58とを電気的に接続する機能も兼ねている。
【0058】
参照面基板6の面取り部59は、シリコン基板50と参照面基板6が接着された時に配線パッド56を外部に露出させるとともに、接着剤57a、57bがこの面取り部59に入り込むことにより、接着の信頼性を向上させ、かつ配線パッド56と下部電極用パッド58との電気的な接続を確実にする機能を有する。
【0059】
可撓性部材2の露出部分2b(図3参照)と下部電極用パッド58は、例えば半田等により駆動回路7に接続されている。この駆動回路7は、可撓性部材2の露出部分2bと下部電極層12との間に電圧を印加したり、印加を中止したりする。
【0060】
具体的には、可撓性部材2の反射膜10に入射する光ビームに収差を与えることなく反射させる場合には、駆動回路7は電圧を印加しない。この結果、可撓性部材2は、その反射膜10を平坦のまま維持し、入射してくる光ビームに収差を与えず、そのまま反射する。これに対して、入射する光ビームに収差を与えるときは、駆動回路7は、上部電極層8と下部電極層12の間に電圧を印加する。これにより、上部電極層8と下部電極層12間には、静電応力が作用し、可撓性部材2は、凹凸面3に吸着して、その反射膜10を変形させ、入射してくる光ビームに所定の収差を与える。
【0061】
図5は、図1の変形可能ミラーを適用した光学装置の一例を示している。この光学装置は、相互に異なる厚みの2種類の光ディスクに対して記録及び再生を行うものである。
【0062】
なお、ここではディスク厚みが0.6mm(例えば、DVD)とl.2mm(例えば、CD)の2種類の光ディスクに対応できる光学装置を例にとって説明する。
【0063】
光ピックアップの光源である光源(半導体レーザー)500は、光ビーム504を出射する。この光ビーム504は、コリメータレンズ502、ビームスプリッター503、4分の1波長板505を通過して、ビームスプリッター506に到達する。続いて、このビーム504は直進してビームスプリッター506及び4分の1波長板507を通過し、変形可能ミラー1に達する。
【0064】
そして、この変形可能ミラー1で反射された光が、4分の1波長板507を通過し、ビームスプリッター506で反射され、この反射光が対物レンズ508に入射する。そして、この光ビームは、光ディスク509に集光する。この対物レンズ508は、ディスクの厚みが0.6mmの光ディスクに対応するようにその焦点距離、開口数(NA)等が設定されている。
【0065】
この光学装置では、厚みが1.2mmの光ディスクと、厚みが0.6mmの2種類の光ディスクのいずれに対しても、正確な記録再生動作が可能になっている。これは、装着された光ディスク509の厚みに応じて、変形可能ミラー1の状態を変化させることにより実現される。即ち、変形可能ミラー1の可撓性部材2の形状を変化させ、これにより対物レンズ508から出射された光ビームの集光スポットを変位させ、この集光スポットを駆動用モータ517に支持された光ディスク509に合致させている。
【0066】
より具体的には、ディスクの厚みが1.2mmのときに、変形可能ミラー1の可撓性部材2を変形させて、対物レンズ508の入射光に収差を与え、これによって対物レンズ508からの光ビームの集光スポットを光ディスク509に合致させ、この状態で光ディスク509の記録再生動作を行うている。
【0067】
また、ディスク厚みが0.6mmのときに、変形可能ミラー1の可撓性部材2を変形させず、平面ミラ一を形成し、対物レンズ508の入射光に収差を与えず、これによって対物レンズ508からの光ビームの集光スポットを光ディスク509に合致させ、この状態で光ディスク509の記録再生動作を行っている。
【0068】
従って、変形可能ミラー1の可撓性部材2を変形させる前提として、光ディスク509の厚みを検知する必要がある。この厚み検知は、光ディスク509の上側に設けられた厚み検知装置(基板厚み検知装置)515により行われる。
【0069】
この厚み検知装置515は、例えば図6に示すように構成されており、光源600の光ビーム602を光ディスク509に向けて出射する。光ディスク509の表面で反射された反射光は、光ディスク509の厚みが0.6mmの場合は光路604を経て光位置検出器601に入射する。同様に、光ディスク509の厚みが1.2mmの場合は、光路603を経て光位置検出器601に入射する。この反射光の位置を光位置検出器601で検出すれば、光ディスク509の厚みを検知できる。この検知結果、つまり光ディスクの厚み情報は、システム制御装置516に報じられ、これを受けたシステム制御装置516は以下のようにして変形可能ミラー1を変形させる。
【0070】
システム制御装置516は、光ディスク509のディスク厚みが0.6mmのときには、収差補償を行う必要がないので、駆動回路7を駆動しない。この場合には、変形可能ミラー1の可撓性部材2は変形せず、その反射膜10が平面ミラーとして機能する。
【0071】
また、ディスク厚みが1.2mmのときには、システム制御装置516は、駆動回路7を駆動して、変形可能ミラー1の可撓性部材2を参照面基板6の凹凸面3に吸着させ、この可撓性部材2を変形させる。これにより、変形可能ミラー1によって反射されてた光ビームには所定の収差が与えられ、対物レンズ508からの光ビームの集光スポットが厚み1.2mmの光ディスク509に合致する。
【0072】
なお、ここでは、厚みが1.2mmの光ディスクの場合に変形可能ミラー1を変形させて収差補償しているが、逆に厚みが0.6mmの光ディスク509の場合に変形可能ミラー1を変形させることも可能である。
【0073】
但し、厚みが0.6mmの光ディスク509は記録容量が大きいため、厚みがl.2mmのCD等の光ディスクを再生する場合よりも、使用する光学部品に高い精度が要求される。発明者等のシミュレーションの結果によれば、厚みが1.2mmのディスクを記録再生するときに、光ビームに収差を与えた方が光学部品の精度が緩くて済むことが確認された。従って、変形可能ミラー1の反射膜10が平面ミラーとなっているときに、厚みが0.6mmの光ディスク509を記録再生し、変形可能ミラー1の可撓性部材2を変形させたときに、厚みが1.2mmの光ディスク509を記録再生する方が実施する上で好ましいものになる。
【0074】
次に、図7を参照して、変形可能ミラー1の反射面(可撓性部材2の反射膜10)を所定形状に変形させるための参照面基板6の凹凸面3の具体的な断面形状(曲面形状)について説明する。
【0075】
この凹凸面3の断面形状は、この凹凸面3の断面形状に倣って変形する可撓性部材2の反射面が上述した所定の収差を発生するものであれば良い。
【0076】
図7は、所定の収差を発生する凹凸面3の断面形状をシミュレーションで求めた結果を示す。変形可能ミラー1の反射膜10が平面ミラーとして作用するときには、深さd=0(μm)の位置に沿った伏態であり、収差を補償するミラーとして作用するときには、反射膜10が各曲線で示すような凹凸面3に沿った断面形状に沿う。この凹凸面3の断面形状は、その中心を通る軸に対して軸対称となる。
【0077】
ここで、本来は、変形可能ミラーの反射面が軸対称に変形し得る様に、この反射面を円形にすることが望ましい。一方、上記光学装置に適用される変形可能ミラーとして、全体の直径が10mm以下、望ましくは5mm程度のものが適当であり、これに伴いシリコン基板50の開口部53としては、その直径が8mm、望ましくは4〜3mm程度が適当である。この様にシリコン基板50の開口部53を小さく良好な精度で円形に加工するならば、次の様な3つの加工方法がある。
【0078】
(1)放電加工等による精密機械加工
(2)ウェットエッチング
(3)ドライエッチング
しかしながら、これらの加工方法には、次の様な各問題点がある。
【0079】
上記(1)の場合、大量生産に向かない。また、変形可能ミラーが平面ミラーとして働くときに、安定性を向上させるため、可撓性部材2に一定のテンションを加えておく必要があるものの、テンションを加えつつ、この可撓性部材2を保持して固着することが困難である。
【0080】
上記(2)の場合、円形の開口部を形成することができない。すなわち、シリコン基板50は、可撓性部材2を支持するという目的のため、ある程度の強度を要する。開口部53周辺の寸法を大きくすれば良いが、変形可能ミラーの直径が前述のように制限される。このため、シリコン基板50にある程度の厚みを持たせることにより、強度を確保する必要がある。その厚みは、通常0.3〜1mm程度である。この場合、ウェットエッチングではサイドエッチングが入るため基本的に前述の寸法の開口部50を得ることは不可能である。
【0081】
上記(3)の場合、単結晶Si基板をシリコン基板50に用いて、トレンチエッチングを行えば不可能ではない。しかしながら、量産技術として現時点で未確立であるうえ、装置が高価で生産性もよくない。即ち、生産コストが高くついてしまう。
【0082】
そこで、後に述べるこの発明の製造方法の一実施形態では、バルクマイクロマシニングと呼ばれる結晶方位依存性を利用した異方性ウェットエッチングを適用して、シリコン基板50の開口部53を形成する。
【0083】
この異方性ウェットエッチングには、例えば(100)面、(110)面の単結晶Si基板や、水晶基板等を用いる。ただし、結晶面に応じて異なるエッチング速度でエッチングを行う異方性ウェットエッチングであるため、円形の貫通口は得られず、通常、単結晶Si基板401には、図8(a)に示す様な四角形の開口部402が形成される。なお、図8(b)のハッチング領域は、四角形の開口部402を形成するためのエッチングマスクの平面視形状を示し、図8(c)のハッチング領域は、四角形の開口部402を形成したときの変形可能ミラーの平面視形状を示す。
【0084】
仮に、シリコン基板50の開口部が四角形の場合は、可撓性部材2が接触する参照面基板6の凹凸面3が円形であるので、この可撓性部材2の変形時、応カ分布や変位量の分布が発生してしまう。また、シリコン基板50の強度の観点からも問題がある。さらには、開口部の面積が大きくなり、可撓性部材2の変形分部の面積が大きくなるので、この可撓性部材2の反射面を平面ミラーとして使用するときに、この反射面の安定性に問題がある。
【0085】
したがって、異方性ウェットエッチングを適用するにしても、シリコン基板50の開口部の形状として、四角形を採用することはできず、この発明の変形可能ミラーの様に、シリコン基板50の開口部53の形状として、八角形を実現せねばならない。
【0086】
図9(a)は、単結晶Si基板からなるシリコン基板50を示す。
このシリコン基板50は、前述の四角形の開口部を有するものと同様に、結晶方位依存性を利用した異方性ウェットエッチングを適用して製造したものである。前述の四角形の開口部を有するものの場合、エッチングによって、エッチングレートの最も遅い面を出現させているのに対し、シリコン基板50の開口部53が八角形の場合は、エッチングレートの最も遅い面と2番目に遅い面を出現させて多角形化を図り、平面形状をより円形に近づけており、これによって四角形の開口部について発生した問題点を解決している。
【0087】
また、シリコン基板50の開口部53を八角形にすることにより、可撓性部材2を支持するシリコン基板50の支持部分が大きくなり、このシリコン基板50の強度が増す。更に、可撓性部材2の変形分部の面積が小さくなるので、この可撓性部材2の反射面を平面ミラーとして使用するときには、この反射面の安定性が増す。
【0088】
図10(a)は、開口部が四角形の場合に、可撓性部材2を同図(c)に示す様な深さ5μm程度の参照面基板6の凹凸面3に強制的に接触させたときの該可撓性部材2の変位の状態を示し、また図10(b)は、開口部が八角形の場合に、可撓性部材2を同図(c)に示す様な参照面基板6の凹凸面3に強制的に接触させたときの該可撓性部材2の変位の状態を示す。
【0089】
これらの図10(a),(b)を比較すれば明らかな様に、開口部が四角形の場合は、可撓性部材2が円状に変形しないものの、開口部が八角形の場合は、可撓性部材2が円状に変形する。
【0090】
なお、可撓性部材2の変位の状態は、FEM(Finit Element Method)のシミュレーションで求めたものである。また、図示はされていないが、可撓性部材2に作用する応カの分布も同様の傾向を示す。
【0091】
次に、この発明の製造方法の一実施形態であって、図1のシリコン基板50を製造するための方法を図11を参照しつつ説明する。このシリコン基板50は、図11(a)に示す様な{100}面(通常(100)面)、及び[110]方位(通常<011>方位)のオリエンテーションフラットを有する単結晶Si基板71を用いる。この単結晶Si基板71の厚みは、0.3〜1mm程度がよい。
【0092】
図11(b)に示す様に、この単結晶Si基板71を酸化して、エッチングマスクとなる各SiO2層51a、51bを形成する。
【0093】
なお、後述する異方性ウェットエッチングの精度を向上させるため、エッチャントによる選択性の良いSi34層を減圧CVDによって形成し、これをエッチングマスクとして使用するとより好ましい。
【0094】
次に、図11(c)に示す様に、フォトリソグラフィーとRIEによって、単結晶Si基板71の裏面、つまり可撓性部材2を形成する表面とは反対側の裏面に形成されたSiO2層51bをパターニングし、開口部53を形成するためのエッチングマスク60を形成する。
【0095】
次に、図11(d)に示す様に、単結晶Si基板71の表面に、例えばTa,Cr,Nb等の密着層61をスパッタ法やEB蒸着法で形成し、この後に、可撓性部材2を後述する電気メッキ法で形成するためのシード層62を形成する。通常、密着層61とシード層62は連続的に成膜される。
【0096】
次に、図11(e)に示す様に、電気メッキ法によって、可撓性部材2の基材となる例えば8μm厚のNi層63を形成する。
【0097】
次に、図11(f)に示す様に、静電力によって駆動される可撓性部材2に電圧を印加するための上部電極58等をパターニングする。
【0098】
なお、この実施形態では、電気メッキ法を用いているが、無電界メッキ法を用いても良いし、また単結晶Si基板71の表面にP型不純物のドーピングを行い、エッチストップとなる層を形成して、後に形成される可撓性部材2のエッチングを阻止しても良い。
【0099】
次に、図11(g)に示す様に、例えは40wt%、60℃のKOH水溶液を用いて、単結晶Si基板71に対して異方性ウェットエッチングを行った後、SiO251aの不要な部分を例えばRIE等で除去してシリコン基板50並びに開口部53を形成する。これに伴い、密着層61、シード層62及びNi層63の一部分が可撓性部材2となって、この可撓性部材2が開口部53で平面状に保持される。
【0100】
この際、図9(a)に示す様に、エッチングによって{111}面が第1番目に出現して、この{111}面が単結晶Si基板71の(100)面に対して54.7°の角度をなす。また、(010)面及び(001)面が第2番目に出現して、これらの(010)面及び(001)面が(100)面に対して直角となる。
【0101】
{111}面のエッチングレートは、非常に小さくエッチングマスク60に略忠実に現れる。また、(010)面及び(001)面は、エッチングマスク60によって被覆されている単結晶Si基板71の(100)面と同一方位であるから、この(100)面と同一のエッチングレートでエッチングされる。
【0102】
エッチングマスク60の寸法並びに形状を適宜に設定すれば、開口部53が貫通した時点での、(010)面及び(001)面の寸法をコントロールすることが可能となる。また、{111}面と、(010)面及び(001)面は、(100)面に射影して平面的に見ると、相互に45°(135°)の角度をなす。このことを利用すれば、{111}、{100}両面によって、八角形の開口部53を形成することができ、さらに精度をあげれば正八角形の開口部53が得られる。
【0103】
なお、以上で変形可能ミラーのシリコン基板50及び可撓性部材2は完成するが、必要に応じて、図11(h)に示す様に、可撓性部材2の表面ににAl,Au等の反射膜10を成膜すると良い。
【0104】
次に、八角形の開口部53を良好に再現するための、エッチングマスクの具体的な形状を述べる。
【0105】
まず、仮に、先に述べた図8(a)の四角形の開口部402の場合は、(100)面、<011>方位のオリエンテーションフラットを有する単結晶Si基板401を適用し、オリエンテーションフラットに対して水平及び垂直な各辺からなる四角形のエッチングマスクによって該単結晶Si基板401をマスクしてから、この単結晶Si基板401をパターニングする。このエッチングマスクによって、(111)面及び(1−1−1)面がオリエンテーションフラットの(011)面に対して水平に現れ、また(1−11)面及び(11−1)面が(011)面に対して垂直に現れる。{111}面は、単結晶Si基板401の(100)面に対して54.7°でそれぞれ交わるが、(100)面に射影して平面的に見た形状は、表面から見ても、裏面から見ても、 図8(b)及び(c)から明らかな様に、四角形となる。
【0106】
一方、この発明の八角形の開口部53の場合は、先にも述べた様に単結晶Si基板71の<011>方位のオリエンテーションフラットに対しては45°をなし、単結晶Si基板51の表面である(100)面に対しては垂直な4つの{100}面と、先の{111}面を出現させて組み合わせる。
【0107】
上記実施形態の製造方法においては、エッチングマスクのSiO2層51a(又はSi34層)及び単結晶Si基板71の{111}面のエッチングレートは、開口部53が貫通する(100)面のエッチングレートの200〜400分の1以下である。八角形の開口部53を形成するには、{111}面と共に、(010)面及び(001)面を出現させる。これらの(010)面及び(001)面は、(100)面と同じく、約20μm/時間のエッチングレートでエッチングされるが、それでも他の高次の面、例えば{110}面や{210}面等よりはエッチングレートが遅い。
【0108】
そこで、図12(a)に示す様なハッチング領域を覆うエッチングマスク60を形成してからエッチングを行う。このエッチングマスク60の形状によって、{111}面が出現するまでは、(010)面及び(001)面が優先して出現され、オーバーエッチングがかなり進み、この結果として開口部53が八角形となる。
【0109】
以上の原理で八角形の開口部53を形成するので、八角形を構成する{111}面、(010)面及び(001)面がエッチングマスク60の形状や寸法をそのまま反映するわけでなく、このためエッチングマスク60の形状や寸法を適宜調整する必要がある。
【0110】
次に、エッチングマスク60に対するシリコン基板50の開口部53の形状並びに寸法を図9(b)及び(c)を参照して説明する。図9(b)は、図9(a)のX1−X1’に沿う断面を示し、図9(c)は、図9(a)のX2−X2’に沿う断面を示す。
【0111】
図9(b)に示す様に、(010)面及び(001)面については、シリコン基板50の厚さをT、エッチングによるサイドエッチ(アンダーカット)量をWとすると、サイドエッチ量Wはシリコン基板50の厚さTに略相当する。よって、W=Tとなり、開口部53を形作る八角形の対向する各辺間の離間距離がエッチングマスク60を形作る各辺間の離間距離よりも2*T分だけ大きくなる。
【0112】
また、図9(c)に示す様に、{111}面については、面がエッチングマスク60の内側に出てしまう。その量をVとすると、V=T/tan(54.7°)となる。開口部53を形作る八角形の対向する各辺間の離間距離は、エッチングマスク60を形作る各辺間の離間距離よりも2*T/tan(54.7°)だけ小さくなる。
【0113】
図12は、開口部53を形作る八角形とエッチングマスク60を判り易く示すものであり、シリコン基板50を裏面側から見て示す概略斜視図である。図12(a)のハッチング領域は、エッチングマスク60の形状を示し、図12(b)のハッチング領域は、変形可能ミラーの平面形状を示し、図12(c)のハッチング領域は、開口部53の裏面側の形状を示す。この開口部53の形状を単結晶Si基板51の(100)面に射影して平面的に見ると、図12(b)に示す様な八角形となる。
【0114】
次に、エッチングマスク60と、シリコン基板50の開口部53を平面的にみたときの形状並びに寸法の関係について、図13を参照して説明する。
【0115】
これまでに述べてきた様に、シリコン基板50の開口部53を八角形にするためには、エッチングマスク60を八角形とし、このエッチングマスク60の4つの辺をシリコン基板50(単結晶Si基板71)の{110}に沿わせ、残りの他の4つの辺をシリコン基板50の{100}面に沿わせれば良い。
【0116】
また、開口部53を正八角形に近づけるためには、エッチングマスク60の各辺のうちの対向するもの同士の長さを等しくする。つまり、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して水平あるいは垂直なエッチングマスク60の各辺の長さを等しくし、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して45°をなす各辺も長さを等しくする。
【0117】
ここで、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して水平あるいは垂直なエッチングマスク60の各辺の長さをAとし、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して45°をなす各辺の長さをBとする。また、開口部53を(100)面に射影して平面的にみたときの八角形の各辺については、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して水平あるいは垂直な各辺の長さをL1とし、<011>方位のオリエンテーションフラットに対して45°をなす各辺の長さをL2とする。更に、先に述べたことから明らかな様に、長さL1の各辺の離間距離が長さAの各辺間の離間距離よりも2*T/tan(54.7°)だけ小さく、長さL2の各辺の離間距離が長さBの各辺間の離間距離よりも2*T分だけ大きくなる。
【0118】
これらの関係から、エッチングマスク60の各辺の長さA及びBは、次の各式(7)及び(8)によって表される。
A=L1−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(7)
B=L2+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(8)
開口部53を略正八角形に近づけるためには、A<Bであって、かつL1=L2=L、L=(L1+L2)/2Lである。したがって、上記各式(7)及び(8)から次の各(9)及び(10)が導かれる。
【0119】
A=L−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(9)
B=L+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(10)
これらの式(9)及び(10)から、各辺の長さA及びBを求めて、これらの辺からなるエッチングマスク60を採用して、シリコン基板50の開口部53を形成すれば、この開口部53を略正八角形にすることができる。
【0120】
ただし、シリコン基板50の開口部53を正八角形に成形することが極めて困難なため、略正八角形と表現せざるを得ない。その理由としては、シリコン基板50の{111}面はほとんど後退しないが、{100}面はオーバーエッチング等で、約20μm/時間の割合で後退するので、シリコン基板50の開口部53の各辺の長さの誤差を避け難いと言うこと、またエッチングマスク60を高精度で単結晶Si基板71上にアライメントするのは困難であって、若干のずれが生ずると言うこと、更には単結晶Si基板71の厚みも規格に対して多少のばらつきを有すると言うこと等がある。
【0121】
実際に試作すると、前者の2つの理由によるばらつきが約3%、後者の1つの理由によるばらつきが3%で、計6%のばらつきがあることが判明した。したがって、シリコン基板50の開口部53の形状として、完全な正八角形を実現するには、これらのばらつきを考慮したうえで、逆算を行い、次の各式(1)及び(2)に基づいて、エッチングマスク60の各辺の長さA及びBを設定する必要がある。
A=L−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(1)
B=L+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(2)
図14は、この発明の製造方法の第2実施形態におけるエッチングマスクの概略形状を示している。
【0122】
この第2実施形態では、変形可能ミラーの小型化に伴って、シリコン基板50及び開口部53を小型化する場合を想定している。
【0123】
これに対して、第1実施形態の変形可能ミラーにおいては、変形可能ミラーが比較的大きく、単結晶Si基板71のエッチングに用いられるエッチングマスク60が八角形であって、長さAの4つの辺と、長さBの4つの辺が存在し、A>0と言う条件を満たしている。このA>0と言う条件を上記式(1)に代入すれば、次の式(11)を求めることができ、エッチングマスク60が八角形である限り、この式(11)を満たさなければ、シリコン基板50の開口部53を八角形に形成することはできない。
L>2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(11)
ところが、シリコン基板50の開口部53が小さくなり、これに伴ってエッチングマスクも小さくなると、A=0となるので、エッチングマスクの形状は、八角形でなく、図14に示す様な四角形のエッチングマスク81となる。
【0124】
このエッチングマスク81によって単結晶Si基板71を被覆し、この単結晶Si基板71をエッチングした場合、エッチングマスク81を形作る四角形の頂点から、{111}面が出現し、この四角形の各辺から{100}面が出現する。
【0125】
したがって、エッチングマスク81形作る四角形の各辺は、単結晶Si基板71の表面である(100)面に対して垂直な{100}面上に沿って存在する必要がある。
【0126】
この様にエッチングマスク81の四角形の各辺の方向を決めた場合、エッチングマスク81の四角形は長方形となる。但し、この長方形の隣り合う辺の長さが異なると、図14に示す開口部53を形作る八角形の各辺91,95と93,97、及び90,94と92,96の長さが異なってしまう。より正八角形に近づけるには、この長方形の各辺の長さが等しい、つまり正方形であらねばならない。
【0127】
ここで、上記式(1)にA=0を代入すると、次の式(12)が導かれる。
L=2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(12)
更に、この式(12)を上記式(2)に代入し、B=Cと置き換えると、次の式(13)が導かれる。
【0128】
C=4*T*(1/tan(54.7°)+√(2)) …(13)
この式(13)によって求められるCは、エッチングマスク81の正方形の一辺の長さであり、この正方形のエッチングマスク81によって単結晶Si基板71を被覆し、この単結晶Si基板71をエッチングすると、シリコン基板50の開口部53が略正八角形となり、この略正八角形の各辺の長さがLとなる。
【0129】
ここで、第1実施形態のエッチングマスク60と同様に、6%のばらつきを考慮して、シリコン基板50の開口部53を完全に正八角形とするには、これらのばらつきを考慮したうえで、逆算を行い、次の(3)に基づいて、エッチングマスク81の各辺の長さA及びBを設定する必要がある。
C=4*T*(1/tan(54.7°)+√(2))±6% …(3)
図15は、この発明の製造方法の第3実施形態におけるエッチングマスクの概略形状を示している。
【0130】
この第3実施形態では、変形可能ミラーの更なる小型化に伴って、シリコン基板50及び開口部53を更に小型化する場合を想定している。
【0131】
これに対して、第2実施形態の変形可能ミラーにおいては、上記式(12)の条件を満たすことを前提としており、この条件が満たされず、次の式(14)が成立するとき、つまり単結晶Si基板71の厚さTと比較して、シリコン基板50の開口部53形作る八角形の一辺の長さLが短く、小さな八角形のときには、八角形を作成することができても、図16(a),(b)に示す様にエッチングマスク81形作る四角形の頂点から開口部53形作る八角形の一辺までの距離V、及びエッチングマスク81を形作る四角形の一辺から開口部53を形作る八角形の一辺までの距離Wを別々に調整することができず、どうしても開口部53を形作る八角形の各辺の長さL1,L2の関係がL1>L2となってしまうため、正八角形を形作ることはできない。
【0132】
L<2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) ) …(14)
ところで、図9(b),(c)の先の説明からも明らかな様に、シリコン基板50の{111}面はエッチングマスクパターンより小さくなり、{100}面はエッチングマスクパターンより大きくなる(サイドエッチングが入る)。そこで、エッチング完了後の八角形の形状より逆算し、{111}面が小さくなる分だけ、この{111}面にサイドエッチングが入る様に、四角形のエッチングマスクを予め変形させると、この結果として、図15に示す形状のエッチングマスク82が得られる。このエッチングマスク82を用いれば、シリコン基板50の開口部53を略正八角形に形成することができる。
【0133】
このエッチングマスク82の形状は、四角形の領域83と、この四角形の領域83の各角から放射状に延びるそれぞれのくさび形領域84からなる形状を有している。相互に対向する各くさび形領域84の頂点を結ぶ一対の線が単結晶Si基板71の表面とは垂直な{110}面に沿って存在し、四角形の領域83の各辺が単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿って存在する様に、このエッチングマスク82によって単結晶Si基板71を被覆し、この単結晶Si基板71をエッチングする。これによって、単結晶Si基板71の厚さTと比較して、シリコン基板50の開口部53を形作る八角形の一辺の長さLが短く、小さな八角形のときでも、この八角形を略正八角形に近づけることができる。
【0134】
さらに、シリコン基板50の開口部53をより正八角形に近づけるには、エッチングマスク82の相互に対向する各くさび形領域84の頂点を結ぶ一対の線の長さをD、四角形の領域83の各辺の離間距離をE、及び四角形の領域83の各辺上での各くさび形領域84間の距離をFとすると、次の各式(15)、(16)及び(17)を満たせば良い。
【0135】
D=L*(1+√(2))+2*T/tan(54.7°) …(15)
E=L*(1+√(2))−2*T …(16)
F=L …(17)
ここで、第1実施形態のエッチングマスク60と同様に、6%のばらつきを考慮して、シリコン基板50の開口部53を完全に正八角形とするには、これらのばらつきを考慮したうえで、逆算を行い、次の各式(4)、(5)及び(6)に基づいて、D,E,Fを設定する必要がある。
D=L*(1+√(2))+2*T/tan(54.7°)±6% …(4)
E=L*(1+√(2))−2*T±6% …(5)
F=L …(6)
【0136】
【発明の効果】
以上説明した様に、この発明によれば、曲面部の断面形状に倣って可撓性部材の反射面が変形する。このため、曲面部の形状精度を高く維持しておけば、反射面の変形形状を精度よく決定することができ、収差補正を精度よく行うことができる。
【0137】
また、可撓性部材の外周縁部を縁取る支持枠内側の開口部を八角形に形成しているので、変形時には、この可撓性部材に加わる応力を該可撓性部材の全体に略均等に分布させることができ、この可撓性部材の変形性が向上し、かつ、その寿命が向上する。また、無変形時に、この可撓性部材の反射面を平面に保持し易く、この状態を安定に持続することができる。この支持枠内側の開口部の形状としては、正八角形が最も望ましい。
【0138】
一方、曲面部の形状は、予め指定された収差を補正できるものであれば良い。この変形可能ミラーを搭載した光学装置においては、可撓性部材の反射面を平面に保持し、この可撓性部材の反射面への入射光に収差を与えない状態と、可撓性部材を参照面基板の曲面部に吸い寄せて、この可撓性部材を弾性変形させ、この可撓性部材の反射面への入射光に予め定められた収差を与える状態を選択的に設定することができ、これによって光学的に異なる複数の光を生成することができる。
【0139】
請求項2に記載の様に、支持枠は、{100}面、及び〔110〕方位のオリエンテーションフラットを有する単結晶Si基板から形成されるものが良く、これによって、各請求項3、8及び12に記載の変形ミラーの製造方法が可能となる。
【0140】
請求項3に記載の製造方法によれば、支持枠の開口部は、単結晶Si基板をエッチングマスクによって被覆してから、この単結晶Si基板をエッチングすることによって形成され、このエッチングマスクが八角形であり、このエッチングマスクによって被覆された単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿って、この八角形の4つの辺が存在し、このエッチングマスクによって被覆された単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿って、この八角形の他の4つの辺が存在している。
【0141】
この様な条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0142】
請求項4に記載の様に、単結晶Si基板をエッチングする以前に、この単結晶Si基板に可撓性部材を積層しておき、この後に、可撓性部材をエッチングせずに、単結晶Si基板をエッチングして、支持枠の開口部を形成しても良い。
【0143】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板の表面を平らにしておけば、ここに積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、エッチングを終了した後には、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0144】
請求項5に記載の様に、エッチングマスクを形作る八角形の{110}面に沿う4つの辺が相互に等しく、かつ該八角形の{100}面に沿う他の4つの辺が相互に等しいのが良い。
【0145】
これによって、支持枠の開口部を形作る八角形の{110}面上の4つの辺が相互に等しく、かつ該八角形の{100}面上の他の4つの辺が相互に等しくなり、この八角形の形状が整う。
【0146】
請求項6に記載の様に、エッチングマスクを形作る八角形の{110}面に沿う4つの辺の長さをAとし、かつ該八角形の{100}面に沿う他の4つの辺の長さをBとすると、A<Bであるのが良い。
【0147】
これによって、支持枠の開口部を形作る八角形を良好に再現することができる。
【0148】
より好ましくは、請求項7に記載の様に、支持枠の厚みをTとし、この支持枠の開口部を形作る八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L>2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、エッチングマスクを形作る八角形の各辺の長さA及びBを次式(1)及び(2)で表す。
A=L−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(1)
B=L+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(2)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【0149】
また、請求項8に記載の製造方法によれば、支持枠の開口部は、単結晶Si基板をエッチングマスクによって被覆してから、この単結晶Si基板をエッチングすることによって形成され、このエッチングマスクが四角形であり、このエッチングマスクによって被覆された単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿って、この四角形の4つの辺が存在している。
【0150】
ここでは、支持枠の開口部がやや小さく、上記エッチングマスクを形作る八角形の{110}面に沿う4つの辺の長さAが0(A=0)であることを前提としており、この請求項8に記載の条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0151】
請求項9に記載の様に、単結晶Si基板をエッチングする以前に、この単結晶Si基板に可撓性部材を積層しておき、この後に、可撓性部材をエッチングせずに、単結晶Si基板をエッチングして、支持枠の開口部を形成しても良い。
【0152】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板に積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、エッチングを終了した後には、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0153】
請求項10に記載の様に、エッチングマスクを形作る四角形は、正方形であるのが良い。
【0154】
より好ましくは、請求項11に記載の様に、支持枠の厚みをTとし、この支持枠の開口部を形作る八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L=2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、エッチングマスクを形作る正方形の一辺の長さCを次式(3)で表す。
C=4*T*(1/tan(54.7°)+√(2))±6% …(3)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【0155】
更に、請求項12に記載の製造方法によれば、支持枠の開口部は、単結晶Si基板をエッチングマスクによって被覆してから、この単結晶Si基板をエッチングすることによって形成され、このエッチングマスクは、四角形の領域と、この四角形の領域の各角から放射状に延びるそれぞれのくさび形領域からなる形状を有し、相互に対向する各くさび形領域の頂点を結ぶ一対の線が該エッチングマスクによって被覆された単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿って存在し、四角形の領域の各辺が該エッチングマスクによって被覆された単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿って存在する。
【0156】
ここでは、支持枠の開口部が非常に小さいことを前提としており、この請求項10に記載の条件のもとに、単結晶Si基板をエッチングすると、支持枠の開口部として、八角形のものを得ることができる。
【0157】
請求項13に記載の様に、単結晶Si基板をエッチングする以前に、この単結晶Si基板に可撓性部材を積層しておき、この後に、可撓性部材をエッチングせずに、単結晶Si基板をエッチングして、支持枠の開口部を形成しても良い。
【0158】
これによって、支持枠と可撓性部材を同時に形成することができる。また、単結晶Si基板に積層される可撓性部材を平面状に形成することができ、支持枠の開口部で、可撓性部材の反射面を平面に保持することができる。
【0159】
好ましくは、請求項14に記載の様に、支持枠の厚みをTとし、この支持枠の開口部を形作る八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L<2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、エッチングマスクの形状における相互に対向する各くさび形領域の頂点を結ぶの線の長さをD、四角形の領域の各辺の離間距離をE、及び四角形の領域の各辺上での各くさび形領域間の距離をFを次式(4)、(5)及び(6)で表す。
D=L*(1+√(2))+2*T/tan(54.7°)±6% …(4)
E=L*(1+√(2))−2*T±6% …(5)
F=L …(6)
この場合は、支持枠の開口部を形作る八角形が正八角形となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の変形可能ミラーの第1実施形態を示す平面図
【図2】図1のX−X線に沿って破断した変形可能ミラーを示す断面図
【図3】図1の変形可能ミラーを示す底面図
【図4】図1の変形可能ミラーを分解して示す分解斜視図
【図5】図1の変形可能ミラーを適用した光学装置の一例を示すブロック図
【図6】図5における厚み検知装置を示す概略構成図
【図7】図1の変形可能ミラーの凹凸面の断面形状を示すグラフ
【図8】(a)は四角形の開口部を形成し単結晶Si基板を示す斜視図、(b)は該単結晶Si基板上にエッチングマスクの平面視形状を示し、(c)は該単結晶Si基板を用いて形成した変形可能ミラーの平面視形状を示す図
【図9】(a)は図1の変形可能ミラーのシリコン基板を示す斜視図、(b)は(a)のX1−X1’に沿う断面を示し、(c)は(a)のX2−X2’に沿う断面を示す図
【図10】(a)はシリコン基板の開口部が四角形の場合に、可撓性部材を凹凸面に強制的に接触させたときの該可撓性部材の変位の状態を示すグラフ、(b)は開口部が八角形の場合に、可撓性部材を凹凸面に強制的に接触させたときの該可撓性部材の変位の状態を示すグラフ、(c)は可撓性部材を凹凸面に強制的に接触させている状態を示す図
【図11】図2の変形ミラーのシリコン基板を製造する手順を示しており、(a)は単結晶Si基板を示し、(b)はSiO2層の形成工程を示し、(c)はエッチングマスクの形成工程を示し、(d)は密着層とシード層の形成工程を示し、(e)はNi層の形成工程を示し、(f)は上部電極等のパターニング工程を示し、(g)は異方性ウェットエッチング工程を示し、(h)は反射膜の成膜工程を示す図
【図12】(a)は図1の変形可能ミラーのシリコン基板を覆うエッチングマスクの形状を示し、(b)は変形可能ミラーの平面形状を示し、(c)はシリコン基板の開口部の裏面側の形状を示す図
【図13】図1の変形可能ミラーのシリコン基板の開口部とエッチングマスクの形状を示す平面図
【図14】この発明の製造方法の第2実施形態におけるエッチングマスクの概略形状を示す平面図
【図15】この発明の製造方法の第3実施形態におけるエッチングマスクの概略形状を示す平面図
【図16】(a)及び(b)は、エッチングマスクと開口部の形状及び寸法の関係を示す図
【図17】従来の光ピックアップの構成を示すブロック図
【図18】従来の変形可能ミラーを使用した光ピックアップの構成を示す図
【図19】従来の変形可能ミラーの構成を示す図
【符号の説明】
1 変形可能ミラー
2 可撓性部材
3 凹凸面
7 駆動回路
8 上部電極層
9 絶縁層
10 反射膜
12 下部電極層
50 シリコン基板
53 開口部
54 スペーサ層
55 配線部
56 配線パッド
59 面取り部
60,81,82 エッチングマスク
71 単結晶Si基板
500 光源
502 コリメータレンズ
503,506 ビームスプリッター
505,507 4分の1波長板
508 対物レンズ
509 光ディスク
515 厚み検知装置
517 駆動用モータ
601 光位置検出装置

Claims (14)

  1. 入射光を反射する反射面を表面に有する膜状の可撓性部材と、
    単結晶Si基板によって形成され、該可撓性部材の外周を支持するために、内側に開口部が形成された支持枠と、
    支持枠に前記可撓性部材を介して対向配置されており、前記開口部の内部に対向して、前記可撓性部材の弾性変形を許容する空間を形成する円形領域内に曲面部が設けられた基板とを備え、
    前記支持枠の前記開口部が八角形に形成され
    前記可撓性部材は、前記反射面が平坦な状態で前記開口部および前記空間を覆うように、前記支持枠に支持されており、
    前記基板の前記曲面部は、前記可撓性部材が弾性変形して該曲面部に密着することにより、前記開口部を介して前記反射面へ入射する光に予め定められた収差を与えるように形成されていることを特徴とする変形可能ミラー。
  2. 前記支持枠は、{100}面、及び〔110〕方位のオリエンテーションフラットに対して平行な辺を有する請求項1に記載の変形可能ミラー。
  3. 請求項2に記載の変形可能ミラー製造方法であって
    単結晶Si基板を、八角形の開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し
    該エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の相互に平行な2つの辺と該2つの辺に垂直な2つの辺との4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿った状態になるとともに、該開口の正八角形の他の4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする変形可能ミラーの製造方法。
  4. 前記エッチング工程の前に、前記単結晶SI基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶SI基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成する請求項3に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  5. 前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の前記{110}面に沿う4つの辺の長さが相互に等しく、かつ該八角形の前記{100}面に沿う他の4つの辺の長さが相互に等しい請求項3に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  6. 前記エッチングマスクにおける前記開口部の八角形の前記{110}面に沿う4つの辺のそれぞれの長さをAとし、かつ該八角形の前記{100}面に沿う他の4つの辺のそれぞれの長さをBとすると、A<Bである請求項5に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  7. 前記支持枠の厚みをTとし、支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L>2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、
    前記エッチングマスクにおける前記開口の八角形の各辺の長さA及びBは、次式(1)及び(2)で表される請求項5に記載の変形可能ミラーの製造方法。
    A=L−2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(1)
    B=L+2*T*(1/tan(54.7°)+√(2) )±6% …(2)
  8. 請求項2に記載変形ミラーの製造方法において、
    単結晶Si基板を、四角形の開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し、
    該エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形の4つの辺が、前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする変形可能ミラーの製造方法。
  9. 前記エッチング工程の前に、前記単結晶Si基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶Si基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成する請求項8に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  10. 前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形は、正方形である請求項8に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  11. 前記支持枠の厚みをTとし、該支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L=2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、
    前記エッチングマスクにおける前記開口の正方形の一辺の長さCは、次式(3)で表される請求項10に記載の変形可能ミラーの製造方法。
    C=4*T*(1/tan(54.7°)+√(2))±6% …(3)
  12. 請求項2に記載の変形可能ミラー製造方法において、
    単結晶Si基板を、開口を有するエッチングマスクによって被覆して、単結晶Si基板をウェットエッチングすることによって前記支持枠の開口部を形成するエッチング工程を包含し、
    前記エッチングマスクの前記開口は、四角形の領域と、この四角形の領域の各角からそれぞれ対角線方向に沿って放射状に延びるくさび形領域とを有し、
    前記エッチング工程において、前記エッチングマスクにおける前記開口の相互に対向する各くさび形領域の頂点同士を結ぶ対角線のそれぞれが前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{110}面に沿った状態であって、前記エッチングマスクにおける前記開口の四角形の領域の各辺が前記単結晶Si基板の表面とは垂直な{100}面に沿った状態になるように、前記エッチングマスクを配置することを特徴とする変形ミラーの製造方法。
  13. 前記エッチング工程の前に、前記単結晶Si基板に可撓性部材を積層する工程を包含し、前記エッチング工程において、該可撓性部材をエッチングせずに、前記単結晶Si基板をエッチングすることによって、前記支持枠の開口部を形成する請求項12に記載の変形可能ミラーの製造方法。
  14. 前記支持枠の厚みをTとし、該支持枠における前記開口部八角形の各辺の長さの平均値をLとし、L<2*T*(1/tan(54.7°)+√(2))とすると、
    前記エッチングマスクにおける前記開口の相互に対向する各くさび形領域の頂点同士を結ぶ対角線のそれぞれの長さD、該開口における四角形の領域の相互に対向する各辺の離間距離E、及び四角形の領域における各くさび形領域間に位置する各辺の長さFは、次式(4)、(5)及び(6)で表される請求項12に記載の変形可能ミラーの製造方法。
    D=L*(1+√(2))+2*T/tan(54.7°)±6% …(4)
    E=L*(1+√(2))−2*T±6% …(5)
    F=L …(6)
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