JP3766985B2 - 高純度ジシクロペンタジエンの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ナフサを熱分解して得られるC5 留分を原料として高純度のジシクロペンタジエンを効率よく製造する方法に関する。特に、C5 留分を原料とするイソプレンの製造プラントにおいて、イソプレンよりも少ない量のジシクロペンタジエンを副生成物として製造する場合に、高純度ジシクロペンタジエンを最も効率的に製造することができる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ナフサを熱分解して得られるC5 留分からジシクロペンタジエン(以下「DCPD」という)を製造する方法が知られている。
ここに、DCPDを製造するためのC5 留分には、15重量%前後のイソプレン、13重量%前後のシクロペンタジエン(以下「CPD」という)、7重量%前後のDCPDが含有されている。C5 留分の組成の一例を下記表1に示す。
【0003】
【表1】
【0004】
上記表1に示すような組成のC5 留分からDCPDを得るに場合には、通常、C5 留分中に13重量%前後の割合で含まれているCPDを二量化してDCPDとする二量化処理が行われる。この二量化処理については、反応条件などに関し、以下に示すように種々の検討がなされている。
【0005】
(1)米国特許第2,704,778号には、温度82〜104℃、滞留時間4〜12時間の条件でCPDを含有する系を滞留させることにより、当該CPDの80〜90重量%が二量化されることが記載されている。そして、二量化処理後の系に含まれるDCPDの重量をWD 、CPDの重量をWC とするとき、「WD /(WC +WD )」の値は0.8以上と計算される。
【0006】
(2)特公昭46−37334号公報には、100〜150℃の範囲で反応温度を変えて二量化処理を行った結果、反応温度が130℃を超えると、CPDの二量化速度は速くなるものの、CPDとイソプレンとの共二量体およびCPDとピペリレンとの共二量体であるプロペニルノルボルネン(以下「PNB」という)が生成しやすくなり、DCPDの収率が減少する傾向にあるので、130℃以下の反応が好ましいと記載され、具体的な反応条件として、反応温度130℃、反応時間6時間の実施例が示されている。そして、二量化処理後の系に含まれるDCPDの重量をWD 、CPDの重量をWC とするとき、「WD /(WC +WD )」の値は、反応温度が100℃のときに0.92、反応温度が130℃のときに0.96と計算される。
【0007】
(3)特開平5−78263号公報には、DCPDの生成率をできるだけ高く、かつ、CPDとジオレフィンとの共二量体等の生成率をできるだけ低くする観点から、反応温度80〜110℃、反応時間2〜6時間の反応条件が示されている。そして、二量化処理後の系に含まれるDCPDの重量をWD 、CPDの重量をWC とするとき、「WD /(WC +WD )」の値は0.72と計算される。
【0008】
上記(1)〜(3)に記載の従来技術によれば、DCPDの生産率がある程度高く、生産性の向上を図る観点からは好ましい。
【0009】
しかしながら、上記(1)〜(3)の技術を含めて従来の製造方法においては、C5 留分の二量化処理によって、DCPDの沸点に極めて近い沸点を有するためにDCPDからの分離が困難な共二量体、特にPNBが多量に生成される。
このため、最終的に得られるDCPD製品の純度を高めることが困難となり、高純度DCPDを効率的に製造することができない。
【0010】
例えば上記(2)の方法において、二量化処理後の系に含まれるPNB(「低沸コダイマ」と記載されている分を推定)の重量をWP 、DCPDの重量をWD とするとき、「WP /(WP +WD )」の値は、反応温度が100℃のときに0.084、反応温度が130℃のときに0.229とされている。
また、上記(3)の方法において、「WP /(WP +WD )」の値は0.041と計算される。
【0011】
このように、従来の製造方法においては、生産性の向上を図る観点から、高温・短時間の反応条件でCPDの二量化処理が行われており、斯かる反応条件では、DCPDの生成率を高めることができるが、これに伴い、PNB等の共二量体の生成率も増加してしまう。そして、分離され難い共二量体の増加によってDCPDの純度を高めることが困難となり、高純度のDCPDを効率的に製造することができない、という問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、高純度のDCPDを効率的に製造する方法を提供することにある。本発明の他の目的は、C5 留分を原料とするイソプレンの製造プラントにおいて、イソプレンよりも少ない量のDCPDを副生成物として製造する場合の方法として好適な高純度DCPDの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、C5 留分中に含まれるCPDの二量化処理を特定の反応条件下で行って、当該C5 留分中に存在するDCPD、CPDおよびPNBの割合を、特定の関係式を満足するよう制御することにより、最終的に得られるDCPD製品の純度を容易に高めることができることを見出し、斯かる知見に基いて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の高純度DCPDの製造方法は、ナフサを熱分解して得られるC5 留分を25〜45℃の温度で20〜200時間滞留させることにより、このC5 留分中に含まれるシクロペンタジエンを二量化してジシクロペンタジエンとする二量化処理工程と、この二量化処理工程を経て得られる前記C 5 留分を精製する精製処理工程とを有し、
前記二量化処理工程を経て得られる前記C5 留分中には、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンおよびプロペニルノルボルネンが、それぞれ、下記の式(I)〜(II)を満足する割合で含まれており、
式(I) WP /(WP +WD )≦0.035
式(II) 0.45≦ WD /(WC +WD )≦0.65
〔式中、WP 、WD およびWC は、それぞれ、C5 留分中に含まれているプロペニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンタジエンの重量を表す。〕
前記精製処理工程では、前記二量化処理工程を経て得られるC 5 留分を、ジシクロペンタジエンの純度が96.5重量%以上になるまで精製することを特徴とする。
【0015】
本発明の製造方法においては、二量化処理工程を経て得られるC5 留分を、DCPDの純度が75重量%以上になるまで常圧蒸留によって精製する精製工程(A)と、この精製工程(A)を経て得られる留分を、DCPDの純度が95重量%以上になるまで減圧蒸留によって精製する精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分からDCPDよりも沸点の高い物質を分離除去することにより、DCPDの純度が96.5重量%以上になるまで精製する精製工程(C)とを有していることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては、前記精製工程(A)と、前記精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分からDCPDよりも沸点の低い共二量体等を分離除去することにより、DCPDの純度が98重量%以上になるまで精製する精製工程(D)と、この精製工程(D)を経て得られる留分からDCPDよりも沸点の高い物質を分離除去することにより、DCPDの純度が99重量%以上になるまで精製する精製工程(E)とを有していることが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法においては、前記精製工程(A)と、前記精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分を150〜250℃の温度で加熱することにより、この留分中に含まれるDCPDを熱分解してCPDとし、次いで、80〜120℃の温度でこの系を滞留させることにより、この系に含まれるCPDを二量化してDCPDとすることにより、DCPDの純度が99重量%以上になるまで精製する精製工程(F)とを有していることが好ましい。
【0018】
【作用】
C5 留分中に含まれるCPDの二量化処理を、従来の製造方法より低温・長時間である特定の反応条件で実施することにより、当該二量化処理工程を経て得られるC5 留分は、DCPDからの分離が困難なPNBの含有割合が少ないものとなり、その結果、最終的に得られるDCPD製品の純度を高めることができる。
【0019】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、特定の反応条件下でCPDを二量化処理する二量化処理工程と、DCPDの純度を高めるための精製処理工程とに大別される。
【0020】
<二量化処理工程>
二量化処理工程における処理温度(反応温度)は25〜45℃とされ、好ましくは30〜40℃とされる。処理温度が25℃未満であると、DCPDの生成率が低くなって生産性の観点から好ましくない。一方、処理温度が45℃を超えると、PNBの生成率が増加して最終的に得られるDCPD製品の純度を高めることができない。
【0021】
二量化処理工程における滞留時間(反応時間)は20〜200時間とされ、好ましくは50〜150時間とされる。滞留時間が20時間未満であると、DCPDの生成率が低くなって生産性の観点から好ましくない。一方、滞留時間が200時間を超えると、PNBの生成率が増加して最終的に得られるDCPD製品の純度を高めることができない。
【0022】
二量化処理に供されるC5 留分の組成としては、上記表1に示した典型的組成を挙げることができるが、C5 留分の組成は、熱履歴等によって経時的に変化するため、処理温度や滞留時間などの処理条件は、C5 留分の組成に応じて、25〜45℃、20〜200時間の範囲内において適宜変更することができる。
【0023】
本発明における二量化処理は、従来の製造方法よりも低温条件で行われ、また、滞留時間も比較的長いので、C5 留分の貯蔵タンク内において処理することができる。そして、貯蔵タンクを利用する場合には、二量化処理のための設備や加熱手段を特別に設ける必要はないので、この点からも効率的かつ経済的である。
【0024】
二量化処理工程を経て得られるC5 留分において、このC5 留分中に含まれるPNBとDCPDとの合計重量に対するPNBの重量の比〔WP /(WP +WD )〕は0.035以下とされる。この重量比が0.035を超える場合には、最終的に得られるDCPD製品の純度を高めることができない。
【0025】
また、C5 留分中に含まれるCPDとDCPDとの合計重量に対するDCPDの重量の比〔WD /(WC +WD )〕は0.45以上0.65以下とされる。この重量比が0.45未満である場合にはDCPDの生産性の観点から好ましくない。一方、この重量比が0.65を超えるような反応条件によって二量化処理を行うと、前記〔WP /(WP +WD )〕の値が0.035を超えてしまう。
【0026】
本発明の製造方法は、C5 留分を原料とするイソプレンの製造プラントにおいて、イソプレンよりも少ない量のDCPDを副生成する場合に、高純度DCPDを最も効率的に製造することができる。
【0027】
通常、C5 留分中におけるイソプレンの含有量と、DCPDおよびCPDの合計含有量とを比較すると、両者は同量か、後者(DCPDおよびCPDの合計含有量)が若干多い程度である(表1に示す組成においては、前者が15.0重量%、後者が19.8重量%である。)。
【0028】
そのため、二量化処理工程を経た後におけるC5 留分について、重量比〔WD /(WC +WD )〕を0.65以下に制御することは、イソプレンよりも少ない量のDCPDを製造することになる(例えば、表1に示す組成のC5 留分について、WD /19.8≦0.65とすると、WD ≦12.87重量%となり、この割合はイソプレンの生成量である15.0重量%よりも少ない。)。
【0029】
<精製処理工程>
本発明の製造方法を構成する精製処理工程は、DCPDの純度を高めるための工程であり、以下に詳述する精製処理工程〔イ〕、精製処理工程〔ロ〕および精製処理工程〔ハ〕を挙げることができる。
【0030】
<精製処理工程〔イ〕>
精製処理工程〔イ〕は、二量化処理工程を経て得られるC5 留分を、DCPDの純度が75重量%以上になるまで常圧蒸留によって精製する精製工程(A)と、この精製工程(A)を経て得られる留分を、DCPDの純度が95重量%以上になるまで減圧蒸留によって精製する精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分から、DCPDよりも沸点の高い物質を分離除去することにより、DCPDの純度が96.5重量%以上になるまで精製する精製工程(C)とを組み合わせてなる精製方法である。
【0031】
精製工程(A)は、例えば、理論段数10〜30段の蒸留塔を用い、塔頂温度を40〜60℃、塔底温度を110〜140℃に設定して常圧蒸留を行い、C5 〜C6 の未反応成分(例えばイソペンタン、n−ペンタン、C5 モノオレフィン類、1,4−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタン、シクロペンテン、C5 アセチレン類、C6 類等)、C4 以下の成分、イソプレン、CPDなどよりなる留分を塔頂から除去するとともに、75重量%以上のDCPDを含む留分を塔底から取り出す工程である。なお、ここで、「常圧」とは、圧力0〜2kg/cm2 Gの範囲を含むものとする。
【0032】
精製工程(B)は、例えば、理論段数5〜20段の蒸留塔を用い、塔頂温度を80〜110℃、塔底温度を95〜125℃に設定して、100〜250Torrの減圧下で蒸留を行い、精製工程(A)で分離除去できなかったC5 〜C6 の未反応成分、イソプレン、CPDなどよりなる留分を塔頂から除去するとともに、95重量%以上のDCPDを含む留分を塔底から取り出す工程である。
なお、上記の精製工程(A)および精製工程(B)において、蒸留塔の塔頂から除去されたC5 〜C6 留分は、イソプレンの製造原料として用いられる。
【0033】
精製工程(C)は、例えば、理論段数3〜10段の蒸留塔を用い、塔頂温度を90〜120℃、塔底温度を95〜125℃に設定して、80〜200Torrの減圧下で蒸留を行い、DCPDよりも沸点の高い物質を含む留分を塔底から除去するとともに、96.5重量%以上のDCPDを含む留分を塔頂から取り出す工程である。なお、この留分中に3.5重量%未満の割合で含まれる不純物の大部分はPNBである。
【0034】
<精製処理工程〔ロ〕>
精製処理工程〔ロ〕は、前記精製工程(A)と、前記精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分から、DCPDよりも沸点の低い共二量体等を分離除去することにより、DCPDの純度が98重量%以上になるまで精製する精製工程(D)と、この精製工程(D)を経て得られる留分から、DCPDよりも沸点の高い物質を分離除去することにより、DCPDの純度が99重量%以上になるまで精製する精製工程(E)とを組み合わせてなる精製方法である。
【0035】
精製工程(D)は、例えば、理論段数50〜100段の蒸留塔を用い、塔頂温度を40〜100℃、塔底温度を90〜120℃に設定して、10〜100Torrの減圧下で蒸留を行い、DCPDよりも沸点の低い共二量体等を含む留分を塔頂から除去するとともに、98重量%以上のDCPDを含む留分を塔底から取り出す工程である。
【0036】
精製工程(E)は、前記精製処理工程〔イ〕の精製工程(C)と同様の操作を行って、99重量%以上のDCPDを含む留分を蒸留塔の塔頂から取り出す工程である。
【0037】
<精製処理工程〔ハ〕>
精製処理工程〔ハ〕は、前記精製工程(A)と、前記精製工程(B)と、この精製工程(B)を経て得られる留分を150〜250℃の温度で加熱することにより、この留分中に含まれるDCPDを熱分解してCPDとし、次いで、80〜120℃の温度でこの系を滞留させることにより、この系に含まれるCPDを二量化してDCPDとすることにより、DCPDの純度が99重量%以上になるまで精製する精製工程(F)とを組み合わせてなる精製方法である。
【0038】
精製工程(F)は、例えば、以下のようにして行われる。
▲1▼ 精製工程(B)を経て得られる留分を、予熱器などに通すことにより130〜230℃に加温する。
▲2▼ 加温された留分を、理論段数3〜10の蒸留塔が連結されてなる攪拌機付の熱分解器に供給し、温度150〜250℃、圧力−0.5〜0.5kg/cm2 Gの条件で滞留させる。2〜8時間滞留させた後、熱分解器の底部に設けられた取出口から熱分解残渣(重質分)を取り出して除去するとともに、例えば温度20〜55℃に設定された蒸留塔の塔頂から熱分解によって生成したCPDを含む留分を取り出す。
▲3▼ 塔頂から取り出したCPDを含む留分を、例えば管型の二量化反応器に供給して80〜120℃の温度で2〜10時間滞留させることによってCPDを二量化してDCPDとし、これによって、純度が99重量%以上のDCPDが得られる。なお、必要に応じて、このDCPDに極微少量含まれている軽質分や重質分を除去するための蒸留操作を行ってもよい。
【0039】
以上の精製処理工程における蒸留操作および熱分解操作において、DCPDの純度が75重量%以上となる系には、DCPDの酸化を防止するために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、t−ブチルカテコール等の酸化防止剤を添加することが好ましい。斯かる酸化防止剤の添加量としては、系に対して10〜1000ppmとされ、好ましくは50〜500ppmとされる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を意味する。
【0041】
<実施例1>
(1)二量化処理工程
上記の表1に示した組成のC5 留分を、予熱器に通して35℃に加温した後、当該温度に保温された容器内に供給して80時間滞留させることにより、このC5 留分中に含まれるCPDを二量化してDCPDとする二量化処理を行った。
二量化処理前後におけるC5 留分の組成を下記表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
二量化処理後のC5 留分において、PNBとDCPDとの合計重量に対するPNBの重量の比〔WP /(WP +WD )〕は0.026であり、CPDとDCPDとの合計重量に対するDCPDの重量の比〔WD /(WC +WD )〕は0.57であった。
【0044】
(2)精製処理工程〔イ〕
▲1▼ 精製工程(A)
二量化処理工程によって得られたC5 留分1000部を、圧力0.9kg/cm2 Gに保持された理論段数22段の蒸留塔に連続的に供給し、塔頂温度50℃、還流比0.3、塔底温度130℃の操作条件で常圧蒸留を行い、不純物を含む留分861部を塔頂から除去するとともに、DCPDを含む留分139部を塔底から取り出した。塔底から取り出した留分の組成を表3に示す。表3に示すように、この精製工程(A)によりDCPDの割合は80.5重量%となった。
【0045】
▲2▼ 精製工程(B)
精製工程(A)において蒸留塔の塔底から取り出した留分139部に、t−ブチルカテコールのDCPD溶液(濃度10重量%)0.14部(酸化防止剤として100ppm)を連続的に添加し、この留分を、圧力160Torrに保持された理論段数8段の蒸留塔に連続的に供給し、塔頂温度98℃、還流比3.1、塔底温度116℃の操作条件で減圧蒸留を行い、不純物を含む留分24部を塔頂から除去するとともに、DCPDを含む留分115部を塔底から取り出した。塔底から取り出した留分の組成を併せて表3に示す。表3に示すように、この精製工程(B)によりDCPDの割合は96.5重量%となった。
【0046】
▲3▼ 精製工程(C)
精製工程(B)において蒸留塔の塔底から取り出した留分115部を、圧力110Torrに保持された理論段数6段の蒸留塔に連続的に供給し、塔頂温度107℃、還流比0.3、塔底温度108℃の操作条件で減圧蒸留を行い、不純物(高沸点物質)を含む留分8部を塔底から除去するとともに、DCPDを含む留分107部を塔頂から取り出した。なお、この減圧蒸留に際しては、蒸留塔の塔頂のコンデンサー入口から、t−ブチルカテコールのDCPD溶液(濃度10重量%)0.11部(酸化防止剤として100ppm)を連続的に添加した。塔頂から取り出した留分の組成を併せて表3に示す。表3に示すように、この精製工程(C)によりDCPDの割合は97.2重量%となり、高純度のDCPDが得られた。
【0047】
【表3】
【0048】
<実施例2>
(1)二量化処理工程
実施例1の二量化処理工程と同様の操作を行って、上記表2(二量化処理後)に示す組成のC5 留分を得た。
【0049】
(2)精製処理工程〔ロ〕
▲1▼ 精製工程(A)
実施例1の精製工程(A)と同様の操作を行って、DCPDを80.5重量%の割合で含む留分139部を得た。
【0050】
▲2▼ 精製工程(B)
実施例1の精製工程(B)と同様の操作を行って、DCPDを96.5重量%の割合で含む留分115部を得た。
【0051】
▲3▼ 精製工程(D)
精製工程(B)において蒸留塔の塔底から取り出した留分115部に、t−ブチルカテコールのDCPD溶液(濃度10重量%)0.12部(酸化防止剤として100ppm)を連続的に添加し、この留分を、圧力20Torrに保持された理論段数75段の蒸留塔に連続的に供給し、塔頂温度60℃、還流比20、塔底温度105℃の操作条件で減圧蒸留を行い、不純物(共二量体)を含む留分23部を塔頂から除去するとともに、DCPDを含む留分92部を塔底から取り出した。塔底から取り出した留分の組成を併せて表4に示す。表4に示すように、この精製工程(D)によりDCPDの割合は98.9重量%となった。
【0052】
▲3▼ 精製工程(E)
精製工程(D)において蒸留塔の塔底から取り出した留分92部を、圧力110Torrに保持された理論段数6段の蒸留塔に連続的に供給し、塔頂温度107℃、還流比1.0、塔底温度109℃の操作条件で減圧蒸留を行い、不純物(高沸点物質)を含む留分10部を塔底から除去するとともに、DCPDを含む留分82部を塔頂から取り出した。なお、この減圧蒸留に際しては、蒸留塔の塔頂のコンデンサー入口から、t−ブチルカテコールのDCPD溶液(濃度10重量%)0.08部(酸化防止剤として100ppm)を連続的に添加した。塔頂から取り出した留分の組成を併せて表4に示す。表4に示すように、この精製工程(E)によりDCPDの割合は99.7重量%となり、極めて高純度のDCPDが得られた。
【0053】
【表4】
【0054】
<実施例3>
(1)二量化処理工程
実施例1の二量化処理工程と同様の操作を行って、上記表2(二量化処理後)に示す組成のC5 留分を得た。
【0055】
(2)精製処理工程〔ハ〕
▲1▼ 精製工程(A)
実施例1の精製工程(A)と同様の操作を行って、DCPDを80.5重量%の割合で含む留分139部を得た。
【0056】
▲2▼ 精製工程(B)
実施例1の精製工程(B)と同様の操作を行って、DCPDを96.5重量%の割合で含む留分115部を得た。
【0057】
▲3▼ 精製工程(F)
精製工程(B)において蒸留塔の塔底から取り出した留分115部を予熱器を通して180℃に加温し、加温された留分を、理論段数6段の蒸留塔が上部に連結されてなる攪拌機付の熱分解器に供給し、温度180℃で5時間滞留させた後、熱分解器の底部に設けられた取出口から熱分解残渣(重質分)20部を取り出して除去するとともに、蒸留塔の塔頂から熱分解によって生成したCPDを含む留分95部を取り出した。なお、蒸留塔は、大気圧下、塔頂温度41℃、還流比0.5の条件で行われ、また、蒸留に際しては、塔頂のコンデンサー入口から、t−ブチルカテコールのDCPD溶液(濃度10重量%)0.10部(酸化防止剤として100ppm)を連続的に添加した。
次に、蒸留塔の塔頂から得られたCPDを含む留分95部を、予熱器を通して100℃に保持された管型反応器内に供給して6時間滞留させることによりCPDの二量化反応を行わせた。このようにして得られた生成系の組成を表5に示す。表5に示すように、この精製工程(F)によりDCPDの割合は99.5重量%となり、極めて高純度のDCPDが得られた。さらに、CPDも加えたDCPDの純度は99.9重量%であった。
【0058】
【表5】
【0059】
<比較例1>
(1)二量化処理工程
上記の表1に示した組成のC5 留分を、予熱器を通して100℃に加温した後、当該温度に保持された管型反応器内に供給して4時間滞留させることにより、このC5 留分中に含まれるCPDを二量化してDCPDとする二量化処理を行った。二量化処理前後におけるC5 留分の組成を下記表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
二量化処理後のC5 留分において、PNBとDCPDとの合計重量に対するPNBの重量の比〔WP /(WP +WD )〕は0.049(実施例1における比の約1.9倍)であり、PNBの生成率は高いものであった。また、CPDとDCPDとの合計重量に対するDCPDの重量の比〔WD /(WC +WD )〕は0.80であった。
【0062】
(2)精製処理工程
上記の二量化処理工程により得られたC5 留分について、実施例1の精製工程(A)〜精製工程(C)と同様の操作を行い、精製工程(C)における蒸留塔の塔頂からDCPDを含む留分110部を取り出した。
塔頂から取り出した留分の組成を表7に示す。表7に示すように、DCPDの割合は94.9重量%に止まり、純度の高いDCPD製品を得ることができなかった。これは、高温・短時間の二量化処理によってPNBの生成率が高くなったからであると考えられる。
【0063】
【表7】
【0064】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、C5 留分中に含まれるCPDの二量化処理を従来の発想とは異なる特定の反応条件下で行うことにより、最終的に得られるDCPD製品の純度を容易に高めることができ、高純度のDCPDを効率的に製造することができる。
また、本発明の製造方法は、C5 留分を原料とするイソプレンの製造プラントにおいて、イソプレンよりも少ない量のDCPDを副生成物として製造する場合に、高純度DCPDを特に効率的に製造することができる。
Claims (1)
- ナフサを熱分解して得られるC5 留分を25〜45℃の温度で20〜200時間滞留させることにより、このC5 留分中に含まれるシクロペンタジエンを二量化してジシクロペンタジエンとする二量化処理工程と、この二量化処理工程を経て得られる前記C 5 留分を精製する精製処理工程とを有し、
前記二量化処理工程を経て得られる前記C5 留分中には、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンおよびプロペニルノルボルネンが、それぞれ、下記の式(I)〜(II)を満足する割合で含まれており、
式(I) WP /(WP +WD )≦0.035
式(II) 0.45≦ WD /(WC +WD )≦0.65
〔式中、WP 、WD およびWC は、それぞれ、C5 留分中に含まれているプロペニルノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンタジエンの重量を表す。〕
前記精製処理工程では、前記二量化処理工程を経て得られるC 5 留分を、ジシクロペンタジエンの純度が96.5重量%以上になるまで精製することを特徴とする高純度ジシクロペンタジエンの製造方法。
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