JP3765240B2 - プリンタ装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、揺動板上に載置された記録紙を、該揺動板の揺動により押し上げて給紙ローラに押し付け、該給紙ローラの回転により分離して搬送路に送り出す給紙機構を備えるプリンタ装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
インクジェットプリンタ等、搬送路に沿って搬送される記録紙の表面に、該搬送路と略直交する方向に移動する記録ヘッドの動作により所望の画像を形成するプリンタ装置は、前記搬送路の始端に設けた給紙部にセットされた記録紙を、一枚毎に分離して搬送路に送り込むための給紙機構を備えている。
【０００３】
図７は、一般的な給紙機構を備えるプリンタ装置の内部構成を模式的に示す側断面図であり、記録ヘッドとしてのインクヘッド１は、本体ハウジングＨの内部に横架されたガイド棒10に沿って移動するキャリッジ11に搭載され、該キャリッジ11と共に紙面と直交する方向に移動しつつ、下向きにインク粒を噴射するようになしてある。このようなインクヘッド１の移動経路の下方には、プラテン12が対向配置されており、該プラテン12の両側には、給紙ローラ２及び排紙ローラ３を備える搬送路が延設されている。
【０００４】
図７中には、給紙ローラ２の回転軸の一端に取付けられた給紙ギヤ2aが示してあり、該給紙ギヤ2aは、本体ハウジングＨの底部に固設されたモータＭの出力端のモータギヤ2bに、駆動ギヤ2c及び中間ギヤ2dを介して噛合させてある。排紙ローラ３も同様に、前記モータＭの出力端に図示しないギヤ列を介して噛合させてあり、給紙ローラ２及び排紙ローラ３は、前記モータＭからの伝動により夫々の軸回りに回転駆動されるようになしてある。
【０００５】
給紙ローラ２の下方には、本体ハウジングＨ内に横架された枢軸40回りに揺動する揺動板４が配してあり、該揺動板４の上部には、複数枚の記録紙Ｐ，Ｐ…が積載保持されている。
【０００６】
図８は、揺動板４の揺動機構の説明図である。この揺動機構は、Ｌ字形に屈曲成形され、揺動板４の幅方向一側に配された押し上げリンク4aを備えている。該押し上げリンク4aは、その屈曲部を本体ハウジングＨの底面上に枢支ピン4bにより枢支し、底面に沿って延びる短辺の先端を揺動板４の下部に差し込み、略垂直に立ち上がる長辺の上端を、前記ガイド棒10に沿って移動するインクヘッド１の移動経路の一側に臨ませて取付けられている。
【０００７】
押し上げリンク4aの上端が位置する前記移動経路の端部は、キャリッジ11と共に移動するインクヘッド１が画像形成動作の開始前に位置すべく設定された待機域内にあり、前記押し上げリンク4aは、前記待機域に移動したキャリッジ11の一部により押圧され、図中に２点鎖線により示す如く、前記枢支ピン4bを枢軸として揺動する。この揺動により、押し上げリンク4aの短辺は、揺動板４への係合端を上昇させるように傾倒し、該揺動板４が前記枢軸40の回りに揺動し、上部に載置された記録紙Ｐ，Ｐ…が押し上げられ、図７（ｂ）に示す如く、上部の給紙ローラ２に押し付けられる。
【０００８】
給紙ローラ２は、前記モータＭからの伝動により画像形成動作に先立って回転しており、揺動板４の揺動により押し付けられる最上部の記録紙Ｐは、給紙ローラ２の周面との間の摩擦により繰り出され、該給紙ローラ２の周面に沿って上方に転回されて前記プラテン12上に送り込まれる。インクヘッド１は、この送り込みにタイミングに合わせて前記待機域を起点として移動を開始し、この移動の間に下向きに噴射されるインク粒によりプラテン12上の記録紙Ｐに所望の画像が形成される。画像形成を終えた記録紙Ｐは、前記排紙ローラ３の回転により、本体ハウジングＨに開口する排紙口13を経て送り出され、該排紙口13の開口位置に合わせて本体ハウジングＨの外面に取付けた排紙トレイ14上に排出される。
【０００９】
給紙ローラ２への記録紙Ｐ，Ｐ…の押し付けは、前記待機位置からのインクヘッド１の離反により、図８中に実線により示す如く、押し上げリンク4aが原位置に復帰し、揺動板４が下降することにより解除される。なお、揺動板４の下面と本体ハウジングＨの底面との間にばね等の緩衝手段を介装し、前記下降を緩やかに行わせることができる。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、以上の如く構成されたプリンタ装置においては、揺動板４により押し上げられた記録紙Ｐ，Ｐ…が、回転状態にある給紙ローラ２の周面に押し付けられるため、この押し付け状態が安定せず、幅方向に不均一な押し付けがなされた場合、搬送路に対して傾いた姿勢にて記録紙Ｐが送り出される現象（以下斜送という）が発生し、プラテン12上での画像形成が良好になされないという不具合があり、更に、前記斜送の程度が大きい場合、搬送路の中途に設けたガイド手段と記録紙Ｐが接触して紙詰まりを招来する虞れがある。
【００１１】
また、記録紙Ｐの幅方向の押し付けが均一になされた場合であっても、この押し付け力が過大となった場合、給紙ローラ２に接触する記録紙Ｐの裏面に他の記録紙Ｐが重なって送り出される現象（以下重送という）が発生し、搬送路の中途での紙詰まりを招来する虞れがある。
【００１２】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、揺動板上に載置された記録紙を、該揺動板の揺動により給紙ローラに押し付けて搬送路に送り出す給紙機構を備える構成において、待機域での記録ヘッドの移動を利用することにより、給紙ローラへの記録紙の押し付けを安定して行わせ、前記斜送及び重送を含む送り異常の発生を未然に防止し得るプリンタ装置を提供することを目的とする。
【００１３】
【課題を解決するための手段】
本発明の第１発明に係るプリンタ装置は、上部に載置された記録紙を、その揺動により上げ下げする揺動板と、該揺動板により押し上げられた記録紙の表面に転接して回転し、該記録紙を搬送路に送り出す給紙ローラと、前記搬送路と交叉する移動経路に沿って移動し、該搬送路上の記録紙に画像を形成する記録ヘッドとを備えるプリンタ装置において、駆動モータからの伝動により回転する駆動ギヤと、前記揺動板の揺動軸に取付けた揺動ギヤ及び前記給紙ローラの回転軸に取付けた給紙ギヤと、前記移動経路の一側に設定された待機域での前記記録ヘッドの移動に応じて、該記録ヘッドに設けた押圧突起の作用により前記揺動ギヤ及び給紙ギヤとの噛合を保って変位し、前記駆動ギヤに選択的に噛合する従動ギヤとを有し、前記揺動板の揺動と前記給紙ローラの回転とを選択的に切り換える切換え手段を備えることを特徴とする。
【００１４】
本発明においては、記録紙の上げ下げのための揺動板の揺動と、記録紙の送り出しのための給紙ローラの回転とを、画像形成動作前の待機域内での記録ヘッドの移動に機械的に応動する切換え手段、具体的には、駆動モータからの伝動により回転する駆動ギヤと、揺動板駆動用の揺動ギヤ及び給紙ローラ駆動用の給紙ギヤとの間に、記録ヘッドに設けた押圧突起の機械的な作用により揺動ギヤ及び給紙ギヤとの噛合状態を保って変位し、駆動ギヤとの噛み合いを変える従動ギヤを備える簡素な構成の機械的な切換え手段の動作により選択的に切り換えて確実に行わせ、揺動板の揺動により押し上げた記録紙を非回転中の給紙ローラの表面に押し付け、安定した押し付け状態を得た後に給紙ローラを回転させて、斜送、重送等の送り異常の発生を防止する。
【００１５】
また第２発明に係るプリンタ装置は、前記搬送路への記録紙の送り出しを検知する給紙センサと、該給紙センサの検知に応じて前記記録ヘッドを前記待機域から離脱させ、記録動作を行わせる制御手段とを備え、第１発明における切換え手段が、前記待機域からの離脱に応じて前記揺動板を下げ方向に揺動させる構成としてあることを特徴とする。
【００１６】
この発明においては、給紙ローラの回転による搬送路への記録紙の送り出しを給紙センサにより検知し、この検知に応じた記録ヘッドの待機域からの離脱に応じて揺動板を下げ方向に揺動させて記録紙の押し付けを解除し、後続する記録紙の重送を防止する。
【００１７】
また第３発明に係るプリンタ装置は、前記揺動板の揺動と前記給紙ローラの回転とを、共通の駆動モータからの伝動により行わせる構成としてあることを特徴とする。
【００１８】
この発明においては、揺動板及び給紙ローラの駆動モータを共通とし、伝動系の構成を簡素化し、装置のコンパクト化を図る。
【００２１】
また第４発明に係るプリンタ装置は、第１〜第３発明における駆動ギヤが、前記駆動モータの動作中、常時回転状態を保つ構成としてあることを特徴とする。
【００２２】
この発明においては、駆動モータからの伝動により常時回転状態を保つ駆動ギヤを備え、この駆動ギヤへの選択的な噛合により揺動板の揺動及び給紙ローラの回転を行わせ、負荷変動を伴う駆動モータの無為な回転及び停止の繰り返しを不要とする。
【００２３】
更に第５発明に係るプリンタ装置は、第１〜第４発明における従動ギヤが、前記押圧突起の作用により軸長方向に変位する変位筒と、該変位筒に軸長方向への移動不可に遊嵌保持され、前記揺動ギヤ及び給紙ギヤに夫々噛合する一対のリングギヤとを備えることを特徴とする。
【００２４】
この発明においては、揺動ギヤ及び給紙ギヤに夫々噛合する一対のリングギヤを非回転の変位筒の外側に遊嵌保持させて従動ギヤを構成し、記録ヘッドの押圧突起からの作用力を変位筒に加えることにより、夫々のリングギヤを一括して変位させ、記録ヘッドの移動に応じた切換え動作を確実に行わせる。
【００２５】
【発明の実施の形態】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図１及び図２は、本発明に係るプリンタ装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。なお、これらに図示するプリンタ装置は、極小径のインク粒を噴射するインクヘッドを記録ヘッドとして備えるインクジェットプリンタとして構成されているが、本発明は、記録紙の搬送路に略直交する向きに移動しつつ画像形成動作を行う記録ヘッドを備えるプリンタ装置全般に適用可能であることは言うまでもない。
【００２６】
図中１は、記録ヘッドとしてのインクヘッドである。該インクヘッド１は、本体ハウジングＨの内部に横架されたガイド棒10にキャリッジ11を介して支持されており、該キャリッジ11と共に前記ガイド棒10に沿って移動しつつ、下向きにインク粒を噴射するようになしてある。
【００２７】
このようなインクヘッド１の移動経路の下方には、プラテン12が対向配置されており、該プラテン12の両側には、インクヘッド１の移動経路と平行をなす軸回りに回転する給紙ローラ２及び排紙ローラ３が配してある。排紙ローラ３側の本体ハウジングＨの周壁には排紙口13が開設され、該排紙口13の開口部の外側には排紙トレイ14が取付けられており、前記給紙ローラ２、プラテン12、排紙ローラ３及び排紙口13により、前記インクヘッド１の移動経路と略直交する向きに延設され、排紙トレイ14に至る搬送路が形成されている。
【００２８】
給紙ローラ２の下方には、本体ハウジングＨの内部に横架された枢軸40回りに揺動する揺動板４が配してあり、該揺動板４の上部には、複数枚の記録紙Ｐ，Ｐ…が積載保持されている。これらの記録紙Ｐ，Ｐ…は、前記揺動板４の揺動によって上げ下げされる。図１には、揺動板４上の記録紙Ｐ，Ｐ…の下動時の状態が示され、図２には、同じく上動時の状態が示されており、揺動板４の揺動により押し上げられた記録紙Ｐ，Ｐ…は、図２に示す如く、上方に対向する給紙ローラ２の周面に押し付けられる。
【００２９】
以上の構成は、図７に示すプリンタ装置と同様であり、揺動板４の上動により給紙ローラ２に押し付けられる記録紙Ｐ，Ｐ…は、給紙ローラ２の周面の摩擦により最上部の一枚のみが繰り出され、該給紙ローラ２の周面に沿って上方に転回されて前記搬送路に送り込まれる。
【００３０】
この送り込みは、給紙ローラ２の出側に配した給紙センサＳにより検知されており、この検知に応じてインクヘッド１は、前記移動経路の一側に設定された待機域を起点とし、ガイド棒10に沿って移動を開始し、下方に対向するプラテン12上に送り込まれる記録紙Ｐにインク粒を噴射する動作を行う。このようなインクヘッド１の動作により画像形成を終えた記録紙Ｐは、排紙ローラ３の回転により更に搬送され、前記排紙口13を経て本体ハウジングＨの外部に送り出されて前記排紙トレイ14上に排出される。
【００３１】
本発明に係るプリンタ装置の特徴は、前記給紙ローラ２を回転させ、また前記揺動板４を揺動させるための伝動系の構成にある。図１及び図２には、給紙ローラ２の回転軸20の一端に同軸的に嵌着された給紙ギヤ21が示してある。該給紙ギヤ21は、本体ハウジングＨの底部に固設されたモータＭの出力端のモータギヤ22に、駆動ギヤ５及び従動ギヤ６を介して後述の如く噛合させてあり、給紙ローラ２は、モータギヤ22、駆動ギヤ５及び従動ギヤ６からなるギヤ列を介して給紙ギヤ21に伝えられる前記モータＭの回転力により、回転軸20の軸回りに回転駆動されるようになしてある。なお、前記排紙ローラ３も同様に、前記モータＭの出力端に図示しないギヤ列を介して連結され、該モータＭからの伝動により回転駆動されるようになしてある。
【００３２】
また揺動板４の一側には、該揺動板４の上げ下げ用の揺動ギヤ41と揺動リンク７とが配してある。揺動ギヤ41は、前記給紙ギヤ21の回転軸20と平行をなす揺動軸42により回動自在に支持されており、前記従動ギヤ６に後述の如く噛合させてあり、モータギヤ22、駆動ギヤ５及び従動ギヤ６からなるギヤ列を介して伝えられる前記モータＭの回転力により回転駆動されるようになしてある。
【００３３】
揺動リンク７は、Ｌ字形の屈曲形状を有し、その屈曲部を本体ハウジングＨの底面上に枢支ピン70により揺動自在に枢支されており、前記底面に沿って延びる横辺の中途部は、揺動板４の一部に連結され、また前記底面から上方に立ち上がる揺動リンク７の縦辺の先端部は、連結リンク71を介して前記揺動ギヤ41の側面に連結されている。
【００３４】
以上の構成により揺動リンク７は、揺動ギヤ41の回転に応じて連結リンク71を介して押し引きされ、枢支ピン70を枢軸として揺動することとなり、この揺動に応じて揺動板４は、揺動リンク７の横辺との連結部を介して上げ下げされ、前記枢軸40の回りに揺動する。揺動板４の上部に載置された複数枚の記録紙Ｐ，Ｐ…は、揺動板４の上動により押し上げられ、前述の如く、上部に対向する給紙ローラ２の周面に押し付けられる。
【００３５】
以上の如く本発明に係るプリンタ装置においては、前記給紙ローラ２の回転と前記揺動板４の揺動とが、共通の駆動源である前記モータＭの回転力を、前記駆動ギヤ５及び従動ギヤ６を含む夫々の伝動系を介して伝えて実現されるようになっており、この伝動は、前記駆動ギヤ５及び従動ギヤ６の噛合状態を前記インクヘッド１の移動に応じて切換えることにより以下の如くに行われる。
【００３６】
図３及び図４は、前記給紙ギヤ21及び揺動ギヤ41と前記従動ギヤ６との噛合状態をインクヘッド１の移動経路と共に示す正面図である。図示の如く従動ギヤ６は、給紙ローラ２の回転軸20と平行をなす支軸60に軸長方向への摺動自在に支持された変位筒61と、該変位筒61に軸方向への移動不可に外嵌保持された一対のリングギヤ62，63とを備えてなり、一側のリングギヤ62は前記給紙ギヤ21に、他側のリングギヤ63は前記揺動ギヤ41に夫々噛合させてある。
【００３７】
前記変位筒61の一側端部には、半径方向外向きに押圧片64が突設され、前記回転軸20と平行をなすガイド棒10に沿ってキャリッジ11と共に移動するインクヘッド１の移動経路に臨ませてあり、前記キャリッジ11には、従動ギヤ６との対向部に、前記押圧片64に当接可能な押圧突起15が突設されている。このように構成された従動ギヤ６は、前記変位筒61と本体ハウジングＨの適宜の固定部との間に介装された付勢ばね65により、前記キャリッジ11との対向側（図の右側）に向けて引張り付勢されている。
【００３８】
インクヘッド１の移動経路には、従動ギヤ６の配設側（図の左側）に前述した待機域が設定されている。図３には、インクヘッド１が前記待機域から離れた画像形成動作中の状態が、図４には、インクヘッド１が前記待機域内にある画像形成動作前の状態が夫々示されている。
【００３９】
図４において従動ギヤ６は、前記待機域にあるキャリッジ11の前記押圧突起15により前記押圧片64を介して押圧され、付勢ばね65の付勢に抗して左方に変位する。一方図３において従動ギヤ６は、前記待機域から離反するキャリッジ11による押圧が解除されることから、付勢ばね65のばね力により引っ張られ、図の右方に変位する。なお、この間の従動ギヤ６の変位は、図示の如く、前記給紙ギヤ21及び揺動ギヤ41に対する噛合を維持した状態で行われ、これらの他側において前記駆動ギヤ５との噛合状態が切換えられる。
【００４０】
図５及び図６は、本発明に係るプリンタ装置における切換え動作の説明図であり、従動ギヤ６の変位に伴う駆動ギヤ５との噛合状態の変化を示している。本図に示す如く駆動ギヤ５は、従動ギヤ６の支軸60と略平行をなす回転軸50に、給紙ローラ駆動ギヤ51と揺動板駆動ギヤ52とを同軸的に嵌着して構成されている。
【００４１】
給紙ローラ駆動ギヤ51の外周には、広幅の歯部53が形成されており、該歯部53は、従動ギヤ６との非対向側においてモータＭの出力端の前記モータギヤ22に噛合させてあり、駆動ギヤ５は、前記モータギヤ22からの伝動により常時回転駆動されている。また揺動板駆動ギヤ52の外周には、軸長方向に相互に離隔した位置に、一対の狭幅の歯部54，55が形成されている。
【００４２】
図５（ａ）は、図４に示す状態、即ち、従動ギヤ６が最も左側に変位した状態を示している。このとき、従動ギヤ６のリングギヤ63が揺動板駆動ギヤ52の一側の歯部55に噛合した状態にある。リングギヤ63は、駆動ギヤ５との非対向側において前記揺動ギヤ41に噛合させてあり、図５（ａ）に示す状態となったとき、前記モータＭからの伝動による駆動ギヤ５の回転は、前記歯部55及びリングギヤ63を介して揺動ギヤ41に伝達され、該揺動ギヤ41が回転し、前記揺動リンク７の作用により揺動板４が揺動する。
【００４３】
この動作は、画像形成動作前に揺動ギヤ41を半回転させ、揺動板４上の記録紙Ｐ，Ｐ…を押し上げて給紙ローラ２に押し付けるべく行われる。このとき、給紙ギヤ21に噛合する従動ギヤ６の他方のリングギヤ62は、駆動ギヤ５の広幅の歯部53に噛合しておらず、前記記録紙Ｐ，Ｐ…の押し付けは、非回転状態にある給紙ローラ２に対して行われる。
【００４４】
次いで従動ギヤ６は、図５（ｂ）に示す如く、右向きに所定量変位する。このとき従動ギヤ６のリングギヤ63は、揺動板駆動ギヤ52の狭幅の歯部55から外れると共に、従動ギヤ６のリングギヤ62が給紙ローラ駆動ギヤ51外周の歯部53に噛合する。リングギヤ62は、駆動ギヤ５との非対向側において前記給紙ギヤ21に噛合させてあり、図５（ｂ）に示す状態となったとき、前記モータＭからの伝動による駆動ギヤ５の回転は、前記歯部53及びリングギヤ62を介して給紙ギヤ21に伝達され、該給紙ギヤ21と共に前記給紙ローラ２が回転を開始する。このとき揺動板４は、揺動ギヤ41の停止により上動位置を保ち、給紙ローラ２の回転は、前記記録紙Ｐ，Ｐ…の押し付け下にて行われ、前述の如く、最上部の記録紙Ｐが給紙ローラ２の周面との間の摩擦により分離されて繰り出される。
【００４５】
以上の動作により本発明に係るプリンタ装置においては、給紙ローラ２が非回転状態にあるとき揺動板４が上方に揺動し、該揺動板４上の記録紙Ｐ，Ｐ…が給紙ローラ２の周面に押し付けられ、この押し付け完了後に給紙ローラ２が、記録紙Ｐの送り出しのための回転を開始することとなり、常に安定した押し付け下にて送り出しが行われるから、斜送、重送等の送り異常の発生を有効に防止することが可能となる。
【００４６】
また揺動板４の揺動と給紙ローラ２の回転との間の切換えが、従動ギヤ６の変位によりなされ、この変位は、前記待機域内でのインクヘッド１の移動に応じて生じるから、簡素な構成により確実な切換え動作を行わせることができる。
【００４７】
次いで従動ギヤ６は、図６（ａ）に示す状態を経て図６（ｂ）の状態となるまで右向きに変位する。この変位は、前記給紙センサＳによる搬送路内への記録紙Ｐの送り込みの検知に応じてインクヘッド１が、画像形成動作のために待機域から離脱せしめられることにより生じるものである。図６（ｂ）は、図３に示す状態、即ち、画像形成動作中の状態を示している。
【００４８】
図６（ｂ）に至る前の図６（ａ）の状態において、従動ギヤ６のリングギヤ63は、揺動板駆動ギヤ52の他方の狭幅の歯部54に噛合し、同じくリングギヤ62は、給紙ローラ駆動ギヤ51の広幅の歯部53との噛合状態を維持する。このとき、前記モータＭからの伝動による駆動ギヤ５の回転は、前記歯部54及びリングギヤ63を介して揺動ギヤ41に伝達されると共に、前記歯部53及びリングギヤ62を介して給紙ギヤ21に伝達され、前記揺動ギヤ41が回転し、また給紙ギヤ21は回転を継続する。
【００４９】
揺動ギヤ41の回転は、前記揺動リンク７の作用により揺動板４を下降させ、給紙ローラ２への記録紙Ｐ，Ｐ…を押し付けを解除させるべく行われる。即ち、前記搬送路への給紙の検知に応じて残りの記録紙Ｐ，Ｐ…を押し付けが解除されることとなり、前記給紙ギヤ21と共に回転を継続している給紙ローラ２による記録紙Ｐの重送を確実に防止することができる。
【００５０】
図６（ａ）の状態は、揺動ギヤ41が半回転する間だけ継続され、図６（ｂ）に示す状態に移行する。この状態において、従動ギヤ６のリングギヤ63は、前記歯部54から外れるが、他方のリングギヤ62は、対応する広幅の歯部53との噛合状態を維持する。従って、揺動板４の下降後も給紙ローラ２の回転は継続され、搬送路に送り出された記録紙Ｐは、給紙ローラ２の継続回転により所定の送りを加えられ、この送りと、前記移動経路に沿って移動するインクヘッド１からのインク粒の噴射とにより、前記記録紙Ｐに所望の画像が形成される。
【００５１】
このような画像形成を終えたインクヘッド１は、次なる記録紙Ｐの送り出しに備えて前記待機域に戻り、この待機域内でのインクヘッド１の移動により前述した切換え動作が繰り返される。
【００５２】
【発明の効果】
以上詳述した如く本発明の第１発明に係るプリンタ装置においては、記録紙を上げ下げする揺動板の揺動と記録紙の送り出しのための給紙ローラの回転とを、移動経路の一側の待機域内での記録ヘッドの移動に機械的に応動する切換え手段の動作により選択的に切り換え、揺動板により押し上げられた記録紙を非回転状態にある給紙ローラの表面に確実に押し付けた状態で給紙ローラの回転を開始させるようにしたから、斜送、重送等の送り異常の発生を確実に防止することができ、良質な画像形成を安定して行わせることが可能であり、また以上の切換え手段を、駆動モータからの伝動により回転する駆動ギヤと、揺動板駆動用の揺動ギヤ及び給紙ローラ駆動用の給紙ギヤとの間に、これら各ギヤとの噛み合いを、記録ヘッドに設けた押圧突起の作用による軸長方向の変位によって切り換える従動ギヤを配して構成したから、簡素な構成により確実な切換えを行わせることができる。
【００５３】
また第２発明に係るプリンタ装置においては、記録紙の搬送路への送り出しを検知し、この検知に応じて記録ヘッドを待機域から離脱させるとき、この離脱に応じて揺動板を下げ方向に揺動させて給紙ローラへの押し付けを解除するから、後続する記録紙の重送を確実に防止することができる。
【００５４】
また第３発明に係るプリンタ装置においては、揺動板の揺動と給紙ローラの回転とを、共通の駆動モータからの伝動により行わせる構成としたから、伝動系の構成を簡素化し、装置のコンパクト化を図ることができる。
【００５６】
また第４発明に係るプリンタ装置においては、駆動モータの回転中の駆動ギヤが常時回転状態を保つから、負荷変動を伴う駆動モータの回転及び停止の繰り返しが不要となり、耐久性を向上する。
【００５７】
更に第５発明に係るプリンタ装置においては、軸長方向に変位する変位筒に一対のリングギヤを遊嵌保持させて従動ギヤを構成したから、記録ヘッドの移動により変位筒を押圧することにより、前記切換えのための従動ギヤの移動を確実に行わせることができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係るプリンタ装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。
【図２】本発明に係るプリンタ装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。
【図３】給紙ギヤ及び揺動ギヤと従動ギヤとの噛合状態をインクヘッドの移動経路と共に示す正面図である。
【図４】給紙ギヤ及び揺動ギヤと従動ギヤとの噛合状態をインクヘッドの移動経路と共に示す正面図である。
【図５】本発明に係るプリンタ装置における切換え動作の説明図である。
【図６】本発明に係るプリンタ装置における切換え動作の説明図である。
【図７】一般的な給紙機構を備えるプリンタ装置の内部構成を模式的に示す側断面図である。
【図８】図７に示すプリンタ装置における揺動板の揺動機構の説明図である。
【符号の説明】
１ インクヘッド
２ 給紙ローラ
３ 分離手段
４ 揺動板
５ 駆動ギヤ
６ 従動ギヤ
７ 揺動リンク
10 ガイド棒
11 キャリッジ
15 押圧突起
21 給紙ギヤ
41 揺動ギヤ
64 押圧片
Ｍ モータ
Ｐ 記録紙
Ｓ 給紙センサ

Claims (5)

1. 上部に載置された記録紙を、その揺動により上げ下げする揺動板と、該揺動板により押し上げられた記録紙の表面に転接して回転し、該記録紙を搬送路に送り出す給紙ローラと、前記搬送路と交叉する移動経路に沿って移動し、該搬送路上の記録紙に画像を形成する記録ヘッドとを備えるプリンタ装置において、
   駆動モータからの伝動により回転する駆動ギヤと、
   前記揺動板の揺動軸に取付けた揺動ギヤ及び前記給紙ローラの回転軸に取付けた給紙ギヤと、
   前記移動経路の一側に設定された待機域での前記記録ヘッドの移動に応じて、該記録ヘッドに設けた押圧突起の作用により前記揺動ギヤ及び給紙ギヤとの噛合を保って変位し、前記駆動ギヤに選択的に噛合する従動ギヤとを有し、
   前記揺動板の揺動と前記給紙ローラの回転とを選択的に切り換える切換え手段を備えることを特徴とするプリンタ装置。
2. 前記搬送路への記録紙の送り出しを検知する給紙センサと、該給紙センサの検知に応じて前記記録ヘッドを前記待機域から離脱させ、記録動作を行わせる制御手段とを備え、前記切換え手段は、前記待機域からの離脱に応じて前記揺動板を下げ方向に揺動させる構成としてある請求項１記載のプリンタ装置。
3. 前記揺動板の揺動と前記給紙ローラの回転とを、共通の駆動モータからの伝動により行わせる構成としてある請求項１又は請求項２記載のプリンタ装置。
4. 前記駆動ギヤは、前記駆動モータの動作中、常時回転状態を保つ構成としてある請求項１乃至請求項３のいずれかに記載のプリンタ装置。
5. 前記従動ギヤは、前記押圧突起の作用により軸長方向に変位する変位筒と、該変位筒に軸長方向への移動不可に遊嵌保持され、前記揺動ギヤ及び給紙ギヤに夫々噛合する一対のリングギヤとを備える請求項１乃至請求項４のいずれかに記載のプリンタ装置。

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