JP3760572B2 - エンジンの燃料噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電磁歪アクチュエータを介して針弁前後の燃料圧力を変化させることにより針弁を作動させるエンジンの燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用エンジンに備えられる燃料噴射弁等に、印加電圧に応じて伸張するピエゾアクチュエータ(圧電素子)を備え、ピエゾアクチュエータを介して針弁(弁体)を開弁作動させるものがあった。針弁をピエゾアクチュエータにより駆動することにより、燃料噴射弁の高速応答性が高まり、最大噴射量と最小噴射量の比(ダイナミックレンジ)が拡大してエンジンの高出力化に対応できる。また、少量の燃料を安定して噴射できるので、エンジンの燃費低減がはかれる。
【0003】
この種の燃料噴射弁として、針弁をその前後差圧に基づいて開弁させるようにしたものが知られている。針弁の前後には燃圧室と背圧室が画成されており、燃圧室には所定の圧力で燃料が導入され、背圧室は燃圧室とオリフィスにより連通されている。針弁背後側の背圧室にはピエゾアクチュエータが設けられており、このピエゾアクチュエータの伸縮により針弁の開閉作動が制御される。すなわち、ピエゾアクチュエータに電圧を印加して伸長させた状態で針弁前後の燃圧室と背圧室の圧力はオリフィスを介して均等化されている。このとき針弁は第一リターンスプリングの張力により閉弁保持されている。この状態からピエゾアクチュエータの両端子を短絡させてピエゾアクチュエータを瞬時に収縮させると、針弁背後の背圧室の容積が拡大する。このとき、背圧室は針弁前方の燃圧室に対してオリフィスを介して連通しているので、一時的に背圧室の内圧が低下し針弁の前後に開弁方向の圧力差が発生する。これにより針弁は第一リターンスプリングに抗して開弁し、噴口が開いて燃料が噴射されることになる。(この種の燃料噴射弁の公知例としては、例えば特開平5−99092号、実開昭63−24362号公報を参照。)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のこのようなピエゾアクチュエータを用いた燃料噴射弁では、エンジンの始動時において、電動燃料ポンプが駆動されて燃圧室に導かれる燃料圧力が上昇するエンジンの起動前に、まず燃圧室に燃料が導かれ、次いでオリフィスを介して背圧室に燃料が流入するので、背圧室の圧力が上昇し終わるまでの間は、針弁の前後に圧力差が生じるため、針弁が所定の噴射時期以外で第一リターンスプリングに抗して開弁して燃料が噴射されてしまう初期燃料噴射を起こす可能性があった。
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、エンジンの燃料噴射弁において、燃料の初期噴射を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のエンジンの燃料噴射弁は、印加される電圧または磁界に応じて伸縮する電磁歪アクチュエータと、電磁歪アクチュエータの伸縮に応じて拡縮する背圧室と、
燃料供給通路から加圧燃料が導かれる燃圧室と、燃圧室と背圧室を連通する第一絞り通路と、燃圧室と背圧室との圧力差に応じて変位する針弁と、針弁を閉弁方向に付勢する第一リターンスプリングと、針弁によって開閉される噴口とを備えるエンジンの燃料噴射装置において、背圧室に燃料供給圧を導く背圧通路と、燃料供給通路に燃料供給圧を導く第二絞り通路と、燃料供給通路に面する大プランジャと、背圧通路に面して大プランジャより断面積が小さい小プランジャとを備え、第二リターンスプリングによって開弁方向に付勢されるとともに大プランジャの背後には大気圧を導く大気圧室が設けられており、背圧通路と燃料供給通路の圧力差に応動し、燃料供給圧が上昇するのに伴って背圧通路を閉塞するスプールバルブを有する弁手段とを備えるものとした。
【0009】
請求項2に記載のエンジンの燃料噴射弁は、請求項1に記載の発明において、前記スプールバルブは小プランジャの端面を背圧通路を画成する壁面に当接して背圧通路を閉塞する構造とした。
【0010】
【発明の作用および効果】
請求項1に記載の発明において、エンジン停止時に針弁まわりの燃圧室と背圧室の圧力はそれぞれ低下している。このとき針弁は第一リターンスプリングの弾性復元力により閉弁される。
【0011】
エンジンの始動に際して燃料ポンプが駆動されて燃料供給圧が上昇する過程で、弁手段を介して背圧通路が開通しており、背圧室と燃圧室の圧力が上昇するのに伴って、針弁前後の受圧面積差により針弁が閉弁方向に付勢される。こうして、針弁が第一リターンスプリングの弾性復元力とその前後差圧による押圧力を合わせた力によって閉弁位置に保持される。これにより、エンジン起動前に針弁が開弁して燃料が噴射されてしまう初期噴射を防止できる。この結果、エンジンの始動性を高められ、排気エミッションの悪化を防止することができる。
【0012】
燃料供給圧が上昇し終わると、弁手段を介して背圧通路が閉塞される。そして、背圧室と燃圧室の圧力は第一絞り通路を介して均等化される。
【0013】
こうして始動の準備が整ったところで行われるエンジン起動時、電磁歪アクチュエータがエンジン回転に同期して背圧室を拡張してその圧力を低下させる。燃圧室は絞り通路を介して圧力低下が遅れて伝わるので、背圧室と燃圧室に圧力差が直ちに発生する。この圧力差により針弁が第一リターンスプリングに抗して噴口を開き、燃圧室に導かれる高圧燃料が噴口を通ってエンジンの燃焼室に噴射される。
【0014】
燃料噴射弁の閉弁作動時に、電磁歪アクチュエータがエンジン回転に同期して背圧室を収縮させることにより背圧室の圧力が直ちに回復し、針弁前後の受圧面積差により針弁が閉弁方向に付勢される。こうして、針弁が第一リターンスプリングの弾性復元力とその前後差圧による押圧力を合わせた力によって移動して噴口を閉塞し、燃料の噴射が停止される。
【0015】
また、エンジンの始動に際して燃料ポンプが駆動されて燃料供給圧が上昇する過程で、第二絞り通路を介して燃料供給通路の圧力上昇が背圧通路の圧力上昇より遅れるため、スプールバルブは背圧通路と燃料供給通路の圧力差に応動して背圧通路を開いており、燃料ポンプの吐出圧が背圧通路を介して背圧室へと直ちに導かれる。第二絞り通路を介して燃圧室の圧力上昇が背圧室の圧力上昇より遅れるため、燃圧室と背圧室の圧力差によって針弁が閉弁方向に付勢される。こうして、針弁が第一リターンスプリングの弾性復元力とその前後差圧による押圧力を合わせた力によって閉弁位置に保持される。これにより、エンジン起動前に針弁が開弁して燃料が噴射されてしまう初期噴射を防止できる。この結果、エンジンの始動性を高められ、排気エミッションの悪化を防止することができる。
【0016】
こうして初期噴射を防止しつつ燃料供給圧が上昇し終わり、燃料供給通路と背圧通路の圧力が第二絞り通路を介して均等化されると、スプールバルブは背圧通路と燃料供給通路の圧力差に応動して背圧通路を閉塞する閉位置に保持される。
【0017】
こうして始動の準備が整ったところで行われるエンジン起動時、電磁歪アクチュエータがエンジン回転に同期して背圧室を拡張してその圧力を低下させる。燃圧室には第二絞り通路を介して圧力低下が遅れて伝わるので、背圧室と燃圧室に圧力差が直ちに発生する。この圧力差により針弁が第一リターンスプリングに抗して噴口を開き、燃圧室に導かれる高圧燃料が噴口を通ってエンジンの燃焼室に噴射される。
【0018】
さらに、エンジンの始動に際して燃料ポンプが駆動されて燃料供給圧が上昇する過程で、第二絞り通路を介して燃料供給通路の圧力上昇が背圧通路の圧力上昇より遅れるため、スプールバルブは第二リターンスプリングの弾性復元力により背圧通路を開いており、燃料ポンプの吐出圧が背圧通路を介して背圧室へと直ちに導かれる。第二絞り通路を介して燃圧室の圧力上昇が背圧室の圧力上昇より遅れるため、燃圧室と背圧室の圧力差によって針弁が閉弁方向に付勢される。こうして、針弁が第一リターンスプリングの弾性復元力とその前後差圧による押圧力を合わせた力によって閉弁位置に保持される。これにより、エンジン起動前に針弁が開弁して燃料が噴射されてしまう初期噴射を防止できる。この結果、エンジンの始動性を高められ、排気エミッションの悪化を防止することができる。
【0019】
こうして初期噴射を防止しつつ燃料供給圧が上昇し終わり、燃料供給通路と背圧通路の圧力が第二絞り通路を介して均等化されると、スプールバルブは大プランジャと小プランジャの受圧面積の差により第二リターンスプリングに抗して背圧通路を閉塞する閉位置に保持される。
【0020】
スプールバルブの変位に伴って、大プランジャの背後に画成された大気圧室が拡縮するが、大気圧室にはエア抜き通路を介して空気が出入りし、スプールバルブの変位を妨げることがない。
【0021】
こうして始動の準備が整ったところで行われるエンジン起動時、電磁歪アクチュエータがエンジン回転に同期して背圧室を拡張してその圧力を低下させる。燃圧室には第二絞り通路を介して圧力低下が遅れて伝わるので、背圧室と燃圧室に圧力差が直ちに発生する。この圧力差により針弁が第一リターンスプリングに抗して噴口を開き、燃圧室に導かれる高圧燃料が噴口を通ってエンジンの燃焼室に噴射される。
【0022】
請求項2に記載の発明において、初期噴射を防止しつつ燃料供給圧が上昇し終わり、燃料供給通路と背圧通路の圧力が第二絞り通路を介して均等化されると、スプールバルブは大プランジャと小プランジャの受圧面積の差により第二リターンスプリングに抗して背圧通路を閉塞する閉位置に保持される。この閉位置において、スプールバルブは小プランジャの端面を背圧通路を画成する壁面に当接して背圧通路を閉塞する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を筒内噴射式火花点火エンジンに備えられる燃料噴射弁に適用した実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、燃料噴射弁7はエンジンの燃焼室天井壁から燃焼室に臨むノズルボディ1を備える。ノズルボディ1の先端に開口した噴口1bから燃料噴霧をピストンの冠部に向けて噴出するようになっている。
【0025】
ノズルボディ1の内部に針弁2が摺動可能に収装される。ノズルボディ1の先端に噴口1bが開口される。噴口1bは針弁2の先端に円錐面状に突出したシール部2aが、ノズルボディ1のシート部1aに着座することにより閉塞され、シート部1aから離れることにより開通する。
【0026】
図5に示すように、フューエルタンク59に貯溜された燃料は、電動モータ54により駆動される第一燃料ポンプ58を介して吸い上げられ、第二燃料ポンプ57に圧送される。通常、第二燃料ポンプ57の吐出圧が第一燃料ポンプ58の吐出圧より高く設定されている。
【0027】
エンジン50により駆動される第二燃料ポンプ57は、さらに加圧した燃料を蓄圧室56へと送り、蓄圧室56から各気筒の燃料噴射弁7に燃料を圧送する。
【0028】
エンジン50により駆動される第二燃料ポンプ57は、さらに加圧した燃料を蓄圧室56へと送り、蓄圧室56から各気筒の燃料噴射弁7に燃料を圧送する。燃料戻し通路52にはプレッシャレギュレータ55が設けられ、蓄圧室56の余剰燃料をフューエルタンク59へと戻すことで、燃料噴射弁7に導かれる燃料圧力を所定値以下に保つようになっている。
【0029】
針弁2とノズルボディ1の間には燃圧室3が画成される。第一燃料ポンプ58から圧送される燃料は、燃料供給通路31から燃圧室3に導入され、針弁2のリフトに伴って噴口1bから噴射される。
【0030】
針弁2はその基端側にピストン部2cを有する。ノズルボディ1およびケーシング9とピストン部2cの間には背圧室8が画成される。燃圧室3と背圧室8はピストン部2cの外周に形成された第一絞り通路(隙間)5を介して連通する。
【0031】
針弁2を閉弁方向に付勢する第一リターンスプリング4が設けられる。コイル状をした第一リターンスプリング4は針弁2の基端部とケーシング9の間に圧縮された状態で介装され、針弁2と同軸上に配置される。なお、第一リターンスプリング4が針弁2に付与する弾性復元力は、針弁2に働く燃焼圧に対抗して針弁2を閉弁保持できるように設定される。
【0032】
針弁2の基端部とケーシング9の間にはシム17が介装され、シム17によって針弁2の軸方向の移動が規制される。シム17は円盤状に形成され、シム17の板厚によって針弁2の最大リフト量が決まる。
【0033】
ケーシング9の内部には背圧室8を画成するピストン11が摺動可能に介装される。背圧室8は、ノズルボディ1およびケーシング9とピストン部2cによって画成される室8aと、ケーシング9とピストン11によって画成される室8bとから構成される。
【0034】
ピストン11の外周にはOリング12が介装される。Oリング12がケーシング9の円筒状をした内壁面に摺接することにより、背圧室8の密封がはかれる。
【0035】
ピストン11を介して針弁2を開閉駆動するピエゾアクチュエータ10が設けられる。ピエゾアクチュエータ10は円盤状をした複数のピエゾ素子が、同じく円盤状をした内部電極を挟んで積層される。
【0036】
ピエゾアクチュエータ10の固定端には端板14が結合される。ケーシング9の開口端にはアジャストプレート21が取付けられる。端板14はアジャストプレート21に当接してピエゾアクチュエータ10の固定端を支持する。
【0037】
プランジャ11とケーシング9の間には皿バネ状をした与圧スプリング18が介装される。ピエゾアクチュエータ10は与圧スプリング18によって圧縮荷重が付加された状態で伸縮させるので、安定した作動性が確保される。
【0038】
ピエゾアクチュエータ10は各ピエゾ素子にリード線20を介して図示しない駆動用アンプから電圧が印加されることにより伸長する。このとき、背圧室8の圧力が高められて針弁2は閉弁する。ピエゾアクチュエータ10は各ピエゾ素子に印加される電圧が遮断短絡されることにより収縮する。このとき、燃圧室3に対して背圧室8の圧力が低下し、針弁2は第一リターンスプリング4に抗して開弁方向に移動する。
【0039】
なお、ピエゾアクチュエータ10に代えて印加される磁界の強さに応じて伸縮する超磁歪素子からなる磁歪アクチュエータを用いてもよい。ここではピエゾアクチュエータと磁歪アクチュエータ等を総称して電磁歪アクチュエータとする。
【0040】
コントローラ19では演算された燃料噴射量に対応するパルス信号がつくられ、このパルス信号に応じた電圧が駆動用アンプ18を介してピエゾアクチュエータ10に印加される。
【0041】
コントローラ19はエンジン50の回転数、エンジン50の吸入空気量を始めエンジン運転条件を検出する各種信号を入力し、これらのエンジン運転条件に応じて燃料噴射量を演算する。
【0042】
背圧室8には燃料供給源に連通する背圧通路32が接続される。第一燃料ポンプ58または第二燃料ポンプ57の吐出圧は、背圧通路32を通って背圧室8に導かれる。
【0043】
背圧通路32を燃料供給圧が上昇するのに伴い閉塞する弁手段として、ノズルボディ1にスプールバルブ30が介装される。
【0044】
図3に示すように、スプールバルブ30は断面積の異なる大プランジャ33と小プランジャ34を有し、大プランジャ33の端面が燃料供給通路31に面し、小プランジャ34の端面が背圧通路32に面している。
【0045】
大プランジャ33の外周にはOリング13が介装される。Oリング13がノズルボディ1の円筒状をしたシリンダ25に摺接することにより、大気圧室36に対する燃料供給通路31の密封がはかれる。
【0046】
ノズルボディ1と大プランジャ30の背後には大気圧室36が画成される。大気圧室36にはエア抜き通路37を介して大気圧が導かれる。
【0047】
ノズルボディ1にはシリンダ25の開口部を閉塞する栓体26が嵌められる。スプールバルブ30の端面には十字状に窪む溝35が形成される。スプールバルブ30の端面が栓体26に接合した状態でも、溝35によって燃料供給通路31が開通している。
【0048】
小プランジャ34の外周にはOリング19が介装される。Oリング14がノズルボディ1の小シリンダ27に摺接することにより、大気圧室36に対する背圧通路32の密封がはかれる。
【0049】
スプールバルブ30とノズルボディ1の間には第二リターンスプリング38が圧縮された状態で介装される。第二リターンスプリング38の弾性復元力によりスプールバルブ30は図1、図3に示すように、背圧通路32を開通する開位置に保持される。
【0050】
燃料供給通路31と背圧通路32に第一燃料ポンプ58からの吐出圧が導かれる状態で、スプールバルブ30は大プランジャ30と小プランジャ34の受圧面積の差により第二リターンスプリング38に抗して図2に示すように背圧通路32を閉塞する閉位置に保持される。
【0051】
スプールバルブ30が図3において下降するとやがて小プランジャ34の端面が背圧通路32の通路壁面に面接合して、背圧通路32を閉塞するようになっている。
【0052】
燃料供給通路31は第二絞り通路39を介して燃料入口29に接続され、エンジン始動に際して第一燃料ポンプ58の吐出圧が上昇するときに、燃料供給通路31の圧力が背圧通路32の圧力より遅れて上昇するようになっている。
【0053】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0054】
エンジン停止時にピエゾアクチュエータ10は収縮し、針弁2まわりの燃圧室3と背圧室8の圧力はそれぞれ低下している。このとき針弁2は第一リターンスプリング4の弾性復元力によりノズルボディ1のシート部1aに押し付けられ、噴口1aを閉塞している。スプールバルブ30は第二リターンスプリング38の弾性復元力により背圧通路32を開いている。
【0055】
エンジン50の始動に際してエンジン50が起動される前に、第一燃料ポンプ58が電動モータ54により駆動される。第一燃料ポンプ58の吐出圧が上昇する過程で、第二絞り通路39を介して燃料供給通路31の圧力上昇が背圧通路32の圧力上昇より遅れるため、スプールバルブ30は第二リターンスプリング38の弾性復元力により背圧通路32を開いており、第一燃料ポンプ58の吐出圧が図1に矢印で示すように背圧通路32を介して背圧室8へと直ちに導かれる。第二絞り通路39を介して燃圧室3の圧力上昇が背圧室8の圧力上昇より遅れるため、燃圧室3と背圧室8の圧力差によって針弁2が閉弁方向に付勢される。こうして、針弁2が第一リターンスプリング4の弾性復元力とピストン部2cの前後に生じる圧力差による押圧力を合わせた力によってノズルボディ1のシート部1aに強く押し付けられる。これにより、エンジン起動前に針弁2が開弁して燃料が噴射されてしまう初期噴射を防止できる。この結果、エンジンの始動性を高められ、排気エミッションの悪化を防止することができる。
【0056】
このようにして初期噴射を防止しつつ第一燃料ポンプ58の吐出圧が上昇し終わり、燃料供給通路31と背圧通路32の圧力が第二絞り通路39を介して均等化されると、スプールバルブ30は大プランジャ33と小プランジャ34の受圧面積の差により第二リターンスプリング38に抗して図2に示すように背圧通路32を閉塞する閉位置に保持される。スプールバルブ30はその閉位置において、小プランジャ34の端面を背圧通路32の通路壁面に面接合させて、背圧通路32を閉塞する。
【0057】
スプールバルブ30の変位に伴って、大プランジャ30の背後に画成された大気圧室36が拡縮するが、大気圧室36にはエア抜き通路37を介して空気が出入りし、スプールバルブ30の変位が可能となる。
【0058】
このエンジン起動前に、ピエゾアクチュエータ10は電圧が印加されて伸長しており、起動時における針弁2の開弁作動に備える。
【0059】
こうして始動の準備が整ったところで行われるエンジン起動時、ピエゾアクチュエータ10がエンジン回転に同期して印加される電圧が遮断短絡されることにより収縮する。ピエゾアクチュエータ10の収縮に伴ってピストン11が移動することにより、背圧室8はその容積が拡大してその圧力が低下する。燃圧室3は第一絞り通路5を介して圧力低下が遅れて伝わるので、背圧室8と燃圧室3に圧力差が直ちに発生する。この圧力差により針弁2が第一リターンスプリング4に抗して噴口1bを開き、図2に矢印で示すように燃圧室3に導かれる高圧燃料が噴口1bを通ってエンジン50の燃焼室に噴射される。
【0060】
燃料噴射弁7の閉弁作動時に、ピエゾアクチュエータ10はエンジン回転に同期して電圧が印加されることにより伸長し、ピストン11が移動することにより背圧室8の圧力が直ちに回復し、背圧室8と燃圧室3の圧力差および第一リターンスプリング4の付勢力により針弁2が移動してノズルボディ1のシート部1aに着座する。針弁2がシート部に着座することにより、噴口1bが閉塞され、燃料の噴射が停止される。
【0061】
燃料噴射弁7は、ピエゾアクチュエータ10の変位方向と針弁2の変位方向が一致しているため、ピエゾアクチュエータ10と針弁2を直列に並べられ、構造の簡素化がはかれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示し、燃料流入初期における燃料噴射弁の断面図。
【図2】同じく定常時における燃料噴射弁の断面図。
【図3】同じく図1のA部を拡大した断面図。
【図4】同じくスプールバルブの平面図。
【図5】同じく燃料供給系のシステム図。
【符号の説明】
1 ノズルボディ
1b 噴口
2 針弁
2c 大ピストン
3 燃圧室
4 第一リターンスプリング
5 第一絞り通路
7 燃料噴射弁
8 背圧室
10 ピエゾアクチュエータ
11 ピストン
18 与圧スプリング
30 スプールバルブ
31 燃料供給通路
32 背圧通路
33 大プランジャ
34 小プランジャ
36 大気圧室
37 エア抜き通路
38 第二リターンスプリング
39 第二絞り通路
Claims (2)
- 印加される電圧または磁界に応じて伸縮する電磁歪アクチュエータと、
電磁歪アクチュエータの伸縮に応じて拡縮する背圧室と、
燃料供給通路から加圧燃料が導かれる燃圧室と、
燃圧室と背圧室を連通する第一絞り通路と、
燃圧室と背圧室との圧力差に応じて変位する針弁と、
針弁を閉弁方向に付勢する第一リターンスプリングと、
針弁によって開閉される噴口と、
を備えるエンジンの燃料噴射装置において、
背圧室に燃料供給圧を導く背圧通路と、
燃料供給通路に燃料供給圧を導く第二絞り通路と、
燃料供給通路に面する大プランジャと、背圧通路に面して大プランジャより断面積が小さい小プランジャとを備え、第二リターンスプリングによって開弁方向に付勢されるとともに大プランジャの背後には大気圧を導く大気圧室が設けられており、背圧通路と燃料供給通路の圧力差に応動し、燃料供給圧が上昇するのに伴って背圧通路を閉塞するスプールバルブを有する弁手段と、
を備えたことを特徴とするエンジンの燃料噴射装置。 - 前記スプールバルブは小プランジャの端面を背圧通路を画成する壁面に当接して背圧通路を閉塞する構造とした
ことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料噴射弁。
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JP16879797A JP3760572B2 (ja) | 1997-06-25 | 1997-06-25 | エンジンの燃料噴射装置 |
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JP16879797A JP3760572B2 (ja) | 1997-06-25 | 1997-06-25 | エンジンの燃料噴射装置 |
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JPH1113582A JPH1113582A (ja) | 1999-01-19 |
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- 1997-06-25 JP JP16879797A patent/JP3760572B2/ja not_active Expired - Fee Related
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