JP3754987B2 - 工業用殺菌・静菌剤及び工業用殺菌・静菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、工業用殺菌・静菌剤及び工業用殺菌・静菌方法に関する。更に詳しくは、この発明は、紙・パルプ工業における抄紙工程水やパルプスラリー、各種工業用の冷却水や洗浄水、並びにコーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂のエマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント類、防汚塗料、紙用塗工液等の防腐や殺菌・静菌用として有用である工業用殺菌・静菌剤及び工業用殺菌・静菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から紙・パルプ工業における抄紙工程水や各種工業における冷却水系統には、細菌や真菌によるスライムが発生し、生産品の品質低下や生産効率の低下などの障害があることが知られている。
例えば、コーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂のエマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント類、防汚塗料、紙用塗工液等の工業製品においては、細菌や真菌による腐敗や汚染が発生し、製品を汚損し価値を低下させる。
【0003】
これらの微生物による障害を防止するため、多くの殺菌剤が使用されてきた。古くは有機水銀化合物や塩素化フェノール化合物などが使用されていたが、これらの薬剤は人体や魚介類に対する毒性が強く、環境汚染をひき起こすため使用が規制されている。そこで、最近では比較的低毒性のメチレンビスチオシアネート、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに代表される有機窒素系及び4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンに代表される有機硫黄系等の化合物が工業用殺菌剤として汎用されている(日本防菌防黴学会より昭和61年発行の「防菌防黴剤事典」参照)。
【0004】
また、上記低毒性化合物の2種を併用する工業用殺菌剤も知られている。例えば、特公昭52−46285号公報、特開平2−42007号公報、特開昭60−231603号公報及び特開平2−53703号公報には、この発明の有効成分である2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ブロム酢酸エステル化合物、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン及び2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールから選択される2種の化合物を併用する工業用殺菌剤が記載されている。
【0005】
しかしながら、上記の1成分又は2成分の低毒性殺菌剤は、工業用殺菌・静菌対象系が還元性環境、例えば亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上の還元性物質が存在する環境においては、殺菌・静菌効力が低下するという欠点を有していた。
また、低毒性とはいえ、その使用量を出来るだけ減少することが、公害や環境面並びに殺菌処理コスト低減の点から望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の発明者は、この観点より、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ブロム酢酸エステル化合物と、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン又は2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールとを組み合わせることにより、2成分の組み合わせに比較して、広範な種類の微生物に対し、いわゆる相乗的な殺菌効果の増強、その効果の持続性の向上及び増殖抑制時間の延長効果が発揮される意外な事実を見出し、特にその効力が還元性環境、例えば亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上の還元性物質が存在する環境においても低下しない事実を見出し、この発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、この発明によれば、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(以下、DBNPAと略す)、ブロム酢酸エステル化合物と、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン(以下、MACと略す)又は2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(以下、DBNEと略す)とを相乗効果を奏する割合で有効成分として含有することを特徴とする工業用殺菌・静菌剤が提供される。
【0008】
また、この発明によれば、工業殺菌・静菌対象系に、上記工業用殺菌・静菌剤を、合計濃度として0.01〜200mg/リットルとなるように同時に又は別々に添加することを特徴とする工業用殺菌・静菌方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明に用いられるDBNPA、MAC及びDBNEは、いずれも公知の殺菌剤であり、市販のものを使用することができる。
また、この発明に用いられるブロム酢酸エステル化合物としては、例えば、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−プロパン又は1,2,3−トリス(ブロモアセトキシ)−プロパンが挙げられ、いずれも公知の殺菌剤であり、市販のものを使用することができる。
【0010】
この発明の各有効成分の併用割合は、有効成分の種類及び組み合わせにより異なる。
DBNPAとブロム酢酸エステル化合物との併用割合(重量比として)は、1:0.1〜10、好ましくは1:0.2〜5であり、かつDBNPAとブロム酢酸エステル化合物との合計量とMACとの併用割合(重量比として)は、1:0.01〜2、好ましくは1:0.02〜1である。
【0011】
また、DBNPAとブロム酢酸エステル化合物との併用割合(重量比として)は、1:0.1〜10、好ましくは1:0.2〜5であり、かつDBNPAとブロム酢酸エステル化合物との合計量とDBNEとの併用割合(重量比として)は、1:0.02〜2.5、好ましくは1:0.05〜1.5である。
【0012】
この発明の殺菌・静菌剤の有効成分は、少なくとも使用時に3成分の形態で対象系に含まれることが必要である。
この発明の殺菌・静菌剤は、通常液剤の形態で用いられるが、使用対象によっては粉剤等の形態で用いてもよい。また製剤の長期貯蔵安定性等の点でそれぞれの有効成分を分離しておくのが好ましい場合には、予めそれぞれの有効成分を2〜3液に分けて製剤化してもよい。
【0013】
液剤とする場合には、水や通常の有機溶媒、更に分散剤を用いて製剤化することができる。
殺菌対象系が製紙工程のプロセス水や工業用冷却水等の各種水系の場合には、有効成分の溶解、分散性を考慮して、親水性有機溶媒及び分散剤を用いた液剤とするのが好ましい。
【0014】
親水性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、炭素数8までのアルコール類もしくはメチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、プロピレンカーボネート等のエステル類が挙げられ、中でもジエチレングリコール、 ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンカーボネート、グルタル酸ジメチル、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0015】
また、これらの溶媒は、用いられる有効成分の溶解性及び安定性により選択され、2種以上を混合して用いてもよい。この場合の有機溶媒の配合比は、有効成分の溶解性及び安定性により適宜決定することができる。
【0016】
分散剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が適当であり、製剤としての安定性の点でノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0017】
このノニオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物〔エチレンオキサイドは以下、(E.O)と略す〕、アルキルフェノール(E.O)付加物、脂肪酸(E.O)付加物、多価アルコール脂肪酸エステル(E.O)付加物、高級アルキルアミン(E.O)付加物、脂肪酸アミド(E.O)付加物、油脂の(E.O)付加物、プロピレンオキサイド〔以下、(P.O)と略す〕(E.O)共重合体、アルキルアミン(P.O)(E.O)共重合体付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルキロールアミド等が挙げられる。
【0018】
また、これら界面活性剤の代わりに又はその補助剤として、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、CMC(カルボキシメチルセルロース)等の水溶性高分子を用いてもよい。
【0019】
これら製剤の配合割合は、有効成分の合計量が1〜70重量部、分散剤が該有効成分の合計1重量部に対して少なくとも0.002重量部であり、残部を親水性有機溶媒とするのが好ましい。
【0020】
また、対象系が重油スラッジ、切削油、油性塗料等の油系の場合には、灯油、重油、スピンドル油等の炭化水素溶媒を用いた液剤とするのが好ましく、前記界面活性剤を用いてもよい。
更に、有効成分を2〜3液に分けて製剤化する場合も、それぞれの有効成分について上記溶媒、分散剤及び配合割合で製剤化することができる。
【0021】
この発明の有効成分がそれぞれに直接溶解又は分散しうる対象系に対しては、直接又は固体希釈剤(例えばカオリン、クレー、ベントナイト、CMC等)で希釈した粉剤としてもよく、前記界面活性剤を用いてもよい。また液剤の場合と同様にして、粉剤を有効成分に分けて製剤化してもよい。
また、組合せによっては、溶媒や界面活性剤を用いずに有効成分のみで製剤としてもよい。
【0022】
この発明の方法において、上記の有効成分を同時に添加する場合には、前述のように同一製剤として用いるのが簡便であるが、製剤の長期貯蔵安定性等の点でそれぞれ有効成分を分離しておくのが好ましい場合や別々に添加する場合には、それぞれ別の製剤として用いられる。この観点より、工業殺菌・静菌対象系に、この発明の工業用殺菌・静菌剤を、合計濃度として0.01〜200mg/リットルとなるように同時に又は別々に添加することを特徴とする工業用殺菌・静菌方法が提供される。
【0023】
この発明において、工業用殺菌対象系とは、紙・パルプ工業における抄紙工程水やパルプスラリー、各種工業用の冷却水や洗浄水、並びにコーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂のエマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、重油スラッジ、金属加工油剤、繊維油剤、ペイント類、防汚塗料、紙用塗工液等を意味する。特に、この発明の工業用殺菌・静菌剤は、対象系が還元性環境、例えば還元性物質が亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上(好ましくは5〜100mg/リットル)の環境においても効果を発揮する。
【0024】
この発明の組成物の添加量は、殺菌対象系の種類、組合わせた有効成分により異なるが、ことに製紙工程のプロセス水系や工業用の冷却水系に添加される場合、微生物の発育を抑制する濃度(静菌濃度)としては、通常有効成分の濃度として0.01〜100mg/リットル程度の添加で十分である。
また、殺菌的に使用する場合は、有効成分の濃度として0.02〜200mg/リットルで目的を達成することができる。
更に、この発明の組成物は、この発明の効果を阻害しない限り、水や界面活性剤を用いてエマルション製剤とすることもでき、公知の殺菌剤を含有させることもできる。
【0025】
【実施例】
この発明を以下の製剤例及び試験例により例示する。
以下の実施例は、この発明の有効成分(3種の化合物)からなる製剤であり、比較例としてはこの発明の有効成分の1種又は2種の化合物からなる製剤である。また、製剤の調製は、各種親水性有機溶媒に各殺菌有効成分を混合し、攪拌溶解することにより行った。
【0026】
この発明の実施例である製剤例を表1に、比較例である比較製剤例を表2に示す。なお、製剤の各化合物の略号を以下に示す。
DBNPA:2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド
(CN−CBr2 −CONH2 )
BBAB :1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン
BBAE :1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン
BBAP :1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−プロパン
TBAP :1,2,3−トリス(ブロモアセトキシ)−プロパン
MAC :2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン
DBNE :2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール
DEG :ジエチレングリコール
MDG :ジエチレングリコールモノメチルエーテル
PC :プロピレンカーボネート
GAD :グルタル酸ジメチル
DMF :ジメチルホルムアミド
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
試験例1〔接着剤に対する持続効力確認試験(防腐剤としての効力評価)〕
酢酸ビニル系接着剤(pH:4.8、菌種:シュードモナス属、アルカリゲネス属、ミクロコッカス属、ゲオトリカム属、カンジダ属、生菌数:細菌3.8×106 個/ml、カビ1.2×104 個/ml、酵母3.9×103 個/ml)に各薬剤を有効成分として30mg/リットルの濃度になるように添加し、30℃で1ヶ月間静置後に生菌数を測定した。測定結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
試験例2〔板紙抄紙工程の白水に対する殺菌効力確認試験(スライムコントロール剤としての効力評価)〕
板紙抄紙機より採取した白水(pH:6.6、還元性イオン:亜硫酸イオンとして15mg/リットル、菌種:シュードモナス属、ミクロコッカス属、フラボバクテリウム属菌主体、初期菌数:細菌3.3×107 個/ml)に各薬剤を有効成分として5mg/リットル、15mg/リットルの濃度になるように添加し、37℃で30分間振とう後に生菌数を測定した。測定結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
試験例3〔中性中質紙抄造工程の白水に対する静菌効力確認試験(配合比の決定)〕
中性中質紙の抄紙工程より採取した白水(pH:7.3、還元性イオン:亜硫酸イオンとして10mg/リットル、菌種:シュードモナス属、スタフィロコッカス属、バチルス属、アルカリゲネス属菌主体、初期菌数:細菌1.9×107 個/ml)を No.2濾紙で濾過し、これにブイヨン培地を加えたものを予め滅菌したL字型試験管に取った。次いでこれに各薬剤を有効成分として1mg/リットルの濃度になるように添加し、37℃で24時間振とう培養し、1時間毎に660nmの吸光度を測定した。測定開始からの菌の増殖に基づく吸光度の増加が0.1を越えるまでの時間(t)を求めた。
薬剤無添加時のtの値をt0 、薬剤添加時のtの値をtX とすると、増殖抑制時間(T)は、T=tX −t0 で求められる。
【0034】
各比率で配合した各薬剤の増殖抑制時間(T)を図1〜8に示す。図中(a)〜(c)は、それぞれDBNPAとブロム酢酸エステルとの組成比を変えた場合のMAC又はDBNEの添加量と増殖抑制時間の関係を表す。
図1〜8より、DBNPAとブロム酢酸エステルとに、MAC又はDBNEを極めて少量添加することによって、増殖抑制時間が急激に延びていることがわかる。
【0035】
例えば、図1(b)(DBNPA:BBAB=1:1+MAC)において、2成分(DBNPA:BBAB=1:1)及び1成分(MAC単独)の場合、1mg/リットル添加による増殖抑制時間がそれぞれ2時間、0時間であるのに対して、前記2成分にMACを僅か0.01〜0.02mg/リットル(1/100〜1/50の濃度)添加した場合、抑制時間が10〜22時間に延びている。この詳細を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
試験例4〔スライムコントロール剤としての効力持続試験〕
▲1▼500mlビーカーの側面内側にプラスチックワイヤーを取り付け、コート原紙の抄紙工程より採取し、予め濾過した白水(pH:7.2、還元性イオン:亜硫酸イオンとして5mg/リットル、菌種:シュードモナス属、アルカリゲネス属、バチルス属、ストレプトマイセス属主体、初期菌数:細菌1.2×107 個/ml)500mlを入れた。これを恒温槽付ジャーテスターで37℃、60rpm (回毎分)で混合した。
▲2▼ここへ各製剤例の薬剤を有効成分当たり1〜3mg/リットルを原液で添加した。
▲3▼薬剤添加30分後、白水を捨てて新しい白水と入れ換えた(薬剤無添加の状態に戻した)。
▲4▼▲2▼と▲3▼の操作を1日2回朝夕に繰り返し、プラスチックワイヤーを目視により観察し、スライム付着量と付着面積をそれぞれ5段階で評価した。
評価の基準と結果をそれぞれ表6、7に示す。
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
これまでの単独製剤又は2成分系複合剤では、抄造開始後数日間は良好な結果を示すが、その後徐々に効力が低下し、抄造期間が長くなると(特に中性抄造時)スライムによる汚れが増大し、斑点や紙切れが多発する場合が多かった。このような場合、薬剤を選定し直して変更するか、添加量を増加させるなどの対策を採るが、いずれも対応できずに止むなく操業を中断する場合も少なくなかった。
【0041】
従来の経験から、各評価の段階は下記の状態に相当するものと推定される。
評価1及び2:マシン汚れの殆どない安定操業状態
評価3 :マシン汚れはあるが操業可能状態
評価4及び5:マシン汚れが多く操業不可状態
各試験例の添加濃度1mg/リットルにおけるスライム抑制日数を図9、10に示す。但し比較例のみ3mg/リットルの場合も示す。
【0042】
この試験において、比較例1〜4では、添加濃度1mg/リットルでいずれも2〜3日目でスライムが多量に付着し、操業不可に相当する汚れになった。添加濃度3mg/リットルでは、汚れが付着するまでの日数は僅かに延びるが、いずれも5日以内に操業不可に相当する汚れになった。
これに対してこの発明の製剤を用いた試験(製剤例1〜8)では、添加濃度1mg/リットルでいずれも19日以上殆どスライム汚れがなく、操業可能に相当する状態であった。これより3成分系複合剤は、1〜2成分系製剤と比較して低濃度で長期間有効であることがわかる。
【0043】
試験例5〔還元性イオン含有時の殺菌効力評価〕
▲1▼試験例2の白水から平板培養により単離したフラボバクテリウム属菌をブイヨン培地で30℃で培養した。
▲2▼滅菌した生理食塩水に▲1▼の培養液を加えて、初期生菌数を約107 個/mlに調整した。
▲3▼▲2▼に亜硫酸イオンとして亜硫酸ナトリウムを添加濃度5mg/リットル、20mg/リットルでそれぞれ加えた。また、無添加(添加濃度0mg/リットル)の試料も用意した。
▲4▼▲3▼に各薬剤を添加し、37℃で30分間振とう後に生菌数を測定した。
▲5▼殺菌率が99.9%以上となる各薬剤の最小殺菌濃度MBC(mg/リットル)を求めた。
各亜硫酸イオン濃度の白水における各薬剤のMBCを表8に示す。
【0044】
【表8】
【0045】
表8より、亜硫酸イオン濃度0mg/リットルでは、この発明の製剤例は、2成分系複合剤の比較製剤例と比較して1/2以下の添加量で殺菌に有効であることがわかる。
また、亜硫酸イオンを含有する場合(5〜20mg/リットル)では、この発明の製剤例は、比較製剤例と比較して1/10以下の添加量で殺菌に有効であることがわかる。更に、これらの結果から亜硫酸イオンの含有量が多いほど公知の2成分系複合剤との効力差が大きくなるものと推察される。
【0046】
試験例6〔(I)白水単離菌に対する最小抑制濃度の比較、及び(II)白水単離菌のスライム形成速度の比較〕
(I)
▲1▼試験例3、4の白水から平板培養により単離した各菌をブイヨン培地で30℃で培養した。
▲2▼予め滅菌したL字型試験管にブイヨン培地を取り、▲1▼の培養液を加えて、初期生菌数を約105 個/mlに調整した。
▲3▼これに各薬剤を添加し、37℃で24時間振とう培養し、1時間毎に660nmの吸光度を測定した。24時間後の菌の増殖に基づく吸光度の増加が0.1を越えない各薬剤の最小抑制濃度MIC(mg/リットル)を求めた。
白水単離菌に対する各薬剤のMICを表9に示す。
【0047】
(II)
▲1▼500mlビーカーの側面内側にプラスチックワイヤーを取り付け、pH:7.0に調整した滅菌水500mlを入れた。
▲2▼試験例3、4の白水から平板培養により単離した各菌をブイヨン培地で30℃で培養した。
▲3▼▲1▼に▲2▼の培養液を加えて、初期生菌数を約106 個/mlに調整し、これを恒温槽付ジャーテスターで30℃、60rpm で混合した。
▲4▼5日目にプラスチックワイヤーを目視により観察し、スライム付着量と付着面積をそれぞれ5段階で評価した。なお、評価の基準は表6に準じた。
白水単離菌に対するスライム形成速度の結果を表9に示す。
【0048】
【表9】
【0049】
表9より、いずれの白水単離菌に対しても、この発明の製剤例は、1〜2成分系の比較製剤例と比較して1/2以下の添加量で殺菌に有効であることがわかる。
特に、スライム形成菌であるシュードモナス属及びバチルス属に対して、比較製剤例はMICが高く、スライムコントロール剤としての効力低下の原因となっていた。これに対して、この発明の製剤例は特に顕著な効果を示し、いずれの比較製剤例と比較しても1/10以下の添加量で殺菌に有効で、スライムコントロール剤として有効であることがわかる。
【0050】
【発明の効果】
この発明の工業用殺菌・静菌剤は、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、ブロム酢酸エステル化合物と、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン又は2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールとを組み合わせるので、2成分の組み合わせに比較して、広範な種類の微生物に対し、いわゆる相乗的な殺菌効果の増強、その効果の持続性の向上及び増殖抑制時間の延長効果が発揮される工業用殺菌・静菌剤を提供することができる。
【0051】
また、特に前記効力が還元性環境、例えば亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上の還元性物質が存在する環境においても低下しない工業用殺菌・静菌剤を提供することができる。
この発明の工業用殺菌・静菌剤は、特にスライム障害が直接製品に悪影響を及ぼす紙・パルプ工業における抄紙工程水用の殺菌・静菌剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAB〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とMACとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図2】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAE〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とMACとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図3】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAP〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とMACとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図4】この発明の殺菌剤、DBNPAとTBAP〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とMACとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図5】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAB〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とDBNEとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図6】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAE〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とDBNEとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図7】この発明の殺菌剤、DBNPAとBBAP〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とDBNEとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図8】この発明の殺菌剤、DBNPAとTBAP〔(a)5:1、(b)1:1、(c)1:5〕とDBNEとの相乗効果を示す増殖抑制時間のグラフである。
【図9】この発明の殺菌剤のスライム抑制日数を示すグラフである。
【図10】従来の殺菌剤のスライム抑制日数を示すグラフである。
Claims (6)
- 2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(以下、DBNPAと略す)、ブロム酢酸エステル化合物と、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン(以下、MACと略す)又は2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(以下、DBNEと略す)とを相乗効果を奏する割合で有効成分として含有することを特徴とする工業用殺菌・静菌剤。
- ブロム酢酸エステル化合物が、1,4−ビス(ブロモアセトキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−エタン、1,2−ビス(ブロモアセトキシ)−プロパン又は1,2,3−トリス(ブロモアセトキシ)−プロパンである請求項1記載の工業用殺菌・静菌剤。
- DBNPAとブロム酢酸エステル化合物との併用割合(重量比として)が1:0.1〜10であり、かつDBNPAとブロム酢酸エステル化合物との合計量とMACとの併用割合(重量比として)が1:0.01〜2である請求項1又は2に記載の工業用殺菌・静菌剤。
- DBNPAとブロム酢酸エステル化合物との併用割合(重量比として)が1:0.1〜10であり、かつDBNPAとブロム酢酸エステル化合物との合計量とDBNEとの併用割合(重量比として)が1:0.02〜2.5である請求項1又は2に記載の工業用殺菌・静菌剤。
- 亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上の還元性物質が存在する工業用水系に使用される請求項1〜4のいずれかに記載の工業用殺菌・静菌剤。
- 工業殺菌・静菌対象系に、請求項1〜5のいずれかに記載の工業用殺菌・静菌剤を、合計濃度として0.01〜200mg/リットルとなるように同時に又は別々に添加することを特徴とする工業用殺菌・静菌方法。
Priority Applications (1)
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