JP3743859B2 - 液体用モータポンプ及びそれを用いた食器洗浄機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポンプ、特に液体用のモータポンプの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の液体用モータポンプの構成を説明するための側面断面図である。同図に示す従来の液体用モータポンプ100は、ポンプの駆動源としてのモータ102の回転軸104に、回転軸104が貫通する隔壁106を挟んで第一インペラ108と第二インペラ110が固着されている。前記第一インペラ108と第二インペラ110はそれぞれケーシング112により覆われることによって、第一ポンプ室114と第二ポンプ室116が形成されており、第一ポンプ室114には第一吸込口118と点線で示された第一吐出口120が、第二ポンプ室116には第二ポンプ室116内の下側に点線で示された第二吸込口122と第二ポンプ室116内の上側に点線で示された第二吐出口124がそれぞれ設けられている。
【0003】
そして、隔壁106と、隔壁106を貫通する回転軸104の隙間126は非常に狭く形成し、第一ポンプ室114と第二ポンプ室116の間でなるべく液体の漏れがないように構成されていた。
【0004】
また図7には、特開平9−313425号公報に記載された従来の他の液体用モータポンプの構成を説明するための側面断面図である。同図に示す従来の液体用モータポンプ130は食器洗浄機の送排水用ポンプとして用いられているものであり、ポンプの駆動源としてのモータ132の回転軸134に、回転軸134が貫通する隔壁136を挟んで第一インペラ138と第二インペラ140が固着されている。前記第一インペラ138と第二インペラ140はそれぞれケーシング142により覆われることによって、第一ポンプ室144と第二ポンプ室146が形成されており、第一ポンプ室144には第一吸込口148と点線で示された第一吐出口150が、第二ポンプ室146には第二ポンプ室146内の下側に点線で示された第二吸込口152と第二ポンプ室146内の上側に点線で示された第二吐出口154がそれぞれ設けられている。
【0005】
そして、隔壁136と、隔壁136を貫通する回転軸134の隙間156を非常に狭く形成するとともに、隔壁136に凹部158を、第一インペラ138には凸部160を設け、これら凹凸を互いに遊嵌させて、ラビリンス結合によってシールを形成して、第一ポンプ室144と第二ポンプ室146の間でなるべく液体の漏れがないように構成されていた。
【0006】
このような構成からなる図6に記載した液体用モータポンプ100(および図7に記載した液体用モータポンプ130)は、モータ102(132、以下、括弧内は図7に付した番号)の回転軸104(134)が正回転すると、これに固着された第一インペラ108(138)および第二インペラ110(140)が回転するが、モータの正回転時には第一インペラ108(138)によるポンプ能力が発揮され、第一吸込口118(148)から液体が第一ポンプ室114(144)内に吸込まれ、第一吐出口120(150)から外部に吐き出される。
【0007】
これに対してモータ102(132)の回転軸104(134)が逆回転すると、これに固着された第一インペラ108(138)および第二インペラ110(140)が回転するが、モータの逆回転時には第二インペラ110(140)によるポンプ能力が発揮されて第二吸込口122(152)から液体が第二ポンプ室116(146)内に吸込まれ、第二吐出口124(154)から外部に吐き出される。
【0008】
そして、図6および図7に記載した従来のモータポンプは、このようなポンプ作動時に、第一ポンプ室と第二ポンプ室との間で、液体の行き来や漏れが起こらないように構成されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のモータポンプでは、第一ポンプ室と第二ポンプ室が、互いに第一ポンプ室と第二ポンプ室を区画する隔壁によって隔離されているため、各ポンプ室内で泡噛みによりキャビテーション現象が発生した際には、各ポンプ室間での液体の移動がほとんどないため、実質的に気泡が各ポンプ室間を移動することがなく、ポンプ室から気泡が排出されないため、キャビテーション現象が改善されずにポンプ能力を急激に低下させることがあった。
またこのようなキャビテーション現象が発生した際には、泡噛み現象によってポンプの動作音が非常に大きくなるなどの問題もあった。
【0010】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、キャビテーション現象を抑制することでポンプ能力を良好な状態に維持することができ、泡噛みによる騒音の発生を抑制し得るポンプを提供することを目的とする。
また、前記ポンプを用いて、作動中におけるモータの作動音を極力小さく保つ事を可能とする食器洗浄機を提供する事を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明にかかる液体用モータポンプは、モータの回転軸に、前記回転軸が貫通する隔壁を挟んで第一インペラと第二インペラを備え、前記第一インペラと第二インペラはそれぞれケーシングにより覆われることによって、第一ポンプ室と第二ポンプ室が形成されており、前記第一ポンプ室と第二ポンプ室の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段を有し、前記第一インペラによるポンプ能力と第二インペラによるポンプ能力に差異を有するものである。
また本発明の液体用モータポンプは、前記連通手段が、前記隔壁と前記回転軸との間に設けられた隙間であるものである。
また本発明の液体用モータポンプは、前記連通手段が、前記隔壁の一部に設けられた貫通孔であるものである。
【0012】
また本発明の液体用モータポンプは、前記連通手段が、前記第一ポンプ室と前記第二ポンプ室を連通する連通路であるものである。
また本発明の液体用モータポンプは、前記第一インペラによるポンプ能力と前記第二インペラによるポンプ能力の能力比が1.5倍以上であるものである。
【0013】
また本発明にかかる食器洗浄機は、食器類を洗浄する洗浄水を貯留する貯水槽と、食器類に洗浄水を噴射するノズルアームと、洗浄水を装置外部に排出するための排水路と、液体用モータポンプとを備え、前記液体用モータポンプは、モータの回転軸にこの回転軸が貫通する隔壁を挟んで設けられた第一インペラ及び第二インペラと、前記第一インペラと第二インペラをそれぞれケーシングで覆うことにより形成された第一ポンプ室及び第二ポンプ室と、前記第一ポンプ室と第二ポンプ室の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段と、前記第一ポンプ室に液体を吸い込む第一吸込口と、前記第一ポンプ室から液体を吐出する第一吐出口と、前記第二ポンプ室に液体を吸い込む第二吸込口と、前記第二ポンプ室から液体を吐出する第二吐出口とを有し、前記第一インペラによるポンプ能力と第二インペラによるポンプ能力に差異を有するものであり、前記第一吸込口と前記第二吸込口が前記貯水槽に接続され、前記第一吐出口と前記第二吐出口のいずれか一方が前記ノズルアームに、他方が前記排水路に接続されたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
実施の形態1.
図1に本発明における液体用モータポンプの一実施形態の分解斜視図を、図2に前記図1に記載した本発明の液体用モータポンプの一実施形態の側面断面図を記載する。
【0015】
図1に示すように、本発明の液体用モータポンプ1は、ポンプの動力であるポンプモータ2を有し、前記ポンプモータ2は、ポンプモータ2の駆動によって正転及び逆転方向に回転可能な回転軸3を備えている。そして、回転軸3の最も根元側には第二ポンプ室ケーシング4が、ポンプモータ2の端面に取り付けられている。この第二ポンプ室ケーシング4は、ポンプモータを液体からシールするためのメカニカルシール5を備え、回転軸3を回転可能としたままポンプモータ2を液体からシールしている。
【0016】
続いて、第二インペラ6が第二インペラ補強金具7をはさんで回転軸3に通され、その上から第一ポンプ室と第二ポンプ室を区画する隔壁23を有する隔壁ケーシング8、第一インペラ補強金具9、第一インペラ10の順番でそれぞれ回転軸3に通されプッシュナット11で固定される。これにより第一インペラ10と第二インペラ6は回転軸3が貫通する隔壁23をはさんで回転軸3に固着されることとなる。
【0017】
また第一インペラ10に第一ポンプ室ケーシング12を被せ、ポンプケーシング用締付けネジ13によって、第一ポンプ室ケーシング12、隔壁ケーシング8、第二ポンプ室ケーシング4をそれぞれ固定する事で液体用モータポンプ1が形成されている。なお、第一ポンプ室ケーシング12、隔壁ケーシング8、第二ポンプ室ケーシング4を固定する際に、第一ポンプ室ケーシング12と隔壁ケーシング8の間に第一ポンプ室シールリング15を、隔壁ケーシング8と第二ポンプ室ケーシング4の間に第二ポンプ室シールリング16をそれぞれ挟み込む事で、それぞれのポンプ室を外部とシールしている。
また、本実施形態の液体用モータポンプ1は、ポンプを使用する装置などに取り付けるための取付板14を備えている。
【0018】
このように組み立てられた本発明の一実施形態である液体用モータポンプ1の、概要側断面図を図2に示す。なお、同図において図1と同じ構成要素に対応する部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0019】
図2に示すように、モータ2の回転軸3に固着された第二インペラ6は、第二ポンプ室ケーシング4と隔壁ケーシング8によって形成された第二ポンプ室22に配置されている。また、モータ2の回転軸3に固着された第一インペラ10は、第一ポンプ室ケーシング12と隔壁ケーシング8によって形成された第一ポンプ室21に配置されている。
【0020】
そして第一ポンプ室21の第一インペラ10の前方には第一吸込口17が、第一ポンプ室21の下方には、第一吐出口18が形成されており、本実施形態における液体用モータポンプ1がモータ2を正回転して駆動させたときに第一インペラ10によるポンプ能力が発揮され、前記第一吸込口17より液体を吸い込み、第一吐出口18より液体を送出するように動作する。
【0021】
また、第二ポンプ室22の下方には第二吸込口19が、第二ポンプ室22の上方には第二吐出口20が形成されており、本実施形態における液体用モータポンプ1がモータ2を逆回転して駆動させたときに第二インペラ6によるポンプ能力が発揮され、前記第二吸込口19より液体を吸い込み、第二吐出口20より液体を送出するように動作する。
【0022】
このように、本発明の液体用モータポンプ1は、モータ2の回転軸3に、前記回転軸3が貫通する隔壁23を挟んで第一インペラ10と第二インペラ6を備え、前記第一インペラ10がケーシングである隔壁ケーシング8、第一ポンプ室ケーシング12により覆われ、第二インペラ6がケーシングである第二ポンプ室ケーシング4、隔壁ケーシング8により覆われて、第一ポンプ室21と第二ポンプ室22がそれぞれ形成されている。
【0023】
そして、本発明において特徴的な事は、前記第一ポンプ室21と第二ポンプ室22の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段を有し、前記第一インペラ10によるポンプ能力と第二インペラ6によるポンプ能力に差異を有することである。
【0024】
本実施の形態1では前記連通手段として、隔壁23と前記隔壁23を貫通する回転軸3との間に隙間24が設けられている。この隙間24は従来のように液体がかろうじて通るような大きさでなく、ある程度の大きさを持つ気泡が通る大きさを有するものである。
【0025】
また、本実施の形態1では第一インペラ10によるポンプ能力が第二インペラ6によるポンプ能力より大きく構成されており、第一インペラ10によるポンプ能力は60l/min、第二インペラ6によるポンプ能力は15l/minとして1.5倍以上の能力比である4倍の能力比で構成されている。
【0026】
このような構成によって、本発明の液体用モータポンプ1を作動させると、モータ2が正回転で駆動された時には第一インペラ10によるポンプ能力が発揮され、モータ2が逆回転で駆動されたときには第二インペラ6によるポンプ能力が発揮されるのであるが、連通手段を設けたことにより、第一ポンプ室21及び第二ポンプ室22内部に存在する液体や気泡は、モータ2が正回転、逆回転どちらで駆動されたとしてもポンプ能力の大きい方に引き寄せられる作用があり、ポンプ能力の小さい第二インペラ6が配置された第二ポンプ室22内部に存在する気泡は第一ポンプ室21に連通手段である隙間24を通って移動されるのである。
【0027】
さらに第一インペラによるポンプ能力は、第二ポンプ室22内から引き寄せられた気泡もろとも第一ポンプ室内の液体を第一吐出口18から押し流してしまうのに十分な能力を有しており、第一ポンプ室21及び第二ポンプ室22内部に進入した気泡はポンプ室外部に排出される事となる。
【0028】
このように、本発明による液体用モータポンプ1は、第一ポンプ室21、第二ポンプ室22内に進入した気泡を外部に除去していく事が出来るため、キャビテーション現象を抑制し、ポンプ能力を高める事が可能となる。また気泡がポンプ室内から除去されていくため泡噛みが発生する事が無く、これによって泡噛みによる騒音を抑制する事が出来る。
【0029】
このような効果は、モータ2の正回転時に第二ポンプ室22で発生が予測される第二吐出口20からの逆流を防止するための逆流防止弁などの逆流防止手段や、モータ2の逆回転時に第一ポンプ室21で発生が予測される第一吐出口18からの逆流を防止する逆流防止弁などの逆流防止手段を設けたとしても得る事が出来るため、このような逆流防止手段を設ける事も可能である。
【0030】
なお、本実施形態においてはポンプ能力の大きな第一インペラによるポンプ能力が気泡を液体とともに外部に押し流すのに十分な能力を有していたが、このように、本発明における液体用モータポンプは、大きい側のポンプ能力が、少なくとも気泡もろとも液体を送出するのに十分な能力を有している事が好適である。
【0031】
また、本発明における液体用モータポンプにおいて、第一インペラによるポンプ能力と第二インペラによるポンプ能力の能力比が小さいと、気泡の移動が十分に得られないことがあるため、少なくとも1.5倍以上、さらに好適には2倍以上である事が好適である。このようにポンプの能力比が大きいほど気泡が好適に移動していく傾向がある。
【0032】
なお、本実施の形態1では第一インペラによるポンプ能力の方が大きい構成の液体用モータポンプを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、第二インペラによるポンプ能力の方が大きいような構成としても、同様の効果を得ることが出来る。このような場合には、第一ポンプ室に存在する気泡が第二ポンプ室に引き寄せられ、第二ポンプ室に存在する気泡は、第二インペラによるポンプ作用によって第二ポンプ室からモータポンプ外部に排出されるものとなる。
【0033】
実施の形態2.
図3に、本発明の液体用モータポンプにおける他の一実施形態の側面断面図を記載する。なお同図において、実施の形態1と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
本実施形態は、実施の形態1で説明した液体用モータポンプとほぼ同じ構成を有しており、実施の形態1で図1を用いて説明したのと同様の組み立て手順により組み立てる事が出来る。実施の形態1との違いは、図3に示すように、連通手段として、隔壁23の一部に図2に示した隙間24に代わって貫通孔25が設けられたことである。
【0035】
本実施形態においても、第一インペラによるポンプ能力の方が第二インペラによるポンプ能力よりも大きいため、ポンプ室内部に存在する液体や気泡は、モータ2が正回転、逆回転どちらで駆動されたとしても、貫通孔25を通って、ポンプ能力の大きい第一ポンプ室の方に引き寄せられる。第一ポンプ室に引き寄せられた気泡は、第一ポンプ室21内の液体とともにを第一吐出口18から押し流されることで、第一ポンプ室21内に進入した気泡を外部に除去していく事が出来る。このため、キャビテーション現象を抑制し、ポンプ能力を高める事が可能となる。また気泡がポンプ室内から除去されていくため泡噛みが発生する事が無く、これによって泡噛みによる騒音を抑制する事が出来るという実施の形態1と同様の効果を得られる。
【0036】
本実施形態において特徴的な事は、貫通孔25が隔壁23の任意の部分に設けることができ、さまざまな設計的、装置構成的条件に合わせて容易に適用する事が可能な点である。そして、隔壁のどの部分に貫通孔25を設けたとしても実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
特に、本発明の液体用モータポンプ1を装置などに設置する際の配置状態が把握されているならば、貫通孔25が液体用モータポンプ1を配置した状態でポンプ室上部に該当する部分に設けられることが好適である。これは気泡が液体用モータポンプ1を配置した状態でポンプ室の上部に溜まっていく傾向にあるため、この気泡が溜まる部分に貫通孔25を設ける事によって、より好適にポンプ室内の気泡を除去する事が可能となるからである。
【0038】
図3に記載した本実施の形態においては、液体用モータポンプ1が取り付け板14によって、図3に示したような水平横向きに設置されるものであり、このため、第一ポンプ室21及び第二ポンプ室22の上部に該当する部分に貫通孔25が設けられている。
【0039】
実施の形態3.
図4に、本発明の液体用モータポンプにおける他の一実施形態の側面断面図を記載する。なお同図において、実施の形態1と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施形態は、実施の形態1で説明した液体用モータポンプとほぼ同じ構成を有しており、実施の形態1で図1を用いて説明したのと同様の組み立て手順により組み立てる事が出来る。実施の形態1との違いは、図4に示すように、連通手段として、隔壁23の一部に図2に示した隙間24に代わって第一ポンプ室21と第二ポンプ室22を連通する連通路26が設けられたことである。
【0041】
本実施形態においても、第一インペラによるポンプ能力の方が第二インペラによるポンプ能力よりも大きいため、ポンプ室内部に存在する液体や気泡は、モータ2が正回転、逆回転どちらで駆動されたとしても、連通路26を通って、ポンプ能力の大きい第一ポンプ室の方に引き寄せられる。第一ポンプ室に引き寄せられた気泡は、第一ポンプ室21内の液体とともにを第一吐出口18から押し流されることで、第一ポンプ室21内に進入した気泡を外部に除去していく事が出来る。このため、キャビテーション現象を抑制し、ポンプ能力を高める事が可能となる。また気泡がポンプ室内から除去されていくため泡噛みが発生する事が無く、これによって泡噛みによる騒音を抑制する事が出来るという実施の形態1と同様の効果を得られる。
【0042】
本実施形態において特徴的な事は、連通路26を第一ポンプ室と第二ポンプ室を連通し得る任意の部分に設けることができ、さまざまな設計的、装置構成的条件に合わせて容易に適用する事が可能な点である。そして、連通路26をどの部分に設けたとしても実施の形態1で説明したのと同様の効果を得ることが可能となる。
【0043】
特に、本発明の液体用モータポンプ1を装置などに設置する際の配置状態が把握されているならば、連通路26が液体用モータポンプ1を配置した状態でポンプ室上方に該当する部分に設けられることが好適である。これは前記実施の形態2と同様に気泡が液体用モータポンプ1を配置した状態でポンプ室の上部に溜まっていく傾向を利用して、この気泡が溜まる部分に連通路26を設ける事によって、連通路26自体がポンプ室よりも上方に位置する部分に配置される事となり、より好適にポンプ室内の気泡を除去する事が可能となるからである。
【0044】
図4に記載した本実施の形態においては、液体用モータポンプ1が取り付け板14によって、図4に示したような水平横向きに設置されるものであり、このため、第一ポンプ室21及び第二ポンプ室22の上方に該当する部分に連通路26が設けられている。
【0045】
なお、本実施の形態においては、連通路26が第一ポンプ室ケーシング12や隔壁ケーシング8と一体的に形成されているが、本発明の液体用モータポンプに連通路を形成するのに、チューブやパイプを用いて接続する事も可能であり、このような連通路を形成する材料に特に限定はない。
【0046】
実施の形態4.
図5に本発明の液体用モータポンプを用いた食器洗浄機の概要構成を示す断面図を記載する。なお同図において、図1〜4と同じ構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図5に示す食器洗浄機50は、食器類を収容し洗浄するための洗浄室(乾燥室を兼用する)51を有し、前記洗浄室51には、食器類を載置するための食器籠(図示せず)が収容可能となっている。また洗浄室51は、洗浄水等が飛散しないように蓋52で覆われている。洗浄室51の底部中央には回転自在に取り付けられたノズルアーム53が設けられており、前記ノズルアームの上面には所定の角度をもって洗浄水を噴出する複数の噴出口54が形成されている。そして洗浄室51の底部には、循環口55及び排水口56が設けられた貯水槽57と、排水を外部に排出するための排水路である排水ホース59を備えており、この貯水槽57の上面は、食器類から流れ落ちた残菜類を除去するための残菜フィルター58が設けられている。
【0048】
本実施の形態における食器洗浄機50には、前記各実施の形態で説明したような本発明の液体用モータポンプ1が洗浄室51の外底部に配置されている。この液体用モータポンプ1は、循環口55と液体用モータポンプの第一吸込口17、ノズルアーム53と第一吐出口18、排水口56と第二吸込口19、排水ホース59と第二吐出口20がそれぞれ接続されている。そして食器の洗浄時には、本発明のモータポンプ1を正回転させて作動させる事で貯水槽57の循環口55から第一ポンプ室内に洗浄水を吸い込み、吸い込んだ洗浄水を第一吐出口18から強力な吐出圧でノズルアーム53に圧送する。また排水時には、本発明のモータポンプ1を逆回転させて作動させる事で貯水槽57の排水口56から第二ポンプ室内に洗浄水を吸い込み、吸い込んだ洗浄水を第二吐出口20から排水ホース59に送出し、食器洗浄機外部に排水する。
【0049】
本発明における液体用モータポンプ1の構成は、図1〜4に示すものであって、液体用モータポンプ1は、モータ2の回転軸3に、前記回転軸3が貫通する隔壁23を挟んで第一インペラ10と第二インペラ6を備え、前記第一インペラ10がケーシングである隔壁ケーシング8、第一ポンプ室ケーシング12により覆われ、第二インペラ6がケーシングである第二ポンプ室ケーシング4、隔壁ケーシング8により覆われて、第一ポンプ室21と第二ポンプ室22がそれぞれ形成されている。そして、前記説明したように第一ポンプ室21と第二ポンプ室22の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段を有し、前記第一インペラ10によるポンプ能力と第二インペラ6によるポンプ能力に差異を有しており、本実施の形態では第一インペラ10によるポンプ能力の方が第二インペラ6によるポンプ能力より大きい構成となっている。
【0050】
これにより、本実施の形態の食器洗浄機50を作動させると、食器洗浄機50に制御されながら本発明の液体用モータポンプ1も作動される。そしてモータ2が正回転、逆回転どちらで駆動されたとしてもポンプ能力の大きい第一ポンプ室21側に液体や気泡が引き寄せられ、ポンプ能力の小さい第二ポンプ室22内部に存在する気泡は連通手段を通って第一ポンプ室21に移動され、第一インペラ10によるポンプ作用により、本実施の形態では第一ポンプ室21からノズルアーム53を通り、ノズルアーム53の複数の噴射口54よりポンプ室内部の気泡が排出される事となる。
【0051】
このように、本発明の液体用モータポンプ1を食器洗浄機に用いた場合、液体用モータポンプ1が第一、第二ポンプ室内に進入した気泡を外部に除去する事ができるため、キャビテーション現象を抑制し、ポンプ能力を高める事ができ、良好な食器類の洗浄が可能となる。よって例えば排水が行えなかったり、洗浄が十分行えない等の食器洗浄機の動作異常を好適に防止する事ができる。また気泡が液体用モータポンプ1のポンプ室内から除去されていくため泡噛みが発生する事が無く、これによって泡噛みによる騒音を抑制する事が出来るため、主に室内で使用される家電製品であって、騒音低減の要求の大きい食器洗浄機において、食器洗浄機の作動中におけるモータの作動音を極力小さく保つ事が可能となる。
【0052】
特に、食器洗浄機50では、ノズルアーム53から勢い良く洗浄水が噴射され、食器類や蓋52に洗浄水が衝突し、水滴が砕けることで、貯水槽57内にたくさんの気泡が入り易くなっている。また、食器類の汚れを落し易くするため界面活性剤等を使用している場合などには、さらに気泡が生じ易く、消え難くなるため、食器洗浄機50に用いられる液体用モータポンプ1にはポンプ室内にたくさんの気泡が溜まり易いと言う問題があったが、本発明の食器洗浄機50では、用いられた液体用モータポンプ1の第一インペラ10によるポンプ能力と第二インペラ6によるポンプ能力に差異を有し、かつ第一ポンプ室21と第二ポンプ室22を連通する連通手段を設けて構成されているので、気泡が素早く液体用モータポンプ1外に排出されるため、このような問題を解決することが可能となる。
【0053】
なお、本実施の形態4では、第一インペラ10によるポンプ能力が第二インペラ6によるポンプ能力より大きい液体用モータポンプ1を食器洗浄機に適用した例を用いて説明したが、これとは逆に第二インペラ6によるポンプ能力が第一インペラ10によるポンプ能力より大きい液体用モータポンプ1であっても、同様に食器洗浄機に用いる事が可能である。このような場合も、食器洗浄機50を作動させると、食器洗浄機50に制御されながら本発明の液体用モータポンプ1も作動される。そしてモータ2が正回転、逆回転どちらで駆動されたとしてもポンプ能力の大きい第二ポンプ室22側に液体や気泡が引き寄せられ、ポンプ能力の小さい第一ポンプ室21内部に存在する気泡は連通手段を通って第二ポンプ室22に移動され、第二インペラ6によるポンプ作用により、第二ポンプ室22から排水ホース59を通ってポンプ室内部の気泡が排出される事となる。
【0054】
ここで、食器洗浄機に用いるモータポンプにおいて、ポンプ室外への気泡の排出のみを考慮した場合、第一インペラ及び第二インペラによるポンプ能力を共にパワーアップし、両ポンプ能力とも気泡もろとも液体をポンプ室外へ排出するように構成すれば、本発明のように連通手段を設けなくとも問題を解決することは可能である。ところが、このような構成とするためには、モータポンプを大型化しなければならないという問題がある。
【0055】
つまり、図1〜4に示すモータポンプの場合、第一ポンプ室21のように、第一吸込口17が第一インペラ17の回転軸方向にあり、第一吐出口18が第一インペラ10の回転方向に備えられた構成のポンプ室では、比較的大きなポンプ能力を確保し易いのに対して、第二ポンプ室22のような第二インペラ6の回転方向に第二吸込口19及び第二吐出口20が備えられた構成であると、大きなポンプ能力を得る為には第二インペラ6を大型化しなければならない。従って、両インペラによるポンプ能力を共に気泡もろとも液体をポンプ室外へ排出するように構成するためには、第二インペラ6を大型化する必要があり、第二インペラ6を大型化するとモータポンプ全体としても大型化してしまい、それによって食器洗浄機自体が大型化してまうのである。またモータポンプを構成するためのコスト的負担も大きくなるなどの問題も発生する。
【0056】
このように、ポンプ室の構造によるポンプ能力への影響を考慮すると、本発明の液体用モータポンプ1を食器洗浄機50に用いる場合は、モータ2の回転軸3の根元側に第二ポンプ室22、先端側に第一ポンプ室21が形成され、第一ポンプ室21に設けられた第一吸込口17が第一インペラ10の回転軸方向に、第一吐出口18が第一インペラ10の回転方向に設けられ、第二ポンプ室22に設けられた第二吸込口19及び第二吐出口20が共に第二インペラ6の回転方向に設けられており、第一インペラ10によるポンプ能力が第二インペラ6によるポンプ能力より大きいポンプを用いることが好適である。
【0057】
すなわち、第一ポンプ室21の第一吸込口17が第一インペラ10の回転軸方向に設けられた液体用モータポンプ1は、第一インペラ10によるポンプ能力を大きく確保し易くなるため、第二インペラによるポンプ能力は小さいままで、第一ポンプ室21と第二ポンプ室22を連通手段により連通して、第一インペラ10によるポンプ能力のみを気泡もろとも液体をポンプ室外へ排出するように構成することで、より小型のモータポンプで食器洗浄機を構成することができ、設置スペースの限られた屋内、特にキッチンなどに設置される食器洗浄機が大型化することを防止することが可能となる。
【0058】
なお、このように本発明の液体用モータポンプを食器洗浄機に用いた際の、モータの正回転、逆回転にともなって発生が予測される逆流を防止する逆流防止弁などの逆流防止手段を設ける場合には、本発明の液体用モータポンプ1自身でなく、循環口55、排水口56、排水ホース59などの接続された食器洗浄機の構成要素に設ける事も可能であり、このように構成する事に特に限定はない。
【0059】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の液体用モータポンプによれば、キャビテーション現象や泡噛みによる騒音の発生を起こりにくくする事が出来る。
また、本発明の食器洗浄機によれば、作動中におけるモータの作動音を極力小さく保つ事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1における液体用モータポンプの分解斜視図である。
【図2】 前記図1に記載した本発明の実施の形態1における液体用モータポンプの側面断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態2における液体用モータポンプの側面断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態3における液体用モータポンプの側面断面図である。
【図5】 本発明の液体用モータポンプを用いた食器洗浄機である実施の形態4の概要構成を示す断面図である。
【図6】 従来の液体用モータポンプの構成を説明するための側面断面図である。
【図7】 従来の他の液体用モータポンプの構成を説明するための側面断面図である。
【符号の説明】
1 液体用モータポンプ、2 モータ、3 回転軸、4 第二ポンプ室ケーシング、6 第二インペラ、8 隔壁ケーシング、10 第一インペラ、12 第一ポンプ室ケーシング、21 第一ポンプ室、22 第二ポンプ室、23 隔壁、24 隙間、25 貫通孔、26 連通路。
Claims (6)
- モータの回転軸に、前記回転軸が貫通する隔壁を挟んで第一インペラと第二インペラを備え、前記第一インペラと第二インペラがそれぞれケーシングにより覆われて、第一ポンプ室と第二ポンプ室が形成されており、
前記第一ポンプ室と第二ポンプ室の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段を有し、
前記第一インペラによるポンプ能力と第二インペラによるポンプ能力に差異を有することを特徴とする液体用モータポンプ。 - 前記連通手段が、前記隔壁と前記回転軸との間に設けられた隙間であることを特徴とする請求項1に記載の液体用モータポンプ。
- 前記連通手段が、前記隔壁の一部に設けられた貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載の液体用モータポンプ。
- 前記連通手段が、前記第一ポンプ室と前記第二ポンプ室を連通する連通路であることを特徴とする請求項1に記載の液体用モータポンプ。
- 前記第一インペラによるポンプ能力と前記第二インペラによるポンプ能力の能力比が1.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液体用モータポンプ。
- 食器類を洗浄する洗浄水を貯留する貯水槽と、食器類に洗浄水を噴射するノズルアームと、洗浄水を装置外部に排出するための排水路と、液体用モータポンプとを備え、
前記液体用モータポンプは、モータの回転軸にこの回転軸が貫通する隔壁を挟んで設けられた第一インペラ及び第二インペラと、前記第一インペラと第二インペラをそれぞれケーシングで覆うことにより形成された第一ポンプ室及び第二ポンプ室と、前記第一ポンプ室と第二ポンプ室の間で少なくとも気泡の移動を可能とする連通手段と、前記第一ポンプ室に液体を吸い込む第一吸込口と、前記第一ポンプ室から液体を吐出する第一吐出口と、前記第二ポンプ室に液体を吸い込む第二吸込口と、前記第二ポンプ室から液体を吐出する第二吐出口とを有し、前記第一インペラによるポンプ能力と第二インペラによるポンプ能力に差異を有するものであり、
前記第一吸込口と前記第二吸込口が前記貯水槽に接続され、
前記第一吐出口と前記第二吐出口のいずれか一方が前記ノズルアームに、他方が前記排水路に接続されたことを特徴とする食器洗浄機。
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