JP3741421B2 - データ通信方法及び通信端末装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線通信回線を含む通信網を介して複数の通信端末装置との間でトランスポート制御プロトコル(TCP)を用いたデータ通信を行うデータ通信方法及び通信端末装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、通信網における通信に用いるネットワーク・プロトコルとして、トランスポート制御プロトコル(Transport Control Protocol:以下「TCP」という。)が知られている。このTCPは、ネットワーク階層のトランスポート層で用いられるフロー制御機能を有するプロトコルであり、インターネットにおける通信の標準的なプロトコルとして用いられている。また、このTCPは、携帯電話などの移動情報端末から無線通信回線を含む通信網を介してインターネットへ接続して通信するときにも使用される。
【0003】
図4は、上記TCPを用いて通信網の2つの通信端末装置(クライアント501、サーバー502)の間で通信を行なうときの接続確立処理およびデータ送信のシーケンスの一例を示している。
図4に示すようにTCPの接続確立処理では、まずアクティブオープンを実行するクライアント501側からパッシブオープンを実行するサーバー502側へ、クライアント501の初期シーケンス番号(ISN:Initial Sequence Number)とサーバー502のポート番号とを指定したセグメント1(SYNセグメント)が送信される。ここで、「セグメント」とは、TCPが下位のネットワーク層とのやりとりを行なう時のデータの単位である。また、「SYNセグメント」とはセグメント内に設けられた複数の制御フラグのうち、シーケンス番号の同期をとるためのSYN(Synchronize)フラグに「1」をセットしたセグメントである。
次に、サーバー502は、上記セグメント1を受信した後、サーバー側の初期シーケンス番号を含むセグメント2(SYN+ACKセグメント)で応答する。また、このセグメント2の送信において、クライアント501の初期シーケンス番号に1を加算したACKを出すことにより、クライアント501のSYNに確認応答する。次に、クライアント501は、サーバー502から送信されてきたセグメント2のSYNに対して、サーバー502の初期シーケンス番号に1を加算したセグメント3(ACKセグメント)を送信して確認応答する。このようにクライアント501とサーバー502との間で3つのセグメントの送受信を行なう3ウェイハンドシェイクの接続確立処理を行なう。ここで、上記「ACKセグメント」は、上記SYNセグメントや後述のFINセグメントを含むTCPセグメントに対して確認応答するACK(Acknowledgement)フラグに「1」がセットされたセグメントである。また、上記接続処理手順の他にSYNセグメントと送信するデータを同じセグメントで送信するTransaction TCP(T/TCP)と呼ばれる機能を実行する場合もある。
【0004】
また、上記TCPにおいて転送対象のデータを送信するときは、上記接続確立処理の後、クライアント501側からサーバー502側へ、転送対象のデータを含むセグメント4(データセグメント)が送信される。次に、サーバー502はセグメント4を受信すると、セグメント5(ACKセグメント)を送信して確認応答する。これにより、クライアント501側からサーバー502側へのデータ転送が完了する。
なお、転送対象のデータ送信においては、上記クライアント501側がACKセグメントを受け取るまでに、サーバー502から受け取ったウィンドウと呼ばれるパラメータで規定される複数のデータセグメントを送信する場合もある。また、送信側のクライアント501で輻輳ウィンドウ(cwnd)と呼ばれるパラメータを設定し、この輻輳ウィンドウ(cwnd)の値を次第に増やすことにより、最初の1セグメントから次第にセグメント数を増加させながらサーバー502に対してデータ送信を行う「スロー・スタート」と呼ばれる機能を実行する場合もある。
【0005】
以上のようにクライアント501とサーバー502との間でセグメントの送受信を行ってデータ転送を行うときに、通信回線上でのデータセグメントやACKセグメントを含むパケットの消失などにより、確認応答のACKセグメントがクライアント501側に届かない場合がある。そこで、このようなセグメントの不達によるデータ転送の信頼性低下を回避するために、再送タイマーを用いて、例えば図5に示すように一定の再送タイムアウト時間RTOが経過したタイミングでセグメント4を再送する処理が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、無線通信回線を含む通信網では、有線通信回線のみで構成された通信網に比して回線品質が悪いため、クライアント501がサーバー502へデータセグメントを送信してからサーバー502からACKセグメントを受信するまでの往復時間(RTT:Round Trip Time,図6参照)が長くなってしまう傾向がある。そのため、無線通信回線を含む通信網においては通信回線上でパケットの消失が発生していないにもかかわらず、再送タイムアウト時間RTOの経過に基づいてデータセグメントを再送してしまうおそれがある。このようにデータセグメントを誤って再送してしまうと、通信回線上に無駄なパケットが存在し、通信回線の利用効率が低下してしまう。また、上記データセグメントの誤った再送がひどくなると通信回線の輻輳も発生しやすくなる。さらに、上記「スロー・スタート」と呼ばれる機能を実行する場合にデータセグメントを誤って再送してしまうと、上記輻輳ウィンドウ(cwnd)が初期値の「1」になり、データ転送効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は以上の背景の下でなされたものであり、その目的は、無線通信回線を含む通信網を介してTCPを用いたデータ通信を行う場合に、通信網を構成する通信回線の利用効率の低下を抑制するとともに、通信回線の輻輳を未然に防止することが可能となるデータ通信方法及び通信端末装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、無線通信回線を含む通信網を介して複数の通信端末装置間でトランスポート制御プロトコル(TCP)を用いたデータ通信を行うデータ通信方法であって、送信側の通信端末装置が、連続的に送信する複数のデータにおける最初のデータの送信前に、該通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値よりも長い固定値を、該複数のデータのすべてに共通に適用すべき再送タイムアウト時間として一旦設定し、該再送タイムアウト時間を設定した後に、受信側の通信端末装置に対して該複数のデータを順次送信し、該送信側の通信端末装置が、該複数のデータを順次送信している際に、該データを送信した後該再送タイムアウト時間以内に該データについて該受信側の通信端末装置から確認応答データを受信できないタイムアウトが連続して発生した場合には、該再送タイムアウト時間を増加させるように変更し、該変更後の再送タイムアウト時間を、その変更後に送信する残りのデータに共通に適用すべき新たな再送タイムアウト時間として用いることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、無線通信回線を含む通信網を介して受信側の通信端末装置との間でトランスポート制御プロトコル(TCP)を用いたデータ通信を行う通信端末装置であって、連続的に送信する複数のデータにおける最初のデータの送信前に、該通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値よりも長い固定値を、該複数のデータのすべてに共通に適用すべき再送タイムアウト時間として一旦設定し、該再送タイムアウト時間を設定した後に、該受信側の通信端末装置に対して該複数のデータを順次送信するデータ送信処理を行う手段を備え、該複数のデータを順次送信している際に、該データを送信した後該再送タイムアウト時間以内に該データについて該受信側の通信端末装置から確認応答データを受信できないタイムアウトが連続して発生した場合には、該再送タイムアウト時間を増加させるように変更し、該変更後の再送タイムアウト時間を、その変更後に送信する残りのデータに共通に適用すべき新たな再送タイムアウト時間として用いることを特徴とするものである。
【0009】
なお、上記「通信端末装置」には、クライアント装置やサーバー装置等として用いられるコンピュータのほか、データの送受信する機能を有するルーター等の中継装置も含まれる。
また、上記「無線通信回線を含む通信網」には、携帯電話通信網のほか、通信衛星を用いる衛星通信回線を経由した通信網も含まれる。
また、上記トランスポート制御プロトコル(TCP)には、通常のTCPのほか、オプションが設定されたTCPも含まれる。例えば、RFC(Request For Comment)1379、1644に定義が記述されているトランザクション処理に適したT/TCPも含まれる。
【0010】
この請求項1データ通信方法及び請求項2の通信端末装置では、連続的に送信する複数のデータにおける最初のデータの送信前に、通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値よりも長い固定値を、複数のデータのすべてに共通に適用すべき再送タイムアウト時間として一旦設定している。このように再送タイムアウト時間として上記所定の固定値を設定することにより、送信側の通信端末装置から送信されたデータ又は受信側の通信端末装置から送信された確認応答データが通信回線上に存在している間に、データが再送されてしまう確率が低下する。これにより、通信網を構成する通信回線上に残る不要なデータが低減し、通信回線の利用効率の低下が抑制されるとともに、通信回線の輻輳が未然に防止される。
しかも、上記再送タイムアウト時間が固定値であるため、ラウンドトリップ時間(RTT)を計測して再送タイムアウト時間に反映させる等のデータ処理が不要となる。従って、上記情報端末装置が、小型化等の点でハードウェア上の制約がある携帯電話機等の場合でも、再送タイムアウト処理の組み込みが容易になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を情報端末装置としての携帯電話機とインターネット(The Internet)上のWWWサーバーとの間で無線通信回線を含む通信網を介してデータ通信を行なうデータ通信方法及びそのシステムに適用した一実施形態について説明する。
図2は、本実施形態に係る携帯電話通信網を用いたデータ通信システムのブロック図である。このデータ通信システムの通信網は、携帯電話通信網10と、通信プロトコル変換装置20と、インターネット側通信網30とにより構成されている。
【0014】
上記携帯電話通信網10は、通信端末装置(移動情報端末)としての携帯電話機11との間で無線通信回線12を介してデータ送受信する複数の基地局13と、各基地局13に対するデータ送受信を切り替えながら行なう交換機14とを備えている。この携帯電話通信網10では、伝送速度が比較的低い無線通信回線を含む場合でも高速のデータ転送が可能となるように、トランスポート層の通信プロトコルとして、トランザクション型のトランスポート制御プロトコルであるT/TCPが用いられている。このT/TCPは、通常のTCPとは異なりデータ送信に先立って行なうスリーウェイハンドシェイクの接続確立処理が不要であり、通常のTCPを用いた場合に比して、データの高速転送が可能となる。特にクライアント(携帯電話機)からの要求に対してサーバーが応答するというようなトランザクション処理を行なう場合に有利である。
【0015】
上記通信プロトコル変換装置20は、携帯電話通信網10に対してデータ送受信を行なう第1のデータ送受信部21と、インターネット通信網(第2の通信網)に対してデータ送受信を行なう第2のデータ送受信部22と、後述の通信プロトコル変換を含むデータ処理を行なうデータ処理部23とを備えている。上記第1のデータ送受信部21及び第2のデータ送受信部22は、ネットワーク・プロトコル階層のうち最下位のリンク層(「ネットワークインターフェース層」とも呼ばれる)における信号処理を行なうものであり、通信ケーブルとの物理的なインターフェースに関するハードウェア的な側面を処理する。また、上記データ処理部23では、後述のトランスポート層における通信プロトコル変換のほか、IP(Internet Protocol)を用いたパケットのルーティング処理などのデータ処理も行なう。
【0016】
上記インターネット側通信網30は、インターネット40に接続するためのゲートウェイサーバー31を備えている。このインターネット側通信網30では、トランスポート層の通信プロトコルとして、インターネット40で広く用いられている通常のTCPが採用されている。また、ゲートウェイサーバー31と上記通信プロトコル変換装置20との間は有線通信回線32で結ばれている。この有線通信回線32は、必要に応じて、例えばショートメールなどの伝送データの容量を制限した回線で構成したり、3000文字以上のロングメールや画像データなどの比較的大容量のデータを伝送することができるブロードバンドの回線で構成したり、あるいは、これらの複数の回線を切り替えて利用できるように構成したりすることができる。
【0017】
図3は、携帯電話通信網10にある携帯電話機11からインターネット側通信網30に接続されたインターネット40上のある特定のサイトのWWW(World Wide Web)サーバーにデータを送信するときのセグメントの送受信を示すシーケンス図である。
通信プロトコル変換装置20のデータ処理部23における携帯電話通信網10とのデータ送受信では、まず、第1のデータ送受信部21を介して、転送対象データ(data1)を含むSYNセグメント(セグメント101)を携帯電話通信網10から受信する。このセグメント101は、データの送信が終了したことを知らせるFINフラグも「1」にセットされている。また、このセグメント101には、T/TCP特有のオプションである6ビットのコネクション・カウントの値をセットするための「CC」が設けられている。データ処理部23は、セグメント101内のCC内の値(=x)と、データ処理部23内にキャッシュしている前回のコネクションにおける最後のCC値とを比較し、CC内の値(=x)がキャッシュされているCC値よりも大きいときは、セグメント101に含まれる転送対象データが新規のデータであると判断し、インターネット側通信網30に転送する。一方、受信したCC内の値(=x)がキャッシュされているCC値よりも小さいとき、あるいはデータ処理部23内にCC値がキャッシュされていないときは、通常のTCPにおけるスリーウェイハンドシェイクが実行される。
【0018】
次に、携帯電話通信網10から上記セグメント101を受信したデータ処理部23は、携帯電話機11に対してセグメント102(SYN+ACKセグメント)を送信する。このセグメント102では、SYNフラグとともに、上記セグメント101のSYNに対して確認応答するためのACKフラグにも「1」がセットされている。また、このセグメント102は、送信側のCC値をセットするためのデータ領域「CC」を有しており、この「CC」に、通信プロトコル変換装置20に対する所定の値(=y)がセットされている。さらに、受信したCC値をエコーするためのデータ領域「CC.ECHO」も有しており、この「CC.ECHO」に上記セグメント101のCCの値(=x)がセットされている。
【0019】
次に、上記セグメント102を受信した携帯電話機10から、SYNに確認応答するためのセグメント103(ACKセグメント)が送信されると、通信プロトコル変換装置20は、携帯電話機10から送信されてきたセグメント103を受信する。これにより、携帯電話機11から通信プロトコル変換装置20に対する一つのデータの転送が完了する。
このように、携帯電話通信網10の携帯電話機1から通信プロトコル変換装置20へのデータ伝送は、3つのセグメント101,102,103の送受信で完了する。
【0020】
一方、通信プロトコル変換装置20のデータ処理部23におけるインターネット側通信網30とのデータ送受信では、まず、携帯電話通信網10から上記セグメント101を受信した後、セグメント102を携帯電話通信網10へ送信する前に、第2のデータ送受信部22を介して、インターネット側通信網30の特定サイトのWWWサーバーに対する接続確立処理を開始している。この接続確立処理は、インターネット側通信網30に対してSYNセグメント(セグメント201)を送信することで開始される。その後のセグメントの送受信は通常のTCPによる手順で行なわれ、データ転送が完了した後、通常のTCPによる手順で接続終了処理が行なわれる。
【0021】
ここで、携帯電話機11からインターネット40の特定サイトのWWWサーバーへ複数の転送対象データ(data1, data2, data3, ・・・)を続けて転送する場合は、携帯電話通信網10から上記セグメント101〜103の送受信を行なって転送対象データを受信しつつ、インターネット側通信網20に対しては、接続確立処理を行なった後、転送対象データを含むセグメントの送信を繰り返して行ない、最後に接続終了処理を行なう。
【0022】
以上のように、携帯電話通信網10との間で最初のデータ転送処理に対するセグメント101の送信からセグメント102の受信までの間に、インターネット側通信網30に対する接続確立処理を開始することにより、セグメント101〜103の送受信が完了した後にインターネット側通信網30に対する接続確立処理を開始していた従来の通信プロトコル変換方法の場合に比して、通信プロトコル変換を伴うデータ転送の高速化を図ることができる。
【0023】
また、本実施形態では、送信側の通信端末装置で輻輳ウィンドウ(cwnd)と呼ばれるパラメータを設定し、この輻輳ウィンドウ(cwnd)の値を次第に増やすことにより、最初の1セグメントから次第にセグメント数を増加させながら受信先の通信端末装置に対してデータ送信を行う「スロー・スタート」と呼ばれる機能を実行している。
【0024】
図1は、本発明の特徴部である再送タイムアウト処理を伴う携帯電話機11や通信プロトコル変換装置20等の通信端末装置からのデータ送信処理を示すフローチャートである。図1の例では、携帯電話機11からインターネット40上のWWWサーバーにデータを送信する場合について示している。
このデータ送信処理では、まず、再送タイムアウト時間RTOを初期値10秒に設定し、タイムアウトの回数をカウントするタイムカウンタをリセットする(ステップ1,2)。次に、最初のセグメント101を送信し、再送タイマーTをリセットする(ステップ3)。このセグメント送信の後、再送タイマーをモニターし、再送タイマーの時間Tが再送タイムアウト時間RTOになる前に、WWWサーバーから確認応答のセグメント102を受信したときは、次の確認応答セグメント103を送信する(ステップ4,5)。そして、次の送信データがあるか否かを判断し(ステップ6)、すべてのデータが送信されるまでステップ2〜6を繰り返す。
【0025】
一方、再送タイマーの時間Tが再送タイムアウト時間RTOになるまで、WWWサーバーから確認応答のセグメント102を受信できなかったときは、上記セグメント101を再送し、再送タイマーTをリセットする(ステップ7,8,3)。なお、このセグメント101の再送に先立って、セグメント101についての最初のタイムアウトかどうかを判断し、連続してタイムアウトが発生しているときは、上記再送タイムアウト時間RTOを2倍にしていく「指数バックオフ」という処理を行う(ステップ8,9)。ただし、再送タイムアウト時間RTOの最大値は64秒と決められている。
【0026】
以上、本実施形態によれば、携帯電話機11等の送信側の通信端末装置からデータ送信するときの初期再送タイムアウト時間RTOを、通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値(6秒)よりも長い10秒に設定することにより、送信側の通信端末装置から送信されたセグメント又はそれに応答する受信側の通信端末装置から送信された確認応答セグメントが通信回線上に存在している間に、送信側の通信端末装置からセグメントが再送されてしまう確率を低下させることができる。従って、無線通信回線を含む携帯電話通信網10を介してTCPを用いたデータ通信を行う場合に、通信網を構成する無線通信回線12および有線通信回線32上に残る不要なセグメントを低減させ、通信回線の利用効率の低下を抑制するとともに、通信回線の輻輳を未然に防止することが可能となる。
また、本実施形態によれば、上記初期再送タイムアウト時間RTOが固定値の10秒にしているので、ラウンドトリップ時間(RTT)を計測して再送タイムアウト時間に反映させる等のデータ処理が不要となり、上記情報端末装置が、小型化等のためにハードウェア上の制約がある携帯電話機等の場合でも、再送タイムアウト処理の組み込みが容易になる。
また、本実施形態によれば、上記「スロー・スタート」と呼ばれる機能を実行する場合に、データセグメントを誤って再送する確率も低下するため、上記輻輳ウィンドウ(cwnd)が初期値の「1」になることによるデータ転送効率の低下を抑制することができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、初期再送タイムアウト時間RTOを10秒に設定しているが、限定されるものではなく、通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値(6秒)よりも長ければ、10秒に限定されるものではない。ここで、初期再送タイムアウト時間RTOは、通信網に含まれる無線通信回線における往復時間(RTT)等の伝送特性に基づいて最適値に設定するのが好ましい。
また、上記実施形態では、T/TCPを用いる通信網が、携帯電話機11と基地局13との間で直接通信を行なう無線通信回線を含む携帯電話通信網である場合について説明したが、本発明は、T/TCPを用いる通信網が、地上の携帯電話や基地局と通信衛星との間で通信を行なう衛星通信回線を含む通信網である場合にも適用できるものである。
また、上記実施形態では、通常のTCPを用いる通信網が、インターネット(The Internet)に接続するための通信回線を含む通信網(インターネット側通信網30)である場合について説明したが、本発明は、通常のTCPを用いる通信網がインターネットへの接続を目的にするものではない通信網である場合にも適用できるものである。
さらに、本発明は、上記T/TCPを用いずに、通常のTCPのみを用いてデータ通信を行う場合にも適用できるものである。
【0028】
【発明の効果】
請求項1及び2の発明によれば、無線通信回線を含む通信網を介してTCPを用いたデータ通信を行う場合に、通信網を構成する通信回線の利用効率の低下を抑制するとともに、通信回線の輻輳を未然に防止することが可能となる。しかも、ラウンドトリップ時間(RTT)を計測して再送タイムアウト時間に反映させる等のデータ処理が不要となるので、通信端末装置が、小型化等のためにハードウェア上の制約がある携帯電話機等の場合でも、再送タイムアウト処理の組み込みが容易になるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るデータ送信処理を示すフローチャート。
【図2】同データ送信処理を行う通信システムの概略構成を示すブロック図。
【図3】同データ通信システムにおける通信プロトコル変換を伴うセグメント送受信を示すシーケンス図。
【図4】通常のTCPを用いた接続確立処理及びデータ送信処理におけるセグメント送受信を示すシーケンス図。
【図5】再送タイムアウト時間RTOを説明するためのシーケンス図。
【図6】往復時間RTTを説明するためのシーケンス図。
【符号の説明】
10 携帯電話通信網
11 携帯電話機
12 無線通信回線
13 基地局
14 交換機
20 通信プロトコル変換装置
21 第1のデータ送受信部
22 第2のデータ送受信部
23 データ処理部
30 インターネット側通信網
31 ゲートウェイサーバー
32 有線通信回線
40 インターネット
Claims (2)
- 無線通信回線を含む通信網を介して複数の通信端末装置間でトランスポート制御プロトコル(TCP)を用いたデータ通信を行うデータ通信方法であって、
送信側の通信端末装置が、連続的に送信する複数のデータにおける最初のデータの送信前に、該通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値よりも長い固定値を、該複数のデータのすべてに共通に適用すべき再送タイムアウト時間として一旦設定し、該再送タイムアウト時間を設定した後に、受信側の通信端末装置に対して該複数のデータを順次送信し、
該送信側の通信端末装置が、該複数のデータを順次送信している際に、該データを送信した後該再送タイムアウト時間以内に該データについて該受信側の通信端末装置から確認応答データを受信できないタイムアウトが連続して発生した場合には、該再送タイムアウト時間を増加させるように変更し、該変更後の再送タイムアウト時間を、その変更後に送信する残りのデータに共通に適用すべき新たな再送タイムアウト時間として用いることを特徴とするデータ通信方法。 - 無線通信回線を含む通信網を介して受信側の通信端末装置との間でトランスポート制御プロトコル(TCP)を用いたデータ通信を行う通信端末装置であって、
連続的に送信する複数のデータにおける最初のデータの送信前に、該通信網の回線を有線通信回線のみで構成した場合の再送タイムアウト時間の推奨値よりも長い固定値を、該複数のデータのすべてに共通に適用すべき再送タイムアウト時間として一旦設定し、該再送タイムアウト時間を設定した後に、該受信側の通信端末装置に対して該複数のデータを順次送信するデータ送信処理を行う手段を備え、
該複数のデータを順次送信している際に、該データを送信した後該再送タイムアウト時間以内に該データについて該受信側の通信端末装置から確認応答データを受信できないタイムアウトが連続して発生した場合には、該再送タイムアウト時間を増加させるように変更し、該変更後の再送タイムアウト時間を、その変更後に送信する残りのデータに共通に適用すべき新たな再送タイムアウト時間として用いることを特徴とする通信端末装置。
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