JP3739534B2 - マスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物およびそれを用いた押出フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物およびそれを用いたフィルムに関する。詳しくは、マスターバッチの造粒工程での作業性や不活性物質の分散性の優れたマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物であり、さらには、それをシンジオタクティックポリプロピレンに添加することにより得られる、製膜工程での成形加工性に優れ、かつ透明性などの光学特性、柔軟性、手触りが良好でフィッシュアイの少ないフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にアイソタクティックポリプロピレンは、比較的安価で剛性、成形性に優れ、その成形品の外観も優れていることから広汎な分野で使用されている。一方、近年J.A.EWENらにより非対称な配位子を有する遷移金属触媒とアルミノキサンからなる触媒によってシンジオタクティックペンタッド分率が0.7を超えるようなタクティシティーの良好なポリプロピレンの得られることが発見された(J.Am.Chem.Soc.,1988,110,6255−6256)。このシンジオタクティックポリプロピレンの成形体は透明性および柔軟性、手触りが優れていることからこれらの特徴を生かした用途が期待されている。
【0003】
しかしながら、シンジオタクティックポリプロピレンはアイソタクティックポリプロピレンに比べて結晶化速度が著しく遅く、また結晶化度も低いため成形加工することは困難であった。例えば、造粒する際にはストランドが粘着あるいはたるんだり、T−ダイ押出成形する際にはフィルムが冷却ロールに巻きついたり、フィルム同士が粘着するなどの理由によりアイソタクティックポリプロピレンに比べ加工性が劣っていた。その改良方法としては、結晶化速度を速めるために種々の結晶核剤を添加(特開平3−54238)したり、また、造粒条件を改良(特開平4−187407)したりする方法が提案されている。また、フィルムとして使用する場合、フィルムの巻き戻し等の際の作業性を改善するためのスリップ剤やフィルム巻き取り後のフィルム同士の密着を防ぐためのアンチブロッキング剤を添加している。このようなスリップ剤やアンチブロッキング剤は、高濃度のマスターバッチとして添加し、この添加量を微妙に変えることによりフィルムとしての最低限の物性を維持しつつ、種々の用途や季節の影響に対応していることは公知である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高濃度のマスターバッチにおいては、スリップ剤やアンチブロッキング剤が高濃度になるため、製造中に発煙による作業環境の悪化することや、造粒の際ペレットに付着する水分が多くなったり、不活性物質が凝集したりして、高濃度のマスターバッチをシンジオタクティックポリプロピレンに添加した場合にピンホールやフィッシュアイによりその透明性を含めた外観を悪化させてしまうなどの問題があった。
【0005】
本発明は、従来のこのような欠点を解消し、造粒工程での作業環境を悪化させることなく、不活性物質の分散も良好なマスターバッチが得られ、それをシンジオタクティックポリプロピレンに添加することにより、製膜工程での成形加工性に優れ、かつ透明性などの光学特性、柔軟性、手触りが良好でフィッシュアイの少ないフィルムを与えることのできるマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物およびそれを用いたフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記問題を解決して成形加工性、透明性、柔軟性、手触りが良好で、フィッシュアイの少ない押出ポリプロピレンフィルムを製造するためのマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物を開発すべく鋭意検討し本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、結晶性ポリプロピレン100重量部、スリップ剤として高級脂肪酸アミド1.5〜2.6重量部、アンチブロッキング剤として架橋構造を有する球状の有機高分子化合物物質8.0〜12.0重量部、ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物を8.0〜16.0重量部配合したことを特徴とするマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物である。また、本発明は、シンジオタクティックポリプロピレン95.0〜97.5重量部に対して該マスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物5.0〜2.5重量部を配合し、押出成形することを特徴とするヘイズ値が4.0以下の透明性に優れた柔軟性押出ポリプロピレンフィルムの製造方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物、およびこれを用いた押出ポリプロピレンフィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0009】
1。マスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物
本発明の樹脂組成物の各成分およびその調製方法について述べる。
【0010】
(1) 結晶性ポリプロピレン
本発明において結晶性ポリプロピレンは、ポリプロピレンが結晶性であるかぎり特に制限はないが、アイソタクティックポリプロピレンでは、13C−NMRで測定したアイソタクティクペンタッド分率が0.80以上の高立体規則性のものが好ましく、プロピレン単独重合体のみならず、プロピレンとエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体も利用できる。共重合体中の他のオレフィンとしてのエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンの含量は6重量%以下のものが好ましい。またシンジオタクティックポリプロピレンでは13C−NMRで測定したシンジオタクティックペンタッド分率が0.70以上の高立体規則性のものが好ましい。また、アイソタクティックポリプロピレンとシンジオタクティックポリプロピレンの混合物であってもよい。特に、プロピレンとエチレンとの共重合体やシンジオタクティックポリプロピレンを主体で用いると、優れた物性のものが得られる。
【0011】
これらのポリプロピレンは市場で入手することが可能であり、また種々の組成、立体規則性のものを製造する多くの方法が知られている。
【0012】
アイソタクティックポリプロピレンまたはその共重合体を製造する場合に用いる触媒は、例えばソルベー触媒として知られているような三塩化チタン触媒や塩化マグネシウム等の担体上に三塩化チタンや四塩化チタンを担持した担持型触媒あるいはジインデニルジルコニウムジクロリド触媒とメチルアミノキサン助触媒の組み合わせで代表されるようなメタロセン触媒も利用できる。重合方法は不活性溶媒を用いる溶媒重合法、実質的に不活性溶媒を用いない塊状重合法、気相重合法などの従来の重合法が用いられ、重合温度は−100〜100℃、重合圧力は常圧〜50kg/cm2 −Gが一般的である。
【0013】
シンジオタクティックポリプロピレンまたはその共重合体を製造する場合に用いる触媒としては、前述の文献に記載された化合物の他に特開平2−41303号公報、特開平2−41305号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平4−69394号公報に記載されているような互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物および助触媒からなるような触媒を挙げることができるが、異なる構造の触媒であっても13C−NMRによって測定されるシンジオタクティックペンタッド分率が0.7以上のポリプロピレンを製造できるものであれば利用できる。
【0014】
非対称な配位子を有する遷移金属触媒としては具体的には、上記文献に記載されたイソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ハフニウムジクロリド、あるいはイソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが例示される。また助触媒としては、アルミノキサン特にメチルアミノキサンが好ましく用いられる。
【0015】
上記遷移金属触媒に対するアルミノキサンの使用割合は10〜1000000モル倍、通常50〜5000モル倍である。重合条件については特に制限はなく不活性媒体を用いる溶媒重合法、あるいは実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法も利用できる。重合温度は−100〜200℃、重合圧力は常圧〜100kg/cm2 −Gが一般的である。好ましくは−100〜100℃、常圧〜50kg/cm2 −Gである。
【0016】
これら結晶性ポリプロピレンの分子量としては230℃で測定したメルトフローインデックスが0.01〜100、好ましくは0.05〜50の範囲の比較的分子量の高いものが押出成形物の物性の点で好ましい。
【0017】
(2) スリップ剤
本発明におけるスリップ剤としては、特に制限はなく、高級脂肪酸アミドであって市場で入手可能であり、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミドが挙げられる。フィルムの経時の滑り性、浮き出しを考慮するとエルカ酸アミドが好ましい。
【0018】
スリップ剤の添加量は、結晶性ポリプロピレン100重量部に対して1.5〜2.6重量部、好ましくは1.6〜2.5重量部である。添加量が1.5重量部未満では、フィルムに必要な滑り性を得るためには、マスターバッチとして使用する際の使用量が多くなり、作業性が悪くなり好ましくない。添加量が2.6重量部を越えると、マスターバッチ造粒時に発煙が生じ、作業環境を悪化させ好ましくない。
【0019】
(3) アンチブロッキング剤
本発明においてアンチブロッキング剤は、前記の結晶性ポリプロピレンおよび組成物中の他の成分と反応しない球状の有機系不活性物質であり、架橋構造を有する有機高分子化合物物質である。そのようなものとしては、例えばラジカル重合性の二重結合を分子内に2個以上持つ化合物とラジカル重合性の二重結合を1つ持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを分散剤の種類、濃度などを制御することにより適当な粒子径となるようにエマルジョン重合し製造することが可能である。好ましい組成としては、高分子化合物粒子重合体中にアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの含量が50〜95重量%であるような重合体粒子である。
【0020】
ここでラジカル重合性の二重結合を分子内に2個以上持つ化合物とは、ジビニルベンゼンまたはその核置換誘導体、炭素数が1〜12で2〜3価のアルコールのアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステル、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが例示できる。また、有機高分子化合物粒子を製造するに際し、上記化合物の他にラジカル重合性の二重結合を有する他の化合物を併用することは可能であり、そのようなものとして、スチレンまたはその誘導体、α−メチルスチレンまたはその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが例示される。
【0021】
ここでアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの高分子重合体中の割合はアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが重合体中の50〜95重量%であるのが好ましく、50重量%より少ないとこのマスターバッチを使用した樹脂の透明性、耐スクラッチ性が不良となる。ラジカル重合性の二重結合を分子内に2個以上持つ化合物は重合体中の5〜50重量%であるのが好ましく、5重量%より少ないとマスターバッチとして使用した際耐熱性が不十分であり、50重量%より多いと粒子硬度が上昇し耐スクラッチ性不良となり好ましくない。
【0022】
球状の有機高分子化合物物質の好ましい平均粒径は0.1〜10.0μmであり、0.5〜5μmがさらに好ましい。この平均粒径が0.1μm未満のものでは、アンチブロッキング性が不十分であり、10.0μm超過のものでは、滑り性、アンチブロッキング性が特に改良されるわけでもなく、透明性が失われ好ましくない。形状については、なるだけ真球状に近く、表面に凹凸のないものが好ましいが目安としては、球状粒子の最も長い径と最も短い径との比が5以下、好ましくは2以下、表面の凹凸としては、(BET法比表面積)/(平均粒径と真密度より求めた計算比表面積)が50以下、好ましくは30以下である。形状が不定形なものであれば、マスターバッチとして使用した際、粒子同士の凝集によりフィルム中にフィッシュアイが多量に発生することになる。
【0023】
本発明における球状の有機高分子化合物物質とは、具体的には、主成分が架橋ポリメタクリル酸メチルであるエポスタMA1002(日本触媒(株)社製)、エポスタMA1004(日本触媒(株)社製)、MX−150(綜研化学(株)社製)、MX−180(綜研化学(株)社製)等が挙げられる。
【0024】
球状の有機系高分子化合物粒子の添加量は、結晶性ポリプロピレン100重量部に対して8.0〜12.0重量部であり、好ましくは8.5〜11.5重量部である。添加量が12.0重量部を越えると造粒時の押出量が減少したり、このマスターバッチを使用した樹脂フィルムにフィッシュアイを生じやすくなり、さらに押出機内の焼けを持ってきたりしてフィルム外観に影響を与え好ましくない。また。添加量が8.0重量部より少ないと、マスターバッチの使用量が多くなり、作業量が増大して好ましくない。
【0025】
(4) ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物
本発明におけるジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物は、添加される樹脂の成形加工性を改良するもので、市場で一般的に入手できるものがそのまま使用できるが、特開平3−153793号公報に記載されているような成形加工性を改良する高軟化点の加工助剤(ワックス)の製造法により製造することもできる。モノカルボン酸としては炭素数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸が好ましい。好ましくはステアリン酸であり、従来加工助剤(ワックス)製造に使われているものを使用できる。多塩基酸としては二塩基酸以上のカルボン酸、好ましくはセバシン酸である。ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物の融点は使用するモノカルボン酸の種類によって調整することができるが、一定のモノカルボン酸に対して、多塩基酸の使用量を変えることによって調整することもできる。特に好ましくは、ジアミンとしてエチレンジアミン、モノカルボン酸としてステアリン酸、多塩基酸としてセバシン酸を使用したものである。
【0026】
上記ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物の結晶性ポリプロピレン100重量部に対する使用割合は8.0〜16.0重量部である。これより少ないとマスターとしてシンジオタクティックポリプロピレンに添加した場合に十分な成形加工性の改良効果がなく、多くても特により改良されるわけでなく、むしろ透明性や色相が低下し好ましくない。特に好ましいのは9.0〜15.0重量部である。
【0027】
(5) マスターバッチの調製方法
本発明において上記組成物を得る方法として、公知の任意の方法で均一分散させて得ることができる。例えば、押出溶融ブレンド法、バンバリーブレンド法などである。
【0028】
本発明の組成物には、一般的に用いられているリン系あるいはフェノール系の酸化防止剤や高分子化合物粒子の分散剤として脂肪酸金属塩、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤などの添加剤は、必要に応じて適宜添加することができる。
【0029】
2。押出ポリプロピレンフィルム
本発明の押出ポリプロピレンフィルムは、シンジオタクティックポリプロピレン95.0〜97.5重量部に対して、上述マスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物5.0〜2.5重量部添加し合計100重量部とした混合物をTダイ法、またはインフレーション法等の公知の方法によって製膜した未延伸フィルムである。マスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物の添加量としては、上記混合物中4.5〜3.0重量%がさらに好ましく、特に透明性が重視される分野ではマスターバッチ添加量は少なめにし、特に滑り性や成形加工性が重視される分野ではマスターバッチ添加量は多めに設定すると良い。添加量がこれより少ないと、滑り性、アンチブロッキング性や成形性の改良効果が不十分であり、これより多いと成形性が特に改良されるわけでもなく、透明性や浮き出しが悪化したりする。フィルムの厚みは特に限定しないが、1〜500μmが一般的であり、好ましい厚みのものが必要に応じ選択される。
【0030】
本発明の押出ポリプロピレンフィルムは、その他のフィルム、例えばポリプロピレン二軸延伸フィルム、未延伸ナイロンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリテレフタール酸エチルフィルム、アルミ箔、紙類等とドライラミネート、または押出ラミネート等の公知の方法によって形成された複合フィルム、またはTダイ法或いはインフレーション法等による共押出複合フィルムにして使用が可能であり、押出フィルム層の厚みは特に限定しないが、5〜200μmが好ましく、更に好ましくは15〜100μmである。
【0031】
本発明で重要なのは、結晶性ポリプロピレンに特定量のスリップ剤、特定形状のアンチブロッキング剤を配合することにより、作業性が良好でアンチブロッキング剤の分散も良好な高濃度マスターバッチを製造することができ、かつそのマスターバッチの特定量をシンジオタクティックポリプロピレンに添加することにより、成形加工性、透明性、柔軟性、フィッシュアイ等に優れた押出フィルムを製造できることである。
【0032】
本発明の押出フィルムおよびシートを通常工業的に採用されている方法によってコロナ放電処理、あるいは火炎処理等の表面処理を施すこともできる。
【0033】
【実施例】
本発明をさらに詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において各測定項目は次の方法に基づいて測定した。
(1)造粒時の作業環境:マスターバッチ造粒時の発煙が気にならない程度であれば○、発煙が非常に著しい場合は×とした。
(2)ペレット形状:造粒後のペレット形状が眼で見て均一の場合は○、不均一(異形のものが混在)の場合は×とした。
(3)ピンホール:フィルム中にピンホールがない場合は○、ピンホールがある場合は×とした。
(4)フィッシュアイ:フィルム600cm2 中に200μm以上のフィッシュアイが10個以下である場合は○、10個を越える場合は×とした。
(5)メルトフローインデックス:ASTM D−1238に準拠した。
(6)ヘイズ:ASTM D−1003に準拠した。
(7)視覚透明性:東洋精機(株)製LIGHT SCATTERING METERを使用し、LS値(狭角拡散透過値)を測定した。
(8)表面光沢:ASTM−D523−62Tに準拠した。
(9)アンチブロッキング性:所定の大きさに切り取ったフィルムを2枚重ね合わせ、荷重を20g/cm2 かけ、それぞれ50℃に加熱された循環式恒温槽中で24時間放置した後、フィルムの密着面積比率を目視で求めた。
(10)ヤング率:ASTM−D882に準拠した。
(11)降伏点応力:ASTM−D882に準拠した。
(12)摩擦係数(tanθ):東洋整機(株)製、摩擦測定機を用い、製膜後35℃に加熱された循環式恒温槽中で1日間加熱処理を行い、室温に取り出し、1時間後に滑り性を下記条件で測定し、ブロック荷重の滑り始める角度(θ)を読み取り、tanθで表示する。(測定条件:傾斜スピード2.7°/sec、ブロック面積6.3cm×6.3cm、荷重200g)
(13)製膜作業性:製膜時、フィルムの冷却ロールへの粘着やフィルム同士の粘着がなく、フィルムの耳を切る際もカッターへのフィルムの粘着が無い場合は○、ロール、カッターへの粘着、フィルム同士の粘着が有る場合は×とした。
〔参考例1〕
結晶性ポリプロピレンの調製
〔触媒の調製〕
直径12mmの鋼球9kgの入った内容積4リットルの粉砕用ポットを4個装備した振動ミルを用意する。各ポットに窒素雰囲気中で塩化マグネシウム300g、フタル酸ジイソブチル115ml、四塩化チタン60mlを加え40時間粉砕した。上記共粉砕物5gを200mlのフラスコに入れトルエン100mlを加え114℃で30分間撹拌処理し、次いで静置して上澄液を除去した。次いでn−ヘプタン100mlを用い20℃で3回、固形分を洗浄しさらに100mlのn−ヘプタンに分散して遷移金属触媒スラリーとした。得られた遷移金属触媒成分はチタンを1.8重量%、フタル酸ジイソブチルを18重量%含有していた。
【0034】
〔プロピレン・エチレン共重合体の製造〕
内容積100リットルの充分に乾燥し窒素で置換し、さらにプロピレンで置換したジャケット付きオートクレーブにプロピレン25kgを装入して重合の準備とした。一方、1リットルのフラスコにn−ヘプタン500ml、トリエチルアルミニウム1.5ml、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン2.2mlと上記触媒調整で得られた遷移金属触媒成分を固形分として0.30gを混合して、準備した前記内容積100リットルのオートクレーブに圧入した。次いで、水素及びエチレンを所定量装入した後ジャケットに温水を通じて内温が70℃で各々の気相濃度が、水素3.0モル%、エチレン3.0モル%に保てるように水素、エチレンを装入しながらプロピレンを5kg/hで連続装入して重合し、3時間経過後ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル6.0mlを圧入して、さらに60℃で30分間撹拌して重合を終了した。
【0035】
〔後処理〕
得られた共重合体スラリーを、細長い部分の内径が15cm、上部の太い部分の内径が30cm、細長い部分の長さが5m、上部の太い部分の長さが1mの向流洗浄塔の上部に50kg/hで導入し、下部よりはプロピレン洗浄液を100kg/hの割合で導入し、向流洗浄塔上方より110kg/hの洗浄液、下方より洗浄された共重合体スラリーを40kg/hで取り出す。取り出された共重合体スラリーは、内径20cm、長さ60mの外側管内に1kg/cm2 ゲージのスチームを通じて加熱できる2重管を経て大気圧に保たれたサイクロンに放出し、得られたパウダーはさらに、50℃、60mmHgで10時間乾燥して13.3kgの結晶性ポリプロピレン(プロピレン−エチレン共重合体)が得られた。このようにして得られた結晶性ポリプロピレン中のエチレン含量は4.2重量%、230℃で測定したメルトフローインデックス(以下、MFIと記す。)は6.5g/10minであった。
〔参考例2〕
シンジオタクティックポリプロピレンの調製
内容積200リットルのオートクレーブをプロピレンで置換した後、常法にしたがって合成したイソプロピルペンタジエニル−1−フルオレンをリチウム化し、四塩化ジルコニウムと反応し再結晶することで得たイソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロニド0.2gと東ソー・アクゾ(株)社製メチルアルミノキサン(重合度16.1)30gを装入し、次いで液状プロピレンを40kg裝入し、次いで60℃に昇温し該温度で1時間重合し、次いでメタノールを1kg裝入して脱灰し、次いで未反応のプロピレンをパージして濾過して20.0kgのシンジオタクティックポリプロピレンを得た。このポリプロピレンは13C−NMRによればシンジオタクティックペンタッド分率は0.793であり、メルトフローインデックス(以下、MIと記す。)は4.5g/10分、1,2,4トリクロロベンゼンで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は2.4であった。
【0036】
実施例1
参考例1で得たプロピレン−エチレン共重合体100重量部にスリップ剤としてエルカ酸アミドを1.7重量部、アンチブロッキング剤として2.0μm球形架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(日本触媒(株)社製、エポスタMA1002)を10.0重量部、ジアミン/モノカルボン酸重縮合物としてエチレンビスステアリン酸アマイド(共栄社化学(株)社製、ライトアマイドWEF、融点146℃)を10.0重量部を20リットルヘンシェルで2分間混合し、押出温度250℃で65mmφ押出機で造粒して得たペレット(以下、MB−1と略す。)のMIは8.1g/10分であった。このペレットを20mmφTダイにて樹脂温度250℃で溶融押し出しを行い、厚み60μmの未延伸フィルムを得た。その評価結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
アンチブロッキング剤を1.8μm球形架橋ポリメタクリル酸メチル粒子((綜研化学(株)社製、MX−180)とした以外は実施例1と同様にした(製造したペレットは、以下、MB−2と略す。)。その評価結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
アンチブロッキング剤を3.0μm不定形シリカ(富士シリシア化学(株)社製、サイリシア730)とした以外は実施例1と同様にした。その評価結果を表1に示す。この場合、造粒時のストランドに凹凸があるため、ペレット形状が不均一となり、また、製膜したフィルム中にはアンチブロッキング剤の分散不良によるピンホールやフィッシュアイが見られた。
【0039】
実施例3
エルカ酸アミドの添加量を2.4重量部とした以外は実施例1と同様にした(製造したペレットは、以下、MB−3と略す。)。その評価結果を表1に示す。比較例2
エルカ酸アミドの添加量を3.5重量部とした以外は実施例1と同様にした。その評価結果を表1に示す。この場合、造粒時の発煙がひどく、作業環境上問題があった。
【0040】
実施例4
MA−180の添加量を12.0重量部とした以外は実施例2と同様にした(製造したペレットは、以下、MB−4と略す。)。その評価結果を表1に示す。
実施例5
ライトアマイドWEFの添加量を15.0重量部とした以外は実施例1と同様にした(製造したペレットは、以下、MB−5と略す。)。その評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例6
ライトアマイドWEFをエチレンジアミン/ステアリン酸/セバシン酸重縮合物(共栄社化学(株)社製、ライトアマイドWH−215、融点215℃)とした以外は実施例1と同様にした(製造したペレットは、以下、MB−6と略す。)。その評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
マスターバッチは他の樹脂に添加してその性質を改良するものであるからそれ自体を製膜して使用することはないが、実施例1〜6および比較例1、2においては、あえて製膜してフィルム中のピンホールおよびフィッシュアイを評価した。表1に見られるように本発明のマスターバッチはそれ自体を製膜してもピンホール、フィッシュアイについては、皆無であるので、実施例7以降の、マスターバッチを使用したケースにおいては、これらマスターバッチによるピンホールおよびフィッシュアイは起こり得ないので評価項目には入れていない。
【0043】
実施例7
参考例2で得たシンジオテクティックポリプロピレンを押出温度190℃で50mmφ押出機にて造粒し(以下、SPPと略す。)、そのペレット97.0重量部にマスターバッチとして実施例1で得られたMB−1を3.0重量部配合して、20リットルヘンシェルで2分間混合し、このペレットを40mmφTダイにて樹脂温度250℃で溶融押し出しを行い、厚み40μmの未延伸フィルムを得た。その評価結果を表2に示す。
【0044】
実施例8
マスターバッチとして実施例2で得られたMB−2を使用した以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0045】
実施例9
SPPを95.5重量%とし、マスターバッチとして実施例3で得られたMB−3を4.5重量%とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0046】
実施例10
SPPを95.5重量%とし、マスターバッチとして実施例4で得られたMB−4を4.5重量%とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0047】
実施例11
SPPを95.5重量%とし、マスターバッチとして実施例5で得られたMB−5を4.5重量%とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0048】
実施例12
SPPを97.5重量%とし、マスターバッチとして実施例1で得られたMB−1を2.5重量%とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0049】
比較例3
SPPを99.0重量部とし、マスターバッチとして実施例1で得られたMB−1を1.0重量部とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。この場合、製膜時、ロールやカッターにフィルムが粘着し、作業性が著しく不良で、しかもフィルムのアンチブロッキング性が不良であった。
【0050】
比較例4
SPPを93.0重量部とし、マスターバッチとして実施例4で得られたMB−4を7.0重量部とした以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。この場合、製膜作業性、滑り性は良好であったが、透明性が悪化した。
【0051】
実施例13
マスターバッチとして実施例6で得られたMB−6を使用した以外は実施例7と同様にした。その評価結果を表2に示す。
【0052】
比較例5
市場で入手可能であるプロピレン単独重合体(MI=8.3、Mw/Mn=6.7、融点159℃)100重量部にスリップ剤としてエルカ酸アミドを0.1重量部、アンチブロッキング剤として合成ゼオライト(水沢化学(株)社製、シルトンM)を0.04重量部を20リットルヘンシェルで2分間混合し、押出温度250℃で65mmφ押出機で造粒して得たペレットのMIは9.2g/10分であった。このペレットを40mmφTダイにて樹脂温度250℃で溶融押し出しを行い、厚み40μmの未延伸フィルムを得た。この場合、現在市場で流通するプロピレン単独重合体フィルムの物性を示し、製膜作業性は非常に優れているが、フィルムの透明性が不良で、ヤング率が高く、フィルムの柔軟性に乏しかった。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
本発明におけるスリップ剤、アンチブロッキング剤、ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物からなるマスターバッチは作業性や分散性に優れており、シンジオタクティックポリプロピレンに添加することにより成形加工性、透明性、柔軟性、手触りが良好で、フィッシュアイが少ないフィルムを与えることができ、産業上きわめて価値のあるものである。
Claims (5)
- 結晶性ポリプロピレン100重量部、スリップ剤として高級脂肪酸アミド1.5〜2.6重量部、アンチブロッキング剤として架橋構造を有する球状の有機高分子化合物物質8.0〜12.0重量部、ジアミン/モノカルボン酸重縮合物またはジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物8.0〜16.0重量部を配合したことを特徴とするマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物。
- 高級脂肪酸アミドが、エルカ酸アミドである請求項1記載のマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物。
- ジアミン/モノカルボン酸重縮合物が、エチレンジアミン/ステアリン酸重縮合物である請求項1記載のマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物。
- ジアミン/モノカルボン酸/多塩基酸重縮合物が、エチレンジアミン/ステアリン酸/セバシン酸重縮合物である請求項1記載のマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物。
- シンジオタクティックポリプロピレン95.0〜97.5重量部と請求項1記載のマスターバッチ用ポリプロピレン樹脂組成物5.0〜2.5重量部合計で100重量部になるように配合し押出成形することを特徴とするヘイズ値が4.0以下の透明性に優れた柔軟性押出ポリプロピレンフィルムの製造方法。
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- 1997-06-26 JP JP17012797A patent/JP3739534B2/ja not_active Expired - Lifetime
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