JP3735428B2 - 空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関わり、更に詳しくは、製造コストを低減しながら高度のタイヤユニフォーミティーと高速耐久性とを得ることができる空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、空気入りタイヤは、未加硫の各タイヤ構成部材を貼り合わせてグリーンタイヤを成形し、それを金型に入れて加硫成形して製造するようにしている。この加硫成形においてトレッドには、タイヤの種類毎にその要求性能を発揮するように設計された溝形状のトレッドパターンが型付けされている。そのトレッドパターンとしては、例えば、良路走行の耐摩耗性に適したリブパターン、牽引力に優れたブロックパターン、悪路走行に適したラグパターン、氷雪路走行に適したサイプ付ブロックパターン等を挙げることができる。
【0003】
しかし、このように様々に要求特性が異なるトレッドパターンの種類毎に、多数の金型を準備することは、金型の製作費が高くなり、タイヤの製造コストを高くする原因になっていた。
また、タイヤの加硫時間は、最も厚みのあるタイヤショルダー部によって決定されるため、他の部分はすでに加硫が済んでいるにもかかわらず、ショルダー部の加硫が終了するまで加硫を続ける必要があり、エネルギーの無駄を生じ、かつ過加硫になる部分では物性低下を招くという問題があった。
【0004】
その上、従来のタイヤでは、トレッドが一定長の帯状ゴム材料をタイヤケーシングに巻き付けて両端部同士を接合するように形成されているため、寸法誤差によって、接合部に過不足を生じることがあり、それがタイヤのユニフォーミティーを低下させ、かつそのユニフォーミティーの低下に伴って高速耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、金型費用の低減や加硫時間の短縮により製造コストを低減しながら、高度のユニフォーミティーと高速耐久性を得ることが可能な空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周にベルト層を配置した未加硫のタイヤケーシングを成形する一方、該タイヤケーシングとは別個に円筒体の周囲にストリップ状の未加硫ゴムを複数回巻き付けて無端環状の積層ゴムを形成し、該積層ゴムから外周にトレッドパターンを型付けした加硫済みまたは半加硫の無端環状のプレキュアトレッドを成形し、該環状のプレキュアトレッドを前記タイヤケーシングの外周面に嵌合してグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
【0007】
このようにトレッドをタイヤケーシングとは別個にトレッドパターンを型付けした加硫済みまたは半加硫のプレキュアトレッドとして用意し、これを未加硫のタイヤケーシングに一体化したグリーンタイヤにして加硫成形するため、そのグリーンタイヤ加硫成形用金型としては、トレッドパターンの種類の如何に拘らず、同一のタイヤ加硫成形用金型に共通化することが可能になり、それにより金型費用を大幅に削減することができ、また、金型の置き場所を従来のように広く確保する必要がない。
【0008】
しかも、プレキュアトレッドの使用により、タイヤの加硫時間を、厚みが最大であるショルダー部以外の部分、例えばビード部で決めることができるので、加硫時間を短縮することができる。
また、トレッドはストリップ状の未加硫ゴムを複数回巻き付けることによって無端環状に形成するため、タイヤ周方向に接合箇所がなくなってタイヤのユニフォーミティーを向上し、それに伴って高速耐久性を向上することができる。
【0009】
本発明において、プレキュアトレッドは、加硫済みまたは半加硫状態に用意されるが、半加硫とは、少なくとも未加硫のタイヤケーシングと一体化して加硫成形する時に、型付けされたトレッドパターンが変形しない程度に加硫したものをいい、完全加硫の80%以上加硫されたものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の方法により製造された空気入りタイヤの一例を示し、タイヤケーシングTb の外周面に接着ゴム層10を介して無端環状のトレッドTc が接合して構成されている。
【0011】
無端環状のトレッドTc は、トレッドゴム1の外周面に主溝8等からなるトレッドパターンを形成している。
他方、タイヤケーシングTb は、左右のビード部2に連接してタイヤ径方向外側に左右のサイドウォール部3を延設し、その内側に補強コードをラジアル方向に配向したカーカス層4を1層配設し、その両端部4Aを左右のビートコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返すようにし、更に、カーカス層4の外周側に、補強コードをタイヤ周方向に対し傾斜させると共に層間で互いに交差するように配置した2層のベルト層7を配置して構成されている。なお、CLはタイヤ赤道面を通るタイヤセンターラインである。
【0012】
本発明によれば、上記構成の空気入りタイヤを以下のような工程によって製造する。
先ず、未加硫のタイヤケーシングTb と加硫済みまたは半加硫のトレッドTc をそれぞれ別個に用意する。このうち、加硫済みまたは半加硫状態のトレッドTc は、図2(a),(b),(c)の工程によって成形する。即ち、図2(a)に示すように、円筒体11を軸Xの周りに回転させながら、その外周面11a上にインジェクション押出機12の吐出ノズル12aからストリップ状の未加硫ゴムmを直接押し出し、円筒体11上に層状に巻き付けていく。
【0013】
巻き付け方は、例えば、吐出ノズル12aを軸Xに平行に往復移動させながら、層状に巻き付けていく。更に、積層数を増す毎に吐出ノズル12aの往復移動間隔を順次狭めると共に、円筒体外周面11aから離間させて、ストリップ状の未加硫ゴムmを巻き付けることにより、図2(b)に示すような中央部が肉厚の無端円環状の積層ゴムを形成する。
【0014】
或いは、吐出ノズル12aからストリップ状の未化ゴムmを円筒体11の片側から巻き付け積層数を増し、反対側まで移動することによって図2(b)の中央部が肉厚の無端円環状の積層ゴムを形成する。
次いで、図2(c)のように、円筒体11の積層ゴムの上に溝成形刃13aを内面に備えた分割式の外型13を被せ、これを加熱して加硫成形することにより、トレッドパターンが型付けされた無端環状のプレキュアトレッドTc を成形する。なお、ここでトレッドの加硫は、半加硫状態であってもよい。また、上記円筒体11は、内型にも使用されるため金属体で構成されている。
【0015】
他方、未加硫のタイヤケーシングTb は、公知のタイヤ製造方法におけるグリーンタイヤの成形工程と同様にして成形される。
例えば、成形ドラム上に未加硫ゴムがゴム引きされたカーカス層を巻き付け、その両端部にビードコアをセットした後、その両端部を折り返し、更にサイドウォール部の未加硫ゴムを貼り付ける。次いで、その幅方向中央部を膨径させて断面馬蹄形の円環状にした後、カーカス層外周上に未加硫のベルト層を設ければ、未加硫のタイヤケーシングを得ることができる。
【0016】
上記のように用意されたプレキュアトレッドとタイヤケーシングとは、一体に接合されてグリーンタイヤに成形される。
グリーンタイヤを成形するに当たり、タイヤケーシングが未加硫であるため、その接合面に接着ゴム層10は必ずしも設ける必要はないが、プレキュアトレッドTc を強固に接着させるためには介設するのが好ましい。
【0017】
接着ゴム層10を設ける方法としては、未加硫ゴムシートを貼り付けるのが一般的であるが、好ましくは、図3に例示するようなインジェクション押出機を利用するのがよい。
即ち、図3(a)のように、インジェクション押出機14の吐出ノズル14aよりストリップ状の未加硫ゴムnを連続的に押し出し、複数回巻回させることにより、プレキュアトレッドTc の幅に応じて隙間なく環状に巻き付けて、接着ゴム層10を形成する。
【0018】
次いで、図3(b)のように、ゴム層10外周上にプレキュアトレッドTc を嵌合させてグリーンタイヤGを成形する。接着ゴム層10を未加硫ゴムシートの貼り付けにより形成すると、タイヤケーシング外周の曲面に追従させることが難しいため、皺を発生し、その皺の間にエアが巻き込まれて接着不良やユニフォミティー低下を招きやすくなるが、上記ストリップ巻きによれば、これら欠点を大幅に抑制することが可能となる。
【0019】
上記プレキュアトレッドTc は、必要に応じて接着表面である内周面にバフ加工やセメントを塗布するようにしてもよい。
上記のように成形したグリーンタイヤGは、その状態のままでは未加硫のタイヤケーシングTb と加硫済みまたは半加硫のプレキュアトレッドTc との接合面端部16に、段差を形成しやすい。このため、好ましくは、図4に示すように、グリーンタイヤGを回転させながら、インジェクション押出機17の吐出ノズル17aからストリップ状の未加硫ゴムkを接合面端部16に少なくとも1周巻き付けて、被覆層18を形成することにより、外観を向上することができる。
【0020】
上記のように形成されたグリーンタイヤGは、図5に示すような金型20にセットされて、加硫成形される。加硫中に、プレキュアトレッドTc は接着ゴム層10を介してタイヤケーシングTb 外周側に強固に接着し、図1に示す空気入りタイヤを得ることができる。
金型20は、サイドウォール部3を成型する上下の金型21、ビード部2を成型する上下のビードリング22、プレキュアトレッドTc のトレッド表面を押圧する当て板23から構成され、この当て板23はボルト24により固定されるようになっている。当て板23の内周面に溝成形刃は全く設けられておらず、トレッド表面に沿った曲面状になっている。従って、トレッドパターンの如何に拘らず、いずれのグリーンタイヤの加硫成形に共通に使用できるようになっている。
【0021】
このように本発明では、予めトレッドパターンを型付けしたプレキュアトレッドTc をタイヤケーシングとは別個に成形し、これを未加硫のタイヤケーシングと一体化させてグリーンタイヤを形成するので、そのグリーンタイヤGの加硫成形時にトレッドパターンを型付けする必要がない。そのため、グリーンタイヤの加硫成形用金型として、図5に示すように、トレッドに対しては単に内圧の押さえ板として作用する当て板23を配置するだけでよい。従って、複数種類のタイヤに対し、トレッドパターンの如何に拘らず、加硫形成用金型の共通化が可能になり、それによって、金型費用を大幅に低減することができる。また、金型置き場に従来のような広いスペースを必要とすることがない。
【0022】
また、予め加硫成形されたプレキュアトレッドTc を用いることにより、タイヤの加硫時間を、厚みが最大のショルダー部以外の部分、例えばビード部分で決定することができるため、タイヤの加硫時間を短縮し、生産性を高めることができる。また、過加硫による物性低下も抑制することができる。
また、プレキュアトレッドTc をインジェクション押出機12によりストリップ状の未加硫ゴムmを円筒体11の外周面11aに複数回巻き付けた積層ゴムから継ぎ目のない円環状に形成したため、良好なユニフォーミティーを得ることができ、また、ユニフォーミティーの向上によって高い高速耐久性を得ることができる。
【0023】
本発明では、上記実施形態において、ベルト層7をカーカス層4のタイヤ外周側に2層設けた空気入りタイヤを製造する例を示したが、それに限定されることがなく、プレキュアトレッドTc 以外の部分を構成するタイヤケーシングの構造は、必要に応じて適宜変更できることはいうまでもない。
また、上記ベルト層7はタイヤケーシングTb 側に設けないで、プレキュアトレッドTc 側に設けるようにしてもよい。
【0024】
上記ストリップ状の未加硫ゴムm,n,kは、上記実施形態では、インジェクション押出機12,14,17により直接被塗布側に押し出したが、途中にローラ等のガイド部材を介して間接的に押し出し塗布するようにしてもよい。
本発明では、上述した定容量押出となるインジェクション押出機に代えて、連続的に押し出すスクリュー押出機を用いるようにしてもよい。その場合、必要となるゴムの押出量は、重量を測定することにより管理することができる。
【0025】
また、図6に示すように、インジェクション押出機Aとスクリュー押出機Bとを組み合わせて押出成形することもできる。図6(a)に示すように、スクリュー押出機Bからインジェクション押出機Aに未加硫ゴムを所定量供給すると、図6(b)のようにスクリュー押出機Bが後退し、インジェクション押出機Aが押出位置まで降下して、下端の吐出ノズルCから未加硫ゴムを押し出すようになっている。
【0026】
【実施例】
タイヤサイズを195/70R14 91Hで共通にし、上記のようにしてストリップ巻き積層ゴムからトレッドパターンを予め型付けするように加硫成形したプレキュアトレッドを、これとは別に成形した未加硫のタイヤケーシングに一体化したグリーンタイヤを加硫成形した本発明タイヤと、従来法に従って未加硫のタイヤケーシングに未加硫の帯状ゴムを巻き付け、両端をスプライスしてトレッドを成形したグリーンタイヤを加硫成形した従来タイヤとをそれぞれ作製した。
【0027】
これら両試験タイヤをリムサイズ14×51/2JJのリムに装着し、以下に示す測定条件により、ユニフォーミティーと高速耐久性の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。また、両試験タイヤの加硫時間と金型費用を求めたところ、表1に示す結果を得た。
なお、本発明タイヤの加硫時間は従来タイヤの加硫時間を100とする指数値で表示した。その値が小さい程、加硫時間が短いことを示す。
ユニフォーミティー
JASO C607「自動車用タイヤのユニフォーミティー試験方法」に準拠して実施し、その結果を従来タイヤを100とする指数値で評価した。その値が大きい程、ユニフォーミティーが優れている。
高速耐久性
ドラム径1707mmでJIS D−4230,JIS高速耐久性試験終了後、30分毎に10km/hr ずつ速度を追加し破壊するまでの走行時間を測定し、その結果を従来タイヤを100とする指数値で評価した。その値が大きい程、高速耐久性が優れている。
金型費用
日量1000本製造する際に必要とした金型費用をそれぞれ計算し、その結果を従来タイヤを製造した際に要した費用を100とする指数値で評価した。その値が小さい程、金型費用が削減され、安価であることを示す。なお、本発明では、プレキュアトレッドを成型する金型費用も含むが、押出機の費用は除いている。
【0028】
【表1】
表1から明らかなように、本発明タイヤは、金型費用の削減と加硫時間の短縮を図ることができ、更に、従来タイヤより優れたユニフォーミティーと高速耐久性を示すことができるのが判る。
【0029】
【発明の効果】
上述したように本発明の空気入りタイヤの製造方法は、予めトレッドパターンを型付けしたプレキュアトレッドをタイヤケーシングとは別個に成形し、それを未加硫のタイヤケーシングと一体化してグリーンタイヤにして加硫成形するので、金型費用を削減し、かつ加硫時間を短縮して生産性を改善することができる。また、プレキュアトレッドは、ストリップ状に押出した未加硫ゴムを円筒体に複数回巻き付けて接合部のない無端環状にした積層ゴムからなるので、良好なユニフォーミティーが得られ、かつそれに伴って高い高速耐久性の確保が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造された空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。
【図2】(a),(b),(c)は、それぞれ本発明のタイヤ製造方法において、プレキュアトレッドを成形する工程を示す説明図である。
【図3】(a),(b)は、それぞれ本発明のタイヤ製造方法において、プレキュアトレッドをタイヤケーシングに取り付ける工程を一部破断した断面で示す正面図である。
【図4】本発明のタイヤ製造方法において、プレキュアトレッドとタイヤケーシングとの間の接合面端部を被覆する工程を一部破断した断面で示す正面図である。
【図5】本発明のタイヤ製造方法において、グリーンタイヤを金型に入れて加硫する工程を示す要部断面図である。
【図6】インジェクション押出機とスクリュー押出機とを組み合わせてストリップ状の未加硫ゴムを押し出すようにした押出装置の一例を示し、(a)はインジェクション押出機に未加硫ゴムを供給する状態を示す説明図、(b)はインジェクション押出機が押出位置に降下した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 トレッドゴム 2 ビード部
3 サイドウォール部 4 カーカス層
5 ビードコア 7 ベルト層
8 主溝 10 接着ゴム層
11 円筒体 11a 外周面
12,14,17 インジェクション押出機
13 外型 16 接合面端部
18 被覆層 23 当て板
G グリーンタイヤ Tb タイヤケーシング
Tc プレキュアトレッド
Claims (3)
- 左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周にベルト層を配置した未加硫のタイヤケーシングを成形する一方、該タイヤケーシングとは別個に円筒体の周囲にストリップ状の未加硫ゴムを複数回巻き付けて無端環状の積層ゴムを形成し、該積層ゴムから外周にトレッドパターンを型付けした加硫済みまたは半加硫の無端環状のプレキュアトレッドを成形し、該環状のプレキュアトレッドを前記タイヤケーシングの外周面に嵌合してグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫する空気入りタイヤの製造方法。
- 前記無端環状のプレキュアトレッドを前記タイヤケーシングの外周面に嵌合する前に、該タイヤケーシングの外周面にストリップ状の未加硫ゴムを巻き付けて接着ゴム層を形成する請求項1記載の空気入りタイヤの製造方法。
- 前記タイヤケーシングとプレキュアトレッドとの接合面端部に沿ってストリップ状の未加硫ゴムを少なくとも1周巻き付けて被覆層を形成し、少なくとも該被覆層に金型を当接させた状態で前記グリーンタイヤを加硫する請求項1または2記載の空気入りタイヤの製造方法。
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