JP3732909B2 - 内視鏡用処置具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内視鏡の処置具挿通チャンネルに進退自在に挿通される可撓性シースとして合成樹脂製チューブが用いられた内視鏡用処置具に関する。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡用処置具は一般に、ステンレス鋼細線を密着巻きしたコイルパイプ等により可撓性シースを形成して、その先端に処置片を取り付けた構造をとっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そのような従来の処置具で患部を狙撃すると、図12に示されるように、処置具の可撓性シース91の先端部分が内視鏡92の処置具挿通チャンネル93から患部に対して真っ直ぐに突き出される。したがって、内視鏡92の正面に位置させることのできない患部A等に対しては、正確な処置を行うことができない。
【0004】
そこで、処置具の先端を患部付近に押しつけた状態で、シース91を処置具挿通チャンネル93からさらに突き出せば、シース91がたわんで先端の向きが変わるが、ステンレス製のコイルパイプ等は弾発性が強いので、たわんだ部分が跳ねて処置具の先端が患部A部分から外れ、結局元の真っ直ぐの状態に戻ってしまう。
【0005】
そこで、シース91の先端部分を遠隔操作によって任意に屈曲させることができるようにしたものもある(実公昭52−22146号、実開平1−119621号等)。
【0006】
しかし、そのような内視鏡用処置具では、処置具の操作部で処置操作と屈曲操作とを行う必要があるので非常に操作性が悪く、先端を患部に正面から当接させるのが容易でないばかりか、非常に細いシース内に処置操作用の操作ワイヤと屈曲操作用の操作ワイヤとが並挿されるので、シースが硬くなって処置具挿通チャンネルへの挿通性が悪くなってしまう。
【0007】
そこで本発明は、操作性及び挿通性がよく、しかも簡単な構造で容易に患部を正面から狙撃することができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用処置具は、内視鏡の処置具挿通チャンネル内に進退自在に挿通される可撓性シースとして合成樹脂製チューブが用いられた内視鏡用処置具において、上記可撓性シースの先端部分に、他の部分よりも柔軟で任意方向に屈曲自在な屈曲自在部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
なお、上記屈曲自在部の長さが5〜30mmの範囲であるとよく、上記屈曲自在部が上記可撓性シースの他の部分に比べて2倍以上の柔軟性を有しているとよい。
【0010】
また、上記屈曲自在部以外の上記合成樹脂製チューブ内に網状管が埋設されていてもよく、上記屈曲自在部が、網状管が埋設されていない合成樹脂製チューブによって形成されて、上記網状管が埋設された合成樹脂製チューブに連結され、又は上記網状管が埋設された合成樹脂製チューブと一体に形成されていてもよい。
【0011】
また、上記合成樹脂製チューブと上記屈曲自在部とが、共に埋設物を含まない硬さの異なる合成樹脂製チューブによって形成されていてもよく、上記屈曲自在部がコイルパイプによって形成されていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2は、内視鏡用処置具の一つである内視鏡用生検鉗子を示している。ただし、本発明を生検鉗子以外の内視鏡用処置具に適用してもよい。
【0013】
内視鏡の処置具挿通チャンネルに挿脱自在に通される可撓性シース1には、例えばPTFE、FEP、PFAなどのテフロン系の材料や、HDPEなどのポリエチレン系のもの、あるいはナイロンなどの可撓性があってすべりの良い合成樹脂材料からなるチューブが用いられている。
【0014】
可撓性シース1の基端に連結された操作部2には、シース1内に進退自在に全長にわたって挿通された操作ワイヤ3を進退操作するためのスライダ4が、摺動自在に配置されている。
【0015】
シース1の先端には、先端処置片である一対の組織採取カップ5,5が軸6を中心にして開閉自在に取り付けられており、操作部2側でスライダ4を摺動操作して操作ワイヤ3を進退させれば、組織採取カップ5,5が軸6を中心にして扇状に開閉動作する。
【0016】
図1は、その生検鉗子の先端部分付近を示しており、一対の組織採取カップ5,5は、各々軸線方向にやや細長い半球状に形成されており、一対の組織採取カップ5,5を合わせると、先端表面が一つの球面をなしている。そして、各組織採取カップ5,5のあい対向する開口部の稜線部分には、刃が形成されている。
【0017】
軸6は、シース1の先端に連結固着された先端本体8の先端近傍に取り付けられており、先端本体8の後半部(図1において右側の部分)は円筒状に形成され、前半部は中央をスリットで切り分けられた平行腕状に形成されている。
【0018】
各組織採取カップ5,5には、軸6との係合位置より後方に伸びるアーム9,9が一体に形成されており、先端本体8のスリット部内に配置されたパンタグラフ状のリンク機構10に、各アーム9,9が連結されている。
【0019】
そして、操作ワイヤ3の先端がリンク機構10の後端部に連結固着されていて、操作部2側から操作ワイヤ3を押し込み操作することにより、リンク機構10が作動して、図3に示されるように、組織採取カップ5,5が軸6を中心にして扇状に開く。
【0020】
その状態において、操作部2側から操作ワイヤ3を牽引操作すれば、組織採取カップ5,5が閉じて、患部Aの生検組織などを組織採取カップ5,5内に採取することができるようになっている。
【0021】
一対の組織採取カップ5,5の各先端部分の表面には、図4に拡大図示されるように、前方に向いた尖端を有する突部11,11が組織採取カップ5,5の外径より内側の位置に突設されている。
【0022】
図5は組織採取カップ5,5の正面図であり、突部11,11は、前方から見て組織採取カップ5,5の半分程度の直径の環状に形成されている。そして、図4に示されるように、突部11,11の尖端は、組織採取カップ5,5の先端から前方に突出しないように、組織採取カップ5,5の先端位置とほぼ同一面に位置している。
【0023】
図1に戻って、可撓性シース1の全体の長さは例えば1〜2mであるが、その先端側の5〜30mmの部分1a以外の部分においては、合成樹脂製チューブ内に金属細線又は腰のあるプラスチック細線等を編組した網状管1bが埋め込まれて、曲げ剛性が強化されている。それに対して、先端側の部分1aには埋設物はない。
【0024】
その結果、可撓性シース1の先端側の部分1aは、他の部分の2倍以上の柔軟性を有して、任意方向に屈曲自在な屈曲自在部1aになっている。屈曲を遠隔操作するための操作ワイヤ類は設けられていない。2倍以上の柔軟性とは、軸線方向と直角方向に力を加えて同じだけ撓ませるのに、2分の1以下の力しか必要としないことをいう。
【0025】
このように構成された実施の形態の内視鏡用処置具を使用するときは、処置具の先端部分を内視鏡の処置具挿通チャンネルから突き出して、組織採取カップ5,5を患部のある部分に押しつける。
【0026】
図3に示されるように、患部Aに対して斜め方向からしか狙撃できない場合でも、突部11が体腔内粘膜に食い込んで組織採取カップ5,5の位置を固定することができる。
【0027】
そのような状態からシース1をさらに押し出すと、図6に示されるように、患部A近くに押しつけられた組織採取カップ5,5部分と処置具挿通チャンネル21の出口22に位置する部分との間で、屈曲自在部1aが自然な状態でスムーズに屈曲して膨れ上がり、組織採取カップ5,5が患部Aに対して正面に近い方向から当接する状態になる。この時に、患部Aが先端本体8の軸線方向に押される力をPとする。
【0028】
屈曲自在部1aは、柔軟性が高く、自然状態で真っ直ぐになろうとする直線復元性がある。したがって、図6に示されるように屈曲自在部1aが屈曲した状態では、組織採取カップ5,5部分に軸線方向と直角方向の力Qが作用する。
【0029】
その結果、患部Aには、PとQの合成力Fが作用して組織採取カップ5,5が患部Aに対して強く押しつけられ、処置具が生検鉗子の場合には患部Aの生検組織を正確に採取することができ、内視鏡用処置具が生検鉗子以外の種類の場合でも、患部Aに対して正確に処置を行うことができる。
【0030】
このように作用する屈曲自在部1aの長さは、消化管内視鏡用処置具の場合には30mm程度以下が好ましい。あまり長いと、狭い体腔内で適当な大きさに曲がらなくて具合が悪い。ミニマムとして5mm程度の長さは必要である。
【0031】
図7は、本発明の第2の実施の形態を示しており、屈曲自在部1aの合成樹脂製チューブを可撓性シース1のその他の部分の合成樹脂製チューブとは別部品として形成して、両者を接合したものである。その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0032】
なお、接合部は、充分な強度が得られれば両者を溶着等によって直接接合してもよいが、図示されていない金属パイプ等を合成樹脂製チューブの内面又は外面にあてがって、接着剤等によって接合してもよい。
【0033】
図8は、本発明の第3の実施の形態を示しており、屈曲自在部1aを例えば素線径の細いステンレス鋼線を均一な径で筒状に巻いたコイルパイプによって形成したものである。
【0034】
この場合にも、屈曲自在部1aを形成するコイルパイプの柔軟性を可撓性シース1の他の部分の柔軟性の2倍以上に設定すればよい。なお、可撓性シース1を形成する合成樹脂製チューブと屈曲自在部1aのコイルパイプとは内側に配置された金属製の接続管1cを介して接合されている。
【0035】
図9は、本発明の第4の実施の形態を示しており、屈曲自在部1aと可撓性シース1のその他の部分を、共に埋設物のない単純な合成樹脂製チューブによって形成して、両者を接合したものである。その他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0036】
この場合にも、屈曲自在部1aを形成する合成樹脂製チューブの柔軟性を他の部分の合成樹脂製チューブの柔軟性の2倍以上に設定すればよく、両者を硬さの異なる同じ材料で形成してもよいし、あい異なる材料で形成してもよい。
【0037】
その場合、屈曲自在部1aには例えば軟質塩化ビニル、PE樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂等を使用し、その他の部分には例えば硬質のポリイミド樹脂、HDPE、ナイロン或いはテフロン等を使用することができる。なお接合部には、図示されていない金属パイプ等を内面又は外面にあてがって、接着剤等によって接合してもよい。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば組織採取カップ5の外面に設けられた突部11を図10に示されるように角状に形成してもよく、図11に示されるように一つの組織採取カップ5に角状突部11を複数設けてもよい。また、組織採取カップ5が滑り難い使用環境の場合には突部11を全く設けなくてもよく、滑り易い場合には、突部11を長く突出させてもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、可撓性シースを形成する合成樹脂製チューブの先端部分に他の部分よりも柔軟で任意方向に屈曲自在な屈曲自在部を設けたので、処置具の先端部分を内視鏡の処置具挿通チャンネルから突き出して患部のある部分に押しつけておき、可撓軸をさらに押し出すと、患部に押しつけられた先端部分は移動せずに、屈曲自在部が自然な状態でスムーズに屈曲して先端部分の向きが変わり、患部に対して正面から当接させることができる。
【0040】
したがって、操作性がよくて簡単な構造で患部を容易に正面から狙撃することができ、湾曲操作ワイヤ等を必要としないので、処置具挿通チャンネルに対する挿入性もよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の全体側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の使用状態の先端部分の側面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の部分拡大側面断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の拡大正面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の内視鏡用処置具の使用状態の先端部分の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の側面断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の側面断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態の内視鏡用処置具の先端部分の側面断面図である。
【図10】本発明の実施の形態の組織採取カップの変形例の部分拡大斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態の組織採取カップの変形例の部分拡大斜視図である。
【図12】従来の内視鏡用処置具の使用状態の先端部分の側面図である。
【符号の説明】
1 可撓性シース
1a 屈曲自在部
21 処置具挿通チャンネル
Claims (7)
- 内視鏡の処置具挿通チャンネル内に進退自在に挿通される可撓性シースとして合成樹脂製チューブが用いられた内視鏡用処置具において、
上記可撓性シースの最先端部分に取り付けられた部材の先端部分の表面に、その部材の最先端位置より前方に突出しない前方に向いた尖端を有する突部が突設されると共に、
上記可撓性シースの先端部分に、他の部分よりも柔軟で任意方向に屈曲自在な屈曲自在部が設けられていることを特徴とする内視鏡用処置具。 - 上記屈曲自在部の長さが5〜30mmの範囲である請求項1記載の内視鏡用処置具。
- 上記屈曲自在部が上記可撓性シースの他の部分に比べて2倍以上の柔軟性を有している請求項1又は2記載の内視鏡用処置具。
- 上記屈曲自在部以外の上記合成樹脂製チューブ内に網状管が埋設されている請求項1、2又は3記載の内視鏡用処置具。
- 上記屈曲自在部が、網状管が埋設されていない合成樹脂製チューブによって形成されて、上記網状管が埋設された合成樹脂製チューブに連結され、又は上記網状管が埋設された合成樹脂製チューブと一体に形成されている請求項4記載の内視鏡用処置具。
- 上記合成樹脂製チューブと上記屈曲自在部とが、共に埋設物を含まない硬さの異なる合成樹脂製チューブによって形成されている請求項1、2又は3記載の内視鏡用処置具。
- 上記屈曲自在部がコイルパイプによって形成されている請求項1、2、3又は4記載の内視鏡用処置具。
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