JP3731471B2 - 高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法に係わり、特に、イオウ分の含有率の高い高イオウ燃料(以下「高S油燃料」と称す)を燃料とする高イオウ油焚きボイラ(以下「高S油焚きボイラ」と称す)の排煙処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、油炊きボイラ用の電気集塵器では、取り扱う排ガス及び排ガス中のダストに含有する水分や三酸化イオウ(SO3 )のために排ガスの露点が高く、機器腐食や灰詰まりを起こしたり、酸性の強いスマットを生成するという問題があった。さらに、排ガス中のダストが非常に細かく、電気固有抵抗率が低いため、電気集塵器の電極板に捕集したダストが再飛散し易いという問題もあった。
【0003】
そこで、電気集塵器の入口側にアンモニアガスを注入してSO3 を中和することによって上記問題点の解決を図ってきた。前記アンモニアの注入量は、ボイラでのSO3 の生成量に応じて行われることが好ましいが、SO3 の生成量を求めるのに必要な排ガス中のSO3 濃度は、連続して測定することができない。そこで、アンモニア注入量は、手動又は試運転時等の排ガス中のSO3 濃度の測定結果に基づき、燃料消費量に比例した比例注入制御を行なっていた。また、SO3 濃度の変化に対しては、燃料に含まれるイオウ分の大小によって注入比率を設定変更することによって対応していた。
【0004】
ところで、最近のボイラ設備では、運転コストの低減のために高S油燃料、例えばオイルコークスや残渣油と呼ばれる超重質油(燃料中のイオウ分が通常3%程度以上)を使用することが多くなってきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高S油焚きボイラからの排ガスの場合には、排ガス中のSO3 発生濃度の変化は、ボイラ負荷(ボイラ出力)とは必ずしも一致せず不安定になり易い。この結果、電気集塵器に取り込まれる排ガスに従来の制御方法でアンモニアガスを注入すると、注入量が過不足するという問題が発生する。例えば、SO3 濃度が高くなった場合には、アンモニア注入量が不足し、未反応のSO3 によって電気集塵器内に酸性イオウが発生し、電気集塵器内での機器腐食や灰詰まりが生じやすいという欠点がある。
【0006】
この結果、電気集塵器を停止せざるを得ないような問題が生じる。これを防ぐには、アンモニアを予め過剰に注入すればよいが、何の目安もなくアンモニアの注入量を増加すれば、アンモニアの注入量が過剰となり、経済的に不利益となるだけでなく、電気集塵器から未反応のアンモニアが多量に排出されて新たな公害原因となる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、排ガスへ適切な量のアンモニアを注入することのできる高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、イオウ分の高い高イオウ油を燃料とする高イオウ油焚きボイラから排出された排ガスにアンモニアを注入してから電気集塵器に送気して前記排ガス中のダストを除去する高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法において、前記アンモニアが注入される排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じて該アンモニアの注入量を調整するのに際し、前記排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じて注入比率を求め、該注入比率を前記高イオウ油燃料の燃料消費量に比例した基本アンモニア注入量に乗算することにより、前記排ガス中に注入するアンモニアの注入量を調整することを特徴とする。
【0009】
本発明は、アンモニアが注入される排ガス中の燃焼酸素濃度の変化が、排ガス中のSO3 濃度に影響することに着目して成されたもので、排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じてアンモニアの注入量を調整するようにしたので、排ガスへのアンモニア注入量が過不足することがない。これにより、電気集塵器内での機器腐食や灰詰まりが生じにくくできる。
【0010】
本発明の請求項2は、請求項1における排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じてアンモニアの注入量を調整する仕方を、排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に対応した注入比率を求め、該注入比率を前記高イオウ油燃料の燃料消費量に比例した比例アンモニア注入量に乗算するようにしたものである。
【0011】
また、本発明の請求項3は、請求項2において、注入比率の設定を、燃焼酸素濃度が定格値のときを1としたときの該定格値に対する比率で行うようにしたものである。ここで、燃焼酸素濃度が定格値とは、ボイラが定常運転での燃焼酸素濃度の値をいう。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って、本発明に係る高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法を適用する排煙処理システム10の概略構造を示す構成図である。
【0014】
同図に示すように、排煙処理システム10は主として、高S油焚きボイラ12、空気予熱器14、電気集塵器16、煙突18から構成され、高S油焚きボイラ12から排出された排ガスが、空気予熱器14を経た後、電気集塵器16で脱塵され、煙突18から大気に放出されるようになっている。
【0015】
電気集塵器16の入口側には、アンモニアの注入手段22が設けられ、この注入手段22によってガス状のアンモニアが排ガス中に注入される。これにより、排ガスに含まれるSO3 は、アンモニアによって中和されて硫酸アンモニウムを生成し、この硫酸アンモニウムが電気集塵器16によって捕集される。
【0016】
注入手段22から排ガスに注入するアンモニアの注入量は制御装置26によって制御される。制御装置26には、高S油焚きボイラ12からの信号として、高S油燃料消費量信号100、燃焼酸素濃度信号101がそれぞれ入力される。
【0017】
ここで、燃焼酸素濃度とは、高S油焚きボイラ12から排出される排ガス中の酸素濃度であって、アンモニアが注入される前の酸素濃度をいう。
【0018】
そして、制御装置26は、これらの入力された信号100、101からの情報に基づいて演算されたアンモニア注入量を注入量指令信号36として注入手段22に出力する。
【0019】
ところで、発明者は、高S油焚きボイラ12の負荷上昇時又は下降時にSO3 濃度の変化が特に大きいことに着目し、その原因を検討したところ、負荷変化時には排ガス中の燃焼酸素濃度の変化が大きく、この燃焼酸素濃度の変化が排ガス中のSO3 濃度の変化に大きく影響しているという知見を得た。
【0020】
本発明は、上記知見に基づいて成されたもので、イオウ分の高い高イオウ油を燃料とする高イオウ油焚きボイラから排出された排ガスにアンモニアを注入してから電気集塵器16に送気して排ガス中のダストを除去する高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法において、アンモニアが注入される排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じて該アンモニアの注入量を調整するようにしたものである。
【0021】
図2は、本発明を行うための制御装置26の制御系統図である。
【0022】
制御装置26には、高S油焚きボイラ12からの燃料消費量信号100による燃料消費量に対してどの程度のアンモニア注入量を排ガス中に注入すればよいかの演算式FX1が設けられている。即ち、演算式FX1によって排ガス中のSO3 を中和するのに最低限必要な基本のアンモニア注入量が求められ、求められた基本アンモニア注入量が演算器37に出力される。
【0023】
図3は、FX1演算式を図で表したもので、高S油燃料における燃料消費量に対する基本アンモニア注入量を、FX1の特性に基づいた比例注入制御を示したものである。比例注入制御は、燃料消費量が一定以上、即ち排ガス中のSO3 濃度が高S油焚きボイラ12の負荷(ボイラ出力)に比例し易い安定状態での注入制御で、燃料消費量に比例した注入制御を行う。
【0024】
一般にアンモニアとSO3 との反応は、SO3 +2NH3 +H2 O→(NH4 )2 SO4 で表される。従って、排ガス中のSO3 を中和するために最低限必要な基本アンモニア注入量は、次式(1)で求められ、図3のFX1特性線は、この(1)式に基づいて構成したものである。
【0025】
【数1】
また、制御装置26には、図2に示すように、高S油焚きボイラ12からの燃焼酸素濃度信号101による燃焼酸素濃度の変化に応じて基本アンモニア注入量をどの程度調整すればよいかの演算式FX2が設けられている。即ち、演算式FX2によって、排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に対応した注入比率が求められて演算器37に出力される。そして、演算器37では、演算式FX1から求められた基本アンモニア注入量に、演算式FX2から求められた注入比率が乗算演算されて求められた乗算アンモニア注入量がコントローラ44に出力される。コントローラ44では、この乗算アンモニア注入量を排ガスに注入する注入量指令信号36としてポジショナ46を介して注入弁31に出力する。また、注入管33を流れるアンモニア流量は、検出器32で検出されてカスケード制御信号35として制御装置26のコントローラ44に出力される。
【0026】
図4は、FX2演算式の好ましい一例を図で示したもので、排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に対する注入比率を、燃焼酸素濃度が定格値(OT )の場合を1としたときに該定格値に対する比率として設定したものである。例えば、排ガス中の燃焼酸素濃度が定格値の場合には注入比率は1となり、排ガスに注入する乗算アンモニア注入量は基本アンモニア注入量に1を乗算した注入量となる。また、排ガス中の燃焼酸素濃度が定格値の2倍の場合には注入比率は2となり、排ガスに注入する乗算アンモニア注入量は基本アンモニア注入量に2を乗算した注入量となる。
【0027】
このように、本発明では、排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に対応した注入比率を求め、該注入比率を燃料消費量に比例した基本アンモニア注入量に乗算した値である乗算アンモニア注入量を排ガスに注入するようにしたので、高S油燃料を使用した油焚きボイラ12からの排ガスの場合にも排ガスへのアンモニア注入量が不足することがない。これにより、電気集塵器16内での機器腐食や灰詰まりが生じにくくできる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法によれば、高イオウ油を燃料とする排ガスの場合にも、適切な量のアンモニアを注入することができる。特に、高S油焚きボイラの負荷変化時、特に高S油焚きボイラの燃焼酸素変化時における排ガスへのアンモニア注入量を適切に制御できる。これにより、電気集塵器内での機器腐食や灰詰まりを生じにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法を適用する排煙処理システムの構成図
【図2】制御装置の制御系統を説明する説明図
【図3】アンモニア注入量の比例制御を説明する説明図
【図4】燃焼酸素濃度と注入比率との関係を説明する説明図
【符号の説明】
10…排煙処理システム、12…高S油焚きボイラ、14…空気予熱器、16…電気集塵器、18…煙突、22…注入手段、26…制御装置、31…注入弁、32…検出器、33…注入管、35…カスケード制御信号、36…注入量指令信号、37…演算器、44…コントローラ、100…高S油燃料消費量信号、101…燃焼酸素濃度信号
Claims (2)
- イオウ分の高い高イオウ油を燃料とする高イオウ油焚きボイラから排出された排ガスにアンモニアを注入してから電気集塵器に送気して前記排ガス中のダストを除去する高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法において、
前記アンモニアが注入される排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じて該アンモニアの注入量を調整するのに際し、
前記排ガス中の燃焼酸素濃度の変化に応じて注入比率を求め、該注入比率を前記高イオウ油燃料の燃料消費量に比例した基本アンモニア注入量に乗算することにより、前記排ガス中に注入するアンモニアの注入量を調整することを特徴とする高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法。 - 前記注入比率は、前記燃焼酸素濃度が定格値の場合を1としたときの該定格値に対する比率であることを特徴とする請求項1に記載の高イオウ油焚きボイラの排煙処理方法。
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