JP3725189B2 - アスタキサンチンおよびアスタキサンチン含有物の製造方法 - Google Patents

アスタキサンチンおよびアスタキサンチン含有物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、緑藻類を用いて、大量に効率よくアスタキサンチンを生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アスタキサンチンは、自然界では動植物界に広く分布している、カロテノイド系色素のキサントフィルに属する赤色色素である。
【0003】
天然に存在するマダイ、サケ等は美しい赤色を帯びているが、これは食物連鎖の過程を通じて蓄積されたアスタキサンチンに起因している。他方、養殖されたマダイ、サケ等は天然物に比べて、体色、肉色の赤色が劣る。そこで、養殖されたマダイ、サケ等の養殖魚の色揚げ餌料として、アスタキサンチンが広く利用されている(特開平5−292897号公報)。また、鶏などの家禽類用飼料としても、鶏肉や鶏卵の色調改善のために広く利用されている(特開平6−105657号公報)。
【0004】
このようにアスタキサンチンは、主として養殖魚や養鶏の色揚げ剤として使用されているが、最近、β−カロテンよりもはるかに強力な抗酸化作用・免疫賦活作用等を有することがわかり、医薬活性成分としての用途も検討されている(Miki, Pure Appl. Chem., 63, 141 (1991))。
【0005】
これまでにアスタキサンチンの天然資源として、海洋から大量に採取できるオキアミやカニ等の甲殻類、あるいはタンクでの培養が可能な赤色酵母ファフィア・ロドチーマを対象に多くの研究が報告されているが(特公昭63−61907号公報、特開平6−141886号公報)、これらの生物は、アスタキサンチン含量が相対的に低く、抽出、精製等にも多くの問題がある。
【0006】
上記のように、天然のアスタキサンチンの製造はコストの面で問題があり、現時点では、合成アスタキサンチンが主に使用されている。しかしながら、合成品より天然品が好まれる傾向にあるため、天然アスタキサンチンの安定した大量生産技術の確立が要望されている。
【0007】
天然のアスタキサンチンの原料として緑藻類が注目されている。ヘマトコッカス属の緑藻類は、上記の天然資源の甲殻類、酵母に比べ、はるかに高濃度のアスタキサンチンを含有している。しかし、この緑藻類の、アスタキサンチンを高濃度で蓄積する培養条件も、未だ解明されていないため、生産性や品質が不十分である。従って、天然のアスタキサンチンは、優れた飼料価値や医薬品素材としての潜在価値を有しながら、有効利用されるに至っていない。
【0008】
これまでに、本発明者らは、緑藻類ヘマトコッカス・プルビアリスによるアスタキサンチンの生産方法について検討を重ねた結果、本緑藻類のアスタキサンチン生合成は、酸化的ストレスを与えることにより、例えば、活性酸素生成物質を添加することにより著しく促進されること(特開平5−68585号公報)を報告しているが、さらに、高濃度でアスタキサンチンを生産する方法が望まれていた。
【0009】
他方、稲や大豆などの植物を中心に、乾燥ストレスに代表される環境ストレスについて多くの研究が行われており、アブシジン酸などの植物ホルモンが、乾燥ストレス耐性のために重要な役割を担っていることが明らかとなっている。しかし、緑藻類も含めた微生物においては、乾燥ストレスに関する知見はほとんどなく、乾燥ストレスとアスタキサンチンの生産との関係も全く検討されていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アスタキサンチンを生産するヘマトコッカス属に属する緑藻類の培養において、この緑藻類に乾燥ストレスを加えることによって、アスタキサンチン含有量を増加させ、効率よくアスタキサンチンを製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ヘマトコッカス属に属する緑藻類によるアスタキサンチンの生産方法について検討を重ねた結果、ヘマトコッカス属の緑藻類に乾燥ストレスを加えることによってシスト化が誘発され、アスタキサンチン生産が促進されることを見いだし、本発明を完成した。さらに、ゲルビーズに緑藻類を固定化した後に、乾燥ストレスを加えることによって、固定化後でさえもアスタキサンチン含量を任意にコントロールすることができることを見いだし、本発明を完成したものである。これより、上記目的が達成される。
【0012】
本発明は、ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産し得る緑藻類に乾燥ストレスを加えることにより、該緑藻類のシスト化を誘発する工程、および該シスト化した緑藻類の培養物からアスタキサンチンを採取する工程を包含する、アスタキサンチンの製造方法に関する。
【0013】
好適な実施態様においては、乾燥ストレスが、緑藻類の固体培養、または、緑藻類の培養物の遠心分離、ろ過、あるいはシリカゲルによる脱水処理である。
【0014】
好適な実施態様においては、乾燥ストレスを加えると同時に、あるいは、乾燥ストレスを加える前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加する工程がさらに包含される。好適な態様においては、植物ホルモンがアブシジン酸あるいはエチレンである。
【0015】
好適な実施態様においては、緑藻類が、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)である。
【0016】
さらに、本発明は アスタキサンチンを含有する固定化された緑藻類に関し、該緑藻類は、ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産し得る緑藻類であり、該固定化された緑藻類は、該緑藻類をゲルビーズに固定化する工程、該固定化した緑藻類に乾燥ストレスを加えることにより、該緑藻類のシスト化を誘発する工程、を含む方法により製造される。
【0017】
好適な実施態様においては、アスタキサンチンを含有する固定化された緑藻類は、さらに、乾燥ストレスを加えると同時に、あるいは、乾燥ストレスを加える前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加する工程を含む方法により製造される。
【0018】
好適な実施態様においては、ゲルは、寒天、アルギン酸ナトリウムあるいはカラギーナンである。
【0019】
好適な実施態様においては、前記ゲルが、ビーズ状またはシート状である。
【0020】
以上のことにより、本発明の目的が達成され得る。
【0021】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
本発明に使用される緑藻類としては、ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産する緑藻類であれば、いかなる緑藻類でも使用し得る。具体的にはヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、 ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバケンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)などが挙げられる。
【0023】
さらに具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス NIES 144、ヘマトコッカス・ラキュストリス ATCC 30402, ATCC 30453, IAM C296, IAM 392, IAM 393, IAM 394, IAM 399 、ヘマトコッカス・カペンシス UTEX 1023 (UTEXは米国テキサス大学菌類保存施設である)、ヘマトコッカス・ドロエバケンシス UTEX 55、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス UTEX 1758などの緑藻類が挙げられる。
【0024】
本発明に好適に用いられるヘマトコッカス・プルビアリスとしては、国立環境研(NIES)にヘマトコッカス・プルビアリス NIES 144の寄託番号で寄託されている株である。
【0025】
ヘマトコッカス・プルビアリスの緑藻類の栄養細胞は、暗所で酢酸などの有機物を炭素源として従属栄養的に培養することにより得られ得る。また、明所で炭酸ガスを炭素源として独立栄養的に、あるいは明所で酢酸などの有機物と炭酸ガスの両方を炭素源として混合栄養的にも増殖させ得る(Kobayashiら, J. Ferment. Bioeng., 74, 17 (1992))。従って、上記、いずれの方法を用いても栄養細胞が製造され得る。
【0026】
本発明に用いる緑藻類の培養に使用される栄養培地は、緑藻類が資化し得るものであれば、いずれも使用し得る。炭素源としては、例えば、従来から知られている酢酸のほか、ピルビン酸、エタノール、およびTCA関連有機酸などがある。窒素源としては、有機あるいは無機の窒素化合物が用いられ得る。例えば、アスパラギン、グリシン、グルタミンなどのアミノ酸、酵母エキス、硝酸塩等が挙げられる。これらの炭素源、窒素源を組み合わせた培地が用いられる他、必要に応じて、無機塩も添加され得る。好ましい培地は、例えば、酵母エキス 2.0g/l,酢酸ナトリウム 1.2g/l, L-アスパラギン 0.4g/l, MgCl2・6H2O 985μM, FeSO4・7H2O 36μM, CaCl2・2H2O 136μM, pH 6.8である。緑藻類の培養条件は、用いる緑藻類によっても異なるが、光照射強度は、一般に、0〜40,000ルクス、好ましくは500〜20、000ルクス、さらに好ましくは500〜10,000ルクスである。生育温度は緑藻類により異なるが、通常、5〜50℃、好ましくは10〜37℃、さらに好ましくは、15〜30℃である。また、炭酸ガスを用いない場合は、酸素を供給しながら行い得る。
【0027】
このようにして培養したヘマトコッカス属の緑藻類の栄養細胞に、乾燥ストレスが加えられる。乾燥ストレスは、培養液という緑藻類の標準的な生育環境(液相)を、気相中に移すことにより、加えられ得る。アスタキサンチンは、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞への形態変化に際して著しく蓄積され得る。本発明に使用する乾燥ストレスを加えることにより、栄養細胞はシスト細胞化し、アスタキサンチン生産機能を最大限に引き出され得る。この乾燥ストレスの工程は、作業工程上の面からもより効果が高い。一般には、乾燥ストレスは、通常の液体培地で増殖させたヘマトコッカス属の緑藻類を脱水処理することにより、加えられ得る。脱水処理後、光照射をすることも、乾燥ストレスに含まれる。脱水処理の方法としては、遠心分離、ろ過等による物理的方法、あるいはシリカゲル等による化学的方法が挙げられる。
【0028】
本発明における乾燥ストレスには、固体培養、例えば、寒天培地、ガラスファイバーフィルター、ろ紙上などでの培養も包含される。固体培養における培地(固体培地)は、上記と同じ組成の培地が用いられ得る。寒天培地を使用する場合、寒天濃度は、0.1〜15%、好ましくは、0.2〜10%であるが、寒天濃度が高くなるにつれアスタキサンチンの生産性は高くなる傾向にある。本発明に使用する緑藻類を寒天培地で培養すると、栄養細胞は数日間でシスト化、アスタキサンチン合成が進行する。
【0029】
また、得られた栄養細胞を、固定化することにより乾燥ストレスを加え得る。固定化に使用する担体としては、ゲル状担体が好ましく、特に、緑藻類を包括あるいは付着することができれば、いずれをも使用し得る。例えば、寒天、アルギン酸ナトリウムあるいはカラギーナン等、固定化菌体・固定化酵素の調製に一般に用いられるゲル化材料が挙げられる。これらは、ビーズ状、シート状等種々の形態を取り得る。
【0030】
アスタキサンチンの含量を高めるために、上記の乾燥ストレスを加えると同時に、あるいは、乾燥ストレスを加える前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加し得る。ここでいう培養基は、液体培地、固体(寒天)培地等の培地、あるいは固定化された緑藻類等の乾燥ストレスを加えた緑藻類を培養する培地を意味する。
【0031】
培養基に添加し得る植物ホルモンとしては、例えば、アブシジン酸、エチレンなどが挙げられる。植物ホルモンを添加すると、シスト化およびアスタキサンチンの合成が、より早期にかつ著しく促進され得る。
【0032】
さらに、乾燥ストレス下で炭素源である酢酸を供給することにより、アスタキサンチン生産をより一層増強し得る。
【0033】
なお、本発明の製造方法には、「乾燥ストレスを加える」条件下で培養する場合、および「乾燥ストレスを加える処理をした後に」培養する場合、のいずれも含まれる。
【0034】
上記の乾燥ストレスを加える培養方法により、ヘマトコッカス属の緑藻類のアスタキサンチン生産が容易に促進され得る。しかも、これら乾燥ストレス条件下では、他の微生物の増殖が極端に抑えられるため、雑菌汚染の危険性が少ない。さらに、乾燥ストレスを加えるため、高濃度のアスタキサンチンを含有する細胞は水分が少なく、ほとんどパウダー状となり得る。このため、分離・回収操作も容易に行い得る。得られたパウダー状細胞は、そのままの状態で養殖魚の色揚げなどに使用され得る。
【0035】
上記乾燥ストレスを加える条件下で得られたパウダー状のヘマトコッカス属の緑藻類は、細胞を破砕する必要がなく、有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、n-ブタノール、アセトン等の極性が高い溶媒、あるいはヘキサン、ベンゼン等を用いて抽出し、効率よく回収され得る。使用する溶剤量は、溶媒およびアスタキサンチンの含量により適宜定められ得る。
【0036】
アスタキサンチンの精製は、既知の分離精製手段で行い得る。たとえば、セファデックス類によるゲルろ過、イオン交換樹脂、イオン交換セルロース、イオン交換セファデックス等のイオン交換クロマトグラフィー、アルミナ、シリカゲル、シアノプロピル、オクタデシルシリカゲル、アンバーライトXAD-1等の吸着クロマトグラフィー、あるいは、ダイヤイオンHP-20、セファデックスLH-20、コスモシル10C18、ヴォレムドライカラム用シリカゲル、デュポンゾルバックスーCN、あるいはエルマFRC-CN吸着剤等を単独であるいは適宜組み合わせて使用することによって行い得、所望の純度のアスタキサンチンが得られ得る。
【0037】
本発明の方法によれば、従来行われていた液体培養からの分離、精製方法、例えば、プロテアーゼを用いる酵素的方法(特開平5−68585号公報)やガラスビーズを加えグラインディングにより破砕する方法、フレンチプレスを用いる方法、超音波破砕法などの既知の物理的方法が不用になり、アスタキサンチンの回収、精製が容易になる。
【0038】
本発明の、ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産し得る緑藻類を含有するビーズは、緑藻類をゲルビーズに固定化する工程、該固定化した緑藻類に乾燥ストレスを加えることにより、該緑藻類のシスト化を誘発する工程、を含む方法により製造される。
【0039】
本発明の固定化に用いるゲルとしては、寒天、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンなどの固定化菌体・固定化酵素の調製に一般に用いられるゲル化材料が用いられ得る。これらのゲル化材料でヘマトコッカス属の緑藻類をビーズあるいはシート状に固定化、ゲル化した後に、上記の乾燥ストレス処理を行うことにより、アスタキサンチンを高濃度含有するビーズあるいはシートが作成され得る。
【0040】
さらに、上記と同様、乾燥ストレスを加えると同時に、あるいは、乾燥ストレスを加える前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加する工程を含み得る。また、乾燥ストレスを加える時間を変えることにより、アスタキサンチン含量は任意にコントロールされ得る。
【0041】
本発明のゲルに固定化された緑藻類は、保存性に優れ、取扱いや管理も容易である。特に、養魚餌料等の最終製品の形に加工した後に、乾燥ストレスによりアスタキサンチン含量を高め得るため、養殖魚等に投与し得る最終製品が直接得られ得る。また、藻体固定化に使用するゲルビーズには、用途に応じて他の栄養成分を含有させ得、アスタキサンチンと同時に他の栄養素を養殖魚に与え得る。
【0042】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。
【0043】
(実施例1)
【0044】
【表1】
Figure 0003725189
【0045】
表1に示す培養基100mlを200ml容のフラスコに入れ、121℃で、15分間滅菌した。同じ組成を有する維持用の培養基に別に培養したヘマトコッカス・プルビアリス NIES 144のシードを接種し、1500ルクスの光照度下、生育温度20℃で4日間、液体培養で前培養を行った。
【0046】
上記液体培養で得られたヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を、寒天2%を含む表1に示す培養基を入れたシャーレに接種し、9000ルクスの光照度下、生育温度20℃で固体培養を行った。さらに、植物ホルモンであるアブシジン酸を10mMの濃度になるように上記培養基に添加し、固体培養におけるアブシジン酸のアスタキサンチン生産に及ぼす添加効果を検討した。
【0047】
固体培養におけるヘマトコッカス・プルビアリスのカロテノイド含量の変化を図1に示す。カロテノイド量は、細胞を破砕後、90%アセトンで抽出し、480nmでの吸光度により測定した。さらに、TLCによりその90%がアスタキサンチンであることを確認した(アスタキサンチンのモノエステル型が70%、ジエステル型が20%含まれていた)。TLCは、Renstrom,B. et al. Phytochemistry, 20, 2561-2564(1981) 、Kobayashi, M. et al. J.Ferment. Bioeng., 71, 335-339(1991)の方法で分析を行った。TLCの分離条件は以下の通りである。
【0048】
TLC:シリカゲルプレート(厚さ1mm)
展開溶媒:アセトン−ヘキサン(3:7)
Figure 0003725189
検出:クロマトスキャナー(島津製作所製、CS930)による545nmの吸収ヘマトコッカス・プルビアリスの栄養細胞を液体培養し、そのまま栄養増殖を行ったが、2〜3週間程度では、栄養細胞からシスト細胞への形態変化およびアスタキサンチン合成は起こらなかった。一方、乾燥ストレス条件と考えられるシャーレでの固体培養では、4〜7日間で、シスト化が起こり、およびアスタキサンチン合成が進行した。シスト化細胞のアスタキサンチン含量は栄養細胞の約10倍であった。さらに、上記固体培養においてアブシジン酸を10mM添加することにより、アスタキサンチン合成は、早期にかつ著しく促進された。アブシジン酸処理した細胞のアスタキサンチン含量は栄養細胞の約20倍であった。
【0049】
(実施例2)
実施例1の前培養と同様にして得られた培養液5mlを、ガラスファイバーフィルター(ADVANTEC TOYO製, GS25, φ45mm)を用いてろ過し、フィルターに栄養細胞を吸着させた。
【0050】
上記フィルターをシャーレに入れ、9000ルクスの光照度下、20℃で3日間乾燥ストレス処理を行うことにより、アスタキサンチン含量は約5倍(44.2μg/フィルター)に増加した。本実施例は、特に無菌操作を行っていない。
(実施例3)
実施例1の前培養と同様にして得られた培養液5mlを、等量のアルギン酸ナトリウム溶液(0.1gのアルギン酸ナトリウムを湯浴中にて純水5mlに溶解後、氷水浴中にて冷却)に懸濁させた。上記懸濁液をパスツールピペットを用いて、0.1M塩化カルシウム溶液に滴下し、アルギン酸カルシウムゲルのビーズ(直径約3mm)を調製した。
【0051】
ビーズをシャーレに入れ、水または酢酸ナトリウム溶液に浸漬し、9000ルクスの光照度下、20℃で7日間乾燥ストレス処理を行った。本実施例は、特に無菌操作を行っていない。ヘマトコッカス・プルビアリスのゲルビーズ中のカロテノイド含量を表2に示す。
【0052】
【表2】
Figure 0003725189
【0053】
緑色の栄養細胞を固定化したゲルビーズは、炭素源である酢酸に浸漬することにより、アスタキサンチン生産が著しく促進され、ゲルビーズは強い赤色を帯びていた。さらに、無菌操作を行っていないのにもかかわらず、ビーズの表面・内部には、細菌等の雑菌汚染はほとんど見られなかった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、藻体に乾燥ストレス処理を加えることにより、アスタキサンチンが早期に蓄積し、効率よくアスタキサンチンを生産させることができる。得られるアスタキサンチンは安全性が高いので、魚類養殖その他の産業に寄与し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヘマトコッカス・プルビアリスのカロテノイド生産に対する乾燥ストレスおよびアブシジン酸の効果を示す図である。

Claims (11)

  1. ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産し得る藻類に乾燥ストレスを加える工程を包含し、該乾燥ストレスが、該藻類の固体培養によるか、または、該藻類の培養物を遠心分離、ろ過もしくはシリカゲルにより脱水処理した後に培養することにより加えられる、アスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  2. 前記藻類に、乾燥ストレスを加えると同時に、あるいは、乾燥ストレスを加える前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加する工程をさらに包含する、請求項1に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  3. 前記植物ホルモンがアブシジン酸あるいはエチレンである、請求項に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  4. 前記藻類が、ヘマトコッカス・プルビアリス NIES 144である、請求項1ないしいずれかの項に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  5. ヘマトコッカス属に属し、アスタキサンチンを生産し得る藻類を、ゲルに固定化する工程、および固定化した該藻類に乾燥ストレスを加える工程、を含む方法により製造される、アスタキサンチンを含有する固定化された藻類。
  6. 請求項に記載のアスタキサンチンを含有する固定化された藻類であって、さらに、前記藻類を固定化すると同時に、あるいは、固定化する前および/または後に、植物ホルモンを培養基に添加する工程を含む方法により製造される、アスタキサンチンを含有する固定化された藻類。
  7. 前記ゲルが、ビーズ状またはシート状である、請求項またはに記載のアスタキサンチンを含有する固定化された藻類。
  8. 前記乾燥ストレスを加える工程において、酢酸ナトリウムが添加されている、請求項1ないしいずれかの項に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  9. 前記固体培養が、寒天培地、ガラスファイバーフィルターおよびろ紙から選択される培地上で行われる、請求項ないしおよびいずれかの項に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  10. 前記乾燥ストレスを加える工程が、前記藻類の固定化を包含する、請求項1ないしおよびいずれかの項に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
  11. 前記固定化に使用する担体が、ゲル状担体である、請求項10に記載のアスタキサンチンまたはアスタキサンチン含有物の製造方法。
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