JP3721871B2 - 超純水の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超純水の製造方法に係り、特に、半導体製造工程からの排出水等の被処理水を、膜処理装置及びイオン交換樹脂を内蔵したイオン交換塔を備える超純水処理手段と、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽及び該生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器を備える生物処理手段とで処理して超純水を製造する方法において、生物反応槽において有機物とアンモニア態窒素を効率的に除去して高純度の超純水を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の超純水製造システムは、図1に示す如く、膜式処理(精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、逆浸透(RO)膜等)、イオン交換樹脂塔、紫外線酸化装置、脱気装置等を組み合わせた一次純水系1及び二次純水系2と、排水回収系3とで構成されている。被処理水のうち、工水、市水等は一次純水系1及び二次純水系2で処理されて超純水としてユースポイント(半導体洗浄工程等)4に送給され、ユースポイント4からの排出水(使用済み超純水。以下「回収水」と称す場合がある。)は、排水回収系3で処理された後、工水や市水と共に、一次純水系1及び二次純水系2で処理されてユースポイント4に送給される。
【0003】
この排水回収系3としては、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽と、この生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器とを有する生物処理手段を適用したものが提案されている(特許第2130384号)。
【0004】
図2はこの特許第2130384号公報に記載されるシステムの実施例であって、工水や市水は、前処理システム(凝集槽11及び二槽濾過器12からなる。)5、一次純水系(RO膜分離装置13、脱気塔14及びイオン交換装置15からなる。)1及び二次純水系(紫外線(UV)殺菌装置16、混床式イオン交換装置17及びUF膜分離装置18からなる。)2で順次処理されて超純水としてユースポイント4に送給される。このユースポイント4からの回収水は、排水回収系3において、まず活性炭吸着塔19において活性炭吸着処理され、イオン交換塔20で処理されて脱塩された後、UV酸化装置21で有機物の酸化分解が行われ、更に生物反応槽22で生物処理された後、菌体分離器23で菌体分離され、その後、工水、市水等の前処理水と共に一次純水系1及び二次純水系2で処理される。
【0005】
生物反応槽22は、生物固定手段、例えば材質がセラミックからなるハニカムチューブ等の固定床、又は活性炭やスポンジ或いはセラミックの粒状物等の流動床を内蔵したものであり、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に微生物が十分に繁殖(増殖)するに必要な時間以上反応が行われる。なお、通常、純水中には溶存酸素(DO)が数ppm存在するので、この反応は好気的に進行するが、DOが少ないときには、純酸素等で曝気し、好気的条件を与えることが必要である。この反応により、微生物は活性化し、水中のTOC成分を資化する。生物反応槽22内の水に、微生物の増殖に十分な量のリン及び窒素が含まれている場合には、生物反応槽22内の水に含まれるTOC成分が殆ど完全に無くなるまでこの生物反応が継続する。
【0006】
生物反応槽22におけるかかる反応により、有機炭素はCO2或いは菌体となる。菌体は後続の菌体分離器23において、マイクロフィルター等で捕捉され分離される。マイクロフィルターとしてはメンブレンフィルター、セラミックからなる多孔質濾過等が利用できる。また、菌体分離器23としてはUF膜分離装置であっても良い。菌体が分離された水はTOCが極めて低濃度にまで低減されている。
【0007】
なお、UV酸化装置21からの水のリン又は窒素濃度がTOC濃度に対して著しく低い場合には、生物反応槽22における生物処理速度が非常に遅くなる。このような場合には、生物が増殖し、有機性炭素を資化できるように、生物反応槽22の入口部において微量のリン又は窒素を添加しても良い。
【0008】
なお、この生物反応槽22及び菌体分離器23からなる生物処理手段は、一次純水系1と二次純水系2との間に設けた構成としても良い。
【0009】
従来においては、このように、回収水中に数ppm程度含まれる微量の有機成分を排水回収系3の生物処理手段で除去し、更に一次純水系1及び二次純水系2で純度を高めて再利用している。
【0010】
しかし、回収水中には、半導体の洗浄工程で使用されるアンモニアが数ppm含まれているが、従来の排水回収系3の生物処理手段ではアンモニアの除去については考慮されておらず、また、排水回収系3に更にアンモニア除去のための手段が組み込まれていることも殆どない。一方で、アンモニアは分子量が小さいために後段のRO膜での除去率が悪く、このためRO膜分離装置の後段のイオン交換樹脂塔に流入してここで捕捉されることになる。そして、この結果、イオン交換樹脂の負荷となり、その再生頻度を高める原因となっている。
【0011】
RO膜での除去効率の面からは、アンモニアを硝化して得られる硝酸又は亜硝酸の方が、アンモニアに比べて有利である。即ち、硝酸や亜硝酸はアンモニアに比べて分子量が大きいため、RO膜で効率的に除去することができることから、後段のイオン交換樹脂の負荷を軽減することができる。従って、排水回収系の生物処理手段で、回収水中の微量有機物の除去と共に、アンモニアの硝化を行うことができれば、アンモニアを硝酸又は亜硝酸に変えてこれをRO膜で除去し、イオン交換樹脂の負荷を軽減することができる。
【0012】
生物処理手段におけるアンモニアの硝化法については、特開平9−187785号公報に、酸素を加圧溶解した加圧水を生物反応槽に供給する方法が記載されている。この方法は、生物反応槽のDOを高くすることにより、アンモニアの亜硝酸、更には硝酸への酸化を促進してアンモニア除去率を高めるものである。しかし、この方法では、加圧水の製造及び供給のための装置を設ける必要があり、装置が複雑になり、メンテナンス、設備コスト等の面で不利である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、生物反応槽において、有機物を除去すると共に、アンモニアを硝化し、後段のRO膜で効率的に除去することにより、イオン交換樹脂の負荷を軽減し、その再生頻度を低減する超純水の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の超純水の製造方法は、半導体製造工程からの排出水、工水、市水又は井水よりなる、アンモニア態窒素を含む被処理水を、膜処理装置及びイオン交換樹脂を内蔵したイオン交換塔を備える超純水処理手段と、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽及び該生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器を備える生物処理手段とで処理して超純水を製造する方法において、該生物反応槽における生物処理をpH8以上で、かつ、生物処理した水のDOが2ppm以上となるように酸素を供給して行い、得られたNH 4 −N濃度が1ppm以下の生物処理した水を逆浸透膜濾過し、逆浸透膜濾過した水を前記イオン交換塔で処理することを特徴とする。
【0015】
本発明に従って、生物反応槽のpHを8以上として運転することにより、アンモニア態窒素の亜硝酸への酸化を促進することができるため、生物反応槽のDOを高める特別な装置を設けることなく、生物反応槽において有機物とアンモニアを効率よく分解除去することができる。
【0016】
本発明において、生物反応槽のpHを8以上とすることにより、アンモニアを亜硝酸に酸化する作用機構は次のように考えられる。
【0017】
即ち、水中のアンモニア態窒素にはイオン化したアンモニウムイオン(NH4 +)とイオン化していない未解離のアンモニア(NH3)とがあり、これらはNH4 ++H2O⇔NH3+H3O+の平衡関係にあるため、pHを高くすると、水中のアンモニア態窒素はイオン化していないNH3の存在比が多くなる。
【0018】
一方で、微生物の細胞膜はイオン化したNH4 +より、イオン化していないNH3を通過させ易く、このためpHを8以上とすることによりアンモニア態窒素(NH3)が微生物の細胞内に取り込まれ易くなり、分解が促進され、アンモニアが亜硝酸に酸化され易くなる。このpH8以上の条件では有機物の生物分解も十分に行われるため、このようにpH調整することにより生物反応槽における有機物の分解が阻害されることはない。
【0019】
なお、pHを8以上とすることはアンモニアから亜硝酸への反応を促進するが、必ずしも亜硝酸から硝酸への反応を促進するとは限らない。しかし、亜硝酸も硝酸と同様にRO膜での除去率が優れているため、亜硝酸を硝酸にまで酸化させる必要はなく、アンモニアを亜硝酸に酸化するだけでシステム全体としてのアンモニア除去率を高めることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の方法において、処理対象となる被処理水はTOC20ppm以下、NH4−N(アンモニア態窒素)20ppm以下程度の水であって、主に半導体製造工程からの排出水(洗浄工程排出水)が挙げられるが、その他、工水、市水、井水、或いはこれらの混合水であっても良い。
【0022】
本発明の方法は、半導体製造工程からの排出水、工水、市水又は井水或いはこれらの混合水を、膜処理装置及びイオン交換樹脂を内蔵したイオン交換塔を備える超純水処理手段と、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽及び該生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器を備える生物処理手段とで処理する超純水製造システムにおいて、生物反応槽における生物処理をpH8以上で行うこと以外は、従来と同様に実施することができる。
【0023】
より具体的には、図2に示すような超純水製造システムの生物反応槽22においてpH8以上で処理を行う。
【0024】
生物反応槽のpH調整には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸や硫酸などの公知のpH調整剤を用いれば良く、pH調整を行う場所に特に制限はない。例えば、pH調整剤を生物反応槽に直接添加する他、その導入側の配管にpH調整剤を添加しても良い。
【0025】
生物反応槽の調整pHが8未満では、アンモニアの亜硝酸への酸化が十分に促進されないが、このpHが過度に高過ぎると後段の装置の負荷が増大するため、生物反応槽の調整pHは8〜9程度とするのが好ましい。
【0026】
この生物反応槽は好気的生物処理を行うために、必要に応じて曝気などの手段で酸素を供給する。この酸素供給量は、生物反応槽の出口水のDOが2ppm以上となる量とする。なお、生物反応槽への酸素の供給手段としては空気や純酸素などの曝気の他、加圧下で酸素を溶解させるなどしてDOを高めた水を供給しても良いが、通常は曝気により必要な酸素が供給される。
【0027】
生物反応槽の型式には特に制限はなく、活性炭やスポンジ担体或いはセラミック担体に貧栄養細菌(オリゴトロフィックバクテリア)を担持した固定床又は流動床式で良い。
【0028】
この生物反応槽の処理温度は25〜35℃、特に30〜35℃であることが、有機物の分解効率及びアンモニアの亜硝酸への酸化効率の面で好ましい。
【0029】
通常の場合、pH8以上の生物処理により、回収水中のアンモニア態窒素はそのほぼ全量を亜硝酸に酸化することができ、また、回収水中の有機物は90%以上分解できる。
【0030】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0031】
実施例1,2、比較例1,2
脱塩水にTOC(酢酸):3ppm,NH4−N:5ppm,KH2PO4:0.3ppmを添加した模擬排水(導電率100μS/cm)を原水として生物反応槽に通水して表1に示す条件で処理し、生物処理水をUF膜分離装置(菌体分離器)及びRO膜分離装置に順次通水した。なお、生物反応槽における曝気は生物反応槽の出口水のDOが3ppmとなるように行った。
【0032】
その結果、UF膜処理水及びRO膜処理水の水質は表1に示す通りであった。
【0033】
【表1】
【0034】
なお、実施例1及び比較例1のUF膜処理水のNO2−N+NO3−N及びTOCの経日変化とRO膜処理水の導電率の経日変化は図3(a)〜(c)に示す通りであった。
【0035】
実施例及び比較例の結果から、生物反応槽のpHを8以上とすることにより、生物反応槽内でのTOC除去には何ら悪影響を及ぼすことなく、TOCの除去と共にアンモニア態窒素の亜硝酸態窒素(ないしは硝酸態窒素)への酸化を行うことができ、この生物反応槽で生成した亜硝酸態窒素(ないしは硝酸態窒素)をRO膜で効率的に除去できることが明らかである。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の超純水の製造方法によれば、半導体製造工程からの排出水等の被処理水を、膜処理装置及びイオン交換樹脂を内蔵したイオン交換塔を備える超純水処理手段と、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽及び該生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器を備える生物処理手段とで処理して超純水を製造する方法において、生物反応槽において、有機物の分解除去と共に、アンモニアの亜硝酸への酸化を行うことができ、この生物反応槽で生成した亜硝酸をRO膜分離装置で効率的に除去して高水質の処理水を得ることができる。このため、RO膜処理水の水質が大幅に向上するため、RO膜分離装置の後段のイオン交換樹脂塔への負荷を軽減することができ、イオン交換樹脂の交換頻度を低減して、システム全体の運転効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な超純水製造システムを示す系統図である。
【図2】特許第2130384号公報に記載されるシステムの系統図である。
【図3】実施例1及び比較例1のUF膜処理水のNO2−N+NO3−N及びTOCの経日変化とRO膜処理水の導電率の経日変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 一次純水系
2 二次純水系
3 排水回収系
4 ユースポイント
5 前処理系
13 RO膜分離装置
15 イオン交換装置
22 生物反応槽
23 菌体分離器
Claims (1)
- 半導体製造工程からの排出水、工水、市水又は井水よりなる、アンモニア態窒素を含む被処理水を、膜処理装置及びイオン交換樹脂を内蔵したイオン交換塔を備える超純水処理手段と、微生物のエネルギー源及び栄養源の存在下に生物処理する生物反応槽及び該生物反応槽からの処理水が導入される菌体分離器を備える生物処理手段とで処理して超純水を製造する方法において、
該生物反応槽における生物処理をpH8以上で、かつ、生物処理した水のDOが2ppm以上となるように酸素を供給して行い、得られたNH 4 −N濃度が1ppm以下の生物処理した水を逆浸透膜濾過し、逆浸透膜濾過した水を前記イオン交換塔で処理することを特徴とする超純水の製造方法。
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