JP3713037B2 - カルシウム入り乳性酸性飲料及びその製造法 - Google Patents
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しかし、乳性酸性飲料は、乳性蛋白質が酸性下において不安定化するために乳性蛋白質および乳性蛋白質会合物の凝集・沈殿を生じやすい。このような凝集・沈殿を生じた飲料は、外観不良となるばかりでなく飲用時の風味も清涼感が損なわれて製品の品質低下を招く。
この様な問題を解決するために種々の技術が開発されている。例えば、ショ糖脂肪酸エステルを添加する方法(特許文献1)、ペクチン又はペクチンとカラギーナンとを添加する方法(特許文献2)、タマリンド種子多糖類及びグアーガムとペクチンとを添加する方法(特許文献3)、ペクチンとフィチン酸とを添加する方法(特許文献4)および酸乳を加圧均質化する方法(特許文献5)等が提案されており、乳性蛋白質の均質化処理及び/又は安定剤の添加された種々の乳性酸性飲料が商品化されている。
一方、日本人に不足しているカルシウムを補うために、カルシウム含有量を増加させた各種カルシウム含有飲料、カルシウム強化乳性酸性飲料が注目されている。
このようなカルシウム強化乳性酸性飲料において、乳性蛋白質を安定化する技術としては、酸性乳とペクチンおよびカルシウム成分を含む原材料を均質化処理する方法、又は酸性乳およびペクチンを含む原材料を均質化処理した後にカルシウム成分を添加する方法(特許文献6)、乳酸発酵した酸乳にシロップ、HMペクチン、カルシウムを加えた後、均質化処理する方法(特許文献7)、乳酸発酵した酸乳にシロップ、ブロックワイズ型HMペクチン、カルシウムを添加する方法(特許文献8)等が提案されている。このようにカルシウム強化乳性酸性飲料において乳性蛋白質とペクチンとを反応させて、乳性蛋白質とカルシウムイオンとの反応を阻害することにより乳性蛋白質の凝集・沈殿を防止することは、既によく知られている。しかし、ペクチンを使用した場合には、ペクチン由来の糊感が生じたり、また清涼感が損なわれる恐れがある。更に、冷やして飲用する場合にペクチンが存在していると粘度が高くなるために、例えばポストミックス式自動販売機等に供給すると定量的な自動送液による販売が困難になる。
以上の理由により酸性下でカルシウムが添加されても均質化された乳性蛋白質の安定性が高く、冷却時に低粘性を示し風味良好な性質を兼ね備えたカルシウム入り乳性酸性飲料が求められている。
また本発明によれば、酸性乳、乳以外のカルシウム成分及び大豆食物繊維を含み、5℃における粘度が100cp以下の乳成分が均質化した、ペクチンを含まない、カルシウム入り乳性酸性飲料の製造法であって、原材料としてのpH3.0〜4.0に調整した酸性乳と、カルシウム含有量が乳性酸性飲料100mlあたり50mg以上となる乳以外のカルシウム成分と、乳性酸性飲料100mlあたり、食物繊維分含有量で0.03〜5gの大豆食物繊維とを混合するにあたり、前記酸性乳と、前記カルシウム成分及び/又は前記大豆食物繊維とを含む混合物等の少なくとも前記酸性乳を含む原材料に対して均質化処理する工程を含むことを特徴とするカルシウム入り乳性酸性飲料が提供される。
本発明のカルシウム入り乳性酸性飲料(以下本飲料と称す)は、pH3.0〜4.0に調整した酸性乳が、カルシウム成分を含む系の酸性飲料中においても均質化されており、低温下において粘度上昇がなく、例えば5℃にて好ましくは粘度100cp以下、特に好ましくは80cp以下を示し、爽やかな風味を有することを特徴とする。前記5℃における粘度が100cpを超えると、カップ式自動販売機等に供給した際に規定の送液量が得られずに支障をきたす恐れがあるので好ましくない。
従って、本飲料に含有される大豆食物繊維は、カルシウム成分を含む乳性酸性飲料において、乳性蛋白質の凝集・沈澱を防止し長期間安定化させ、且つ低温保存時においても飲料の粘度上昇を抑制する作用等を示すものと考えられる。
実施例1
脱脂乳を酪農用乳酸菌により37℃、18時間発酵した発酵乳(pH3.1)26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、6重量%大豆食物繊維(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製、商品名:SM−900)溶液5.0kgを加えて撹拌混合した。次いで混合液に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kg(得られる乳性酸性濃縮飲料100gあたりのカルシウム含有量245mg)と50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に撹拌した後、全量が100kgとなるように水7.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。得られた原液を、ラボラトリーホモゲナイザー(マントンゴーリン社製、形式:15M−8BA)により、圧力150kg/cm2、処理流量2500ml/分で均質化処理を行った。均質化処理液を50℃まで加熱した後に、バニラ系調合香料を加え、更に85℃まで達温殺菌して200ml容ガラス壜に熱時充填した。得られたカルシウム入り乳性酸性濃縮飲料(大豆食物繊維含有量0.3重量%)の5℃における粘度をビスメトロン粘度計(芝浦システム株式会社製)およびNo.2ローターを用いて測定したところ69cpであった。懸濁粒子の平均径をレーザー解析式粒度分布装置(型式SALD−1100、島津製作所製)により測定したところ、2.15μmであった。また12ヶ月間室温保存においても乳蛋白質成分の凝集・沈殿は生じず安定であった。12ヶ月保存後の平均粒径は2.29μmであった。粘度測定、室温保存試験の結果を表1に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、3重量%ペクチン溶液(富士商事(株)販売、商品名:ペクチンFL)10.0kgを加えて撹拌混合した。次いで混合液に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて撹拌し均一溶解した後、全量が100kgとなるように水2.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(ペクチン含有量0.3重量%)の5℃における粘度は201cpであった。懸濁粒子の平均径を実施例1と同様に測定したところ、1.87μmであった。12ヶ月間室温保存において上層で離水が生じた。保存後の平均粒径は1.93μmであった。結果を表1に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、6重量%大豆食物繊維溶液5.0kgを加えて撹拌混合した。得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。次いで均質化処理液に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に撹拌した後、全量が100kgとなるように水7.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(大豆食物繊維含有量0.3重量%)の5℃における粘度は67cpであった。懸濁粒子の平均径を実施例1と同様に測定したところ、2.18μmであった。12ヶ月間室温保存において乳蛋白質成分の凝集・沈殿は生じず安定であった。保存後の平均粒径は2.39μmであった。結果を表1に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、3重量%ペクチン溶液10.0kgを加えて撹拌混合した。得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。次いで均質化後に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に溶解した後、全量が100kgとなるように水2.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(ペクチン含有量0.3重量%)の5℃における粘度は184cpであった。平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、2.48μmであった。12ヶ月間室温保存において乳蛋白質成分が上層で離水をおこした。保存後の粒子の平均径は2.57μmであった。結果を表1に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgを加えて混合し、得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。次いで6重量%に溶解した大豆食物繊維溶液5.0kgを加えて撹拌混合した。混合液に50重量%乳酸0.97kgを加えて均一に撹拌した後、全量が100kgとなるように水7.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(大豆食物繊維含有量0.3重量%)の5℃における粘度は69cpであった。平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、2.25μmであった。12ヶ月間室温保存においても乳蛋白質成分の凝集・沈殿は生じず安定であった。保存後の平均粒径は2.46μmであった。結果を表1に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、6重量%に溶解した大豆食物繊維溶液3.33kgおよび1.67kg(得られる飲料中の大豆食物繊維含有量はそれぞれ0.2重量%および0.1重量%)を別個に加えて撹拌混合し、2種類の混合液をそれぞれ調製した。次いでそれぞれの混合液に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に撹拌した後、全量が100kgとなるように濃度調整水を加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を2種類調製した。得られた原液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(大豆食物繊維含有量0.2重量%および0.1重量%)の5℃における粘度はそれぞれ68cp、62cpであった。得られた飲料中の平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、それぞれ2.26μm、2.57μmであった。どちらも12ヶ月間室温保存において乳蛋白質成分の凝集・沈殿は生じず安定であった。保存後の平均粒径はそれぞれ2.39μm、2.65μmであった。結果を実施例1の結果と合わせて表2に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、6重量%に溶解した大豆食物繊維5.0kgを加えて撹拌混合した。次いで混合液に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液16.45kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて撹拌溶解した後、全量が100kgとなるように水1.38kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。得られた原液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填したところ、5℃における粘度は78cpであった。得られた飲料中の粒子の平均径を実施例1と同様に測定したところ、3.29μmであった。12ヶ月間室温保存においても乳蛋白質成分の凝集・沈殿は生じず安定であった。12ヶ月保存後の平均粒径は3.92μmであった。結果を実施例1の結果と合わせて表3に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に撹拌し、全量が100kgとなるように水12.95kgを加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。得られた原液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填したところ、5℃における粘度は61cpであった。平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、2.73μmであった。12ヶ月間室温保存において乳蛋白質成分は凝集・沈殿を生じた。保存後の平均粒径は3.99μmであった。結果を実施例1の結果と合わせて表4に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、3重量%ポリデキストロース(カルターフードサイエンス(株)製、商品名:ライテス)溶液10.0kgを加えて撹拌混合した。得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。次いで、均質化後に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に溶解した後、全量が100kgとなるように水を加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(ポリデキストロース含有量0.3重量%)の5℃における粘度は64cpであった。平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、3.07μmであった。10日間室温保存したところ、乳蛋白質成分の凝集・沈殿を生じた。結果を実施例1の結果と合わせて表4に示す。
実施例1と同様に調整した乳酸菌発酵乳26.5kgに、グラニュウ糖45.0kg、麦芽糖液糖4.7kgを添加し均一溶解した後、3重量%パインファイバー(松谷化学工業社製)溶液10.0kgを加えて撹拌混合した。得られた混合液について実施例1と同じ条件で均質化処理を行った。次いで、均質化後に17重量%濃度に溶解した乳酸カルシウム水溶液9.88kgと50重量%乳酸0.97kgとを加えて均一に溶解した後、全量が100kgとなるように水を加えてよく撹拌し、乳性酸性濃縮飲料の原液を調製した。実施例1と同様に殺菌を行ないガラス壜充填した。得られた乳性酸性濃縮飲料(パインファイバー含有量0.3重量%)の5℃における粘度は65cpであった。平均粒径を実施例1と同様に測定したところ、3.31μmであった。10日間室温保存したところ、乳蛋白質成分の凝集・沈殿を生じた。結果を実施例1の結果と合わせて表4に示す。
Claims (7)
- 原材料としてpH3.0〜4.0に調整した酸性乳と、乳以外のカルシウム成分と、大豆食物繊維とを含み、
少なくとも前記酸性乳を含む原材料に対して均質化処理を行った均質化液を含み、
前記乳以外のカルシウム成分の含有量が、カルシウム含有量で乳性酸性飲料100mlあたり50mg以上であり、前記大豆食物繊維の含有量が、乳性酸性飲料100mlあたり、食物繊維分含有量で0.03〜5gであり、且つ5℃における粘度が100cp以下であることを特徴とする乳成分が均質化した、ペクチンを含まない、カルシウム入り乳性酸性飲料。 - 前記均質化液が、前記酸性乳、前記乳以外のカルシウム成分及び前記大豆食物繊維を含む原材料、前記酸性乳及び前記乳以外のカルシウム成分を含む原材料、若しくは前記酸性乳及び前記大豆食物繊維を含む原材料を混合し、均質化処理した混合液である請求項1に記載のカルシウム入り乳性酸性飲料。
- 前記大豆食物繊維が、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸、ラムノース、キシロース、フコース及びグルコースを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカルシウム入り乳性酸性飲料。
- 定量的な自動送液用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルシウム入り乳性酸性飲料。
- ポストミックス自動販売機用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカルシウム入り乳性酸性飲料。
- 酸性乳、乳以外のカルシウム成分及び大豆食物繊維を含み、5℃における粘度が100cp以下の乳成分が均質化した、ペクチンを含まない、カルシウム入り乳性酸性飲料の製造法であって、
原材料としてのpH3.0〜4.0に調整した酸性乳と、カルシウム含有量が乳性酸性飲料100mlあたり50mg以上となる乳以外のカルシウム成分と、乳性酸性飲料100mlあたり、食物繊維分含有量で0.03〜5gの大豆食物繊維とを混合するにあたり、
少なくとも前記酸性乳を含む原材料に対して均質化処理する工程を含むことを特徴とするカルシウム入り乳性酸性飲料。 - 少なくとも前記酸性乳を含む原材料が、前記酸性乳、前記乳以外のカルシウム成分及び前記大豆食物繊維を含む混合物、前記酸性乳及び前記乳以外のカルシウム成分を含む混合物、前記酸性乳及び前記大豆食物繊維を含む混合物である請求項6に記載の製造法。
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