JP3711911B2 - 射出成形機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型内部に形成されたキャビティに、ノズルから射出される溶融材料を注入して成形を行う射出成形機に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、熱可塑性樹脂の成形方法として、複雑な形状の成形品でも精度良く成形が行える射出成形法が多用されている。
このような射出成形法では、固定側金型部と移動側金型部とに分割された金型を閉鎖する型締機構と、合成樹脂ペレット等の原材料を溶融・混練して溶融材料を生成する可塑化機構と、金型内部に形成されたキャビティに溶融材料を射出する射出機構を備えた射出成形機が用いられている。
【0003】
このような射出成形機では、一つの成形品を成形するのに要する時間であるサイクルタイムが短縮できれば、同一時間内に製造することができる成形品の数を増やすことができ、生産性が向上するので、サイクルタイムの短縮を図るための処置として、例えば、次の(1)〜(6)が採用されている。
(1)射出成形機の可塑化動作および射出動作を高速化し、可塑化および射出に要する時間を短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
(2)成形温度を低下し、金型全体の冷却に要する時間を短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
(3)冷却するのに最適な形状となるように金型を設計し、金型全体の冷却に要する時間を短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
(4)ホットランナシステムを金型に設け、成形品の冷却に要する時間を短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
(5)冷却機構を金型に設け、金型全体の冷却に要する時間を短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
(6)型締機構の動作を高速化し、ドライサイクルを短くすることで、サイクルタイムを短縮する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的な射出成形機では、前述のような処置を施したとしても、サイクルタイムの短縮には限界があり、これ以上サイクルタイムを短縮することが困難である、という問題がある。
特に、時計の歯車等の小型部品を射出成形で製造しようとすると、成形品である部品の体積よりも、ランナ部分の体積の方が大きいので、ランナ部分を冷却する時間が長くなり、冷却時間を短縮することが著しく困難である、という問題が生じる。
ここで、金型にホットランナシステムあるいは冷却機構を設けることにより、冷却時間を短くすることが考えられる。
しかしながら、ホットランナシステムは、小型成形品を成形するにあたり、ゲート径の大きさが小さい金型に設けようとすると、成形精度に大きく影響を与えるため、実用可能なものが存在していない。
冷却機構は、小型成形品を成形する金型に設けようとすると、金型および射出成形装置の複雑化および大型化を招き、そのコストを高騰させる原因となる。
ここで、溶融樹脂を射出するノズルとして、図7に示されるように、当該ノズルと対向する金型の対向面に密着する密着面101 を備えたノズル100 を採用することができる。
このノズル100の密着面101 には、射出口101Aが開口され、この射出口101Aまで溶融樹脂を導くために、ノズル100 には、射出口101Aに向かって徐々に拡径された漏斗状の流路101Bが設けられている。
このようなノズル100 を利用して射出成形を行うにあたり、サイクルタイムを短縮しようとすると、ノズル100 の先端部分の溶融樹脂の冷却時間が不足し、図8に示されるように、ノズル100 の先端部分において溶融樹脂の固化が不十分となり、固化不十分のまま金型を型開きしてしまうと、ノズル100 の流路101Bから涙滴状樹脂102 が流れ出る「はなたれ」と呼ばれる現象が発生する。
さらに、射出装置を加熱したまま停止状態にしておくと、ノズル100 全体の温度が均一となり、「はなたれ」現象が発生しやすくなり、そのまま、射出装置の射出動作を継続させ、金型のキャビティ内に涙滴状樹脂102が進入すると、成形品にバリ等の不具合を発生させる原因となり、成形に支障をきたす。
【0005】
本発明の目的は、冷却時間およびドライサイクルが短縮可能となり、ひいては、サイクルタイムが短縮されるようになる射出成形機を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、金型内部に形成されたキャビティに、ノズルから射出される溶融材料を注入して成形を行う射出成形機であって、前記ノズルには、前記金型の当該ノズルとの対向面に密着する密着面が形成され、この密着面には、前記キャビティまで溶融材料を導く流路であるランナの一部分となる凹部が形成され、この凹部の底部に前記ノズルの射出口が開口され、当該凹部の周囲に前記密着面を部分的に凹ませたスラッグウェル部が設けられ、かつ、前記ノズルは、少なくとも、前記射出口に溶融材料を導く流路が内部に形成された筒状部品と、前記密着面が形成された密着部品と、前記筒状部品および前記密着部品の間に介装される介装部品とを備えるとともに、これらの筒状部品、密着部品および介装部品が相互に組み合わされたものとなっていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明では、ノズルに設けた凹部がランナの一部となり、この凹部には、金型側のランナよりも先に溶融材料が充填されるので、凹部への充填が完了した溶融材料は、金型に充填された溶融材料よりも先に冷却が始まるので、溶融材料の冷却に要する時間が短くなる。
しかも、射出時に金型に押し付けられるノズルは、射出が完了すると金型から離れる方向に移動するため、ランナに充填されて固化した溶融材料は、ノズルが金型から離れると、凹部に充填された部分が金型の外部に露出する。
これにより、ノズルのストローク分だけ、金型を開閉に要する移動距離、すなわち、型締めストロークが短くなるので、ドライサイクルが短縮される。
そして、少なくとも筒状部品、密着部品および介装部品のそれぞれにノズルを分割することが可能となり、これらの筒状部品、密着部品および介装部品をその配置個所に最適な材質とすることが可能となる。
例えば、射出前の溶融材料の温度が低下しないように、保温性に優れた材質で筒状部品を形成し、凹部に充填された溶融材料が速やかに冷却されるように、放熱性および熱伝導性に優れた材質で密着部品を形成するとともに、射出前の溶融材料の熱が密着部品に伝わらないように、断熱性に優れた材質で介装部品を形成すれば、射出成形の途中で溶融材料が固まったりする等の不具合を何ら発生させることなく、冷却時間の短縮が可能となる。
以上により、冷却時間およびドライサイクルの短縮が図れ、ひいては、サイクルタイムが短縮される。
【0008】
さらに、凹部の周囲には、密着面を部分的に凹ませたスラッグウェル部が設けられていることで、射出の初期に発生する低温の溶融材料をスラッグウェル部で受け、低温の溶融材料が金型のキャビティに入ることを防止でき、成形品の品質が向上されるうえ、金型にスラッグウェルを設ける必要がなくなるので、金型の製作が容易となる。
また、ランナに充填された溶融材料が固化したランナ形状部を金型から取り除くにあたり、ランナ形状部の一部であってスラッグウェル部に覆われていた部分が、ロボットハンド等で把持するためのグリップ部となるので、ランナ形状部を金型から容易に取り除くことができるようになる。
【0009】
以上のような射出成形機において、前記介装部品は、前記筒状部品および前記密着部品よりも断熱性能に優れた材質からなるものであることが望ましい。
このようにすれば、前述のように、射出前の溶融材料の熱が密着部品に伝わらず、密着部品が高温になりにくくなるので、凹部に充填された溶融材料が速やかに冷却されるようになり、冷却時間の短縮が可能となる。
【0010】
また、前述の射出成形機において、前記スラッグウェル部は、前記密着面側の端部に向かって次第に広くなる円錐などの拡径形状に形成されていることが好ましい。
このようにすれば、前述の円錐台状の凹部と同様に、射出の完了時に、金型からノズルが離れる際に、スラッグウェル部から固化した溶融材料がスムースに離れるようになるので、金型からのノズルの離脱が容易に行えるようになり、射出サイクルの一部が停滞するなどの不具合が何ら発生せず、サイクルタイムの短縮が確実に行えるようになる。
【0011】
さらに、前述の射出成形機において、前記スラッグウェル部が複数設けられ、かつ、これらのスラッグウェル部の間隔が異なる密着部品が複数種類用意されるとともに、これらの密着部品が前記筒状部品に対して交換可能となっていることが望ましい。
このようにすれば、スラッグウェル部の間隔の異なる複数種類のなかから、成形すべき成形品の寸法や種類の応じた密着部品を選択することができるとともに、成形品の寸法や種類に応じて密着部品のみを交換すればよいので、ノズル全体を交換する煩雑さが解消されるようになるうえ、成形品の寸法や種類に対して最適な密着部品を選択すれば、冷却時間の短縮が確実に図れるようになる。
【0012】
また、前述のような射出成形機において、前記密着部品は、外周面に雄ねじ溝が形成され、前記筒状部品に設けられた雌ねじ孔と螺合するものであることが好ましい。
このようにすれば、筒状部品に対して密着部品を交換可能に取り付ける取付構造が複雑になることがなく、また、スラッグウェル部に係合する突起が設けられたレンチ等により、交換用の工具と係合する部位を別途設けなくとも、交換作業が容易に行えるようになる。
【0013】
さらに、前述の射出成形機において、前記介装部品は、中心に孔が開口され、前記射出口の内径を絞るオリフィスを兼用するものであることが望ましい。
このようにすれば、射出口から射出される溶融材料の射出量が介装部品により抑制され、しかも、射出前の高温状態が維持される筒状部品側の溶融材料の熱が介装部品により遮断されるので、射出口を通過した溶融材料は、速やかに冷却されるようになり、この点からも、冷却時間の短縮が可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2には、本実施形態に係る射出成形機10が示されている。図1および図2において、射出成形機10は、ホッパ11A (図2にのみに示す)から投入された熱可塑性樹脂製材料を加熱して可塑化する可塑化部11と、可塑化部11から送られてきた溶融樹脂を金型1へ射出する射出部12とを備えたスクリュプリプラ式のものである。
なお、射出成形機10が成形する成形品は、2〜5mm程度の直径を有する腕時計やプリンタ等で用いられる小型の歯車である。
また、射出成形機10には、アングル材等の軸組材を略立方体状に組み合わせた基台10A と、この基台10A の上面に立設された複数のタイバー13A を備えたフレーム13とが設けられている。
【0015】
可塑化部11には、樹脂材料の溶融を行うとともに溶融樹脂を射出部12へ送り出すために、スクリュ11B (図2にのみ示す。)が設けられている。
また、射出部12には、溶融樹脂を一時的に溜めておくとともに硬化しないように加熱する射出用加熱シリンダ14と、射出用加熱シリンダ14内の溶融樹脂を金型1に向かって押し出すプランジャ15とが設けられている。
このうち、射出用加熱シリンダ14の下流側には、金型1に当接するとともに、当該金型1内へ射出される溶融樹脂を導くノズル6Aが設けられている。
タイバー13A の図中下方の端部には、金型1の型締めを行うための型締装置16が設けられている。
【0016】
また、この射出成形機10に設置される金型1としては、二組の金型1A, 1Bが設置されている。金型1A, 1Bは、それぞれ第1金型部7A,7Bと第2金型部8A,8Bとを備えたものとなっている。
第1金型部7A,7Bは、射出成形機10のノズル6Aの射出方向に対して直交する方向、換言すれば、図中左右方向に移動可能に設けられたスライド91の右側および左側にそれぞれ取り付けられている。
一方、第2金型部8A,8Bは、スライド91に対して別個に移動可能に設けられたスライド92の左側および右側にそれぞれ取り付けられている。
スライド92の移動方向は、スライド91と同様に、図中左右方向となっているが、スライド92の動作は、スライド91と逆になっている。すなわち、スライド92は、スライド91が右方向に移動すると左方向に移動し、スライド91が左方向に移動すると右方向に移動するようになっている。
【0017】
これにより、第1金型部7Aは、射出成形を行うために、ノズル6Aに応じた位置に設定された成形位置Aと、この成形位置Aから離れた図中右側の成形準備位置Bとの間を移動可能となっている。
第1金型部7Bは、成形位置Aと、この成形位置Aから離れた図中左側の成形準備位置Cとの間を移動可能となっている。
第2金型部8Aは、成形位置Aと、成形準備位置Cとの間を移動可能となっている。
第2金型部8Bは、成形位置Aと、成形準備位置Bとの間を移動可能となっている。
そして、成形位置Aでは、第1金型部7A,7Bおよび第2金型部8A,8Bのそれぞれが互いに対向し、成形準備位置B,Cでは、第1金型部7A,7Bおよび第2金型部8A,8Bが互いに対向しないようになっている。
【0018】
射出成形機10には、金型1から成形品を取り出すための成形品用エジェクタ3B, 3Cと、成形で生じたランナ形状部を金型1から取り除くためのランナ用エジェクタ5B, 5Cとが設けられている。
このうち、成形品用エジェクタ3Bおよびランナ用エジェクタ5Bは、成形準備位置B側に配置され、成形品用エジェクタ3Cおよびランナ用エジェクタ5Cは、成形準備位置C側に配置されている。ただし、図1においては、成形品用エジェクタ3Bの図示が省略され、図2においては、成形品用エジェクタ3Cおよびランナ用エジェクタ5Cの図示が省略されている。
【0019】
成形品用エジェクタ3B, 3Cの各々は、金型1で成形した成形品を真空吸着により吸い付ける吸引ノズル31を備えたものである。
このうち、成形品用エジェクタ3Bは、エアシリンダ装置等の駆動装置32A, 32B(図2にのみ示す。)を介して射出部12に取り付けられている。
このような成形品用エジェクタ3Bは、駆動装置32B により、成形準備位置Bに到達した第2金型部8Bの直上の位置B1と、位置B1の前方となる位置B2との間を前後に移動可能とされ、位置B2へ前進すれば、成形準備位置Bに移動してきた第2金型部8B等との衝突が回避可能となっている。
また、成形品用エジェクタ3Bは、駆動装置32A により、第2金型部8Bの上面とほぼ同じ高さレベルと、ノズル6Aの下端とほぼ同じ高さレベルとの間を上下に移動可能となっている。
【0020】
成形準備位置Bに到達した第2金型部8Bの直下には、第2金型部8Bで成形した成形品を第2金型部8Bから離型するためのエジェクタピン33B が設けられている。このエジェクタピン33B は、その下方に設けられたエアシリンダ装置34B によって駆動され、第2金型部8Bに対して進退するようになっている。
金型1Bでの成形が完了すると、成形品は、金型1Bの第2金型部8Bとともに成形準備位置Bに到達するようになっている。
また、成形品が成形準備位置Bに到達すると、成形品用エジェクタ3Bは、位置B2から位置B1へ後退し、さらに、下降するようになっている。
そして、成形品用エジェクタ3Bが第2金型部8Bの上面に到達すると、第2金型部8Bに向かって前進駆動されるエジェクタピン33B により、成形品は、第2金型部8Bから吸引ノズル31に向かって押し出され、成形品用エジェクタ3Bの吸引ノズル31に吸着されるようになっている。
成形品用エジェクタ3Bは、吸引ノズル31に成形品を吸着すると、位置B1から位置B2へ後退し、図示しないバスケットの上方で吸引ノズル31の真空吸引を停止し、成形品を該バスケットの中へ落下させるようになっている。
なお、成形品用エジェクタ3Cは、成形品用エジェクタ3Bと同様の構造を備えたものであるであるので、その説明を省略する。
【0021】
ランナ用エジェクタ5Bは、エアシリンダ装置等の駆動装置52A, 52Bを介して射出部12に取り付けられている。
このようなランナ用エジェクタ5Bは、駆動装置52B により、成形準備位置Bに到達した第2金型部8Bの直上の位置B1と、位置B1の後方となる位置B3との間を前後に移動可能とされ、位置B3へ後退すれば、成形準備位置Bに移動してきた第1金型部7A等との衝突が回避可能となっている。
また、ランナ用エジェクタ5Bは、駆動装置52A により、第1金型部7Aの上面とほぼ同じ高さレベルと、ノズル6Aよりも上方となる高さレベルとの間を上下に移動可能とされている。
ランナ用エジェクタ5Bには、ランナ形状部を把持するために、開閉可能となったチャック51と、チャックを開閉駆動するエアモータ等の駆動装置53とが設けられている。
金型1Aでの成形が完了すると、ランナ形状部は、金型1Aの第1金型部7Aとともに成形準備位置Bに到達し、これと同時に、金型1Aの第2金型部8Aは、成形準備位置Cに到達するようになっている。
ランナ形状部が成形準備位置Bに到達すると、ランナ用エジェクタ5Bのチャック51は、位置B1まで前進するとともに、下降してランナ形状部と係合可能となり、閉じてランナ形状部を把持し、再度上昇するようになっている。これにより、ランナ形状部が第1金型部7Aから抜き取られるようになっている。
そして、ランナ用エジェクタ5Bは、位置B1から位置B3まで後退すると、チャック51が開き、ランナ形状部がランナ用エジェクタ5Bから下方へ落されるようになっている。
なお、ランナ用エジェクタ5Cは、ランナ用エジェクタ5Bと同様の構造を備えたものであるであるので、その説明を省略する。
【0022】
こうのような射出成形機10のノズル6Aは、図3ないし図5に示されるように、当該ノズル6Aと対向する第1金型部7A、7Bの対向面70に密着するように形成された密着面60を備えたものとなっている。
ノズル6Aの密着面60には、金型1のキャビティ80(図5にのみ示す。)まで溶融樹脂を導く流路であるランナ73の一部分となる凹部61が形成されている。この凹部61は、密着面60側の端部、換言すると、密着面60に開口された端部に向かって次第に開口径が広くなる円錐などの拡径形状に形成されている。そして、凹部61の底部には、ノズル6Aの射出口62が開口されている。
また、凹部61の周囲には、密着面60を部分的に凹ませた複数のスラッグウェル部63が設けられている。スラッグウェル部63は、凹部61と同様に、密着面60側の端部、換言すると、密着面60に開口された端部に向かって次第に広くなる円錐形状に形成されている。
【0023】
ここで、ノズル6Aは、射出口62に溶融樹脂を導く流路64A が内部に形成された筒状部品64と、密着面60が形成された密着部品65と、筒状部品64および密着部品65の間に介装される介装部品66と、射出口62の上流側の流路を形成するとともに、射出口62に向かって次第に縮径された絞り部品67と、密着部品65を筒状部品64に固定するための環状部品68とを備え、これらの筒状部品64、密着部品65、介装部品66、絞り部品67および環状部品68が相互に組み合わされたものである。
筒状部品64は、射出前の溶融樹脂の温度が低下しないように、密着部品65、介装部品66および絞り部品67に対して保温性に優れた材質で形成されたものである。
密着部品65は、凹部61に充填された溶融樹脂が速やかに冷却されるように、筒状部品64に対して放熱性および熱伝導性に優れた材質で形成されている。
介装部品66は、筒状部品64、密着部品65、絞り部品67および環状部品68よりも断熱性能に優れた材質、例えば、セラミックス製のものである。
【0024】
ここで、密着部品65には、スラッグウェル部63が複数設けられている。そして、密着部品65としては、複数設けられたスラッグウェル部63同士の間隔が異なる密ものが複数種類用意され、筒状部品64に対して交換可能となっている。
このために、図4の如く、密着部品65の外周面には、雄ねじ溝65A が形成され、密着部品65は、筒状部品64に設けられた雌ねじ孔64B と螺合するものとなっている。
また、介装部品66は、流路64A よりも小径の孔66A が中心に開口され、射出口62の内径を絞るオリフィスを兼用するものとなっている。
なお、環状部品68は、ビス68A 等で筒状部品64に固定されている。
【0025】
また、金型1は、図5の如く、内部に複数のキャビティ80が設けられ、溶融樹脂を一回射出すると、複数の成形品が成形できるものとなっている。
この際、第1金型部7A, 7Bは、ノズル6Aの密着面60と密着する対向面70を備えたノズル側部材71と、第2金型部8A, 8Bのキャビティ80を閉鎖するキャビティ側部材72とに分割されたものである。
そして、第1金型部7A, 7Bに形成されたランナ73は、ノズル6Aの凹部61により導かれてきた溶融樹脂を分岐する分岐部73A と、この分岐部73A から各キャビティ80まで溶融樹脂を導く支流路73B とを備えたものである。
このうち、分岐部73A は、第1金型部7A, 7Bのノズル側部材71に設けられ、支流路73B は、第1金型部7A, 7Bのキャビティ側部材72に設けられている。
【0026】
次に、本実施形態の射出成形動作について説明する。
まず、金型1Aで射出成形を行うにあたり、第2金型部8Aが第1金型部7Aに向かって移動し、図6(A)に示されるように、金型1Aが閉鎖されると、ノズル6Aに向かって金型1Aがさらに前進し、図6(B)に示されるように、第1金型部7A、7Bの対向面70にノズル6Aの密着面60が密着する。この状態で、プランジャ15が前進し、ノズル6Aから金型1Aの内部へ溶融樹脂が射出される。
充分な冷却により溶融樹脂が充分硬化したら、図6(C)に示されるように、第2金型部8Aを第1金型部7Aから離し、金型1Aを開く。
【0027】
ここで、キャビティ80内の成形品81からランナ形状部77が切り離されるようになっている。
また、金型1Aが開く際、第1金型部7Aは、ノズル側部材71からキャビティ側部材72が離れるようになっている。
これにより、ノズル側部材71の分岐部73A 内で固まったランナ形状部76が図6(C)中上方へ引き上げられ、キャビティ側部材72の支流路73B 内で固まったランナ形状部74が、ノズル側部材71側へ引き抜かれるので、ノズル6Aのスラッグウェル部63内で固まったランナ形状部75をランナ用エジェクタ5Bのチャック51で把持して引き上げれば、ランナ形状部77が容易に金型1Aから取り出せる。
【0028】
前述のような本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、金型1内部に形成されたキャビティ80に溶融樹脂を注入するためのノズル6Aに、当該ノズル6Aと対向する金型1の対向面70に密着する密着面60と、この密着面60に形成されるとともに、キャビティ80まで溶融樹脂を導く流路であるランナ73の一部分となる凹部61とを設け、この凹部61の底部にノズル6Aの射出口62を開口し、金型1側のランナ73である分岐部73A および支流路73B よりも先に、溶融樹脂が凹部61に充填されるようにし、金型1に充填された溶融樹脂よりも、凹部61に充填された溶融樹脂の冷却が先に開始されるようにしたので、金型1側のみにランナ73を形成する場合よりも、溶融樹脂の冷却に要する時間も短縮することができる。
しかも、射出時にノズル6Aに押し付けられる金型1は、射出が完了するとノズル6Aから離れる方向に移動するため、ランナ73に充填されて固化した溶融樹脂は、金型1がノズル6Aから離れると、凹部61に充填された部分が金型1の外部に露出するので、金型1のストローク分だけ、金型1を開閉に要する移動距離、すなわち、型締めストロークが短くなるので、ドライサイクルを短縮できる。
以上により、溶融樹脂の充填時間および冷却時間ならびにドライサイクルを短縮することができ、ひいては、サイクルタイムを短縮することができる。
【0029】
また、射出口62に溶融樹脂を導く流路64A が内部に形成された筒状部品64と、密着面60が形成された密着部品65と、筒状部品64および密着部品65の間に介装される介装部品66とを組み合わせたノズル6Aを採用し、射出前の溶融樹脂の温度が低下しないように、保温性に優れた材質で筒状部品64を形成し、凹部61に充填された溶融樹脂が速やかに冷却されるように、放熱性および熱伝導性に優れた材質で密着部品65を形成し、射出前の溶融樹脂の熱が直接、密着部品65に伝わらないようにするため、断熱性に優れた材質であるセラミックスで介装部品66を形成したので、射出成形の途中で溶融樹脂が固まったりする等の不具合を何ら発生させることなく、冷却時間を短縮することができる。
しかも、ノズル6Aの先端部分に配置される密着部品65内の溶融樹脂の冷却が十分に行われるようになるので、サイクルタイムを短縮しても、従来のように 「はなたれ」現象が発生せず、また、「はなたれ」現象による涙滴状樹脂102も発生しないので、成形品にバリ等の不具合を発生させず、射出成形にあたり、「はなたれ」現象による支障を未然に防止できる。
【0030】
さらに、凹部61の周囲に、密着面60を部分的に凹ませたスラッグウェル部63を複数設けたので、射出の初期に発生する低温状態の溶融樹脂がスラッグウェル部63で受けられ、低温状態の溶融樹脂が金型1のキャビティ80に入ることを防止でき、ウェルドラインや充填不足などの成形不良が防止され、成形品の品質を向上できるうえ、金型1にスラッグウェルを設ける必要がなくなるので、金型1の製作を容易にすることができる。
また、ランナ73に充填された溶融樹脂が固化したランナ形状部77を金型1から取り除くにあたり、ランナ形状部77の一部であってスラッグウェル部63に覆われていたランナ形状部75が、チャック51で把持するためのグリップ部となるので、ランナ形状部77を金型1から容易に取り除くことができる。
【0031】
さらに、密着面60側の端部に向かって次第に広くなる円錐形状に形成されている凹部61およびスラッグウェル部63を採用したので、射出の完了時に、金型1からノズル6Aが離れる際に、凹部61およびスラッグウェル部63から固化した溶融樹脂がスムースに離れるようになるので、金型1からのノズル6Aの離脱が容易に行えるようになり、射出サイクルの一部が停滞するなどの不具合が何ら発生せず、サイクルタイムの短縮を確実に達成することができる。
【0032】
また、密着部品65として、スラッグウェル部63が複数設けられるとともに、これらのスラッグウェル部63の間隔が異なるものを複数種類用意し、これらの密着部品65を筒状部品64に対して交換可能とし、複数種類の密着部品65のなかから、成形すべき成形品の寸法や種類の応じたものを選択できるようにしたので、成形品の寸法や種類に応じて密着部品65のみを交換すればよく、ノズル6A全体を交換する煩雑さを解消することができるうえ、成形品の寸法や種類に対して最適な密着部品65を選択すれば、冷却時間の短縮を確実に図ることができる。
【0033】
さらに、密着部品65の外周面に雄ねじ溝65A を形成し、この雄ねじ溝65A を筒状部品64に設けた雌ねじ孔64B と螺合するようにしたので、筒状部品64に対して密着部品65を交換可能に取り付ける取付構造が複雑になることがなく、また、スラッグウェル部63に係合する突起が設けられたレンチ等により、交換作業が容易に行え、交換用の工具と係合する部位を別途設ける必要がなく、密着部品65の形状をより簡単なものとできる。
【0034】
また、流路64A よりも小径の孔66A が中心に開口され、射出口62の内径を絞るオリフィスを兼用する介装部品66を採用し、射出口62から射出される溶融樹脂の射出量が介装部品66により抑制され、しかも、射出前の高温状態が維持される筒状部品64側の溶融樹脂の熱が介装部品66により遮断されるようにしたので、射出口62を通過した溶融樹脂が速やかに冷却されるようになり、この点からも、冷却時間を短縮することができる。
【0035】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、この実施形態に限られるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更が可能である。
例えば、射出成形機としては、単に金型の内部へ溶融樹脂を射出するだけのものに限らず、成形品に表面に一体化される表皮材、あるいは、インサート等の部品を、予め金型の内部に配置しておき、この状態で、金型の内部へ溶融樹脂を射出するものでもよい。
この場合、部品を金型内部に供給する部品供給手段を成形機に設けることが望ましい。
【0036】
このようにすれば、内部にインサートが埋め込まれたインサート成形品や、表面にレザー等の表皮材が張り付けられた積層成形品を製造するにあたり、一の金型で成形を行っている間に、部品供給手段により、残りの金型に、インサートおよび表皮材等の部品が金型内部に自動的に設置されるので、予め部品の設置を行っても、サイクルタイムが長くなることがない。
また、成形準備位置で部品の設置を行えば、型締装置のストロークを小さくすることができ、型締装置のストロークを短縮することにより、成形機の小型化とサイクルタイムの短縮が行えるようになり、インサート成形品や、積層成形品を製造する際にも、安定した動作を確保しつつ、サイクルタイムの短縮および成形機の小型化が図れる。
【0037】
さらに、金型から成形品を取り出す成形品用エジェクタとしては、金型の型開き方向に沿って移動可能に設けられ、開いた金型部に自らが近づいて、金型から成形品を取り出すものに限らず、型開きのために移動する金型部の動きを利用し、金型の解放時における金型部の移動先に、成形品用エジェクタを待機させ、換言すると、金型部の方を成形品用エジェクタに接近させ、接近してきた金型部から成形品を取り出すものでもよい。
【0038】
また、成形機としては、上下に第1および第2の金型部が配置され、上下方向に型締めが行われる縦型のものに限らず、左右に第1および第2の金型部が配置され、水平方向に型締めが行われる横型のものでもよい。
さらに、成形方式としては、金型を完全に閉じた状態で、金型内に溶融樹脂を射出し、射出圧によりキャビティ内を溶融樹脂で満たすものに限らず、次のような成形方式でもよい。
例えば、金型を完全に閉じた状態で、金型内に溶融樹脂を射出し、キャビティ内が完全に溶融樹脂で満たされる前に、溶融樹脂の射出を停止した後、キャビティ内の溶融樹脂の内部に高圧ガスを注入し、ガス圧によりキャビティ内を溶融樹脂で満たすガス注入射出成形でもよい。
あるいは、金型を完全には閉じないで、型締め代を残した状態で、金型内に溶融樹脂を射出し、型締め代を残した状態のキャビティ内が溶融樹脂で完全に満たされる前に、溶融樹脂の射出を停止した後、型締めを再開し、この型締めによりキャビティ内を溶融樹脂で満たす射出圧縮成形でもよい。
【0039】
また、成形機としては、金型の内部に向かって溶融樹脂を射出するものに限らず、溶融状態にした金属を金型の内部に流し込む鋳造装置、MIM(メタル・インジェクション・モールド)成形機でもよい。
【0040】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、冷却時間およびドライサイクルを短縮でき、ひいては、サイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る実施形態の全体を示す正面図である。
【図2】 前記実施形態の全体を示す側面図である。
【図3】 前記実施形態のノズルを示す斜視図である。
【図4】 前記実施形態のノズルを示す断面図である。
【図5】 前記実施形態のノズルおよび金型を示す断面図である。
【図6】 前記実施形態の動作を説明するための図である。
【図7】 従来例を示す断面図である。
【図8】 従来例における課題を説明するための図である。
【符号の説明】
1…金型、6A…ノズル、10…射出成形機、60…密着面、61…凹部、62…射出口、63…スラッグウェル部、64A …流路、64B …雌ねじ孔、64…筒状部品、65A …雄ねじ溝、65…密着部品、66A …孔、66…介装部品、70…対向面、73…ランナ、80…キャビティ。
Claims (6)
- 金型内部に形成されたキャビティに、ノズルから射出される溶融材料を注入して成形を行う射出成形機であって、
前記ノズルには、前記金型の当該ノズルとの対向面に密着する密着面が形成され、この密着面には、前記キャビティまで溶融材料を導く流路であるランナの一部分となる凹部が形成され、この凹部の底部に前記ノズルの射出口が開口され、当該凹部の周囲に前記密着面を部分的に凹ませたスラッグウェル部が設けられ、かつ、前記ノズルは、少なくとも、前記射出口に溶融材料を導く流路が内部に形成された筒状部品と、前記密着面が形成された密着部品と、前記筒状部品および前記密着部品の間に介装される介装部品とを備えるとともに、これらの筒状部品、密着部品および介装部品が相互に組み合わされたものとなっていることを特徴とする射出成形機。 - 請求項1に記載の射出成形機において、前記介装部品は、前記筒状部品および前記密着部品よりも断熱性能に優れた材質からなるものであることを特徴とする射出成形機。
- 請求項1または請求項2に記載の射出成形機において、前記スラッグウェル部は、前記密着面側の端部に向かって次第に広くなる円錐などの拡径形状に形成されていることを特徴とする射出成形機。
- 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の射出成形機において、前記スラッグウェル部が複数設けられ、かつ、これらのスラッグウェル部の間隔が異なる密着部品が複数種類用意されるとともに、これらの密着部品が前記筒状部品に対して交換可能となっていることを特徴とする射出成形機。
- 請求項4に記載の射出成形機において、前記密着部品は、外周面に雄ねじ溝が形成され、前記筒状部品に設けられた雌ねじ孔と螺合するものであることを特徴とする射出成形機。
- 請求項2から請求項5までのいずれかに記載の射出成形機において、前記介装部品は、中心に孔が開口され、前記射出口の内径を絞るオリフィスを兼用するものであることを特徴とする射出成形機。
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