JP3711851B2 - ポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ(p−tert−ブトキシスチレン)は、超LSIの製造に必要なレジスト材などとしてよく知られており、近年では分子量分布が狭い狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)、例えば重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnから計算されるMw/Mnが1.30程度以下、好ましくは1.20程度以下のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が要望されている。
【0003】
かかるポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製法としては、例えば特開平6−298869号公報において、反応溶媒と重合開始剤との混合物にp−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液を何ら前処理することなく加える方法が提案されている。
しかし、かかる製法ではMw/Mnが1.30を超えるポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が生成する場合があった。
【0004】
一方、狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を安定して製造し得る方法として、反応溶媒とp−tert−ブトキシスチレンとの混合物に、重合開始剤を加える方法が挙げられ(特開平8−29983号公報)、短時間で重合開始剤を加えることにより狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を得ることができるが、重合開始剤を短時間で加える結果、急激に反応が進行して発熱し、反応系の温度が上昇し易く、温度をコントロールし難くなるという工業上の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者は、急激な発熱を防止しながら安定的に狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を製造し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、反応溶媒とp−tert−ブトキシスチレンとの混合物に重合開始剤を加える方法では、用いるp−tert−ブトキシスチレンの水分含量が多くても、得られるポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量分布に影響しないのに対して、反応溶媒と重合開始剤との混合物にp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を加える方法においては、p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液に混入している水分が、得られるポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量分布に影響していることを見出すと共に、かかる方法においてp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液の水分含量を70ppm以下に調整することにより、狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を安定的に製造し得ることを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、反応溶媒と重合開始剤との混合物に、−50℃〜−10℃の温度範囲で、水分含量が70ppm以下に調整されたp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を順次加え、上記温度範囲で保温することを特徴とするポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の製法に用いられる反応溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素などの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、これら2種以上の混合物などが挙げられる。なかでも炭化水素系溶媒とエーテル類との混合溶媒が好ましく使用される。反応溶媒は、p−t−ブトキシスチレンに対して、通常1〜20重量倍程度、好ましくは2〜10重量倍程度使用される。
【0008】
重合開始剤としては、有機アルカリ金属化合物、例えばn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、i−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、2−メチルブチルリチウム、リチウムナフタレンなどの有機リチウム化合物、ナトリウムナフタレン、ナトリウムアントラセン、α−メチルスチレンテトラマーナトリウム、ナトリウムビフェニルなどの有機ナトリウム化合物などが挙げられる。なかでもn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムなどが好ましく使用される。
有機金属化合物の使用量は、目的とするポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量により変動するが、モノマーであるp−tert−ブトキシスチレン1g当たり10-5〜10-3モル程度であることが好ましい。
【0009】
本発明の製法は、かかる反応溶媒と重合開始剤との混合物にp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を加える方法である。
【0010】
p−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液を加える場合、該溶液に使用される溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素などの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、これら2種以上の混合物などが挙げられ、その使用量はp−tert−ブトキシスチレンに対して通常0.05〜10重量倍程度、好ましくは0.1〜1重量倍程度である。かかる溶媒は、反応溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0011】
かかるp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液は、水分含量が70ppm以下に調整されている。水分含量が70ppmを超えると狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を得難くなるため、60ppm以下、さらには50ppm以下に調製することが好ましい。また水分含有量を5ppm未満とするためには特殊な脱水剤が必要となり、複雑な乾燥工程を必要とするので、簡便に水分含量を調製し得る点で、5ppm以上、さらには10ppm以上に調製することが好ましい。p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液の水分含量は、例えばカールフィッシャー法などにより容易に測定できる。
【0012】
p−tert−ブトキシスチレンを単独で加える場合には、p−tert−ブトキシスチレンの水分含量を本発明で規定する範囲に調整したのち、p−tert−ブトキシスチレンを反応溶媒と重合開始剤との混合物に加えればよい。用いるp−tert−ブトキシスチレンには通常、保存されている間などに大気中から混入した水分が含まれているため、p−tert−ブトキシスチレンの水分含量を本発明で規定する範囲に調整するには、通常は水分含量を本発明で規定する範囲に抑制すればよい。水分含量を抑制する方法としては、例えば減圧蒸留による方法、モレキュラーシーブやシリカゲルなどの乾燥剤を使用して乾燥する方法などが挙げられるが、乾燥剤を用いて乾燥する方法がより簡便である。
【0013】
p−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液を加える場合には、該溶液の水分含量を本発明で規定する範囲に調整したのち、p−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液を反応溶媒と重合開始剤との混合物に加えればよい。p−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液や該溶液の調製に用いられるp−tert−ブトキシスチレンおよび溶媒には、通常、保管されている間などに大気中から混入した水分が存在するため、p−tert−ブトキシスチレンの溶媒溶液の水分含量を本発明で規定する範囲とするには、通常は該溶液の水分含有量を本発明で規定する範囲に抑制すればよい。溶液の水分含有量を抑制するには、例えばp−tert−ブトキシスチレンと溶媒とを混合した後にモレキュラーシーブ、シリカゲルなどの乾燥剤で乾燥してもよいし、上記したと同様の方法で乾燥したp−tert−ブトキシスチレンと予めモレキュラーシーブ、シリカゲルなどの乾燥剤で乾燥させた溶媒とを混合してもよい。
【0014】
本発明の製法において、p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液は、通常、高真空下あるいはアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下に、反応溶媒と重合開始剤との混合物に順次加えられる。p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液は−50〜−10℃程度の温度で、反応溶媒と重合開始剤との混合物に順次加えられ、通常10分〜20時間程度、好ましくは15分〜5時間程度の時間をかけて、反応溶媒と重合開始剤との混合物に順次加えられる。加え終わった後には、同温度で5分〜5時間程度保温するのが好ましい。p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を反応溶媒と重合開始剤との混合物に加えることによりp−tert−ブトキシスチレンが重合して、目的とするポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が生成する。
p−tert−ブトキシスチレンの重合反応は、水、メタノールなどの重合反応停止剤を少量加えることにより、停止させることができる。
【0015】
次いで、反応マスから溶媒を留去することにより、目的とする狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を単離することができる。得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)は、例えば溶媒留去した後、メタノールなどに注入する方法により、精製することもできる。
【0016】
かくして得られたポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量分布は、GPC分析によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とから算出される分子量分布(Mw/Mn)により確認し得る。
【0017】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0018】
実施例1
窒素雰囲気下、モレキュラーシーブにより水分を十分に除去したヘキサン(水分含量は約12ppm)(587cm3)、sec−ブチルリチウム(5.9mmol)を1000cm3のフラスコに加え、−40℃まで冷却し、そこにp−tert−ブトキシスチレン(88g)とエチレングリコールジメチルエーテル(6cm3)の混合溶液(モレキュラーシーブにより、カールフィッシャー法により測定した水分含量が12ppmとなるまで乾燥させた)を1時間で滴下し、さらに−20℃で10分重合を行った後、メタノール(約3cm3)を加え反応を停止させた。次いで、得られた反応混合物の一部を採取し、溶媒留去したところ、白色固体生成物としてポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が得られた。このポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量をGPC分析により測定したところ、数平均分子量Mnは14900(ポリスチレン換算)であり、また分子量分布Mw/Mnは1.12であった。
【0019】
実施例2
窒素雰囲気下、モレキュラーシーブにより水分を十分に除去したヘキサン(水分含量は約7ppm)(587cm3)、sec−ブチルリチウム(5.9mmol)を1000cm3のフラスコに加え、−40℃まで冷却し、そこにp−tert−ブトキシスチレン(88g)とエチレングリコールジメチルエーテル(6cm3)の混合溶液(モレキュラーシーブで水分含量が43ppmとなるまで乾燥させた)を1時間で滴下し、さらに−20℃で10分重合を行った後、メタノール(約3cm3)を加え反応を停止させた。次いで、得られた反応混合物の一部を採取し、溶媒留去したところ、白色固体生成物としてポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が得られた。このポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量をGPC分析により測定したところ、数平均分子量Mnは14300(ポリスチレン換算)であり、また分子量分布Mw/Mnは1.18であった。
【0020】
比較例1
窒素雰囲気下、モレキュラーシーブにより水分を十分に除去したヘキサン(730cm3)、sec−ブチルリチウム(5.6mmol)を1000cm3のフラスコに加え、−40℃まで冷却し、そこにp−tert−ブトキシスチレン(95g)とエチレングリコールジメチルエーテル(6cm3)の混合溶液(水分含量は83ppm)を1時間で滴下し、さらに−20℃で10分重合を行った後、メタノール(約2cm3)を加え反応を停止させた。次いで、得られた反応混合物の一部を採取し、溶媒留去したところ、白色固体生成物としてポリ(p−tert−ブトキシスチレン)が得られた。このポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量をGPC分析により測定したところ、数平均分子量Mnは18400(ポリスチレン換算)であり、また分子量分布Mw/Mnは1.33であった。
【0021】
参考例1
窒素雰囲気下、モレキュラーシーブにより水分を十分に除去したヘキサン(水分含量は約6ppm)(730cm3)にp−tert−ブトキシスチレン(95g)とエチレングリコールジメチルエーテル(水分含量は87ppm)6cm3の混合溶液を1000cm3のフラスコに加え、−40℃まで冷却し、そこにsec−ブチルリチウム(5.0mmol)を一気に加えた。その後、さらに−20〜−30℃で10分重合を行った後、メタノール(約2cm3)を加え反応を停止させた。次いで得られた反応混合物に含まれるポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の分子量をGPC分析により測定したところ、数平均分子量Mnは18200(ポリスチレン換算)であり、また分子量分布Mw/Mnは1.09であった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、水分含量を70ppm以下の範囲に調整したp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を、反応溶媒と重合開始剤との混合物に順次加えることにより、狭分散のポリ(p−tert−ブトキシスチレン)を安定的に製造し得る。そのうえ、反応溶媒と重合開始剤との混合物にp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を加えているので急激な反応熱の発生もなく温度のコントロールが容易であり、工業的に有利である。
Claims (2)
- 反応溶媒と重合開始剤との混合物に、−50℃〜−10℃の温度範囲で、水分含量が70ppm以下に調整されたp−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を順次加え、上記温度範囲で保温することを特徴とするポリ(p−tert−ブトキシスチレン)の製法。
- p−tert−ブトキシスチレンまたはその溶媒溶液を15分〜5時間かけて順次加える請求項1に記載の製法。
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