JP3710603B2 - ペン型入力装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はコンピュータシステムにおけるカーソル移動の入力、図形及び文字の入力を行なうペン型入力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ装置等の入力装置としてはキーボード、マウス、デジタイザ、ライトペン及びタブレット等が用いられている。コンピュータ装置の小型化に伴い、携帯端末装置のニーズが高まり利用者も年々増加している。そこで、小型の入力装置が求められるようになった。
【0003】
キーボードの小型化にはヒューマンインターフェイスの点で限界があり、携帯端末装置の入力装置としては実用性が低い。マウスは、小型化が可能であり、また、ポインティングデバイスとしては適しているが、図形及び文字等の入力には適さない。
【0004】
このため、携帯端末装置の入力装置としてはタブレットとペンを用いたペン型の入力装置が多く採用されている。このタブレットを用いたペン型の入力装置をさらに小型化しようとした場合にはタブレットの大きさが問題となる。そこで、例えば特開平6-67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置、特開平7-84716号公報に掲載されたデータ入力装置、特開平7-200127号公報に掲載された手書き入力装置のようなタブレットレスの入力装置が開発された。
【0005】
特開平6-67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置は加速度センサで移動方向と移動量を調べ、圧電振動ジャイロで加速度センサが検出した移動方向及び移動量のペン型のコンピュータ入力装置のローテーションによる影響を補正している。特開平7−200127号公報に掲載された手書き入力装置は2個の加速度センサからの信号を基に装置の移動方向及び移動距離を求めている。
【0006】
また、ペン軸と直交する平面上で直交する2方向の加速度を検出する加速度センサを2組備えた装置として、例えば特開平6-230886号公報に掲載されたペンシル型入力装置では、2組の加速度センサの出力を積分した後、加速度センサの取付け位置の影響を補正し、ペン先部の移動方向及び移動量を検出している。
【0007】
また、ペン型入力装置に関するものでなく、ゲーム機に利用され、人体頭部の移動速度、位置、姿勢等を検出するものであるが、特開平7−294240号公報に掲載された位置センサは、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の加速度を検出する加速度センサとX軸周り,Y軸周り及びZ軸周りの回転角速度を検出するジャイロを備え、これらが検出した加速度及び回転角速度を基にストラップダウン方式の演算を行って、頭部の移動速度、位置、姿勢及び向きを検出している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6-67799号公報に掲載されたペン型のコンピュータ入力装置では、装置のローテーションによる影響を補正するもので、装置がダイナミックな傾斜を伴う場合には補正することができない。通常の筆記動作では装置のダイナミックな傾斜を伴うので、検出結果が不正確になる場合がある。
【0009】
さらに、特開平7-200127号公報に掲載された手書き入力装置では、装置の傾斜に対する補正手段がないため、検出結果が不正確になる場合がある。
【0010】
また、特開平6-230886号公報に掲載されたペンシル型入力装置では、加速度の積分を行なった後に補正をしているので誤差の検出が困難になり、正確な補正ができない。また、ペン先部における加速度の検出成分がペン軸の傾斜運動により変化することを考慮していない。
【0011】
また、特開平7-294240号公報に掲載された位置センサにおいても加速度センサの取付位置及びジャイロの取付位置に対する考慮はなされていないため、検出結果が不正確になる場合がある。
【0012】
この発明はかかる短所を解消するためになされたものであり、筆記入力を簡単な構成で正確に検出する小型なペン型入力装置を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るペン型入力装置は、1個の加速度センサと1個のジャイロを有し、加速度センサはペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度(Axs)を示す信号を出力し、ジャイロはYs軸周りの回転角速度(ωys)を示す信号を出力し、加速度センサの取付位置の座標(Xas,Yas,Zas)とジャイロを用いて検出した回転角速度(dωys/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサが検出した加速度(Axs)を補正してペン先部における加速度(Axs補正)を、Axs補正=Axs−(dωys/dt)・Zas+ωys2・Xasにより求め、補正したペン先部における加速度(Axs補正)を基に重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axog)を、Axog=Axs補正・cos−1φ−g・tanφ(ただし、φはペン軸の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角、gは9.80665(m/sec2)である)により求め、求めたペン先部の加速度(Axog)を基にペン先部の移動量を検出して、加速度センサがペン先部から離れていることによるペン軸の傾斜運動の影響をなくし、ペン先部の移動量を正確に検出する。
【0014】
また、2個の加速度センサと2個のジャイロを有し、各加速度センサはそれぞれペン軸をZ s 軸としたペン座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向の加速度を示す信号(A xs )及びY s 軸方向の加速度を示す信号(A ys )を出力し、各ジャイロはそれぞれX s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω xs )及びY s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω ys )を出力し、各加速度センサの取付位置の座標((X as ,Y as ,Z as ),(X bs ,Y bs ,Z bs ))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度( d ω ys / dt , d ω xs / dt )とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(A xs ,A ys )を補正してペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 )を、
【0015】
【数8】
【0016】
により求め、補正したペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 )を基に重力座標系(X g ,Y g ,Z g )の各加速度(A xog ,A yog )を、
【0017】
【数9】
【0018】
により求め、ペン先部の各加速度(A xog ,A yog )を基にペン先部の移動量を検出する。
【0019】
また、2個の加速度センサと3個のジャイロを有し、各加速度センサはそれぞれペン軸をZ s 軸としたペン座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向の加速度を示す信号(A xs )及びY s 軸方向の加速度を示す信号(A ys )を出力し、各ジャイロはそれぞれX s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω xs )、Y s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω ys )及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω zs )を出力し、各加速度センサの取付位置の各座標((X as ,Y as ,Z as ),(X bs ,Y bs ,Z bs ))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度( d ω ys / dt , d ω xs / dt , d ω zs / dt )とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(A xs ,A ys )を補正してペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 )を、
【0020】
【数10】
【0021】
により求め、補正したペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 )を基に重力座標系(X g ,Y g ,Z g )の各加速度(A xog ,A yog )を、
【0022】
【数11】
【0023】
により求め、ペン先部の各加速度(A xog ,A yog )を基にペン先部の移動量を検出する。
【0024】
また、3個の加速度センサと3個のジャイロを有し、各加速度センサはそれぞれペン軸をZ s 軸としたペン座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向の加速度を示す信号(A xs )、Y s 軸方向の加速度を示す信号(A ys )及びZ s 軸方向の加速度を示す信号(A zs )を出力し、各ジャイロはそれぞれX s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω xs )、Y s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω ys )及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω zs )を出力し、各加速度センサの取付位置の各座標((X as ,Y as ,Z as ),(X bs ,Y bs ,Z bs ) , (X cs ,Y cs ,Z cs ))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度( d ω ys / dt , d ω xs / dt , d ω zs / dt )とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(A xs ,A ys , A zs )を補正してペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 ,A zs 補正 )を、
【0025】
【数12】
【0026】
により求め、補正したペン先部における各加速度(A xs 補正 ,A ys 補正 ,A zs 補正 )を基に重力座標系(X g ,Y g ,Z g )の各加速度(A xog ,A yog ,A zog )を、
【0027】
【数13】
【0028】
により求め、ペン先部の各加速度(A xog ,A yog ,A zog )を基にペン先部の移動量を検出する。
【0029】
さらに、3個の加速度センサと3個のジャイロを有し、各加速度センサはそれぞれペン軸をZ s 軸としたペン座標系(X s ,Y s ,Z s )のX s 軸方向の加速度を示す信号(A xs )、Y s 軸方向の加速度を示す信号(A ys )及びZ s 軸方向の加速度を示す信号(A zs )を出力し、各ジャイロはそれぞれX s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω xs )、Y s 軸周りの回 転角速度を示す信号(ω ys )及びZ s 軸周りの回転角速度を示す信号(ω zs )を出力し、各加速度センサの取付位置の各座標((X as ,Y as ,Z as ),(X bs ,Y bs ,Z bs ) , (X cs ,Y cs ,Z cs ))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度( d ω ys / dt , d ω xs / dt , d ω zs / dt )とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(A xs ,A ys ,A zs )を補正してペン先部におけるペン軸座標系(X s ,Y s ,Z s )の各加速度(A xog ,A yog ,A zog )を下記の式より求め、
【0030】
【数14】
【0031】
求めたペン先部のペン軸座標系(X s ,Y s ,Z s )による各加速度(A xog ,A yog ,A zog )を基にペン先部の軌跡(X og ,Y og ,Z og )を求めてペン先部の移動量を検出する。
【0032】
さらに、上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設けて、加速度の補正を容易にする。
【0033】
さらに、上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設けて、加速度の補正をさらに容易にする。
【0034】
さらに、上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設け、Zs方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをZs軸上に設けた。
【0035】
さらに、ペン軸からの距離が加速度センサの分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さの範囲内である位置に加速度センサを設けてXs軸方向及びYs軸方向の補正を行なう必要をなくし、処理速度を向上する。
【0036】
さらに、筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の傾斜角の初期値を算出し、算出したペン軸の傾斜角の初期値とジャイロを用いて検出した角速度から測定時点におけるペン軸の傾斜角を求め、ジャイロを用いて検出した角速度及び加速度センサの取付位置を基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正してペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部の加速度を求め、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部の加速度を重力座標系(Xg,Yg,Zg)による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出してオイラー角を用いてペン先部の移動方向及び移動距離を求める。
【0037】
また、筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基に回転角ベクトルの初期値を算出し、算出した回転角ベクトルの初期値とジャイロを用いて検出した角速度を基に今回サンプリングの際の回転角ベクトルを演算し、ジャイロを用いて検出した角速度及び加速度センサの取付位置を基に傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正してペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部の加速度を求め、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部の加速度を重力座標系(Xg,Yg,Zg)による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出して、ストラップダウン方法を用いてペン先部の移動方向及び移動距離を求める。
【0038】
【発明の実施の形態】
この発明のペン型入力装置は、コンピュータ装置等に文字、記号及び図形等を入力するものがある。この発明のペン型入力装置は、少なくとも1個の加速度センサと少なくとも1個のジャイロを有し、加速度センサの取付位置とジャイロを用いて検出した回転角速度とを基に、加速度センサを用いて検出した加速度のうちペン軸の傾斜運動による加速度成分を算出し、算出したペン軸の傾斜運動による加速度成分を加速度センサが検出した加速度から除去して、加速度センサの取付位置とペン軸の傾斜運動による影響をなくし、ペン先部の移動方向及び移動距離を正確に検出するものである。
【0039】
ペン型入力装置が、例えば3個の加速度センサと3個のジャイロと演算部を有する場合について説明する。3個の加速度センサはそれぞれペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度を示す信号を出力する。3個のジャイロはそれぞれペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸周り,Ys軸周り及びZs軸周りの回転角速度を示す信号を出力する。
【0040】
演算部は傾斜加速度補正部と移動演算処理部を備える。傾斜加速度補正部は角加速度演算部と加速度補正部を有する。角加速度演算部はジャイロを用いて検出した回転角速度を基に回転角加速度を求める。加速度補正部は3個のジャイロを用いて検出した回転角速度、角加速度演算部が算出した回転角加速度及び各加速度センサの取付位置を基に3個の加速度センサを用いて検出した加速度のペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に3個の加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正してペン先部におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を求める。これにより、加速度センサの取付位置がペン先部から離れていることに起因するペン軸の傾斜運動の影響をなくすことができる。
【0041】
移動演算処理部は、例えば静止判別部と傾斜角初期値演算部と傾斜角演算部と座標変換演算部と重力加速度除去部と移動量演算部を備える。静止判別部は加速度センサを用いて検出した加速度とジャイロを用いて検出した回転角速度を基にペン先部が静止状態か否かを検出する。傾斜角初期値演算部は静止状態において3個の加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基にペン軸の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角の初期値を演算する。傾斜角演算部は3個のジャイロを用いて検出した回転角速度と傾斜角初期値演算部が算出した傾斜角の初期値を基に筆記中のペン軸の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角を求める。
【0042】
座標変換演算部は傾斜角演算部が算出した筆記中のペン軸の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角を基に加速度補正部が求めたペン先部におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度に変換する。移動量演算部は座標変換演算部が変換した加速度を基にペン先部の重力座標系(Xg,Yg,Zg)での移動方向及び移動距離を算出する。このように重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度を用いて移動方向及び移動距離を演算するので、ペン軸の傾斜による影響をなくすことができる。
【0043】
ここで、上記加速度補正部の演算を簡単にするために、例えばXs軸方向の加速度センサをYs=0となる位置、Ys方向の加速度センサをXs=0となる位置、Zs方向の加速度センサをZs軸上に設けたり、Zs軸からの距離が加速度センサの分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さの範囲内である位置に各加速度センサを設けたりしても良い。ここで、通常の筆記動作ではペン先部の加速度は最大10(m/s2)程度であり、補正に用いる回転角速度の2乗及び回転角加速度の値は大きくて2.5(/s2)程度であり、また、補正量は加速度の分解能程度の精度で算出すれば良いことから加速度センサの加速度の分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さとした。
【0044】
【実施例】
図1はこの発明の一実施例のペン型入力装置1の構成図である。以下の説明では、ペン先部8を原点としペン軸7をZs軸とした座標系をペン座標系(Xs,Ys,Zs)といい、ペン軸7と直交する2軸をXs軸及びYs軸として説明する。また、重力加速度方向に伸びる軸をZg軸とする座標系を重力座標系(Xg,Yg,Zg)といい、Zg軸と直交する2軸をXg軸及びYg軸という。図に示すように、ペン型入力装置1は加速度センサ2a、ジャイロ3b、演算部4、記憶部5及び電源部6を有する。加速度センサ2aは、Xs軸に平行なXsa軸方向に向けて設けられ、Xs軸方向の加速度Axsを示す信号を出力する。以後の説明において加速度センサ2aが出力する信号が示す加速度をAxsとし、ペン先部8におけるXs軸方向の加速度Axs補正と区別する。加速度センサ2aは、小型且つ高感度で加速度検出に対する直線性が良好なものであれば良く、ピエゾ抵抗方式のもの、圧電方式のもの又は静電容量方式のもののいずれでも良い。ジャイロ3bはYs軸周りの回転角速度ωysを示す信号を出力する。各軸周りの回転角速度は理想的には取付位置に影響されないものなので、ジャイロ3bはYs軸上に設ける必要はない。ジャイロ3aはスケールファクタ(回転運動検出の正確さ)とドリフトレート(出力オフセットの安定度)が良好で小型なものであれば良く、回転ジャイロ、振動ジャイロ又は光学式ジャイロ等のいずれでも良い。
【0045】
演算部4は、図2に示すように入力処理部41、傾斜加速度補正部42及び移動演算処理部43を備える。入力処理部41はA/D変換器411、413とローパスフィルタ(以後「LPF」という。)412,414を有する。AD変換器411、413は、それぞれ加速度センサ2a及びジャイロ3bからのアナログ信号をデジタル信号に変換する。LPF412,414はペン先部8と筆記面との摩擦力により生じる加速度センサ2a及びジャイロ3bからの信号から高周波成分を遮断する。これは、ペン先部8と筆記面との摩擦により加速度センサ2a及びジャイロ3bからの信号に高周波成分が発生するからである。
【0046】
傾斜角度補正部42は角加速度演算部421と加速度補正部422を有する。角加速度演算部421はジャイロ3bを用いて検出した回転角速度ωysから回転角加速度dωys/dtを求める。加速度補正部422はジャイロ3bを用いて検出した回転角速度ωys、角加速度演算部421が算出した回転角加速度dωys/dt及び各加速度センサ2aの取付位置を基に加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsのペン先部8を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出する。さらに、加速度補正部422は、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsを補正して、ペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度Axs補正を求める。ペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度センサ2aの取付位置の座標を(Xas,Yas,Zas)とすると、補正後の加速度Axs補正は、次式のようになる。
【0047】
【数15】
【0048】
傾斜角度補正部422では、上記演算を行なうことにより補正後の加速度Axs補正を求める。ここで、上記式の第2項がペン軸7の傾斜運動による加速度成分である。
【0049】
移動演算処理部43は静止判別部431、傾斜角初期値演算部432、傾斜角演算部433、座標変換演算部434、重力加速度除去部435及び移動量演算部436を有する。静止判別部431はデジタル変換後の加速度センサ2aからの信号及びジャイロ3bからの信号の時間変化を監視して、ペン先部8が静止状態か否かを判別する。傾斜角初期値演算部432は静止状態で加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsを基にペン軸8の重力座標系(Xg,Yg,Zg)おける傾斜角の初期値φoを、次式を用いて算出する。
【0050】
【数16】
【0051】
傾斜角演算部433はジャイロ3bを用いて検出した回転角速度ωys及び傾斜角初期値演算部432が演算したペン軸7の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角の初期値φoを基に、筆記中のペン軸7の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角φを求める。ここで、前回サンプリングの際に算出した傾斜角(今回のサンプリングをn回目とした場合のn−1回目のサンプリングの際の傾斜角)をφn-1とし、サンプリング周期をt0とすると、今回サンプリングの際の傾斜角φnは、次式で表わされ、傾斜角演算部433はこの演算を行なうことにより、ペン軸7の傾斜角を算出する。
【0052】
【数17】
【0053】
座標変換演算部434は傾斜角演算部433が算出したペン軸7の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角φを基に、次式を用いて加速度補正部421が求めたペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度Axs補正を重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度Axogに変換する。
【0054】
【数18】
【0055】
重力加速度除去部435は座標変換演算部34が座標変換した後の重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度Axgから重力加速度gの成分を除去する。移動量演算部436は重力加速度除去部435が重力加速度gの成分を除去した後の加速度Axgを2回積分してペン先部8の重力座標系(Xg,Yg,Zg)での1次元移動量を算出し、記憶部5に記憶する。
【0056】
上記構成のペン型入力装置1の動作を、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
加速度センサ2a及びジャイロ3bはそれぞれXs軸方向の加速度Axs及びYs軸周りの回転角速度ωysを示す信号を出力する。AD変換器411,413は、加速度センサ2a及びジャイロ3bを用いて検出した加速度Axs及び回転角速度ωysをデジタル変換する。LPF412,414は加速度センサ2a及びジャイロ3bからの信号をデジタル変換して得た加速度Axs及び回転角速度ωysから低周波数成分を抽出する。
【0058】
予め定めた一定周期のサンプリングタイミングになると、静止判別部431は、AD変換器411,413からデジタル変換後の加速度Axs及び回転角速度ωysを読み出し(ステップS1)、例えば読み出した加速度Axs及び回転角速度ωysの変化を監視し、静止状態か否かを判別する。
【0059】
静止判別部431が静止状態であると判別すると(ステップS2)、傾斜角初期値演算部432は、既に説明したように加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsを基にして初期傾斜角φoを求める(ステップS3)。
【0060】
その後、静止状態でなくなると、移動演算処理部43は、加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axs及びジャイロ3aを用いて検出した回転角速度ωysを読み出す(ステップS4)。傾斜角演算部433は、既に説明したように、筆記中の傾斜角φを算出する(ステップS5)。
【0061】
角加速度演算部421はジャイロ3bを用いて検出した回転角速度ωysを基に回転角加速度dωys/dtを算出する(ステップS6)。加速度補正部422は回転角速度ωys及び回転角加速度dωys/dtを基に、既に説明したように加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsを補正して、ペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度Axs補正を算出する(ステップS7)。このように加速度センサ2aを用いて検出した加速度Axsを基にペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度Axs補正を算出するので、加速度センサ2aの取付位置がペン先部8から離れていることによるペン軸7の傾斜運動の影響をなくすことができる。
【0062】
座標変換演算部434は、既に説明したように傾斜角演算部433が算出した筆記中のペン軸7の傾斜角φを用いて、加速度補正部422が算出したペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度Axs補正を重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン先部8の加速度Axogに変換する(ステップS8)。このように、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度Axs補正を重力座標系(Xg,Yg,Zg)における加速度Axogに変換するので、ペン軸7の傾斜による影響を除去することができる。重力加速度除去部435は、重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン先部8の加速度Axogから重力加速度gの成分を除去し、重力加速度gによる影響を除去する(ステップS9)。移動量演算部436は重力加速度gの成分を除去した後の重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン先部8の加速度Axogを2回積分してペン先部8の移動量Xogを算出して(ステップS10)、ペン先部8の軌跡を求め、入力処理が終了するまで上記動作を繰り返す(ステップS11)。これにより、ペン先部8の1次元の軌跡を正確に検出することができる。
【0063】
次ぎに、図4に示すようにペン型入力装置1が2個の加速度センサ2a,2bと2個のジャイロ3a,3bを備える場合について説明する。
【0064】
加速度センサ2a,2bはそれぞれペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向及びYs軸方向に向けて設けられ、Xs軸方向の加速度Axsを示す信号及びYs軸方向の加速度Aysを示す信号を出力する。以後の説明において加速度センサ2bが出力する信号が示す加速度をAysとし、ペン先部8におけるYs軸方向の加速度Ays補正と区別する。ジャイロ3a,3bはそれぞれXs軸周りの回転角速度ωxsを示す信号及びYs軸周りの回転角速度ωysを示す信号を出力する。
【0065】
ペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度センサ2a,2bの取付位置座標をそれぞれ(Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs)とすると、加速度Axs及び加速度Aysは、次式を用いて慣性力加速度成分及び遠心力加速度成分を取り除き、補正後の加速度Axs補正及び加速度Ays補正を算出することができる。
【0066】
【数19】
【0067】
加速度補正部422は、上記式を演算することによりペン先部8におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度Axs補正及びYs軸方向の加速度Ays補正を算出する。ここで、上記式の第2項は慣性力加速度成分を表わし、第3項は遠心力加速度成分を表わす。
【0068】
また、傾斜角初期値演算部432は静止状態において2個の加速度センサ2a,2bを用いて検出した加速度(Axs,Ays)を基に回転角ベクトルvectorφ=(φx,φy,φz)の初期値vectorφo=(φxo,φyo,φzo)を求める。ここで、φzoをゼロとし、Zs軸回りの回転をリセットすると、Xg軸はXs軸方向の加速度センサ2aの傾斜方向にとられる。このとき、加速度(Axs,Ays)と回転角ベクトルの初期値vectorφo=(φxo,φyo,φzo)との間には、次式が成り立つ。以後の説明においては、ベクトルを表わす場合には前にvectorをつけて表わす。
【0069】
【数20】
上記式において、(exo,exo,0)は回転軸方向の単位ベクトルの初期値を表わし、vectorφoの絶対値は回転軸回りの角度の初期値である。
【0071】
重力加速度gに定数を代入すると、次ぎの式が成り立ち、傾斜角初期値演算部432はこの式を演算して回転角ベクトルの初期値vectorφoを求める。
【0072】
【数21】
【0073】
次ぎに、Zs軸回りの回転が十分小さいとすると、回転角ベクトルvectorφは、次式で表わすことができる。
【0074】
【数22】
【0075】
そこで、前回サンプリング時点での回転角ベクトルをvectorφn-1とし、サンプリング周期をt0とすると、今回サンプリングの際の回転角ベクトルvectorφnは、次式で表わすことができ、傾斜角演算部433はこの式を計算することによって今回サンプリングの際の回転角ベクトルvectorφnを求める。
【0076】
【数23】
【0077】
次ぎに、上記のようにして補正したペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正)及び回転角ベクトルvectorφnを基に座標変換演算部434は重力座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axog,Ayog)を求める。ここで、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正)を重力座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axog,Ayog)に変換するには、座標変換行列を用いる。回転角ベクトルvectorφから座標変換行列を求めるためには、次式で示すようにパラメータ(χ,ρ x ,ρ y ,ρ z )を求め、そのパラメータ(χ,ρ x ,ρ y ,ρ z )を用いて座標変換行列を求める。
【0078】
【数24】
【0079】
この座標変換行列を用いると、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正)と重力座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8の加速度(Axog,Ayog)との間には、次式で表わす関係が成り立つ。座標変換演算部434はこれらの演算を行なうことによって、ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正)を重力座標系(Xs,Ys,Zs)でのペン先部8の加速度(Axog,Ayog)に変換する。
【0080】
【数25】
【0081】
このように2次元の範囲内で、正確に重力座標系(Xg,Yg,Zg)でのペン先部8の加速度(Axog,Ayog,Azog)を求めることができるので、ペン先部8の移動方向及び移動距離を2次元で正確に検出することができる。
【0082】
さらに、図5に示すようにXs軸方向の加速度Axsを示す信号を出力する加速度センサ2aをYs=0となる位置(Xas,0,Zas)に取り付け、Ys軸方向の加速度Aysを示す信号を出力する加速度センサ2bをXs=0となる位置(0,Yas,Zas)に取り付けると良い。これにより、数19で示す式を次式で示すように簡単にすることができ、処理速度等を向上することができる。
【0083】
【数26】
【0084】
これにより、加速度センサ2a,2bを用いて検出した加速度(Axs,Ays)の補正を行なう場合の演算量を少なくでき、処理速度を高速にできる。また、図6に示すようにXs軸方向の加速度Axsを示す信号を出力する加速度センサ2aをXs=0となる位置(0,Yas,Zas)に取り付け、Ys軸方向の加速度Aysを示す信号を出力する加速度センサ2bをYs=0となる位置(Xas,0,Zas)に取り付けると、数19で示す式を次式で示すように簡単にすることができる。
【0085】
【数27】
【0086】
また、Xs軸方向の加速度Axsを示す信号を出力する加速度センサ2a及びYs軸方向の加速度Aysを示す信号を出力する加速度センサ2bをペン軸7からの距離が加速度センサ2a,2bの分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さの範囲内である位置に設けても良い。ペン先部8における加速度(Axs,Ays)は最大で10(m/s2)程度で、補正時に用いる回転角速度(ωxs,ωys)の2乗及び回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt)は大きくても2.5(/s2)程度である。このとき、加速度の補正量は座標(m)×2.5(/s2)程度が最大になるが、実際には加速度センサ2a,2bの分解能(m/s2)程度の精度で算出すれば良い。したがって、加速度センサ2a,2bをペン軸7からの距離が加速度センサ2a,2bの分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さの範囲内である位置に設けることにより、補正量の最大が加速度センサ2a,2bの分解能以下になるので、Xs軸方向及びYs軸方向に関しては補正しなくとも良くなる。
【0087】
このように、加速度補正部422では、加速度センサ2a,2bの取付位置のXs軸方向及びYs軸方向の取付位置に関する補正項を無視できるので、ペン先部8から加速度センサ2a,2bまでのZs軸方向の距離をL1とすると、加速度センサ2aの取付位置座標(Xas,Yas,Zas)は(0、0、−L1)と近似できる。同様に、加速度センサ2bの取付位置座標(Xbs,Ybs,Zbs)は(0、0、−L1)と近似できる。これにより、数19で表わした式は次式のように簡単な式になる。
【0088】
【数28】
【0089】
これにより、演算処理を少なくし、処理速度を高速にすることができる。さらに、各加速度センサ2a,2bをZs軸上に設置すれば、加速度センサ2a,2bの分解能に関係なく、加速度センサ2a,2bの取付位置に対するXs軸方向及びYs軸方向の加速度の補正をしなくとも良くなる。
【0090】
実際に分解能が0.02(m/s2)の加速度センサをペン軸から8(mm)(20mm/2.5=8mm)離れた位置に設け、上記近似式を用いた場合と近似式を用いない場合とで補正後の加速度を比較したが、ほぼ等しかった。
【0091】
さらに、図7に示すようにペン型入力装置1が2個の加速度センサ2a,2bと3個のジャイロ3a,3b,3cを備えるようにしても良い。3個のジャイロ3a,3b,3cはそれぞれXs軸回り,Ys軸回り及びZs軸回りの回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)を示す信号を出力する。この場合は、ペン型入力装置1が2個の加速度センサ2a,2bと2個のジャイロ3a,3bを備える場合と同様に、加速度補正部422は以下の式を用いて加速度センサ2a,2bを用いて検出した加速度(Axs,Ays)をペン座標系(Xs,Ys,Zs)におけるペン先部8での加速度(Axs補正,Ays補正)に変換する。
【0092】
【数29】
【0093】
この場合における移動演算処理部43の演算処理はペン型入力装置1が2個の加速度センサ2a,2bと2個のジャイロ3a,3bを備える場合と同様である。このペン型入力装置1では、3個のジャイロ3a,3b,3cを用いて回転の3自由度を全て検出しているので、2個のジャイロ3a,3bを用いた場合に比べ、ペン軸7の傾け方の制約がなくなり、使いやすくなる。
【0094】
また、図8に示すようにペン型入力装置1が3個の加速度センサ2a,2b,2cと3個のジャイロ3a,3b,3cを備えるようにしても良い。
【0095】
加速度センサ2a,2b,2cはそれぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向に向けて設けられ、それぞれXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の加速度(Axs,Ays,Azs)を示す信号を出力する。加速度センサ2a,2b,2cのペン座標系(Xs,Ys,Zs)での取付座標をそれぞれ(Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs),(Xcs,Ycs,Zcs)とすると、加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)とペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)との間には次式が成り立ち、加速度補正部422はこの式を計算して、ペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を算出する。
【0096】
【数30】
【0097】
ペン型入力装置1が3個の加速度センサ2a,2b,2cと3個のジャイロ3a,3b,3cを備える場合においても、φzoをゼロとし、Zs軸回りの回転をリセットすると、Xg軸はXs軸方向の加速度センサ2aの傾斜方向にとられる。このとき加速度(Axs,Ays,Azs)と回転角ベクトルの初期値vectorφo=(φxo,φyo,φzo)との間には、次式が成り立つ。
【0098】
【数31】
【0099】
ここで、二つの未知数φxo,φyoに対して3本の方程式を立てることができるので、重力加速度gについても未知数として取り扱うことができる。この式を用いれば重力加速度gの値を定義しなくとも、φxo,φyoの絶対値を算出することができる。さらに、重力加速度gの値を算出し、算出した値をモニタすることにより、演算結果の良否を行ない、演算結果が大きく変化した場合には異常値発生した旨の警告を出力しても良い。このように、重力加速度gを未知数とすると、以下の式が成り立ち、傾斜角初期値演算部432はこの式を演算して傾斜角の初期値(φxo,φyo,0)を求める。
【0100】
【数32】
【0101】
また、座標変換演算部434は、既に説明したようにして座標変換行列を求め、その座標変換行列を用いて次式を計算して重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン先部8の加速度(Axog,Ayog,Azog)を求める。
【0102】
【数33】
【0103】
なお、上記実施例ではペン軸7の傾きを回転角ベクトルvectorφnを用いたストラップダウン方式の演算を用いて演算しているが、ペン軸7の傾きをオイラー角(φ,θ,Ψ)で表わして演算しても良い。
【0104】
ペン座標系(Xs,Ys,Zs)から重力座標系(Xg,Yg,Zg)への座標変換行列invE(θ,φ,Ψ)は次式で表すことができる。ここで、invE(θ,φ,Ψ)は行列E(θ,φ,Ψ)の逆行列とする。
【0105】
【数34】
【0106】
重力加速度をgとすると、傾斜角の初期値(θo,φo,Ψo)は以下の式で求めることができる。
【0107】
【数35】
【0108】
オイラー角を用いた場合、傾斜角初期値演算部432は上記式を用いて傾斜角の初期値(θo,φo,Ψo)を求める。
【0109】
ペン座標系(Xs,Ys,Zs)の各軸の回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と傾斜角速度(dθ/dt,dφ/dt,dΨ/dt)の関係は、以下の式で示される。
【0110】
【数36】
【0111】
傾斜角の初期値(θo,φo,Ψo)を考慮して傾斜角速度(dθ/dt,dφ/dt,dΨ/dt)を積分することで、傾斜角(θ,φ,Ψ)が求まる。傾斜角(θ,φ,Ψ)が求まると、さらに、前記式を基に座標変換行列invE(θ,φ,Ψ)が求まる。
【0112】
ペン座標系(Xs,Ys,Zs)でのXs軸方向,Ys軸方向及びZs軸方向の各加速度センサ2a,2b,2cの取付座標をそれぞれ(Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs),(Xcs,Ycs,Zcs)とすると、各加速度センサ2a,2b,2cから得られる加速度(Axs,Ays,Azs)から重力座標系(Xg,Yg,Zg)のペン先部8の加速度(Axog,Ayog,Azog)を求める式は、次式のようになり、座標変換演算部434でこの式を基に座標変換を行なう。
【0113】
【数37】
【0114】
上記式の括弧内の第2項及び第3項はジャイロ3a,3b,3cを用いて検出した回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)と回転角速度(ωxs,ωys,ωzs)から得た回転角加速度(dωxs/dt,dωys/dt,dωzs/dt)の関数である。
【0115】
重力加速度除去部435は、さらに、上記式から重力加速度成分を除去する。移動量演算部435は重力加速度成分を除去した後の重力座標系(Xg,Yg,Zg)でのペン先部8の加速度(Axog,Ayog,Azog)を2回積分して、ペン先部8の軌跡(Xog,Yog,Zog)を求める。このようにオイラー角を用いても正確にペン先部8の移動量及び移動距離を算出することができる。
【0116】
さらに、既に説明したと同様にXs軸方向の加速度センサ2aをXs=0となる位置(0,Yas,Zas)、Ys方向の加速度センサ2bをYs=0となる位置(Xbs,0,Zbs)、Zs方向の加速度センサ2cをZs軸上の位置(0、0、Zcs)に設けても良い。この場合も既に説明したように各加速度センサ2a,2b,2cを用いて検出した加速度(Axs,Ays,Azs)をペン先部8における重力座標系(Xg,Yg,Zg)での加速度(Axog,Ayog,Azog)に変換する式が簡単になり、処理速度を速めることができる。
【0117】
また、同様に加速度センサ2a,2b,2cの分解能(m/s2)を 2.5 ( /s 2 )で割った長さを半径とするZs軸を中心軸とした円柱範囲内に加速度センサ2a,2b,2cを設けた場合は、各加速度センサ2a,2b,2cのペン先部8からのZs軸方向の距離をそれぞれL1,L1,L2とすると、各加速度センサ2a,2b,2cの座標はほぼ(Xas,Yas,Zas)=(0,0,−L1)、(Xbs,Ybs,Zbs)=(0,0,−L1)、(Xcs,Ycs,Zcs)=(0,0,−L2)となる。これにより、加速度補正の演算量をさらに減らし、処理速度をさらに速めることができる。
【0118】
また、上記実施例においては、ストラップダウン方式の演算又はオイラー角(φ,θ,Ψ)を用いる演算によって、ペン先部8の移動方向及び移動距離を求めているが、ニューラルネットワーク演算等を用いて、ペン先部8における加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)の変化の特徴からペン先部8の描いたパターンを検出するようにしても良い。
【0119】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように、加速度センサの取付位置とジャイロを用いて検出した回転角速度とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による慣性力加速度成分及び遠心力加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による慣性力加速度成分及び遠心力加速度成分を加速度センサが検出した加速度から除去してペン先部における加速度を求め、ペン先部の加速度を基にペン先部の移動量を検出するので、ペン先部を中心とした傾斜運動により生じる加速度成分を除去でき、ペン先部の移動量を正確に検出することができる。
【0120】
また、演算量が少ないので、移動量の演算処理を高速化することができる。
【0121】
さらに、ペン座標系のXs軸方向の加速度とYs軸周りの回転角速度を検出するので、ペン先部の1次元の軌跡を正確に検出することができる。
【0122】
さらに、ペン座標系のXs軸方向の加速度とYs軸方向の加速度とXs軸周りの回転角速度とYs軸周りの回転角速度を検出するので、ペン先部の2次元の軌跡を正確に検出することができる。
【0123】
さらに、ペン座標系のXs軸方向の加速度とYs軸方向の加速度とXs軸周りの回転角速度とYs軸周りの回転角速度とZs軸周りの回転角速度を検出して回転の3自由度を全て検出するので、ペン軸の傾け方の制約がなくなり使い勝手が良くなる。
【0124】
さらに、ペン座標系の各軸方向の加速度と各軸回りの回転角速度を検出するので、ペン先部の2次元の軌跡を正確に検出することができる。
【0125】
さらに、Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設けたので、Ys軸方向の補正を行なう必要がなくなり、演算処理を簡単にできるので、処理を高速にすることができる。
【0126】
さらに、Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設けたので、Xs軸方向及びYs軸方向の補正を行なう必要がなくなり、さらに処理を高速化することができる。
【0127】
さらに、Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設け、Zs方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをZs軸上に設けたので、さらに処理を高速化することができる。
【0128】
また、ペン軸からの距離が加速度センサの分解能(m/s2)を 2.5 ( / 2 )で割った長さの範囲内である位置に加速度センサを設けたので、補正演算処理を簡単にできる。
【0129】
さらに、筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系の加速度を基に重力座標系におけるペン軸の傾斜角の初期値を算出し、算出したペン軸の傾斜角の初期値とジャイロを用いて検出した回転角速度から測定時点におけるペン軸の傾斜角を求め、ジャイロを用いて検出した回転角速度及び加速度センサの取付位置を基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系の加速度を補正してペン先におけるペン座標系での加速度を求め、ペン先におけるペン座標系での加速度を重力座標系による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出するので、オイラー角を用いた演算により、正確にペン先部の移動量及び移動距離を検出することができる。
【0130】
また、筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系の加速度を基に回転角ベクトルの初期値を算出し、算出した回転角ベクトルの初期値とジャイロを用いて検出した回転角速度を基に今回サンプリングの際の回転角ベクトルを演算し、ジャイロを用いて検出した回転角速度及び加速度センサの取付位置を基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系の加速度を補正してペン先におけるペン座標系での加速度を求め、ペン先におけるペン座標系での加速度を重力座標系による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出するので、ストラップダウン方式を用いた演算を行ない正確にペン先部の移動量及び移動距離を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ペン型入力装置の斜視図である。
【図2】 移動演算処理部の構成図である。
【図3】 ペン型入力装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】 2個の加速度センサと2個のジャイロを有する場合の構成図である。
【図5】 検出方向の直交方向の座標を0として加速度センサを設けた配置図である。
【図6】 検出方向の座標を0として加速度センサを設けた配置図である。
【図7】 2個の加速度センサと3個のジャイロを有する場合の構成図である。
【図8】 3個の加速度センサと3個のジャイロを有する場合の構成図である。
【符号の説明】
1 ペン型入力装置
2 加速度センサ
3 ジャイロ
41 入力処理部
42 傾斜加速度補正部
421 角加速度演算部
422 加速度補正部
43 移動演算処理部
431 静止判別部
432 傾斜角初期値演算部
433 傾斜角演算部
434 座標変換演算部
435 重力加速度除去部
436 移動量演算部
7 ペン軸
8 ペン先部
Claims (11)
- 1個の加速度センサと1個のジャイロを有し、
加速度センサはペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度(Axs)を示す信号を出力し、
ジャイロはYs軸周りの回転角速度(ωys)を示す信号を出力し、
加速度センサの取付位置の座標(Xas,Yas,Zas)とジャイロを用いて検出した回転角速度(dωys/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、
算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサが検出した加速度(Axs)を補正してペン先部における加速度(Axs補正)を、
Axs補正=Axs−(dωys/dt)・Zas+ωys2・Xas
により求め、
補正したペン先部における加速度(Axs補正)を基に重力座標系(Xg,Yg,Zg)の加速度(Axog)を、
Axog=Axs補正・cos−1φ−g・tanφ
(ただし、φはペン軸の重力座標系(Xg,Yg,Zg)における傾斜角、gは9.80665(m/sec2)である)
により求め、求めたペン先部の加速度(Axog)を基にペン先部の移動量を検出することを特徴とするペン型入力装置。 - 2個の加速度センサと2個のジャイロを有し、
各加速度センサはそれぞれペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度を示す信号(Axs)及びYs軸方向の加速度を示す信号(Ays)を出力し、
各ジャイロはそれぞれXs軸周りの回転角速度を示す信号(ωxs)及びYs軸周りの回転角速度を示す信号(ωys)を出力し、
各加速度センサの取付位置の座標((Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度(dωys/dt,dωxs/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、
算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(Axs,Ays)を補正してペン先部における各加速度(Axs補正,Ays補正)を、
- 2個の加速度センサと3個のジャイロを有し、
各加速度センサはそれぞれペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度を示す信号(Axs)及びYs軸方向の加速度を示す信号(Ays)を出力し、
各ジャイロはそれぞれXs軸周りの回転角速度を示す信号(ωxs)、Ys軸周りの回転角速度を示す信号(ωys)及びZs軸周りの回転角速度を示す信号(ωzs)を出力し、
各加速度センサの取付位置の各座標((Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度(dωys/dt,dωxs/dt,dωzs/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、
算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(Axs,Ays)を補正してペン先部における各加速度(Axs補正,Ays補正)を、
- 3個の加速度センサと3個のジャイロを有し、
各加速度センサはそれぞれペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度を示す信号(Axs)、Ys軸方向の加速度を示す信号(Ays)及びZs軸方向の加速度を示す信号(Azs)を出力し、
各ジャイロはそれぞれXs軸周りの回転角速度を示す信号(ωxs)、Ys軸周りの回転角速度を示す信号(ωys)及びZs軸周りの回転角速度を示す信号(ωzs)を出力し、
各加速度センサの取付位置の各座標((Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs),(Xcs,Ycs,Zcs))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度(dωys/dt,dωxs/dt,dωzs/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、
算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(Axs,Ays,Azs)を補正してペン先部における各加速度(Axs補正,Ays補正,Azs補正)を、
- 3個の加速度センサと3個のジャイロを有し、
各加速度センサはそれぞれペン軸をZs軸としたペン座標系(Xs,Ys,Zs)のXs軸方向の加速度を示す信号(Axs)、Ys軸方向の加速度を示す信号(Ays)及びZs軸方向の加速度を示す信号(Azs)を出力し、
各ジャイロはそれぞれXs軸周りの回転角速度を示す信号(ωxs)、Ys軸周りの回転角速度を示す信号(ωys)及びZs軸周りの回転角速度を示す信号(ωzs)を出力し、
各加速度センサの取付位置の各座標((Xas,Yas,Zas),(Xbs,Ybs,Zbs),(Xcs,Ycs,Zcs))と各ジャイロを用いて検出した各回転角速度(dωys/dt,dωxs/dt,dωzs/dt)とを基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、
算出した傾斜運動による加速度成分を基に各加速度センサが検出した各加速度(Axs,Ays,Azs)を補正してペン先部におけるペン軸座標系(Xs,Ys,Zs)の各加速度(Axog,Ayog,Azog)を下記の式より求め、
- 上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設けた請求項1〜5のいずれかに記載のペン型入力装置。
- 上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設けた請求項2〜5のいずれかに記載のペン型入力装置。
- 上記Xs軸方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをYs=0となる位置に設け、Ys方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをXs=0となる位置に設け、Zs方向の加速度を示す信号を出力する加速度センサをZs軸上に設けた請求項4又は5に記載のペン型入力装置。
- ペン軸からの距離が加速度センサの分解能(m/s2)を2.5(/s2)で割った長さの範囲内である位置に加速度センサを設けた請求項1〜8のいずれかに記載のペン型入力装置。
- 筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基に重力加速度方向に伸びる軸をZg軸にした重力座標系(Xg,Yg,Zg)におけるペン軸の傾斜角の初期値を算出し、算出したペン軸の傾斜角の初期値とジャイロを用いて検出した回転角速度から測定時点におけるペン軸の傾斜角を求め、ジャイロを用いて検出した回転角速度及び加速度センサの取付位置を基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正してペン先におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度を求め、ペン先におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度を重力座標系(Xg,Yg,Zg)による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出する請求項5〜9のいずれかに記載のペン型入力装置。
- 筆記開始の際に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を基に回転角ベクトルの初期値を算出し、算出した回転角ベクトルの初期値とジャイロを用いて検出した回転角速度を基に今回サンプリングの際の回転角ベクトルを演算し、ジャイロを用いて検出した回転角速度及び加速度センサの取付位置を基にペン先部を中心とした傾斜運動による加速度成分を算出し、算出した傾斜運動による加速度成分を基に加速度センサを用いて検出したペン座標系(Xs,Ys,Zs)の加速度を補正してペン先におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度を求め、ペン先におけるペン座標系(Xs,Ys,Zs)での加速度を重力座標系(Xg,Yg,Zg)による加速度に変換し、変換した加速度を基にペン先部の移動方向及び移動距離を算出する請求項1〜4、6〜9のいずれかに記載のペン型入力装置。
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