JP3705615B2 - ウレタンオキサゾリジン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリイソシアネートおよびエポキシをベースとする防水材、シーラントおよび接着剤の一液湿気硬化型の潜在性硬化剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウレタン、エポキシの湿気硬化型潜在性硬化剤としては、オキサゾリジン系、ケチミン系、エナミン系、チオシリル基系などが知られている。この中で、特にウレタンオキサゾリジン系が硬化性、貯蔵安定性のバランスのとれた硬化剤であり、硬化物の性能も比較的よい(特公昭55−35407号、特公昭58−5913号および特公昭58−5914号)。
【0003】
オキサゾリジン環の2位の置換基は、その加水分解に大きな影響を与えることが知られている。
オキサゾリジン環の2位の置換基に2個の置換基がある場合で、その2個の置換基ともが脂肪族炭化水素基であると加水分解が速すぎ、貯蔵安定性が悪い。
そして、オキサゾリジン環の2位の置換基が無置換のフェニル基であると加水分解が遅い。
また、オキサゾリジン環の2位の置換基が1個の脂肪族炭化水素基である場合には、比較的加水分解が速く、十分な貯蔵安定性が得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貯蔵安定性と硬化性に優れた潜在性硬化剤を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の問題点を解決するために貯蔵安定性、硬化性に優れた潜在性硬化剤で下記式(1)で示される構造を有する化合物を合成し、本発明に至った。
【0006】
【化2】
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(1):
【化3】
【0008】
(式中、R1 およびR2 は、各々独立に炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基、R3 は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数1〜3のアルキルオキシ基を表わす。R4 は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、もしくは尿素基、アロファネート基、ビュレット基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、ウレタン基を含む基またはこれらの組み合わせを表す。mは1〜3の整数、nは0〜2の整数、pは1〜3の整数である。)
で示されるウレタンオキサゾリジンを提供する。
【0009】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の潜在性硬化剤である、下記式(1):
【0010】
【化4】
で示されるオキサゾリジン化合物は、下記一般式(2):
【0011】
【化5】
【0012】
で表されるN−ヒドロキシアルキル−1,3−オキサゾリジンを下記一般式(3):
R4 (NCO)m+n …………(3)
で表されるポリイソシアネートと反応させて得られる。
【0013】
R1 およびR2 は各々独立に炭素数2〜3の脂肪族炭化水素基である。具体的には、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基が挙げられる。中でも、エチレン基、イソプロピレン基であるのが好ましい。
R3 は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基もしくは炭素数1〜3のアルキルオキシ基を表わす。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、メチルオキシ基であるのが好ましい。
【0014】
R4 は有機のジイソシアネートまたはトリイソシアネートからイソシアネート基を除いて得られる残基である。
【0015】
mは1〜3の整数、nは0〜2の整数、pは1〜3の整数である。
式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式(I)〜(VI)で表される化合物等が挙げられる。
【0016】
【化6】
【0017】
なかでも、式(IV)〜(VI)で表される化合物であるのが、硬化性の点で特に好ましい。
【0018】
本発明の式(1)で表される化合物は、上記式(2)で表されるN−ヒドロキシアルキル−1,3−オキサゾリジンと上記式(3)で表されるポリイソシアネートから製造される。
この内、N−ヒドロキシアルキル−1,3−オキサゾリジンは、置換ベンズアルデヒドとビス−(ヒドロキシアルキル)アミンとの縮合反応により製造される。
【0019】
置換ベンズアルデヒドとしては、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒドが好適である。
【0020】
N−(ヒドロキシアルキル)アミンとしては、特に、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス−(2−ヒドロキシイソプロピルアミン)およびN−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシイソプロピル)アミンが好適である。
【0021】
本発明で使用されるポリイソシアネートは、好ましくはm+nの和が1〜5、特に2または3が好ましい。式中のR4 基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、あるいは変性ポリイソシアネートとして知られている尿素基、アロファネート基、ビュレット基、イソシアヌレート基、カルボジイミド基、またはウレタン基を含む基である。具体的な例を挙げると以下の通りである。
【0022】
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、P−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート、などの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ポリイソシアネート;キシレンジイソシアネートなどの芳香族脂肪族イソシアネート;およびこれらの変性ポリイソシアネートが挙げられ、これらの1種または2種以上の組み合わせとして使用される。
【0023】
このほかにウレタン化学で知られているウレタンプレポリマーと称される分子量が1000〜10000のジヒドロキシルまたはトリヒドロキシル化合物と上記イソシアネート化合物とを反応させ、慣用法で得られるものも使用可能である。分子量1000〜10000のヒドロキシル化合物としては、ポリウレタンを製造するのに既知であるポリエステル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリカーボネートおよびポリエステルアミドが含まれる。
【0024】
N−ヒドロキシアルキル−1,3−オキサゾリジンとポリイソシアネートの反応は10℃〜80℃の温度で行なうのが好ましい。N−ヒドロキシアルキル−1、3−オキサゾリジンのOH基とポリイソシアネートのNCO基との化学量論的割合は、反応混合物において4:1〜1:20の範囲内で変わりうる。特に好ましくは2:1〜1:15の範囲である。
上述のようにして得られた式(1)の化合物は、潜在性硬化剤として有用である。
【0025】
さらに、本発明の式(1)で表される化合物と、ウレタンプレポリマーとを含有するウレタン組成物は、優れた貯蔵安定性と潜在性硬化性を発揮するので、優れた一液型湿気硬化性組成物として有用である。本発明の化合物は、置換基を有するフェニル基を含むウレタンオキサゾリジンであるので、本発明の組成物の硬化剤として用いると組成物の貯蔵安定性と硬化性のバランスにおいて優れている。
【0026】
本発明のウレタン組成物において、式(1)で表される化合物は、予めウレタンプレポリマーに加えておいても、また、ウレタンプレポリマーとは別個に単独で含有させてもよい。
組成物中の本発明の式(1)の化合物の配合量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.5〜10重量部、特に1〜5重量部であるのが、硬化性と貯蔵安定性の点で好ましい。
【0027】
本発明のウレタン組成物に用いられるウレタンプレポリマーとしては、接着剤やシーラントの分野で通常に使用されるポリエステル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアセタール、ポリカーボネートおよびポリエステルアミドなどのヒドロキシ化合物と、ジイソシアネートやトリイソシアネートから得られる汎用のプレポリマーが挙げられる。さらに、ウレタンプレポリマーの代わりに、ビスフェノールA,F型などのエポキシ樹脂をプレポリマーとして使用してもよいし、これらとウレタンプレポリマーとの混合物であってもよい。
【0028】
本発明のウレタン組成物には、さらに、本発明の趣旨を損なわない範囲で、充填剤、可塑剤、着色剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、タレ防止剤、老化防止剤など湿気硬化性組成物に通常添加される添加剤を加えてもよい。
【0029】
充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、硅ソウ土、塩化ビニルペーストレジン、ガラスバルーン、塩化ビニリデン樹脂バルーン等があげられ、単独または混合して使用することができる。
充填剤を添加する場合、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、1〜150重量部であるのが好ましい。
【0030】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチル アジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルホスヘート(TOP)、トリス(クロロエチル)ホスヘート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)ホスヘート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル、エポキシステアリン酸アルキル、エポキシ化大豆油等が挙げられ、単独または混合して使用することができる。
可塑剤を添加する場合、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、10〜100重量部であるのが、作業性の点で好ましい。
【0031】
粘着性付与剤としては、各種チタネート系あるいはシラン系カップリング剤、カップリング剤とイソシアネート化合物との反応生成物、2種類以上のカップリング剤の反応生成物(例えば各種アミノシランとエポキシシランの反応生成物、2分子以上のカップリング剤のアルコキシ基の縮合反応生成物)等があげられ、単独または混合して使用することができる。
【0032】
溶剤としては、キシレン、トルエン、ミネラルスピリット等が挙げられる。
溶剤の含有量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、5〜50重量部、特に、10〜30重量部であるのが、作業性の点で好ましい。
【0033】
本発明のウレタン組成物の製造方法は、ウレタンプレポリマーに潜在性硬化剤、その他の添加剤を加えて、十分に混練することによって行われる。
本発明の式(1)のオキサゾリジン化合物を潜在性硬化剤として含有する一液型湿気硬化性組成物は、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れている。
得られたウレタン組成物は、金属とガラス、金属と樹脂、コンクリートと金属、コンクリートとコンクリート等の接着剤またはシーリング剤として有用である。
【0034】
【実施例】
以下に、本発明をさらに詳細に説明するために下記に実施例を示す。
(ウレタンオキサゾリジンの合成)
1L三つ口フラスコのジエタノールアミン1モル、ベンゼン100ml、置換ベンズアルデヒド1モルの混合溶液を油浴に浸漬し、還流条件下で8〜12時間反応させた。反応の終点は生成する水が理論量に達した時とした。さらに、反応混合物からベンゼンを留去させ、目的のヒドロキシエチルオキサゾリジン(下記式(IX))を得た。ついで、ジイソシアネート0.5モルを水冷下で2時間、80℃で4〜6時間反応させ下記(I)〜(VIII)で示されるウレタンオキサゾリジンを得た。反応は赤外分光計で追跡し、イソシアネート基が消失した時を終点とした。
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
(実施例1〜6)
平均分子量3000のポリプロピレングリコール、平均分子量5000のポリプロピレントリオール、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとから合成した末端イソシアネート基1.7%のポリウレタンプレポリマー100重量部、炭酸カルシウム100重量部、ジオクチルフタレート40重量部、および表1に示される量の各ウレタンオキサゾリジンを混合ミキサーにて均一に分散させ、一液型湿気硬化性組成物を得た。
【0039】
(実施例7)
上記ウレタンプレポリマーにN−ヒドロキシエチル−オキサゾリジン(IX)2重量部を加え、80℃で1時間反応させたウレタンプレポリマー(II)102重量部を使用する以外は実施例1〜6と同様にして湿気硬化性組成物を得た。
得られた組成物について、物性試験を行なった結果を表1に示す。
物性試験において、粘度はB型粘度計を用いて測定した。貯蔵安定性は60℃×3日後の粘度により評価した。
さらに、硬化性はJIS A 5758に従って測定した。
【0040】
(比較例1および2)
表1に示すとおり、ウレタンオキサゾリジンとして化合物(VII) または(VIII)を用いる以外は、実施例1〜6と同様にして湿気硬化性組成物を得、物性試験を行なった。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
注)DOP:ジオクチルフタレート
【0042】
【発明の効果】
本発明の化合物は、優れた貯蔵安定性および硬化性のバランスを有する潜在性硬化剤である。また、本発明のウレタン組成物は、優れた貯蔵安定性および硬化性のバランスを有する一液湿気硬化型組成物である。
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