JP3702489B2 - アンチスキッド制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の制動時に、車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に前記スリップ状態を最適状態に制御するアンチスキッド制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のブレーキシステムは、ブレーキペダルに連結されたマスタシリンダと、車輪のブレーキ機構に設けられたホイールシリンダと、ブレーキ液を貯留するリザーバとをそれぞれの管路により接続して構成される。またアンチスキッド制御装置として、例えばマスタシリンダとホイールシリンダとの間の管路にマスタ圧カット弁を設けると共に、ホイールシリンダとリザーバとの間の管路に流出弁を設け、さらにこの流出弁と並列にポンプを接続したものがある。
【0003】
このアンチスキッド制御装置では、通常のアンチスキッド制御中はマスタ圧カット弁が遮断状態に制御される。すなわち、マスタ圧カット弁は、アンチスキッド制御の実行開始と同時にマスタシリンダ圧をカットする。そして、ホイールシリンダ圧の緩増圧を実行する場合には、流出弁を遮断させることで、ポンプによってリザーバから汲み上げられたブレーキ液がホイールシリンダ側へ供給されるため、ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧(以下、ホイールシリンダ圧と言う。)が増圧していく。
【0004】
また、ホイールシリンダ圧の減圧時には流出弁を連通させ、ホイールシリンダ側のブレーキ液圧をリザーバ内に還流させることで、減圧していくのである。なお、この減圧可能な圧力は、図12に示すように、リザーバの背圧にポンプ吐出による脈動圧力を加えたものとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなホイールシリンダ圧の増減圧制脚は、車輪のスリップ状態に応じて実行され、この車輪のスリップ状態は、車両の走行路面の路面摩擦係数に依存する。車輪スリップ状態を最適な状態に制御する場合において、特に氷上等の低摩擦係数路面(以下低μ路という)ではホイールシリンダ圧を極力小さくする必要がある。
【0006】
上述したように、減圧可能な圧力は、リザーバの背圧にポンプ吐出による脈動圧力を加えたものとなるため、ポンプ吐出量を減少あるいは停止させれば、減圧可能圧力がさらに低下することになる。しかしながら、増圧モードの場合には、ポンプによってリザーバから汲み上げられたブレーキ液をホイールシリンダ側へ供給して大きなホイールシリンダ圧を加えることが必要であるため、ポンプ吐出量の減少あるいは停止は不都合である。
【0007】
そこで本発明は、ポンプ還流によって減圧する構成で、ホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を極力低くすることができ、例えば低摩擦係数路面走行時等において有利でありながら、ホイールシリンダ圧を増圧制御する際に悪影響は及ぼさないようにしたアンチスキッド制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
乗員のブレーキペダルの踏み込みによりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、
該マスタシリンダからのブレーキ液圧をホイールシリンダに送るための第1の管路と、
該第1の管路に配設され、前記マスタシリンダからのブレーキ液の流路を連通・遮断可能なマスタ圧カット弁と、
前記第1の管路の、前記マスタ圧カット弁の下流に配設され、前記ホイールシリンダへのブレーキ液の流路を連通・遮断可能な制御弁と、
前記第1の管路における前記マスタ圧カット弁と前記制御弁との間から延び、ブレーキ液を貯留するリザーバと接続される第2の管路と、
前記第2の管路に接続され、前記第2の管路におけるブレーキ液の流路を連通・遮断可能な流出弁と、
該流出弁に並列に接続され、前記リザーバ内のブレーキ液を汲み上げて前記ホイールシリンダへ向けて圧送可能なポンプと、
車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、前記各弁を連通位置あるいは遮断位置に切替制御することによって、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧の増減制御を行なうアンチスキッド制御手段と
を備えるアンチスキッド制御装置であって、
さらに、前記アンチスキッド制御手段による制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な場合には、前記ポンプからのブレーキ液の吐出量を減少させる吐出量調整手段を備えたことを特徴とするアンチスキッド制御装置である。
【0009】
本アンチスキッド制御装置によれば、アンチスキッド制御手段が、車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、マスタ圧カット弁・制御弁・流出弁を連通位置あるいは遮断位置に切替制御することによって、ホイールシリンダ圧の増減制御を行なう。なお、アンチスキッド制御が実行されていない通常時にはマスタ圧カット弁及び制御弁は連通状態とされており、また流出弁は遮断状態となっている。そのため、乗員のブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダ圧によってホイールシリンダ圧の増減圧が実行される
【0010】
アンチスキッド制御が開始されると、マスタ圧カット弁は遮断状態となり、マスタシリンダからのブレーキ液圧を遮断する。アンチスキッド制御開始後、ホイールシリンダ圧を保持する際には、制御弁を遮断状態とし、且つ流出弁を連通状態とする。この際、ポンプから吐出されるブレーキ液は、ポンプが流出弁と並列に接続されているために、流出弁を通過してリザーバに還流される。
【0011】
また、アンチスキッド制御中におけるホイールシリンダ圧の増圧は、ポンプから送られるブレーキ液によって行われ、この際、流出弁は遮断状態、制御弁は連通状態とされる。この増圧時のブレーキ液は、第2の管路から第1の管路を通つてホイールシリンダに送られる。
【0012】
次に、アンチスキッド制御中におけるホイールシリンダ圧の減圧は、ホイールシリンダのブレーキ液を抜くことによって行われるが、この際、流出弁および制御弁は連通状態とされる。この減圧時においては、制御弁および流出弁が連通状態とされることによって、ホイールシリンダのブレーキ液が第1の菅路から第2の管路に返流される。すなわち、前述のように、ポンプと流出弁が並列に接続されているため、ポンプによるリザーバからのブレーキ液の汲み上げと、流出弁を通すブレーキ液のリザーバへの返送とを同時に行え、ホイールシリンダ圧の増圧と減圧とにおけるブレーキ液の伝達も第1の管路によって行うことができる。
【0013】
このように、ホイールシリンダ圧を増減制御することによってアンチスキッド制御を実行するのであるが、さらに吐出量調整手段が次のように制御する。すなわち、アンチスキッド制御手段による制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な場合には、ポンプからのブレーキ液の吐出量を減少させるのである。
【0014】
アンチスキッド制御は、車輪スリップ状態を最適な状態に制御するものであるが、特に氷上等の低μ路ではホイールシリンダ圧を極力小さくする必要がある。減圧可能な圧力は、上述したようにリザーバの背圧にポンプ吐出による脈動圧力を加えたものとなるため、本アンチスキッド制御装置では、ポンプからのブレーキ液の吐出量を減少(吐出量「0」も含む。)させることで、ポンプ吐出による脈動圧力分を減少させ、その結果、減圧可能圧力を減少させることができる。したがって、低μ路での減圧制御時に有利である。
【0015】
但し、ホイールシリンダ圧を増圧させる場合には、ポンプによってリザーバから汲み上げられたブレーキ液をホイールシリンダ側へ供給して大きなホイールシリンダ圧を加えることが必要であるため、そのような状況でのポンプ吐出量の減少は不都合である。そのため、本アンチスキッド制御装置は、制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な場合に限って、上述したポンプ吐出量の減少制御を実行するのである。つまり、1つのホイールシリンダに対して1つのポンプが対応しているのであれば、そのホイールシリンダに対する増圧制御が不要な場合にはポンプ吐出量の減少制御を実行すればよい。また、2つ以上のホイールシリンダに対して1つのポンプが対応しているのであれば、全てのホイールシリンダに対して増圧制御が不要な場合に限りポンプ吐出量の減少制御を実行するのである。これは、アンチスキッド制御上、増圧制御が必要であるのに、それを無視してまでも減圧可能圧力を低下させることを優先する意味は少ないと考えられるからである。
【0016】
これにより、本アンチスキッド制御装置によれば、ポンプ還流によって減圧する構成を採用し、ホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を極力低くすることができるため、例えば低μ路走行時等において有利でありながら、ホイールシリンダ圧を増圧制御する際に悪影響を及ぼさないようにすることができるのである。
【0017】
なお、上記アンチスキッド制御装置における構成としては、例えば1つのホイールシリンダに対して、上述した、マスタ圧カット弁・制御弁・リザーバ・第2の管路・流出弁・ポンプを備えてもよいが、コストダウン等の理由により、2つのホイールシリンダに対してマスタ圧カット弁・リザーバ・第2の管路・流出弁・ポンプを共通化し、制御弁だけホイールシリンダ毎に備える構成を採用すること等が考えられる。この場合のホイールシリンダの組み合せは、前輪同士あるいは後輪同士の組み合せも考えられるし、前後輪の組み合せ、例えばいわゆるX配管のように、左前輪と右後輪、右前輪と左後輪をそれぞれ組み合せること等も考えられる。
【0018】
そして、このように前後輪を組み合わせる場合には、請求項2に示すように構成することもできる。つまり、その構成は、
前記第1の管路は、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧を、前輪に配設される第1のホイールシリンダおよび後輪に配設される第2のホイールシリンダに送るために中途から分岐した第1の枝管路と第2の枝管路とを有し、
前記マスタ圧カット弁は、前記第1の管路における前記マスタシリンダと前記第1及び第2の枝管路が分岐する分岐点との間に配設されており、
前記制御弁は、前記第2の枝管路に配設された第1の制御弁と、前記第2の枝管路における前記第1の制御弁よりも前記第2のホイールシリンダ寄りに配設された第2の制御弁とからなり、
前記第2の管路は、前記第1の制御弁と第2の制御弁との間から延び、ブレーキ液を貯留するリザーバと接続されていることを特徴とする。
【0019】
このアンチスキッド制御装置によるアンチスキッド制御は次のように実行される。制御が開始されるとマスタ圧カット弁が遮断状態となり、マスタシリンダからのブレーキ液圧を遮断するのは同じである。そして、各ホイールシリンダ圧を保持する際には、第1及び第2の制御弁を遮断状態とする。すると、ポンプから吐出されるブレーキ液は流出弁を介してリザーバに還流される。
【0020】
アンチスキッド制御中における第1もしくは第2のホイールシリンダのブレーキ液圧の増圧は、主にポンプから送られるブレーキ液によって行われる。このポンプによるホイールシリンダ圧の増圧時には、流出弁は遮断状態、第1および第2の制御弁は連通状態とされる。この増圧時のブレーキ液は、第2の管路から第1の管路を通つて各ホイールシリンダに送られる。
【0021】
また、アンチスキッド制御中における第1もしくは第2のホイールシリンダのブレーキ液圧の減圧は、第1もしくは第2のホイールシリンダのブレーキ液を抜くことによって行われるが、この際流出弁と第1および第2の制御弁は連通状態とされる。この減圧時においては、第1および第2の制御弁に加えて流出弁が連通状態とされることによって、各ホイールシリンダのブレーキ液が第1の管路から第2の管路に返流され、リザーバ内に収容される。また、双方のホィールシリンダ圧の減圧時においても同様である。
【0022】
さらに、第1のホイールシリンダの圧力と第2のホイールシリンダの圧力とにおいて、一方を保持し、他方を増減圧することも、第1および第2の制御弁と流出弁を連通・遮断制御することによって可能である。
また、前輪に対する第1のホイールシリンダが発生するべき制動力と後輪に対する第1のホイールシリンダが発生するべき制動力とが異なる場合がある。このような際には、第1のホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を増圧し、第2のホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を減圧する必要性も生じる。そして、本請求項2のように構成されたアンチスキッド制御装置であれば、このような場合に、一方を増圧し、他方を減圧することが可能である。
【0023】
つまり、第2のホイールシリンダに関しては第1の制御弁を遮断、第2の制御弁を連通状態とし、且つ流出弁を連通状態とすれば、第2のホイールシリンダのブレーキ液を第2の制御弁及び流出弁を介してリザーバに返流することができ、第2のホイールシリンダの圧力だけを減圧することができる。また、第1のホイールシリンダの圧力を増圧する場合にはマスタ圧カット弁を連通状態とすることによって、マスタシリンダからのブレーキ液圧を用いて増圧を実行することができる。すなわち、第2の制御弁が遮断状態とされることによって、第1のホイールシリンダの増圧制御と第2のホイールシリンダの減圧制御を独立して実行することができるのである。
【0024】
一方、請求項3のアンチスキッド制御装置は、請求項1又は2に記載のアンチスキッド制御装置において、車両の走行路面が所定の低摩擦係数路面であるかどうかを判断する路面判断手段を備え、前記吐出量調整手段は、該路面判断手段によって低摩擦係数路面であると判断された場合に限って、前記ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行する手段として構成されていることを特徴とする。
【0025】
上述したように、ポンプからのブレーキ吐出量を減少させてまでもホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を低くしたい場合というのは、例えば低μ路走行時であるので、このように、低μ路面であると判断された場合に限って吐出量の減少調整を実行するようにしている。
また、請求項4のアンチスキッド制御装置は、請求項1,2又は3に記載のアンチスキッド制御装置において、前記吐出量調整手段は、前記制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な状態が所定時間持続した場合に初めて、前記ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行することを特徴とする。
【0026】
これは、制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な状態が一瞬生じたとしても、すぐにいずれか一つのホイールシリンダに対して増圧制御が必要となると、ブレーキ液の吐出量を減少させた直後にすぐ元に戻さなくてはならず、あまり制御する意味がない。そのため、増圧制御が所定時間続く場合、例えばなかなか車輪速度が復帰してこない場合等の真に必要な状態でもに実行するようにしているのである。
【0027】
なお、ブレーキ液の吐出量の減少調整は、例えば請求項5に示すようにして実現することが考えられる。つまり、ポンプは、外部から印加される電圧で駆動するモータによってその吐出量が変化するようにされており、吐出量調整手段は、モータに印加する電圧のディーティ比を低下させることによって、ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行するのである。
【0028】
なお、請求項6に示すように、モータへの電圧印加を停止させてポンプからブレーキ液を吐出させない停止制御を、吐出量の減少調整の一つとして実行するようにしてもよい。ポンプからブレーキ液を吐出させなければ、減圧可能圧力は図12に示すようにリザーバの背圧分だけとなる。
【0029】
また、この停止制御は、請求項7に示すように、モータの駆動端子間をショートさせることによって実行したり、あるいは請求項8に示すように、モータに逆電圧を印加することによって実行してもよい。このようにすれば、より短時間で停止させることが可能となる。
【0030】
また、請求項9に記載のアンチスキッド制御装置は、
乗員のブレーキペダルの踏み込みによりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、
該マスタシリンダからのブレーキ液圧を受けて車輪制動力を発生するホイールシリンダと、
該ホイールシリンダへ向けてブレーキ液を吐出するポンプと、
該ポンプの吸引側に接続され、ブレーキ液を貯留するリザーバと、
前記マスタシリンダからのブレーキ液圧を前記ホイールシリンダに送るための第1の管路と、
該第1の管路に配設され、前記マスタシリンダからのブレーキ液の流路を連通・遮断可能なマスタ圧カット弁と、
前記第1の管路の、前記マスタ圧カット弁の下流に配設され、前記ホイールシリンダへのブレーキ液の流路を連通・遮断可能な制御弁と、
前記第1の管路における前記マスタ圧カット弁と前記制御弁との間から延び、前記リザーバと接続される第2の管路と、
前記第2の管路に接続され、前記第2の管路におけるブレーキ液の流路を連通・遮断可能且つ前記ポンプと並列に接続された流出弁と、
車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、前記流出弁あるいは前記ポンプの作動状態を制御することによって、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧の増減制御を実行するアンチスキッド制御手段とを備え、
該アンチスキッド制御手段は、
前記流出弁を遮断状態として前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を増圧する増圧手段と、
前記流出弁を連通断状態として前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を減圧する第1の減圧手段と、
前記ポンプに供給される駆動電流のデューディ比を変化させてポンプ吐出量を減少させることによって前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を減圧する第2の減圧手段とを備えることを特徴とする。
【0031】
このアンチスキッド制御装置においても、ポンプ還流によって減圧する構成を採用し、ホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を極力低くすることができるため、例えば低μ路走行時等において有利でありながら、ホイールシリンダ圧を増圧制御する際に悪影響を及ぼさないようにすることができるといった上述のアンチスキッド制御装置と同様の作用・効果を奏することができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例であるアンチスキッド制御装置のシステム構成を示す。本実施例はフロントエンジン・フロントドライブの四輪車に適用した例である。また、図1では、車両のブレーキ配管系統が、右前輪と左後輪の系統と、左前輪と右後輪の系統との2系統を有するものを示している。
【0033】
右前輪1、左後輪2、左前輪3、右後輪4の各々に電磁式、磁気抵抗式等の車輪速度センサ27,28,29,30が配置され、各車輪1〜4の回転に応じた周波数のパルス信号を出力する。さらに、各車輪1〜4に各々油圧ブレーキ装置(以下ホイールシリンダという)5,6,7,8が配置され、各車輪1〜4に制動力を発生させる。ブレーキペダル15の踏み込みによって発生するマスタシリンダ16からのマスタシリンダ圧は、各管路を介して第1のマスタ圧カット弁11、第2のマスタ圧カット弁12に向けて流動される。なお、ブレーキペダル15の踏み込み状態は、ストップスイッチ45によって検出される。このストップスイッチ45から、制動時にはON信号が出力され、非制動時にはOFF信号が出力される。また、通常マスタシリンダ16は図示しない独自のリザーバを有している。
【0034】
アンチスキッド制御が実行されていない場合では、これら第1,第2のマスタ圧カット弁11,12は連通状態とされており、マスタシリンダ圧は各カット弁11,12を通して、各車輪1〜4に対応した制御弁21,22,23,24に伝達される。この制御弁21〜24は、アンチスキッド制御中でない場合には連通状態とされるため、前記マスタシリンダ圧は乗員のブレーキペダル15の踏み込みに応じてホイールシリンダ5〜8に伝達される。なお、この、マスタシリンダ16から第1のマスタ圧カット弁11を介し、その下流で分岐し、さらに各制御弁21,22を介してホイールシリンダ5,6に至る管路が、本発明の第1の管路に相当する。同様に、マスタシリンダ16から第2のマスタ圧カット弁12を介し、その下流で分岐し、さらに各制御弁23,24を介してホイールシリンダ7,8に至る管路も第1の管路に相当する。
【0035】
前記マスタ圧カット弁11と制御弁21,22とを結ぶ管路、及びマスタ圧カット弁12と制御弁23,24とを結ぶ管路には、それぞれポンプ9,10から吐出されるブレーキ液を伝達する管路が接続されている。ポンプ9はリザーバ25からプレーキ液を汲み上げてホイールシリンダ5,6側にブレーキ液を圧送する。また、ポンプ10はリザーバ26からブレーキ液を汲み上げてホイールシリンダ7,8側にブレーキ液を圧送する。なお、本実施例では、図示しないポンプ駆動用モータによってこれら2つのポンプ9,10が駆動される。つまり、一方のポンプ9,10のみを駆動させることはできずに、共に駆動するか共に駆動しないかとなる。
【0036】
これらポンプ9,10にはそれぞれ並列に管路が接続されており、各々の管路にはブレーキ液のリザーバ25,26への流出入を制御する流出弁13,14がそれぞれ配設されている。なお、リザーバ25から流出弁13を介して、上述したマスタ圧カット弁11と制御弁21,22とを結ぶ管路に至る管路、及びリザーバ26から流出弁14を介して、マスタ圧カット弁12と制御弁24とを結ぶ管路に至る管路が本発明の第2の管路に相当する。
【0037】
また、ホイールシリンダ1と制御弁21との間と、マスタシリンダ16とは管路によって接続されており、この管路にはホイールシリンダ5側からマスタシリンダ16側へのブレーキ液の流動のみを許容する逆止弁17が配設されている。ホイールシリンダ6,7,8についても同様にそれぞれマスタシリンダ16とを接続する管路が設けられており、逆止弁18,19,20がそれぞれ配設されている。
【0038】
上述したマスタ圧カット弁11,12、制御弁21〜24、及び流出弁13,14は、それぞれ2ポート2位置弁であり、その弁体は電子制御装置40(以下ECUという)からの信号に基づいて電力を供給された時、ソレノイドが励磁することによって変化してポートを切り換える。なお、各弁の非作動時すなわちアンチスキッド制御が開始されていない状態では、ポートは図示位置にある。なお、各弁には、このような電磁弁の他に機械式弁を採用するようにしてもよい。
【0039】
ECU40は、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェース等からなるマイクロコンピュータから構成されている。また、ECU40は、イグニッションスイッチ41がオンされることにより電源が供給され、前記車輪速度センサ27〜30及びストップスイッチ45からの信号を受け、車輪速度や車体速度の演算そして各車輪1〜4のスリップ状態の演算推定等、ブレーキ力制御のための演算制御等を行い、マスタ圧カット弁11,12、制御弁21〜24、及び流出弁13,14に対する駆動制御信号を出力する。
【0040】
図2には、説明を簡略化するため、図1のように構成されるブレーキ配管系における右前輪1に対するブレーキ配管系のモデル図を示す。以下、このブレーキ配管系を用いてECU40による各弁11,21,13の制御方法を説明する。また図3は、通常の車両制動時すなわちアンチスキッド制御の非実行時における各弁11,21,13の動作、及びアンチスキッド制御中におけるホイールシリンダ1に対する各制御モードに対応した各弁11,21,I3の動作を示す説明図である。
【0041】
まず、アンチスキッド制御が実行されていない場合には、マスタシリンダ圧がホイールシリンダ6に向けて直結される「M/C直結出力」にされる。よって、マスタ圧カット弁11及び制御弁21は連通状態、かつ流出弁13は遮断状態に制御されている。
【0042】
なお、通常制動時にはポンプ9は駆動されない(OFF状態である)。よって、乗員によるブレーキペダル15の踏み込みを反映したマスタシリンダ圧がホイールシリンダ6に伝達される。また、後述するリザーバ25からブレーキ油を汲み上げてマスタシリンダ16に返還する処理は、アンチスキッド制御が終了した後に実行されるが、制御外のために「M/C直結出力」にされた状態でポンプ9が駆動される(ON状態)こととなる。但し、この場合だけ制御弁21を遮断してマスタシリンダ16側だけに圧送するようにすることも考えられる。
【0043】
次にアンチスキッド制御の実行中の各弁の動作について説明する。なお、アンチスキッド制御の開始と同時にポンプ9が駆動され、アンチスキッド制御中は断続的に駆動される。
▲1▼まず、アンチスキッド制御におけるホイールシリンダ圧の「減圧出力」では、マスタ圧カット弁11はマスタシリンダ圧をカットするために遮断状態とされ、制御弁21はホイールシリンダ6内のブレーキ液圧を抜くために連通状態とされる。また、流出弁13は、ポンプ9から吐出されるブレーキ液圧をリザーバ25に還流するために連適状態とされる。このように減圧出力時にポンプ9からのブレーキ液圧をリザーバに還流できる還流路が形成されていることによって効率良くホイールシリンダ圧を減圧することが可能である。
【0044】
▲2▼一方、ホイールシリンダ圧の「保持出力」では、マスタ圧カット弁11及び制御弁21は遮断状態、流出弁13は連通状態とされる。ここで、前記制御弁21が遮断状態とされることによって現在のホイールシリンダ圧が保持され、この際駆動され続けているポンプ9からのブレーキ液圧は、連通状態とされている流出弁13を有する還流路を通してリザーバ25に還流される。このようにされることによってポンプ9からのブレーキ液圧が、管路内に高圧に貯留されることがなくなり、管路が保護される。
【0045】
▲3▼また、「緩増圧出力」では、ポンプ9によるホイールシリンダ圧の増圧を実行する。この際、マスタ圧カット弁11は遮断状態、制御弁21は連通状態に制御され、流出弁13は遮断状態に制御される。よってポンプ9からのブレーキ液圧は流出弁13によってリザーバ25に還流されることを妨げられ、ホイールシリンダ6に向けて吐出される。
【0046】
▲4▼また、上記▲3▼の緩増圧出力と比較して、ホイールシリンダ圧をより急激に増圧したい場合には「急増圧出力」を採用する。この急増圧出力では、アンチスキッド制御中にも関わらずマスタシリンダ圧をホイールシリンダに伝達する。よって、マスタ圧カット弁11及び制御弁21は連通状態とされ、流出弁13は遮断状態とされる。
【0047】
次に、本実施例におけるECU40による具体的なアンチスキッド制御をフローチャートを基に説明する。なお、ここでは便宜上、図2に示した1輪1ホイールシリンダに対しての制御について説明する。
図4は、アンチスキッド制御の全体構成を示すメイン処理のフローチャートである。なお、この処理はイグニッションスイッチ41がオンされたとき開始される。
【0048】
処理を開始すると、まず、各種フラグや各種カウン夕の初期設定のためのイニシヤル処理を行う(ステップ110)。続いて、所定時間Tms経過したかどうかを判断し(ステップ120)、Tms経過してはじめてステップ130へ移行する。この所定時間Tmsは、ステップ130以降の処理をTms毎に実行するためのもので、例えばT=4である。
【0049】
ステップ130では、アンチスキッド制御における制御モードの判定を行い、続くステップ140では、その判定された制御モードに従って各弁11,21,13に対するソレノイド出力を実行し、ステップ150では、モータ出力処理を実行する。
【0050】
このステップ130〜150の処理について以下に説明する。まず、制御モードについて説明する。
制御モードとは、アンチスキッド制御中において上述の各弁11,21,13の制御により実現されるホイールシリンダへかかるブレーキ液圧を、所定時間継続したり所定時間間隔毎に組み合わせたりして制御する方法である。この制御モードについて図7を参照して説明する。
【0051】
まず制御モードは、アンチスキッド制御中であることを表す制御中モードと、アンチスキッド制御が実行されていない、すなわち通常のブレーキ操作時である制御外モードとに大別される。
制御中モードには、減圧モード、保持モード、緩増圧モード及び急増圧モードの4つのモードがある。
【0052】
まず、減圧モードとは、図3にて説明した減圧出力を所定時間連続して選択して実行する制御を指す。又、保持モードとは、前記保持出力を所定時間連続して実行する制御である。また、緩増圧モードは、前記緩増圧出力を所定時間連続して実行する制御である。急増圧モードとは、前記急増圧出力と緩増圧出力とを所定時間毎に所定回繰り返して実行する制御である。これは、急増圧出力によるホイールシリンダ圧の増圧は急激すぎる傾向があるため、すぐに車輪のスリップ状態が悪化する可能性が大きい。よってこの急増圧モードのように、ポンプ9によるホイールシリンダ圧の増圧とマスタシリンダ圧による増圧とを繰り返し行うようにする。
【0053】
また。制御外モードの場合には、図3に示したようにM/C直結出力が選択される。つまり、制御中のモードがリセットされた場合には、この制御外モードとなる。なお、上述したように通常制動時には、モータはOFF状態である。
次に、ステップS130での制御モード判定処理の詳細を、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
本制御モード判定処理の最初のステップ210では、各車輪1,2,3,4に設けられている車輪速度センサ27,28,29,30からの車輪速度信号に基づいて、各車輪の車輪速度VW を演算する。続くステップ220では、各車輪の車輪加速度dVW を演算する。
【0055】
ステップ230では、車輪速度VW 等に基づいて車体速度VB を推定演算し、ステップ240では、各車輪のスリップ率SW を車輪速度VW 及び車体速度VB 等に基づいて演算する。そして、ステップ250では、現在すでにアンチスキッド制御が開始されており、制御中モードに設定されているか制御外モードに設定されているかが判定される。ここで、制御中モードに設定されていると判断された場合にはステップ290へ移行し、現在制御中モードに制御されていないと判断された場合には、ステップ260に進む。
【0056】
ステップ260では、車輪スリップ率SW が所定値KSよりも大きいか否かを判断する。ここでスリップ率SW が所定値KSよりも大きい値であると判断された場合は、車輪がロック傾向にあるとしてステップ270に進み、制御中モードであることを示すフラグをセットする。また、ステップ260において、車輪スリップ率SW が所定値KS以下であると判断された場合、車輪のスリップ状態は比較的良好であるということで、ステップ280に進み、制御中モードをリセットする。この制御中モードリセット後、本ルーチンを終了して図4のフローチャートのステップ140へ移行する。
【0057】
ステップ250もしくはステップ270から移行するステップ290では、車輪のスリップ状態が所定以上であるか否かを判断する。すなわち、スリップ率SW と所定値KSとを比較する。ここで、スリップ率SW が所定値KS以下であると判断された場合には、後述するステップ330に進み、スリップ率SW が所定値KSよりも大きいと判断された場合にはステップ300に進む。
【0058】
ステップ300に進んだということはスリップ状態が所定以上であることを意味しており、このステップ300では車輪加速度dVW が0よりも小さいか否かを判断する。すなわち、車輪速度VB が落ち込む方向に向かっているか、回復する方向に向かっているかを判断する。ここで車輪加速度dVWが0よりも小さく、すなわち車輪のスリップ状態が所定以上で、且つ車輪速度が落ち込んでいる状態では、ホイールシリンダに適切なブレーキ液圧以上の圧力が加えられており、ますますスリップ状態を悪化させる可能性があるとして、ステップ310に進み、減圧モードを選択する。
【0059】
また、ステップ300において、車輪加速度dVWが0以上であり、すなわち車輪速度が回復する方向で、現在ホイールシリンダにほぼ適切なブレーキ液圧か加えられているとして、ステップ320に進み、保持モードにセットする。この保持モードセット後、本ルーチンを終了して図4のフローチャートのステップ140へ移行する。
【0060】
一方、ステップ290において、スリップ率SW が所定値KS以下であると判断された場合、ステップ330に進む。ここでステップ330に進んだということは、車輪のスリップ状態が所定以下であり、ホイールシリンダに加えるべきブレーキ液圧が不足しているとして、ホイールシリンダ圧を増圧する制御モードについての判定を行う。すなわち、ステップ330では、緩増圧モードにおいて所定時間の実行が終了したか否かを判断する。ここで終了していないと判断された場合にはステップ360に進み、引き続き緩増圧モードがセットされる。この緩増圧モードセット後、本ルーチンを終了して図4のフローチャートのステップ140へ移行する。
ステップ330において緩増圧モードが終了したと判断された場合にはステップ340に進み、急増圧モードが所定時間実行されたか否かが判定される。通常アンチスキッド制御では、ポンプ9の吐出によるゆるやかなホイールシリンダ圧の増圧を実行し、ホイールシリンダ圧とマスタシリンダ圧とがほぼ等しくなったと判断した場合にはマスタシリンダ16による急増圧(すなわちマスタシリンダ16とホイールシリンダ5との連通による増圧)を実行している。これは、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧とに比較的大きな差圧があった場合にいきなりマスタシリンダとホイールシリンダとを連通すると車輪速度の落ち込みが激しくなるが、これによる車輪のスリップが大きくなる状態を回避するためである。
【0061】
また、ステップ340において急増圧モードか終了したと判断された場合にはステップ280に進み、いったん制御中モードをリセットした後、フォローを繰り返し実行する。また、ステップ340において、急増圧モードが終了していないと判断された場合には、ステップ350に進み、引き続き急増圧モードをセットする。この急増圧モードセット後、本ルーチンを終了して図4のフローチャートのステップ140へ移行する。
【0062】
ステップ140では、その判定された制御モードに従って各弁11,21,13に対するソレノイド出力が実行され、ステップ150では、モータ出力処理が実行される。
次に、ステップS150でのモータ出力処理の詳細を、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0063】
はじめにモータ出力処理の概要を説明しておく。アンチスキッド制御外(制御前・制御後)の場合に基本的にモータをOFFさせておく。一方、アンチスキッド制御中の場合には、原則としてモータをONさせてポンプ9を駆動させておくのであるが、所定の条件が成立した場合には、例外的にモータをOFFさせてポンプ9の駆動を停止させる。これは、ホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を極力低下させるためである。
【0064】
このような処理を実行するための本モータ出力処理の最初のステップ410では、アンチスキッド制御中であるかどうかを判断し、制御中であればステップ420へ移行し、制御中でなければステップ530へ移行する。
制御中でない場合に移行するステップ530では、モータがON出力されたことを示すメモリフラグFMMTを0にセットし、続くステップ540では、モータOFF時間のMAXガードタイマをクリアして(CT=0)、ステップ520へ移行する。ステップ520では、モータOFF出力を指示するためのフラグFMTを0にセットする。これにより、モータOFFの指示が出力され、ポンプ9は駆動停止状態となる。ステップ520の処理終了後、本ルーチンを終了する。これが、アンチスキッド制御外の場合の基本的なモータ出力に係る処理である。
【0065】
続いて、アンチスキッド制御中のモータ出力に係る処理を説明する。ステップ420では、低μ路であるかどうかを判断する。例えば上記図5のステップ230で演算した車体速度VB の変化状態から得た車体減速度の大きさに基づいて路面μを推定し、この路面μが所定値以下であれば低μ路であると判断するのである。そして、低μ路であればステップ430へ移行し、低μ路でなければステップ450へ移行する。
【0066】
ステップ430では、メモリフラグFMMTが0であるかどうかを判断する。FMMT=0、すなわちアンチスキッド制御開始後に一度もモータONされたことがない場合にはステップ440へ移行し、FMMT=1、すなわちアンチスキッド制御開始後に一度はモータONされたことがある場合にはステップ480へ移行する。
【0067】
ステップ440では、増圧出力の対象となっている車輪、詳しくはホイールシリンダがあるかどうかを判断する。なお、この場合には、一つのモータによって2つのポンプ9,10を駆動させているため、4つのホイールシリンダ5〜8の内のいずれか1つのホイールシリンダに対してであっても増圧出力の必要がある場合には、ステップ450へ移行して、モータON出力を指示するためのフラグFMTを1にセットする。これにより、モータONの指示が出力される。
【0068】
ステップ450にてFMT=1にセットした後、ステップ460へ移行して、フラグFMMT=1にセットする。その後、ステップ470へ移行して、モータOFF時間のMAXガードタイマをクリアし(CT=0)、本ルーチンを終了する。
【0069】
上記ステップ420で否定判断の場合には、ステップ430,440の処理を実行することなく、ステップ450へ移行してモータONの指示が出力されるため、ステップ420で肯定判断とならないと、ステップ430あるいはステップ440の処理に進めず、その先のステップ520でのモータOFF出力には至らない。これは、アンチスキッド制御中であるにもかかわらずモータOFFさせてポンプ9の駆動停止をさせるには、まず低μ路であることが第1の条件であることを示している。
【0070】
そして、続くステップ430で否定判断、つまりFMMT=1の場合にはステップ480へ移行してFMT=1であるかどうかを判断する。すでにFMT=0の場合には、ステップ520での処理を実行する必要がないので、ステップ440へ移行する。一方、FMT=1の場合には、現在モータON出力がされている状態なので、ステップ490へ移行して、さらに条件判断を実行する。
【0071】
ステップ490では、4輪全てのホイールシリンダに対して減圧モードが実行されている状態が所定時間Tms連続しているかどうかを判断する。そして、Tms連続している場合にはステップ500へ移行するが、Tms連続していない場合にはステップ450へ移行する。これは、4輪全てのホイールシリンダに対して減圧制御が実行されていたとしても、すぐにいずれか一つのホイールシリンダに対して増圧制御が必要となると、仮にステップ520でモータOFFさせても、すぐにモータON状態に戻さなくてはならず、あまりモータOFF制御する意味がない。そのため、減圧モードが所定時間Tms連続している状態、つまりなかなか車輪速度が復帰してこない場合等の真に必要な状態にだけモータOFF制御は実行するようにしているのである。
【0072】
減圧モードが所定時間Tms連続している場合に移行するステップ500ではモータOFF出力時間のタイマカウンタCTをインクリメントし、続くステップ510ではCT≧KTかどうかを判断する。KTはモータOFF時間があまり長く連続しないようにするためのMAXガード時間であり、CTがこのMAXガード時間KT未満であれば、ステップ520へ移行して、FMT=0、つまりモータOFF出力が実行されるのである。一方、CTがMAXガード時間KTを経過したら、ステップ450へ移行して、FMT=1、つまりモータON出力が実行される。
【0073】
また、ステップ440で否定判断、つまり、アンチスキッド制御開始後に一度もモータONされたことがなく(ステップ430:YES)、さらにポンプ9による増圧出力の対象となっている車輪がない場合には(ステップ440:NO)、ステップ500へ移行し、ステップ510,520と移行して、FMT=0となる。
【0074】
これは、アンチスキッド制御を開始した場合に、どのような場合にでもすぐにモータをONさせるのではないことを示している。つまり、低μ路でなければ(ステップ420:NO)、ステップ450でモータONとなり、また低μ路の場合であっても、いずれか1輪に対して増圧出力の必要があればやはりステップ450でモータONとされるが、全ての車輪に対して増圧出力の必要がなければ、その場合にはモータOFFのままとなるのである。
【0075】
以上説明した各フローチャートに従って制御が実行された場合の、特にモータ出力に係る作用を、図8,9のタイムチャートを参照してさらに説明する。
図8は、アンチスキッド制御が開始した直後の一例を示すものであり、図9は、制御中の一例を示すものである。なお、この図8,9はいずれも低μ路を走行中にアンチスキッド制御が実行された場合を想定している。また、以下の説明では、適宜図6のステップ番号を引用して、制御処理との対応を明確にしていくこととする。
【0076】
ブレーキペダル15が踏まれ、所定の条件が成立するとアンチスキッド制御が開始される。具体的には、図8に示す4輪の車輪速度VW の内いずれか一つでもアンチスキッド制御開始条件を満たした時点(t1)でアンチスキッド制御が開始される。通常この場合は減圧モードにされるため、車輪速度VW が徐々に低下してくる。そして、順次他の車輪速度VW も低下してくる。
【0077】
このように、低μ路を走行中にアンチスキッド制御が開始された場合であっても、最初は全ての車輪に対して増圧出力の必要がないので、図6のステップ440で否定判断となり、その結果ステップ520へ移行するため、モータOFF(FMT=0)のままとなる。
【0078】
そして、図8に示すように、4輪の内の最初に増圧モードにする必要が生じた時点(t2)で、図6のステップ440では肯定判断となり、ステップ450の処理が実行されてモータON(FMT=1)とされるのである。当然、ステップ460の処理も実行されるので、FMMT=1とされる。
【0079】
なお、図8に示す場合には、タイマカウンタCTがMAXガード時間KTを経過する前にFMT=1とされたので、図6のステップ470に示すように、この時点(t2)でクリアされている(CT=0)。但し、4輪の内の最初に増圧モードにする必要が生じる前に、タイマカウンタCTがMAXガード時間KTを経過した場合には、そのCT≧KTとなったことをトリガとして、FMT=1とされる。
【0080】
これが、アンチスキッド制御を開始した直後のモータ出力制御の一例である。
次に、アンチスキッド制御中のモータ出力制御の一例を図9を参照して説明する。なお、この場合には、図8においてFMMT=1となった状態が続くので、FMMTについてのタイムチャートは省略する。また、アンチスキッド制御中であるので、図8で示したABS制御前であるか制御中であるかを示すタイムチャートも省略する。
【0081】
図9からも判るように、アンチスキッド制御中は通常、モータON状態を続けるのであるが、所定条件が成立している期間に限ってモータOFFとする。上述したように、アンチスキッド制御の(特に増圧モード)実行によって、4輪に対する車輪速度VW が順次低下してきて、順次減圧モードに制御されていく。そして、この場合は、4輪全てに対して減圧モードとされた時点(t3)から減圧モードカウンタがスタートし、所定時間Tが経過すると、図6のステップ490で肯定判断となり、その結果ステップ520の処理が実行されて、モータOFF(FMT=0)とされるのである。
【0082】
なお、仮に4輪全てに対して減圧モードとされた時点(t3)から減圧モードカウンタがスタートし、所定時間Tが経過する前に、いずれか1輪に対してでも増圧制御が必要となった場合にはモータOFFとはならない。これは、図6のステップ490の説明でも述べたように、仮にt3の時点でモータOFFさせても、すぐにモータON状態に戻さなくてはならないのであれば、あまりモータOFF制御する意味がない。そのため、減圧モードが所定時間Tms連続している状態、つまり図9に示すように、なかなか車輪速度VW が復帰してこない場合等の真に必要な状態にだけモータOFF制御は実行するためである。
【0083】
そして、モータOFFさせた後は、図6のフローチャートにおいて、(ステップ430:NO)→(ステップ480:NO)→(ステップ440)の順番で処理が実行されることになるので、図9に示すように、4輪の内の最初に増圧モードにする必要が生じた時点(t4)で、図6のステップ440では肯定判断となり、ステップ450の処理が実行されてモータON(FMT=1)とされるのである。
【0084】
なお、この場合も、図8に示す場合と同様に、タイマカウンタCTがMAXガード時間KTを経過する前にFMT=1とされたので、図6のステップ470に示すように、この時点(t4)でクリアされている(CT=0)。但し、4輪の内の最初に増圧モードにする必要が生じる前に、タイマカウンタCTがMAXガード時間KTを経過した場合には、そのCT≧KTとなったことをトリガとして、FMT=1とされる。
【0085】
以上説明したように、本実施例のアンチスキッド制御装置によれば、車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、マスタ圧カット弁11,12、制御弁21〜24、流出弁13,14を連通位置あるいは遮断位置に切替制御することによって、ホイールシリンダ圧の増減制御を行なう。なお、アンチスキッド制御が実行されていない通常時にはマスタ圧カット弁11,12及び制御弁21〜24は連通状態とされており、また流出弁13,14は遮断状態となっている。そのため、乗員のブレーキペダル15の踏み込みによるマスタシリンダ圧によってホイールシリンダ圧の増減制御が実行される。
【0086】
アンチスキッド制御が開始されると、(急増圧モード以外は)マスタ圧カット弁11,12は遮断状態となり、マスタシリンダ16からのブレーキ液圧を遮断する。アンチスキッド制御開始後、ホイールシリンダ圧を保持する際には、制御弁21〜24を遮断状態とし、且つ流出弁13,14を連通状態とする。この際、ポンプ9,10から吐出されるブレーキ液は、ポンプ9,10が流出弁13,14と並列に接続されているために、流出弁13,14を通過してリザーバ25,26に還流される。
【0087】
このアンチスキッド制御中におけるホイールシリンダ圧の減圧は、ホイールシリンダ5〜8のブレーキ液を抜くことによって行われるが、この際、流出弁13,14および制御弁21〜24は連通状態とされる。この減圧時においては、制御弁21〜24および流出弁13,14が連通状態とされることによって、ホイールシリンダ5〜8のブレーキ液がリザーバ25,26側の管路に返流される。すなわち、前述のように、ポンプ9,10と流出弁13,14が並列に接続されているため、ポンプ9,10によるリザーバ25,26からのブレーキ液の汲み上げと、流出弁13,14を通すブレーキ液のリザーバ25,26への返送とを同時に行え、ホイールシリンダ圧の増圧と減圧とにおけるブレーキ液の伝達も行うことができる。
【0088】
このように、ホイールシリンダ圧を増減制御することによってアンチスキッド制御を実行するのであるが、アンチスキッド制御手段による制御対象となっているいずれのホイールシリンダ5〜8に対しても増圧制御が不要な場合、上記実施例ではいずれのホイールシリンダ5〜8に対しても減圧制御が実行されている場合に限って、モータをOFFさせポンプ9,10からのブレーキ液の吐出を停止させている。
【0089】
アンチスキッド制御は、車輪スリップ状態を最適な状態に制御するものであるが、特に氷上等の低μ路ではホイールシリンダ圧を極力小さくする必要がある。減圧可能な圧力は、リザーバ25,26の背圧にポンプ吐出による脈動圧力を加えたものとなるため、本実施例では、図12にも示すように、モータをOFFさせてポンプ9,10からのブレーキ液の吐出を停止(吐出量「0」)させることで、ポンプ吐出による脈動圧力分を減少させ、その結果、減圧可能圧力を減少させることができる。したがって、低μ路での減圧制御時に有利である。
【0090】
但し、ホイールシリンダ圧を増圧させる場合には、ポンプ9,10によってリザーバ25,26から汲み上げられたブレーキ液をホイールシリンダ側へ供給して大きなホイールシリンダ圧を加えることが必要であるため、そのような状況でのポンプ吐出量の減少は不都合である。そのため、本実施例では、制御対象となっているいずれのホイールシリンダ5〜8に対しても減圧制御が実行されている場合に限って、上述したモータOFF、すなわちポンプ吐出停止を実行するのである。これは、アンチスキッド制御上、増圧制御が必要であるのに、それを無視してまでも減圧可能圧力を低下させることを優先する意味は少ないと考えられるからである。
【0091】
このように、本実施例のアンチスキッド制御装置によれば、ポンプ還流によって減圧する構成を採用し、ホイールシリンダ圧の減圧可能圧力を極力低くすることができるため、例えば低μ路走行時等において有利でありながら、ホイールシリンダ圧を増圧制御する際に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
【0092】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、以下のように種々変形可能である。
例えば、上記実施例においては、所定の条件が成立した場合に、モータをOFFさせて、ポンプ9,10からのブレーキ液の吐出を停止させたが、吐出量を減少させるようにしてもよい。吐出量を減少させても、やはり減圧可能圧力の成分であるポンプ脈動圧力(図12参照)を減少させることができるため、結果として減圧可能圧力の減少を実現できる。この場合のポンプ9,10からのブレーキ液の吐出量の減少調整は、例えば、モータに印加する電圧のディーティ比を低下させることによって実現することができる。
【0093】
また、上述したモータを停止させる制御については、単にOFFさせるのではなく、モータの駆動端子間をショートさせることによって実行したり、あるいはモータに逆電圧を印加することによって実行してもよい。このようにすれば、より短時間で停止させることが可能となり、停止制御の応答性の向上の面で好ましい。
【0094】
また、上述した実施例では、図1及び図2に示した油圧回路に対して本発明のアンチスキッド制御装置を適用した場合について説明した。しかし対象とする油圧回路は、図1、図2に示したものには限定されない。その他の適用可能な油圧回路構成として、例えば図10に示すようなものでもよい。
【0095】
図10に示したアンチスキッド制御装置の構成を説明する。
ブレーキペダル101は独自のリザーバ(図示せず)を有するマスタシリンダ102に連結されている。ブレーキペダル101を踏み込むことによりマスタシリンダ102に発生するブレーキ液圧は、後述する管路を通って右前輪に対する第1のホイールシリンダ103及び左後輪に対する第2のホイールシリンダ104へ伝達され、ブレーキ作用が行われる。
【0096】
マスタシリンダ2の出口ポートから延びる第1の管路120は分岐点100にて第1の枝管路121と第2の枝管路122に分岐し、第1の枝管路121の端部は第1のホイールシリンダ103に、第2の枝管路122の端部は第2のホイールシリンダ104にそれぞれ接続されている。第1の管路120におけるマスタシリンダ102と前記分岐点100との間には、マスタ圧カット弁105が配設されている。
【0097】
前記第2の枝管路122には、第1,第2の制御弁106,107が設けられており、第1の制御弁106は分岐点100側に、第2の制御弁107は第2のホイールシリンダ104側に配設されている。アンチスキッド制御時、通常では、第1の制御弁106は第1のホイールシリンダ103にかかるブレーキ液圧の制御を実行し、第2の制御弁107は第2のホイールシリンダ104にかかるブレーキ液圧の制御を実行することが多い。
【0098】
これら、第1,第2の制御弁106,107の間から、第2の管路130が延び、この第2の管路130の端部はリザーバ108に接続されている。そして、この第2の管路130には、第1の管路120側、すなわち第1,第2のホイールシリンダ103,104から第1,第2の枝管路121,122を通つて第2の管路130に流動するブレーキ液のリザーバ108への連通および遮断を制御する流出弁110が配設されている。また、流出弁110に並列にポンプ9が接続されている。このポンプ109は、前記リザーバ108内に貯留されているブレーキ液を汲み上げ、前記第2の枝管路122の第1の制御弁106と第2の制御弁107との間へ吐出する。
【0099】
第1の管路120において、マスタ圧カット弁105から第1のホイールシリンダ103との間から第4の管路150が延び、この第4の管路150の端部はマスタシリンダ102からマスタ圧カット弁105の間の管路に接続されている。第4の管路150は、逆止弁112を有しており、この逆止弁112は、第1のホイールシリンダ103側からマスタシリンダ102側へのブレーキ液の流動のみを許容するように設定されている。
【0100】
第1の管路120における第2の枝管路122において、第2の制御弁107と第2のホイールシリンダ104との間から第5の管路160が延びている。この第5の管路160の端部は、マスタシリンダ102とマスタ圧カット弁105との間に接続されている。第5の管路160は逆止弁113を有しており、この逆止弁113は第2のホイールシリンダ104側からマスタシリンダ102側へのブレーキ液の流動のみを許容するように設定されている。なお、第4の管路150と第5の管路160において、マスタシリンダ102側の一部管路は、図示の如く共通の管路にて形成されている。
【0101】
また、マスタ圧カット弁105、第1,第2の制御弁106,107および流出弁110はそれぞれ2ポート2位置弁であり、その弁体は、図示しない制御部により電力を供給された時、ソレノイドが励磁することによって変化してボートを切替える。なお、各弁の非作動時では、ポートは図示位置にある。なお、このような電磁弁の他に、機械式弁を採用するようにしてもよい。
【0102】
以上の構成を有する本別実施例は、次のように作動する。
マスタ圧カット弁105、第1,第2の制御弁106,107および流出弁110はそれぞれ、図11に示されるようにしてそれぞれの管路を連通あるいは遮断する。
【0103】
まず、通常のブレーキ作用時、これらの各弁105,106,107,110は図10の図示位置にあり、図11aに示すように、マスタ圧カット弁105はマスタシリンダ2と分岐点100側とを連通し、第1,第2の制御弁106,107の双方とも連通状態に制御される。これにより、ブレーキペダル101に踏力か加えられることによってマスタシリンダ102にて発生するマスタシリンダ圧が第1の管路120にて第1のホイールシリンダ103および第2のホイールシリンダ104の双方に伝達される。
【0104】
続いて、アンチスキッド制御が実行される場合には、第1,第2のホイールシリンダ103,104に加わるブレーキ液圧は、それぞれ図11b〜hに示すように保持・増圧あるいは減圧の各アンチスキッド制御モードに制御される。各モードに制御される際の各弁105,106,107,110の制御状態を以下に説明する。なお、通常ではこのアンチスキッド制御が開始されると同時にポンプ109は回転を開始し、リザーバ108内に貯留しているブレーキ液の吸い込みおよび各ホイールシリンダ103,104側に向けてのブレーキ液の吐出を実行する。
【0105】
図11bに示すように、両ホイールシリンダ103,104の双方の圧力を保持する制御モードにおいては、マスタ圧カット弁105、第1,第2の制御弁106,107を遮断状態とし、流出弁110を連通状態とする。なお、アンチスキッド制御中においてはマスタシリンダ102によって発生している高圧すぎるマスタシリンダ圧を遮断するために、マスタ圧カット弁105は遮断状態に制御されることが多い。また、この際、流出弁110は連通状態となっているか、これによって、ポンプ109から吐出されるブレーキ液をリザーバ108に還流することができる。すなわち、ポンプ109が流出弁110と並列に接続され、ポンプ109からの吐出ブレーキ液の還流路か形成されていることによって、ポンプ109から吐出されるブレーキ液が、通常マスタシリンダ102および各管路中に高圧に貯留されることがなくなり、安全性を向上させた前記保持モードを実現することができる。
【0106】
次に、図11dに示すように、両ホイールシリンダ103,104の双方の圧力を減圧する制御モードについて説明する。第1,第2の制御弁106,107および流出弁110はともに連通状態であり、各ホイールシリンダ103,104のブレーキ液は、第1の管路120側から第2の管路130側に流動可能である。また、第2の管路130に流動したブレーキ液は、流出弁110を通過してリザーバ108に収容される。この際にもポンプ109からブレーキ液が吐出され続けているが、各ホイールシリンダ103,104内におけるブレーキ液の解放の速さの方が早いので、各ホイールシリンダ103,104は確実に減圧される。このようなホイールシリンダ圧の減圧は、例えば車輪のロック状態のように車輪のスリップ率が高くなった場合に実行され、車輪速度の回復を促すために行われる。
【0107】
次に、図11cおよびeに示すように、第1,第2のホイールシリンダ103,104のいずれか一方の圧力を保持し、残る一方の圧力を減圧するモードにおける作動を説明する。いずれの場合においても流出弁110は連通されており、また、第1,第2の制御弁106,107において、保持モードとするホイールシリンダに対する弁は遮断状態とされ、減圧モードとするホイールシリンダに対する弁は連通状態とされる。すなわち、第1のホイールシリンダ103の圧力を保持モードとし、第2のホイールシリンダ104の圧力を減圧モードとする際には、第1の制御弁106は遮断状態、第2の制御弁107は連通状態とされる。また、第1のホイールシリンダ103の圧力を減圧モードとし、第2のホイールシリンダ104の圧力を保持モードとする際には、第1の制御弁106は連通状態、第2の制御弁107は遮断状態とされる。このように、各ホイールシリンダ103,104の圧力モードが異なるように制御される場合というのは、例えば車両の左右の車輪下において路面状態が異なることによって、左右車輪におけるスリップ率すなわち左右車輪に対する制動状態が相違する場合等を挙げることができる。この際には、各ホイールシリンダ103,104の圧力モードを異なるように制御し、左右車輪を最適な制動状態になるようにする。
【0108】
また、左右車輪下の路面状態が異なる際には、図11fおよびgに示すように、第1,第2のホイールシリンダ103,104の一方の圧力を保持し、残る一方の圧力を増圧するモードを用いる場合もある。この際の作動を説明する。いずれの場合においても流出弁110は遮断されており、また、第1,第2の制御弁106,107において、保持モードとするホイールシリンダに対する弁は遮断状態とされ、増圧モードとするホイ−ルシリンダに対する弁は連通状態とされる。すなわち、第1のホイールシリンダ103の圧力を増圧モードとし、第2のホイールシリンダ104の圧力を保持モードとする際には、第1の制御弁106は連通状態、第2の制御弁107は遮断状態とされる。また、第1のホイールシリンダ103の圧力を保持モードとし、第2のホイールシリンダ104の圧力を増圧モードとする際には、第1の制御弁106は遮断状態、第2の制御弁107は連通状態とされる。
【0109】
このように、第1のホイールシリンダ103と第2のホイールシリンダ104とは、互いに異なる独立した圧力モードを採ることができるが、これは、各ホイールシリンダ103,104に対応した各制御弁106,107が存在し、この制御弁106,107を独立した作動状態に制御することができるからである。
【0110】
次に、図11hに示すモード、すなわち右前輪に対する第1のホイールシリンダ103を増圧モード、左後輪に対する第2のホイールシリンダ104を減圧モードに制御する際の各弁の作動状態について説明する。上述のように車両の右側輪下、左側輪下の路面状態がそれぞれ異なる場合、各ホイールシリンダ103,104に対するアンチスキッド制御モードは異なることがある。例えば右側輪の車輪下の路面か高μ路、左側輪の路面下が低μ路であるとすると、右側の車輪に対応する第1のホイールシリンダ103には大きなブレーキ液圧を加えて大きな制動力を発生したい要望があるし、左側の車輪に対応する第2のホイールシリンダ104は減圧制御して車輪速度を回復し、適切なスリップ状態を確保したい。なお、通常車両の制動時では、車重移動等の要因により後輪より前輪の方が大きな制動力を発揮することができるため、前輪のホイールシリンダにできるだけ高圧力をかけるようにしたい。
【0111】
このような点を鑑みて図11hに示す制御モードが存在する。この制御モード時にはアンチスキッド制御中にも関わらずマスタ圧カット弁105は連通状態に制御され、第1のホイールシリンダ103にマスタシリンダ圧を加える。これによって、第1のホイールシリンダ103は増圧され、車輪下の路面状況に沿つた大きな制動力を発揮する。また、第1の制御弁106は遮断状態に制御される。これによって、マスタシリンダ圧の第2のホイールシリンダ104側への伝達を遮断している。第2の制御弁107および流出弁110は、それぞれ連通状態に制御される。これによって、第2のホイールシリンダ104に加わっていたブレーキ液は、リザーバ108に還流される。また、ポンプ109からのブレーキ液もリザーバ108に還流される。このように第2のホイールシリンダ104は減圧制御される。
【0112】
このように構成された別実施例のアンチスキッド制御装置においても、例えば低μ路走行時のアンチスキッド制御中において、いずれのホイールシリンダ103,104に対しても増圧制御が不要な場合に限って、モータをOFFさせポンプ109からのブレーキ液の吐出を停止させることで、ポンプ吐出による脈動圧力分を減少させ、その結果、減圧可能圧力を減少させることができる。したがって、低μ路での減圧制御時に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のシステム構成を示す概略説明図である。
【図2】 簡略化モデルとして一輪に対しての油圧回路を示す油圧回路図である。
【図3】 ホイールシリンダ圧を制御する際における各弁の動作を示す説明図である。
【図4】 実施例におけるアンチスキッド制御のメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】 実施例における制御モード判定処理を示すフローチャートである。
【図6】 実施例におけるモータ出力処理を示すフローチャートである。
【図7】 実施例における制御外モードとアンチスキッド制御における制御中モードの内容を示す説明図である。
【図8】 実施例におけるモータ出力に係る作用を説明するためのタイムチャートである。
【図9】 実施例におけるモータ出力に係る作用を説明するためのタイムチャートである。
【図10】 別実施例のシステム構成を示す概略説明図である。
【図11】 別実施例のホイールシリンダ圧を制御する際における各弁の動作を示す説明図である。
【図12】 ホイールシリンダの減圧可能圧力を示す説明図である。
【符号の説明】
1…右前輪 2…左後輪 3…左前輪 4…石後輪
5,6,7,8…ホイールシリンダ 9,10…ポンプ
11,12…マスタ圧カット弁 13,14…流出弁
15…ブレーキペダル 16…マスタシリンダ
21,22,23,24…制御弁 25,26…リザーバ
40…電子制御装置(ECU) 41…イグニッションスイッチ
45…ストップスイッチ
101…ブレーキペダル 102…マスタシリンダ
103,104…ホイールシリンダ 105…マスタ圧カット弁
106…第1の制御弁 107…第2の制御弁
108…リザーバ 109…ポンプ
110…流出弁 112,113…逆止弁
120…第1の管路 121…第1の枝管路
122…第2の枝管路 130…第2の管路

Claims (9)

  1. 乗員のブレーキペダルの踏み込みによりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、
    該マスタシリンダからのブレーキ液圧をホイールシリンダに送るための第1の管路と、
    該第1の管路に配設され、前記マスタシリンダからのブレーキ液の流路を連通・遮断可能なマスタ圧カット弁と、
    前記第1の管路の、前記マスタ圧カット弁の下流に配設され、前記ホイールシリンダへのブレーキ液の流路を連通・遮断可能な制御弁と、
    前記第1の管路における前記マスタ圧カット弁と前記制御弁との間から延び、ブレーキ液を貯留するリザーバと接続される第2の管路と、
    前記第2の管路に接続され、前記第2の管路におけるブレーキ液の流路を連通・遮断可能な流出弁と、
    該流出弁に並列に接続され、前記リザーバ内のブレーキ液を汲み上げて前記ホイールシリンダへ向けて圧送可能なポンプと、
    車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、前記各弁を連通位置あるいは遮断位置に切替制御することによって、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧の増減制御を行なうアンチスキッド制御手段と
    を備えるアンチスキッド制御装置であって、
    さらに、前記アンチスキッド制御手段による制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な場合には、前記ポンプからのブレーキ液の吐出量を減少させる吐出量調整手段を備えたことを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  2. 請求項1に記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記第1の管路は、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧を、前輪に配設される第1のホイールシリンダおよび後輪に配設される第2のホイールシリンダに送るために中途から分岐した第1の枝管路と第2の枝管路とを有し、
    前記マスタ圧カット弁は、前記第1の管路における前記マスタシリンダと前記第1及び第2の枝管路が分岐する分岐点との間に配設されており、
    前記制御弁は、前記第2の枝管路に配設された第1の制御弁と、前記第2の枝管路における前記第1の制御弁よりも前記第2のホイールシリンダ寄りに配設された第2の制御弁とからなり、
    前記第2の管路は、前記第1の制御弁と第2の制御弁との間から延び、ブレーキ液を貯留するリザーバと接続されていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載のアンチスキッド制御装置において、 車両の走行路面が所定の低摩擦係数路面であるかどうかを判断する路面判断手段を備え、
    前記吐出量調整手段は、該路面判断手段によって低摩擦係数路面であると判断された場合に限って、前記ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行する手段として構成されていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  4. 請求項1,2又は3に記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記吐出量調整手段は、前記制御対象となっているいずれのホイールシリンダに対しても増圧制御が不要な状態が所定時間持続した場合に初めて、前記ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行することを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記ポンプは、外部から印加される電圧で駆動するモータによってその吐出量が変化するものであり、
    前記吐出量調整手段は、前記モータに印加する電圧のディーティ比を低下させることによって、前記ブレーキ液の吐出量の減少調整を実行する手段として構成されていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  6. 請求項5に記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記吐出量調整手段は、前記モータへの電圧印加を停止させて前記ポンプからブレーキ液を吐出させない停止制御を、前記吐出量の減少調整の一つとして実行する手段として構成されていることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  7. 請求項6に記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記吐出量調整手段による停止制御は、前記モータの駆動端子間をショートさせることによって実行されることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  8. 請求項6に記載のアンチスキッド制御装置において、
    前記吐出量調整手段による停止制御は、前記モータに逆電圧を印加することによって実行されることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
  9. 乗員のブレーキペダルの踏み込みによりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、
    該マスタシリンダからのブレーキ液圧を受けて車輪制動力を発生するホイールシリンダと、
    該ホイールシリンダへ向けてブレーキ液を吐出するポンプと、
    該ポンプの吸引側に接続され、ブレーキ液を貯留するリザーバと、
    前記マスタシリンダからのブレーキ液圧を前記ホイールシリンダに送るための第1の管路と、
    該第1の管路に配設され、前記マスタシリンダからのブレーキ液の流路を連通・遮断可能なマスタ圧カット弁と、
    前記第1の管路の、前記マスタ圧カット弁の下流に配設され、前記ホイールシリンダへのブレーキ液の流路を連通・遮断可能な制御弁と、
    前記第1の管路における前記マスタ圧カット弁と前記制御弁との間から延び、前記リザーバと接続される第2の管路と、
    前記第2の管路に接続され、前記第2の管路におけるブレーキ液の流路を連通・遮断可能且つ前記ポンプと並列に接続された流出弁と、
    車輪のスリップ状態が所定以上となった場合に、前記流出弁あるいは前記ポンプの作動状態を制御することによって、前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧の増減制御を実行するアンチスキッド制御手段とを備え、
    該アンチスキッド制御手段は、
    前記流出弁を遮断状態として前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を増圧する増圧手段と、
    前記流出弁を連通断状態として前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を減圧する第1の減圧手段と、
    前記ポンプに供給される駆動電流のデューディ比を変化させてポンプ吐出量を減少させることによって前記ホイールシリンダにかかるブレーキ液圧を減圧する第2の減圧手段とを備えることを特徴とするアンチスキッド制御装置。
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