JP3698212B2 - 難燃性網状構造体と製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、難燃性で燃焼時に有毒ガスの発生が少なく、かつ優れたクッション性を有する難燃性網状構造体及び、その製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、布団、家具、ベット、鉄道、自動車等のクッション材で、発泡ウレタン、非弾性捲縮繊維詰綿、及び非弾性捲縮繊維を接着した樹脂綿や硬綿などが使用されている。
【0003】
しかしながら、発泡−架橋型ウレタンはクッション材としての耐久性は良好だが、透湿透水性に劣り蓄熱性があるため蒸れやすく、かつ、熱可塑性ではないためリサイクルが困難となり焼却される場合、焼却炉の損傷が大きく、かつ、有毒ガス除去に経費が掛かる。このため埋め立てされることが多くなったが、地盤の安定化が困難なため埋め立て場所が限定され経費も高くなっていく問題がある。また、加工性は優れるが製造中に使用される薬品の公害問題などもある。
また、熱可塑性ポリエステル詰綿では繊維間が固定されていないため、使用時形態が崩れたり、繊維が移動して、かつ、捲縮のへたりで嵩高性の低下や弾性力の低下が問題になる。
【0004】
ポリエステル繊維を接着剤で接着した樹脂綿、例えば接着剤にゴム系を用いたものとして特開昭60−11352号公報、特開昭61−141388号公報、特開昭61−141392号公報等がある。また、架橋ウレタンを用いたものとして特開昭61−137732号公報等がある。これらのクッション材は耐久性に劣り、かつ、熱可塑性でなく、単一組成でもないためリサイクルも出来ない等の問題、及び加工性の煩雑さや製造中に使用される薬品の公害問題などもある。
【0005】
ポリエステル硬綿、例えば特開昭58−31150号公報、特開平2−154050号公報、特開平3−220354号公報等があるが、用いている熱接着繊維の接着成分が脆い非晶性のポリマーを用いるため(例えば特開昭58−136828号公報、特開平3−249213号公報等)接着部分が脆く、使用中に接着部分が簡単に破壊されて形態や弾力性が低下するなど耐久性に劣る問題がある。改良法として、交絡処理する方法が特開平4−245965号公報等で提案されているが、接着部分の脆さは解決されず弾力性の低下が大きい問題があり、また、加工時の煩雑さもある。さらには接着部分が変形しにくくソフトなクッション性を付与しにくい問題もある。このため、接着部分を柔らかく、かつある程度変形しても回復するポリエステルエラストマーを用い、芯成分に非弾性ポリエステルを用いた熱接着繊維が特開平4−240219号公報で、同繊維を用いたクッション材がWO−91/19032号公報、特開平5−156561号公報、特開平5−163654号公報等で提案されている。この繊維構造物に使用される接着成分がポリエステルエラストマーのソフトセグメントとしてはポリアルキレングリコールの含有量が30〜50重量%、ハードセグメントの酸成分にテレフタル酸を50〜80モル%含有し、他の酸成分組成としてイソフタル酸を含有して非晶性が増すことになり、融点も180℃以下となり低溶融粘度として熱接着部分の形成を良くしてアメーバー状の接着部を形成しているが塑性変形しやすいため、及び芯成分が非弾性ポリエステルのため、特に加熱下での塑性変形が著しくなり、耐熱抗圧縮性が低下する問題がある。なお、この繊維は特公昭60−1404号公報に記載された繊維と同じなので従来技術が改良されていない。
【0006】
土木工事用に使用する熱可塑性のオレフィン網状構造体が特開昭47−44839号公報に開示されているが、細い繊維から構成したクッション材とは異なり表面が凸凹でタッチが悪く、素材がオレフィンのため耐熱耐久性が著しく劣りクッション材には使用できないものである。また、特公平3−17666号公報には繊度の異なる吐出糸条を互いに融着してモール状物を作る方法があるがクッション材には適さない網状構造体である。特公平3−55583号公報には、ごく表面のみ冷却前に回転体等の細化装置で細くする方法が記載されている。この方法では表面をフラット化できず、厚みのある細い線条層を作ることは出来ない。したがって、座り心地の良好なクッション材にはならない。特開平1−207462号公報では、塩化ビニール製のフロアマットの開示があるが、室温での圧縮回復性が悪く、かつ、燃えにくい素材だが一旦燃え出すと燃焼時の有毒ガス発生問題があり、耐熱性が悪いのでクッション材としては好ましくないものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決し、難燃性で燃焼時に有毒ガスの発生が少なく、リサイクルが可能で、かつ、形態保持性、クッション性にも優れた蒸れ難いクッション材に適した難燃性網状構造体及び製法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記第を解決するための手段、即ち本発明は、熱可塑性弾性樹脂と燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなる難燃性ポリエステルとを混合した組成物からなる線条であって、前記熱可塑性樹脂のソフトセグメント量A(対混合組成物:重量%)と燐含有量B(混合組成物中の燐原子含有量ppm)が下記(1)及び(2)式の関係を同時に満足し、繊度が100〜100000デニールの連続線条を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着された3次元網状構造を形成された網状構造体であり、見掛け密度が0.005〜0.20g/cm3 であることを特徴とする難燃性網状構造体および
(1)5≦A≦80
(2)500×10-0.135A ≦B≦104
熱可塑性弾性樹脂と燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなるポリエステルとを混合した組成物を複数のオリフィスを持つノズルから融点より10〜50℃高い溶融温度でノズルより下方に向けて吐出し、吐出させた線条を曲がりくねらせ、溶融状態で互いに接触させて融着し3次元構造を形成しつつ、引き取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめ網状構造を形成することを特徴とする難燃性網状構造体の製法である。
【0009】
本発明における熱可塑性弾性樹脂とは、ソフトセグメントとして分子量300〜5000のポリエーテル系グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコール等をブロック共重合したポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性弾性樹脂とすることで、再溶融により再生が可能となるため、リサイクルが容易となる。例えば、ポリエステル系エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリアルキレンジオールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体、または、脂肪族ポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエステルブロック共重合体が例示できる。ポリエステルエーテルブロック共重合体のより具体的な事例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2・6ジカルボン酸、ナフタレン2・7ジカルボン酸、ジフェニル4・4’ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1・4シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、琥珀酸、アジピン酸、セバチン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸または、これらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1・4ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1・1シクロヘキサンジメタノール、1・4シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、及び平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオールの内少なくとも1種から構成される3元ブロック共重合体である。ポリエステルエステルブロック共重合体としては、上記ジカルボン酸とジオール及び平均分子量が約300〜5000のポリラクトン等のポリエステルジオールの内少なくとも各1種から構成される3元ブロック共重合体である。熱接着性、耐加水分解性、伸縮性、耐熱性等を考慮すると、ジカルボン酸としてはテレフタル酸、または、及びナフタレン2・6ジカルボン酸、ジオール成分としては1・4ブタンジオール、ポリアルキレンジオールとしてはポリテトラメチレングリコールの3元ブロック共重合体、または、ポリエステルジオールとしてポリラクトンの3元ブロック共重合体が特に好ましい。特殊な例では、ポリシロキサン系のソフトセグメントを導入したものも使うことが出来る。また、上記エラストマーに非エラストマー成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明の熱可塑性弾性樹脂に包含される。ポリアミド系エラストマーとしては、ハードセグメントにナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等及びそれらの共重合ナイロンを骨格とし、ソフトセグメントには、平均分子量が約300〜5000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体等のポリアルキレンジオールの内少なくとも1種から構成されるブロック共重合体を単独または2種類以上混合して用いてもよい。さらには、非エラストマー成分をブレンドされたもの、共重合したもの等も本発明に使用できる。
なお、本発明の熱可塑性弾性樹脂の融点は耐熱耐久性が保持できる140℃以上が好ましく、160℃以上のものを用いると耐熱耐久性が向上するのでより好ましい。なお、必要に応じ、抗酸化剤や耐光剤等を添加して耐久性を向上させることが出来る。
【0010】
本発明における燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなる難燃性ポリエステル(以下難燃性ポリエステルと略す)とは、ポリエチレンテレフタレート(PETと略す)、ポリブチレンテレフタレート(PBTと略す)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCHDTと略す)、ポリエチレンナフタレート(PENと略す)、ポリブチレンナフタレート(PBNと略す)及びそれらの共重合ポリエステル、例えばポリエチレンイソフタレート(PEIと略す)とPET等を主たる繰り返し単位とするポリエステルに燐を含有する難燃剤を重縮合、混合成形により導入または、付与して得られたポリエステルである。しかして、燐含有エステル形成性化合物を共重合させたものが好ましく、例えば、特開昭51−82392号公報、特開昭55−7888号公報、特公昭55−41610号公報等に例示されたものが挙げられる。しかし、下記の化1で示されるカルボン酸を酸成分の一部として共重合したポリエステルが特に好ましい。
【0011】
【化1】
Figure 0003698212
【0012】
なお、化1において、R1 、R2 は同じかまたは、相異なる基で水素原子(必要に応じてハロゲン原子)または炭素数6以下の炭化水素基、R3 、R4 は同じかまたは相異なる基で水素原子、炭素数7以下の炭化水素基または−(R5 O)r Hで示される基を示す。R5 はエチレン、プロピレン、またはブチレン基を、r は1〜10の整数、l 、m は0または1〜4の整数、n は0、1または2である。その他、ポリエステルの製造時に使用して難燃性を改質するための燐含有難燃剤としては、例えば各種燐酸エステル、亜燐酸エステル、ホスホン酸エステル(必要に応じハロゲン元素を有する上記燐酸エステル類)、もしくはこれら燐化合物から誘導される重合物、または下記の化2に示される化合物をジオール成分の全部または一部とする重合度6以上のポリアリールフォスフォネート等が挙げられる。ここで、R6 、R7 は水素または低級アルキル基、p 、q は0〜4の整数である。
【0013】
【化2】
Figure 0003698212
【0014】
本発明の難燃性ポリエステルは、各種改質剤、添加剤、着色剤等を必要に応じ添加できる。本発明の難燃性網状構造体は燐を含有する難燃性ポリエステルを構成成分の一部に使用する。この理由は、安全性の観点から、火災時に発生するシアンガス、ハロゲンガス等の致死量の少ない有毒なガスを出来るだけ少なくすることにある。このため本発明の難燃性網状構造体の燃焼ガスの毒性指数は6以下が好ましく、より好ましくは5以下である。また、側地及びワディング層にポリエステル繊維を使用した場合はそのまま分別せず再生リサイクルできるし、他の素材と組み合わせて使用された場合は処分の際、焼却し易いものであることを考慮したものである。
【0015】
本発明の難燃性網状構造体は、熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルとを混合した樹脂からなる繊度が100〜100000デニールの連続した線条を曲がりくねらせ該線条同士を接触させ、接触部を融着して3次元網状構造体を形成している。このことで大きい応力で変形を与えても、難燃性ポリエステル成分により抗圧縮性を示しつつ弾性限界を越えない変形を生じ、熱可塑性弾性樹脂成分は難燃性ポリエステルが弾性回復限界を越えない応力において部分的に大変形しつつ3次元網状構造体全体が変形して応力を吸収し、応力が解除されると難燃性ポリエステル成分が弾性を回復し、熱可塑性弾性樹脂成分はゴム弾性を発現して、構造体は元の形態に回復することが出来る。このことで、圧縮時の応力−歪み曲線(SS曲線)が応力に対しての変形歪みが直線的に変化し、座った時の沈み込みが適度で、振動を受けたときの上下運動による応力変化を床つき感なく適度に沈み込み臀部を低い反発力で支える好ましいショックアブソーバーの働きを発現できるクッション材としては好ましい特性を付与できる。さらには、良好な耐へたり性も保持できる。熱可塑性弾性樹脂のみからなる網状構造体では、柔らかいため座った時及び振動による上下運動での沈み込みを大きくし易い欠点を本発明では解決し、体型保持性が向上できる。公知の非弾性樹脂のみからなる線条で構成したクッション材では、著しい反発力を示し床つき感が大きくなり、圧縮変形による塑性変形も生じて回復性が不十分となり難燃性、耐久性も劣る。なお、線条が連続していない場合は、接着点が応力の伝達点となるため接着点に著しい応力集中が起こり構造破壊を生じ前記従来技術にも例示した特開昭60−11352号公報、特開昭61−137732号公報、WO91−19032号公報の如く耐熱耐久性が劣り好ましくない。融着していない場合は、形態保持が出来ず、構造体が一体で変形しないため、応力集中による疲労現象が起こり耐久性が劣ると同時に、形態が変形してしまうので好ましくない。本発明のより好ましい融着の程度は、線条が接触している部分の大半が融着した状態であり、特に好ましくは接触部分が全て融着した状態である。なお、本発明の構造体を形成する線条の繊度は100デニール以下では抗圧縮強力が低くなり反発力が低下するので好ましくない。100000デニール以上では網状体の個々の抗圧縮性は大きいが構成本数が少なくなり力の分散が悪くなり100Kg/cm2 以上の著しく大きい圧縮力を受けた場合応力集中によるへたりが発生するので使用部分が制限される場合がある。好ましくは300〜50000デニール、より好ましくは500〜30000デニールである。なお、本発明においては繊度が異なる線条をその樹脂の混合比、見掛け密度との組み合わせで最適な構成とする方法も好ましい構成として選択できる。本発明の熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルを混合した樹脂にすることで上記性能を発現させることでクッション性能を保持し、かつ、難燃性を付与できるものとなる。
【0016】
本発明の難燃性網状構造体を形成する熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルとを混合した組成からなる樹脂は、該混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合と混合樹脂中の燐原子含有量が次式混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合(A重量%)と混合樹脂中の燐原子含有量(Bppm)の関係式
5≦A≦80 (1)
500×10-0.135A ≦B≦104 (2)
を同時に満たす条件で混合させたものが好ましい。
【0017】
本発明の難燃性網状構造体を構成する線条の断面形状は特に限定されないが、中空断面や異形断面にすることで、抗圧縮性や嵩高性を付与できるので低繊度化したい場合には特に好ましい。抗圧縮性は用いる素材のモジュラスにより調整して、柔らかい素材では中空率や異形度を高くし初期圧縮応力の勾配を調整できるし、ややモジュラスの高い素材では中空率や異形度を低くして座り心地が良好な抗圧縮性を付与する。中空断面や異形断面の他の効果として中空率や異形度を高くすることで、同一の抗圧縮性を付与した場合、より軽量化が可能となり、自動車等の座席に用いると省エネルギー化ができ、布団等の場合は、上げ下ろしの時の取り扱い性が向上する。
【0018】
本発明の難燃性網状構造体の平均見掛け密度はクッション材としての機能が発現出来る0.005g/cm3 〜0.02g/cm3 が好ましい。0.005g/cm3 未満では反発力が失われるのでクッション材には不適当であり、0.20g/cm3 を越えると反発力が高すぎて座り心地が悪くなり好ましくない。本発明のより好ましい見掛け密度は0.01〜0.10g/cm3 であり、特に好ましくは0.03〜0.06g/cm3 である。しかして、本発明の難燃性網状構造体は、繊度の異なる線条からなる各層の見掛け密度を変え好ましい特性を付与することが出来る。例えば、繊度の細い表面層と繊度の太い基本層からなる場合、繊度の細い表面層の密度はやや高くして構成本数を多くし線条の一本が受ける応力を少なくして応力の分散を良くし、かつ、臀部を支えるクッション性も向上させることで座り心地を向上させ、また、繊度の太い基本層はそのなかでも繊度の太くして少し硬くし、振動吸収と体型保持を受け持つ層とフレームが接する面はより緻密な構造とするためにやや繊度を補足して高密度とすることによりフレーム面から受ける振動や反発応力をクッション層に均一に伝達し、クッション層全体がエネルギー変換できるようにし、座り心地を良くするとともにクッションの耐久性も向上させることもできる。また、座席のサイドの厚みと張りを付与させるために部分的に繊度をやや細くして高密度化することもできる。このように各層はその目的に応じ好ましい密度と繊度を任意に選択できる。なお、網状構造体の各層の厚みは、特に限定されないが、クッション体としての機能が発現されやすい3mm以上とするのが好ましく5mm以上とするのがより好ましい。
【0019】
本発明においては構造体面は曲がりくねらせた線条が途中で45゜以上曲げられ実質的に面がフラット化されて接触部の大部分が融着している表層部を有することが好ましい。このことで、網状構造体面の該線条の接触点が大幅に増加して接着点を形成するため、座った時の臀部の局部的な外力も臀部に異物感を与えずに構造面で受け止められ面構造が全体で変形して内部の構造体全体も変形して応力を吸収し、応力が解除されると弾性樹脂のゴム弾性が発現して、構造体は元の形態に回復することが出来る。実質的にフラット化されていない場合、臀部に異物感を与え、表面に局部的な外力が掛かり、表面の線条及び接着点部分までに選択的に応力集中が発生する場合があり、このような外力に対しては熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルが混合された樹脂による線条では応力集中による疲労が発生して耐へたり性が低下する場合がある。表面がフラット化された場合、ワディング層を使用しないで、または非常に薄いワディング層を積層し、側地で表面を覆い自動車用、鉄道用等の座席や椅子またはベット用、ソファー用、布団用等のクッションマットにすることが出来る。しかし、表面がフラット化されていない場合は、網状構造体の表面に比較的厚め(好ましくは10mm以上)のワディング層を積層して側地で覆って座席やクッションマットを形成する必要がある。必要に応じてワディング層との接着または側地との接着は表面がフラットな場合は容易であるが、フラット化されていない場合は凸凹のため接着が不完全になる。
【0020】
次に本発明の製法について述べる。本発明網状構造体は、熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルとを混合した組成からなる樹脂であり、該混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合と混合樹脂中の燐原子含有量が次式混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合(Awt%)と混合樹脂中の燐原子含有量(Bppm)の関係式
5≦A≦80 (1)
500×10-0.135A ≦B≦104 (2)
を同時に満たす条件で混合し、それを一般的な溶融押出機を用いて、複数のオリフィスを持つノズルから難燃性ポリエステルの融点より10℃以上高い溶融温度で該ノズルより下方に向けて吐出させ、溶融状態の吐出線条を曲がりくねらせて互いに接触させて大部分の接触部を融着させ3次元構造を形成しつつ、引き取り装置で挟み込み、ついで冷却槽で冷却せしめて網状構造体を形成する難燃性網状構造体の製法である。吐出時の溶融温度が難燃性ポリエステルの融点より10℃未満高い温度では、吐出線条が接触するまでに冷却されて融着し難くなる。50℃を越える溶融温度で吐出すると溶融粘度が低くなり、細い線条となりループ形成して接触し融着する間にループが平面化し3次元構造を形成できなくなる。また、細い線条となるのでループ径も小さくなり、オリフィスの孔間ピッチが広い場合は線条が互いに接触しない場合もある。本発明の好ましい溶融温度は難燃性ポリエステルの融点より15℃〜40℃高い温度であり、より好ましくは20℃〜30℃高い温度である。オリフィス形状は特に限定されないが、異形断面(例えば三角形、Y型、星型等の断面2次モーメントが高くなる形状)や中空断面(例えば三角中空、丸型中空、突起つきの中空等の形状)とすることで溶融状態の吐出線条が形成する3次元構造が流動緩和し難くし、逆に接触点での流動時間を長く保持して接着点を強固にできるので特に好ましい。特開平1−2075号公報に記載の接着のための加熱をする場合、3次元構造が緩和し易くなり平面的構造化し、3次元立体構造化が困難となるので好ましくない。構造体の特性向上効果としては、見掛けの嵩を高くでき軽量化になり、また抗圧縮性が向上し、弾発性も改良できへたり難くなる。中空断面では中空率が80%を越えると断面が潰れ易くなるので、好ましくは軽量化の発現が出来る10%以上70%以下、より好ましくは20%以上60%以下である。オリフィスの孔間ピッチは線条が形成するループが充分接触出来るピッチとする必要がある。緻密な構造にするには孔間ピッチを短くし、粗密な構造にするには孔間ピッチを長くする。本発明の孔間ピッチは好ましくは3mm〜20mm、より好ましくは5mm〜10mmである。本発明では所望に応じ異密度化や異繊度化もできる。列間のピッチまたは孔間のピッチも変えた構成、及び列間と孔間の両方のピッチも変える方法等で異密度層を形成できる。また、オリフィスの断面積を変えて吐出時の圧力損失差を付与すると、溶融した熱可塑性弾性樹脂を同一ノズルから一定の圧力で押し出される吐出量が圧力損失の大きいオリフィスほど少なくなる原理を用いて異繊度化出来る。ついで、引き取りネットで溶融状態の3次元立体構造体両面を挟み込み、両面の溶融状態の曲がりくねった吐出線条を30゜以上折り曲げて変形させて表面をフラット化すると同時に曲げられていない吐出線条との接触点を接着して構造を形成後、連続して冷却媒体(通常は室温の水を用いるのが冷却速度を速くでき、コスト面でも安くなるので好ましい)で急冷して本発明の3次元立体網状構造体を得る。ついで、水切り乾燥するが冷却媒体中に界面活性剤等を添加すると、水切りや乾燥がし難くなったり、熱可塑性弾性樹脂が膨潤することもあり好ましくない。本発明の好ましい方法としては、一旦冷却後、疑似結晶化処理を行う。疑似結晶化処理温度は、少なくとも融点(Tm)より10℃以上低く、Tanδのα分散立ち上がり温度(Tαcr)以上で行う。この処理で融点以下に吸熱ピークを持ち、疑似結晶化しないもの(吸熱ピークを有しないもの)より耐熱耐へたり性が著しく向上する。本発明の好ましい疑似結晶化処理温度は(Tαcr+10℃)から(Tm−20℃)である。単なる熱処理により疑似結晶化させても耐熱耐へたり性が向上するが、さらには、一旦冷却後、10%以上の圧縮変形を付与してアニーリングすることで耐熱耐へたり性が著しく向上するのでより好ましい。また、一旦冷却後、乾燥工程を経る場合、乾燥温度をアニーリング温度とすることで同時に疑似結晶化処理を行うことが出来る。また、別途疑似結晶化処理を行うこともできる。ついで、所望の長さまたは形状に切断してクッション材に用いる。なお、ノズル面と樹脂を固化させる冷却媒体上に設置した引き取りコンベアと距離、樹脂の溶融粘度、オリフィスの孔径と吐出量などにより所望のループ径や繊径を決められる。冷却媒体上に設置した間隔が調整可能な一対の引き取りコンベアで溶融状態の吐出線条を挟み込み停留させることで互いに接触した部分を融着させ、連続して冷却媒体中に引き込み固化させ網状構造体を形成する時、上記コンベアの間隔を調整することで、融着した網状体が溶融状態である間に厚み調節が可能となり所望の厚みのものが得られる。引き取りコンベアとノズル面の距離は好ましくは30cm以内であり、長過ぎると溶融線条が冷却されて接触部が融着しなくなるので好ましくない。コンベア速度も速すぎると、接触点の形成が不十分になったり、融着点が充分に形成されるまでに冷却され、接触部の融着が不十分になる場合がある。また、速度が遅すぎると溶融物が滞留しすぎ、密度が高くなるので、所望の見掛け密度に適したコンベア速度を設定する必要がある。
【0021】
本発明の難燃性網状構造体をクッション材に用いる場合、その使用目的、使用部位により使用する樹脂、繊度、ループ径、嵩密度を選択する必要がある。例えば、表層のワディングに用いる場合は、ソフトなタッチと適度の沈み込みと張りのある膨らみを付与するために、低密度で細い繊度、細かいループ径にするのが好ましく、中層のクッション体としては、共振振動数を低くし、適度の硬さと圧縮時のヒステリシスを直線的に変化させて体型保持性を良くし、耐久性を保持させるために、中密度で太い繊度、やや大きいループ径が好ましい。また、3次元構造を損なわない程度に成形型等を用いて使用目的にあった形状に成形して側地を被せ車両用座席、船舶用座席、ベット、椅子、家具などに用いることが出来る。勿論、用途との関係で要求性能に合うべく他の素材、例えば短繊維集合体からなる硬綿クッション材、不織布などと組み合わせて用いることも可能である。また、樹脂製造過程以外でも性能を低下させない範囲で製造過程から成形体に加工し、製品化する任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、溌水溌油化、着色、芳香等の機能付与を薬剤添加などの処理加工が出来る。
【0022】
【実施例】
以下に実施例で本発明を詳述する。
【0023】
なお、実施例中の評価は以下の方法で行った。
1.融点(Tm)
島津製作所製TA50、DSC50型示差熱分析計を使用し、昇温速度20℃/分で測定した吸発熱曲線から融解ピーク温度を求めた。
2.Tαcr
ポリマーを融点+10℃に加熱して、厚み約300μmのフィルムを作成して、オリエンテック社製バイブロンDDVII型を用い、110Hz、昇温速度1℃/分で測定したTanδ(虚数弾性率M”と弾性率の実数部分M’との比M”/M’)のゴム弾性領域から融解領域への転移点温度に相当するα分散の立ち上がり温度を求めた。
3.見掛け密度
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、4カ所の高さを測定し体積を求め、試料の重さを体積で除した値で示す。(n=4の平均値)
4.線条の繊度
試料の10カ所から各線条部分を切り出し、アクリル樹脂で包埋して断面を削りだし切片を作成して断面写真を得る。各部分の断面写真より各部の断面積(Si)を求める。また、同様にしてえた切片をアセトンでアクリル樹脂を溶解し、真空脱泡して密度勾配管を用いて40℃にて測定した比重(SGi)を求める。ついで、次式より線条の9000mの重さを求める。(単位cgs)
繊度=〔(1/10)ΣSi×SGi〕×900000
5.融着
試料を目視判断で接着しているか否か判断し、接着している繊維同士を手で引っ張って外れないか否かで外れないものを融着していると判断する。
6.25%圧縮硬さ
試料を20cm×20cmの大きさに切断し、オリエンテック社製テンシロンにてφ150mm圧縮板にて65%まで圧縮して得た応力−歪み曲線の25%圧縮時の応力で示す。(n=3の平均値)
7.耐熱耐久性(70℃残留歪み)
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、50%圧縮して70℃乾熱中22時間放置後冷却して圧縮歪みを除き1日放置後の厚み(b)を求め、処理前の厚み(a)から次式、即ち(a−b)/a×100より算出する。単位%(n=3の平均値)
8.繰り返し圧縮歪み
試料を15cm×15cmの大きさに切断し、島津製作所製サーボパルサーにて、25℃65%RH室内にて50%の厚みまで1Hzのサイクルで圧縮回復を繰り返し2万回後の試料を1日放置した後の厚み(b)を求め、処理前の厚み(a)から次式、即ち(a−b)/a×100より算出する。単位%(n=3の平均値)
9.座り心地
30℃RH75%室内で座席用フレームにバケットシート状に成形したクッションにポリエステルモケットの側地を掛けた座席にパネラーを座らせ(n=5)
(1)床つき感:座った時の「どすん」と床に当たった感じの程度を感覚的に定性評価した。感じない;◎、ほとんど感じない;○、やや感じる;△、感じる;×
(2)蒸れ感:2時間座っていて、臀部や太股の内側の座席と接する部分が蒸れた感じを感覚的に定性評価した。ほとんど感じない;◎、僅かに蒸れを感じる;○、やや蒸れを感じる;△、蒸れを著しく感じる;×
(3)8時間以内でどの程度我慢して座席に座っていられるか:4時間以上;◎、2〜4時間;○、1〜2時間;△、1時間以内;×
(4)4時間座席に座らせたときの腰の疲れ程度を感覚的に定性評価した。無し;◎、ほとんど疲れない;○、やや疲れる;△、非常に疲れる;×
(5)総合評価:(1)〜(4)までの評価の◎を4点、○を3点、△を2点、×を1点として点数を求め、その内12点以上で△を含まないもの;非常に良い(◎)、12点以上で△を含むもの;良い(○)、10点以上で×を含まないもの;やや悪い(△)、×を含むもの;悪い(×)として評価した。
10. 燃焼ガスの毒性指数
JIS−K−7217の方法で測定した各燃焼ガス量(mg/g)を10分間吸入での致死量(mg/10リットル)で除した値の積算値で示す。
11. 難燃性
防炎製品認定委員会の定める防炎製品の性能試験基準に基づくの45゜メセナミン法により評価した。
【0024】
実施例1
ポリエステル系エラストマーとして、酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)またはジメチルナフタレート(DMN)とグリコール成分として1・4ブタンジオール(1・4BD)を少量の触媒と仕込み、常法によりエステル交換後、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)を添加して昇温減圧しつつ重縮合せしめポリエーテルエステルブロック共重合エラストマーを生成させ、ついで抗酸化剤1重量%を添加混合練り込み後ペレット化し、50℃48時間真空乾燥して得られた熱可塑性弾性樹脂原料の処方を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003698212
【0026】
得られた熱可塑性弾性樹脂A−1と常法により化1で示されるカルボン酸を燐原子として250ppm共重合した極限粘度0.60、融点259℃の難燃性ポリエチレンテレフタレート共重合体(以下難燃PETと略す)とを混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合が41重量%、燐原子含有量が75ppmとなるように重量比7:3で混合して通常の押出機で溶融温度を278℃にて吐出し、ノズルは幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを5mm、幅方向に孔間ピッチを10mmのオリフィス形状がトリプルブリッジの丸型中空形成ノズルより、全吐出量を1100g/分にて吐出させ、ノズル面12cm下に冷却水を配し、幅60cmのステンレス製エンドレスネットを平行に5cm間隔で一対の引き取りコンベアを水面上に一部出るように配した上に引き取り、接触部分を融着させつつ、両面を挟み込みつつ毎分1mの速度で25℃の冷却水中へ引き込み固化させ、ついで100℃の熱風乾燥基中で20分疑似結晶化処理した後、所定の大きさに切断して線条の繊度が8500デニール、見掛け密度0.044g/cm3 の難燃性網状構造体を得た。得られた網状構造体の特性は表2に示す。実施例1は線条の断面形態が三角おむすびの中空で難燃性は良好であり、耐久性も良く、適度の沈み込みと中空異形効果により適度の反発力を持ち、座り心地の良いクッション材に適した例である。なお、燃焼ガスの毒性指数は4.8と安全性の高いものである。
【0027】
実施例2
熱可塑性弾性樹脂としてA−2を使用し、混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合が7重量%、燐原子含有量が125ppmとなるように重量比1:1で混合する以外は実施例2と同様の条件で得られる線条の繊度が8000デニール、見掛け密度0.043g/cm3 の難燃性網状構造体の特性を表2に示す。実施例2は線条の断面形態が三角おむすびの中空で難燃性は良好であり、耐久性も良く、適度の沈み込みと中空異形効果により適度の反発力を持ち、やや硬めの座り心地を持つクッション材に適した例である。燃焼ガスの毒性指数は4.8と安全性の高いものである。
【0028】
実施例3
得られた熱可塑性弾性樹脂A−3と常法により化1で示されるカルボン酸を燐原子として50ppm共重合した極限粘度0.60、融点262℃の難燃PETとを混合樹脂中に占めるソフトセグメントの重量割合が22重量%、燐原子含有量が10ppmとなるように重量比8:2で混合する以外は実施例1と同様の条件で得られる線条の繊度が8600デニール、見かけ密度0.043g/cm3 の難燃性網状構造体の特性を表2に示す。実施例3は線条の断面形態が三角おむすびの中空で難燃性は良好であり、耐久性も良く、適度の沈み込みと中空異形効果により適度の反発力を持ち、座り心地の良いクッション材に適した例である。なお、燃焼ガスの毒性指数は4.9と安全性の高いものである。
【0029】
【表2】
Figure 0003698212
【0030】
比較例1
イソフタル酸を50モル%含有した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合ポリエステル(PES)と常法により化1で示されるカルボン酸を燐原子として500ppm共重合した極限粘度0.60、融点257℃の難燃PETとを重量比1:1で混合して、孔配列は実施例1と同一で孔形状が丸断面のオリフィスより吐出し、疑似結晶化処理しなかった以外は実施例1と同様の条件で得られる線条が7300デニール、見かけ密度0.044g/cm3 の難燃性網状構造体の特性を表2に示す。比較例1は耐久性が悪く、硬くて座り心地も悪く、難燃性も不合格でクッション材に適さない例である。
【0031】
比較例2
得られた熱可塑性弾性樹脂A−2のみを溶融温度235℃で孔形状が丸断面のオリフィスから吐出し、疑似結晶化処理しなかった以外は実施例1と同様の条件で得られる線条が9000デニール、見かけ密度0.043g/cm3 の難燃性網状構造体の特性を表2に示す。比較例2はやや硬めの座り心地を持ち、耐久性も良好であったが難燃性が不合格であった。
【0032】
比較例3
比較例1と同一のノズルを用いて溶融温度278℃にて吐出し、ノズル面60cm下に引き取りコンベアネットを配して引き取った後疑似結晶化処理をしなかった以外、実施例1と同様の方法で得た網状構造体の特性の一部を表2に示す。なお、得られた網状構造体は接着状態が不良で形態保持が悪いため、見掛け密度、70℃残留歪み、繰り返し圧縮歪み及び座り心地の評価は実施していない。比較例3は形態が固定されていないので体型保持機能が付与できないクッション材に適さない例である。
【0033】
比較例4
幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを3mm、幅方向に孔間ピッチを4mmとした丸断面のオリフィスを持つノズルより、溶融温度を278℃にて全吐出量を50g/分で吐出し、ノズル面4cm下に引き取りコンベアネットを配して0.1m/分にて引き取った以外、実施例1と同様にして得た線条の繊度が99デニール、見掛け密度が0.024g/cm3 の網状構造体の特性を表2に示す。比較例4は緻密な構造で繊度が著しく細いため回復性は良好だが、柔らかすぎてクッション材としてはそのまま使えない例である。
【0034】
比較例5
幅50cm、長さ5cmのノズル有効面に長さ方向に列間ピッチを8mm、幅方向に孔間ピッチを20mmとした丸断面のオリフィスを持つノズルより、溶融温度を278℃にて全吐出量を5600g/分で吐出し、ノズル面25cm下に引き取りコンベアネットを配して1.5m/分にて引き取った以外、比較例4と同様にして得た線条の繊度が146000デニール、見掛け密度が0.15g/cm3 の網状構造体の特性を表2に示す。比較例5は繊度が太すぎて硬くなり座り心地の悪いクッション材の例である。
【0035】
比較例6〜7
比較例4と同一のノズルを用いて溶融温度278℃にて全吐出量280g/分及び1100g/分にて吐出し、ノズル面6cm及び25cmしたに引き取りコンベアネットを配して引き取り速度2.0m/分及び0.2m/分にて引き取った以外比較例4と同様ノズル面4cm下に引き取りコンベアネットを配して0.1m/分にて引き取った以外、比較例4と同様にして得た網状構造体の特性を表2に示す。比較例4はにして得た網状構造体の特性を表2に示す。比較例6は線条の繊度が2300デニール、見掛け密度が0.0045g/cm3 と低いため難燃性、耐久性は良好であるが、柔らかすぎて極めて座り心地の悪くなるクッション材に適さない例である。比較例7は線条の繊度が9400デニール、見掛け密度が0.22g/cm3 と見掛け密度が高いため耐久性がやや劣り、硬いため座り心地もやや劣るクッション材に適さない例である。
【0036】
実施例4
ノズル有効面を幅120cm、長さ12cmとし、単孔当たり1.98g/分・孔の吐出量にて吐出し、引き取りコンベアのステンレス製エンドレスネット幅を140cmとし平行に12cm間隔で引き取った以外実施例1と同様にして得られた長さ2mに切断した難燃性網状構造体の特性及び線条の繊度とループの平均直径は実施例1と同じであった。この網状構造体を幅110cmに切断して、難燃ポリエステル繊維からなる幅110cm、長さ200cm、厚み12cmに縫製されたキルティング側地に入れてマットレスを作成した。このマットレスをベットに設置し、25℃RH65%室内にてパネラー4人に7時間使用させて寝心地を完納評価した。なお、ベットにはシーツを掛け、掛け布団は1.8kgのダウン/フェザー:90/10を中綿にしたもの、枕はパネラーが毎日使用しているものを使用させた。評価結果は、床つき感がなく、沈み込みが適度で、蒸れを感じない快適な寝心地のベットであった。比較のため、密度0.04g/cm3 で厚み10cmの発泡ウレタン板状体で同様のマットレスを作成し、ベットに設置して寝心地を評価した結果、床つき感は少ないが沈み込みが大きく、やや蒸れを感じる寝心地の悪いベットであった。
【0037】
比較例8
ノズル有効面を幅120cm、長さ12cmとし、引き取りコンベアのステンレス製エンドレスネット幅を140cmとし平行に12cm間隔で引き取った以外比較例1と単孔当たりの吐出量で同様にして得られた長さ2mに切断した難燃性網状構造体の特性及び線条の繊度とループの平均直径は比較例1と同じであった。この網状構造体を幅110cmに切断して、難燃ポリエステル繊維からなる幅110cm、長さ200cm、厚み12cmに縫製されたキルティング側地に入れてマットレスを作成した。このマットレスをベットに設置し、実施例4と同様に寝心地の官能評価を行った結果、沈み込みが少なく硬いためか床つき感が大きく、ベットマットと接する部分が痛くなってすぐに目覚め、しかも蒸れを感じ寝苦しい寝心地の悪いベットであった。
【0038】
実施例5
実施例4で得た網状構造体を幅58cm、長さ58cmに切断してポリエステル繊維からなるモケットの側地を掛け、座部は4カ所、背部は2カ所のキルトを入れたクッションを作成し、ソファーの座部と背部に設置し、実施例4と同様に座り心地を評価した結果、背部はもたれた時に適度に反発を示し、座部は床つき感、蒸れ感をほとんど感じず、腰の疲れをあまり感じない座り心地の良好なソファーであった。
【0039】
比較例9
比較例8で得た網状構造体を実施例5と同様のクッションを作成し、ソファーの座部と背部に設置し、実施例5と同様に座り心地を評価した結果、背部はもたれた時に硬く異物感を感じ、座部は床つき感、蒸れ感が著しく、臀部が痛くなり長時間座れない座り心地の劣悪なソファーであった。
【0040】
実施例6
実施例4で得た網状構造体を幅38cm、長さ40cmで角を丸くアールをつけて切断してポリエステル繊維からなるモケットの側地を掛け、事務用椅子に設置し、実施例5と同様に座り心地を評価した結果、床つき感、蒸れ感はほとんど感じず、腰の疲れをあまり感じない座り心地の良好な事務用椅子であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の難燃性網状構造体は熱可塑性弾性樹脂と難燃性ポリエステルとを混合した樹脂からなる線条が融着一体化して3次元立体網状構造化した座り心地のより改善された、難燃性の良好な、耐久性のある嵩高で適度の圧縮反発力を持ち、蒸れにくいクッション材に適したリサイクルが容易な網状構造体であるので、車両用座席、船舶用座席、家具用クッション、寝装用品に提供できる。難燃性網状体単独での使用や他の素材との併用も可能である。さらには、伸縮不織布用途にも種々の加工により使用できる。

Claims (6)

  1. 熱可塑性弾性樹脂と燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなる難燃性ポリエステルとを混合した組成物からなる線条であって、前記熱可塑性樹脂のソフトセグメント量A(対混合組成物:重量%)と燐含有量B(混合組成物中の燐原子含有量ppm)が下記(1)及び(2)式の関係を同時に満足し、繊度が100〜100000デニールの連続線条を曲がりくねらせ互いに接触させて接触部の大部分を融着し、実質的に面がフラット化された3次元網状構造を形成された網状構造体であり、見掛け密度が0.005〜0.20g/cm3 であることを特徴とする難燃性網状構造体。
    (1)5≦A≦80
    (2)500×10-0.135A≦B≦104
  2. 連続線条の断面形状が中空断面及び/又は異形断面である請求項1記載の難燃性網状構造体。
  3. 網状構造体を形成するループが、ループの途中において、該網状構造体の厚み方向を基線として、該基線から45゜以上押し曲げられ接触部の大部分が融着しており、構造体は実質的に面がフラット化されている請求項1に記載の難燃性網状構造体。
  4. 熱可塑性弾性樹脂と燐含有エステル形成性化合物を共重合または燐含有難燃剤を含有してなるポリエステルとを混合した組成物を複数のオリフィスを持つノズルから融点より10〜50℃高い溶融温度でノズルより下方に向けて吐出し、吐出させた線条を曲がりくねらせ、溶融状態で互いに接触させて融着し3次元構造を形成しつつ、引き取り装置で挟み込み冷却槽で冷却せしめ、実質的に面がフラット化された網状構造を形成することを特徴とする請求項1〜3に記載の難燃性網状構造体の製法。
  5. 冷却後、網状構造体を構成する線条の融点より少なくとも10℃以下の温度でアニーリングする請求項4に記載の難燃性網状構造体の製法。
  6. 冷却後、10%以上の圧縮歪みを付与して混合組成物の融点より10℃以上低い温度でアニーリングする請求項4に記載の難燃性網状構造体の製法。
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