JP3697725B2 - 浸炭焼入れした動力伝達部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば歯車のような動力動力伝達部材に適用するのに好適な浸炭焼入れした動力伝達部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のディファレンシャルギヤのピニオン等の歯車としては一般に肌焼き鋼(低炭素鋼)を用い、その表面にガス浸炭焼入れあるいはプラズマ浸炭焼入れ等を施した後、耐疲労強度と耐磨耗性を向上させたうえで使用している。
【0003】
また、浸炭焼入れ処理・焼戻し処理に替わる歯車等の表面効果処理法として、例えば特開平6−116628号公報に開示されているような中・高炭素鋼の高周波輪郭焼入れ方法が提案されている。この方法は、中・高炭素鋼からなる素材を加熱してオーステナイト化し、少なくとも温間域において塑性加工を行なって冷却し、次に、該素材にオーステナイト化温度以下で予加熱処理を行ない、その後、オーステナイト化温度の直上まで急速に再加熱し、該組織をオーステナイト化した後、焼入れ・焼戻し処理を施すものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常行われているガス浸炭焼入れあるいはプラズマ浸炭焼入れでは、浸炭時にワークが長時間高温に加熱されるため、結晶粒界にリンや硫黄等の不純物が偏析し、また炭化物が析出して粒界の強度を低下させている。
【0005】
そのため、高い曲げ応力が掛かる歯底(図1にAで示す)のエッジ部分に結晶粒界を起点として亀裂が発生しやすく、かつ亀裂の伝播も速くなり、静破壊強度および耐衝撃強度が不足するという問題があった。この問題を軽減するには、浸炭深さを浅くする方法があるが、浸炭深さを浅くすると、高い面圧が掛かる歯当たり面(図1にBで示す)においてもスポーリング強度が低下するという問題がある。
【0006】
一方、中・高炭素鋼の高周波輪郭焼入れ方法では、ワークの加熱時間が極めて短時間であるから、上記浸炭処理におけるような問題は解決されるが、中・高炭素鋼は肌焼き鋼等の低炭素鋼よりも被削性が劣るため刃具費が高価でとなり、しかも歯車の芯部が中・高炭素鋼からなるため、芯部の靭性が低いという問題がある。
【0007】
さらに、歯車においては、歯底部および歯当たり面の双方において、オーステナイト結晶粒度が微細であることが強度上望ましいが、従来の方法では、鍛造品を除いて、オーステナイト結晶粒度が#10以上の微細な結晶粒からなる炭素鋼は得られなかった。
【0008】
上述の問題に鑑み、本発明は、低炭素鋼からなる素材の非鍛造品でありながら、粒界粒度を低下させるPSまたは炭化物等の偏析を防止するとともに、オーステナイト結晶粒度が#10以上の浸炭焼入れした動力伝達部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる動力伝達部材は、非鍛造品からなり歯部が等間隔に形成された素材に浸炭焼入れを施した動力伝達部材であって、浸炭による炭素濃度の増加が見られない素材内部が低炭素鋼からなり、浸炭により炭素濃度が増加した素材表面部が浸炭処理により中・高炭素鋼と同様の炭素濃度を有し、かつJISG0551に規定されるオーステナイト結晶粒度が#10以上であることを特徴とする。
【0010】
上記動力伝達部材の好ましい態様は、歯部が等間隔に形成された素材にプラズマ浸炭後表面焼入れした動力伝達部材で、歯底部における浸炭層の残留オーステナイト量が25〜35%であり、歯当り面における浸炭層の残留オーステナイト量がそれより少ないことを特徴とする。そして、歯当り面における浸炭層の残留オーステナイト量は好ましくは5〜15%であり、また、浸炭層、特に、歯底部における浸炭層の最表面部の炭素濃度がその下の炭素濃度よりも低下せしめられていることが好ましい。
【0011】
【作用および発明の効果】
浸炭処理を施した素材では、浸炭時には炭素の粒界偏析が生じフィルム状のセメンタイトが存在して粒界強度を低下させると考えられるが、本発明に係わる浸炭焼入れした動力伝達部材は、オーステナイト結晶粒が微粒化(オーステナイト結晶粒度が#10以上)されているから、スポーリング強度を低下させることなく静破壊強度および耐衝撃強度を向上させることができる。
【0012】
歯底部の浸炭層における適量の残留オーステナイト量は、エッジ部分の耐曲げ破壊強度を向上させる効果を有し、目安として面積率で25〜35%程度残留するのが好ましい。残留オーステナイト量がこれより少ない場合、組織自体の靭性が不足するほか、母相に固溶しきれない炭化物が破壊の起点として多く存在することにもなり、逆にこれより多い場合、組織自体の強度が下がりエッジ部分が変形しやすくなるという問題が生じる。なお、残留オーステナイト量は表面焼入れ時の加熱温度および高温域での保持時間により適宜調整することができる(高温域での保持時間が長くなるほど炭化物の固溶が進み、残留オーステナイト量が多くなる)。
【0013】
一方、歯当り面の残留オーステナイト量は相対的に少ない。歯当り面の浸炭層においては、スポーリング強度を確保するため、残留オーステナイト量が少なく所定量の炭化物が粒状に分散した組織であることが好ましく、目安として面積率で5〜15%の残留オーステナイト量となるようにするとよい。残留オーステナイト量がこれより少ないということは、浸炭時に析出した炭化物がほとんど固溶せず網状のまま存在するという可能性が大きいということであり、逆にこれより多いということは、炭化物の固溶が多く析出炭化物量が減るということであり、いずれもスポーリング強度の低下の原因となる。
【0014】
なお、歯当り面と歯底部を均一に加熱する通常の表面焼入れ方法を適用した場合、本発明とは逆に、歯底部における残留オーステナイト量が歯当り面におけるよりも一般的に低くなる。つまり、歯車のような部材に浸炭処理を施す場合、単純な平面形状に近い歯当り面では浸炭層の炭素濃度が相対的に高く、歯底部のように内に入ったような形状の部位では炭素濃度が相対的に低くなり勝ちなためである。
【0015】
表面焼入れ時の加熱を、昇温から、均熱、本加熱に亘って歯底部の温度が歯当り面の温度よりも高くなるように設定するのは、歯底部の温度を相対的に長い時間高い温度に保つことになり、歯底部の浸炭層における炭化物の固溶を促進する作用を有する。
【0016】
また、通常、浸炭層の最表面部は過剰浸炭される傾向にあり、浸炭後の最表面部の炭素濃度はその下の炭素濃度より高くなっているが、表面焼入れ時の高温域での保持がある程度長い時間継続して行われると浸炭層の最表面部が脱炭され、その部分では炭素濃度の低下に伴い粒界脆化が起きにくくなる。したがって、最表面部の脱炭を進める場合は、高温域での保持時間が長くなるように加熱条件を設定する。
【0017】
そして、表面焼入れ時の加熱を、昇温から、均熱、本加熱に亘って歯底部の温度が歯当り面の温度よりも高くなるように設定する場合、歯底部の方が高い温度に長時間保持されることになり、特に歯底部浸炭層の最表面部において炭素濃度の低下が大きく、歯底部のエッジ部分の破壊強度が向上する。脱炭は例えば表面から20μmまでの最表面部の炭素濃度が共析点未満、特に0.6〜0.75%程度になるようにするとよい。
【0018】
歯底部の温度が歯当り面の温度よりも高くなるようにするための具体的加熱手段としては、表面焼入れの分やで周知の高周波誘導加熱が好ましく、その周波数および出力等を調整することにより、1本のコイルで上記部位別の加熱温度設定を容易に実現することができる。なお、高周波誘導加熱においては、部材表面は比較的短時間で所定の温度に上昇して再結晶を起こし、これに伴い結晶粒が微細化されるとともに、加熱前に結晶粒界に偏析していた不純物が粒内に固溶し、炭化物も粒内に固溶するが固溶しない分は分断され粒状になる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0020】
<実施例1>
使用した素材は、C:0.20%,Si:0.08%,Mn:0.75%,P:0.016%,S:0.026%,Cr:1.02%,Mo:0.42%,Al:0.024%,残部Feの肌焼き鋼素材からなる非鍛造品であるが、結晶粒微細化元素としてNbを添加した方が良い。そして、実機でのバラツキ要因(歯当り状態、他部品の破損)の影響を回避するために、図3に示すような寸法を有する試験片について基礎的試験(三点曲げ試験)により評価を行なった。
【0021】
先ず上記試験片に対して、オーステナイト化温度以上の温度でのガス浸炭処理および焼入れを施す。浸炭深さはスポーリング強度を確保するため1.2mmを目標とし、表面炭素濃度は、共析点以下の0.7%(図4の条件a)と、従来の浸炭焼入れと同様の1.0%(図4の条件b)を目標とした。
【0022】
次に高周波焼入れを施すが、素材の表面および内部を焼入れ組織とし、かつ表面のオーステナイト結晶粒度を変化させるため、図5に示すようなヒートパターンを設定した。高周波処理設備は400kHzマシンと10kHzマシンとを用意し、出力と時間の調整により得られた温度測定結果を下記の表1に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003697725
【0024】
このようにして浸炭処理と高周波焼入れとを施された試験片に対して、図6に示す三点曲げ試験機を用いて破断荷重を測定した。試験条件を下記の表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0003697725
【0026】
浸炭処理と高周波焼入れの組み合わせごとの試験片の冶金学的特性の調査結果および三点曲げ試験(N=3)における破断荷重平均値を下記の表3に示す。
【0027】
【表3】
Figure 0003697725
【0028】
(1) 基礎試験結果:オーステナイト結晶粒度と三点曲げ破断荷重との関係を図7示す。従来の浸炭焼入れ品に対して最大50%の破断荷重の向上が認められた。
【0029】
(2) 浸炭条件検討結果:表面炭素濃度を1%から、粒界脆化原因となるセメンタイトの析出しない共析点以下の0.7%とすることにより、浸炭焼入れ品の強度は約19%向上しており、同じ高周波条件においても5〜19%の強度向上が確認された。
【0030】
(3) 高周波焼入れ条件検討結果:高周波加熱最高温度とオーステナイト結晶粒度との関係を図8に示す。短時間加熱においても加熱温度の上昇にしたがって結晶粒の粗大化は避けられないが、加熱温度をオーステナイト化温度直上の温度領域に設定した場合、浸炭焼入れでは困難なオーステナイト結晶粒度が#10以上の結晶粒の微細化が可能になった。そして、この試験片は、芯部が低炭素鋼からなり、表面部が浸炭処理により中・高炭素鋼と同様の炭素濃度を有している。
【0031】
次に、図1に示すようなワークW(ピニオン)に対して浸炭処理を施した後、高周波焼入れを施す場合の方法について説明する。
【0032】
高周波焼入れは短時間急速加熱であるから、オーステナイト結晶粒が微細であるが、芯部まで硬度を必要とするものに対しては表面のみでなく全体加熱を行なうため、ワークWの表面が比較的長時間高温となり、結晶粒の成長が進み過ぎ、靭性が低下する。そこで、本実施例では、予熱工程と本加熱工程との間に、ガス(Ar,N2)による表面急冷工程を追加することにより、図9に示すように、芯部はオーステナイト化温度直上の温度を保ちつつ、表面のオーステナイト結晶粒の微細化を図っている。これによって、芯部まで焼入れされるとともに、オーステナイト結晶粒度が#10以上の表面結晶粒が得られる。そして、このワークWは、芯部が低炭素鋼からなり、表面部が浸炭処理により中・高炭素鋼と同様の炭素濃度を有している。
【0033】
図10はその場合の高周波焼入れ装置を概略的に示す図で、加熱用高周波コイル1、2の間に、図11に示すような多数の冷却用ガスの噴射ノズル3を取り付けたノズルホルダ4が、絶縁性セラミック材5、5を介して装着されている。そして、ワークWをその軸線を中心に回転させながら、図9のヒートパターンに従って高周波焼入れを行なう。
【0034】
このように、本実施例では、浸炭処理後高周波加熱によりオーステナイト化温度以上に急速加熱しているため、再結晶により新しい粒界が形成されて粒界強度が向上し、かつオーステナイト結晶粒の微粒化(オーステナイト結晶粒度が#10以上)が実現できるから、スポーリング強度を低下させることなく静破壊強度および耐衝撃強度を向上させることができる。
【0035】
<実施例2>
本実施例はプラズマ浸炭を前提とした浸炭焼入れ方法に関するものである。
【0036】
本実施例で使用したワークは、C:0.18%,Si:0.09%,Mn:0.69%,P:0.006%,S:0.021%,Cr:1.02%,Mo:0.39%,Al:0.35%,Nb:0.035%、残部Feの肌焼き鋼素材からなる、外径41mmφ、高さ17.6mm、孔径15mmのディファレンシャルギヤのピニオン(図1)であり、これをガス浸炭焼入れしたものを従来例、プラズマ浸炭後高周波焼入れしたものを実施例として、それぞれに対し静破壊試験およびスポーリング試験を行なった。
【0037】
なお、上記従来のガス浸炭焼入れは、表面炭素濃度0.9%を目標とし、(1)920℃、5時間のガス浸炭処理、(2)引き続き860℃で1時間保持後120℃の油焼入れ処理、(3)180℃で再加熱し2時間の焼戻し処理、の各工程からなる。
【0038】
一方、上記実施例では、プラズマ浸炭は、同じく表面炭素濃度0.9%を目標とし、(1)真空炉内へワークを収容し、真空中で1000℃、10分間の均熱処理、(2)真空炉内へH2ガスを導入して炉内圧を2Torrに調整し、400V,1.5Aの条件でグロー放電し、20分間のクリーンアップ処理、(3)H2ガスを抜きC38ガスを導入して炉内圧を3Torrに調整し、360V,2Aの条件でグロー放電し、50分間の浸炭処理、(4)炉内を真空とし72分間の拡散処理後、徐冷、という手順で行ない、冷却後高周波表面焼入れを施し、最後に180℃、2時間の焼戻しを施した。
【0039】
実施例の高周波焼入れは、図12に示すように、図示しないモータに接続されて回転自在な治具11と従動回転する治具12との間にワークWを挟持し、その外周位置に高周波コイル13を配置し、下記の表4に示す条件で計42秒間加熱し、加熱後は80℃のオイルを35秒間噴射して冷却した。また、ワークWの表面の温度を調べるため、ワークWの表面各部位A〜E(図13参照)に熱電対14を取り付け、その検出値をスリップリング15および固定支持部16を通じてペンレコーダに記録できるようにした。なお、ワークWの表面部位Aはピニオンギヤのヒール側歯底部(図1のAに対応)、Bはピッチ面(図1のBに対応)、Cは歯底部中央、Dはトウ側歯底部、Eは歯先である。
【0040】
【表4】
Figure 0003697725
【0041】
温度測定結果を示す図14を見ると、歯底部の最高加熱温度が高く、特にエッジ部分に高い曲げ応力が掛かるヒール側歯底部Aにおいては、ピッチ面Bに比較すると、余熱、均熱、本加熱の全体に亘り高温に加熱されている。参考までに、ヒール側歯底部Aの温度と時間との関係およびピッチ面Bの温度と時間との関係を単純化して示すと、図15のようになる。
【0042】
静破壊試験は、ワークWをディファレンシャルギヤのギヤユニット21に組み込み(図16参照)、出力軸22、23を固定し、ギヤケース24を回転させて捩じり、ワークが破壊するときのトルクを測定するもので、下記の表5に示すように、実施例では従来例に比較して高い静破壊強度(いずれも3個の平均値)が得られた。これは、実施例において、歯底部、特にヒール側歯底部Aが高温に長時間維持されることから炭化物が固溶し、その部分の残留オーステナイトの量が多く炭化物が少なくなり、エッジ部分の靭性が向上し亀裂の伝播が遅れるためと考えられ、また、後述するように最表面部の炭素濃度が低下し亀裂の起点が少なくなっていることも理由の1つと考えられる。なお、ヒール側歯底部Aにおける残留オーステナイトの面積率は平均30%、ピッチ面Bでは平均約10%であった。
【0043】
【表5】
Figure 0003697725
【0044】
スポーリング試験は、同じくワークWをディファレンシャルギヤのギヤユニットに組み込み、これをトランスミッションを介してエンジンに連結し、ユニットの一方の出力軸を固定し、トランスミッションへの入力回転数が262rpm、入力トルクが117〜123N・m、ユニットの他方の出力軸の回転数が50rpm、その出力軸トルクが459〜471N・mの条件で行なった。そして、ユニットの振動を常時検出し、振動がある基準値を超えるようになるまでの時間をからそのときのサイクル数を算出し、これをスポーリング寿命とした。表5に示すように、実施例では従来例に比較し大きいスポーリング寿命(いずれも2個の平均値)が得られている。
【0045】
また、本実施例において、歯底部Aの表面からの深さと炭素濃度との関係を調べたところ、図17(a)に示すように、表面から50μm付近までの最表面部の炭素濃度が低下している。これは、本実施例では、歯底部において炭化物の固溶を促進するため、高周波焼入れの際の加熱としては異例なほど長時間高温度に保持したことから、表面からの脱炭が進むためである。
【0046】
なお、比較例として、実施例の高周波加熱条件に代えて、周波数8.2kHz、出力40kW、加熱時間9秒の条件(この種のピニオンに通常適用されている表面焼入れ条件)で高周波加熱したものでは、高温に保持されている時間が短くなるためか、図7(b)に示すように表面からの脱炭が生じていない。
【0047】
本実施例によれば、歯車等の動力伝達部材を表面焼入れする際、歯底部の加熱温度が歯当り面の加熱温度よりも高くなるように設定することにより、歯底部においてはその靭性を高めエッジ部分の破壊強度を向上させることができ、一方、歯当り面においてはそのスポーリング強度を向上させることができる。
【0048】
また、表面焼入れ時の高温加熱をある程度長い時間継続して浸炭層の最表面部を脱炭する場合、特に高い温度に保持された歯底部において脱炭が進行しやすく、エッジ部分の破壊強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ディファレンシャルギヤのピニオンの断面図
【図2】 鋼の変態図
【図3】 実施例1における試験片の正面図および側面図
【図4】 同浸炭焼入れのヒートパターンを示す図
【図5】 同高周波焼入れのヒートパターンを示す図
【図6】 同三点曲げ試験機の説明図
【図7】 同オーステナイト結晶粒度と三点曲げ破断荷重との関係を示す図
【図8】 同高周波加熱温度とオーステナイト結晶粒度との関係を示す図
【図9】 図10の高周波焼入れ装置を用いた高周波焼入れのヒートパターンを示す図
【図10】 実施例1で用いられる高周波焼入れ装置を概略的に示す図
【図11】 同ノズルホルダの平面図
【図12】 実施例2で用いられる高周波焼入れ試験装置を概略的に示す図
【図13】 ディファレンシャルギヤのピニオンの各測定部位の説明図
【図14】 実施例2における高周波加熱による加熱温度と時間との関係を示すグラフ
【図15】 図14のグラフを単純化した説明図
【図16】 静破壊試験装置を概略的に示す図
【図17】 高周波焼入れ後の表面炭素濃度を表す図
【符号の説明】
1,2 加熱用高周波コイル
3 冷却用ガスの噴射ノズル
4 ノズルホルダ
5 絶縁性セラミック材
11,12 ワークを保持する治具
13 高周波コイル
14 熱電対
15 スリップリング
21 ディファレンシャルギヤのユニット
22,23 出力軸
24 ディファレンシャルギヤのギヤケース
W ワーク(ディファレンシャルギヤのピニオン)

Claims (5)

  1. 非鍛造品からなり歯部が等間隔に形成された素材に浸炭焼入れを施した動力伝達部材であって、浸炭による炭素濃度の増加が見られない素材内部が低炭素鋼からなり、浸炭により炭素濃度が増加した素材表面部が浸炭処理により中・高炭素鋼と同様の炭素濃度を有し、かつJISG0551に規定されるオーステナイト結晶粒度が#10以上であることを特徴とする浸炭焼入れした動力伝達部材。
  2. 上記浸炭焼入れは、プラズマ浸炭後表面焼入れすることにより行い、歯底部における浸炭層の残留オーステナイト量が25〜35%であり、歯当り面における浸炭層の残留オーステナイト量がそれより少ないことを特徴とする請求項1に記載の浸炭焼入れした動力伝達部材。
  3. 歯当り面における浸炭層の残留オーステナイト量が5〜15%であることを特徴とする請求項2に記載の浸炭焼入れした動力伝達部材。
  4. 浸炭層は、素材の内側から最表面に向かって炭素濃度が低下する最表面部を有することを特徴とする請求項2または3に記載の浸炭焼入れした動力伝達部材。
  5. 歯底部における浸炭層は、素材の内側から最表面に向かって炭素濃度が低下する最表面部を有することを特徴とする請求項4に記載の浸炭焼入れした動力伝達部材。
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