JP3692691B2 - 繊維強化プラスチック製管状体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化プラスチックで構成された管状体に関し、特に、軽量でかつねじり力に対する耐性に優れ、ゴルフクラブ用シャフト、バドミントンラケット用シャフトその他のスポーツ用具、宇宙構造体、トラス、マスト、船舶、自動車、プロペラシャフトなどに用いられるのに適した管状体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、軽量、高強度、高弾性等の優れた特性を持つ繊維強化プラスチックを使用した管状体が、ゴルフクラブ用シャフト、釣竿その他のスポーツ用具や、ドライブシャフト、ロールその他の一般産業用途など、様々な用途に使用されている。
【0003】
これらの繊維強化プラスチック製管状体に、ねじり力に対する耐力、すなわちねじり強さを具備させる目的で、管状体の主軸に対して25°〜75°の角度に配向した強化繊維を含む部分すなわちバイアス層が配される。
【0004】
このような繊維強化プラスチック製管状体の成形法として、プリプレグを所定の形状に切り出し、芯金に巻き付けて成形するシートワインド法が広く行われている。このシートワインド法は、強化繊維の配向や含有率の制御が容易で管状体の設計の自由度が高いことや、表面が平滑で品位の高い管状体が得られることや、ボイドレス成形が容易であることなど、他の成形法にはない特長を有している。
【0005】
ところが、このシートワインド法では、所定の形状に切り出したプリプレグを巻き付けるため、巻き始め位置と巻き終わり位置に対応してバイアス層に段差が生じる。巻き始め位置が芯金に接している場合などは外形上段差はないが、樹脂溜まりが生じて実質的にバイアス層の段差があるのと同じことになる。(以下このような場合を含めて段差という)
この段差で強化繊維は切断されているうえ、その周辺では強化繊維の屈曲等が生じるので強度の低い部分となっている。つまり、従来の管状体では、このバイアス層により、管状体にねじり力が加わった際に、このような部分から破壊が生じやすく、結果として管状体のねじり強さが不十分になってしまう。また、この段差は、使用するプリプレグの厚さが厚いものほど大きくなり、切断されている強化繊維の量も多くなる。
【0006】
こうした問題に対して、実公昭62−27373号公報には、均質に巻きやすく段差を比較的小さくできる極薄プリプレグが記載されている。しかし、この極薄プリプレグの製造には、強化繊維を均一に拡開するための特別な工程が必要なため、高価であり、適用できる強化繊維の種類も限られる。そのため、これを用いた管状体のコストが増大したり、管状体の設計の自由度が小さくなったりするという問題がある。
【0007】
また、特開平7−39611号公報には、内側のバイアス層をいわゆるフィラメントワインド法で形成してバイアス層の段差を解消し、その外側の他の層をシートワインド法で形成することによって設計の自由度や表面の平滑化を図る方法が記載されている。しかし、この方法ではフィラメントワインド法とシートワインド法の双方の装置が必要で、しかも製造に要する時間も長くなるので、コストが大幅に増大してしまう。また、フィラメントワインド法によって形成される内側のバイアス層にボイドが形成されやすく、ねじり強度が高くならない場合があるという問題もある。
【0008】
さらに、特開平4−218179号公報および特開平5−169265号公報には、ねじりに対する強化層を管状体に付加する方法が記載されており、特開平6−114131号公報には、管状体の構成を対称にする方法が記載されている。しかし、これらの方法では、管状体の重量が増加してしまい、また、プリプレグの巻き付け回数が増加し、コストが増大してしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、シートワインド法などで成形した、バイアス層を有する管状体において、重量やコストを増大することなく、従来にない高いねじり強さを有する繊維強化プラスチック製管状体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために以下の構成を有する。すなわち、管状体主軸に対する強化繊維の巻き角度が25°〜75°の範囲にあるバイアス層を有する繊維強化プラスチックからなる管状体において、バイアス層を構成するバイアス単位層の厚みが50μm〜100μmの範囲にあり、かつ、このバイアス層における強化繊維の巻回数が2〜8になっている部分を有し、かつ、強化繊維の巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)であることを特徴とする繊維強化プラスチック製管状体である(ただし、nは正の整数、以下同様)。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の管状体は、その主軸に対する強化繊維の巻角度が25°〜75°の範囲内にある部分、つまりバイアス層を有する。主軸に対する強化繊維の巻角度とは、主軸を含む平面と、その平面を通る強化繊維がなす角度の絶対値である。
【0012】
本管状体は、層状構造を成しており、バイアス層における強化繊維の巻角度が実質的に同一方向に配向してなる単一層をバイアス単位層と呼ぶ。
【0013】
バイアス層の強化繊維は、管状体がねじり力を受けたときに、引張または圧縮の力を受ける。主軸に対する巻角度が25°より小さいか、または75°より大きい強化繊維は、管状体がねじり力を受けても大きな力を受けないので、管状体のねじり強さにはあまり関与しない。
【0014】
本発明の管状体は、バイアス層を構成するバイアス単位層の厚さが50μm〜100μm、バイアス層の強化繊維の巻回数が2〜8(ただし、整数除く)になっている部分を有する。かかる構成になっていることにより、バイアス層の段差が小さくなったり、切断されている強化繊維の量が少なくなる。これにより、ねじり強さの高いものとすることができる。
【0015】
一方、バイアス単位層の厚さが50μmより小さいと、前述のように、極薄プリプレグの製造コストの増加などにつながり、管状体成形においても取扱いが難しく、高度な技術を必要とする。また、100μmより大きければ、切断されている段差が大きくなる。さらには、そのようなプリプレグをバイアス層に複数層巻き付ければ、巻回数が多くなるにつれその分管状体のねじり強さは高くなるが、重量が増加し、管状体の成形も難しくなる。また、巻回数が少なくなれば、バイアス層の全体厚さに対する切断された段差の割合が多くなるため、十分なねじり強さを発揮しにくくなる。そのため、バイアス層の巻回数は上記2〜8(ただし、整数除く)の回数にあるのが良い。
【0016】
この様なバイアス単位層は、厚さが50μm〜80μmにあり、強化繊維の巻回数は2〜8(ただし、整数除く)にあるのが好ましく、さらには強化繊維の巻回数が3〜8(ただし、整数除く)になっていることが好ましい。
【0017】
バイアス単位層の厚さは上述の通りであるが、バイアス単位層に含まれる強化繊維量によってはバイアス単位層の厚さは変化する。つまり、バイアス単位層に含まれる強化繊維量が多すぎると前述の段差における切断された強化繊維が多くなり、ねじり強さが十分発揮しにくくなってしまい、逆に強化繊維量が少なすぎると製造コストの増加や取扱い性が難しくなる。そのため、バイアス単位層の強化繊維量は樹脂量とのバランスによって50g/m2 〜100g/m2 の範囲にあることが好ましい。さらには50g/m2 〜80g/m2 の範囲にあることが好ましい。
【0018】
バイアス層の炭素繊維の引張弾性率は、管状体の強度と剛性のバランスから200GPa〜650GPaの範囲にあることが好ましい。200GPaより小さければ剛性が十分ではなく、650GPaより大きければ強度が十分でなくなる。好ましくは280GPa〜600GPa、さらには350GPa〜600GPaの範囲が望ましい。特に450GPaより大きい範囲で、高剛性とねじり強さの高次元での両立ができるようになった。
【0019】
本発明の管状体は、バイアス層の強化繊維の巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)になっている部分を有する。ここでnは正の整数である。かかる構成になっていることにより、1つのバイアス層による2カ所の段差が周方向で重なることがなく、かつ複数のバイアス層を配したときにも、複数の段差が少しづつずれて配されるので、重なったり接近したりすることが少なくなり、段差を分散させることができる。これにより、さらにねじり強さの高いものとすることができる。
【0020】
バイアス層の強化繊維の巻回数が、(n+0.1)〜(n+0.4)、もしくは(n+0.6)〜(n+0.9)の範囲内であると、バイアス層の段差が分散されやすくなり管状体のねじり強さがより高くなるため好ましく用いられる。さらには(n+0.2)〜(n+0.3)、もしくは(n+0.7)〜(n+0.8)の範囲内であることで、段差が均等に分散されやすくなり、管状体の重量もより軽くなり、重量当たりのねじり強さをいっそう高くすることができるので好ましく用いることができる。
【0021】
すなわち、巻回数を(n+0.1)〜(n+0.9)とし、従来いわば中途半端とされている巻回数にすることにより、従来にない高いねじり強さを持ち、しかも軽量な管状体が提供される。また、管状体の物性の対称性や肉厚の均一性は上記の巻回数にはほとんど影響されない。
【0022】
バイアス層にねじり力をより多く負担させ、本発明の効果を大きくするために、その強化繊維の巻角度は30〜60°の範囲内にあるのが好ましく、35〜55°付近であることがさらに好ましい。
【0023】
バイアス層の強化繊維としては、黒鉛繊維を含む炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維などが挙げられるが、軽量かつ高強度の管状体とするためには炭素繊維が好ましい。
【0024】
本発明の管状体におけるねじり強さ向上効果は、管状体の肉厚に対してバイアス層が多い方が顕著となる。具体的には、バイアス層全体の厚さが管状体肉厚の少なくとも10%であることが好ましい。
【0025】
管状体を構成する繊維強化プラスチックのマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂など各種の熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を使用することができる。なかでも、成形が容易で物性に優れたエポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
バイアス層の繊維含有率は、成形の容易さと管状体のねじり強さの面から40〜85体積%がよく、より好ましくは55〜80体積%がよい。また、バイアス層のボイド含有率は、管状体のねじり強さの面から、5体積%未満であるのがよく、好ましくは3体積%未満であるのがよく、さらに好ましくは1体積%未満であるのがよい。
【0027】
バイアス層の他に様々な方向の強化繊維を含む層を配することによって、管状体に様々な性能を具備させることができる。曲げ力に対する剛性や強さを具備させるためには巻角度が10°を越えない強化繊維を含むいわゆるストレート層を配すればよく、側方からの押しつぶし力に対しては、管状体周方向に配向した、好ましくは巻角度が75〜90°の範囲内に配向した強化繊維を含むフープ層を配すればよい。
【0028】
本発明の管状体には、強化繊維の巻角度が正逆両方向である2つのバイアス層をともに有していてもよい。ここで正逆両方向とは、管状体主軸に対して右ねじと左ねじの関係にあるような2方向をいう。この場合、2つのバイアス層が互いに重なりあい、かつ段差が均等に分散していることが特に好ましい。
【0029】
本発明の管状体は、肉厚が2mmを越えないような薄肉の管状体や、外形が20mmを越えないような細径の管状体である場合に、ねじり強さを高くする効果が特に大きい。
【0030】
本発明の管状体は、軽量でねじり強さに優れることから、ゴルフクラブやバドミントンラケットのシャフトに用いられるのに特に適している。
【0031】
ゴルフクラブ用シャフトのねじり破壊は、シャフト先端部からシャフトの長手方向に400mmの範囲に生じることが多い。これはこの様な範囲は外径が比較的小さいためであり、特に先端部分には一般的に先端補強部を有している。この様な部分において本発明の構成をとっていることが好ましい。さらには先端から300mmの範囲にあるのが望ましい。
【0032】
さらには、先端補強部を除いて最も外形の小さい部分が特にねじり破壊を生じることが多い。この様な部分において本発明の構成をとっていることが好ましい。なお、先端補強部とは、ゴルフシャフト先端の細径部を補強するために、他の部分より厚肉とされた部分をいう。
【0033】
本発明によって、全体重量が50gを越えないような軽量であっても、ねじり強さが十分であるようなゴルフクラブ用シャフトが得られる。さらに軽量の40gを越えないようなゴルフクラブ用シャフトで効果が高い。
【0034】
本発明の管状体を製造するには、所定の形状に切り出したプリプレグを芯金に巻き付けた後、ラッピングテープを巻き付け、硬化炉などで成形した後、脱芯してラッピングテープを除去するシートワインド法が適用できる。バイアス層を設けるため、一方向性プリプレグを巻き付ける際に、強化繊維量が50g/m2 〜100g/m2 の一方向性プリプレグを巻回数が2〜8である部分を有し、かつ、巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)になるように巻き付ければよい。この巻回数はプリプレグを切り出す大きさを変えることによって容易に調整でき、他の工程は従来のシートワインド法と同様に行うことができるので、設備や工程変更に伴うコストの増加はない。
【0035】
また、図1に示したような管状体を製造するには、強化繊維の巻角度が正逆両方向になるように重ねた2枚の一方向性プリプレグを芯金に巻き付ければよい。このとき、2枚のプリプレグによる段差を図1のように分散させるために、巻き終わり位置が互いにずれるように、芯金半周分に対応する長さだけずらしてプリプレグを重ねてから巻き付けるとよい。
【0036】
【実施例】
(ねじり試験)
ねじり試験は、試験片のゲージ長300mm、両端50mmは把持する。破壊時のねじりトルク(Nm)とねじれ角(deg)を測定し、ねじり強さ(ねじりトルクとねじれ角の積)を求めた。
【0042】
実施例1
バイアス層用として、炭素繊維(CF)とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグA(CF目付:55g/m 2 、繊維含有率:71重量%、繊維引張弾性率:375GPa、厚さ:52μm)を、繊維の方向が縦方向に対して45°になるように、縦1000mm×横139mmの長方形に2枚切り出した。この2枚を、繊維方向が互いに交差するように、かつ横方向に16mm(芯金半周分に対応)ずらして貼り合わせた。次に、貼り合わせたプリプレグを、離型処理した外径10mm、長さ1400mmのステンレス製芯金に、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように巻き付けた。
その上に、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグB(CF目付:150g/m 2 、繊維含有率:67重量%、繊維引張弾性率:295GPa)を繊維の方向が縦方向になるように縦1000mm×横72mmの長方形に切り出したものを、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように巻き付けた。
次にシートワインド成形用のラッピングテープを所定の方法で巻き付けた後、硬化炉中で温度130℃、2時間で成形した。
成形後、芯金を脱芯し、ラッピングテープを除去して繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0043】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグAによるバイアス層の巻回数は4.25であった。
【0044】
実施例2
プリプレグAを横122mmの長方形に切り出す他は実施例1と同様にして繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0045】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグAによるバイアス層の巻回数は3.75であった。
【0046】
比較例1
バイアス層用として、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグC(CF目付:55g/m2 、繊維含有率:71重量%、繊維引張弾性率:475GPa、厚さ:51μm)を、繊維の方向が縦方向に対して45°になるように、縦1000mm×横133mmの長方形に2枚切り出した。この2枚を、繊維方向が互いに交差するように、かつ横方向に16mm(芯金半周分に対応)ずらして貼り合わせた。次に、貼り合わせたプリプレグを、離型処理した外径10mm、長さ1400mmのステンレス製芯金に、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように巻き付けた。
その上に、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグB(CF目付:150g/m 2 、繊維含有率:67重量%、繊維引張弾性率:295GPa)を繊維の方向が縦方向になるように縦1000mm×横72mmの長方形に切り出したものを、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように巻き付けた。
次にシートワインド成形用のラッピングテープを所定の方法で巻き付けた後、硬化炉中で温度130℃、2時間で成形した。
成形後、芯金を脱芯し、ラッピングテープを除去して繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0047】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグCによるバイアス層の巻回数は4、バイアス単位層の厚さは51μmであった。
【0048】
実施例3
プリプレグCを横139mmの長方形に切り出す他は比較例1と同様にして繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0049】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグCによるバイアス層の巻回数は4.25であった。
【0050】
比較例2
プリプレグCを、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグD(CF目付:116g/m2 、繊維含有率:67重量%、繊維引張弾性率:375GPa、厚さ:114μm)に変え、横67mmの長方形に切り出す他は比較例1と同様にして繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0051】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグDによるバイアス層の巻回数は2、バイアス単位層の厚さは113μmであった。
【0052】
比較例3
プリプレグCを、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグE(CF目付:30g/m2 、繊維含有率:60重量%、繊維引張弾性率:375GPa、厚さ:34μm)に変え、横267mmの長方形に切り出す他は比較例1と同様にして繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0053】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグEによるバイアス層の巻回数は8、バイアス単位層の厚さは33μmであった。
【0054】
比較例4
プリプレグDを、炭素繊維とエポキシ樹脂からなる一方向性プリプレグF(CF目付:116g/m2 、繊維含有率:70重量%、繊維引張弾性率:475GPa、厚さ:102μm)に変える他は比較例2と同様にして繊維強化プラスチック製管状体を得た。
【0055】
この管状体の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグFによるバイアス層の巻回数は2、バイアス単位層の厚さは102μmであった。
【0056】
実施例1〜3、比較例1〜4で得られた管状体の長さ1mの重量(g)、ねじりトルク(Nm)、ねじり強さ(Nm deg)の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
比較例5
補強層用としてプリプレグBを縦250mm×横88mmの直角3角形に切り出し、これを離型処理した細径先端外径5mm、テーパー率8/1000、長さ1400mmのステンレス製芯金に、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように、プリプレグの横辺が芯金の先端方向になるよう巻き付けた。
【0058】
その上に、バイアス層用として、プリプレグAを、繊維の方向が縦方向に対して45°になるように、縦1143mm×横(長辺196mm、短辺102mm)の台形に2枚切り出し、この2枚を、繊維方向が互いに交差するように、かつ横方向に芯金全長に半周分ずらして貼り合わせ、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように、プリプレグの横短辺が芯金の先端方向になるように巻き付けた。
【0059】
さらにその上に、プリプレグBを繊維の方向が縦方向になるように縦1143mm×横(長辺103mm、短辺57mm)の台形に切り出したものを、プリプレグの縦方向と芯金主軸が一致するように、プリプレグの横短辺が芯金の先端方向になるように巻き付けた。
【0060】
次にシートワインド成形用のラッピングテープを所定の方法で巻き付けた後、硬化炉中で温度130℃、2時間で成形した。
【0061】
成形後、芯金を脱芯し、ラッピングテープを除去して繊維強化プラスチック製ゴルフクラブ用シャフト管状体を得た。
【0062】
この管状体の先端から260mmの部分の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグAによるバイアス層の巻回数は4、バイアス単位層の厚さは51μmであった。
【0063】
実施例4
プリプレグAを横(長辺206mm、短辺107mm)の台形に切り出す他は比較例5と同様にして繊維強化プラスチック製ゴルフクラブ用シャフト管状体を得た。
【0064】
この管状体の先端から260mmの部分の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグAによるバイアス層の巻回数は4.25であった。
【0065】
比較例6
プリプレグAをプリプレグDに変え、横(長辺98mm、短辺52mm)の台形に切り出する他は比較例5と同様にして繊維強化プラスチック製ゴルフクラブ用シャフト管状体を得た。
【0066】
この管状体の先端から260mmの部分の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグDによるバイアス層の巻回数は2、バイアス単位層の厚さは113μmであった。
【0067】
比較例7
プリプレグAをプリプレグCに変える他は比較例5と同様にして繊維強化プラスチック製ゴルフクラブ用シャフト管状体を得た。
【0068】
この管状体の先端から260mmの部分の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグAによるバイアス層の巻回数は4であった。
【0069】
比較例8
プリプレグAをプリプレグFに変え、横(長辺98mm、短辺52mm)の台形に切り出する他は比較例5と同様にして繊維強化プラスチック製ゴルフクラブ用シャフト管状体を得た。
【0070】
この管状体の先端から260mmの部分の横断面を研磨し、光学顕微鏡で観察したところ、一枚のプリプレグFによるバイアス層の巻回数は2、バイアス単位層の厚さは102μmであった。
【0071】
実施例4、比較例5〜8で得られた管状体の重量(g)、ねじりトルク(Nm)、ねじり強さ(Nm deg)の結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明の繊維強化プラスチック製管状体は、バイアス層を構成するバイアス単位層の厚みが50μm〜100μmの範囲にあり、かつ、このバイアス層における強化繊維の巻回数が2〜8の範囲にある部分を有していることにより、バイアス層の段差が小さく、重量やコストをほとんど増大させずに、従来にない高いねじり強さを有する。さらに、バイアス層の強化繊維の巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)になっている(ただし、nは正の整数)ことにより、1つのバイアス層による2カ所の段差が周方向で重なることがなく、かつ複数のバイアス層を配したときにも、複数の段差が少しづつずれて配されるので、重なったり接近したりすることが少なくなり、段差を分散させることができる。これにより、さらにねじり強さの高いものとすることができる。
【0074】
本発明の管状体は、軽量でかつ高いねじり強さを有することにより、ゴルフクラブ用シャフトやバドミントンラケット用シャフトとして特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係る管状体の横断面を示す図である。
【符号の説明】
1:バイアス層(正方向)
2:バイアス層(逆方向)
3:バイアス層の段差(巻き始め位置)
4:バイアス層の段差(巻き終わり位置)
5:樹脂溜まり
Claims (10)
- 管状体主軸に対する強化繊維の巻き角度が25°〜75°の範囲にあるバイアス層を有する繊維強化プラスチックからなる管状体において、バイアス層を構成するバイアス単位層の厚みが50μm〜100μmの範囲にあり、かつ、このバイアス層における強化繊維の巻回数が2〜8になっている部分を有し、かつバイアス層における強化繊維の巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)であることを特徴とする繊維強化プラスチック製管状体(ただし、nは正の整数)。
- バイアス層の強化繊維の巻回数が(n+0.1)〜(n+0.4)、もしくは(n+0.6)〜(n+0.9)の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック製管状体(ただし、nは正の整数)。
- バイアス層の強化繊維の巻回数が(n+0.2)〜(n+0.3)、もしくは(n+0.7)〜(n+0.8)の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化プラスチック製管状体(ただし、nは正の整数)。
- 管状体を構成する繊維強化プラスチック層の肉厚が2mmを超えないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製管状体。
- 管状体の外径が20mmを超えないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製管状体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチック製管状体を有することを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
- 前記の部分が、最も外径の小さい先端から400mmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブ用シャフト。
- 前記の部分が、先端補強部分を除いて最も外径の小さい部分にあることを特徴とする請求項6に記載のゴルフクラブ用シャフト。
- 全体重量が50gを超えないことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のゴルフクラブ用シャフト。
- 所望の形状に切り出した一方向性プリプレグを芯金に巻き付けて成形する繊維強化プラスチック製管状体の製造方法において、強化繊維量が50g/m 2 〜100g/m 2 の範囲となる2枚の一方向性プリプレグを、管状体主軸に対する強化繊維の巻角度が25〜75°の範囲内でかつ正逆両方向になり、それらの巻終わり位置が芯金半周分ずれるように重ねた後に芯金に巻き付けてバイアス層を設けるとともに、その一方向性プリプレグの巻回数を2〜8の範囲内とする部分を有し、かつ、巻回数が(n+0.1)〜(n+0.9)であることを特徴とする繊維強化プラスチック製管状体の製造方法(ただし、nは正の整数)。
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---|---|---|---|
JP04353097A JP3692691B2 (ja) | 1997-02-27 | 1997-02-27 | 繊維強化プラスチック製管状体 |
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