JP3690780B2 - ボス部を有するかさ歯車の加工方法及びその金型 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等自走車輛の差動歯車等に使用される大歯車側のかさ歯車のように、背面側にリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工方法及びその金型に関し、塑性加工した製品の充満度及び転写性を向上したい場合に有効である。
【0002】
【従来の技術】
背面側にリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工方法の従来の技術における代表的な加工工程の事例は、図4に示すように、図4(a)の素材1を図4(b)の閉塞鍛造品2とした後、中心部を穴抜き加工して図4(c)の穴明け品3としていた。閉塞鍛造に用いる金型4は、図5に示す代表的な金型構造を使用していた。このようなかさ歯車の塑性加工方法としては、特開昭60−18248等がある。
【0003】
図4において、図4(a)の素材1の外径は、図4(b)の閉塞鍛造品2のリング状のボス部5の外径よりわずかに小さいものを用いる。ボス部5の外径から外側に胴体7の外径近傍まで続く平面部6Aと、その外周部6Bとからなる背面6は閉塞鍛造時に型開き力を受ける。胴体7の上面中央には凹穴8を設け、ボス部5の下面中央には平面部6Aと同じ高さのくぼみ9を設け、凹穴8の底とくぼみ9の底との距離を可能な範囲で小さくし、図4(c)に示す穴抜き加工を容易にしている。図4(a)と図4(b)において、素材1の下面と閉塞鍛造品2の背面6の平面部6Aを一致させた時、素材1の上面から閉塞鍛造品2の上面までの距離は閉塞鍛造におけるすえ込み量10で、閉塞に必要なクッションストローク22(図5を参照)に等しい。
【0004】
図5において、金型4は上型4Aと下型4Bからなり、上型4Aには中央下面にかさ歯車状の穴を有するダイ11と、ダイ11の穴の中央に下端を望ませた上カウンタパンチ12とを固設し、下型4Bにはダイ11の穴に対応して閉塞鍛造品2の背面を受ける受け面とボス部5を嵌入させる穴を有するコンテナ13をコンテナガイド14に上限を規制しクッションピン15,15で上向きに付勢して設けている。
【0005】
コンテナ13の中央には、閉塞鍛造品2のくぼみ9に相当する外径を有するセンタパンチ16を固設し、センタパンチ16の外径とコンテナ13の穴径とに滑合し、下降限を規制されたノックアウトリング17を設け、これを鍛造後プレス機械側のノックアウト装置18でノックアウトピン19,19を介して突き上げ閉塞鍛造品2を突き出す。クッションピン15,15に付勢力を与えるクッションシリンダ20には、油圧発生装置21から所要の圧力に調整された圧油が供給されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の技術は、素材1から金型4で閉塞鍛造品2を完成するので、すえ込み量10が大きい。すなわち、クッションストローク22が大きい。また、コンテナ13が閉塞鍛造品2の背面6の全面積を支えているので、閉塞鍛造における素材1の塑性加工によりコンテナ13の受ける型開き力が非常に大きい。従って、クッションシリンダ20はストロークが大きく、発生する付勢力も大きいものが必要で、これに伴い油圧発生装置21も大きくなる。その上、ストロークが大きいので、この金型を据え付けるプレス機械も大型なものが必要となる。
【0007】
すえ込み量10が大きいので、素材1の塑性加工による発熱量が大きくなり、閉塞鍛造品2の型に対する転写性が低下する。また、閉塞鍛造品2のくぼみ9の深さを深くすれば、リング状のボス部5の前方押し出し加工の材料流動性を阻害し、十分な高さが得られない。従って、穴抜き加工の高さが大きく、穴抜きにより閉塞鍛造品2の胴体7のかさ歯車の部分が変形してしまうことが多い。さらに、凹穴8を設けることも材料の流動性を阻害するが、穴抜き加工の高さを若干でも低くするするため止むを得ず設けるので転写性が低下する。
【0008】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、クッションシリンダのクッションストローク及び付勢力を小さく出来、かつ塑性加工した製品の材料充満度と転写性が向上し、さらに穴抜きによる変形をほとんど無くすることの出来るリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工方法及びその金型を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明は、背面側にリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工において、
(イ)リング状のボス部と、これと同心に連続してボス部の外径より大きな外径の胴体部とからなり、胴体部のボス部と反対側端部を面取りしたプレフォーム成形品を成形する工程と、
(ロ)中心部の上カウンタパンチとかさ歯車状の穴のあるダイを有する上型と、
(ハ)前記ダイの穴と同心に対向し、かつダイに向けて付勢され、前記プレフォーム成形品の胴体部の外径より大径の中心穴を有するコンテナと、該コンテナの中心穴に摺動自在に嵌合し、中心部に前記かさ歯車のボス部の外径に等しい内径の軸穴を有し、下型に固設するリングパンチと、該リングパンチの軸穴内に同心に設けられ、前記かさ歯車のボス部の内径に等しい外径で、前記リングパンチより高いセンタパンチを有する下型で構成される金型にて、
(ニ)前記プレフォーム成形品の胴体部を前記リングパンチと前記センタパンチで前記ダイに向けて押し込むことにより、ダイのかさ歯車状の穴に材料を充満させる閉塞鍛造工程と、を有する。
【0010】
リング状のボス部を有するかさ歯車の閉塞鍛造金型において、
(イ)上型に固設する、中心部の上カウンタパンチと下面に開口するかさ歯車状の穴を有するダイと、
(ロ)このダイと同心に対向して下型に上下動可能に、かつクッションピンで上向きに上限まで付勢されて設けられ、中心部に前記ダイの穴径より小さな内径の中心穴を有するコンテナと、
(ハ)このコンテナの中心穴に摺動自在に嵌合し、かつ下降限にある前記コンテナ上面より低い高さで前記下型に固設され、中心部に前記かさ歯車のボス部の外径に等しい軸穴のあるリングパンチと、
(ニ)このリングパンチの軸穴内に同心に前記下型に固設され、リングパンチよりも所要の高さだけ高く、かつ前記かさ歯車のボス部の内径に等しい外径を有するセンタパンチと、を具備する。
以上
【0011】
リング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工方法において、かさ歯車のプレフォーム成形品のボス部の外径より若干小さい外径を有する素材から、プレフォーム成形品の胴体部をすえ込み成形するとともに、ボス部を前方押し出し成形する第1工程と、プレフォーム成形品の胴体部の背面とボス部の内径部の底を、ダイのかさ歯車状の穴に向けて押圧し、胴体部をダイのかさ歯車状の穴にすえ込み成形するとともに、前記かさ歯車のボス部の内径部の深さを成形して閉塞鍛造品とする第2工程と、この閉塞鍛造品の上面とかさ歯車のボス部の内径部の底との間を穴抜き加工して穴明け品とする第3工程とを連続トランスファ成形する。
【0012】
リング状のボス部を有するかさ歯車のプレフォーム成形品の成形金型において、上型に固設され、下面の中心部にプレフォーム成形品の胴体部形状の穴を開口したダイと、このダイと同心に対向し、下型に上下動可能に、かつ上向きに上限まで付勢して設けられ、中心部にかさ歯車のボス部の外径に等しい内径の縦穴を有する下ダイと、この下ダイの縦穴に同心に、かつ下降限にある下ダイの上面高さとほぼ等しい高さで下型に固設され、かさ歯車のボス部の内径に等しい外径を有するセンタパンチとを具備する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1から図3に本発明におけるリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工方法及びその金型の一実施例を示す。
図1に示す閉塞鍛造金型25は、図2(a)に示す素材26から図3に示すプレフォーム成形金型27を使用して成形したプレフォーム成形品28を供給して閉塞鍛造を行い、図2(c)に示すリング状のボス部を有するかさ歯車の閉塞鍛造品29とする金型である。閉塞鍛造品29は、図示していない金型で中心部に穴抜き加工を行い、図2(d)に示す穴明け品30とする。
なお、プレフォームとは、型鍛造や溶湯鍛造及び粉末鍛造等で、仕上げ鍛造の前工程で成形した予備成形体に対する総称である。
【0014】
図1において、閉塞鍛造金型25は上型25Aと下型25Bとからなり、上型25Aには、下面中心部に下方に開口するかさ歯車状の穴を有するダイ31と、ダイ31の穴に下端面を望ませた上カウンタパンチ32とを固設している。下型25Bには、ダイ31と同心に対向し、下型25Bに固設したコンテナガイド33で外周部を上下動可能に案内され、中心部にプレフォーム成形品28の外径よりも若干大きい内径の中心穴34のあるコンテナ35を設け、このコンテナ35をクッションピン36,36を介してクッションシリンダ37のピストン37Aで上向きに付勢している。ピストン37Aの下側シリンダ室には、油圧発生装置38から圧力調整してた圧油を供給している。
【0015】
コンテナ35の中心穴34に摺動自在に嵌合し、コンテナ35の下降限で、コンテナ35の上面より若干低い高さのリングパンチ39を下型25Bに固設している。リングパンチ39の中心部は、閉塞鍛造品29のリング状のボス部29A、すなわち、かさ歯車のリング状のボス部の外径に等しい軸穴40を設けている。軸穴40と同心でボス部29Aの内径に等しい外径を有し、リングパンチ39より所要の高さだけ高いセンタパンチ41を下型25Bに固設している。
【0016】
リングパンチ39の軸穴40とセンタパンチ41とに上下動自在に嵌合し、下降限をリングパンチ39の上面からボス部29Aの高さだけ低く規制したノックアウトリング42を設け、ノックアウトピン43,43を介してプレス機械側のノックアウト装置44で所要の時期に押し上げ閉塞鍛造品29を突き出し可能としている。
【0017】
上型25Aが上昇している間に、下型25Bの上昇限にあるコンテナ35の中心穴34内に、図2(b)に示すプレフォーム成形品28を供給する。上型25Aが下降し、ダイ31がコンテナ35に当接し、クッションピン36,36の付勢力で閉塞されたまま、さらに上型25Aが下降すると、リングパンチ39とセンタパンチ41でプレフォーム成形品28の胴体部28Bをダイ31のかさ歯車状の穴に押し込み、閉塞鍛造品29を成形する。
【0018】
この時、コンテナ35に作用する型開き力は、閉塞鍛造品29のかさ歯車29Bの外径とリングパンチ39の外径間の図2に示すかさ歯車29Bの背面29Cの外周部Yだけに作用し、外周部Yの面積が小さいので型開き力は小さく、従ってクッションシリンダ37及び油圧発生装置38の能力が小さくてよい。
【0019】
図2(a)から図2(d)は、リング状のボスを有するかさ歯車の塑性下降工程を示し、図2(a)の素材26の外径は、図2(b)のプレフォーム成形品28のリング状のボス部28Aの外径より若干小さく、所要の高さを有するものである。
図2(b)は、第1工程で成形されるプレフォーム成形品28で、ボス部28Aと同心に連続する胴体部28Bは、ボス部28Aと反対側端部が所要の面取り計上となっている。胴体部28Bの外径は、図1に示すコンテナ35の中心穴34の内径より若干小さい。
【0020】
図2(c)は、第2工程で成形される閉塞鍛造品29で、ボス部29Aとかさ歯車29Bの形状は完成している。
図2(d)は、第3工程で閉塞鍛造品29の中心部に、ボス部29Aの内径部とかさ歯車29Bの上面との間を穴抜き加工した穴明け品30、すなわちリング状のボス部を有するかさ歯車の完成品である。
【0021】
図3において、プレフォーム成形金型27は、上型27Aと下型27Bとからなり、上型27Aには、プレフォーム成形品28の胴体部28B形状の穴を下面に開口した上ダイ45を固設し、下型27Bには、ダイガイド46で外周部を上下動可能に案内され、かつ上昇限を規制され、さらに圧力板47で下降限を規制され、ばね48で上向きに付勢されたダイ49を設け、ダイ49の中心部には、フレフォーム成形品28のボス部28Aの外径に等しい縦穴50を設けている。
【0022】
縦穴50内には同心にボス部28Aの内径に等しい外径を有し、下降限にあるダイ49の上面に等しい高さのセンタパンチ51を下型27Bに固設している。縦穴50の内径とセンタパンチ51の外径に上下動自在に嵌合するリングノックアウト52を、下降限を規制し、かつ下限にある時、上端面の高さがセンタパンチ51よりボス部28Aの高さだけ低くして設けている。リングノックアウト52は、図示していないノックアウト装置により所要の時期に押し上げられ、プレフォーム成形品28を突き出す。
【0023】
図3の中心線L−L左側のように、上型27Aが上昇し、ダイ49が上昇限にある時、素材26をダイ49の縦穴50内に供給し、中心線L−L右側のように、上型27Aが下降し上ダイ45がダイ49の縦穴50とセンタパンチ51との間隙に前方押し出し加工し、プレフォーム成形品28を成形する。
【0024】
図1に示す閉塞鍛造金型25はクッションシリンダ37を小型化出来るので、トランスファプレスで使用することが可能となり、図3に示すプリフォーム成形金型27及び図示しない穴抜き加工金型とともにトランスファプレスに列設してトランスファ加工を行うことが出来る。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、プレフォーム成形品を使用するので閉塞鍛造金型のストロークを小さくすることが出来る。また、閉塞鍛造金型にリングパンチを設けたので、型開き力を小さくすることが出来、クッションシリンダ及び油圧発生装置の能力が小さくてすむ。従って、トランスファプレスに適用してトランスファ加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】閉塞鍛造金型の要部正面図
【図2】リング状のボス部を有するかさ歯車の成形工程説明図
【図3】プレフォーム成形金型の要部正面図
【図4】従来例の成形工程説明図
【図5】従来例の閉塞鍛造金型の要部正面図
【符号の説明】
1は素材、2は閉塞鍛造品、3は穴明け品、4は金型、5はボス部、6は背面、6Aは平面部、6Bは外周部、7は胴体、8は凹穴、9はくぼみ、10はすえ込み量、11はダイ、12は上カウンタパンチ、13はコンテナ、14はコンテナガイド、15はクッションピン、16はセンタパンチ、17はノックアウトリング、18はノックアウト装置、19はノックアウトピン、20はクッションシリンダ、21は油圧発生装置、22はクッションストローク、25は閉塞鍛造金型、25Aは上型、25Bは下型、26は素材、27はプレフォーム金型、27Aは上型、27Bは下型、28はプレフォーム成形品、28Aはボス部、28Bは胴体部、29は閉塞鍛造品、29Aはボス部、29Bはかさ歯車、29Cは背面、30は穴明け品、31はダイ、32は上カウンタパンチ、33はコンテナガイド、34は中心穴、35はコンテナ、36はクッションピン、37はクッションシリンダ、37Aはピストン、38は油圧発生装置、39はリングパンチ、40は軸穴、41はセンタパンチ、42はノックアウトシリンダ、43はノックアウトピン、44はノックアウト装置、45は上ダイ、46はダイガイド、47は圧力板、48はばね、49はダイ、50は縦穴、51はセンタパンチ、52はリングノックアウト、Yは外周部、である。
Claims (2)
- 背面側にリング状のボス部を有するかさ歯車の塑性加工において、
(イ)リング状のボス部と、これと同心に連続してボス部の外径より大きな外径の胴体部とからなり、胴体部のボス部と反対側端部を面取りしたプレフォーム成形品を成形する工程と、
(ロ)中心部の上カウンタパンチとかさ歯車状の穴のあるダイを有する上型と、
(ハ)前記ダイの穴と同心に対向し、かつダイに向けて付勢され、前記プレフォーム成形品の胴体部の外径より大径の中心穴を有するコンテナと、該コンテナの中心穴に摺動自在に嵌合し、中心部に前記かさ歯車のボス部の外径に等しい内径の軸穴を有し、下型に固設するリングパンチと、該リングパンチの軸穴内に同心に設けられ、前記かさ歯車のボス部の内径に等しい外径で、前記リングパンチより高いセンタパンチを有する下型で構成される金型にて、
(ニ)前記プレフォーム成形品の胴体部を前記リングパンチと前記センタパンチで前記ダイに向けて押し込むことにより、ダイのかさ歯車状の穴に材料を充満させる閉塞鍛造工程と、
を有することを特徴とするボスを有するかさ歯車の加工方法。 - リング状のボス部を有するかさ歯車の閉塞鍛造金型において、
(イ)上型に固設する、中心部の上カウンタパンチと下面に開口するかさ歯車状の穴を有するダイと、
(ロ)このダイと同心に対向して下型に上下動可能に、かつクッションピンで上向きに上限まで付勢されて設けられ、中心部に前記ダイの穴径より小さな内径の中心穴を有するコンテナと、
(ハ)このコンテナの中心穴に摺動自在に嵌合し、かつ下降限にある前記コンテナ上面より低い高さで前記下型に固設され、中心部に前記かさ歯車のボス部の外径に等しい軸穴のあるリングパンチと、
(ニ)このリングパンチの軸穴内に同心に前記下型に固設され、リングパンチよりも所要の高さだけ高く、かつ前記かさ歯車のボス部の内径に等しい外径を有するセンタパンチと、を具備することを特徴とするボス部を有するかさ歯車の閉塞鍛造金型。
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