JP3687368B2 - 車両の始動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の始動制御装置、特にハイブリッド車両の始動終了の判定に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンとモータを併用し、いずれか一方または双方の駆動力により走行するようにしたハイブリッド車両が知られている(たとえば、鉄道日本社発行「自動車工学」VOL.46 No.7 1997年6月号39〜52頁参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、吸気弁の開閉時期を制御し得る可変動弁装置を備え、この可変動弁装置を用いて、エンジン始動時に、吸気弁閉時期を遅らせて圧縮比を低下させることにより、エンジン始動時の不快な振動を低減させるようにしたハイブリッド車両がある。このハイブリッド車両では、エンジン内部の油圧がゼロになるエンジン停止時に、吸気弁閉時期が初期位置である最遅角位置に保たれ、エンジンが始動すると、エンジン内部の油圧が上昇して可変動弁装置が作動可能状態となり、吸気弁閉時期が最遅角位置から進角側の最適位置へと制御される。
【0004】
しかしながら、可変動弁装置には、油圧系の特性に伴う作動バラツキがあるため、この作動バラツキにより吸気弁閉時期の最適位置への移行が遅れると、吸入空気量が少なくなりエンジントルクが減少するので、吸気弁閉時期の最適位置への移行が遅れた状態で車両を走行させたのでは、十分な駆動力が生じなかったり、最悪の場合にはエンストを招くことになる。
【0005】
このような状況を避けるため、エンジン始動時に、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生していることを確認してから車両走行を許可する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期を閾値として予め定めておき、エンジン始動時にまず車両の走行を禁止した状態で実際の吸気弁閉時期を検出し、これと閾値との比較により実際の吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったとき、始動終了と判定して走行禁止を解除することにより、低温始動直後発進におけるエンストを防止することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図10に示すように、エンジン61をクランキングするモータ62と、エンジン始動前は吸気弁閉時期が略最遅角位置にあり、エンジンが始動してエンジン内部の油圧発生とともに作動可能状態となり、その後に吸気弁の開閉時期を制御し得る可変動弁装置63と、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期を閾値として予め定める手段64と、エンジンが完爆回転数に達して自立運転に入っても走行を禁止しておく手段65と、この走行禁止状態で実際の吸気弁閉時期を検出する手段66と、この検出値と前記閾値との比較により実際の吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったかどうかを判定する手段67と、この判定結果より実際の吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったら走行禁止を解除する手段68とを備える。
【0008】
第2の発明は、図11に示すように、エンジン61をクランキングするモータ62と、エンジン始動前は吸気弁閉時期が略最遅角位置にあり、エンジンが始動してエンジン内部の油圧発生とともに作動可能状態となり、その後に吸気弁の開閉時期を制御し得る可変動弁装置63と、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角を閾値として予め定める手段71と、エンジンが完爆回転数に達して自立運転に入っても走行を禁止しておく手段65と、この走行禁止状態で実際の吸気弁閉時期に相当するカム位相角を検出する手段72と、この検出値と前記閾値との比較により実際のカム位相角が閾値を超えて進角側になったかどうかを判定する手段73と、この判定結果より実際のカム位相角が閾値を超えて進角側になったら走行禁止を解除する手段74とを備える。
【0009】
第3の発明では、第1または第2の発明において前記閾値が外気温が低くなるほど進角側の値とする。
【0010】
第4の発明では、第1から第3までのいずれか一つの発明において完爆判定より一定時間が経過しても実際の吸気弁閉時期または実際のカム位相角が閾値を超えて進角側にならなかった場合に、車室内の警告ランプを点灯するかまたは車室内のディスプレイにより低負荷走行なら可能であることを伝える。
【0011】
【作用・効果】
実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生する前に走行(たとえば発進加速など)したのでは、トルクが不足してエンストに至ることが考えられるのであるが、第1、第2の発明によれば、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生することを確認した後に走行可能となるので、低温始動直後の発進によるエンストを防止できる。
【0012】
第3の発明によれば、閾値を外気温に応じて設定したので、外気温の影響を受けることなくエンジンの始動終了判定を確実に行うことができるとともに、走行禁止時間を無用に長引かせることがない。
【0013】
第4の発明によれば、車室内の警告ランプの点灯で運転者に可変動弁装置に不都合が生じていることを知らせることができる。また、車室内のディスプレイにより低負荷走行なら可能であることを伝えることにより、低速での最低限の走行を可能にすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず図1に本発明が適用可能なハイブリッド車両の構成例を示す。これは走行条件に応じてエンジン(内燃機関)またはモータ(発電機を兼ねた回転電機)の何れか一方または双方の動力を用いて走行するパラレル方式のハイブリッド車両である。ハイブリッド車両では、基本的に比較的負荷の小さい運転域ではモータのみで走行し、負荷が増大するとエンジンを起動して所要の駆動力を確保し、必要に応じてモータとエンジンを併用することにより最大の駆動力を発揮させられるようになっている。
【0015】
図1において、太い実線は機械力の伝達経路を示し、太い破線は電力線を示している。また、細い実線は制御線を示し、二重線は油圧系統を示す。
【0016】
この車両のパワートレインは、モータ1、エンジン2、クラッチ3、モータ4、無段変速機5、減速装置6、差動装置7および駆動輪8から構成される。モータ1の出力軸、エンジン2の出力軸およびクラッチ3の入力軸は互いに連結されており、また、クラッチ3の出力軸、モータ4の出力軸および無段変速機5の入力軸は互いに連結されている。
【0017】
クラッチ3締結時はエンジン2とモータ4が車両の推進源となり、クラッチ3解放時はモータ4のみが車両の推進源となる。エンジン2またはモータ4の駆動力は、無段変速機5、減速装置6および差動装置7を介して駆動輪8へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から変速に必要な圧油が供給される。油圧装置9のオイルポンプ(図示せず)はモータ10により駆動される。
【0018】
モータ1は主としてエンジン始動と発電に用いられ、モータ4は主として車両の推進(力行)と制動に用いられる。また、モータ10は油圧装置9のオイルポンプ駆動用である。また、クラッチ3締結時に、モータ1を車両の推進と制動に用いることもでき、モータ4をエンジン始動や発電に用いることもできる。クラッチ3はパウダークラッチであり、伝達トルクを調節することができる。無段変速機5はベルト式やトロイダル式などの無段変速機であり、変速比を無段階に調節することができる。
【0019】
モータ1,4,10はそれぞれ、インバータ11,12,13により駆動される。なお、モータ1,4,10に直流電動モータを用いる場合には、インバータの代わりにDC/DCコンバータを用いる。インバータ11〜13は共通のDCリンク14を介してメインバッテリ15に接続されており、メインバッテリ15の直流充電電力を交流電力に変換してモータ1,4,10へ供給するとともに、モータ1,4の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリ15を充電する。なお、インバータ11〜13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモータにより発電された電力をメインバッテリ15を介さずに直接、力行運転中のモータへ供給することができる。メインバッテリ15には、リチウム・イオン電池、ニッケル・水素電池、鉛電池などの各種電池や、電気二重層キャパシターいわゆるパワーキャパシターが適用される。
【0020】
16はコントローラ(制御装置)であり、マイクロコンピュータとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、クラッチ3の伝達トルク、モータ1,4,10の回転数や出力トルク、無段変速機5の変速比、エンジン2の燃料噴射量・噴射時期、点火時期などを制御する。
【0021】
コントローラ16には、図2に示すように、イグニッションキースイッチ20、セレクトレバースイッチ21、アクセルペダルセンサ22、ブレーキスイッチ23、車速センサ24、バッテリ温度センサ25、バッテリSOC検出装置26、エンジン回転数センサ27、スロットル開度センサ28が接続される。イグニッションキースイッチ20は、車両のイグニッションキーがON位置またはSTART位置に設定されると閉路する(以下、スイッチの閉路をオンまたはON、開路をオフまたはOFFと呼ぶ)。セレクトレバースイッチ21は、パーキングP、ニュートラルN、リバースRおよびドライブDの何れかのレンジに切り換えるセレクトレバー(図示せず)の設定位置に応じて、P,N,R,Dのいずれかのスイッチがオンする。
【0022】
アクセルペダルセンサ22はアクセルペダルの踏み込み量を検出し、ブレーキスイッチ23はブレーキペダルの踏み込み状態(この時、スイッチオン)を検出する。車速センサ24は車両の走行速度を検出し、バッテリ温度センサ25はメインバッテリ15の温度を検出する。また、バッテリSOC検出装置26はメインバッテリ15の実容量の代表値であるSOC(バッテリチャージ量)を検出する。さらに、エンジン回転数センサ27はエンジン2の回転数を検出し、スロットル開度センサ28はエンジン2のスロットルバルブ開度を検出する。
【0023】
コントローラ16にはまた、エンジン2の燃料噴射装置30、点火装置31、可変動弁装置(バルブタイミング調節装置)32などが接続される。コントローラ16は、燃料噴射装置30を制御してエンジン2への燃料の供給と停止および燃料噴射量・噴射時期を調節するとともに、点火装置31を駆動してエンジン2の点火時期制御を行う。なお、コントローラ16には低圧の補助バッテリ33から電源が供給される。
【0024】
また、コントローラ16は可変動弁装置32を制御してエンジン2の吸・排気弁の作動状態を調節する。
【0025】
ここで、可変動弁装置32について図3の機械的構成例を参照ながら説明すると、これは、エンジンの吸気カム(吸気弁用のカム)51の作動角(開弁期間および閉弁時期)を変更可能に構成したカム作動角可変機構50により可変動弁装置を構成したもので、たとえば特開平9−242520号公報や特開平9−268930号公報等に開示されたものと同様に、コントローラ16に制御されたソレノイドバルブ41からの油圧に基づいて、偏心軸53を軸回りに駆動するアクチュエータ52と、ハウジング54を介してこの偏心軸53に連結された吸気カム51から構成され、回転する吸気カム51に対して偏心軸53を軸回りに揺動させることで吸気カム51の作動角を変更して吸気弁(図示せず)の開弁時期および閉弁時期を最大作動角から最小作動角の間で段階的または連続的に変更することができるようになっている。吸気カム51の作動角はカム回転角(カム位相角)センサ29により検出され、コントローラ16は始動時を含めてエンジン運転状態に応じた吸気弁作動時期となるようにソレノイドバルブ41を駆動し、吸気カム51の作動角を制御する。
【0026】
さて、この可変動弁装置を用いて、エンジン始動時には、吸気弁閉時期を遅らせて圧縮比を低下させることにより、エンジン始動時の不快な振動を低減させている。エンジンが始動すると、エンジン内部の油圧が上昇してカム作動角可変機構50(可変動弁装置)が作動可能状態となり、吸気弁閉時期が最遅角位置から進角側の最適位置へと制御される。
【0027】
この場合に、可変動弁装置の作動バラツキに伴って、吸気弁閉時期の最適位置への移行が遅れると、吸入空気量が少なくなり、エンジントルクが減少するので、吸気弁閉時期の最適位置への移行が遅れた状態で車両を走行させたのでは、トルク不足から最悪の場合にエンストに至ることになる。
【0028】
このような状況を避けるため、エンジンが完全に始動し、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生していることを判断した後に走行を許可する必要がある。
【0029】
このため、コントローラ16では、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角を閾値Asとして予め定めておき、エンジン始動時にはまず車両の走行を禁止した状態で実際の吸気弁閉時期に相当するカム位相角Acを検出し、これと閾値Asとの比較により実際のカム位相角Acが閾値Asを超えて進角側になったとき、始動終了と判定して走行禁止を解除する。
【0030】
これをさらに説明すると、図4は、吸気弁閉時期IVCとエンジントルクの関係を示したもので、IVCが吸気下死点後(ABDC)65度、90度、110度と遅くなるほど筒内への吸気量が減少するため、エンジントルクが低下している。ハイブリッド車両では、エンジン始動時の起振力を減少させるため、IVCを遅くしているので、冷機時の始動ではエンジンフリクションが高いにも拘わらず、エンジン発生トルクが減少するため始動性能が低下する。始動時にIVCを遅くしているエンジンにおいても、エンジンを自立運転させるためには、その時点でのエンジンフリクションよりも大きなエンジントルクが安定して出力されることが必要になるわけである。
【0031】
本発明ではこのようにエンジントルクとIVCとの間に大きな相関があることに着目し、エンジン始動の終了を判定するにあたり、エンジントルクに代えて吸気弁閉時期を用いる。すなわち、吸気弁閉時期に相当するカム位相角を検出し、これと閾値との比較によりカム位相角が閾値を超えて進角側になったとき、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生していると判断し、始動を終了して走行禁止を解除するようにしたわけである。
【0032】
次に、図5はIVCとエンジントルクの関係を示すグラフに、−25℃と+25℃の各外気温での走行トルクを重ねたものである。−25℃の外気温時(低温冷機時)にはエンジン各部のフリクションが大きいため、走行トルクが+25℃の外気温時(常温冷機時)よりも大きくなり、また、エンジントルクは低温冷機時に特に冷却損失が大きいため、常温冷機時よりも小さくなる。一方、IVCが進角するのに伴いエンジントルクが大きくなる。また、低温では走行トルクが大きく必要となるため、低温冷機時に走行可能な領域は、常温冷機時と比較して進角側に移る。
【0033】
このように、エンジントルクと走行トルクは外気温の影響を受けるので、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角である閾値は、外気温に応じて設定することが望ましい。たとえば、外気温が低下するほど走行トルクが大きくなるので、閾値はより進角側に設定しなければならない。その一方で、カム位相角が閾値を超えるまでの区間が走行禁止区間となるので、外気温が低下するほど、走行禁止区間が長くなる。したがって、閾値が一定値であるのでは、閾値を低温の外気温に対してマッチングしている場合に、そのマッチング温度より高温の外気温の場合に、無用に走行禁止区間を長びかせることになってしまうのである。そこで、本発明ではこの閾値を外気温に応じて変化させる。
【0034】
コントローラ16で実行されるこれらの制御内容を、図6、図7のフローチャートに従って説明する。
【0035】
まず図6は、車両の運転開始に際して、始動モードを起動するかどうかの判定を行うためのもので、一定時間毎に実行する。
【0036】
ステップ1、2では今回のイグニッションキースイッチ(図では「IGN SW」で略記)の状態と、前回のイグニッションキースイッチの状態をみる。
【0037】
今回のイグニッションキースイッチ状態がONでかつ前回のイグニッションキースイッチ状態がOFF(つまりイグニッションキースイッチのOFFからONへの切換時)のときは、ステップ3、4に進む。
【0038】
ステップ3ではそのときの冷却水温TwをTWSTに移す。すなわち、TWSTは始動時水温を表す。始動時水温は、エンジン始動時の外気温にほぼ相当する。
【0039】
続くステップ4では、始動終了と判定されるまで走行を禁止しておくため、走行禁止フラグ=0として今回の処理を終了する。この走行禁止フラグの値は、後述する図7において使用するため、TWSTの値とともにRAMに保存しておく。
【0040】
一方、イグニッションスイッチが続けてONのときは、ステップ5に進み、スタータスイッチ(図では「ST SW」で略記)の状態をみる。スタータスイッチがONのときはステップ6に進み、始動モード起動フラグ(“0”に初期設定)=1とする。始動モード起動フラグの値もRAMに入れて保存する。
【0041】
この始動モード起動フラグ=1のとき、始動モードを起動することが指示される。始動モードの起動により、別のルーチンが働いて、エンジン2とつながれたモータ1が、モータトルク指令に従い、エンジン2のクランキングを行うとともに、始動時の燃料噴射量が算出され、この始動時噴射量によりエンジン回転に同期して燃料噴射が実行される。
【0042】
次に、図7は始動モードを終了して走行禁止を解除するかどうかの判定を行うためのもので、前述の図6のフローと独立に一定時間毎に実行する。
【0043】
ステップ11では、始動モード起動フラグをみる。前述の図6のフローにより始動モード起動フラグ=1となっていれば、始動モードが起動されているので、始動モードの終了を判定するため、ステップ12以降に進む。
【0044】
まずステップ12では、始動モード終了フラグをみる。始動モード終了フラグは“0”に初期設定されているので、ステップ13に進み、そのときのエンジン回転数Neと完爆回転数Nsを比較する。エンジン回転数Neが完爆回転数Ns以下(完爆していない)であれば、そのまま今回の処理を終了し、エンジン回転数Neが完爆回転数Nsを超えれば完爆(始動)したと判断する。
【0045】
ただし、始動したタイミングでは、始動終了とせず、さらにステップ14、15で始動時水温TWST(RAMに格納されている)から図8を内容とするテーブルを検索して、閾値Asを求めるとともに、カム位相角センサ29により検出される実際のカム位相角Acを読み込み、この実際のカム位相角Acと閾値Asをステップ16において比較する。
【0046】
閾値Asは、前述のように、実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角である。図8に示したように低温時に進角側に設定し、始動時水温TWST(外気温相当値)が上昇するに従って遅角側に設定している。これは、常温冷機時に走行禁止時間をなるたけ短くするためである。なお、外気温を考慮しないですむなら、一定値でかまわない。
【0047】
始動モードの起動当初は、エンジン内部の油圧が低く、可変動弁装置が作動可能状態にないので、吸気弁閉時期は初期位置の最遅角位置に保たれ、したがって、Ac≧Asであるので、ステップ19以降に進む。ステップ19では、ステップ19に進んできたのが始めてであるときステップ20でタイマを起動してからステップ21に進む。このタイマはAc≧Asである時間を計測するためのものである。次回もAc≧Asであればステップ19よりステップ20を飛ばしてステップ21に進む。
【0048】
ステップ21ではタイマ値と一定値を比較する。可変動弁装置が正常に作動するときでも、完爆のタイミングより、実際のカム位相角Acが閾値As未満となるまでに所定の遅れ時間を要するが、一定値はこの遅れ時間よりもずっと大きな値である。したがって、可変動弁装置が正常に作動するときにはタイマ値が一定値を超えることがなく、そのまま今回の処理を終了する。
【0049】
始動モードの起動によりエンジン回転数が上昇してくると、エンジン駆動の油圧ポンプが働いてエンジン内部の油圧が立ち上がり、可変動弁装置が作動可能状態になり、吸気弁閉時期IVCが最遅角位置から最適位置である最進角位置へと移動してゆく。したがって、実際のカム位相角Acと閾値Asの比較により、やがて、Ac<Asとなったときはステップ17、18に進んで始動終了と判断して走行可能な状態にする(始動モード終了フラグ=1、走行禁止モードフラグ=0)。
【0050】
なお、ステップ17での始動モード終了フラグ=1より、次回からはステップ12よりステップ13以降に進むことができないので、始動モード終了の判定が繰り返し行われることはない。
【0051】
一方、Ac≧Asである場合に、タイマ値が一定値を超えるときには、可変動弁装置に不具合(故障)があると判断し、ステップ22で車室内の警告ランプを点灯(あるいは点滅)した後、ステップ17、18の処理を実行する。警告ランプは運転者に可変動弁装置の不具合を伝えるためのものである。警告ランプの点灯に代えて、車室内のディスプレイに低負荷走行なら可能であることを伝えて、低速での最低限の走行を可能にするようにすることもできる。
【0052】
なお、図6、図7のフローチャートは、車両を運転するに際して、最初のエンジン始動時だけを対象として構成している。実際には、車両の運転途中でも必要ないときはエンジンが停止され、その後にエンジンを再始動する必要が出てくるが、そのエンジン再始動に際して、図6、図7と同様の処理で始動モードの終了判定と走行禁止解除を行えばよい。
【0053】
ここで、本実施形態の作用を図9を参照して説明すると、同図は可変動弁装置が正常に作動する場合のものである。
【0054】
エンジンの起動前は吸気弁閉時期IVCは最遅角状態にある。モータ1によりエンジン2を駆動するとエンジン回転数が上昇し、エンジン回転数Neが完爆回転数Nsに達したタイミングで自立運転に入る。
【0055】
また、可変動弁装置に油圧を供給するためのポンプはエンジン駆動であるため、エンジン回転数が上昇するにつれて次第に油圧が立ち上がり、可変動弁装置が作動可能状態になって、吸気弁閉時期が最遅角位置から最適位置である最進角位置へと移動する。なお、エンジンの起動から吸気弁閉時期が動き始めるまでの可変動弁装置の作動遅れ時間は、始動時のオイル粘度が高いほど長くなる。
【0056】
吸気弁閉時期が進角すると、筒内に入る空気量が増加して、エンジントルクが増加する。そして、吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったとき、走行禁止フラグが“0”から“1”に切換えられる。吸気弁閉時期が閾値と一致するとき、実際の走行に耐え得る最低のエンジントルクが発生するので、吸気弁閉時期がその閾値を超えた以降では、車両を走行させてもエンストに至ることがないのである。
【0057】
このように、本実施形態では、実際の走行に耐え得る最低のエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角を閾値Asとして予め定めておき、エンジン始動時にはまず走行を禁止した状態で実際の吸気弁閉時期に相当するカム位相角Acを検出し、これと閾値Asとの比較により実際のカム位相角Acが閾値Asを超えて進角側になったとき、始動終了と判定して走行禁止を解除するようにしたので、低温始動直後の発進によるエンストを防止できる。
【0058】
また、図8に示したように、閾値Asを始動時水温(外気温)に応じて設定したので、外気温の影響を受けることなくエンジンの始動終了判定を確実に行うことができるとともに、走行禁止時間を無用に長引かせることがない。
【0059】
また、完爆判定より一定時間が経過してもカム位相角が閾値を超えて進角側にならなかった場合には、車室内の警告ランプを点灯することで、運転者に可変動弁装置に不都合が生じていることを知らせることができる。また、車室内のディスプレイに低負荷走行なら可能であることを伝えることにより、低速での最低限の走行を可能にすることができる。
【0060】
実施形態では、エンジン2とモータ1が常時連結されているハイブリッド車両で説明したが、これに限られるものでなく、駆動源がエンジンのみである通常の車両に対しても本発明の適用がある。また、エンジンは、通常のエンジンのほか、リーンバーンエンジンや直接燃料噴射式火花点火エンジンの場合にも適用がある。
【0061】
実施形態では、吸気弁閉時期に相当するカム位相角を検出する場合で説明したが、吸気弁閉時期を直接に検出するようにしてもかわまない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能なハイブリッド車両の構成例を示す概略構成図。
【図2】コントローラのブロック図。
【図3】可変動弁装置の一実施形態の概略構成図。
【図4】吸気弁閉時期とエンジントルクの関係図。
【図5】吸気弁閉時期とエンジントルクの関係を示すグラフに、−25℃と+25℃の各外気温での走行トルクを重ねた特性図。
【図6】始動モード起動判定を説明するためのフローチャート。
【図7】始動モード終了判定、走行禁止解除を説明するためのフローチャート。
【図8】閾値Asの特性図。
【図9】本発明の作用を説明するための波形図。
【図10】第1の発明のクレーム対応図。
【図11】第2の発明のクレーム対応図。
【符号の説明】
1 モータ
2 エンジン
16 コントローラ
29 カム位相角センサ
32 可変動弁装置
50 カム作動角可変機構
Claims (4)
- エンジンをクランキングするモータと、
エンジン始動前は吸気弁閉時期が略最遅角位置にあり、エンジンが始動してエンジン内部の油圧発生とともに作動可能状態となり、その後に吸気弁の開閉時期を制御し得る可変動弁装置と、
実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期を閾値として予め定める手段と、
エンジンが完爆回転数に達して自立運転に入っても走行を禁止しておく手段と、
この走行禁止状態で実際の吸気弁閉時期を検出する手段と、
この検出値と前記閾値との比較により実際の吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったかどうかを判定する手段と、
この判定結果より実際の吸気弁閉時期が閾値を超えて進角側になったら走行禁止を解除する手段と
を備えることを特徴とする車両の始動制御装置。 - エンジンをクランキングするモータと、
エンジン始動前は吸気弁閉時期が略最遅角位置にあり、エンジンが始動してエンジン内部の油圧発生とともに作動可能状態となり、その後に吸気弁の開閉時期を制御し得る可変動弁装置と、
実際の走行に耐え得るエンジントルクが発生するときの吸気弁閉時期に相当するカム位相角を閾値として予め定める手段と、
エンジンが完爆回転数に達して自立運転に入っても走行を禁止しておく手段と、
この走行禁止状態で実際の吸気弁閉時期に相当するカム位相角を検出する手段と、
この検出値と前記閾値との比較により実際のカム位相角が閾値を超えて進角側になったかどうかを判定する手段と、
この判定結果より実際のカム位相角が閾値を超えて進角側になったら走行禁止を解除する手段と
を備えることを特徴とする車両の始動制御装置。 - 前記閾値は外気温が低くなるほど進角側の値とする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の始動制御装置。 - 完爆判定より一定時間が経過しても実際の吸気弁閉時期または実際のカム位相角が閾値を超えて進角側にならなかった場合に、車室内の警告ランプを点灯するかまたは車室内のディスプレイにより低負荷走行なら可能であることを伝える
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の車両の始動制御装置。
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