JP3686260B2 - 層状無機物含有樹脂フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂およびシラン粘土複合体を含む層状無機物含有樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリアリレート等のポリエステル系の樹脂やビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械物性、透明性、ガスバリア性等に優れているため、フィルム材料として、磁気記録テープ基材、食品包材、ディスプレイ、医療用滅菌包装、液晶基盤等、幅広い分野で利用されている。このようなフィルム材料の需要が高まるに伴い、前記フィルムの透明性や表面平滑性を維持したまま、弾性率や寸法安定性およびガスバリア性等の改良が望まれている。
フィルムの透明性を維持しながら機械物性を高める技術としては、各種無機粒子を添加する種々の技術(特開平5−222273号、特開平4−41534号、特開平3−76747号、特開平5−171013号公報等)が開示されているが、上記技術では改良効果は決して充分なものではない。
また、無機粒子を用いる技術としては、国際公開公報95−06090号、米国特許5514734号、国際公開公報93−04118号、国際公開公報93−11190号に、樹脂の引張弾性率や水蒸気透過率を改良する目的で、シラン系化合物などの有機金属化合物等が結合し、平均層厚が約50Å以下であり、かつ最大層厚が約100Å以下である層状粒子等と樹脂マトリックスを含有する樹脂複合材料に関する発明が開示されている。上記技術によれば、カプロラクタムが共重合されたイソシアネートプロピルトリエトキシシラン他で処理したモンモリロナイトおよび樹脂マトリックスとしてナイロン6からなるナイロン6系フィルムが開示されており、該ナイロン6系フィルムの水蒸気透過率は、単独のナイロン6のフィルムに比べて改善されてはいる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂マトリックスとして、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート樹脂を用いたフィルムに関する技術は具体的には開示されていない。従って、透明性や表面平滑性が維持されたまま、弾性率や寸法安定性およびガスバリア性等が改良されたポリエステル樹脂フィルムまたはポリカーボネート樹脂フィルムの技術は実質的には提供されていないのが現状であり、本発明の目的は、このような従来の問題を解決することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、膨潤性ケイ酸塩の単位層同士を分離劈開し、1つの膨潤性ケイ酸塩の凝集粒子を非常に多数の極微小な薄板状の粒子に細分化して調製される薄板状のシラン粘土複合体が、ポリエステル樹脂フィルムまたはポリカーボネート樹脂フィルム中に含有されることによって得られる、層状無機物含有樹脂フィルムである。
【0005】
本発明によれば、請求項1の層状無機物含有樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂およびシラン粘土複合体を含む樹脂フィルムであって、シラン粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4-n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表されるシラン系化合物が導入される事により調製され、かつシラン粘土複合体の平均層厚が300Å以下である。
【0006】
請求項2の層状無機物含有樹脂フィルムは、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルムにおいて、フィルム中のシラン粘土複合体の最大層厚が1000Å以下である。
請求項3の層状無機物含有樹脂フィルムは、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂およびシラン粘土複合体を含む樹脂フィルムであって、シラン粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4-n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表されるシラン系化合物が導入される事により調製され、フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300であり、かつ[N]値が30以上であり、ここで[N]値が、フィルムの面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数であると定義される。
【0007】
請求項4の層状無機物含有樹脂フィルムは、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルムにおいて、[N]値が30以上であり、ここで[N]値が、フィルムの面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数であると定義される。
請求項5の層状無機物含有樹脂フィルムは、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルムにおいて、フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300である。
【0008】
請求項6の層状無機物含有樹脂フィルムは、請求項1、2、3、4または5に記載の層状無機物含有樹脂フィルムにおいて、(A)シラン粘土複合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、(B)ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、(C)重合性プレポリマーを重合する工程から得られる樹脂組成物をフィルム化することによって得られる。
【0009】
請求項7に記載の層状無機物含有樹脂フィルムは、請求項6に記載の樹脂フィルムにおいて、工程(A)で得られる粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔の4倍以上である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分、及びジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる従来公知の任意の熱可塑性ポリエステル樹脂である。
【0011】
前記主成分とするとは、酸成分又はジオール成分中に占めるそれぞれの割合が80%以上、さらには90%以上であることを意図し、上限は100%である。
上記の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、メチルイソフタル酸等のアルキル基置換体など)や誘導体(テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等のようなアルキルエステル化合物など)も使用し得る。また、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体も使用し得る。これらのモノマーの内の2種以上を混合して用いても良い。得られるポリエステル樹脂組成物の特性を損なわない程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合して使用し得る。
【0012】
上記酸成分の中では、得られるポリエステル樹脂の結晶性や強度、弾性率の点から、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのエステル形成性誘導体が好ましい。
また、上記のグリコール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等のような脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような脂環式グリコール、1,4−フェニレンジオキシジメタノールのような芳香族ジオールや、下記一般式(2)
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、−A−は、−O−、−S−、−SO−、−SO2-、−CO−、炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数6〜20のアルキリデン基、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はいずれも水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜5の1価の炭化水素基であり、それらはそれぞれ異なっていても良い。)で表されるビスフェノール化合物、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(「ビスフェノールTMC」)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルフォン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、及びビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等が挙げられ、これらの置換体や誘導体もまた使用し得る。また、ε−カプロラクトンのような環状エステルも使用し得る。これらの内の2種以上を混合して用いても良い。更に、ポリエステル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、長鎖型のジオール化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)などを組み合わせて使用しても良い。
【0015】
前記ジオール成分の中では、取り扱い性および得られるポリエステル樹脂の強度、弾性率等の点から、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート、テレフタル酸と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」)の反応から得られるポリアリレート(例えばユニチカ(株)製、商品名:Uポリマー)、イソフタル酸と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの反応から得られるポリアリレート(例えば、デュポン社製、商品名:アリロン)、テレフタル酸とイソフタル酸の混合物および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの反応から得られるポリアリレート、テレフタル酸とイソフタル酸の混合物および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの混合物の反応から得られるポリアリレート、イソフタル酸と2,5−ナフタレンジカルボン酸の混合物および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの反応から得られるポリアリレート、イソフタル酸と2,5−ナフタレンジカルボン酸の混合物および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの混合物の反応から得られるポリアリレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂の製造に使用される酸成分および/またはジオール成分を2種以上用いて製造した共重合ポリエステルが挙げられる。
【0016】
上記の熱可塑性ポリエステル樹脂は単独で、または組成あるいは成分の異なるもの及び/または固有粘度の異なるものを2種以上組み合わせて使用し得る。
前記ポリエステル樹脂の中では、強度、弾性率、コスト等の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフタレートならびにテレフタル酸及び/又はイソフタル酸およびビスフェノールAを用いた反応で得られるポリアリレートが好ましい。
【0017】
熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用いて、25℃で測定した固有粘度が0.3〜2.0(dl/g)のものが望ましい。固有粘度が0.3(dl/g)未満である場合、得られるフィルムの機械物性や耐衝撃性が低く、また、2.0(dl/g)より大きい場合はフィルム化時の流動性が低下する。
【0018】
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂には特に限定はなく、ビスフェノール化合物とホスゲンとの反応、またはビスフェノール化合物と炭酸ジエステルとの反応により得られる従来公知の任意のポリカーボネート樹脂が使用され得る。
前記ビスフェノール化合物としては、上記一般式(2)で表される化合物の他に、難燃性を高めるために、ベンゾトリアゾール基を有するビスフェノールを共重合させたポリマーも使用され得る。これらビスフェノール化合物の置換体や誘導体もまた使用し得る。これらビスフェノール化合物は単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
また、炭酸ジエステル化合物としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等のビスアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート等のビスアリールカーボネート等が挙げられる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン型ポリカーボネート樹脂、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン型ポリカーボネート、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン型ポリカーボネート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン型ポリカーボネート、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンゼン等が挙げられる。それらは単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0021】
前記ポリカーボネート樹脂は単独で使用しても良く、また、構成成分やその比率が異なるもの及び(または)分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用しても良い。
前記ポリカーボネート樹脂の中では、強度や弾性率およびコストの点から、ビスフェノールA型ポリカーボネートが好ましい。
【0022】
ポリカーボネート(PC)樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10000〜200000であり、好ましくは20000〜120000である。粘度平均分子量が10000未満である場合、得られる樹脂フィルムの強度が低下する傾向があり、また、200000より大きい場合、溶液流延時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
【0023】
尚、粘度平均分子量は測定温度25℃で求めたポリカーボネート樹脂のクロロホルム溶液等の極限粘度を、マーク-ホウインク-桜田(Mark−Houwink−Sakurada)の式に代入して計算する事により求められる。該式の各種係数は、ポリマーハンドブック第3改訂版ウイリー著(1989年)(Polymer Handbook 3rd Ed.Willey,1989)の7〜23ページに記載されているものである。
【0024】
本発明の層状無機物含有樹脂フィルムには、樹脂成分として、熱可塑性ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂が使用される。熱可塑性ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂はそれぞれ、用途や目的に応じて使用される。耐熱性やコストという点では、熱可塑性ポリエステル樹脂を用いることが好ましく、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性、耐候性、保香性という点ではポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるシラン粘土複合体とは、膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4-n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)
で表されるシラン系化合物が導入されているものである。
【0026】
上記の膨潤性ケイ酸塩は、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートから成り、その例としては、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。膨潤性ケイ酸塩としてスメクタイト族粘土および膨潤性雲母を使用する場合には、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中における膨潤性ケイ酸塩の分散性、入手の容易さ及びフィルムの物性改善の点から好ましい。
【0027】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(3)
X0.2〜0.6Y2〜3Z4O10(OH)2・nH2O (3)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。前記スメクタイト族粘土の初期の凝集状態における底面間隔は約10〜17Åであり、凝集状態でのスメクタイト族粘土の平均粒径はおおよそ1000Å〜1000000Åである。
【0028】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(4)
X0.5〜1.0Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2 (4)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)で表される、天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。下記のバーミキュライト類相当品等も使用し得る。前記膨潤性雲母の初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ10〜17Åであり、凝集状態での膨潤性雲母の平均粒径は約1000〜1000000Åである。
【0029】
前記バーミキュライトには3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(5)
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)x・nH2O (5)
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられる。前記バーミキュライトの初期の凝集状態における底面間隔はおおよそ10〜17Åであり、凝集状態でのバーミキュライトの平均粒径は約1000〜5000000Åである。
【0030】
膨潤性ケイ酸塩は単独で用いても良く、2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの内では、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトおよび層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中での分散性、入手の容易さ及びフィルムの物性改善効果の点から好ましい。
【0031】
膨潤性ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
膨潤性ケイ酸塩に導入されるシラン系化合物とは、通常一般に用いられる任意のものが使用され得、下記一般式(1)
YnSiX4-n (1)
で表されるものである。一般式(1)中のnは0〜3の整数であり、Yは、置換基を有していても良い炭素数1〜25の炭化水素基である。炭素数1〜25の炭化水素基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例えばエステル結合で結合している基、エーテル結合で結合している基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、末端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカプト基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニル結合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。これらの内の1種で置換されていても良く、2種以上で置換されていても良い。Xは加水分解性基および(または)水酸基であり、該加水分解性基の例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子よりなる群から選択される1種以上である。一般式(1)中、nまたは4−nが2以上の場合、n個のYまたは4−n個のXはそれぞれ同種でも異種でも良い。
【0032】
本明細書において炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含することを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、及びシクロアルキル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等を包含する。
【0033】
上記一般式(1)において、Yが炭素数1〜25の炭化水素基である場合の例としては、デシルトリメトキシシランの様に直鎖長鎖アルキル基を有するもの、メチルトリメトキシシランの様に低級アルキル基を有するもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様に不飽和炭化水素基を有するもの、2−エチルヘキシルトリメトキシシランの様に側鎖を有するアルキル基を有するもの、フェニルトリエトキシシランの様にフェニル基を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシシランの様にナフチル基を有するもの、及びp−ビニルベンジルトリメトキシシランの様にアラルキル基を有するものが挙げられる。Yが炭素数1〜25の炭化水素基の中でも特にビニル基を有する基である場合の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、及びビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Yがエステル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエーテル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、及び2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエポキシ基で置換されている基である場合の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基で置換されている基である場合の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが末端にカルボニル基を有する基で置換されている基である場合の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがメルカプト基で置換されている基である場合の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがハロゲン原子で置換されている基である場合の例としては、γ−クロロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがスルホニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがスルフィニル基で結合している基で置換されている基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがニトロ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトロソ基で置換されている基である場合の例としては、γ−ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトリル基で置換されている基である場合の例としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがカルボキシル基で置換されている基である場合の例としては、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。前記以外にYが水酸基を有する基であるシラン系化合物もまた使用し得る。その様な例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。水酸基はまたシラノール基(SiOH)の形であり得る。
【0034】
上記のシラン系化合物の置換体、または誘導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物は、単独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
シラン粘土複合体は、例えば、膨潤性ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後にシラン系化合物を添加する事により得られる。
上記の分散媒とは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒を意図する。該極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物、その他の溶媒であるジメチルスルホキシドや2−ピロリドン等が挙げられる。
【0035】
これらの極性溶媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いても良い。
膨潤性ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させることは、該膨潤性ケイ酸塩を該分散媒中で充分に撹拌して分散させる事によりなし得る。拡大後の底面間隔は初期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔に比べて、好ましくは3倍以上であり、更に好ましくは5倍以上である。上限値は特にない。ただし、底面間隔が約10倍以上に拡大すると、底面間隔の測定が困難になるが、この場合、膨潤性ケイ酸塩は実質的に単位層で存在する。
【0036】
ここで、本明細書において、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔とは、分散媒に添加する前の、単位層が互いに積層し凝集状態である粒子状の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔である事を意図する。
底面間隔は小角X線回折法(SAXS)などで求めることが出来る。すなわち、分散媒と膨潤性ケイ酸塩を含む分散体におけるX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、該ピーク角値をBraggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。
【0037】
膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を効率的に拡大させるためには、数千rpm以上で撹拌するか、以下に示す物理的な外力を加える方法が挙げられる。物理的な外力は、一般に行われるフィラーの湿式微粉砕方法を用いることによって加えられ得る。一般的なフィラーの湿式微粉砕方法としては、例えば、硬質粒子を利用する方法が挙げられる。この方法では、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩と任意の溶媒とを混合して撹拌し、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩との物理的な衝突によって、膨潤性ケイ酸塩を分離させる。通常用いられる硬質粒子はフィラー粉砕用ビーズであり、例えば、ガラスビーズまたはジルコニアビーズ等が挙げられる。これら粉砕用ビーズは、膨潤性ケイ酸塩の硬度、または撹拌機の材質を考慮して選択され、上述したガラスまたはジルコニアに限定されない。その粒径もまた、膨潤性ケイ酸塩のサイズなどを考慮して決定されるために一概に数値で限定されるものではないが、直径0.1〜6.0mmの範囲にあるものが好ましい。ここで用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、上記の分散媒が好ましい。
【0038】
上記のように、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を拡大して、凝集状態であった層を劈開してばらばらにし、個々独立に存在させた後にシラン系化合物を添加して撹拌する。この様に、劈開された膨潤性ケイ酸塩の層の表面に該シラン系化合物を導入する事によってシラン粘土複合体が得られる。
シラン系化合物の導入は、分散媒を用いる方法の場合は、底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩と分散媒を含む分散体中にシラン系化合物を添加して撹拌することにより行われ得る。シラン系化合物をより効率的に導入したい場合は、撹拌の回転数を1000rpm以上、好ましくは1500rpm以上、より好ましくは2000rpm以上にするか、あるいは湿式ミルなどを用いて500(1/s)以上、好ましくは1000(1/s)以上、より好ましくは1500(1/s)以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は約25000rpmであり、剪断速度の上限値は約500000(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行ったり、剪断を加えても効果はそれ以上変わらない傾向があるため、上限値よりも大きい値で撹拌を行う必要はない。
【0039】
物理的外力を用いる方法の場合、膨潤性ケイ酸塩に物理的外力を加えながら(例えば、湿式粉砕しながら)そこにシラン系化合物を加えることによって、シラン系化合物を導入し得る。
あるいは、物理的外力によって底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩を分散媒中に加え、上記の分散媒を用いる方法の場合と同様に、そこにシラン系化合物を添加することによって、シラン系化合物を膨潤性ケイ酸塩に導入することもできる。
【0040】
膨潤性ケイ酸へのシラン系化合物の導入は、底面間隔が拡大した膨潤性ケイ酸塩の表面に存在する水酸基と、シラン系化合物の加水分解性基および(または)水酸基とが反応する事によって、膨潤性ケイ酸塩のにシラン系化合物が導入され得る。
膨潤性ケイ酸塩中に導入されたシラン系化合物がさらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、あるいはビニル基などの様な反応活性な官能基を有している場合、この様な反応活性基と反応できる化合物を更に添加して、この化合物をこの反応活性基と反応させることも可能である。この様にして膨潤性ケイ酸塩に導入されたシラン系化合物の官能基鎖の鎖長を長くしたり、極性を変えることができる。この場合、添加される化合物としては上記のシラン系化合物自体も用いられ得るが、それらに限定されることなく、目的に応じて任意の化合物が用いられ得、例えば、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、及び水酸基含有化合物等が挙げられる。
【0041】
反応は室温で充分に進行するが、必要に応じて加温しても良い。加温時の最高温度は用いるシラン系化合物の分解温度未満であり、かつ分散媒の沸点未満で有れば任意に設定されうる。
シラン系化合物の使用量は、粘土分散体におけるシラン粘土複合体の分散性、シラン粘土複合体と樹脂との親和性、フィルム中でのシラン粘土複合体の分散性が十分に高まるように調製し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物を併用し得る。従って、シラン系化合物の添加量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性ケイ酸塩100重量部に対して、0.1から200重量部であり、好ましくは0.2から180重量部であり、より好ましくは0.3から160重量部であり、更に好ましくは0.4から140重量部であり、特に好ましくは0.5から120重量部である。シラン系化合物の量が0.1重量部未満であると得られるシラン粘土複合体の微分散化効果が充分で無くなる傾向がある。また、200重量部以上では効果が変わらないので、200重量部より多く添加する必要はない。
【0042】
上記のようにして得られるシラン粘土複合体の底面間隔は、導入されたシラン系化合物の存在により、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて拡大し得る。シラン粘土複合体の底面間隔は膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて、1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは1.7倍以上、特に好ましくは2倍以上拡大している。このように、シラン系化合物が導入されることにより、および底面間隔が拡大されることにより、シラン粘土複合体と樹脂との親和性を高めることができる。
【0043】
ここで、シラン系化合物が膨潤性ケイ酸塩に導入された事は種々の方法で確認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、テトラヒドロフランやクロロホルムなどの有機溶剤を用いてシラン粘土複合体を洗浄する事によって、単に吸着しているシラン系化合物を洗浄し除去する。洗浄後のシラン粘土複合体を乳鉢などで粉体状にしたのち充分に乾燥する。次いで、シラン粘土複合体を粉末状の臭化カリウム(KBr)等のような窓材質と所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フーリエ変換(FT)−IRを用い、透過法等により、シラン系化合物に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定することが所望される場合、あるいは導入されたシラン系化合物量が少ない場合には、充分に乾燥した粉末状のシラン粘土複合体をそのまま拡散反射法(DRIFT)で測定することが望ましい。
【0044】
また、シラン粘土複合体の底面間隔が膨潤性ケイ酸塩よりも拡大している事は、種々の方法で確認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
すなわち、上記と同様にして、吸着しているシラン系化合物を有機溶媒で洗浄してシラン粘土複合体から除去し、乾燥した後に、小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。この方法では、粉末状のシラン粘土複合体の(001)面に由来するX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。同様に初期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を測定し、この両者を比較することにより底面間隔の拡大を確認し得る。
【0045】
前記のように、有機溶剤で洗浄した後に、添加したシラン系化合物に由来する吸収帯がFT−IR等で観測され、かつ底面間隔が原料の膨潤性ケイ酸塩よりも拡大していることをSAXS等で測定することにより、シラン粘土複合体が生成していることが判る。
本発明の層状無機物含有樹脂フィルムにおいて、熱可塑性ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂から成る樹脂成分100重量部に対するシラン粘土複合体の配合量は、0.001〜12重量部、好ましくは0.003〜10重量部、より好ましくは0.005〜8重量部である。シラン粘土複合体の配合量が0.001重量部未満であると物性の改善効果が十分でない傾向にあり、12重量部をこえると、透明性や表面性が損なわれる傾向にある。
【0046】
また、シラン粘土複合体に由来する層状無機物含有樹脂フィルムの灰分率が、代表的には0.001〜10重量%、好ましくは0.003〜8重量%、より好ましくは0.005〜6重量%と成るように調製される。灰分率が0.001重量部未満であると物性の改善効果が十分でない傾向にあり、10重量%をこえると、透明性や表面性が損なわれる傾向にある。
【0047】
本発明のポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂およびシラン粘土複合体を含む層状無機物含有樹脂フィルムの製造方法には特に制限はない。例えば、(A)シラン粘土複合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、(B)ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、(C)重合性プレポリマーを重合する工程から得られる樹脂組成物をフィルム化することによって得られる。
【0048】
上記の工程(A)で用いられる分散媒とは、シラン粘土複合体の調製時に用いる分散媒と同様であり、すなわち、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒または水と該極性溶媒の混合溶媒を意図する。
粘土分散体の調製方法は特に限定されず、例えば、シラン粘土複合体を調製した際に得られる、分散媒とシラン粘土複合体を含む系をそのまま用いる方法(直接法と称す)、または、シラン粘土複合体の調製時に用いた分散媒を他の所望の分散媒と置換する事により、新たに加えた分散媒とシラン粘土複合体を得る方法(置換法と称す)、あるいは、分散媒を除去して調製したシラン粘土複合体と所望の分散媒を充分に混合する方法等が挙げられる。シラン粘土複合体の分散性の点から、直接法および置換法が好ましい。
【0049】
尚、混合を効率よく行うためには、撹拌の回転数は500rpm以上、あるいは300(1/s)以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は25000rpmであり、剪断速度の上限値は500000(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行っても効果はそれ以上変わらない傾向があるため、上限値より大きい値で撹拌を行う必要はない。
【0050】
工程(A)で得られる粘土分散体に含まれるシラン粘土複合体は、膨潤性ケイ酸塩が有していたような初期の積層・凝集構造はほぼ完全に消失し、層同士の間隔が拡大していわゆる膨潤状態に成る。膨潤状態を表す指標として底面間隔が用いられ得る。すなわち、上記の粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔の4倍以上であり、好ましくは5倍以上であり、更に好ましくは6倍以上である。底面間隔が4倍未満であると、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムにおいてシラン粘土複合体が効率的に微分散しない傾向がある。
【0051】
次に、工程(B)、すなわち、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程を行う。ここで、上記の重合性プレポリマーとは、重合性モノマーおよび低重合度体から選ばれる1種以上を意図する。
ポリエステル樹脂の重合性モノマーとは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分、及びジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分であり、ポリカーボネート樹脂の重合性モノマーとは、ビスフェノール化合物や炭酸ジエステル化合物およびホスゲンを意図する。
【0052】
また、低重合度体とは、上記重合性モノマーの反応により得られる縮合物であり、かつ、溶融状態においてシラン粘土複合体を含む粘土分散体が充分に均一分散できる程度の溶融粘度となる分子量を有するものを意味する。粘土分散体の均一分散性の点から、ポリエステル樹脂の低重合度体の対数粘度は0.4(dl/g)未満であり、好ましくは0.35(dl/g)以下であり、より好ましくは0.30(dl/g)以下であり、また、ポリカーボネート樹脂の低重合度体の粘度平均分子量(Mv)は10000未満であり、好ましくは8000以下であり、より好ましくは6000以下である。
【0053】
上記の低重合度体を得る方法としては特に限定されない。ポリエステル樹脂の低重合度体を得る方法としては、例えば、グリコール化合物で芳香族ジカルボン酸をエステル化する方法、芳香族ジカルボン酸アルキルエステルとグリコール化合物をエステル交換する方法等、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、グリコール化合物またはそのエステル形成性誘導体とを縮合反応させて得る方法の他、熱可塑性ポリエステル樹脂の一部あるいは全部をグリコール化合物で解重合して得る方法も挙げられる。すなわち、例えば、原料となる熱可塑性ポリエステル樹脂とグリコール化合物の混合物を加熱し、150℃付近から熱可塑性ポリエステル樹脂の融点付近の温度範囲で解重合する方法、あるいは、原料となる熱可塑性ポリエステル樹脂を予め熱可塑性ポリエステル樹脂の融点以上で溶融状態とし、そこへグリコール化合物を添加・撹拌しながら解重合する方法などが挙げられる。また、ポリカーボネート樹脂の低重合度体を得る方法としては、例えば、ビスフェノール化合物と炭酸ジエステル化合物とをエステル交換する方法、ビスフェノール化合物とホスゲンとを界面重縮合反応する方法の他、ポリカーボネート樹脂の一部あるいは全部を炭酸ジエステル化合物で解重合して得る方法等も挙げられる。
【0054】
低重合度体を得る反応に必要な触媒は、金属酸化物、炭酸塩、酢酸塩およびアルコラートから成る群より選ばれる1種または2種以上である。
粘土分散体と重合性プレポリマーとの混合の方法は特に限定されず、例えば、溶融状態または溶液にした重合性プレポリマーおよび粘土分散体を一括混合する方法や、溶融状態の重合性プレポリマーに粘土分散体を連続的に添加する方法が挙げられる。連続的に添加する場合、粘土分散体の添加速度は特に限定されないが重合性プレポリマー100重量部に対して、粘土分散体を0.02〜4.0重量部/分、好ましくは0.03〜3.8重量部/分、より好ましくは0.05〜3.5重量部/分で連続的に添加する。
【0055】
そして工程(C)、すなわち、重合性プレポリマーを重合する工程を行い得る。重合方法は特に限定されず、通常一般に行われるポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合方法によってなし得る。その様な方法としては、例えば、重合性プレポリマーを溶融重縮合する方法、あるいは固相重合する方法が挙げられる。
【0056】
本発明の層状無機物含有樹脂フィルムは、上記の工程(A)、(B)および(C)を行うことによって得られる樹脂組成物をフィルム化する事によって得られる。フィルム化の方法は特に限定されず、例えば延伸法、Tダイ押出法または溶液流延法などが挙げられる。
上記のように、工程(A)、(B)および(C)によって得られる樹脂組成物をフィルム化する方法の他に、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂を溶解かし得る溶媒中に、予めシラン粘土複合体を分散させておき、次いでポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂を溶解して十分に混合した後に溶剤を除去する事によって得られる樹脂組成物をフィルム化する方法でもよい。
【0057】
そのようにして得られる本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中で分散しているシラン粘土複合体の構造は、配合前の膨潤性ケイ酸塩が有していたような、層が多数積層したμmサイズの凝集構造とは全く異なる。すなわち、マトリックス樹脂と親和性を有するシラン系化合物が導入され、かつ初期の膨潤性ケイ酸塩に比べて底面間隔が拡大されたシラン粘土複合体を用いることによって、層同士が劈開し、互いに独立して細分化する。その結果、シラン粘土複合体は樹脂フィルム中で非常に細かく互いに独立した薄板状で分散し、その数は、原料である膨潤性ケイ酸塩に比べて著しく増大する。この様な薄板状のシラン粘土複合体の分散状態は以下に述べるアスペクト比(層長さ/層厚の比率)、分散粒子数、最大層厚および平均層厚で表現され得る。
【0058】
まず、平均アスペクト比を、樹脂中に分散したシラン粘土複合体の層長さ/層厚の比の数平均値であると定義すると、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比は10〜300であり、好ましくは15〜300であり。更に好ましくは20〜300である。シラン粘土複合体平均アスペクト比が10未満であると、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムの弾性率や寸法安定性への改善効果が十分に得られない場合がある。また、300より大きくても効果はそれ以上変わらないため、平均アスペクト比を300より大きくする必要はない。
【0059】
また、[N]値を、樹脂フィルム面積100μm2における、膨潤性ケイ酸塩の単位重量比率当たりの分散粒子数であると定義すると、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムにおけるシラン粘土複合体の[N]値は、30以上であり、好ましくは45以上であり、より好ましくは60以上である。上限値は特にないが、[N]値が1000程度を越えると、それ以上効果は変わらなくなるので、1000より大きくする必要はない。[N]値は、例えば、次のようにして求められ得る。すなわち、約50μm〜100μm厚のフィルムをTEM等で撮影した像上で、面積が100μm2の任意の領域に存在するシラン粘土複合体の粒子数を、用いた膨潤性ケイ酸塩の重量比率で除すことによって求められ得る。あるいは、TEM像上で、100個以上の粒子が存在する任意の領域(面積は測定しておく)を選んで該領域に存在する粒子数を、用いた膨潤性ケイ酸塩の重量比率で除し、面積100μm2に換算した値を[N]値としてもよい。従って、[N]値は層状無機物含有樹脂フィルムのTEM写真等を用いることにより定量化できる。
【0060】
また、平均層厚を、薄板状で分散したシラン粘土複合体の層厚みの数平均値であると定義すると、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中のシラン粘土複合体の平均層厚の上限値は300Å以下であり、好ましくは250Å以下であり、より好ましくは200Å以下である。平均層厚が300Åより大きいと、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムの弾性率や寸法安定性への改良効果が十分に得られない場合がある。平均層厚の下限値は特に限定されないが、10Åより大きく、好ましくは30Åより大きく、より好ましくは50Åより大きい。
【0061】
また、最大層厚を、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中に薄板状に分散したシラン粘土複合体の層厚みの最大値であると定義すると、シラン粘土複合体の最大層厚の上限値は、1000Å以下であり、好ましくは900Å以下であり、より好ましくは800Å以下である。最大層厚が1000Åより大きいと、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムの表面性や透明性が損なわれる場合がある。シラン粘土複合体の最大層厚の下限値は特に限定されないが、10Åより大きく、好ましくは50Åより大きく、より好ましくは100Åより大きい。
【0062】
本明細書において、層厚および層長さは顕微鏡等を用いて撮影される像から求めることができる。すなわち、いま仮に、X−Y面上に上記の樹脂フィルムを置いたと仮定する。上記のフィルムをX−Z面あるいはY−Z面と平行な面で薄片を切り出し、該薄片を透過型電子顕微鏡などを用い、約4〜10万倍以上の高倍率で観察して求められ得る。測定は、上記の方法で得られた透過型電子顕微鏡の象上に置いて、100個以上のシラン粘土複合体を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などで画像化し、計算機処理する事等により定量化できる。あるいは、定規などを用いて計測しても求めることもできる。
【0063】
本発明の層状無機物含有樹脂フィルムには、該フィルムの弾性率や透明性、表面性を損なわない程度であるならば、必要に応じて、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂などの透明性熱可塑性樹脂、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィン系共重合体等のエラストマーを添加することができる。尚、マトリックス樹脂との親和性を得る目的で、前記のエラストマーは無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸化合物やグリシジルメタクリレートなどの不飽和エポキシ化合物などで変性されていても良い。
【0064】
また、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムには必要に応じて、滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候性付与剤、帯電防止剤などの添加剤を配合しても良い。
本発明の層状無機物含有樹脂フィルムは、シラン粘土複合体を含有しない、他の任意のフィルムを積層させて積層フィルムとする事も可能である。
【0065】
前記の積層フィルムを製造する方法はとくに限定されないが、例えば、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムと他のフィルムを接着剤などで接着する方法、他のフィルム上で、本発明の層状無機物含有樹脂フィルムを流延法によって形成させる方法、また、逆に、本発明の層状無機物含有樹脂フィルム上で他のフィルムを流延法によって形成させる方法などが挙げられる。
【0066】
本発明の層状無機物含有樹脂フィルム中ではシラン粘土複合体が非常に細かく、かつ薄い板状で均一分散していることから、透明性や表面平滑性を損なうことなく、弾性率や強度を改善することができる。
本発明によって得られる樹脂フィルムは主に、磁気記録テープ、包装用フィルム、絶縁材料、食品用包装材料、医療用材料として用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例、及び比較例で使用する主要原料を以下にまとめて示す。尚、特に断らない場合は、原料の精製は行っていない。
(ポリエステル樹脂)
・PET:鐘紡(株)製のポリエチレンテレフタレート樹脂、商品名PBK2、対数粘度(ηinh)=0.63(dl/g)(以降、PETと称す)
(重合性プレポリマー)
・テレフタル酸ジメチル:和光純薬(株)製、和光特級(以降、DMTと称す)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル:和光純薬(株)製、和光1級(以降、NDCと称す)
・ビスヒドロキシエチルテレフタレート:日曹丸善ケミカル(株)製、NISSO−BHET(以降、BHETと称す)
・PETをEGで解重合して得られたものを用いた。詳細は実施例中に示す。
・二塩化イソフタロイル:和光純薬(株)製、和光規格品(以降、IPCと称す)
・二塩化テレフタロイル:和光純薬(株)製、和光1級(以降、TPCと称す)
・2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA):和光純薬(株)製、和光1級(以降、ビスフェノールAと称す)
・p−t−ブチルフェノール:和光純薬(株)製、和光1級
・ジエチルカーボネート:ALDRICH製、試薬特級(以降、DECと称す)
(膨潤性ケイ酸塩)
・モンモリロナイトは山形県産の天然モンモリロナイト(底面間隔=13Å)を用いた。
・ヘクトライトはコープケミカル(株)製の合成スメクタイト:ルーセンタイトSWN(底面間隔=13Å)を用いた(以降、ヘクトライトと称す)。
・膨潤性雲母は、タルク25.4gとケイフッ化ナトリウム4.7gの微粉砕物を混合し、800℃で加熱処理したものを用いた(底面間隔=12Å)。
(シラン系化合物)
・γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン:日本ユニカー(株)製、A−1120(以降、A1120と称す)
・γ−(ポリオキシエチレン)プロピルトリメトキシシラン:日本ユニカー(株)製、A−1230(以降、A1230と称す)
(分散媒)
・エチレングリコール:日本触媒(株)製、モノエチレングリコール(以降、EGと称 す)
・塩化メチレン:和光純薬(株)製、和光特級
また、実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
(FT−IR)
シラン粘土複合体1.0gをテトラヒドロフラン(THF)50mlに添加し、24時間撹拌して吸着しているシラン系化合物を洗浄・除去した後、遠心分離を行い上澄みを分離した。この洗浄操作を3回繰り返した。洗浄後、十分に乾燥したシラン粘土複合体約1mgとKBr粉末約200mgとを乳鉢を用いて充分に混合した後、卓上プレスを用いて測定用のKBrディスクを作製した。ついで赤外分光器(島津製作所(株)製、8100M)を用いて透過法で測定した。検出器は液体窒素で冷却したMCT検出器を用い、分解能は4cm-1、スキャン回数は100回とした。
(分散状態の測定)
シラン粘土複合体に関しては、TEMを用いて以下のように行った。
【0068】
厚み50〜100μmの樹脂フィルムを観察した。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)を用い、加速電圧80kVで倍率4万〜100万倍でシラン粘土複合体の分散状態を観察撮影した。TEM写真において、100個以上の分散粒子が存在する領域を選択し、粒子数([N]値)、層厚および層長を、目盛り付きの定規を用いた手計測または、必要に応じてインタークエスト社の画像解析装置PIASIIIを用いて処理する事により測定した。
平均アスペクト比は個々のシラン粘土複合体の層長と層厚の比の数平均値とした。
[N]値の測定は以下のようにして行った。まず、TEM像上で、選択した領域に存在するシラン粘土複合体の粒子数を求める。これとは別に、シラン粘土複合体に由来する樹脂フィルムの灰分率を測定する。上記粒子数を灰分率で除し、面積100μm2に換算した値を[N]値とした。
【0069】
平均層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚の数平均値、最大層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚の中で最大の値とした。
分散粒子が大きく、TEMでの観察が不適当である場合は、光学顕微鏡(オリンパス光学(株)製の光学顕微鏡BH−2)を用いて上記と同様の方法で[N]値を求めた。ただし、必要に応じて、サンプルはLINKAM製のホットステージTHM600を用いて260〜270℃で溶融させ、溶融状態のままで分散粒子の状態を測定した。
【0070】
板状に分散しない分散粒子のアスペクト比は、長径/短径の値とした。ここで、長径とは、顕微鏡像等において、対象となる粒子の外接する長方形のうち面積が最小となる長方形を仮定すれば、その長方形の長辺を意図する。また、短径とは、上記最小となる長方形の短辺を意図する。
(小角X線回折法(SAXS)による底面間隔の測定)
X線発生装置(理学電機(株)製、RU−200B)を用い、ターゲットCuKα線、Niフィルター、電圧40kV、電流200mA、走査角2θ=0.2〜16.0°、ステップ角=0.02°の測定条件で底面間隔を測定した
。
【0071】
底面間隔は、小角X線回折ピーク角値をBraggの式に代入して算出した。ただし、小角X線ピーク角値の確認が困難である場合は、層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したかあるいは、ピーク角値がおおよそ0.8°以下である為に確認が困難であるとみなし、底面間隔の評価結果としては>100Åとした。
(フィルムの膜厚)
サンコウ電子研究所(株)製の電磁式膜厚計;SP−1100Dを用いて、フィルムの膜厚を測定した。
(引張特性)
JISK7127に従い、25℃において、引張速度500mm/sでの引張弾性率を測定した。
(熱線膨張係数)
セイコー電子(株)製のSSC−5200およびTMA−120Cを用いて測定した。
(中心線粗さ)
東京精密(株)製の表面粗さ計;surfcom1500Aを用いて、中心線粗さを測定した。
(ヘーズ(曇価))
日本電色工業(株)製のヘーズ測定器;濁度計A300を用いて、JISK7105に従ってフィルムのヘーズを測定した。
(酸素透過率)
日製産業(株)製の酸素透過率測定装置OXTRANを用いて、JISK7126に従って測定した。
(透湿度)
日製産業(株)製の透湿度測定装置PERMATRANを用いて、JISK7126に従って測定した。
(対数粘度)
得られたPETまたはPEN樹脂フィルムを乾燥(140℃、4時間)した後、約100mgを精秤して、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(1/1、重量比)混合溶媒20mlを加えて120℃で溶解した。測定温度25℃、ウベローデ型粘度計、自動粘度測定装置(ラウダ社製、ビスコタイマー)を用いて溶液粘度の測定を行い、下記式から対数粘度(ηinh)を求めた。
ηinh={ln(t/t0)}/C
(ただし、式中、tは溶液の値、t0は混合溶媒のみの値、Cは濃度(g/dl))
(GPC)
クロロホルム約6gにPAR樹脂フィルム約4mgを溶解させた。0.5μmフィルター(PTFE製)で濾過した後、カラム温度40℃、キャリアー溶媒クロロホルム、流量1mL/分、インジェクション量10μLの条件で、WATERS製GPC用いて測定を行い、ポリスチレン換算にて重量平均分子量(Mw)を求めた。
(粘度平均分子量)
得られたPC樹脂フィルムを乾燥(120℃、4時間)した後、約100mgを精秤して、クロロホルム20mlを加えて溶解した。測定温度25℃、ウベローデ型粘度計、自動粘度測定装置(ラウダ社製、ビスコタイマー)を用いて極限粘度([η])を測定し、下記式から粘度平均分子量(Mv)を算出した。
[η]=1.2×10-4×Mv0.82
(灰分率)
シラン粘土複合体(または膨潤性ケイ酸塩)に由来する、樹脂フィルムの灰分率は、JISK7052に準じて測定した。
(製造例1〜4):膨潤性ケイ酸塩へのシラン系化合物の導入
3500gのイオン交換水に125gの膨潤性ケイ酸塩を加え、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて5000rpm、5分間撹拌して分散させた。その後、簡易ピペットを用いて、下記のシラン系化合物を滴下してから更に撹拌する事によってシラン粘土複合体を調製した。シラン系化合物は、A1120(γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン)はそのまま用い、A1230(γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン)は塩酸でpH3.0に調製した水で加水分解したものを用いた。
【0072】
シラン粘土複合体の確認は、分散体から固形分を分離、乾燥、粉砕したもをSAXSにより底面間隔を測定し、およびTHFで洗浄したもののFT−IRによりシラン系化合物に由来する官能基の吸収帯を測定することにより行った。結果は表1に示した。
(実施例1)
製造例1で得られたA−Mo−水3600gに1800gのEGを加えて十分に混合し、温度約100〜130℃で約4時間撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体およびEGを含む粘土分散体(A−Mo−EGと称す)を調製した。粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0073】
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
蒸留管をとりつけた重合機に、2500gのPET、650gのEG、7.5gのヒンダードフェノール系安定剤(旭電化(株)製アデカスタブAO60、以降AO60と称す)を投入し、乾燥窒素気流下、反応温度180〜240℃で約1時間30分撹拌して、過剰のEGを流出させながらPETの解重合を行った。解重合後、得られたPETプレポリマーの対数粘度は0.11(dl/g)であった。上記PETプレポリマーを230〜250℃に保ち、100〜180rpmで撹拌しながら、乾燥窒素気流下、1800gの粘土分散体A-Mo-EGを連続的に添加した。粘土分散体の添加速度は、約2000g/時間である。粘土分散体添加後、系を280℃に昇温しながら、使用したEGの70重量%以上を系外に除去した後、系を減圧(0.5〜5.0torr)して溶融重縮合を行うことにより、シラン粘土複合体含有PET樹脂を得た。
【0074】
得られたシラン粘土複合体含有PET樹脂を乾燥(130℃、5時間)した後、Tダイを有する押出機により280℃で押出を行い、急冷固化してアモルファスのシートを得た。得られたシートを、加熱ロールと冷却ロールの間で、80℃で縦方向に3.7倍、95℃で横方向に3.8倍延伸した。次いで、延伸後のフィルムを200℃で熱処理を行う事によって、シラン粘土複合体を含有するPETフィルム(膜厚105μ)を得、評価した。評価結果を表2に示す。
(実施例2)
製造例2で得られたE−Mo−水を粘土分散体として使用した。該粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0075】
3600gの粘土分散体E−Mo−水を80〜90℃に加熱しながら、3300gのBHETを加えて溶解させ、100〜300rpmで撹拌し混合した。前記の混合物を、約120〜140℃で約3時間かけて脱水した(微量の水を含む)。次いで、7.5gのAO60、及び重合触媒である三酸化アンチモン(Sb2O3、以降Sb2O3と称す)0.45gを投入し、重合温度280℃、減圧度0.5〜5.0torrで溶融重縮合を行うことにより、シラン粘土複合体含有PET樹脂を得た。
【0076】
その後、実施例1と同様の方法でフィルム化する事によってシラン粘土複合体を含有するPETフィルム(膜厚101μm)を得、評価した。
(実施例3)
製造例3で得られたA−He−水を粘土分散体として使用した。該粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0077】
粘土分散体E−Mo−水の代わりに、3600gの粘土分散体A−He−水を用いた以外は、実施例2と同様の方法でシラン粘土複合体含有PET樹脂を得た。
その後、実施例1と同様の方法でフィルム化する事によってシラン粘土複合体を含有するPETフィルム(膜厚105μm)を得、評価した。
【0078】
(実施例4)
製造例4で得られたA−Mi−水3600gに1800gのEGを加えて十分に混合し、温度約100〜130℃で約4時間撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体およびEGを含む粘土分散体(A−Mi−EGと称す)を調製した。粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0079】
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
蒸留管、および精留塔をとりつけたオートクレーブに、2500gのDMT、1600gのEG、7.5gのAO60および0.60gのチタンテトラブトキサイド(Ti(OBu)4)を投入し、反応温度約150〜190℃で約3時間撹拌して、DMTとEGをエステル交換させ、PETプレポリマーを調製した。該プレポリマーの対数粘度は0.06(dl/g)であった。上記PETプレポリマーを230〜250℃に保ち、100〜180rpmで撹拌しながら、乾燥窒素気流下、1800gの粘土分散体A-Mi-EGを連続的に添加した。粘土分散体の添加速度は、約2000g/時間である。粘土分散体添加後、系を280℃に昇温しながら、使用したEGの70重量%以上を系外に除去した後、系を減圧(0.5〜5.0torr)して溶融重縮合を行うことにより、シラン粘土複合体含有PET樹脂を得た。
【0080】
その後、実施例1と同様の方法でフィルム化する事によってシラン粘土複合体を含有するPETフィルム(膜厚99μm)を得、評価した。
(実施例5)
実施例1と同様の方法でシラン粘土複合体を含有するPETフィルム(膜厚102μm)を得た。次いで、該フィルムを140℃に加熱した後、更に1.3倍延伸して強力化する事によって、強力化し、評価した。
【0081】
(比較例1)
蒸留管、および精留塔をとりつけたオートクレーブに、2500gのDMT、1600gのEG、7.5gのAO60および0.60gのTi(OBu)4を投入し、反応温度約150〜190℃で約3時間撹拌して、DMTとEGをエステル交換させ、PETプレポリマーを調製した。該プレポリマーの対数粘度は0.06(dl/g)であった。次いで、系を280℃に昇温しながら、使用したEGの70重量%以上を系外に除去した後、系を減圧(0.5〜5.0torr)して溶融重縮合を行うことによりPET樹脂を得た。
【0082】
実施例1と同様の方法でフィルム(膜厚103μm)し、評価した。
(比較例2)
比較例1と同様の方法でPETフィルム(膜厚104μm)を得た。次いで実施例4と同様の方法で強力化する事によって強力化2軸延伸PETフィルムを得、評価した。
【0083】
(比較例3)
比較例1と同様の重合方法で得たPET樹脂2500gと、125gのモンモリロナイトおよび7.5gのAO60をドライブレンドした。次いで、30mmの2軸押出機(日本製鋼(株)製、LABOTEX30)を用い、設定温度260〜280℃、回転数100rpmで溶融混練することによってPETとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法でフィルム化(膜厚103μm)し、評価した。
【0084】
(比較例4)
1800gのEGと125gのモンモリロナイトを混合した。前記混合液中のモンモリロナイトの底面間隔は17Åであり、モンモリロナイトの初期の底面間隔の1.3倍であった。次いで、粘土分散体(A−Mo−EG)の代わりに上記の混合液を用いた他は、実施例1と同様にして溶融重縮合を行い、PETとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得、フィルム化(膜厚102μm)を行い評価した。
【0085】
(実施例5)
実施例1と同様の方法にて、シラン粘土複合体およびEGを含む粘土分散体(A−Mo−EG)を調製した。
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
蒸留管、および精留塔をとりつけたオートクレーブに、2500gのNDC、1600gのEG、7.5gのAO60および0.60gのTi(OBu)4を投入し、反応温度約190℃で約3時間撹拌して、NDCとEGをエステル交換させ、PENプレポリマーを調製した。該プレポリマーの対数粘度は0.09(dl/g)であった。上記PENプレポリマーを230〜250℃に保ち、100〜180rpmで撹拌しながら、乾燥窒素気流下、1800gの粘土分散体A-Mo-EGを連続的に添加した。粘土分散体の添加速度は、約2000g/時間である。粘土分散体を添加した後、系を280℃に昇温しながら、使用したEGの70重量%以上を系外に除去した後、系を減圧(0.5〜5.0torr)して溶融重縮合を行うことにより、シラン粘土複合体含有PEN樹脂を得た。
【0086】
その後、実施例1と同様の方法でフィルム化する事によってシラン粘土複合体を含有するPENフィルム(膜厚103μm)を得、評価した。
(実施例6)
製造例2で得られたE−Mo−水3600gに1800gのEGを加えて十分に混合し、温度約100〜130℃で約4時間撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体およびEGを含む粘土分散体(E−Mo−EGと称す)を調製した。粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0087】
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
すなわち、粘土分散体A-Mo-EGの代わりに、1800gの粘土分散体E−Mo-EGを用いた以外は、実施例4と同様の方法でシラン粘土複合体含有PEN樹脂を得た。
その後、実施例1と同様の方法でフィルム化する事によってシラン粘土複合体を含有するPENフィルム(膜厚101μm)を得、評価した。
【0088】
(比較例5)
蒸留管、および精留塔をとりつけたオートクレーブに、2500gのNDC、1600gのEG、7.5gのAO60および0.60gのTi(OBu)4を投入し、反応温度約190℃で約3時間撹拌して、NDCとEGをエステル交換させ、PENプレポリマーを調製した。該プレポリマーの対数粘度は0.09(dl/g)であった。次いで、系を280℃に昇温しながら、使用したEGの70重量%以上を系外に除去した後、系を減圧(0.5〜5.0torr)して溶融重縮合を行うことにより、PEN樹脂を得た。
【0089】
実施例1と同様の方法でフィルム(膜厚100μm)し、評価した。
(比較例6)
比較例5と同様の方法で得たPEN樹脂2500gと、125gのモンモリロナイトおよび7.5gのAO60をドライブレンドした。次いで、30mmの2軸押出機(日本製鋼(株)製、LABOTEX30)を用い、設定温度270〜290℃、回転数100rpmで溶融混練することによってPENとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得た。
【0090】
実施例1と同様の方法でフィルム化し(膜厚102μm)、評価した。
(比較例7)
比較例4と同様の方法で、EGとモンモリロナイトを含有する混合液を調製した。次いで、粘土分散体(A−Mo−EG)の代わりに上記の混合液を用いた他は、実施例5と同様にして溶融重縮合を行い、PENとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得、フィルム化(膜厚103μm)を行い評価した。
(実施例7)
製造例3で得られたE−Mo−水を乾燥し、粉末状のシラン粘土複合体を得た。該シラン粘土複合体の底面間隔は23Åであった。
【0091】
分散媒として塩化メチレンを用いた。14000mLの塩化メチレンに120gのシラン粘土複合体を添加し、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて5000rpm、30分間撹拌して混合することにより、塩化メチレンとシラン粘土複合体を含む粘土分散体(E-Mo-MC)を調製した。上記の粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、85Åであった。
【0092】
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
窒素雰囲気下、12000mLのイオン交換水中に、1280gのビスフェノールA、41gのp−t−ブチルフェノール、10gの次亜硫素酸ナトリウム、2870mLの5N水酸化ナトリウム水溶液を投入して充分に混合した後、5℃に冷却してフェノール化合物のアルカリ水溶液を調製した。
【0093】
一方、上記の粘土分散体12000mL中に、945gのIPCおよび235gのTPCを溶解し、5℃に冷却し、ジカルボン酸化合物が溶解した粘土分散体を調製した。
次いで、窒素雰囲気下、別に用意した反応容器中にイオン交換水4000mlおよび層間移動触媒であるベンジルトリエチルアンモニウムクロライド19gを仕込み、5℃に冷却した水溶液を調製した。
【0094】
前記の層間移動触媒を含む冷却した水溶液を500〜800rpmで撹拌しながら、予め調製しておいた前記のフェノール化合物のアルカリ水溶液およびジカルボン酸化合物含有粘土分散体を、同時に約30分かけて連続的に添加して3時間撹拌する事によってPARを重合した。得られた系の中和および水洗脱塩を行い、シラン粘土複合体およびPARを含有する塩化メチレン溶液を得た。
【0095】
フィルム化は以下のようにした。
基板上で上記のシラン粘土複合体およびPARを含有する塩化メチレン溶液を流延し、乾燥した。室温から乾燥を始め、徐々に温度を70℃にまで上げた。基板からフィルム状のものがはがれた時点で乾燥温度を120℃に上げて5分間乾燥した。更に140℃で15分、160℃で15分熱処理する事によってシラン粘土複合体を含有するPARフィルム(膜厚103μm)を得た。評価は実施例1と同様に行った。
【0096】
(実施例8)
製造例3で得られたE−Mo−水を乾燥し、粉末状のシラン粘土複合体を得た。
1000gの塩化メチレンにシラン粘土複合体6.6gを投入して撹拌混合し(6000rpm30分間撹拌)、分散させることによって粘土分散体E−Mo−MCを調製した。上記の粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、85Åであった。その後、220gのPARを添加し、200rpm、30分撹拌して溶解させ、シラン粘土複合体とPAR(粘土分散体E-Mo-MCの代わりに塩化メチレンを用いた他は、実施例7と同様の条件で重合して得たもの)を含む塩化メチレン溶液を得た。フィルム化(膜厚101μm)は実施例7と同様に行い、評価した。
【0097】
(比較例8)
粘土分散体(E-Mo-MC)の代わりに塩化メチレンを用いた他は、実施例7と同様の方法でPARを重合した。塩化メチレン1000gに220gのPAR樹脂を投入し、200rpm30分間撹拌して溶解させ、PARの塩化メチレン溶液を得た。次いで、実施例7と同様の方法にてフィルム化(膜厚103μm)し、評価した。
【0098】
(比較例9)
粘土分散体(E-Mo-MC)の代わりに塩化メチレンを用いた他は、実施例7と同様の方法の条件でPARを重合した。
上記PAR樹脂2500gと、125gのモンモリロナイトおよび7.5gのAO60をドライブレンドした。次いで、30mm2軸押出機(日本製鋼(株)製、LABOTEX30)を用い、設定温度290〜310℃、回転数100rpmで溶融混練することによってPARとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得た。
【0099】
実施例7と同様の方法でフィルム化(膜厚102μm)し、評価した。
(実施例9)
製造例1で得られたA−Mo−水3600gに1800gのDECを加えて十分に混合し、温度約50〜70℃で約2時間、減圧しながら撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体およびDECを含む粘土分散体(A−Mo−DECと称す)を調製した。粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔は、>100Åであった。
【0100】
粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
500gのビスフェノールA、前記粘土分散体A−Mo−DECおよび10gのジブチルスズオキサイドをオートクレーブに投入し、温度160℃、圧力7kg/cm2、乾燥窒素ガスでバブリングして反応させることによって、シラン粘土複合体を含有するビスフェノールAのビスエチル炭酸エステルを調製した。
次いで、上記のシラン粘土複合体を含有するビスフェノールAのビスエチル炭酸エステル450gと0.15gのジブチルスズオキサイドを反応装置に投入し、反応温度230℃〜240℃、減圧度50mmHg、5時間反応させる事によって、シラン粘土複合体を含有するPC樹脂を得た。
【0101】
フィルム化は以下のようにした。
まず、1000gの塩化メチレンに上記のシラン粘土複合体を含有するPC樹脂200gを十分に溶解させ、塩化メチレン溶液を得た。基板上で該塩化メチレン溶液を流延し、室温から70℃で溶媒を乾燥した。乾燥後、基盤からフィルムを剥離し、更に、100℃で5分、130℃で15分、150℃で15分という条件で熱処理する事によって、シラン粘土複合体を含有するPCフィルム(膜厚103μm)を得た。評価は実施例1と同様に行った。
【0102】
(実施例10)
製造例3で得られたE−Mo−水を乾燥し、粉末状のシラン粘土複合体を得た。
分散媒として塩化メチレンを用いた。3000mLの塩化メチレンに15gのシラン粘土複合体を添加し、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて5000rpm、30分間撹拌して混合することにより、塩化メチレンとシラン粘土複合体を含む粘土分散体(E-Mo-MC)を調製した。上記の粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、85Åであった。粘土分散体の調製とは別に以下の操作を行った。
【0103】
反応容器に550gのビスフェノールA、上記の粘土分散体、1.7N水酸化ナトリウム水溶液3000mLおよびトリブチルアミン5gを投入して撹拌し、5〜10℃に冷却しながら、ホスゲンを90分間吹き込み、更に3時間撹拌を続ける事によって、シラン粘土複合体およびPC樹脂を含む塩化メチレン溶液を得た。
【0104】
フィルム化(膜厚104μm)は実施例8と同様に行い、評価した。
(実施例11)
製造例3で得られたE−Mo−水を乾燥し、粉末状のシラン粘土複合体を得た。
1000gの塩化メチレンにシラン粘土複合体7.5gを投入して撹拌混合し(6000rpm30分間撹拌)、粘土分散体を調製した。上記の粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、85Åであった。その後、250gのポリカーボネート樹脂を添加し、200rpm、30分撹拌して溶解させ、シラン粘土複合体とPCを含む塩化メチレン溶液を得た。フィルム化(膜厚103μm)は実施例8と同様に行い、評価した。
【0105】
(比較例10)
粘土分散体(E-Mo-MC)の代わりに塩化メチレンを用いた他は、実施例9と同様の方法でPCを重合した。塩化メチレン1000gに250gのPC樹脂を投入し、200rpm30分間撹拌して溶解させ、PCの塩化メチレン溶液を得た。次いで、実施例8と同様の方法にてフィルム化し(膜厚101μm)、評価した。
【0106】
(比較例11)
粘土分散体(E-Mo-MC)の代わりに塩化メチレンを用いた他は、実施例9と同様の方法でPCを重合した。
上記PC樹脂2500gと、125gのモンモリロナイトおよび7.5gのAO60をドライブレンドした。次いで、30mmの2軸押出機(日本製鋼(株)製、LABOTEX30)を用い、設定温度280〜300℃、回転数100rpmで溶融混練することによってPCとモンモリロナイトを含有する樹脂組成物を得た。
実施例8と同様の方法でフィルム化(膜厚102μm)し、評価した。
【0107】
【発明の効果】
以上、詳述したように、ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂フィルム中において、膨潤性ケイ酸塩の単位層同士を分離劈開して、1つの膨潤性ケイ酸塩の凝集粒子を、非常に多数の極微小な薄板状の層に細分化すること、すなわち、平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300であり、かつフィルムの面積100μm2中に存在するシラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数を30以上にすることによって、樹脂フィルムの透明性や表面性を損なうことなく、弾性率や寸法安定性および気体の透過性を改善することができる。ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂フィルム中で、膨潤性ケイ酸塩を上記の如く薄板状に細分化することは、膨潤性ケイ酸塩にシラン系化合物を導入してシラン粘土複合体とする事が必須である。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
Claims (7)
- ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂、およびシラン粘土複合体を含む樹脂フィルムであって、
当該樹脂フィルムが、
(A)膨潤性層状ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後、
当該膨潤性層状ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4−n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表されるシラン系化合物を、分散媒中で導入することにより、
シラン粘土複合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、
(B)ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、および、
(C)重合性プレポリマーを重合する工程から得られる樹脂組成物をフィルム化することによって得られ、
かつシラン粘土複合体の平均層厚が300Å以下である、層状無機物含有樹脂フィルム。 - フィルム中のシラン粘土複合体の最大層厚が1000Å以下である、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルム。
- ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂、およびシラン粘土複合体を含む樹脂フィルムであって、
当該樹脂フィルムが、
(A)膨潤性層状ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後、
当該膨潤性層状ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4−n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表されるシラン系化合物を、分散媒中で導入することにより、
シラン粘土複合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、
(B)ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、および、
(C)重合性プレポリマーを重合する工程から得られる樹脂組成物をフィルム化することによって得られ、
フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300であり、かつ[N]値が30以上であり、ここで[N]値が、フィルムの面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数であると定義される、層状無機物含有樹脂フィルム。 - [N]値が30以上であり、ここで[N]値が、フィルムの面積100μm2中に存在する、シラン粘土複合体の単位比率当たりの粒子数であると定義される、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルム。
- フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300である、請求項1に記載の層状無機物含有樹脂フィルム。
- 工程(A)で得られる粘土分散体中のシラン粘土複合体の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔の4倍以上であることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載の層状無機物含有樹脂フィルム。
- (A)膨潤性層状ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後、
当該膨潤性層状ケイ酸塩に下記一般式(1)
Y n SiX 4−n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1 〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)で表されるシラン系化合物を、分散媒中で導入することにより、
シラン粘土複合体と分散媒を含む粘土分散体を調製する工程、
(B)ポリエステル樹脂またはポリカーボネート樹脂の重合性プレポリマーと上記の粘土分散体とを混合する工程、および、
(C)重合性プレポリマーを重合する工程から得られる樹脂組成物をフィルム化することを特徴とする、層状無機物含有樹脂フィルムの製造方法。
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