JP2000309687A - ポリエステル樹脂組成物および製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物および製造方法

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JP2000309687A
JP2000309687A JP11117349A JP11734999A JP2000309687A JP 2000309687 A JP2000309687 A JP 2000309687A JP 11117349 A JP11117349 A JP 11117349A JP 11734999 A JP11734999 A JP 11734999A JP 2000309687 A JP2000309687 A JP 2000309687A
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silane
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Noriyuki Suzuki
紀之 鈴木
Kazuhiro Hara
和宏 原
Tomoya Noma
智也 野間
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリエステル樹脂に無機粒子を微分散化し、
機械的特性や耐熱性に優れる樹脂組成物を簡便にかつ安
全に得る方法を提供すること。 【解決手段】 熱可塑性ポリエステル樹脂および無機粒
子を含有するポリエステル樹脂組成物の製造方法であっ
て、熱可塑性ポリエステル樹脂と、無機粒子および水を
含有する混合物とを混練する工程を包含し、ここで該混
合物中の該無機粒子の濃度が、該混合物が液性限界を示
す時の濃度よりも高い、ポリエステル樹脂組成物の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性ポリエス
テル樹脂と無機粒子とを含有するポリエステル樹脂組成
物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的特
性、耐熱性、電気的特性、耐薬品性および耐候性に優れ
るため、電気・電子部品、機械部品、OA機器部品、家
電製品部品などの様々な構造部品分野で広く利用されて
いる。近年、構造部品の薄肉化、形状複雑化等に伴い、
機械的特性、耐熱性、寸法安定性および表面性の高いレ
ベルでのバランス確保が求められている。
【0003】上記諸物性バランスの改善策として、本発
明者らは、国際公開第97/44343号パンフレット
(1997)において、溶媒中で膨潤した状態の膨潤性
ケイ酸塩にシラン系化合物が導入されてなるシラン粘土
複合体およびビスヒドロキシアルキルテレフタレート等
のジオール化合物を必須成分とする分散体を重合するこ
とにより得られるポリエステル樹脂組成物に関する技術
を開示した。この技術により、上記ポリエステル樹脂組
成物中でシラン粘土複合体がナノメートル(nm)レベ
ルの薄板状で均一微分散化し、それによって機械的特性
や耐熱性などが高いレベルでバランス化される。しかし
ながら、上記分散体の調製や重合には多大の時間と労力
を必要とし、コスト高の原因となっていた。従って、膨
潤性ケイ酸塩などの無機粒子を簡便に微分散化して、各
種物性に優れるポリエステル樹脂組成物を製造する方法
が望まれていた。
【0004】無機粒子を樹脂中に容易に微分散化させる
試みとして、ベント式成形機を用い、ポリエステル樹脂
に平均粒径が0.01〜5μmである無機粒子の水およ
び/または沸点200℃以下の有機化合物スラリーを添
加する技術(特開平3−115352号公報)が開示さ
れている。上記方法によれば、確かに無機粒子はポリエ
ステル樹脂中に微分散化し、このポリエステル樹脂をフ
ィルムに利用すれば滑り特性等に特長が見られるが、成
形材料として利用したとしても優れた物性バランスが発
現されるほどの効果は見られない。また、スラリーと
は、一般に、固体(無機粒子)と液体(溶媒)とを混合
して流体化したもの(JIS M0104)、すなわち
流動性を有する懸濁液を意味するが、その様なスラリー
中では、水等の溶媒と無機粒子との比重差により無機粒
子が直ちに沈降・分離してしまうので保存安定性に欠け
る。従って、無機粒子が沈降・分離した様なスラリーを
樹脂に添加・混練しても、無機粒子は均一分散せず、場
合によっては凝集粒子による品質低下が発生する。従っ
て、上記従来技術を利用するためには、スラリーを樹脂
に添加・混練する直前に、スラリーを撹拌して沈降して
いる粒子を分散させる必要があり、操作上、問題があ
る。
【0005】微分散化の別の試みとしては、水等で膨潤
化して層間距離を30Å以上とした層状ケイ酸塩と熱可
塑性樹脂とを溶融混練する方法(特開平9−12483
6号公報)があり、具体的には、層状ケイ酸塩として膨
潤性雲母を用い、水で膨潤化した膨潤性雲母あるいはキ
シレンで膨潤化したアルキルアンモニウム処理膨潤性雲
母をポリプロピレン等と2軸押出する技術が開示されて
いる。しかしながら、上記技術では、層状ケイ酸塩は樹
脂中で部分的にしか微分散化せず、樹脂系全体に均一分
散しないので、所望の物性を有する樹脂組成物を得るこ
とができない。さらに、アルキルアンモニウム塩等で処
理された膨潤性雲母を用いた場合、ポリエステル樹脂が
劣化することによって、物性低下や着色などの別の問題
が発生する。
【0006】また別の試みとしては、有機溶媒と層状ケ
イ酸塩との混合物を結晶性熱可塑性樹脂と混練する方法
(特開平9−48856号公報)があり、具体的には、
層状ケイ酸塩として有機アンモニウム塩で処理した膨潤
性雲母等を用い、有機溶媒としてトリクロロベンゼン等
を用い、両者の混合物とポリプロピレン等とを2軸押出
する技術が開示されている。しかしながら、上記技術で
は、アンモニウム塩による樹脂劣化の問題の他に、混練
条件によっては、用いた有機溶媒が系内に残り、得られ
る樹脂組成物の品質や安全衛生面から問題が発生する場
合もある。
【0007】以上、ポリエステル樹脂に無機粒子を微分
散化し、機械的特性や耐熱性に優れる樹脂組成物を簡便
にかつ安全に得る製造技術は未だ提供されていないのが
現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は上記従来の問題を改善することであり、樹脂劣化や有
機溶媒残存等の問題を引き起こすことなく、簡便な方法
で無機粒子をポリエステル樹脂中に均一微分散させ、機
械的特性および耐熱性等の物性バランスに優れるポリエ
ステル樹脂組成物を製造する方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、水と無機粒子との混合物中の無機粒子の濃度
を、この混合物が液性限界を示す濃度よりも高くするこ
とによって、上記混合物の流動性を無くして無機粒子の
沈降・分離を抑え、その様な混合物を熱可塑性ポリエス
テル樹脂に添加・溶融混練する製造方法を見出した。
【0010】本発明の方法は、熱可塑性ポリエステル樹
脂および無機粒子を含有するポリエステル樹脂組成物の
製造方法であって、熱可塑性ポリエステル樹脂と、無機
粒子および水を含有する混合物とを混練する工程を包含
し、ここで該混合物中の該無機粒子の濃度が、該混合物
が液性限界を示す時の濃度よりも高い、ポリエステル樹
脂組成物の製造方法である。そのことにより上記目的が
達成される。
【0011】1つの実施態様において、上記無機粒子
は、溶媒中で膨潤している膨潤性ケイ酸塩に下記一般式
(1) YnSiX4-n (1) (ここで、nは0〜3の整数であり;Yは、置換基を有
していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基であり;X
は加水分解性基および/または水酸基であり;n個の
Y、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい)
で表されるシラン系化合物を導入することにより調製さ
れるシラン粘土複合体である。
【0012】別の局面において、本発明は、上記方法に
より得られる熱可塑性ポリエステル樹脂および無機粒子
を含有するポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂およ
び無機粒子を含有するポリエステル樹脂組成物の製造方
法であって、熱可塑性ポリエステル樹脂と、無機粒子お
よび水を含有する混合物とを混練する工程を包含し、こ
こで該混合物中の該無機粒子の濃度が、該混合物が液性
限界を示す時の濃度よりも高い、ポリエステル樹脂組成
物の製造方法である。
【0015】上記ポリエステル樹脂組成物中の熱可塑性
ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは99.5重量
%〜70重量%、より好ましくは99重量%〜75重量
%、最も好ましくは98.5重量%〜80重量%であ
る。また、上記ポリエステル樹脂組成物中の無機粒子の
含有量は、好ましくは0.5重量%〜30重量%、より
好ましくは1.0重量%〜25重量%、最も好ましくは
1.5重量%〜20重量%である。
【0016】本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル
樹脂とは、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボ
ン酸のエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分と、
ジオール化合物および/またはジオール化合物のエステ
ル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応に
より得られる従来公知の任意の熱可塑性ポリエステル樹
脂である。
【0017】上記のジカルボン酸化合物としては、例え
ば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、
2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニ
ルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカル
ボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、
4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’
−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等の芳香族
ジカルボン酸が挙げられ、これらの置換体(例えば、メ
チルイソフタル酸等のアルキル基置換体など)や誘導体
(テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸ジメチル等のようなアルキルエステル化合物など)
もまた、使用され得る。また、p−オキシ安息香酸およ
びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸お
よびこれらのエステル形成性誘導体もまた、使用され得
る。これらのモノマーの2種以上を混合して用いても良
い。得られるポリエステル樹脂組成物の特性を損なわな
い程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と
共に、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバ
シン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合し
て使用し得る。
【0018】上記酸成分の中では、得られる熱可塑性ポ
リエステル樹脂の結晶性や強度、弾性率の点から、テレ
フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’
−ビフェニルジカルボン酸、およびそれらのエステル形
成性誘導体が好ましい。
【0019】また、上記のジオール化合物としては、例
えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブ
チレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチ
ルグリコール等のような脂肪族グリコール、1,4−シ
クロヘキサンジメタノール等のような脂環式グリコー
ル、1,4−フェニレンジオキシジメタノールのような
芳香族ジオールを使用し得る。ε−カプロラクトンのよ
うな環状エステルもまた、使用し得る。これらの2種以
上を混合して用いても良い。さらに、得られるポリエス
テル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であ
るならば、長鎖型のジオール化合物(例えば、ポリエチ
レングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、お
よびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合
体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド
付加重合体等)などを組み合わせて使用しても良い。
【0020】上記ジオール成分の中では、取り扱い性お
よび得られるポリエステル樹脂の強度、弾性率等の点か
ら、エチレングリコール、ブチレングリコール、1,4
−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0021】上記用語「主成分とする」とは、酸成分ま
たはジオール成分中に占めるそれぞれの化合物または誘
導体の割合が80%以上、さらには90%以上であるこ
とを意図する。もちろん、100%であってもよい。
【0022】熱可塑性ポリエステル樹脂の具体例として
は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレ
フタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサ
メチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4
−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレー
ト、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタ
レート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレ
ンナフタレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂
の製造に使用される酸成分および/またはジオール成分
を2種以上用いて製造した共重合ポリエステルが挙げら
れる。
【0023】上記の熱可塑性ポリエステル樹脂は、単独
で、または組成あるいは成分の異なるポリエステル樹脂
および/または固有粘度の異なるポリエステル樹脂を2
種以上組み合わせて使用し得る。
【0024】上記ポリエステル樹脂の中では、強度、弾
性率、コスト等の点から、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン
−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリエチレンナフ
タレートが好ましい。
【0025】熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、フ
ェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶
媒を用いて25℃で測定した対数粘度が、好ましくは
0.3〜2.0(dl/g)であり、より好ましくは
0.3〜1.8(dl/g)であり、さらに好ましくは
0.3〜1.5(dl/g)であり、特に好ましくは
0.3〜1.2(dl/g)である。対数粘度が0.3
(dl/g)未満である場合、得られるポリエステル樹
脂組成物の機械的特性や耐衝撃性が低く、また、2.0
(dl/g)より大きい場合は溶融粘度が高いために成
形流動性が低下する傾向がある。
【0026】上記粘度を言い換えると、例えば、ポリエ
チレンテレフタレートの場合であれば、好ましくは重量
平均分子量で25,000〜200,000であり、よ
り好ましくは25,000〜180,000であり、さ
らに好ましくは25,000〜150,000である。
【0027】本発明で用いられる、無機粒子および水を
含有する混合物(本明細書では以降、無機粒子−水分散
体と称す)は、特に限定されず、従来公知の無機粒子と
水とを混合することによって得られるものである。
【0028】上記の無機粒子の具体例としては、スメク
タイト族粘土や膨潤性雲母等の膨潤性ケイ酸塩、タル
ク、カオリナイト等の非膨潤性ケイ酸塩、酸化ケイ素化
合物、酸化チタン、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウ
ム、α−、β−、γ−、δ−アルミナ、酸化鉄、酸化亜
鉛、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウ
ム、硫酸カルシウムが挙げられ、これらは、単独でまた
は2種以上を組み合わせて使用される。
【0029】上記無機粒子の中では膨潤性ケイ酸塩が好
ましく使用される。本発明で用いられる膨潤性ケイ酸塩
とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として
金属水酸化物の八面体シートとから形成される、層間に
交換性陽イオンを有する層状ケイ酸塩を意味する。
【0030】膨潤性ケイ酸塩の中でスメクタイト族粘土
とは、下記一般式(2) X0.20.623410(OH)2・nH2O (2) (ここで、XはK、Na、1/2Ca、および1/2M
gからなる群より選ばれる1種以上であり、YはMg、
Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、およびCrから
なる群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、および
Alからなる群より選ばれる1種以上である。なお、H
2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは
層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する。)
で表される、天然または合成粘土である。上記スメクタ
イト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイ
ト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サ
ポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイ
トおよびベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導
体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。上記スメク
タイト族粘土の初期の凝集状態における底面間隔は、約
10〜17Åであり、凝集状態でのスメクタイト族粘土
の平均粒径は、おおよそ1000Å〜1000000Å
である。
【0031】ここで、底面間隔値とは、膨潤性ケイ酸塩
または得られるシラン粘土複合体の単位層の底面同士の
間隔を意味する。具体的には、底面間隔は、小角X線回
折法(SAXS)などで確認し得る。すなわち、分散媒
と膨潤性ケイ酸塩からなる分散体(あるいは、分散媒に
添加する前の凝集状態にある膨潤性ケイ酸塩)における
X線回折ピーク角値をSAXSで測定し、このピーク角
値をBraggの式 2dsinθ=nλ (式中、dは結晶中の底面間隔、θは入射角、nは正の
整数、λはX線の波長)に代入し算出することにより、
底面間隔値を求める。同様に、初期の層状ケイ酸塩の底
面間隔値を測定し、この両者を比較することにより、底
面間隔の拡大を確認し得る。
【0032】本明細書において、膨潤性ケイ酸塩の初期
の底面間隔とは、分散媒に添加する前の、単位層が互い
に積層し凝集状態である膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を意
味する。
【0033】また、上記の膨潤性雲母は、下記一般式
(3) X0.51.023(Z410)(F,OH)2 (3) (ここで、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、お
よびSrからなる群より選ばれる1種以上であり、Yは
Mg、Fe、Ni、Mn、Al、およびLiからなる群
より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、
Fe、およびBからなる群より選ばれる1種以上であ
る。)で表される、天然または合成雲母である。これら
は、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、および水
とこの極性溶媒との混合溶媒中で膨潤する性質を有し、
具体例としては、例えば、リチウム型テニオライト、ナ
トリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、お
よびナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換
体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。上
記膨潤性雲母の初期の凝集状態における底面間隔は、お
およそ10〜17Åであり、凝集状態での膨潤性雲母の
平均粒径は、約1000〜1000000Åである。
【0034】上記の膨潤性雲母の中にはバーミキュライ
ト類と類似の構造を有するものもあり、この様なバーミ
キュライト類相当品等もまた本発明において使用され得
る。上記バーミキュライト類相当品としては、3八面体
型と2八面体型があり、下記一般式(4) (Mg,Fe,Al)23(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2x ・nH2O (4) (ここで、Mは、Na、Mg等のアルカリまたはアルカ
リ土類金属の交換性陽イオンであり、x=0.6〜0.
9、n=3.5〜5である)で表されるものが挙げられ
る。上記バーミキュライト相当品の初期の凝集状態にお
ける底面間隔は、おおよそ10〜17Åであり、凝集状
態での平均粒径は、約1000〜5000000Åであ
る。
【0035】膨潤性ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に
規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましい
が、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合っ
た、いわゆる混合層鉱物もまた使用され得る。
【0036】膨潤性ケイ酸塩は、単独で用いても良く、
2種以上組み合わせて使用しても良い。これらの中で
は、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトお
よび層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、入
手の容易さ、分散性および物性改善効果の点から好まし
い。
【0037】ポリエステル樹脂との親和性や樹脂中での
分散性の点から、本発明において特に好ましく使用され
得る無機粒子として、溶媒中で膨潤状態にある上記膨潤
性ケイ酸塩にシラン系化合物を導入することによって調
製されるシラン粘土複合体が挙げられる。
【0038】上記のシラン系化合物としては、通常一般
に用いられる任意のものが使用され得、下記一般式
(1) YnSiX4-n (1) で表されるものである。一般式(1)中のnは0〜3の
整数であり、Yは、置換基を有していても良い炭素数1
〜25の炭化水素基である。炭素数1〜25の炭化水素
基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例え
ば、エステル結合で結合している基、エーテル結合で結
合している基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル
基、末端にカルボニル基を有する基、アミド基、メルカ
プト基、スルホニル結合で結合している基、スルフィニ
ル結合で結合している基、ニトロ基、ニトロソ基、ニト
リル基、ハロゲン原子および水酸基などが挙げられる。
上記炭化水素基は、これら置換基の1種で置換されてい
ても良く、2種以上で置換されていても良い。Xは、加
水分解性基および(または)水酸基である。加水分解性
基の例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、
ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキ
シ基、アミド基、およびハロゲン原子が挙げられる。一
般式(1)中、nまたは4−nが2以上の場合、n個の
Yまたは4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でも良
い。
【0039】なお、本明細書において「炭化水素基」と
は、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和
または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、芳
香族炭化水素基、および脂環式炭化水素基を意味し、例
えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェ
ニル基、ナフチル基、シクロアルキル基等が挙げられ
る。本明細書において、「アルキル基」は、特に指示が
ない限り、「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包
含することを意図する。同様に、アルケニル基、アルキ
ニル基、フェニル基、ナフチル基、およびシクロアルキ
ル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フ
ェニレン基、ナフチレン基、およびシクロアルキレン基
等を包含する。
【0040】上記一般式(1)において、Yが炭素数1
〜25の炭化水素基である場合のシラン系化合物の例と
しては、デシルトリメトキシシランのような直鎖長鎖ア
ルキル基を有するもの、メチルトリメトキシシランのよ
うな低級アルキル基を有するもの、2−ヘキセニルトリ
メトキシシランのような不飽和炭化水素基を有するも
の、2−エチルヘキシルトリメトキシシランのような側
鎖を有するアルキル基を有するもの、フェニルトリエト
キシシランのようなフェニル基を有するもの、3−β−
ナフチルプロピルトリメトキシシランのようなナフチル
基を有するもの、およびp−ビニルベンジルトリメトキ
シシランのようなアラルキル基を有するものが挙げられ
る。Yが炭素数1〜25の炭化水素基の中でも特にビニ
ル基である場合のシラン系化合物の例としては、ビニル
トリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、および
ビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Yがエステ
ル結合で結合している基で置換されている炭化水素基で
ある場合のシラン系化合物の例としては、γ−メタクリ
ロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが
エーテル結合で結合している基で置換されている炭化水
素基である場合のシラン系化合物の例としては、γ−ポ
リオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、および
2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。
Yがエポキシ基で置換されている炭化水素基である場合
のシラン系化合物の例としては、γ−グリシドキシプロ
ピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基で
置換されている炭化水素基である場合のシラン系化合物
の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメト
キシシラン、およびγ−アニリノプロピルトリメトキシ
シランが挙げられる。Yが末端にカルボニル基を有する
基で置換されている炭化水素基である場合のシラン系化
合物の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシ
シランが挙げられる。Yがメルカプト基で置換されてい
る炭化水素基である場合のシラン系化合物の例として
は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げ
られる。Yがハロゲン原子で置換されている炭化水素基
である場合のシラン系化合物の例としては、γ−クロロ
プロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがスルホ
ニル結合で結合している基で置換されている炭化水素基
である場合のシラン系化合物の例としては、γ−フェニ
ルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられ
る。Yがスルフィニル結合で結合している基で置換され
ている炭化水素基である場合のシラン系化合物の例とし
ては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシ
シランが挙げられる。Yがニトロ基で置換されている炭
化水素基である場合のシラン系化合物の例としては、γ
−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Y
がニトロソ基で置換されている炭化水素基である場合の
シラン系化合物の例としては、γ−ニトロソプロピルト
リエトキシシランが挙げられる。Yがニトリル基で置換
されている炭化水素基である場合のシラン系化合物の例
としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよび
γ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
Yがカルボキシル基で置換されている炭化水素基である
場合のシラン系化合物の例としては、γ−(4−カルボ
キシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられ
る。上記以外に、Yが水酸基を有する炭化水素基である
シラン系化合物もまた使用し得る。そのような例として
は、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−
プロピルトリエトキシシランが挙げられる。水酸基はま
た、シラノール基(SiOH)の形であり得る。上記の
シラン系化合物の置換体、または誘導体もまた使用し得
る。これらのシラン系化合物は、単独で、または2種以
上を組み合わせて使用され得る。
【0041】上記無機粒子−水分散体を調製する方法
は、特に限定されず、例えば、従来公知の湿式撹拌機を
用いて行われ得る。上記湿式撹拌機としては、撹拌翼が
高速回転して撹拌する高速撹拌機、高剪断速度がかかっ
ているローターとステーターとの間の間隙で試料を湿式
粉砕する湿式ミル類、硬質媒体を利用した機械的湿式粉
砕機類、ジェットノズルなどで試料を高速度で衝突させ
る湿式衝突粉砕機類などが挙げられる。混合を効率よく
行うためには、好ましくは、撹拌の回転数は500rp
m以上であるか、あるいは300(1/s)以上の剪断
速度を加える。好ましくは、回転数の上限値は2500
0rpmであり、剪断速度の上限値は、好ましくは50
0000(1/s)である。これら上限値よりも大きい
値で撹拌を行っても混合効果はそれ以上向上しない傾向
があるため、上限値より大きい値で撹拌を行う必要はな
い。
【0042】無機粒子−水分散体には、熱可塑性ポリエ
ステル樹脂の劣化を引き起こさない程度であるならば、
必要に応じて水と任意の割合で相溶する極性溶媒が含有
され得る。上記極性溶媒としては、例えば、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−
ブタンジオール等のグリコール類、アセトン、メチルエ
チルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒ
ドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等の
アミド化合物、その他の溶媒であるジメチルスルホキシ
ドや2−ピロリドン等が挙げられる。これらの極性溶媒
は、単独で用いても良く、2種類以上組み合わせて用い
ても良い。
【0043】また、無機粒子としてシラン粘土複合体を
用いる場合、シラン粘土複合体と水とを含有する無機粒
子−水分散体の調製は、水中で、または水および上記の
極性溶媒の混合溶媒中で膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を拡
大して膨潤状態とし、次いで上記のシラン系化合物を混
合することにより行われ得る。混合の方法は特に限定さ
れず、例えば上述したような従来公知の湿式撹拌機を用
いて行われる。
【0044】シラン系化合物の、底面間隔が拡大して膨
潤状態にある膨潤性ケイ酸塩への導入は、膨潤性ケイ酸
塩の表面に存在する水酸基と、シラン系化合物の加水分
解性基および(または)水酸基とが反応することによっ
てなされる。
【0045】膨潤性ケイ酸塩中に導入されたシラン系化
合物が、さらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エ
ポキシ基、あるいはビニル基などのような反応活性な官
能基を有している場合、このような反応活性基と反応で
きる化合物をさらに添加して、この化合物をこの反応活
性基と反応させることも可能である。このようにして、
膨潤性ケイ酸塩に導入されたシラン系化合物の官能基鎖
の鎖長を長くしたり、極性を変えることができる。この
場合、添加される化合物としては、上記のシラン系化合
物自体も用いられ得るが、それらに限定されることな
く、目的に応じて任意の化合物が用いられ得、例えば、
エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキ
シル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、および水酸
基含有化合物等が挙げられる。
【0046】上記反応は室温で充分に進行するが、必要
に応じて加温しても良い。加温時の最高温度は、用いる
シラン系化合物の分解温度未満であり、かつ分散媒の沸
点未満であれば任意に設定され得る。
【0047】シラン系化合物の使用量は、無機粒子−水
分散体中でのシラン粘土複合体の分散性、シラン粘土複
合体と熱可塑性ポリエステル樹脂との親和性、およびポ
リエステル樹脂組成物中でのシラン粘土複合体の分散性
が十分に高まるように調整され得る。必要であるなら
ば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物を併
用し得る。従って、シラン系化合物の添加量は一概に数
値で限定されるものではないが、膨潤性ケイ酸塩100
重量部に対して、好ましくは0.1から200重量部で
あり、より好ましくは0.2から180重量部であり、
さらにより好ましくは0.3から160重量部であり、
特に好ましくは0.4から140重量部であり、最も好
ましくは0.5から120重量部である。シラン系化合
物の量が少なすぎると、得られるシラン粘土複合体の微
分散化効果が充分でなくなる傾向がある。また、必要以
上に添加しても、それ以上微分散化効果が向上しないの
で、必要以上に添加する必要はない。
【0048】上記のようにして得られるシラン粘土複合
体の底面間隔は、導入されたシラン系化合物の存在によ
り、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて拡大され
得る。例えば、分散媒中に分散されて底面間隔が拡大さ
れた膨潤性ケイ酸塩は、シラン系化合物を導入しない場
合、分散媒を除去すると再び層同士が凝集した状態に戻
るが、本発明によれば、底面間隔を拡大した後にシラン
系化合物を導入することによって、分散媒を除去した後
も、得られるシラン粘土複合体は層同士が凝集すること
なく底面間隔が拡大された状態で存在し得る。シラン粘
土複合体の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間
隔に比べて、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは
1.5倍以上、さらにより好ましくは1.7倍以上、特
に好ましくは2倍以上拡大している。このように、シラ
ン系化合物が導入されることにより、および底面間隔が
拡大されることにより、シラン粘土複合体と樹脂との親
和性を高めることができる。
【0049】ここで、シラン系化合物が膨潤性ケイ酸塩
に導入されたことは、種々の方法で確認し得る。確認の
方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0050】まず、テトラヒドロフランやクロロホルム
などの有機溶剤を用いてシラン粘土複合体を洗浄するこ
とによって、単に吸着しているシラン系化合物を洗浄し
除去する。洗浄後のシラン粘土複合体を乳鉢などで粉体
状にした後、充分に乾燥する。次いで、このシラン粘土
複合体を粉末状の臭化カリウム(KBr)等のような窓
材質と所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フー
リエ変換(FT)−IRを用い、透過法等によりシラン
系化合物に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定
することが所望される場合、あるいは導入されたシラン
系化合物量が少ない場合は、充分に乾燥した粉末状のシ
ラン粘土複合体を、そのまま拡散反射法(DRIFT)
で測定することが望ましい。
【0051】また、シラン粘土複合体の底面間隔が膨潤
性ケイ酸塩よりも拡大していることは、種々の方法で確
認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が
挙げられる。
【0052】すなわち、上記と同様にして、単に吸着し
ているシラン系化合物を有機溶剤で洗浄してシラン粘土
複合体から除去し、乾燥した後に、小角X線回折法(S
AXS)などで確認し得る。この方法では、粉末状のシ
ラン粘土複合体の(001)面に由来するX線回折ピー
ク角値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめ
て算出することにより底面間隔を求め得る。同様に、初
期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を測定し、この両者を比
較することにより底面間隔の拡大を確認し得る。
【0053】上記のように、有機溶剤で洗浄した後に、
添加したシラン系化合物に由来する吸収帯をFT−IR
等で観測し、かつ底面間隔が原料の膨潤性ケイ酸塩より
も拡大していることをSAXS等で測定することによ
り、シラン粘土複合体が生成していることが判る。
【0054】本発明で用いられる無機粒子−水分散体中
に含有される無機粒子の濃度は、この無機粒子−水分散
体が液性限界を示す時の無機粒子濃度よりも高いことが
必要である。
【0055】ここで、本明細書における「液性限界」と
は、例えば、JISA1205に定義されているものを
意図する。すなわち、無機粒子と水とを十分に混合して
得られる試料を黄銅皿の様な測定皿に入れ、試料を入れ
た皿を1cmの高さから1秒間に2回の割合で25回落
とした時に、みぞきり治具で2分した部分の試料がみぞ
の両側から流れ出し、約1.5cmの長さに渡って合流
する時の含水比をいう。従って、液性限界を示す時の濃
度とは、その時の試料に含まれる無機粒子の含有率をい
う。
【0056】無機粒子−水分散体が液性限界を示す時の
無機粒子の濃度は、用いる無機粒子の種類や形態、粒径
等によって変化する。例えば、無機粒子として、スメク
タイト族粘土や膨潤性雲母等の膨潤性ケイ酸塩を用いた
場合、その濃度は、膨潤性や陽イオン交換容量、層の一
辺の長さ等に依存するので一概に限定されないが、例え
ば、おおよそ5〜8重量%である。また、無機粒子とし
てシラン粘土複合体を用いた場合、その濃度は、シラン
系化合物の処理量や種類に依存するので一概に規定され
ないが、例えば、上記一般式(1)中のYがアミノ基で
置換されている炭化水素基である場合はおおよそ5〜8
重量%であり、Yがエーテル結合で結合している基で置
換されている炭化水素基である場合はおおよそ7〜12
重量%であり、Yがエステル結合で結合している基で置
換されている炭化水素基、エポキシ基で置換されている
炭化水素基あるいはフェニル基で置換されている炭化水
素基である場合はおおよそ10〜15重量%であるが、
これらに限定されない。
【0057】無機粒子−水分散体中の無機粒子の濃度
が、液性限界を示す時の無機粒子の濃度よりも高けれ
ば、無機粒子−水分散体中の無機粒子は沈降・分離せ
ず、樹脂と混練することにより容易に無機粒子を樹脂中
に均一微分散化することが可能になる。
【0058】一方、無機粒子−水分散体中の無機粒子の
濃度が、液性限界を示す時の無機粒子の濃度以下である
と、分散体はスラリー状、言い換えれば流体状となる。
そのような場合、分散体中の無機粒子は容易に沈降し、
分離してしまう傾向にある。無機粒子が沈降・分離した
ようなスラリーを樹脂に添加・混練しても、無機粒子は
樹脂中に均一分散しない場合がある。また、沈降・分離
を防ぐために、樹脂との混練の直前まで撹拌する必要が
ある場合もあり、製造装置が煩雑になる。
【0059】無機粒子−水分散体中の無機粒子の濃度の
上限値は、特に限定されないが、好ましくは90重量%
であり、より好ましくは80重量%であり、さらにより
好ましくは70重量%である。高すぎる場合には、ポリ
エステル組成物中の無機粒子の分散性が損なわれる場合
がある。
【0060】本発明において、水は無機粒子を分散させ
るために使用される。水を使用しない場合には、ポリエ
ステル組成物中の無機粒子の分散性が損なわれるという
欠点がある。
【0061】本発明において、熱可塑性ポリエステル樹
脂と無機粒子−水分散体との混練は、通常一般に用いら
れる公知の溶融混練機で行われ得る。そのような溶融混
練機としては、例えば、1軸押出機、2軸押出機、バン
バリミキサー、ロールなどの、系に高い剪断力を与え得
る混練機が挙げられる。特に、ニーディングディスク部
および脱気口を有する噛み合い型2軸押出機が好まし
く、この脱気口を減圧下に保持して水等を除去すること
ができる。
【0062】以上、本発明のポリエステル樹脂組成物の
製造方法によれば、混練前に無機粒子が沈降・分離する
ことがなく、混練という簡便な方法で、熱可塑性ポリエ
ステル樹脂中に無機粒子を均一微分散化させることがで
きる。それによって、機械的特性、耐熱性、寸法安定
性、表面外観等の各種物性が優れるポリエステル樹脂組
成物を、簡便に製造することができる。
【0063】本発明の製造方法によって得られるポリエ
ステル樹脂組成物中における無機粒子の分散状態は、例
えば、以下に述べる等価面積円直径[D]、分散粒子数
[N]、アスペクト比(層長さ/層厚の比率)、平均層
厚または最大層厚で表現され得る。
【0064】まず、等価面積円直径[D]を、顕微鏡な
どで得られる像内で様々な形状で分散している個々の無
機粒子のこの像上での面積と等しい面積を有する円の直
径であると定義する。その場合、ポリエステル樹脂組成
物中に分散した無機粒子のうち、等価面積円直径[D]
が3000Å以下である無機粒子の数の比率は、好まし
くは20%以上であり、より好ましくは35%以上であ
り、さらにより好ましくは50%以上であり、特に好ま
しくは65%以上である。また、ポリエステル樹脂組成
物中の無機粒子の等価面積円直径[D]の平均値は、好
ましくは5000Å以下であり、より好ましくは450
0Å以下であり、さらに好ましくは4000Å以下であ
り、特に好ましくは3500Å以下である。下限値は特
にないが、好ましくはおおよそ100Å程度である。
【0065】等価面積円直径[D]の測定は、顕微鏡な
どを用いて撮影した像上で、100個以上の無機粒子を
含む任意の領域を選択し、画像処理装置などを用いて画
像化し、そして計算機処理することによって定量化でき
る。
【0066】また、分散粒子数[N]値を、樹脂組成物
の面積100μm2中に存在する粒子数をaで除した数
であると定義し、ここでaは上記層状ケイ酸塩に由来す
る樹脂組成物の灰分率を重量%で表示した際の数値であ
るポリエステル樹脂組成物中の無機粒子の[N]値は、
好ましくは30以上であり、より好ましくは40以上で
あり、さらに好ましくは50以上であり、特に好ましく
は60以上である。上限値は特にないが、好ましくは1
000程度である。[N]値は、例えば、次のようにし
て求められ得る。すなわち、ポリエステル樹脂組成物を
約50μm〜100μm厚の超薄切片に切り出し、この
切片を透過型電子顕微鏡(TEM)等で撮影した像上
で、面積が100μm2の任意の領域に存在する無機粒
子の粒子数を、用いた無機粒子の重量比率で除すことに
よって求められ得る。あるいは、TEM像上で、100
個以上の粒子が存在する任意の領域(面積は測定してお
く)を選択し、この領域に存在する粒子数を、用いた無
機粒子の重量比率で除し、面積100μm2に換算した
値を[N]値としてもよい。従って、[N]値は、本発
明の製造方法で得られるポリエステル樹脂組成物のTE
M写真等を用いることにより定量化できる。
【0067】ここで、灰分率とは、約620℃でポリエ
ステル樹脂組成物を加熱灰化した時に残留する無機粒子
の該樹脂に対する重量比率をいい、例えば、JIS K
7052に準じて測定される。
【0068】無機粒子として、膨潤性ケイ酸塩やシラン
粘土複合体を用いた場合は、ポリエステル樹脂組成物中
における無機粒子の分散状態は、平均アスペクト比、平
均層厚、または最大層厚によっても表され得る。
【0069】平均アスペクト比を、ポリエステル樹脂組
成物中に分散した膨潤性ケイ酸塩あるいはシラン粘土複
合体の層長さ/層厚の比の平均値であると定義する。平
均アスペクト比は、好ましくは10〜300であり、よ
り好ましくは15〜300であり、さらに好ましくは2
0〜300である。平均アスペクト比の上限値は特にな
いが、好ましくは300程度である。
【0070】また、平均層厚を、薄板状で分散した膨潤
性ケイ酸塩あるいはシラン粘土複合体の層厚みの平均値
であると定義する。平均層厚の上限値は、好ましくは5
00Å以下であり、より好ましくは450Å以下であ
り、さらにより好ましくは400Å以下である。平均層
厚の下限値は特に限定されないが、好ましくは10Å程
度である。
【0071】また、最大層厚を、ポリエステル樹脂組成
物中に薄板状に分散した膨潤性ケイ酸塩あるいはシラン
粘土複合体の層厚みの最大値であると定義する。最大層
厚の上限値は、好ましくは2000Å以下であり、より
好ましくは1800Å以下であり、さらにより好ましく
は1500Å以下である。最大層厚の下限値は特に限定
されないが、好ましくは10Å程度である。
【0072】層厚および層長さは、本発明の製造方法で
得られるポリエステル樹脂組成物を加熱溶融した後に、
熱プレス成形あるいは延伸成形して得られるフィルム、
および溶融樹脂を射出成形して得られる薄肉の成形品等
を、顕微鏡等を用いて撮影される像から求めることがで
きる。
【0073】すなわち、まず、上記の方法で調製したフ
ィルムの、あるいは肉厚が約0.5〜2mm程度の薄い
平板状の射出成形した成形品の試験片を置く。次いで、
この試験片の面方向に垂直な方向で約50μm〜100
μm厚の超薄切片を切り出し、この切片を透過型電子顕
微鏡などを用い、約4〜10万倍以上の高倍率で観察す
ることにより、層厚および層長さが求められ得る。測定
は、上記の方法で得られた透過型電子顕微鏡の像上にお
いて、100個以上の膨潤性ケイ酸塩あるいはシラン粘
土複合体を含む任意の領域を選択し、画像処理装置など
で画像化し、計算機処理すること等により定量化でき
る。あるいは、定規などを用いて計測しても求めること
もできる。
【0074】本発明の製造方法から得られるポリエステ
ル樹脂組成物には、必要に応じて、ポリブタジエン、ブ
タジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、アイオノ
マー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロ
ピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴ
ム、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレ
フィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトな
ど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であって
も良い)、またはオレフィン系エラストマーなどの耐衝
撃性改良剤を添加することができる。これらの改良剤
は、無水マレイン酸等の酸化合物、またはグリシジルメ
タクリレート等のエポキシ化合物で変性されていても良
い。
【0075】また、上記ポリエステル樹脂組成物には、
機械的特性、成形性などの特性を損なわない範囲で、1
種以上の他の任意の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹
脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルカ
ーボネート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィ
ン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム質重合体強化スチレン系
樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレン
エーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルフォン樹
脂、およびポリアリレート樹脂等を添加してもよい。
【0076】さらに、目的に応じて、上記ポリエステル
樹脂組成物には、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、およ
び帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。本発
明で得られるポリエステル樹脂組成物は、射出成形また
は熱プレス成形などで成形しても良く、ブロー成形にも
使用できる。得られる成形品は外観に優れ、機械的特性
や耐熱変形性等に優れるため、例えば、自動車部品、家
庭用電気製品部品、家庭日用品、包装資材、その他一般
工業用資材に好適に用いられる。
【0077】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明
するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定さ
れるものではない。
【0078】以下の実施例、および比較例で使用する主
要原料を以下にまとめて示す。なお、特に断らない場合
は、原料の精製は行っていない。
【0079】(原料) ・ポリエチレンテレフタレート:鐘紡(株)のPBK
2、対数粘度(ηinh)=0.63(dl/g)(以
降、PETと称す)を用いた。 ・無機粒子:膨潤性ケイ酸塩、豊順洋行(株)のベンゲ
ルHVP(ベントナイト、底面間隔=13Å、以降、ベ
ンゲルHVPと称す)を用いた。 ・γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシ
ラン:日本ユニカー(株)のA−1120(以降、A1
120と称す)を用いた。 ・γ−(ポリオキシエチレン)プロピルトリメトキシシ
ラン:日本ユニカー(株)のA−1230(以降、A1
230と称す)を用いた。
【0080】また、以下の実施例および比較例における
評価方法を以下にまとめて示す。
【0081】(液性限界)無機粒子−水分散体の液性限
界の測定は、JISA1205に準じて行った。すなわ
ち、無機粒子−水分散体を液性限界測定機の試料皿に入
れ、蒸発を防ぎながら1時間安定させた後、みぞきり治
具で試料を2分した。次いで、試料皿を1cmの高さか
ら1秒間に2回の割合で25回落とし、2分した部分の
試料が1.5cmにわたって合流する時を液性限界と
し、その時の無機粒子の含有率を液性限界における無機
粒子の濃度とした。
【0082】(分散状態の測定)ポリエステル樹脂組成
物中における無機粒子の分散状態を、この組成物を成形
して得られる試験片から切り出された厚み50〜100
μmの超薄切片を用いて測定した。透過型電子顕微鏡
(TEM;日本電子JEM−1200EX)を用い、加
速電圧80kVで倍率4万〜100万倍で無機粒子の分
散状態を観察撮影した。TEM写真において、100個
以上の分散粒子が存在する任意の領域を選択し、粒子数
([N]値)、等価面積円直径[D]を、目盛り付きの
定規を用いた手計測またはインタークエスト社の画像解
析装置PIASIIIを用いて処理することにより測定し
た。特に[N]値の測定に関しては、まず、TEM像上
で、選択した領域に存在する無機粒子の粒子数を求め
た。これとは別に、無機粒子に由来する樹脂組成物の灰
分率を測定した。例えば、灰分率がa重量%であれば、
上記粒子数をaで除し、面積100μm2に換算した値
を[N]値とした。
【0083】分散粒子が大きくTEMでの観察が不適当
である場合は、光学顕微鏡(オリンパス光学(株)製の
光学顕微鏡BH−2)を用いて上記と同様の方法で
[N]値を求めた。ただし、必要に応じて、サンプルは
LINKAM製のホットステージTHM600を用いて
250〜290℃で溶融させ、溶融状態のままで分散粒
子の状態を測定した。
【0084】平均アスペクト比は、個々の層状ケイ酸塩
の層長と層厚の比の数平均値とした。
【0085】[N]値の測定は、以下のようにして行っ
た。まず、TEM像上で、選択した領域に存在する層状
ケイ酸塩の粒子数を求めた。これとは別に、層状ケイ酸
塩に由来する樹脂組成物の灰分率を測定した。上記粒子
数を灰分率で除し、面積100μm2に換算した値を
[N]値とした。
【0086】平均層厚は、個々の層状ケイ酸塩の層厚の
数平均値とし、最大層厚は、個々の層状ケイ酸塩の層厚
の中で最大の値とした。
【0087】薄板状に分散しない分散粒子のアスペクト
比は、長径/短径の値とした。ここで、長径とは、顕微
鏡像等において、対象となる粒子の外接する長方形のう
ち面積が最小となる長方形を仮定し、その長方形の長辺
を意図する。また、短径とは、上記面積が最小となる長
方形の短辺を意図する。
【0088】(FT−IR)シラン粘土複合体1.0g
をテトラヒドロフラン(THF)50mlに添加し、2
4時間撹拌して吸着しているシラン系化合物を洗浄・除
去した後、遠心分離を行い上澄みを分離した。この洗浄
操作を3回繰り返した。洗浄後、十分に乾燥したシラン
粘土複合体約1mgとKBr粉末約200mgとを乳鉢
を用いて充分に混合した後、卓上プレスを用いて測定用
のKBrディスクを作製した。次いで、赤外分光器(島
津製作所(株)製、8100M)を用いて透過法によ
り、FT−IRを測定し、シラン系化合物に由来する吸
収帯を確認した。検出器としては液体窒素で冷却したM
CT検出器を用い、分解能を4cm-1、スキャン回数を
100回とした。
【0089】(小角X線回折法(SAXS)による底面
間隔の測定)X線発生装置(理学電機(株)製、RU−
200B)を用い、ターゲットCuKα線、Niフィル
ター、電圧40kV、電流200mA、走査角2θ=
0.2〜16.0°、ステップ角=0.02°の測定条
件で、シラン粘土複合体の底面間隔を測定した。底面間
隔は、小角X線回折ピーク角値をBraggの式に代入
して算出された。
【0090】(機械的特性)本発明の製造方法で得られ
たポリエステル樹脂組成物を乾燥(140℃、5時間)
した。型締圧75tの射出成形機(東芝機械(株)製、
IS−75E)を用い、樹脂温度250〜280℃、ゲ
ージ圧約10MPa、射出速度約50%の条件で射出成
形して、寸法約10×100×6mmの試験片を作製し
た。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を、A
STMD−790に従って測定した。曲げ強度および曲
げ弾性率は値が大きいほど好ましい。
【0091】(表面性)上記(機械的特性)で作製した
試験片を用い、東京精密(株)製の表面粗さ計surf
com1500Aを用いて、中心線粗さを測定した。こ
の値が小さいほど表面が平滑であることを示し、好まし
い。
【0092】(灰分率)無機粒子に由来する、ポリエス
テル樹脂組成物の灰分率を、JISK7052に準じて
測定した。
【0093】(評価例1)イオン交換水、ベンゲルHV
PおよびA1120(ベンゲルHVPに対して4.2重
量部)を撹拌混合することによって無機粒子−水分散体
を得た。得られた無機粒子−水分散体の液性限界を、上
記方法により測定した。この無機粒子−水分散体の液性
限界における無機粒子の濃度は、約6重量%であった。
【0094】(評価例2)イオン交換水、ベンゲルHV
PおよびA1230(ベンゲルHVPに対して10重量
部)を撹拌混合することによって無機粒子−水分散体を
得た。得られた無機粒子−水分散体の液性限界を、上記
方法により測定した。この無機粒子−水分散体の液性限
界における無機粒子の濃度は、約13重量%であった。
【0095】評価例1および2を表1にまとめる。
【0096】
【表1】
【0097】(実施例1)2100gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVP(無機粒子)および7.5g
のA1120を、90分間撹拌混合した。次いで、加熱
して900gの水を除去することによって、無機粒子を
約13重量%含有するシラン粘土複合体(無機粒子−水
分散体)を得た。なお、シラン粘土複合体の確認は、上
記方法により、底面間隔およびシラン系化合物に由来す
る官能基の吸収帯を測定することにより行った。以下、
実施例2〜4においても、同様にして、得られたシラン
粘土複合体を確認した。その結果を表2に示す。
【0098】次いで、得られた無機粒子−水分散体を4
8時間静置した。静置後、無機粒子は全く沈降・分離し
ていなかった。2軸押出機(日本製鋼(株)、LABO
TEX30)を用い、上記の無機粒子−水分散体、25
00gのPET樹脂、5.0gのヒンダードフェノール
系安定剤(旭電化(株)アデカスタブAO60、以降A
O60と称す)を、設定温度260〜280℃、回転数
100rpmの条件で溶融混練し、ポリエステル樹脂組
成物を得た。この組成物の組成を表3に示す。この組成
物を上記方法に従って評価した。その結果を表4に示
す。
【0099】(実施例2)2100gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVPおよび7.5gのA1120
を、90分間撹拌し、無機粒子を約7.9重量%含有す
る無機粒子−水分散体を得た。得られた無機粒子−水分
散体を48時間静置したが、無機粒子は全く沈降・分離
していなかった。この無機粒子−水分散体とPET樹脂
とを、実施例1と同様にして溶融混練し、ポリエステル
樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表3に示す。こ
の組成物を上記方法に従って評価した。その結果を表4
に示す。
【0100】(実施例3)2100gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVPおよび18gのA1230
を、60分間撹拌混合した。次いで、加熱して1600
gの水を除去することによって、無機粒子を約26.5
重量%含有する無機粒子−水分散体を得た。得られた無
機粒子−水分散体を48時間静置したが、無機粒子は全
く沈降・分離していなかった。この無機粒子−水分散体
とPET樹脂とを、実施例1と同様にして溶融混練し、
ポリエステル樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表
3に示す。この組成物を上記方法に従って評価した。そ
の結果を表4に示す。
【0101】(実施例4)2100gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVPおよび18gのA1230
を、約60分間撹拌した。次いで、加熱して1200g
の水を除去することによって、無機粒子を約16.7重
量%含有する無機粒子−水分散体を得た。得られた無機
粒子−水分散体を48時間静置したが、無機粒子は全く
沈降・分離していなかった。この無機粒子−水分散体と
PET樹脂とを、実施例1と同様にして溶融混練し、ポ
リエステル樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表3
に示す。この組成物を上記方法に従って評価した。その
結果を表4に示す。
【0102】(比較例1)5000gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVPおよび7.5gのA1230
を、90分間撹拌することによって、無機粒子を約3.
5重量%含有する無機粒子−水分散体を得た。得られた
無機粒子−水分散体を48時間静置すると、無機粒子が
沈降・分離した。この無機粒子−水分散体とPET樹脂
とを、実施例1と同様にして溶融混練し、ポリエステル
樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表3に示す。こ
の組成物を上記方法に従って評価した。その結果を表4
に示す。
【0103】(比較例2)2500gのイオン交換水、
180gのベンゲルHVPおよび18gのA1230
を、約60分間撹拌することによって、無機粒子を約
6.7重量%含有する無機粒子−水分散体を得た。得ら
れた無機粒子−水分散体を48時間静置すると、無機粒
子が沈降・分離した。この無機粒子−水分散体とPET
樹脂とを、実施例1と同様にして溶融混練し、ポリエス
テル樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表3に示
す。この組成物を上記方法に従って評価した。その結果
を表4に示す。
【0104】(比較例3)2500gのPET樹脂と5
gのAO60とを実施例1と同様にして混練し、ポリエ
ステル樹脂組成物を得た。この組成物の組成を表3に示
す。この組成物を上記方法に従って評価した。その結果
を表4に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】表2〜4から、実施例1〜4では、無機粒
子が沈降・分離していない分散体をポリエステル樹脂と
添加混練したので、無機粒子がポリエステル樹脂中に均
一微分散し、その結果、優れた物性改善効果が得られた
ことが分かる。比較例1および2では、無機粒子が沈降
・分離した分散体をポリエステル樹脂と添加混練したの
で、得られたポリエステル樹脂組成物中には無機粒子が
均一に分散していない部位が多く、物性改善の効果が小
さいことが分かる。
【0109】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
無機粒子と水とを含有する無機粒子−水分散体中の無機
粒子の濃度を、液性限界を示す時の濃度よりも高くする
ことによって、この無機粒子−水分散体の流動性を抑え
て無機粒子の沈降・分離を防ぐことができる。それによ
って、溶融混練などの簡便な方法でポリエステル樹脂中
に無機粒子を均一微分散させ、機械的特性および耐熱性
等の物性バランスに優れるポリエステル樹脂組成物を製
造することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル樹脂および無機粒
    子を含有するポリエステル樹脂組成物の製造方法であっ
    て、熱可塑性ポリエステル樹脂と、無機粒子および水を
    含有する混合物とを混練する工程を包含し、ここで該混
    合物中の該無機粒子の濃度が、該混合物が液性限界を示
    す時の濃度よりも高い、ポリエステル樹脂組成物の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 前記無機粒子が、溶媒中で膨潤している
    膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1) YnSiX4-n (1) (ここで、nは0〜3の整数であり;Yは、置換基を有
    していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基であり;X
    は加水分解性基および/または水酸基であり;n個の
    Y、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい)
    で表されるシラン系化合物を導入することにより調製さ
    れるシラン粘土複合体である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 熱可塑性ポリエステル樹脂および無機粒
    子を含有するポリエステル樹脂組成物であって、請求項
    1または2に記載の方法により得られる、ポリエステル
    樹脂組成物。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002155208A (ja) * 2000-11-21 2002-05-28 Idemitsu Petrochem Co Ltd 熱可塑性樹脂組成物の製造方法及び熱可塑性樹脂組成物
JP2003041097A (ja) * 2001-07-25 2003-02-13 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 強化ポリエステル樹脂組成物

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