JP3941841B2 - 粘土複合体含有熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、熱可塑性樹脂および粘土複合体を含有する熱可塑性樹脂組成物、ならびにその製造方法に関する。
背景技術
熱可塑性樹脂の機械物性や耐熱性などを改良する目的で、従来からタルクやマイカなどの層状粘土鉱物が充填剤として利用されてきた(例えば、特公昭49−18615号、特開昭55−16049号、特公昭63−53222号公報)。このような層状粘土鉱物を多量に加えることにより、得られる樹脂組成物の弾性率や耐熱性は改善されるが、この樹脂組成物から得られる成形品の外観不良、比重増加、および色調悪化を招く。更には、層状粘土鉱物の分散不良あるいは層状粘土鉱物と樹脂との接着性不良等から生じる、樹脂組成物の強度または靭性などの低下という問題も生じていた。
充填剤と樹脂との接着性を改良して強度または靭性などの低下を防ぐ手段として、表面処理剤が一般に利用されており、例えば、層状粘土鉱物をシラン系表面処理剤で処理した表面処理充填剤とポリエステル樹脂との複合物が開示されている(例えば、特開昭51−24653号公報、特開昭51−24654号公報等)。しかしながら、従来の表面処理方法では樹脂組成物の強度等を向上させる効果は依然不充分である。また、表面処理を行っても層状粘土鉱物自体は積層構造のままであるので、成形品の外観不良、比重増加、および色調悪化の問題は依然として発生する。
層状粘土鉱物は、通常、1nm程度の厚さの単位層がおおよそ百から数千枚程度重なり合った凝集構造を有する。従って、上記の従来技術では、熱可塑性樹脂中で分散している層状粘土鉱物は単位層として個々独立に存在するのではなく、凝集構造の状態で存在している。
層状粘土鉱物の凝集構造を劈開させ、熱可塑性樹脂中で単位層を個々独立に分散させることができれば、層状粘土鉱物を少量添加するだけで樹脂の強化が可能となり、かつ成形品の外観不良、比重増加、および色調悪化の問題を解消できると考えられる。しかしながら、シラン系の表面処理剤を用いることによって、層状粘土鉱物を単位層状態に劈開して均一分散させ、優れた物性を有する樹脂組成物を得る技術は未だ提供されていない。
発明の開示
本発明の目的は上記のような従来の問題の解決を意図するものであり、層状粘土鉱物の凝集構造を劈開し、熱可塑性樹脂中において、非常に微細なnmオーダーの多数の層として個々独立に分散させることによって、機械的特性(弾性率、強度、靱性など)、耐熱性、および成形品の外観に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)に下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製され、そして[RB300]値が20%以上であり、ここで[RB300]は、等価面積円直径[D]が300nm以下である粘土複合体(B)の比率として定義される。
1つの実施態様においては、熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂から成る群から選択される少なくとも1種である。
他の実施態様においては、膨潤性ケイ酸塩(B1)は、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母から成る群から選択される少なくとも1種である。
さらに他の実施態様においては、粘土複合体(B)は、膨張性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させた後にシラン系化合物(B2)を導入することにより調製される。
他の実施態様においては、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粘土複合体(B)0.1〜100重量部を含有する。
他の実施態様においては、粘土複合体(B)に由来する灰分率は0.1〜50重量%である。
好適な実施態様においては、[RB300]値は50%以上である。
他の実施態様においては、[DB]値が500nm以下であり、ここで[DB]は粘土複合体(B)の等価面積円直径の平均値として定義される。
他の実施態様においては、[DB]/[DB1]値が0.010以下であり、ここで[DB]は粘土複合体(B)の等価面積円直径の平均値として定義され、そして[DB1]は膨潤性ケイ酸塩(B1)の等価面積円直径の平均値として定義される。
他の実施態様においては、[NB]/[NB1]値が300以上であり、ここで[NB]は単位灰分率当たり、および単位面積当たりの粘土複合体(B)の数として定義され、そして[NB1]は単位灰分率当たり、および単位面積当たりの膨潤性ケイ酸塩(B1)の数として定義される。
他の実施態様においては、熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の平均層厚は20nm以下である。
他の実施態様においては、熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の20%以上が層厚5nm以下である。
他の実施態様においては、[IB]/[IB1]値が0.25以下であり、ここで[IB]は粘土複合体(B)に由来する小角X線回折の回折強度として定義され、そして[IB1]は膨潤性ケイ酸塩(B1)の凝集構造に由来する小角X線回折の回折強度として定義される。
他の実施態様においては、熱可塑性樹脂組成物中の粘土複合体(B)の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔の3倍以上である。
本発明の他の局面によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させた後に、下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製される。
本発明のさらに他の局面によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)に上記一般式(I)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製され、そして熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の平均層厚は20nm以下である。
本発明のさらに他の局面によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)に上記一般式(I)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製され、そして熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の20%以上が層厚5nm以下である。
本発明のさらに他の局面によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)に上記一般式(I)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製され、そして[IB]/[IB1〕値が0.25以下であり、ここで[IB]は粘土複合体(B)に由来する小角X線回折の回折強度として定義され、そして[IB1]は膨潤性ケイ酸塩(B1)の凝集構造に由来する小角X線回折の回折強度として定義される。
本発明のさらに他の局面によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有し、ここで粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)に上記一般式(I)で表されるシラン系化合物(B2)を導入することにより調製され、そして熱可塑性樹脂組成物中の粘土複合体(B)の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔の3倍以上である。
本発明の、熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させる工程;および底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)に下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)を導入して粘土複合体(B)を調製する工程を包含する。
1つの実施態様においては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、粘土複合体(B)と重合性モノマーとを混合して混合物を得る工程、および該混合物中で該重合性モノマーを重合して熱可塑性樹脂(A)を得る工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得られた本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(C)における、粘土複合体(B)の分散状態を示す、透過型電子顕微鏡写真である。
図2は、実施例1で得られた本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物(C)における、粘土複合体(B)に由来する小角X線回折図形である。
発明を実施するための最良の形態
熱可塑性樹脂(A)
本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、任意の熱可塑性樹脂であり得る。そのような熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ビニル系高分子化合物、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、ポリオレフィン系共重合体等の任意の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂はエラストマーまたはゴムであり得る。これらの熱可塑性樹脂の内の1種または2種以上を用い得る。熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリオレフィン樹脂が好ましく、特に好ましくは熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂である。
前記の熱可塑性ポリエステル樹脂は、特に限定されず、ジカルボン酸化合物および/またはジカルボン酸のエステル形成性誘導体、およびジオール化合物および/またはジオール化合物のエステル形成性誘導体から調製される、任意のポリエステル樹脂である。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ネオペンチルテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等、またはこれらの共重合ポリエステルを挙げることができる。それらを単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
前記ポリカーボネート樹脂は、特に限定されず、2価フェノール化合物およびホスゲン、または、2価フェノール化合物および炭酸ジエステル化合物の反応により得られる任意のポリカーボネート樹脂である。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン型ポリカーボネート、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン型ポリカーボネート、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド型ポリカーボネート、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン型ポリカーボネート、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン型ポリカーボネート、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)ベンゼン等が挙げられる。それらを単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
前記ポリアミド樹脂は、特に限定されず、任意のポリアミド樹脂を使用できる。具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(TMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6I)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ナイロン11TH)、およびこれらの共重合体を挙げることができる。それらは、単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
前記ポリオレフィン樹脂は、特に限定されず、任意のポリオレフィンを使用できる。具体例としては、エチレンを含むα−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィン系エラストマーが挙げられる。エチレン単独の重合体としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、および線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。ポリプロピレンとしては、ポリプロピレン単独重合体に限らず、プロピレンとエチレンの共重合体も含まれる。上記のポリエチレンやポリプロピレンはオレフィン系エラストマーを含んでいても良い。ここで、オレフィン系エラストマーとは、エチレンと、1種以上のエチレン以外のα−オレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなど)との共重合体を意味する。具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。それらを単独、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
本発明に用いる熱可塑性樹脂(A)の分子量は、成形工程における成形流動性および最終製品の諸物性を考慮して選択され、低すぎても高すぎても好ましくない。最適な分子量は、主として熱可塑性樹脂(A)の一次構造で決定されるため、それぞれの熱可塑性樹脂(A)について適した分子量を設定する必要がある。
本発明で好適に使用され得る熱可塑性ポリエステル樹脂の分子量は、例えば、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒を用いて、25℃で測定した対数粘度が0.3〜2.0(dl/g)であり、好ましくは0.35〜1.9(dl/g)であり、更に好ましくは0.4〜1.8(dl/g)である。対数粘度が0.3(dl/g)未満である場合、得られる熱可塑性樹脂組成物(C)の成形品の機械物性、耐衝撃性が低くなる傾向があり、また2.0(dl/g)より大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
本発明で好適に使用され得るポリカーボネート樹脂の分子量は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)溶媒によるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定において、40℃で測定した重量平均分子量(Mw)が、単分子量分散ポリスチレン換算で、15000から80000、好ましくは25000〜75000、更に好ましくは30000〜70000である。Mwが15000未満であると得られる熱可塑性樹脂組成物(C)の成形品の機械物性や耐衝撃性が低くなる傾向があり、また80000より大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
本発明で好適に使用され得るポリアミド樹脂の分子量は、例えば、98%濃硫酸を用い、1.0%の濃度で25℃で測定した相対粘度が1.5〜5.0のものが望ましい。相対粘度が1.5未満であると得られる熱可塑性樹脂組成物(C)の成形品の機械物性、耐衝撃性が低くなる傾向があり、また5.0より大きい場合は成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
また、前記ポリオレフィン樹脂の中でポリプロピレンの分子量は、例えば、230℃、荷重2.16Kgで測定したメルトインデックスが0.3〜30g/10分が好ましく、更には0.5〜15g/10分が好ましい。メルトインデックスが30g/10分より大きいと成形品の機械物性、耐衝撃性が低くなる傾向があり、また、0.3g/10分未満であると成形時の流動性等の加工性に問題が生じる傾向がある。
粘土複合体(B)
本発明で用いられる粘土複合体(B)とは、膨潤性ケイ酸塩(B1)に下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)が導入されているものである。
膨潤性ケイ酸塩(B1)
膨潤性ケイ酸塩(B1)としては、通常一般に用いられる任意のものが使用され得、好ましくは、主として酸化ケイ素の四面体シート、および主として金属水酸化物の八面体シートから形成されるケイ酸塩である。膨潤性ケイ酸塩としてはスメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
スメクタイト族粘土は、下記一般式
X0.2〜0.6Y2〜3Z4O10(OH)2・nH2O
(ここで、XはK、Na、1/2Ca、および1/2Mgから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、およびCrから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、ZはSiおよびAlから成る群より選ばれる少なくとも1種である。H2Oは層間イオンと結合している水分子を表す。nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成された鉱物である。スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、およびベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
膨潤性雲母は下記一般式
X0.5〜1.0Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2
(ここで、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、およびSrから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、およびLiから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、およびBから成る群より選ばれる少なくとも1種である。)で表される、天然または合成された鉱物である。膨潤性雲母は、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、または水と該極性溶媒との混合溶媒中で膨潤する性質を有する。膨潤性雲母としては、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
膨潤性雲母としてはバーミキュライト類に相当するもの等も使用し得る。バーミキュライトには3八面体型と2八面体型があり、下記一般式
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2)xnH2O
(ただし、MはNaおよびMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表される。
前記の膨潤性ケイ酸塩(B1)は、単独または2種以上組み合わせて使用される。膨潤性ケイ酸塩(B1)の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
シラン系化合物(B2)
膨潤性ケイ酸塩(B1)に導入されるシラン系化合物(B2)としては、通常一般に用いられる任意のものが使用され得、好ましくは、下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
で表される化合物である。ここで、nは0〜3の整数である。Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基である。この置換基はエステル基、エーテル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、メルカプト基、スルホニル基、スルフィニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子、および水酸基から成る群より選択される少なくとも1種であり得る。Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である。加水分解性基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子から成る群より選択される少なくとも1種である。ここで、n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。
本明細書において炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基など)、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含することを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル基、アリール基(フェニル基、ナフチル基など)、およびシクロアルキル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基(フェニレン基、ナフチレン基など)、およびシクロアルキレン基等を包含する。
上記一般式(I)において、Yが炭素数1〜25の非置換の炭化水素基である場合の化合物の例としては、デシルトリメトキシシランの様にYが炭素数10〜25の高級アルキル基であるもの、メチルトリメトキシシランの様にYが炭素数1〜9の低級アルキル基であるもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様にYが不飽和炭化水素基であるもの、2−エチルヘキシルトリメトキシシランの様にYが側鎖を有するもの、フェニルトリエトキシシランの様にYがフェニル基を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシシランの様にYがナフチル基を有するもの、およびp−ビニルベンジルトリメトキシシランの様にYがアリールアルキル基を有するものが挙げられる。上記一般式(I)において、Yが不飽和炭化水素基の中でも特にビニル基である場合の化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、およびビニルトリアセトキシシランが挙げられる。
上記一般式(I)においてYが置換基としてエステル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてエーテル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、および2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてエポキシ基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてアミノ基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、およびγ−アニリノプロピルトリメトキシシラン(NH2C6H4(CH2)3Si(OCH3)3)が挙げられる。Yが置換基としてカルボキシル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてカルボニル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン(H2NCONH(CH2)3Si(OC2H5)3)が挙げられる。Yが置換基としてアミド基を有する化合物としてはアミノ基を有する上記化合物のアセチル化物などが挙げられる。Yが置換基としてメルカプト基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてスルホニル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−フェニルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてスルフィニル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてニトロ基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてニトロソ基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてニトリル基を有する基である場合の化合物の例としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yが置換基としてハロゲンを有する基である場合の化合物の例としては、γ−クロロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yが置換基として水酸基を有する基である化合物の例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記一般式(I)においてXが水酸基である場合、その水酸基はシラノール基(SiOH)の形である。シラノール基を有するシラン系化合物(B2)の例として、下式で表されるジメチルジヒドロキシシランのオリゴマーが挙げられる。膨潤性ケイ酸塩(B1)との反応性およびシラン系化合物(B2)自体の取り扱い性の点から、mは2から30の整数であることが好ましい。
上記のシラン系化合物(B2)の置換体、または誘導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物(B2)は、単独、又は2種以上組み合わせて使用され得る。
粘土複合体(B)の調製
粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させた後に、シラン系化合物(B2)を導入することにより得られ得る。
ここで、底面間隔とは膨潤性ケイ酸塩または得られる粘土複合体の単位層の底面同士の間隔を意味する。具体的には、底面間隔は小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。すなわち、分散媒と膨潤性ケイ酸塩(B1)から成る分散体(あるいは、分散媒に添加する前の凝集状態にある膨潤性ケイ酸塩)におけるX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、該ピーク角値をBraggの式
2dsinθ=nλ
(式中、dは結晶中の底面間隔、θは入射角、nは正の整数、λはX線の波長)に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。
膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大する工程は、膨潤性ケイ酸塩(B1)を分散媒中に分散させるか、あるいは膨潤性ケイ酸塩(B1)に物理的な外力を加えることによって行われ得る。
分散媒を用いる場合、分散媒としては、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、または水とこのような極性溶媒との混合溶媒が使用され得る。極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;その他の溶媒であるジメチルスルホキシドおよび2−ピロリドン等が挙げられる。これらの極性溶媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いても良い。
分散媒中で膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させることは、膨潤性ケイ酸塩(B1)を分散媒中で充分に撹拌して分散させることによりなし得る。膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を効率的に拡大させるためには、膨潤性ケイ酸塩と分散媒との混合物を数千rpm以上で撹拌することが好ましい。
膨潤性ケイ酸塩(B1)に物理的な外力を加えて層同士を劈開させて底面間隔を拡大する場合、物理的な外力は、一般に行われるフィラーの湿式微粉砕方法を用いることによって加えられ得る。一般的なフィラーの湿式微粉砕方法としては、例えば、硬質粒子を利用する方法が挙げられる。この方法では、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩(B1)と任意の溶媒とを混合して撹拌し、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩(B1)との物理的な衝突によって、膨潤性ケイ酸塩(B1)の層同士を分離させる。通常用いられる硬質粒子はフィラー粉砕用ビーズであり、例えば、ガラスビーズまたはジルコニアビーズ等が挙げられる。これら粉砕用ビーズは、膨潤性ケイ酸塩(B1)の硬度、または撹拌機の材質を考慮して選択され、上述したガラスまたはジルコニアに限定されない。その粒径もまた、膨潤性ケイ酸塩(B1)のサイズなどを考慮して決定されるために一概に数値で限定されるものではないが、直径0.1〜6.0mmの範囲にあるものが好ましい。ここで用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、上記の分散媒と同様のものが好ましい。
拡大後の膨潤性ケイ酸塩(B1)の層間の底面間隔は初期の膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔に比べて、好ましくは3倍以上であり、更に好ましくは5倍以上である。上限値は特にない。底面間隔が約10倍以上に拡大すると、底面間隔の測定が困難になり、この場合、膨潤性ケイ酸塩(B1)は実質的に単位層で存在すると考えられる。本明細書において膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔とは、分散媒に添加する前の、単位層が互いに積層し凝集状態である膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を意味する。
上記のように、膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させた後、すなわち凝集状態であった単位層を劈開してばらばらにし、個々独立に存在させた後に、劈開された膨潤性ケイ酸塩(B1)の単位層の表面にシラン系化合物(B2)を導入することによって粘土複合体(B)が得られ得る。
シラン系化合物の導入は、分散媒を用いる方法の場合は、底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)と分散媒とを含む分散体中にシラン系化合物(B2)を添加して撹拌することにより行われ得る。シラン系化合物(B2)をより効率的に導入したい場合は、撹拌の回転数を1000rpm以上にするか、あるいは500(1/s)以上の剪断速度を加えることが好ましい。25000rpmより大きい値で撹拌するか、あるいは500000(1/s)より大きい剪断速度を加えても効果はそれ以上変わらない傾向があるため、それ以上の回転数または剪断速度を用いる必要はない。物理的外力を用いる方法の場合、膨潤性ケイ酸塩(B1)に物理的外力を加えながら(例えば湿式粉砕しながら)そこにシラン系化合物(B2)を加えることによってシラン系化合物(B2)を導入し得る。あるいは、物理的外力によって底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)を分散媒中に加え、上記の分散媒を用いる方法の場合と同様にそこにシラン系化合物(B2)を添加することによってシラン系化合物(B2)を導入することもできる。
膨潤性ケイ酸塩(B1)の表面に存在する水酸基と、シラン系化合物(B2)の加水分解性基または水酸基(式I中のX)とが反応することによって、膨潤性ケイ酸塩(B1)にシラン系化合物(B2)が導入され得る。膨潤性ケイ酸塩(B1)とシラン系化合物(B2)との反応は室温で充分に進行し得るが、必要に応じて反応系を加温しても良い。加温時の最高温度は、用いるシラン系化合物(B2)の分解温度未満であり、かつ分散媒の沸点未満であれば任意に設定され得る。
膨潤性ケイ酸塩(B1)中に導入されたシラン系化合物(B2)がさらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、あるいはビニル基のような反応活性な官能基(式I中のYの置換基)を有している場合、このような反応活性基と反応できる化合物をさらに添加して、この化合物をこの反応活性基と反応させることも可能である。このようにして膨潤性ケイ酸塩(B1)に導入されたシラン系化合物(B2)の官能基鎖の鎖長を長くしたり、極性を変えることができる。この場合、添加される化合物としては上記のシラン系化合物(B2)自体も用いられ得るがそれらに限定されることはなく、目的に応じて任意の化合物が用いられ得、例えば、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、および水酸基含有化合物等が挙げられる。
シラン系化合物(B2)の使用量は、得られる粘土複合体(B)と使用される樹脂(A)との親和性や分散性が高まるように調整し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物(B2)を併用し得る。従って、シラン系化合物(B2)の添加量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性ケイ酸塩(B1)100重量部に対して、好ましくは0.1から200重量部であり、更に好ましくは0.2から160重量部であり、特に好ましくは0.3から120重量部である。シラン系化合物(B2)の量が0.1重量部未満であると得られる粘土複合体(B)の微分散化効果が充分で無くなる傾向があり好ましくない。また、200重量部以上では効果が変わらないので、200重量部より多く添加する必要はない。
上記のようにして得られる粘土複合体(B)の底面間隔は、導入されたシラン系化合物(B2)の存在により、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔に比べて拡大し得る。例えば、分散媒中に分散されて底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)は、シラン系化合物(B2)を導入しない場合、分散媒を除去するとまた層同士が凝集した状態に戻るが、本発明によれば、底面間隔を拡大した後にシラン系化合物(B2)を導入することで、分散媒を除去した後も、得られる粘土複合体(B)は層同士は凝集することなく底面間隔が拡大された状態で存在し得る。粘土複合体(B)の底面間隔は膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔の1.5倍以上拡大していることが好ましく、2倍以上拡大していることが特に好ましい。
シラン系化合物(B2)が膨潤性ケイ酸塩(B1)中に導入されたことは、種々の方法で確認し得る。確認方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、テトラヒドロフランやクロロホルムなどの有機溶剤を用いて粘土複合体(B)を洗浄し、単に吸着しているシラン系化合物(B2)を除去する。洗浄後の粘土複合体(B)を乳鉢などで粉体状にしたのち充分に乾燥する。次いで、粘土複合体(B)を粉末状の臭化カリウム(KBr)等と所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フーリエ変換(FT)−IRを用い、透過法等により、シラン系化合物(B2)に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定することが所望される場合、あるいはシラン系化合物(B2)量が少ない場合には、充分に乾燥した粉末状の粘土複合体(B)をそのまま拡散反射法(DRIFT)で測定することが望ましい。
粘土複合体(B)の底面間隔が膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔よりも拡大していることは、種々の方法で確認し得る。確認方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、上記と同様にして、吸着しているシラン系化合物(B2)を有機溶媒で洗浄して粘土複合体(B)から除去し、乾燥した後に、小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。この方法では、粉末状の粘土複合体(B)の(001)面に由来するX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。同様に初期の膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を測定し、この両者を比較することにより底面間隔の拡大を確認し得る。
上記のように、シラン系化合物(B2)の導入および底面間隔の拡大を確認することによって、粘土複合体(B)が生成していることを確認できる。このように、本発明によれば、シラン系化合物(B2)を導入すること、および底面間隔を拡大することにより、粘土複合体(B)とマトリックスとしての樹脂との間の親和性を高めることができる。
熱可塑性樹脂組成物(C)の調製
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対する粘土複合体(B)の配合量が、代表的には0.1〜100重量部、好ましくは0.2〜85重量部、更に好ましくは0.5〜70重量部となるように調製される。粘土複合体(B)の配合量が0.1重量部未満であると機械物性や耐熱性の改善効果が不充分となる場合があり、150重量部を超えると成形体の外観や成形時の流動性などが損なわれる傾向がある。もっとも、この配合量は、熱可塑性樹脂複合体(C)の最終的な用途に応じて適宜選択し得るので、上記の範囲に限定されるものではない。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、粘土複合体(B)に由来する熱可塑性樹脂組成物(C)の灰分率が、代表的には0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜45重量%、更に好ましくは0.5〜40重量%となるように調製される。灰分率が0.1重量%未満であると機械物性や耐熱性の改善効果が不充分となる場合があり、50重量%を越えると成形体の外観や成形時の流動性などが損なわれる傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)の製造は、予め調製した粘土複合体(B)と重合性モノマーとを混合して混合物を調製する工程(混合工程)、および得られた混合物中でこの重合性モノマーを重合して熱可塑性樹脂(A)を得る工程(重合工程)を包含する方法によって行い得る。
上記方法において用いられる重合性モノマーは、所望の熱可塑性樹脂(A)を調製するための通常用いられる任意のモノマーであり得る。粘土複合体(B)の調製に用いられる上記分散媒と、ここで用いられる重合性モノマーが同一であってもよい。
熱可塑性樹脂(A)がポリエステル樹脂の場合、用いられる重合性モノマーは、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体を主成分とする酸成分と、ジオール化合物および/またはそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分とであり得る。
上記のジカルボン酸は、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体や誘導体も使用し得る。また、p−オキシ安息香酸およびp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸、ならびにこれらのエステル形成性誘導体も使用し得る。これらのモノマーの内の2種以上を混合して用いても良い。得られるポリエステル樹脂の特性を損なわない程度の少量であれば、これらの芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、セバシン酸等のような脂肪族ジカルボン酸を1種以上混合して使用し得る。
上記のジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール等のような脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のような脂環族ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のような芳香族ジオールが挙げられ、これらの置換体や誘導体もまた使用し得る。これらの内の2種以上を混合して用いても良い。更に、ポリエステル樹脂の弾性率を著しく低下させない程度の少量であるならば、長鎖ジオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)、およびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)を少なくとも1種混合し得る。
また、ε−カプロラクトンのような環状エステルも重合性モノマーとして使用し得る。
熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂の場合、用いられる重合性モノマーは、2価フェノール化合物および/またはそのエステル形成性誘導体を主成分とする2価フェノール成分と、ホスゲンまたは炭酸ジエステル化合物とであり得る。
上記2価フェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニルメタン)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、フェノールフタレイン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(「ビスフェノールTMC」)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル等が挙げられる。また、難燃性を高めるために、ベンゾトリアゾール基を有する2価フェノールを共重合したポリマーも使用され得る。これら2価フェノール化合物の置換体や誘導体、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もまた使用し得る。これら2価フェノール化合物の内の2種以上を混合して用いても良い。
上記の炭酸ジエステル化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート等のビスアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(3−メチルフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート等のビスアリールカーボネート等が挙げられる。
上記の粘土複合体(B)と重合性モノマーとの混合工程は、例えば、以下に示した方法で行うことが出来る。すなわち、前述の粘土複合体(B)の製造方法によって予め製造し単離した(すなわち分散媒を除去した)粘土複合体(B)を重合性モノマーに添加し充分に撹拌することによって混合物を調製し得る。あるいは、前述の粘土複合体(B)の製造で用いた分散媒が重合工程で悪影響を及ぼさない場合には、分散媒を除去せずに、粘土複合体(B)と分散媒とを含む分散体を直接用いて、混合物を調製し得る。この場合、前述の粘土複合体(B)の製造方法に従い、分散媒中で膨潤性ケイ酸塩(B1)にシラン系化合物(B2)を導入して粘土複合体(B)を調製することによって該分散媒と粘土複合体(B)から成る分散体を得た後、該分散体に重合性モノマーを添加して、十分に混合することによって混合物が得られ得る。上述のように分散媒自体が重合性モノマーであってもよい。
次に、重合工程においては、前記混合工程で得た混合物中の重合性モノマーを、各種熱可塑性樹脂(A)のための通常一般に行われる重合方法で重合させる。
熱可塑性樹脂(A)が熱可塑性ポリエステル樹脂である場合、重合工程は、例えば、以下に示す溶融重縮合法を利用して重合できる。まず、混合工程で得た混合物を重合反応器内に投入する。必要に応じて、熱可塑性ポリエステル樹脂を構成する他のモノマーを新たに追加しても良い。撹拌、混合しながら系を加熱して溶融状態とし、減圧して溶融重縮合反応を行い得る。重合反応に必要な触媒として、金属酸化物、炭酸塩、酢酸塩、およびアルコラート等の1種または2種以上を添加して使用し得る。
前記溶融重縮合法の他に、前記混合物中にジオール化合物が含まれている場合は以下の方法も使用され得る。すなわち、該混合物に、所望の構造の熱可塑性ポリエステル樹脂を加え、該熱可塑性ポリエステル樹脂の融点付近にまで系を加熱混合する。ここで、熱可塑性ポリエステル樹脂は、フェノール/テトラクロロエタン(5/5重量比)混合溶媒中で25℃で測定した対数粘度が0.3〜2.0(dl/g)であるものが好ましい。ジオール化合物による熱可塑性ポリエステル樹脂の解重合反応により、該熱可塑性ポリエステル樹脂を、モノマーおよび/または繰り返し単位数が2から15程度のオリゴマーにしてから、更に充分に混合することによって粘土複合体を系中に均一分散させた後、減圧して溶融重縮合反応を行う方法である。この場合、反応に必要な触媒は、出発原料の樹脂に既に含有されているが、必要に応じて、上記溶融重縮合の場合と同様の触媒の1種または2種以上を新たに添加して使用することもできる。
前記溶融重縮合法の他に固相重合法を行うこともできる。例えば、固相重合法は以下のような方法によって行われ得る。すなわち、溶融重縮合反応によってポリエステル樹脂の低重合度体を得、これを冷却固化する。該低重合度体を十分に乾燥した後、窒素等の不活性ガスの気流下、あるいは減圧下で150℃〜樹脂の融点以下に加熱し、発生するジオール化合物等を系外に除去しながら固体状態で重合して高重合度体を得る。
熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂である場合、重合工程は、例えば、以下に示す界面重合法を利用することによって行い得る。まず、上記混合工程で得た、ビスフェノール化合物のアルカリ金属塩を含む混合物に、塩化メチレンおよびホスゲンを加え、十分に撹拌しながら、アルカリ水相と塩化メチレン相の界面で重縮合反応を行い得る。界面重合法に必要な触媒として、脂肪族3級アミン、脂環式3級アミン、および芳香族3級アミン等の1種または2種以上を添加して使用し得る。
前記界面重合法の他に溶融重合法を行うこともできる。溶融重合法としては、例えば、以下の方法が例示される。まず、上記混合工程で得た、炭酸ジエステル化合物を含む混合物に、ビスフェノール化合物を加えて、十分に撹拌しながら系を約280から300℃付近にまで加熱して、溶融状態でエステル交換反応させる。溶融重合法に必要な触媒としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の単体、酸化物、水酸化物、アミド化合物、アルコラート、フェノラートの他、Sb2O3、ZnO、PbO、有機チタン化合物、第4級アンモニウム塩等の1種または2種以上を添加して使用し得る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、上述の様な混合工程および重合工程を包含する方法以外に、熱可塑性樹脂(A)と粘土複合体(B)とを、種々の一般的な混練機を用いて直接、溶融混練することによっても製造することができる。
前記の混練機の例としては、1軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロールなど、系に高い剪断力を与え得る混練機が挙げられる。特に、ニーディングディスク部を有する噛合型2軸押出機が好ましい。
溶融混練の際には、粘土複合体(B)の製造で用いた分散媒は、通常、予め除去する。しかし分散媒が熱可塑性樹脂(A)の劣化などを招かない場合は、分散媒の除去を省略し、それらを含んだままの粘土複合体(B)を用いることもできる。このように分散媒を含んだままの粘土複合体(B)は樹脂に対する均一分散性が良い点で好ましい。
熱可塑性樹脂(A)と粘土複合体(B)は、上記の混練機に一括投入して溶融混練しても良いし、あるいは予め溶融状態にした熱可塑性樹脂(A)に粘土複合体(B)を添加して溶融混練してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は上述のように重合や溶融混練によって製造され得るが、熱可塑性樹脂(A)が溶剤に溶解し易い場合、例えば、熱可塑性樹脂(A)がポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ビニル系高分子化合物、またはポリフェニレンオキサイド樹脂である場合は、溶剤中に粘土複合体(B)を分散した後にその分散体中に熱可塑性樹脂(A)を溶解し、乾燥などで溶媒を除去する方法によっても製造され得る。
例えば、熱可塑性樹脂(A)として前記のポリカーボネート樹脂を用いる場合は溶剤として塩化メチレン等を用い得る。塩化メチレンに粘土複合体(B)を添加し、撹拌混合して分散させた後にポリカーボネート樹脂を加えて溶解させる。次いで、乾燥により塩化メチレンを除去することによって、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)には、必要に応じて、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリルゴム、アイオノマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、天然ゴム、塩素化ブチルゴム、α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体(ランダム、ブロック、グラフトなど、いずれの共重合体も含み、これらの混合物であっても良い)、またはオレフィン系エラストマーなどの耐衝撃性改良剤を添加することができる。これらの重合体は無水マレイン酸等の酸化合物、またはグリシジルメタクリレート等のエポキシ化合物で変性されていても良い。また、得られる熱可塑性樹脂組成物(C)の機械的特性、成形性などの特性を損なわない範囲で、上記の熱可塑性樹脂(A)以外の他の任意の樹脂、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム質重合体強化スチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、およびポリアリレート樹脂等を単独または2種以上組み合わせて配合し得る。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)には、目的に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、および帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
熱可塑性組成物(C)中における粘土複合体(B)の分散状態
上記のような方法によって得られる本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)中で分散している粘土複合体(B)の構造は、配合前の膨潤性ケイ酸塩(B1)が有していたような単位層が多数積み重なっている凝集構造とは全く異なる。すなわち、初期の膨潤性ケイ酸塩(B1)における凝集構造と比べて底面間隔が拡大された粘土複合体(B)を、熱可塑性樹脂(A)と配合することによって、さらにその層同士が劈開して、底面間隔が拡大される。その結果粘土複合体(B)は熱可塑性樹脂組成物(C)中で非常に細かい多数の層となり、互いに独立して分散している。このような粘土複合体(B)の熱可塑性樹脂組成物(C)中における分散状態は以下に述べるような種々のパラメータにより表現され得る。
[RB300]を熱可塑性樹脂組成物(C)中に分散した粘土複合体(B)のうち等価面積円直径[D]が300nm以下である粘土複合体(B)の数の比率と定義すると、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)中の[RB300]値は20%以上であることが好ましく、より好ましくは35%以上、さらにより好ましくは50%以上となる。[RB300]値が20%未満であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱変形性の改良効果が充分でなくなる傾向がある。
本明細書において等価面積円直径[D]とは、顕微鏡などで得られる像上で様々な形状で分散している個々の分散層の面積と、等しい面積を有する円の直径であり、平均値とはそれらの数平均値を意図する。等価面積円直径[D]の測定は、顕微鏡などで撮影した像上において、100個以上の分散層を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などで画像化し、計算機処理することにより定量化できる。従って、粘土複合体(B)の等価面積円直径の平均値[DB]は、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影して得られる、粘土複合体(B)の分散状態を示す写真を用いることにより定量化できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)において、[DB]値は好ましくは500nm以下であり、より好ましくは450nm以下であり、更に好ましくは400nm以下である。[RB300]値が上記に示した範囲にあり、かつ、[DB]値がこの範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱変形性の改良効果がさらに大きくなり得る。[DB]値の下限値は特にないが、[DB]値が10nm程度未満では効果はほとんど変わらなくなるので、10nm未満にする必要はない。
劈開して細かくなった粘土複合体(B)の大きさは、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の凝集構造時の大きさに比べて非常に小さくなり得る。すなわち、[DB]を上記のように熱可塑性樹脂組成物(C)中の粘土複合体(B)の等価面積円直径の平均値と定義し、そして[DB1]を膨潤性ケイ酸塩(B1)の等価面積円直径の平均値として定義したとき、[DB]/[DB1]値は好ましくは0.010以下であり、より好ましくは0.008以下であり、更に好ましくは0.005以下である。[DB]/[DB1]値が0.010以下であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱変形性の改良効果が更に大きくなる。下限値は特にないが、[DB]/[DB1]値が0.0001程度未満では効果は変わらなくなるので、0.0001未満にする必要はない。ここで、初期の凝集構造を有する膨潤性ケイ酸塩(B1)の等価面積円直径[DB1]値は、例えば、次のようにして求められ得る。すなわち、上記熱可塑性樹脂組成物(C)と同じ灰分率である、熱可塑性樹脂(A)と膨潤性ケイ酸塩(B1)を含む樹脂複合物を熱プレスなどを用いて別に作製する。この樹脂複合物を光学顕微鏡で撮影して得られる、膨潤性ケイ酸塩(B1)の分散状態を示す写真を用いることにより[DB]と同様に[DB1]値を定量化できる。
積み重なっていた層が劈開し、互いに独立して存在することによって、熱可塑性樹脂組成物(C)中で分散している粘土複合体(B)数は初期の膨潤性ケイ酸塩(B1)と比べて増大する。すなわち、[NB]を単位灰分率当たり、および単位面積当たりの粘土複合体(B)数として定義し、そして[NB1]を単位灰分率当たり、および単位面積当たりの膨潤性ケイ酸塩(B1)数として定義したとき本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)における[NB]/[NB1]値は好ましくは300以上となり、より好ましくは400以上となり、更に好ましくは500以上となる。[NB]/[NB1]値が前記の範囲であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の物性を補強する粘土複合体(B)の数が増大する為、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱変形性の改良効果が更に大きくなる。上限値は特にないが[NB]/[NB1]値が50000程度を超えると効果は変わらなくなるので、50000より大きくする必要はない。
単位灰分率当たり、および単位面積当たりの分散層の数である[N]値は、例えば、次のようにして求められ得る。まず、顕微鏡などで撮影した像上において、100個以上の分散層を含む任意の領域を選択し、該領域内に存在する分散層の数と該領域の面積を求める。これと別に、分散層に由来する熱可塑性樹脂組成物(C)の灰分率を測定する。前記分散層の数を、該領域の面積および前記灰分率で除すことによって、[N]値を求め得る。従って、粘土複合体(B)の[NB]値、および膨潤性ケイ酸塩(B1)の[NB1]値は、前述の等価面積円直径[D]値の測定と同様にして、熱可塑性樹脂組成物(C)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真、または、熱可塑性樹脂(A)と膨潤性ケイ酸塩(B1)とを含む樹脂複合物の光学顕微鏡写真を用いることにより定量化できる。面積の単位は、[NB]値および[NB1]値の算出時に互いに同じ単位を使用すれば特に制限されず、例えば、μm2、nm2、またはÅ2など、任意の単位を用い得る。
上記のように、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)において、粘土複合体(B)は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の凝集構造に比べて極めて細かく分散している。さらに、分散している個々の該粘土複合体(B1)が薄い板状であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱性などの諸物性は更に効率よく改善される。すなわち、熱可塑性樹脂組成物(C)中で、粘土複合体(B)の層厚の平均値が20nm以下であり、好ましくは18nm以下であり、更に好ましくは15nm以下である。下限は特に制限されないが、1nm程度である。
層厚の測定は、上述の等価面積円直径である[D]値および分散層数である[N]値と同様に、100個以上の粘土複合体(B)を含む任意の領域を選択し、個々の粘土複合体(B)の層厚を測定することによって定量化でき、平均値とはそれらの数平均値を意図する。
独立して分散している粘土複合体(B)に関して、層厚が5nm以下のものの比率が、粘土複合体(B)全体の20%以上、更には30%以上であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱変形性をより効率的に改良できる。尚、層厚の測定方法は前述の方法と同様である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)中で分散している粘土複合体(B)に由来する結晶性は、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の凝集構造が示す結晶性に比べて非常に低くなり得る。すなわち、熱可塑性樹脂組成物(C)のX線回折測定を行った場合、[IB]を粘土複合体(B)に由来する小角X線回折の回折強度と定義し、[IB1]を膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の凝集構造に由来する小角X線回折の回折強度と定義すると、[IB]/[IB1]値は好ましくは0.25以下であり、より好ましくは0.23以下であり、更に好ましくは0.20以下である。[IB]/[IB1]値がこの範囲であると熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱性をより改良できる。下限は特にない。粘土複合体(B)に由来する小角X線回折強度[IB]値が小さくなり、ベースラインあるいはノイズとの判別が困難になる場合は[IB/IB1]値は0であり、粘土複合体(B)はほぼ完全に劈開して独立に存在する。ここで[IB1]値は、上記[DB1]値の場合と同様に、熱可塑性樹脂組成物(C)と同じ灰分率である。熱可塑性樹脂(A)と膨潤性ケイ酸塩(B1)を含む樹脂複合物を別に作製し、この樹脂複合物の小角X線回折測定を行うことによって求められ得る。
ここで、小角X線回折強度[I]の測定は、小角X線回折のピーク強度、または積分強度を求めることにより行われる。小角X線回折の積分強度の測定方法は特に限定されず、通常一般に行われている方法、例えば、X線回折測定の回折図形から面積を求める方法や、計数値から求める方法が挙げられる。上記の回折図形から面積を求める方法としては、例えば、プラニメータ法、重量法、三角近似法(ピーク高さ×半値幅)等、通常一般に行われる方法が例示される。また、上記計数値から求める方法としては、2θ連続スキャン法、2θステップスキャン法、2θ固定法等が例示される。
熱可塑性樹脂組成物(C)における劈開した粘土複合体(B)の底面間隔が、配合前の凝集構造である初期の膨間性ケイ酸塩(B1)の底面間隔の3倍以上、更には5倍以上であると、熱可塑性樹脂組成物(C)の機械物性や耐熱性をより効率的に改良できるため好ましい。尚、底面間隔の測定方法は粘土複合体(B)の調製方法に関して上述した方法と同様であり得る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、射出成形や熱プレス成形で成形しても良く、ブロー成形にも使用できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、透明性が維持されかつ機械物性に優れる2軸延伸フィルムにも利用できる。本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)から作製される成形品やフィルムは外観、機械的特性および耐熱変形性等に優れる為、例えば、自動車部品、家庭用電気製品部品、精密機械部品、家庭日用品、包装・容器資材、磁気記録テープ基材、その他一般工業用資材に好適に用いられる。
実施例
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
材料
(熱可塑性樹脂(A))
以下に示す樹脂を精製せずにそのまま用いた。
・ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂 :鐘紡(株)製、PBK2(対数粘度(ηinh)=0.63(dl/g))(以降、PETと称す)
・ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂 :鐘紡(株)製、PBT120(対数粘度(ηinh)=0.82(dl/g))(以降、PBTと称す)
・ポリカーボネート(PC)樹脂:出光石油化学(株)製タフロンA−2200(重量平均分子量(Mw)=45000)(以降、PCと称す)
(熱可塑性樹脂(A)のための重合性モノマー)
以下に示す化合物を精製せずにそのまま用いた。
・ビスヒドロキシエチルテレフタレート:日曹丸善ケミカル(株)製、NISSO BHET(以降、BHETと称す)
・テレフタル酸ジメチル:和光純薬(株)製、試薬特級(以降、DMTと称す)
・エチレングリコール:日本触媒(株)製、モノエチレングリコール(以降、EGと称す)
・1,4−ブタンジオール:東ソー(株)製、1、4−ブタンジオール(以降、1,4−BDと称す)
(膨潤性ケイ酸塩(B1))
モンモリロナイトは秋田県産の天然モンモリロナイト(底面間隔=1.3nm)を用いた。
膨潤性雲母は以下のようにして合成したものを用いた。
膨潤性雲母の合成:タルク25.4gとケイフッ化ナトリウム4.7gの微粉砕物を混合し、800℃で加熱処理して膨潤性雲母28.2gを得た(底面間隔=1.2nm)。
(シラン系化合物(B2))
以下に示す化合物を精製せずにそのまま用いた。
・γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
・γ−(ポリオキシエチレン)プロピルトリメトキシシラン
測定法
(FT−IR)
粘土複合体をテトラヒドロフラン(THF)に添加し、15分間撹拌して吸着しているシラン系化合物を洗浄して除去した後、遠心分離を行い上澄みを分離した。この洗浄操作を3回繰り返した。十分に乾燥した粘土複合体約1mgとKBr粉末約200mgとを乳鉢を用いて充分に混合した後、この混合物から卓上プレスを用いて測定用KBrディスクを作製した。次いで、赤外分光器を用いて透過法にて測定した。検出器はMCT検出器を用い、分解能4cm-1、スキャン回数100回とした。
(透過型電子顕微鏡(TEM))
ミクロトームを用い、サンプルを80〜100nm厚の薄片状に切り出した。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)を用い、加速電圧80kVで測定した。
層厚の平均値は、本発明の熱可塑性樹脂組成物のTEM写真において、100個以上の粘土複合体が存在する任意の領域における、個々の粘土複合体の層厚を測定し、それらを数平均することにより求めた。
単位灰分率当たりおよび単位面積当たりの個数[N]値、および等価面積円直径の平均値[D]値は、上記TEM写真において、100個以上の粘土複合体が存在する任意の領域を選択し、インタークエスト社の画像解析装置PIASIIIを用いて処理することにより求めた。
尚、比較例および製造例で作製した系中の膨潤性ケイ酸塩などの分散状態の観察においては、必要に応じて光学顕微鏡を用いた。
(小角X線回折(SAXS))
X線発生装置(理学電機社製RU−200B)を用い、ターゲットCuKα線、Niフィルター、電圧40kV、電流200mA、走査角2θ=0.2〜16.0°、ステップ角=0.02°の条件にて測定した。
小角X線回折強度[I]は回折図形の面積から求めたが、回折図形とベースラインとの区別が困難な場合、すなわち回折ピークが非常に小さい場合は、X線回折強度比は0%とした。
底面間隔は、小角X線回折ピーク角値をBraggの式に代入して算出した。ただし、小角X線ピーク角値の確認が困難である場合は、前記のように層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したかあるいは、ピーク角値がおおよそ0.8°以下である為に確認が困難であるとみなし、底面間隔の評価結果としては>10nmとした。
(灰分率)
粘土複合体に由来する熱可塑性樹脂組成物の灰分率は、JISK7052に準じて測定した。
尚、実施例、比較例、および参考例で用いた熱可塑性樹脂の灰分率は実質的に0であるので、求めた灰分率は粘土複合体に由来する灰分率である。
(試験片の作製)
熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、型締圧75tの射出成形機を用い、樹脂温度約260〜280℃で射出成形して寸法約10×100×6mmの試験片を作製した。
(荷重たわみ温度)
射出成形で得た試験片の1.85MPa荷重の荷重たわみ温度をASTM D−648に従って測定した。
(曲げ特性)
射出成形で得た試験片の曲げ強度と曲げ弾性率をASTM D−790に従って測定した。
(成形品の表面外観)
射出成形で得た試験片の光沢性および色調を目視で観察した。評価結果は、○、△、×で表した。
○:光沢があり、色調に斑がない
△:失透しているか、あるいは色調が不均一である
×:失透し、かつ色調が不均一である
(対数粘度の測定)
ポリエステル樹脂組成物を140℃、4時間乾燥した後、約100mgを精秤して、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=5/5(重量比)混合溶媒20mlを加えて120℃で溶解した。ウベローデ型粘度計を用い、自動粘度測定装置(ラウダ社製ビスコタイマー)を用いて溶液粘度の測定を行い、下記式から対数粘度(ηinh)を測定した。測定温度は25℃とした。
ηinh={ln(t/t0)}/C (I)
(式中、t:溶液の測定値、t0:混合溶媒の測定値、C:濃度(g/dl))
製造例1
純水6800gに150gのモンモリロナイトを高速撹拌機を用いて5000rpm、3分間撹拌して分散させた。その後、簡易ピペットを用いて、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン15gを滴下し、回転数6000rpmで2時間撹拌することにより、粘土複合体と水からなるスラリー(スラリーa)を得た。
前記のスラリーの一部を乾燥、粉砕して粘土複合体(粘土複合体a)を得た。得られた粘土複合体の底面間隔は2.6nmであった。また、THFで洗浄した後の粘土複合体をFT−IRにより測定した結果、1級アミノ基、2級アミノ基、およびエチレン基に由来する吸収帯が観測された。
尚、製造例1で得られる粘土複合体およびスラリーをそれぞれ粘土複合体a、およびスラリーaと称す。
製造例2
純水4500gに150gのモンモリロナイトを高速撹拌機を用いて5000rpm、3分間撹拌して分散させた。その後、別に、pH5.0に調製したエタノール/水(9/1重量比)混合溶媒で加水分解したγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン15gを簡易ピペットを用いて滴下し、剪断速度20000(1/s)で3時間撹拌することによって、粘土複合体と水からなるスラリー(スラリーb)を得た。
前記のスラリーの一部を乾燥、粉砕して粘土複合体(粘土複合体b)を得た。得られた粘土複合体の底面間隔は2.0nmであった。また、THFで洗浄した後の粘土複合体をFT−IRにより測定した結果、エポキシ環(エチレンオキサイド基)、エーテル基、およびメチレン基に由来する吸収帯が観測された。
尚、製造例2で得られる粘土複合体およびスラリーをそれぞれ、粘土複合体bおよびスラリーbと称す。
製造例3
純水4500gに150gのモンモリロナイトを高速撹拌機を用いて5000rpm、3分間撹拌して分散させた。その後、塩酸でpH4に調製した水で加水分解したγ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン15gを簡易ピペットを用いて滴下し、剪断速度20000(1/s)で2時間撹拌することによって、粘土複合体と水からなるスラリー(スラリーc)を得た。
前記のスラリーの一部を乾燥、粉砕して粘土複合体(粘土複合体c)を得た。得られた粘土複合体の底面間隔は2.4nmであった。また、THFで洗浄した後の粘土複合体をFT−IRにより測定した結果、エーテル基、およびエチレン基に由来する吸収帯が観測された。
尚、製造例3で得られる粘土複合体およびスラリーをそれぞれ、粘土複合体cおよびスラリーcと称す。
製造例4
純水3500gに150gの膨潤性雲母を高速撹拌機を用いて6000rpm、6分間撹拌して分散させた。その後、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン25gを簡易ピペットを用いて滴下し、剪断速度30000(1/s)で3時間撹拌することによって、粘土複合体と水からなるスラリー(スラリーd)を得た。
前記のスラリーの一部を乾燥、粉砕して粘土複合体(粘土複合体d)を得た。該粘土複合体の底面間隔は1.8nmであった。また、THFで洗浄した後の粘土複合体をFT−IRにより測定した結果、1級アミノ基、2級アミノ基、およびメチレン基に由来する吸収帯が観測された。
尚、製造例4で得られる粘土複合体およびスラリーをそれぞれ、粘土複合体dおよびスラリーdと称す。
製造例5
150gのモンモリロナイトに15gのγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランをスプレーを用いて噴霧し、1時間混合し、シラン処理モンモリロナイトを得た。該シラン処理モンモリロナイトの底面間隔は1.3nmであり、処理前のモンモリロナイトの初期の底面間隔と同じであった。また、THFで洗浄した後のシラン処理モンモリロナイトをFT−IRにより測定した結果、1級アミノ基、2級アミノ基、およびエチレン基に由来する吸収帯が観測された。
なお、製造例5で得られる処理モンモリロナイトをシラン処理モンモリロナイトa’と称す。
製造例6〜16
粉末状の熱可塑性樹脂100gと表1に示す量の膨潤性ケイ酸塩をドライブレンドし、その内15gを用い、熱プレスによって、表1に示す成形条件(温度および圧力)で寸法が約10×100×3mmの熱可塑性樹脂と膨潤性ケイ酸塩からなる成形品を作製した。
実施例1
蒸留管を取り付けたオートクレーブに、製造例1で製造したスラリーaを4000g、およびビスヒドロキシエチルテレフタレート(以下BHETと称す)3300gを投入・混合し、温度約120℃で約3時間撹拌を行い、更に約1時間、撹拌しながら減圧することによって水を除去し、粘土複合体aとBHETから成るBHET分散体(微量の水を含む)を調製した。
次いで、ヒンダードフェノール系安定剤(旭電化社製、AO60、以降AO60と称す)7.5g、および重合触媒である三酸化アンチモン(Sb2O3、以降Sb2O3と称す)0.45gを投入し、重合反応温度280℃で、減圧下、BHETを重合してポリエチレンテレフタレート(PET)を生成し、粘土複合体aを含有する熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。この熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.59(dl/g)であった。
得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の射出成形試験片に関してTEM観察を行い、分散状態にある粘土複合体の、等価面積円直径が300nm以下の層の比率[RB300]値、等価面積円直径の平均値[DB]値、単位灰分率および単位面積当たりの粘土複合体の数[NB]値、層厚の平均値、および5nm以下の層厚である層の比率を求めた。実施例1で得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物のTEM写真を図1に示す。図1から明らかなように、粘土複合体は凝集することなく非常に薄い層状態で樹脂相中に分散している。
また、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の射出成形試験片に関して、SAXS測定を行い、粘土複合体aに由来する小角X線回折強度[IB]、および粘土複合体aの底面間隔を求めた。実施例1で得られた熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の小角X線回折図形を図2に示す。図2に示されるように、粘土複合体に由来する結晶性のピークは認められず、このことから、層同士が凝集せず独立して分散していることが示される。この場合底面間隔の評価結果は>10nmとした。
製造例6で得られた成形品について、光学顕微鏡観察およびSAXS測定を実施して同様に評価した後、[DB]/[DB1]値、[NB]/[NB1]値、および[IB]/[IB1]値を算出した。
その他の評価項目としては、粘土複合体に由来する熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の灰分率、射出成形試験片の荷重たわみ温度、曲げ強度、曲げ弾性率、および目視による表面性である。
以上の評価結果を表2に示す。
実施例2
製造例2で製造したスラリーbを2700g用いた以外は、実施例1と同様の方法でPETを重合し、粘土複合体bを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造し、評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例2で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.60(dl/g)であった。
実施例3
製造例3で製造したスラリーcを2700g用いた以外は、実施例1と同様の方法でPETを重合し、粘土複合体cを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造し、評価した。
結果を表2に示す。
尚、実施例3で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.60(dl/g)であった。
実施例4
蒸留管を取り付けたオートクレーブに、製造例1で製造したスラリーaを4000g、および1,4−BDを3000g投入し充分に混合した。その後、温度約120℃で約3時間撹拌を行い、更に約1時間、撹拌しながら減圧することによって水を除去し、粘土複合体aと、1,4−BDから成る1,4−BD分散体(微量の水を含む)を調製した。
次いで、DMT1765g、AO60を6.0g、エステル交換触媒としてチタンテトラブトキサイド(Ti(OBu)4)0.42gを投入し、オートクレーブに精留塔を取り付け、反応温度約190℃で約4時間撹拌して、DMTと1,4−BDをエステル交換させることによりビスヒドロキシブチルテレフタレート(以降BHBTと称す)を生成させた。
その後、精留塔を取り外し、重合反応温度260℃で、減圧下、BHBTを重合してポリブチレンテレフタレート(PBT)を生成し、粘土複合体aを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例12で作製した系を用いた以外は実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例4で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPBTの対数粘度は0.82(dl/g)であった。
実施例5
製造例1で製造したスラリーaを14000g、およびEG5000gを混合し、温度約130℃で約4時間撹拌を行い、更に約1.5時間、撹拌しながら減圧することによって水を除去し、粘土複合体aとEGから成るEG分散体(微量の水を含む)を調製した。
次いで、該EG分散体、PET5000g、ヒンダードフェノール系安定剤15gを横型連続重合反応機の供給口から投入した。温度280℃、回転数30rpmで約3時間撹拌し、エチレングリコールを系外に除去しながらPETを解重合した。その後、系を減圧して発生するエチレングリコールを系該に除去して重縮合反応させPETを重合することによって、粘土複合体aを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造し、吐出口から連続的に払い出した。製造例6で作製した系の代わりに製造例7で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例5で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.64(dl/g)であった。
実施例6
EGの代わりに1,4−BDを用い、PETの代わりにPBTを用い、重合機の温度を260℃にした以外は、実施例5と同様の方法でPBTを重合し、粘土複合体aを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例13で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例6で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPBTの対数粘度は0.83(dl/g)であった。
実施例7
スラリーaの代わりに、製造例4で製造したスラリーdを7000g用いた以外は、実施例5と同様の方法でPETを重合し、粘土複合体dを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例11で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例7で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.65(dl/g)であった。
実施例8
10000gのスラリーaと1950gのBHETを用いて、実施例1と同様にして、粘土複合体aとBHETから成るBHET分散体(微量の水を含む)を調製した。
次いで、AO60を4.5g、およびSb2O3を0.2gを投入し、実施例1と同様に重合し、粘土複合体aと対数粘度0.27(dl/g)のPETの低分子量体からなる組成物を得た。
冷却固化し、十分に乾燥した該組成物を固相重合機に投入し、温度200〜210℃、減圧度約0.5torrの条件で9時間かけて固相重合を行いPETの分子量を増大させることによって、粘土複合体aを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例8で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例8で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.61(dl/g)であった。
実施例9
スラリーaの代わりに、6750gのスラリーbを用いた以外は、実施例8と同様の方法で、粘土複合体bを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例8で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例9で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPETの対数粘度は0.62(dl/g)であった。
実施例10
10000gのスラリーa、2250gの1,4−BD、1330gのDMT、0.32gのTi(OBu)4、4.5gのAO60を用い、実施例4と同様の方法でPBTを重合し、粘土複合体aと対数粘度0.29(dl/g)のPBTの低分子量体からなる組成物を得た。
実施例8と同様の方法で、該組成物の固相重合を行いPBTの分子量を増大させることによって、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例14で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
尚、実施例10で製造した熱可塑性ポリエステル樹脂組成物におけるPBTの対数粘度は0.79(dl/g)であった。
実施例11
スラリーaを乾燥し、粉砕して、粉末状の粘土複合体aを得た。
この粘土複合体a480g、PET1500g、および4.5gのAO60をドライブレンドし、ニーディングディスク部を有する同方向噛合型2軸押出機を用いて、回転数100rpm、設定温度250〜270℃で溶融混練することによって、粘土複合体aを含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例9で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
参考例1および2
PETおよびPBTの試験片を射出成形し、荷重撓み温度、曲げ弾性率、および表面性を評価した。結果を表2に示す。
比較例1
粘土複合体aを1150g、PETを1000g、AO60を3.0gとした以外は、実施例11と同様にポリエステル樹脂組成物の製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例10で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
比較例2
スラリーaの代わりにモンモリロナイト90gを用いた以外は、実施例1と同様の方法でPETを重合し、PETとモンモリロナイトから成る複合物を製造し、評価した。結果を表3に示す。
尚、比較例2で製造した複合物におけるPETの対数粘度は0.62(dl/g)であった。
比較例3
モンモリロナイト640g、PET2000g、および6.0gのAO60を用いた以外は、実施例11と同様にPETとモンモリロナイトから成る複合物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例9で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
比較例4
スラリーaの代わりにシラン処理モンモリロナイトa’155gを用いた以外は、実施例1と同様の方法でPETを重合し、PETとシラン処理モンモリロナイトa’から成る複合物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例7で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
尚、比較例4で製造した複合物におけるPETの対数粘度は0.63(dl/g)であった。
比較例5
スラリーaの代わりにシラン処理モンモリロナイトa’124gを用いた以外は、実施例4と同様の方法でPBTを重合し、PBTとシラン処理モンモリロナイトa’から成る複合物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例13で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
尚、比較例5で製造した複合物におけるPBTの対数粘度は0.83(dl/g)であった。
実施例12
スラリーaを乾燥し、粉砕して、粉末状の粘土複合体aを得た。
該粘土複合体a120g、PC2000g、および6.0gのリン系安定剤(旭電化(株)製アデカスタブPEP36、以降PEP36と称す)をドライブレンドし、ニーディングディスク部を有する同方向噛合型2軸押出機を用いて、回転数100rpm、設定温度260〜280℃で溶融混練することによって、粘土複合体aを含むポリカーボネート樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例15で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
実施例13および14
スラリーb、およびスラリーdを乾燥し、粉砕して、粉末状の粘土複合体b、および粘土複合体dを得た。
粘土複合体aの代わりに、該粘土複合体bまたは粘土複合体dを用いた以外は、実施例12と同様にして、粘土複合体bまたは粘土複合体dを含むポリカーボネート樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例15または製造例16で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
実施例15
スラリーcを乾燥し、粉砕して粉末状の粘土複合体cを得た。
95gの該粘土複合体cを3000gの塩化メチレンに添加し、高速撹拌機を用いて6000rpmで30分間撹拌し、粘土複合体cを含む塩化メチレン分散体を得た。次いで、該塩化メチレン分散体に760gのPCを添加し、300rpmで40分撹拌して溶解させ、粘土複合体cとPCを含む、塩化メチレン溶液を調製した。
内温を50〜80℃に設定した、撹拌装置および脱気口を有する横型連続乾燥機に、該塩化メチレン溶液を連続的に添加し、乾燥して塩化メチレンを除去した。更に120℃で乾燥し、粘土複合体cを含むポリカーボネート樹脂組成物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例15で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
参考例3
PCの試験片を成形し、荷重撓み温度、曲げ弾性率、および表面性を評価した。結果を表3に示す。
比較例6および7
粘土複合体の代わりに、モンモリロナイトまたはシラン処理モンモリロナイトa’を用いた以外は、実施例12と同様にして、PCとモンモリロナイトまたはシラン処理モンモリロナイトa’からなる複合物を製造した。製造例6で作製した系の代わりに製造例15で作製した系を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
産業上の利用可能性
本発明によれば、膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させた後にシラン系化合物(B2)を導入して得られる粘土複合体(B)を熱可塑性樹脂組成物の充填剤として用いる。この粘土複合体は熱可塑性樹脂組成物(C)に配合すると層同士が劈開して、その底面間隔がさらに拡大される。その結果粘土複合体(B)は熱可塑性樹脂組成物(C)中で非常に細かい多数の層となり、互いに独立して分散される。そのため本発明によれば、粘土複合体(B)の少量の添加で、機械物性(弾性率、強度、靱性など)、耐熱性、成形品の表面外観などの種々の特性に優れる熱可塑性樹脂組成物(C)が提供される。
従来の方法では、層が互いに積み重なった凝集構造状態の膨潤性ケイ酸塩(B1)、あるいは凝集構造状態の膨潤性ケイ酸塩(B1)をそのままでシラン系化合物(B2)で処理したものを熱可塑性樹脂組成物の充填剤として用いる。そのため、少量の添加では弾性率や耐熱性を改善できず、また、多量に添加すると成形品の表面性や強度、靱性などが低下し、諸特性のバランスを両立することは困難であった。
Claims (19)
- 熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂組成物が、該粘土複合体(B)の分散体と該熱可塑性樹脂(A)のための重合性モノマーとを混合して混合物を得る工程、および該混合物中で該重合性モノマーを重合して熱可塑性樹脂(A)を得る工程によって調製され、
該粘土複合体(B)の分散体が、分散媒中において膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させる工程;および
該底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)に下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)を導入する工程により調製される、熱可塑性樹脂組成物。 - [R B300 ]値が20%以上であり、ここで[R B300 ]が、等価面積円直径[D]が300nm以下である粘土複合体(B)の比率として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)が、熱可塑性ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 膨潤性ケイ酸塩(B1)が、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母から成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粘土複合体(B)0.1〜100重量部を含有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 粘土複合体(B)に由来する灰分率が0.1〜50重量%である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- [RB300]値が50%以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- [DB]値が500nm以下であり、ここで[DB]が粘土複合体(B)の等価面積円直径の平均値として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- [DB]/[DB1]値が0.010以下であり、ここで[DB]が粘度複合体(B)の等価面積円直径の平均値として定義され、そして[DB1]が膨潤性ケイ酸塩(B1)の等価面積円直径の平均値として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- [NB]/[NB1]値が300以上であり、ここで[NB]が単位灰分率当たり、および単位面積当たりの粘土複合体(B)の数として定義され、そして[NB1]が単位灰分率当たり、および単位面積当たりの膨潤性ケイ酸塩(B1)の数として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の平均層厚が20nm以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の20%以上が層厚5nm以下である、請求項1に記載の熱塑性樹脂組成物。
- [IB]/[IB1]値が0.25以下であり、ここで[IB]が粘土複合体(B)に由来する小角X線回折の回折強度として定義され、そして[IB1]が膨潤性ケイ酸塩(B1)の凝集構造に由来する小角X線回折の回折強度として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中の粘土複合体(B)の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔の3倍以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の平均層厚が20nm以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中に分散している粘土複合体(B)の20%以上が層厚5nm以下である、請求項1に記載の熱塑性樹脂組成物。
- [IB]/[IB1]値が0.25以下であり、ここで[IB]が粘土複合体(B)に由来する小角X線回折の回折強度として定義され、そして[IB1]が膨潤性ケイ酸塩(B1)の凝集構造に由来する小角X線回折の回折強度として定義される、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中の粘土複合体(B)の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩(B1)の初期の底面間隔の3倍以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(A)および粘土複合体(B)を含有する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
膨潤性ケイ酸塩(B1)の底面間隔を拡大させる工程;
底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩(B1)に下記一般式(I)
YnSiX4-n (I)
(ここで、nは0〜3の整数であり、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜25の置換または非置換の炭化水素基であり、Xはそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基である)で表されるシラン系化合物(B2)を導入して粘土複合体(B)を調製する工程、
粘土複合体(B)と重合性モノマーとを混合して混合物を得る工程、および
該混合物中で該重合性モノマーを重合して熱可塑性樹脂(A)を得る工程を包含する、
熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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