JP3682220B2 - ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルシート、並びにポリエステル成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形後に良好な透明性を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物、及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステルシート、並びにポリエステル成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレ−トに代表されるポリエステル樹脂は、機械特性、耐薬品性、透明性、ガスバリヤー性等に優れるとともに、環境ホルモン等の有害物質を排出する恐れがなく環境、人体への安全性も高いことから、衣料、食品、医療等の種々の分野において幅広く利用されている。その中でも特に、食品分野においては、小型飲料用ボトルをはじめとして、ブリスターパックやカップ等、ポリエステル樹脂を成形して得られる食品容器が急速に普及している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、食品容器では、内容物の高温殺菌や、内容物の高温充填を行うためには80℃以上、電子レンジで使用する場合には140℃程度の耐熱温度が必要である。しかしながら、従来のポリエステル樹脂からなる食品容器の耐熱温度は50〜65℃程度と低く、このため、食品の製造工程が複雑化したり、ポリエステル樹脂の用途が限定されているのが現状である。
【0004】
そこで、従来、ポリエステル樹脂の耐熱性向上を目的として研究が行われている。例えば、特開昭59−5019号公報には、成形時の金型温度をガラス転移温度以上とし、金型内で結晶化させることによりポリエステル樹脂からなる耐熱容器を製造する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特開昭59−5019号公報に開示された方法では、金型内で結晶化させる必要があるため、成形サイクルが長く成形効率が低くなるとともに、結晶化による白化が著しく、さらに成形条件によって耐熱性が変化するため、所望の耐熱性を有する耐熱容器を安定して製造することが困難である。
【0006】
なお、上記用途に使用されるその他の樹脂としてはポリスチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。しかしながら、ポリスチレンは、モノマーやダイマー等低分子量物の環境・人体への影響が懸念されるとともに、耐熱性についても十分ではなく、また、食品容器としたときに、商品陳列時の積み重ね荷重に耐えうるだけの十分な強度を有していないという問題点がある。ポリプロピレンは、ガスバリヤー性が不十分なことがあり、そのため内容物を長期保存したい場合には適さず、また、ポリスチレンと同様、耐熱性についても十分ではないという問題点がある。そこで、衛生性やガスバリヤー性に優れたポリエステル樹脂の耐熱性改良を図ることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、成形後に良好な透明性を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物、及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステルシート、並びにポリエステル成形品を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物にある。
本発明のポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、テトラメチレングリコール単位を主成分とするグリコール成分とからなり、総変性量が3〜20モル%であるとともに、単位モノマー中の炭素数が2以上であるポリエーテルグリコールを0.5〜6モル%含有し、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.55〜1.40dl/gである。
【0009】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコ−ル単位を主成分とするグリコ−ル成分とからなり、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.55〜1.40dl/gである。
【0010】
本発明のポリエステル樹脂組成物において、ポリエステル樹脂(C)は、2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコ−ル単位を主成分とするグリコ−ル成分とからなり、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.40〜1.20dl/gである。
【0011】
より好ましくは、本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)40〜65質量部と、前記ポリエステル樹脂(B)35〜60質量部とを合計100質量部含有し、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計量100質量部に対し、前記ポリエステル樹脂(C)を5〜15質量部含有するものである。
【0012】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物において、前記ポリエステル樹脂(B)が、副成分として、イソフタル酸、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち少なくとも1種を含有することが望ましい。
【0013】
本発明者は、以上のような構成とすることにより、良好な成形性を有し、成形後に良好な透明性を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物を提供することができることを見出した。
【0014】
なお、本明細書において、「酸成分、あるいはグリコール成分中の主成分」とは、「酸成分、あるいはグリコール成分中に50モル%以上含有された成分」と定義する。
また、本明細書において、「ポリエステル樹脂(A)の総変性量」とは、「ポリエステル樹脂(A)における、テレフタル酸単位、テトラメチレングリコール単位以外のモノマーの合計モル%量(但し、該モノマーが、酸成分の場合は、酸成分100モル%中のモル%、グリコール成分の場合はグリコール成分100モル%中のモル%、酸成分およびグリコール成分の場合はそれぞれ100モル%中に対するモル%の合計モル%)」を意味しているものとする。
【0015】
また、本明細書において、「フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度」とは、「フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒にポリエステル樹脂の粉砕物を0.5g/dlの濃度で溶解させ、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定したときの固有粘度」であると定義する。
【0016】
以上の本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることにより、以下の本発明のポリエステルシートを提供することができる。
本発明のポリエステルシートは、上記の本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層を少なくとも1層具備することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるとともに、常温で良好な透明性を有し、熱処理を行ってもヘイズ値の変化が小さく、透明性の低下が少ないポリエステルシートを提供することができることを見出した。
【0018】
具体的には、膜厚が200μmのときに、初期ヘイズ値が10%以下であるとともに、80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%以下のポリエステルシートを提供することができることを見出した。
また、本発明のポリエステルシートは、引張弾性率が700MPa以上であり、良好な弾性特性を示すことを見出した。
【0019】
上記の本発明のポリエステル樹脂組成物を成形することにより、本発明のポリエステル成形品を提供することができる。また、上記の本発明のポリエステルシートを熱成形することにより、本発明のポリエステル成形品を提供することができる。
【0020】
本発明によれば、80℃、あるいは140℃で熱処理を行っても変形しにくい、良好な耐熱性を有するポリエステル成形品を提供することができることを見出した。具体的には、80℃、30分間の熱処理後の収縮率が2%以下であり、さらに、140℃、30分間の熱処理後の収縮率が5%以下であるポリエステル成形品を提供することができることを見出した。
【0021】
このように、本発明のポリエステル成形品は、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であり、内容物の高温殺菌や、内容物の高温充填、あるいは電子レンジでの使用が可能な食品容器として好適である。さらに、本発明のポリエステル成形品は良好な弾性特性を有し、機械的衝撃にも強く、商品陳列時の積み重ね等にも耐えうる強度を有するものであることを見出した。
【0022】
なお、本明細書において、ポリエステル成形品の収縮率とは、下記式(1)により定義されるものである。
「収縮率」= (「熱処理前の容量」 −「熱処理後の容量」) / 「熱処理前の容量 」 × 100・・・(1)
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、良好な成形性を有し、成形後に良好な透明性と十分な強度を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物、及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステルシート、並びにポリエステル成形品を提供することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ポリエステル樹脂組成物]
はじめに、本発明のポリエステル樹脂組成物について説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、後述するポリエステル樹脂(A)、後述するポリエステル樹脂(B)および後述するポリエステル樹脂(C)を含有することを特徴とする。
【0025】
本発明では、後述するポリエステル樹脂(A)40〜65質量部と、後述するポリエステル樹脂(B)35〜60質量部とを合計100質量部含有し、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計量100質量部に対し、後述するポリエステル樹脂(C)を1〜25質量部含有することが好ましい。
【0026】
より好ましくは、本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)50〜60質量部と、ポリエステル樹脂(B)40〜50質量部とを合計100質量部含有し、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計量100質量部に対し、ポリエステル樹脂(C)を5〜15質量部含有するものである。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)が40質量部未満では耐熱性が低下し、65質量部を超えると成形後の透明性が低下する恐れがある。また、ポリエステル樹脂(B)が35質量部未満では成形性が低下し、60質量部を超えると耐熱性が低下する恐れがある。また、ポリエステル樹脂(C)が1質量部未満では耐熱性が低下し、25質量部を超えると成形性が低下する恐れがある。
【0028】
なお、本発明のポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、酸化安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、繊維状および板状無機強化剤等の添加剤、ポリカ−ボネ−ト、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリオレフィン樹脂等のポリエステル樹脂以外の樹脂成分等を配合してもよい。
【0029】
以上のような構成とすることにより、良好な成形性を有し、成形後に良好な透明性を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【0030】
以下に、ポリエステル樹脂(A)〜(C)の組成及び物性について、各々詳述する。
「ポリエステル樹脂(A)」
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸成分は、主成分がテレフタル酸であり、ポリエステル全酸成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。テレフタル酸成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下するとともに、成形後の機械的強度が低下する恐れがあるためである。
【0031】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、5−アルキルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のベンゼン環もしくはナフタレン環に直接カルボシキル基を2つ有している芳香族ジカルボン酸、その他p−(β−オキシエトキシ)安息香酸、4,4’−ジカルボキシフェニ−ル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニ−ル)エタンあるいはこれらのメチル、エチル、プロピル等のアルキルエステル等を例示することができる。
【0032】
ポリエステル樹脂(A)のグリコール成分は、主成分がテトラメチレングリコールであり、ポリエステル全グリコール成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。テトラメチレングリコール成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下する恐れがあるためである。
【0033】
テトラメチレングリコール以外のグリコ−ル成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、ヘキサメチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ビスフェノ−ルAエチレンオキサイド付加物等を1種類若しくは複数種類、使用することができる。
【0034】
また、ポリエステル樹脂(A)の総変性量は、3〜20モル%であることが好ましく、3モル%未満ではポリエステル樹脂組成物の加工性が低下し、20モル%を超えるとポリエステル樹脂(A)の結晶性が低下するため、ポリエステル樹脂(A)を重合した後のチップ取り出しが困難であったり、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下する恐れがある。
【0035】
また、ポリエステル樹脂(A)に、単位モノマー中の炭素数が2以上であるポリエーテルグリコールを0.5〜6モル%配合することが望ましく、ポリエーテルグリコールを0.5〜6モル%配合することにより、ポリエステル樹脂組成物の成形性と耐熱性を向上することができる。
【0036】
ポリエーテルグリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を例示することができ、特にポリテトラメチレングリコールが、ポリエステル樹脂(A)の熱安定性およびポリエステル樹脂組成物の耐熱性を向上することができるので、好ましい。
【0037】
また、ポリエーテルグリコールの質量平均分子量は450以上2000以下が好ましい。分子量が450未満であるとポリエステル樹脂(A)の結晶性が高くなり、2000を超えるとポリエーテルグリコール自体の結晶性のため、ポリエステル樹脂組成物の透明性が低下する恐れがある。
【0038】
また、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときのポリエステル樹脂(A)の固有粘度が0.55〜1.40dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.55dl/g未満であると、ポリエステル樹脂(A)を重合した後のチップの取り出しが困難であったり、ポリエステル樹脂組成物を成形した後の耐衝撃性が低下する恐れがあり、1.40dl/gを超えると、ポリエステル樹脂(A)の重合が困難となる。
【0039】
「ポリエステル樹脂(B)」
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂(B)のジカルボン酸成分は、主成分がテレフタル酸であり、ポリエステル全酸成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。テレフタル酸成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下するとともに、成形後の機械的強度が低下する恐れがあるためである。
【0040】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、5−アルキルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のベンゼン環もしくはナフタレン環に直接カルボシキル基を2つ有している芳香族ジカルボン酸、その他p−(β−オキシエトキシ)安息香酸、4,4’−ジカルボキシフェニ−ル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニ−ル)エタンあるいはこれらのメチル、エチル、プロピル等のアルキルエステル等を例示することができる。
【0041】
ポリエステル樹脂(B)のグリコール成分の主成分は、エチレングリコールであり、ポリエステル全グリコール成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。エチレングリコール成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下する恐れがあるためである。
【0042】
エチレングリコール以外のグリコ−ル成分としては、トリメチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコ−ル、ヘキサメチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ビスフェノ−ルAエチレンオキサイド付加物等を1種類若しくは複数種類、使用することができる。
【0043】
また、ポリエステル樹脂(B)は、副成分として、特に、イソフタル酸、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち少なくとも1種を含有することが重合安定性、リサイクル性、環境安全性等の点で望ましい。
【0044】
また、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときのポリエステル樹脂(B)の固有粘度は0.55〜1.40dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.55dl/g未満であると、ポリエステル樹脂(B)を重合した後のチップの取り出しが困難であったり、ポリエステル樹脂組成物を成形した後の耐衝撃性が低下する恐れがあり、1.40dl/gを超えると、ポリエステル樹脂(B)重合が困難となる。
【0045】
「ポリエステル樹脂(C)」
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂(C)のジカルボン酸成分は、主成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、ポリエステル全酸成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下するとともに、成形後の機械的強度が低下する恐れがあるためである。
【0046】
2,6−ナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5−アルキルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等のベンゼン環もしくはナフタレン環に直接カルボシキル基を2つ有している芳香族ジカルボン酸、その他p−(β−オキシエトキシ)安息香酸、4,4’−ジカルボキシフェニ−ル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニ−ル)エタンあるいはこれらのメチル、エチル、プロピル等のアルキルエステル等を例示することができる。
【0047】
ポリエステル樹脂(C)のグリコール成分は、主成分がエチレングリコールであり、ポリエステル全グリコール成分中に50モル%以上含有されることが好ましい。エチレングリコール成分が50モル%未満では、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性が低下する恐れがあるためである。
【0048】
エチレングリコール以外のグリコ−ル成分としては、トリメチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコ−ル、ヘキサメチレングリコール等の炭素数2〜6のアルキレングリコ−ル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ビスフェノ−ルAエチレンオキサイド付加物等を1種類若しくは複数種類、使用することができる。
【0049】
また、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときのポリエステル樹脂(C)の固有粘度は0.40〜1.20dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.40dl/g未満であるとポリエステル樹脂(C)を重合した後のチップの取り出しが困難であったり、ポリエステル樹脂組成物を成形した後の耐衝撃性が低下する恐れがあり、1.20dl/gを超えると、ポリエステル樹脂(C)の重合が困難となる。
【0050】
「ポリエステル樹脂(A)〜(C)の製造方法」
上記ポリエステル樹脂(A)〜(C)は、エステル交換法やエステル化法等、公知の重合方法によって製造することができる。
ポリエステル樹脂(A)〜(C)の製造方法は同様であるので、以下、ポリエステル樹脂(A)を例として、その製造方法の例について説明する。
【0051】
エステル交換法を採用した場合には、テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が、テレフタル酸のエステル形成性誘導体等の全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み、単位モノマー中の炭素数が2以上であるポリエーテルグリコールおよび、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン等の酸化安定剤を添加し、テトラブトキシチタン等の触媒の存在下で150〜220℃まで徐々に加熱して十分にエステル交換反応を行った後、0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、ポリエステル樹脂(A)を製造することができる。
【0052】
また、エステル化法を採用した場合には、テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が、テレフタル酸等の全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み、単位モノマー中の炭素数が2以上であるポリエーテルグリコールおよび、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン等の酸化安定剤を添加し、窒素で加圧した状態で徐々に150〜220℃まで加熱して十分にエステル化反応を行った後、0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、ポリエステル樹脂(A)を製造することができる。
【0053】
ポリエステル樹脂(A)を製造する際に用いて好適な上記以外の触媒としては、エステル交換触媒として酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等を例示することができ、重合触媒として三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド等を例示することができ、全酸成分に対して、触媒を20〜1000ppm添加することが望ましい。
【0054】
[ポリエステルシート]
上記本発明のポリエステル樹脂組成物を用いることにより、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層を少なくとも1層具備する本発明のポリエステルシートを提供することができる。
【0055】
本発明のポリエステルシートは、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層を少なくとも1層具備していればよいので、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層単層から構成されていてもよいし、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層が積層形成されたものであってもよい。また、本発明のポリエステルシートは、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層と他の樹脂層とが積層形成されたものであってもよい。
【0056】
ポリエステルシートの膜厚は特に限定されるものではないが、20μm〜1mm程度の範囲のものが実用的に使用される。
【0057】
本発明によれば、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるとともに、常温で良好な透明性を有し、熱処理を行ってもヘイズ値の変化が小さく、透明性の低下が少ないポリエステルシートを提供することができる。具体的には、膜厚が200μmのときに、初期ヘイズ値が10%以下であるとともに、80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%以下のポリエステルシートを提供することができる。
【0058】
なお、初期ヘイズ値が10%を超えた場合には、常温下でもポリエステルシートの透明性が十分ではなく、80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%を超える場合には、熱処理によって著しく透明性が低下するため、好ましくない。
【0059】
また、本発明のポリエステルシートの引張弾性率は700MPa以上であることが望ましい。引張弾性率が700MPa未満では弾性特性が不十分であり、ポリエステルシートを成形して得られるポリエステル成形品が商品移送、店頭陳列時の積み重ね等により変形する恐れがあるためである。
【0060】
本発明のポリエステルシートは、公知の方法により製造することができる。
以下、ポリエステル層単層からなるポリエステルシートを例として、本発明のポリエステルシートの製造方法の例について説明する。
ポリエステル単層からなるポリエステルシートは、押出法やカレンダー法などにより製造することができる。
【0061】
例えば、押出法を採用した場合には、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とポリエステル樹脂(C)とのドライブレンド物、またはこれらを押出機により溶融混練した後チップ化した樹脂組成物を、ギヤポンプ、Tダイ、チルロール、巻き取り装置を備えた押出機に投入し、一般的な条件にて製膜することで製造することができる。
【0062】
[ポリエステル成形品]
上記の本発明のポリエステル樹脂組成物、あるいは上記の本発明のポリエステルシートを公知の方法を用いて所定の形状に成形することにより、種々の形状の本発明のポリエステル成形品を提供することができる。上記のポリエステルシートからポリエステル成形品を成形する場合には、真空成形法、圧空成形法、プレス成形法などを採用することができる。
【0063】
本発明によれば、80℃、あるいは140℃の熱処理を行っても収縮率が小さく、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル成形品を提供することができる。具体的には、本発明によれば、80℃、30分間の熱処理後の収縮率が2%以下であり、さらに、140℃、30分間の熱処理後の収縮率が5%以下であるポリエステル成形品を提供することができる。
【0064】
本発明のポリエステル成形品は、内容物の高温殺菌や、内容物の高温充填を可能とする食品容器、あるいは電子レンジで使用可能な食品容器として好適である。
また、本発明のポリエステル成形品は良好な弾性特性を有し、機械的衝撃にも強く、商品陳列時の積み重ね等にも耐えうる強度を有するものである。
【0065】
以上、本発明によれば、ポリエステル樹脂組成物を上記組成とすることにより、成形性が良く、成形後に良好な透明性と十分な強度を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物、及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステルシート、並びにポリエステル成形品を提供することができる。
【0066】
【実施例】
以下、本発明に係る実施例、及び比較例について説明する。
ポリエステル樹脂(A)として、ポリエステル樹脂(A−1)、(A−2)、ポリエステル樹脂(B)として、ポリエステル樹脂(B−1)、(B−2)、ポリエステル樹脂(C)として、(C−1)、(C−2)、(C−3)を製造した。
【0067】
また、比較のために、酸成分、グリコール成分として、ポリエステル樹脂(A)と同じ成分を用い、総変性量、あるいはポリエーテルグリコールの配合量を変えたものをポリエステル樹脂(D)とし、総変性量のみを本発明で規定した範囲外(20モル%超)としたポリエステル樹脂(D−1)と、総変性量を本発明で規定した範囲外(20モル%超)とし、さらにポリエーテルグリコールを本発明で規定した範囲外(6モル%超)としたポリエステル樹脂(D−2)を製造した。
【0068】
実施例1〜3、比較例1、2において、これらのポリエステル樹脂を用いて、ポリエステル樹脂組成物を製造し、得られたポリエステル樹脂組成物を用いて、ポリエステル層単層からなるポリエステルシートを製膜し、さらに、ポリエステルシートを成形してポリエステル成形品を製造し、得られたポリエステルシート、ポリエステル成形品について評価を行った。
【0069】
[ポリエステル樹脂の製造]
はじめに、各ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。また、得られた各ポリエステル樹脂を熱分解クロマトグラフィ−により分析し、各ポリエステル樹脂のアルカリ分解物を高速液体クロマトグラフィ−により分析することにより、各ポリエステル樹脂の組成分析を行った結果を表1に示す。表1には、各ポリエステル樹脂の組成、及びポリエステル樹脂(A)、(D)の総変性量を示している。また、得られた各ポリエステル樹脂の固有粘度を測定した結果を表1に合わせて記載する。固有粘度は、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒に得られたポリエステル樹脂の粉砕物を0.5g/dlの濃度で溶解させ、ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。
なお、表1においては、簡略化のため、ポリエステル樹脂(A)〜(D)を、樹脂(A)〜(D)と略記している。
【0070】
【表1】
【0071】
・ポリエステル樹脂(A−1)
ジメチルテレフタレート(以下、「DMT」と略す。)95モル部、ジメチルイソフタレート(以下、「DMI」と略す。)5モル部、テトラメチレングリコ−ル(以下、「BDO」と略す。)137.6モル部、ポリテトラメチレングリコール(Mw:1000;以下、「PTMG」と略す。)2.4モル部に、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンを対ポリマー0.50質量%となるように添加したものを精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ、140℃まで昇温した。さらに、攪拌を行いながらテトラブトキシチタンを対酸成分に対して600ppm添加した。
【0072】
留出するメタノールを系外に排出しながらエステル交換反応を行った後、重縮合反応容器に移し、真空度0.2kPa以下、245℃で3時間縮合重合を行い、所定の攪拌トルクに至ったところで、ストランド状で水槽中に吐出したものを、ストランドカッターにてチップ化し、これを所定の温度、時間にて乾燥してポリエステル樹脂(A−1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(A−1)の固有粘度を測定したところ、1.04dl/gであった。
【0073】
・ポリエステル樹脂(A−2)
DMTを90モル部、DMIを10モル部、BDOを138.8モル部、PTMGを1.2モル部とし、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンを対ポリマー0.25質量%とした以外は、ポリエステル樹脂(A−1)と同様にしてポリエステル樹脂(A−2)を得た。
得られたポリエステル樹脂(A−2)の固有粘度を測定したところ、1.01dl/gであった。
【0074】
・ポリエステル樹脂(D−1)
DMTを70モル部、DMIを30モル部、BDOを138.8モル部とした以外は、ポリエステル樹脂(A−2)と同様にしてポリエステル樹脂(D−1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(D−1)の固有粘度を測定したところ、0.96dl/gであった。
【0075】
・ポリエステル樹脂(D−2)
DMTを87モル部、DMIを13モル部、BDOを130.9モル部、PTMGを9.1モル部とし、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタンを対ポリマー1.50質量%とした以外は、ポリエステル樹脂(A−1)と同様にしてポリエステル樹脂(D−2)を得た。
得られたポリエステル樹脂(D−2)の固有粘度を測定したところ、1.17dl/gであった。
【0076】
・ポリエステル樹脂(B−1)
テレフタル酸(以下、「TPA」と略す。)84モル部、イソフタル酸(以下、「IPA」と略す。)16モル部、エチレングリコ−ル(以下、「EG」と略す。)150モル部を精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ、攪拌を行いながら窒素で加圧した状態で徐々に260℃まで昇温した。留出する水を系外に排出しながらエステル化を行い、重縮合反応容器に移した後、正リン酸を対酸成分にして30ppm添加した。
【0077】
5分経過後、重合触媒として三酸化アンチモンを対酸成分にして350ppm添加し、重縮合反応容器に移し、真空度0.2kPa以下、285℃で3時間縮合重合を行い、所定の攪拌トルクに至ったところで、ストランド状で水槽中に吐出したものを、ストランドカッターにてチップ化し、これを所定の温度、時間にて乾燥してポリエステル樹脂(B−1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(B−1)の固有粘度を測定したところ、0.78dl/gであった。
【0078】
・ポリエステル樹脂(B−2)
TPAを100モル部とし、IPAを添加せず、EGを120モル部とし、グリコール成分として、さらに1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、「CHDM」と略す。)を 30モル部添加し、重合触媒チタンテトラブトキシドを対酸成分にして700ppm添加した以外はポリエステル樹脂(B−1)と同様にしてポリエステル樹脂(B−2)を得た。
得られたポリエステル樹脂(B−2)の固有粘度を測定したところ、0.77dl/gであった。
【0079】
・ポリエステル樹脂(C−1)
2、6−ナフタレンジカルボン酸(以下、「NDC」と略す。)100モル部、エチレングリコ−ル(以下、「EG」と略す。)150モル部を精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ、攪拌を行いながら窒素で加圧した状態で徐々に260℃まで昇温した。留出する水を系外に排出しながらエステル化を行い、重縮合反応容器に移した後、正リン酸を対酸成分にして30ppm添加した。
【0080】
5分経過後、重合触媒として三酸化アンチモンを対酸成分にして250ppm添加し、重縮合反応容器に移し、真空度0.2kPa以下、290℃で3時間縮合重合を行い、所定の攪拌トルクに至ったところで、ストランド状で水槽中に吐出したものを、ストランドカッターにてチップ化し、これを所定の温度、時間にて乾燥してポリエステル樹脂(C−1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(C−1)の固有粘度を測定したところ、0.50dl/gであった。
【0081】
・ポリエステル樹脂(C−2)
NDCを84モル部とし、酸成分として、さらにTPAを16モル部添加した以外はポリエステル樹脂(C―1)と同様にしてポリエステル樹脂(C−2)を得た。
得られたポリエステル樹脂(C−2)の固有粘度を測定したところ、0.49dl/gであった。
【0082】
・ポリエステル樹脂(C−3)
EGを78モル部とし、グリコール成分として、さらにCHDMを20モル部添加し、重合触媒として二酸化ゲルマニウムを対酸成分にして200ppm添加した以外はポリエステル樹脂(C―1)と同様にしてポリエステル樹脂(C−3)を得た。
得られたポリエステル樹脂(C−3)の固有粘度を測定したところ、0.48dl/gであった。
【0083】
実施例1〜3、比較例1、2では、以上のポリエステル樹脂(A−1)、(A−2)、(D−1)、(D−2)、(B−1)、(B−2)、(C−1)〜(C−3)を用いて、その配合比を変えてポリエステル樹脂組成物を製造し、得られたポリエステル樹脂組成物を用いて、ポリエステルシート、ポリエステル成形品を製造した。
実施例1〜3、比較例1、2において、用いたポリエステル樹脂の種類、及びその配合比について表2に示す。
【0084】
なお、実施例1〜3では、用いるポリエステル樹脂(A)、(B)、(C)の組み合わせと、その配合比を本発明で規定した範囲内で変えて、ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルシート、ポリエステル成形品を得た。
【0085】
これに対して、比較例1、2では、いずれも実施例1を基本組成としているが、ある要素が本発明で規定した範囲外に設定されている。
すなわち、比較例1、2では、ポリエステル樹脂(A)の代わりに、総変性量、あるいは総変性量とポリエーテルグリコールの配合量が本発明で規定した範囲外のポリエステル樹脂(D)を用いている。
【0086】
また、実施例1〜3、比較例1、2において、得られたポリエステルシート及びポリエステル成形品についてそれぞれ評価を行い、得られた結果について表2に合わせて記載する。
【0087】
【表2】
【0088】
以下、各実施例1〜3、比較例1、2における、ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルシート、ポリエステル成形品の製造方法、及び得られたポリエステルシート、ポリエステル成形品の評価項目と評価方法について説明する。
【0089】
[実施例1]
ポリエステル樹脂(A−1)60質量部、ポリエステル樹脂(B−1)40質量部、ポリエステル樹脂(C−1)5質量部をドライブレンドして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物を押出製膜機にて樹脂温280℃、チルロール温度5℃にて製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得た。さらに、このシートを真空成形機にて、シート加熱温度90℃、金型温度135℃で、上部径75mm、底部径63mm、高さ40mmのカップ形状の成形品を得た。
【0090】
[実施例2]
ポリエステル樹脂(A−2)55質量部、ポリエステル樹脂(B−2)45質量部、ポリエステル樹脂(C−2)15質量部を二軸押出機で275℃にて溶融混練した後ペレット化して、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物を押出製膜機にて樹脂温280℃、チルロール温度5℃にて製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得た。さらに、このシートを真空成形機にて、シート加熱温度85℃、金型温度135℃で、実施例1と同様にしてカップ形状の成形品を得た。
【0091】
[実施例3]
ポリエステル樹脂(A−2)50質量部、ポリエステル樹脂(B−1)50質量部、ポリエステル樹脂(C−1)5質量部をドライブレンドして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物を、押出製膜機にて樹脂温280℃、チルロール温度5℃にて製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得た。さらに、このシートを真空成形機にて、シート加熱温度85℃、金型温度135℃で、実施例1と同様にしてカップ形状の成形品を得た。
【0092】
[比較例1]
ポリエステル樹脂(D−1)60質量部、ポリエステル樹脂(B−1)40質量部、ポリエステル樹脂(C−1)5質量部をドライブレンドして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物を、押出製膜機にて樹脂温280℃、チルロール温度5℃にて製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得た。さらに、このシートを真空成形機にて、シート加熱温度85℃、金型温度135℃で、実施例1と同様にしてカップ形状の成形を試みたが金型離型せず、金型温度を下げても良好な成形品を得ることはできなかった。
【0093】
[比較例2]
ポリエステル樹脂(D−2)60質量部、ポリエステル樹脂(B−1)40質量部、ポリエステル樹脂(C−1)5質量部をドライブレンドして、ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物を、押出製膜機にて樹脂温280℃、チルロール温度5℃にて製膜し、厚さ200μmのポリエステルシートを得た。さらに、このシートを真空成形機にて、シート加熱温度85℃、金型温度135℃で、実施例1と同様にしてカップ形状の成形を試みたが金型離型せず、金型温度を下げても良好な成形品を得ることはできなかった。
【0094】
[評価項目、評価方法]
以下に、評価項目及び評価方法について説明する。
(初期ヘイズ値、ヘイズ値変化率)
JIS K7105に準拠し、調温、調湿の後、23℃において、初期値と、80℃、30分間の熱処理後と、140℃、30分間の熱処理後のポリエステルシート(膜厚200μm)についてヘイズ値の測定を行った。
初期ヘイズ値は10%以下であったものを良好な透明性を有していると判定した。また、80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率を算出し、下記の判定基準に基づいて判定を行った。
判定基準
○ : 80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%以下であった。
× : 80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%より大きかった。
【0095】
(引張弾性率)
JIS K7127に準拠し、ポリエステルシート(膜厚200μm)より1号形試験片を切り出し、調温、調湿の後、23℃において、毎分10mmの試験速度にて引張弾性率の測定を行った。
引張弾性率が700MPa以上あったものを弾性特性が良好であると判定した。
【0096】
(収縮率)
熱処理前のポリエステル成形品と、80℃、30分間の熱処理後と、140℃、30分間の熱処理後のポリエステル成形品について、それぞれ、調温、調湿の後、23℃において、水を完全に充填した時の容量を処理前後について測定し、下記式に基づいて、収縮率を算出した。
「収縮率」= (「熱処理前の容量」 −「熱処理後の容量」) / 「熱処理前の容量 」 × 100・・・(1)
80℃の熱処理後については収縮率2%以下、140℃の熱処理後については収縮率5%以下であったものを耐熱性が良好であると判定した。
【0097】
[結果]
実施例1〜3で得られたポリエステルシートは、初期ヘイズ値が1.6〜1.9%と小さく、良好な透明性を有することが判明した。さらに、実施例1〜3で得られたポリエステルシートは、熱処理を行ったときのヘイズ値変化が小さく、80℃、あるいは140℃で熱処理を行っても良好な透明性を維持できることが判明した。また、実施例1〜3で得られたポリエステルシートは、引張弾性率が1430〜1480MPaと高く、弾性特性も良好であった。また、実施例1〜3で得られたポリエステル成形品は、80℃、あるいは140℃の熱処理後の収縮がそれぞれ0.3%、1.0〜1.3%と小さく、耐熱温度が140℃以上であり、耐熱性に優れていることが判明した。
【0098】
これに対して、ポリエステル樹脂(A)の代わりに、総変性量が本発明で規定した範囲よりも大きいポリエステル樹脂(D−1)を用いた比較例1では、得られたポリエステルシートの引張弾性率は1450MPaと高く良好であり、初期ヘイズ値は2.4%と良好な透明性が得られたものの、熱処理を行ったときのヘイズ値の増加が大きく、熱処理後に良好な透明性を得ることができないことが判明した。また、比較例1では、得られたポリエステルシートの成形性が低く、カップ状の成形品を得ることができないことが判明した。
【0099】
また、ポリエステル樹脂(A)の代わりに、総変性量が本発明で規定した範囲よりも大きく、さらに、ポリエーテルグリコールを本発明で規定した範囲よりも多く配合したポリエステル樹脂(D−2)を用いた比較例2では、得られたポリエステルシートの初期ヘイズ値が5.5%と良好な透明性が得られ、熱処理後のヘイズ値の増加も小さく良好であったものの、引張弾性率は680MPaと低く、弾性特性が不十分であることが判明した。また、比較例2では、得られたポリエステルシートの成形性が低く、カップ状の成形品を得ることができないことが判明した。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、良好な成形性を有し、成形後に良好な透明性と十分な強度を有するとともに、耐熱温度が80℃以上、あるいは140℃以上であるポリエステル樹脂組成物、及びこのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステルシート、並びにポリエステル成形品を提供することができる。
本発明のポリエステル成形品は、内容物の高温殺菌や内容物の高温充填、電子レンジでの使用が可能な食品容器として好適である。
Claims (11)
- 下記ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)およびポリエステル樹脂(C)を含有することを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
ポリエステル樹脂(A)
テレフタル酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、テトラメチレングリコール単位を主成分とするグリコール成分とからなり、総変性量が3〜20モル%であるとともに、
単位モノマー中の炭素数が2以上であるポリエーテルグリコールを0.5〜6モル%含有し、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.55〜1.40dl/gであるポリエステル樹脂。
ポリエステル樹脂(B)
テレフタル酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコ−ル単位を主成分とするグリコ−ル成分とからなり、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.55〜1.40dl/gであるポリエステル樹脂。
ポリエステル樹脂(C)
2,6−ナフタレンジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコ−ル単位を主成分とするグリコ−ル成分とからなり、フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン等質量混合溶媒中に溶解させ、25℃で測定したときの固有粘度が0.40〜1.20dl/gであるポリエステル樹脂。 - 前記ポリエステル樹脂(A)40〜65質量部と、前記ポリエステル樹脂(B)35〜60質量部とを合計100質量部含有し、
前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計量100質量部に対し、前記ポリエステル樹脂(C)を1〜25質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。 - 前記ポリエステル樹脂(B)が、イソフタル酸、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物からなるポリエステル層を少なくとも1層具備することを特徴とするポリエステルシート。
- 膜厚が200μmのときに、
初期ヘイズ値が10%以下であるとともに、
80℃、30分間の熱処理後のヘイズ値に対する、140℃、30分間の熱処理後のヘイズ値変化率が20%以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリエステルシート。 - 引張弾性率が700MPa以上であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のポリエステルシート。
- 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物からなることを特徴とするポリエステル成形品。
- 請求項4から請求項6までのいずれか1項に記載のポリエステルシートを熱成形して得られることを特徴とするポリエステル成形品。
- 80℃、30分間の熱処理後の収縮率が2%以下であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のポリエステル成形品。
- 140℃、30分間の熱処理後の収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のポリエステル成形品。
- 耐熱温度が80℃以上であり、食品容器として用いられることを特徴とする請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載のポリエステル成形品。
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