JP3681269B2 - 加熱臭の低減した油脂の製造方法 - Google Patents
加熱臭の低減した油脂の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食用に適する植物性油脂に脂質分解酵素を分散させることにより、加熱臭の改善された植物性油脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
植物性油脂は日本でなじみのある食用油脂として、天ぷら、フライ、炒め物、ドレッシング、マヨネーズ等に広く利用されている。この中で、特に天ぷら、フライ等の加熱調理については、調理中に種々の揮発性成分が発生し、加熱臭の原因となる。加熱臭が多くなると不快感やいわゆる「油酔い」をひき起こすとともに、調理している部屋全体に臭いが充満し汚染される。
これら植物性油脂の加熱臭を改善するためには、精製工程での工夫がなされてきた。例えば、脱色時の脱色剤の増量で油脂中に混入している微量成分をより吸着する方法あげられるが、これは収量低下やろ過速度の低下をまねく。水蒸気蒸留(脱臭)をより高温下、長時間行う方法では、保存性の低下、着色等のデメリットがある。また、これらの方法では加熱臭を低減する効果も十分ではない。一方、分別、水素添加、ケミカルエステル交換等の油脂の加工法によっても試みられているが、植物性油脂の加熱臭について十分に検討を行ったものはみられない。また、酵素による食用油脂の加工に関するものとしては、例えば、特開昭54−80462にみられる加水分解による特別なフレーバー(バターフレーバー)の強化、特開平4−66052ではエステル交換により油脂の風味の改善を試みているが、加熱臭を改善するものではなく、また実質的にパーム油や水添脂の独特の風味を少なくしようとしたものである。さらに特開平7−135972では過酸化脂質を分解することにより、油脂劣化を遅くし、油脂の嗜好性の改善を図っているが、加熱により生成する加熱臭には言及がなく、調理場の雰囲気の改善についても記載がない。このように従来の技術には加熱臭の低減に効果が十分と言えるものはなく、ましてや本発明のごとく、植物性油脂全般の加熱臭の原因を脂質分解酵素によって低減することにより、加熱調理時の加熱臭を改善できることは知られていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、植物性油脂の加熱臭を改善し、さらには調理場の雰囲気を改善できる、より加熱調理に適した植物性油脂を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる実情に鑑み、植物性油脂加工に関する検討を重ねた結果、加熱時に不快な臭いのする植物性油脂に脂質分解酵素を粉末のまま分散させることにより、植物性油脂の加熱調理時の加熱臭を抑えられることを見い出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明によれば、加熱時に不快な臭いを発生する植物性油脂に脂質分解酵素を分散させることにより、植物性油脂そのものの加熱臭を低減させ、さらには調理場の雰囲気を改善できる、加熱調理に適する植物性油脂を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる植物性油脂原料としては、例えばナタネ油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ヒマワリ油、ゴマ油、米油、パーム油、ヤシ油、これらの分別油またはこれらの中の2種以上の混合物があげられるが、液体油が望ましい。これら植物性油脂は、未精製品(原油)、半精製品、および既に精製を終えたもののいずれでもよく、また、油脂の劣化の度合いによらず、すなわち過酸化物価や酸化等によらず効果が得られる。植物性油脂中の水分は、植物性油脂に溶解している程度、すなわち5〜2000ppm程度で行うことができ、エステル交換やエステル合成のような厳密な制御は必要としない。
【0006】
脂質分解酵素としては、アルカリゲネス属由来、キャンディダ属由来、リゾープス属由来、ムコール属由来、シュードモナス属由来のリパーゼや膵臓由来のホスホリパーゼA等があげられるが、特にアルカリゲネス属由来、キャンディダ属由来のリパーゼが好ましい。これら脂質分解酵素は乾燥した粉末状のままで使用するのが好ましい。分散させる脂質分解酵素の量は、植物性油脂原料の0.005〜10%で行うことができる。
【0007】
植物性油脂への脂質分解酵素の分散は、適当な攪拌のできるバッチ式容器等で行うが、脂質分解酵素を粉末のままで使用するため、カラムによる方法は実質上不可能である。分散させる温度は脂質分解酵素の種類や植物性油脂原料によるが、30〜130℃で行うことができ、特に81〜130℃が好ましい。
【0008】
反応時間は他の条件にもよるが、1〜72hr、特に2〜48hrが好ましい。加熱臭を改善する効果は基本的には長時間分散させるほど大きくなるが、過度に長時間の処理を行うことは、エネルギーコストの増大等のデメリットにつながる。加熱臭の改善の程度はエステル交換やエステル合成の程度とは相関せず、例えばエステル交換反応が進行していない場合でも加熱臭は改善され、逆にエステル交換が完了して平衡に達している場合でも脂質分解酵素の分散を続けることによって加熱臭の改善が進む。
【0009】
バッチ式装置等にて脂質分解酵素の分散を行った後、脂質分解酵素はろ過等により回収して再利用することができる。脂質分解酵素を回収した植物性油脂は、必要に応じて通常の精製を行い、目的とする加熱臭の改善された植物性油脂を得る。
【0010】
【実施例】
[加熱試験の方法]
サンプル油脂30mlを入れた100ml三角フラスコに、2つの穴を開けて一方に内径約5mm、長さ約5cmのガラス管を、他方にアクロレイン検知管を付けた栓をはめる。アクロレイン検知管は吸引ポンプに接続する。三角フラスコを加熱してサンプル油脂が180℃になった時点でポンプによる吸引を開始しするとともに、サンプル油脂の温度は180℃に保つ。検知管の適当な目盛りに達するまでの時間を測定する。例えば検知管としてGASTEC社No.93を使用し、流速100ml/minで吸引し、目盛り100ppmに達するまでの時間を測定する。
本願による処理を行っていない対照油脂サンプルの測定時間に対する本願による処理を行った油脂サンプルの測定時間の比を加熱試験の値とする。
【0011】
実施例1
精製大豆油(精製後室温6ヶ月保管、過酸化物価2.0)2Kgを攪拌機付き容器に入れ、90℃に保ちながらアルカリゲネス属(Alcaligenessp.)由来の脂質分解酵素(名糖産業製)10gを加えて、200rpmにて12hrまたは24hr攪拌して分散させ、ろ過にて脂質分解酵素を除去した。得られた油脂(過酸化物価はそれぞれ2.5,2.7)をそれぞれ再度精製して加熱試験を行った。また、精製後の油脂をそれぞれフライヤーに1Kgいれて180℃に加熱し、揚げ玉(天ぷら粉:水=60:120を1回につき10g)揚げた際のフライヤーから出る臭いをパネルによる官能評価を行った。(表1)
【0012】
比較例1
実施例1の精製大豆油をそのまま、実施例1と同様に再度精製後、加熱試験を行った。また、実施例1と同様にフライヤーを用いた官能評価を行った。(表1)
【0013】
【表1】
【0014】
実施例2
ナタネ油(脱ガム品、過酸化物価11.4)2Kgに実施例1と同様に脂質分解酵素を分散させた。ただし、脂質分解酵素としてキャンディダ・シリンドラセ(Candida・cylindracea)由来の脂質分解酵素(リパーゼOF、名糖産業製)20gを用い、90℃にて18hrまたは70℃にて12hr攪拌した後にろ過にて脂質分解酵素を除去した。得られた油脂(過酸化物はそれぞれ15.8,13.2)を精製後に加熱試験を行った。また、実施例1と同様にフライヤーを用いた官能評価を行った。(表2)
【0015】
比較例2
実施例2のナタネ油に実施例2と同様に脂質分解酵素を分散、接触させた。ただし、20℃にて0.5hr攪拌した後にろ過にて脂質分解酵素を除去した。得られた油脂(過酸化物価11.2)を精製後、加熱試験を行った。また、フライヤーを用いた官能評価を行った。(表2)
【0016】
比較例3
実施例2のナタネ油をそのまま、実施例2と同様に精製後、加熱試験を行った。また、フライヤーを用いた官能評価を行った。(表2)
【0017】
【表2】
【0018】
実施例3
精製コーン油(過酸化物価0.4)油2Kgに実施例1と同様に脂質分解酵素を分散させた。ただし、脂質分解酵素としてリゾープス・ジャバニカス(Rhizopus・javanicus)由来の脂質分解酵素(リパーゼF−AP15、天野製薬製)20gを用い、81℃にて18hr攪拌した後にろ過にて脂質分解酵素を除去した。得られた油脂(過酸化物価1.0)を再精製後、フライヤーによる官能評価を行ったところ、加熱臭が少なく、臭いは良好であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、植物性油脂に脂質分解酵素を粉末のまま、81〜130℃で一定時間分散させることにより、加熱臭を低減させた植物性油脂を提供できる。脂質分解酵素は、アルカリゲネス属由来および/またはキャンディダ属由来のリパーゼを粉末のまま使用し、本発明記載の加熱値が1.2以上となるように制御すればよい。本発明で得られる加熱臭を低減させた植物性油脂は、通常の植物油脂として調理一般に使用でき、特に、天ぷら、フライ等の加熱調理において、加熱臭が原因となり引き起こされる「油酔い」もきわめて少なくなり、調理場の雰囲気も改善できる。
Claims (4)
- 植物性油脂に脂質分解酵素を粉末のまま、1時間以上分散させることにより、下記(1)〜(5)の工程により得られる加熱試験の値を1.2以上とすることを特徴とする、植物性油脂を加熱したときに生成する加熱臭の低減化方法。
(1)本願による処理を行った油脂30mLを入れた100mL三角フラスコに、2つの穴を開けて一方に内径約5mm、長さ約5cmのガラス管を、他方にアクロレイン検知管を付けた栓をはめる;
(2)アクロレイン検知管は吸引ポンプに接続して、三角フラスコを加熱して当該油脂が180℃になった時点でポンプによる吸引を開始するとともに、当該油脂の温度は180℃に保つ;
(3)検知管の目盛り100ppmに達するまでの時間(本願による処理を行った油脂の測定時間)を測定する;
(4)同様の方法により、本願による処理を行っていない対照油脂について時間(本願による処理を行っていない対照油脂の測定時間)を計測する;
(5)本願による処理を行っていない対照油脂の測定時間に対する本願による処理を行った油脂の測定時間の比を算出する。 - 前記植物性油脂が、液体油である請求項1記載の植物性油脂を加熱したときに生成する加熱臭の低減化方法。
- 脂質分解酵素がアルカリゲネス属由来および/またはキャンディダ属由来のリパーゼである請求項1記載の植物性油脂を加熱したときに生成する加熱臭の低減化方法。
- 脂質分解酵素を分散させる温度が81〜130℃である請求項1記載の植物性油脂を加熱したときに生成する加熱臭の低減化方法。
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