JP3678061B2 - 窒化物半導体の成長方法及び窒化物半導体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)の成長方法に係り、特に窒化物半導体よりなる基板の成長方法に関する。また、本発明は、前記窒化物半導体よりなる基板を用い発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子、あるいは太陽電池、光センサー等の受光素子に使用される窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる窒化物半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、サファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と異なる異種基板上、又は異種基板上に成長された窒化物半導体上に、窒化物半導体が成長しないかあるいは成長しにくい材料からなるSiO2等の保護膜を成長させ、この上に窒化物半導体を選択成長させることにより、転位を低減できる窒化物半導体の成長方法[ELOG(Epitaxially laterally overgrown GaN)の成長方法]が種々検討されている。
【0003】
例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.L309−L312(以下単にJ.J.A.P.の文献とする。)には、ELOGの成長方法として、サファイアのc面上に成長させた窒化物半導体上にSiO2等のマスクを部分的(例えばストライプ形状)に形成し、この上に、100Torrの減圧下で、窒化物半導体を成長させることにより、転位の少ない窒化物半導体を得ることができる。このようなELOG成長は、マスクを形成し意図的にGaNを横方向に成長させることにより、転位が窒化物半導体の成長と共にマスク上に向かって横方向に進行すると、窒化物半導体の成長方向(縦方向)に再び進行しなくなり、転位の低減が可能となる。
そして、マスクの上方部に成長したGaNの表面には転位がほとんど見られなくなる。また、マスクを形成していない部分に成長したGaNの表面には、ほぼ1×107/cm2の転位がある。
このように、転位の少ない窒化物半導体の基板を得ることが可能となったことから、窒化物半導体素子の寿命特性を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記J.J.A.P.の文献に記載の方法では、SiO2等の保護膜が、窒化物半導体の成長時に分解する場合があり、SiO2が分解すると、SiO2上から窒化物半導体が異常成長したり、分解したSiやO等が窒化物半導体に入りGaNを汚染したりして、結晶性の低下を招くことがある。一方、SiO2の分解を考慮して比較的低温で窒化物半導体を成長させると、窒化物半導体が良好な単結晶となりにくく、窒化物半導体の結晶性の低下を引き起こすこととなる。このようなSiO2の窒化物半導体への汚染は、素子を量産する場合に歩留まりの低下を引き起こす原因となりうる。
更に、選択成長させた後に異種基板を除去してGaN基板の異種基板除去面にn電極を形成してなる素子を形成する場合に、SiO2等の保護膜を用いていると、絶縁性のSiO2の存在によって抵抗が高くなる傾向がある。このことから、SiO2をも除去する必要があり、除去の際に窒化物半導体にクラックが入らないようにするなど操作がやや煩雑となる場合がある。また、ウエハを劈開する際に、SiO2が残っていると劈開性を低下させることも考えられる。
また、上記J.J.A.P.の文献に記載の方法は、100Torrの減圧下で成長させることで、転位の低減と共に成長表面の面状態が良好となるが、上記したようにSiO2の分解による異常成長が生じると、面状態が低下してしまうこととなる。
素子の寿命特性は、窒化物半導体基板の転位の数と共に、窒化物半導体基板の素子構造を形成する面の面状態に左右される傾向がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、マスクとして用いられるSiO2による上記の問題点を解決し、転位が低減され結晶性が良好な窒化物半導体を得ることができる窒化物半導体の成長方法を提供することである。
更に、本発明は、結晶性が良好で且つ転位の少ない窒化物半導体を基板とする寿命特性の良好な窒化物半導体素子を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の目的は、下記(1)〜(10)の構成によって達成することができる。
(1) 窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を成長させる第1の工程と、第1の工程後、前記第1の窒化物半導体に部分的に凹凸を形成して凹部側面に窒化物半導体の横方向の成長が可能な面を露出させ、且つ凹部底面は異種基板を500〜3000オングストロームの深さで削って形成される第2の工程と、第2の工程後、常圧以上の圧力条件下で、前記凹凸を有する第1の窒化物半導体上に、第2の窒化物半導体を成長させる第3の工程とを有することを特徴とする窒化物半導体の成長方法。
(2) 前記第3の工程の圧力が、常圧〜2.5気圧の圧力条件下であることを特徴とする前記(1)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(3) 前記第2の窒化物半導体を成長後に、前記第2及び第3の工程を繰り返して行う、但し、第2の窒化物半導体に形成される凹凸が、第1の窒化物半導体に形成された凹部上部に凸部が形成され、第1の窒化物半導体に形成された凸部上部に凹部が形成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の窒化物半導体の成長方法。
(4) 前記異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされていることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
(5) 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であることを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
(6) 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていることを特徴とする前記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
(7) 前記第1の窒化物半導体に形成される凹凸が、ストライプ形状であり、更に前記ストライプ形状の凹凸がオリフラ面からの垂直軸に対して左右のいずれかに0.1°〜1°程度ずらして形成されていることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
(8) 異種基板の上に、第1の窒化物半導体を有し、該第1の窒化物半導体の成長面側から第1の窒化物半導体に部分的に凹凸を形成し、その上に、第2の窒化物半導体を有する窒化物半導体素子であり、前記第1の窒化物半導体の凹部底面は、前記異種基板を500〜3000オングストロームの深さで削って形成されたものであることを特徴とする窒化物半導体素子。
(9) 前記異種基板は、サファイア、スピネル、SiC、ZnS、ZnO、GaAs、Siから選ばれることを特徴とする前記(8)に記載の窒化物半導体素子。
(10) 前記窒化物半導体素子において、前記第2の窒化物半導体上に少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体が積層されていることを特徴とする前記(8)に記載の窒化物半導体素子。
【0007】
つまり、本発明の方法は、従来技術において、窒化物半導体の横方向の成長を強制的に行うために用いられていたSiO2等のマスクを用いずに、単に、異種基板上に成長させた第1の窒化物半導体に凹凸を形成することで、凹部側面に窒化物半導体の横方向への成長面を形成させ、常圧以上の加圧条件下で、第2の窒化物半導体を成長させることにより、凹部側面から窒化物半導体の横方向の成長が意図的に行われ、転位を低減させることができ、且つ、成長面の面状態が良好となる。
【0008】
従来技術として前記したJ.J.A.P.の文献のELOGの成長方法は、転位を低減できるものの、SiO2を用いていることによるSiやOの汚染による異常成長や面状態の悪化等の種々の問題が懸念される。
【0009】
これに対し、本発明の方法は、SiO2等を用いることなく、窒化物半導体に凹凸を形成するのみで、意図的に凹部側面から窒化物半導体の横方向の成長を開始させることにより、凹部開口部の上方に成長する窒化物半導体には、縦方向(成長方向)への転位の伝播が抑制される。
さらに本発明の方法は、常圧以上の加圧条件下で行うことにより、窒化物半導体の成長した表面(成長面)を良好にすることができる。ちなみに、上記の文献のように減圧条件下で行うと、窒化物半導体の成長面が十分良好な面状態となりにくく、窒化物半導体基板や素子を量産する場合にやや問題となる。
【0010】
また、本発明の方法は、保護膜としてSiO2等の保護膜を用いていないので、窒化物半導体が良好な単結晶として得られる温度、例えば1000℃以上の温度で第1及び第2の窒化物半導体を成長させても、SiO2の分解による汚染や異常成長等が生じない。更に、本発明の方法は、SiO2等の保護膜を用いていないので、異種基板のみを除去しただけで、窒化物半導体基板の除去面にn電極が形成された場合、n電極と良好なオーミックが得られ易くなる。このように、本発明の方法は、SiO2を用いていないので、SiO2による前記従来の問題点を解決することができる。
【0011】
本発明の方法は、第1の窒化物半導体に形成されている凸部の上面並びに凹部の側面及び底面に、窒化物半導体の成長可能な面が存在するが、凹部の側面から成長し、凹部の開口部分から厚膜に成長する部分の第2の窒化物半導体に転位がほとんど見られない結晶性の良好な窒化物半導体となる。つまり、凹部側面に露出している第1の窒化物半導体から第2の窒化物半導体が横方向に成長をはじめ、このとき転位も第2の窒化物半導体の成長に伴って横方向に進行するが一旦横方向に進行した転位は再び縦方向に進行しにくくなり、凹部の開口部分から厚膜に成長する第2の窒化物半導体は転位の低減された結晶性の良好な窒化物半導体を得ることができる。一方、凸部上部に成長した第2の窒化物半導体の表面には転位が比較的多く見られる傾向がある。
【0012】
以前、本発明者等は、特願平10−275826号明細書に、異種基板上に成長させた窒化物半導体の縦方向の成長を抑え、横方向のみに成長させ、続いて縦方向と横方向に成長させることにより、転位を著しく低減させることが可能な窒化物半導体の成長方法を提案している。
この方法は、転位が横方向に進行すると再び縦方向に進行しにくくなることを見出し、窒化物半導体の縦方向の成長を抑制し、横方向の成長を意図的に行うことにより、転位を低減させることを可能としているものである。この方法において、具体的に縦方向の成長を抑える方法として、異種基板上に成長させた窒化物半導体に凹凸を形成し、この凸部上部及び凹部底部にSiO2等の保護膜を形成することで、一旦縦方向の成長をする窒化物半導体の成長面を覆い、凹部側面の横方向の成長可能な窒化物半導体面のみを露出させ意図的に窒化物半導体を横方向に成長させている。
この方法は、窒化物半導体の縦方向の成長を実質的に全て抑えているので、転位が縦方向に進行するのを良好に防止することができたと考えられる。
しかし、凹凸を形成した凹部底部と凸部上部に保護膜を形成する工程は、時間がかかり、量産する場合にやや問題となる。また、保護膜としてSiO2を用いると、前記したようにSiO2の分解による汚染や異常成長などが起こる可能性もある。
【0013】
これに対し、本発明は、特願平10−275826号明細書に記載の方法を更に検討した結果、第1の窒化物半導体に凹凸を形成するだけで、凹部の開口部分に厚膜に成長する第2の窒化物半導体の表面や表面領域には転位がほとんどなくなり、且つ反応条件を常圧以上の圧力条件下とすると窒化物半導体の成長面の面状態が良好となることを見出したものである。つまり、本発明の方法は、反応条件を常圧以上とし窒化物半導体に凹凸を形成するのみで、窒化物半導体の縦方向の成長を抑えることを可能としている。
この理由は定かではないが、恐らく、凸部上部の面に対し、凹部側面での窒化物半導体の成長速度が促進されているからではないかと考えられる。凹部内部では、側面と底部の3箇所の部分から窒化物半導体が成長可能であるが、凹部開口部分から厚膜に成長する第2の窒化物半導体には転位がほとんど見られないことから、凹部側面から横方向に成長を始めた窒化物半導体同士が凹部底部から成長を始めた窒化物半導体の成長を阻害していると思われる。この凹部底部からの成長の阻害は、凹部底部がサファイアなどの異種基板の露出面であるとより良好となり、凹部開口部の上部に成長する第2の窒化物半導体の転位を低減するのに好ましい。
【0014】
また、一方、凸部上部では縦方向の成長が可能であるが、凸部上部で縦方向の成長から成長を始めた窒化物半導体は、縦方向に成長すると共に、凹部開口部に向かって横方向に成長すると思われ、凸部上部に成長する窒化物半導体の転位も低減する傾向がある。更に凸部上部の窒化物半導体の成長は、縦方向に成長するより横方向へ成長し易い傾向があり、凸部上部からの成長と、凹部開口部からの成長が自然に接合して、凹部開口部の上方では鏡面状の良好な面状態の第2の窒化物半導体を得ることができると思われる。
また本発明は、以前本発明者らが提案した技術に比べ、保護膜を形成しないので製造工程が簡素化でき好ましく、さらに、反応条件を最適化することで、良好な面状態が得られ易くなり好ましい。
【0015】
また、本発明において、凹部側面からの横方向の成長と、凸部上部での横方向の成長をより促進させるには、凹凸の形状、具体的には、凸部上部の幅、凹部底部の幅、凹部側面の長さ、凹部側面を斜めにする等の形状を設ける事柄などを組み合わせて調整することが好ましい。
更に、本発明において、横方向の成長を促進させるため、上記のように凹凸を形成することに加え、反応条件、例えば不純物の添加、窒化物半導体の原料となる元素(III族元素とV族元素のモル比)のモル比の調整等、の反応条件を調整することで横方向の成長が縦方向の成長より促進され、転位を低減するのに好ましい。
【0016】
更に本発明の方法において、第3の工程の圧力が、常圧〜2.5気圧の圧力条件下であると、第2の窒化物半導体の表面が良好な面状態となり好ましい。
【0017】
更に、本発明において、第2の窒化物半導体を厚膜に成長させた後、第2の工程と第3の工程を繰り返すことで転位を更に低減させることができる。但し、この場合は、第1の窒化物半導体に形成された凹部上部に第2の窒化物半導体に形成される凸部が位置し、第1の窒化物半導体に形成された凸部上部に第2の窒化物半導体に形成される凹部が位置するように、繰り返される第2の工程において第2の窒化物半導体に部分的に凹凸が形成される。第2及び第3の工程は、2回以上繰り返してもよい。
このように第1の窒化物半導体に形成される凹凸の位置と、第2の窒化物半導体に形成させる凹凸の位置とが、上記のように交互になっていると、凹部開口部から成長する窒化物半導体には転位がほとんど見られなくなることから、凹部上部にかかわらず凸部上部の窒化物半導体にも転位がほとんどなくなる。このように全体的に転位の低減された窒化物半導体を基板として素子構造を成長させると、寿命特性の良好な素子を量産する場合に好ましい。
【0018】
更に本発明の成長方法において、異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされているものであると、得られた窒化物半導体を基板として素子構造を形成する際に、1チップの大きさに値する程度の幅の良好な平面を有する窒化物半導体基板が得られ、寿命特性の良好な素子が選られやすくなり好ましい。更に、ステップ状にオフアングルされていると、レーザ素子ではしきい値が低下し、LEDでは発光出力が20〜30%向上する傾向がある。
更に本発明において、ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であると、上記良好な平面となる部分の表面性が良好となり、この上に素子を形成すると寿命特性をより良好にすることができ好ましい。更にオフ角が上記範囲であると、しきい値がより低下し、発光出力がより向上し好ましい。
更に本発明において、ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていると、サファイアのA面に対して窒化物半導体のM面が平行となるように第2の窒化物半導体が成長し、段差方向に平行に、例えばリッジ形状のストライプを形成すると、M面で劈開し易くなり良好な共振面が得られるので好ましい。
更に本発明において、第1の窒化物半導体に凹凸を形成する際に、異種基板を500〜3000オングストロームの深さで削ってなる形状で形成されると、凹部から成長する第2の窒化物半導体の接合面での歪みが緩和され転位の発生を防止でき、より良好な結晶が得られる傾向がある。
更に本発明において、第1の窒化物半導体に形成される凹凸が、ストライプ形状であり、更に前記ストライプ形状の凹凸がオリフラ面からの垂直軸に対して左右のいずれかに0.1°〜1°、好ましくは0.1°〜0.5°程度ずらして形成されていると、成長の表面がより平坦となり、表面の面状態が良好となり好ましい。前記ずらす程度の値は、後述の図14のθの値である。
【0019】
また本発明は、上記本発明の窒化物半導体の成長方法により得られる窒化物半導体を基板として、この上に素子構造となる少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体を形成することにより、寿命特性の良好な窒化物半導体素子を得ることができる。
更に、本発明において、リッジ形状のストライプを有する窒化物半導体レーザ素子を製造する場合、前記窒化物半導体の成長方法で凹部上部にリッジ形状のストライプが位置するように素子を製造すると、より良好な寿命特性のレーザ素子が得られ好ましい。また上記本発明の方法で第2及び第3の工程を繰り返す場合は、特にリッジ形状のストライプの形成される位置を考慮しなくともよい。
転位の少ない部分に窒化物半導体素子を形成すると、良好な素子特性を有するので好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を用いて本発明を更に詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明の窒化物半導体の成長方法の一実施の形態を段階的に示した模式図である。
【0021】
本発明の窒化物半導体の成長方法の一実施の形態として、まず、図1の第1の工程において、異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させ、図2の第2の工程において、第1の窒化物半導体2に凹凸を形成し、続いて図3の第3の工程において、凹凸の形成された第1の窒化物半導体2上に、常圧以上の圧力条件下で、第2の窒化物半導体3を成長させる。
【0022】
以下に上記各工程ごとに図を用いて更に詳細に説明する。
(第1の工程)
図1は異種基板1上に、第1の窒化物半導体2を成長させる第1の工程を行った模式的段面図である。
この第1の工程において、用いることのできる異種基板としては、例えば、C面、R面、及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。好ましい異種基板としては、サファイア、スピネルが挙げられる。
異種基板としてサファイアを用いる場合、サファイアの主面をどの面にするかによって、凹凸を形成した時の凸部上部と凹部側面の窒化物半導体の面方位が特定される傾向があり、その面方位によって、窒化物半導体の成長速度がやや異なることから、凹部側面に成長し易い面方位がくるように主面を選択してもよい。
【0023】
また、第1の工程において、異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させる前に、異種基板1上にバッファ層(図示されていない)を形成してもよい。バッファ層としては、AlN、GaN、AlGaN、InGaN等が用いられる。バッファ層は、900℃以下300℃以上の温度で、膜厚0.5μm〜10オングストロームで成長される。このように異種基板1上にバッファ層を900℃以下の温度で形成すると、異種基板1と第1の窒化物半導体2との格子定数不正を緩和し、第1の窒化物半導体2の結晶欠陥が少なくなる傾向にある。
【0024】
第1の工程において、異種基板1上に形成される第1の窒化物半導体2としては、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)のGaN、Si、Ge、及びS等のn型不純物をドープしたGaNを用いることができる。
第1の窒化物半導体2は、高温、具体的には約900℃より高温〜1100℃、好ましくは1050℃で異種基板1上に成長される。このような温度で成長させると、第1の窒化物半導体2は単結晶となる。第1の窒化物半導体2の膜厚は特に限定しないが、凹部内部での縦方向の成長を抑えて、横方向の成長が促進できるように、凹凸の形状を調整することが可能な膜厚であることが好ましく、少なくとも500オングストローム以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上の膜厚で形成する。
【0025】
(第2の工程)
次に、図2は異種基板1上に第1の窒化物半導体2を成長させた後、第1の窒化物半導体2に部分的に第1の窒化物半導体2がわずかに残る程度の深さで凹凸を形成して、凹部側面に第1の窒化物半導体2を露出させてなる模式的断面図である。
【0026】
第2の工程において、部分的に凹凸を形成するとは、少なくとも凹部側面に第1の窒化物半導体2が露出されるように、第1の窒化物半導体2の表面から異種基板1方向に窪みを形成してあればよく、第1の窒化物半導体2にいずれの形状で凹凸を設けてもよく、例えば、ランダムな窪み、ストライプ状、碁盤目状、ドット状に形成できる。好ましい形状としては、ストライプ状であり、この形状とすると、異常成長が少なく、より平坦に埋まり好ましい。第1の窒化物半導体2に部分的に設けられた凹凸は、第1の窒化物半導体の途中まで、又は異種基板に達する深さまで、又は異種基板に達する深さまでエッチングし且つ異種基板のエッチング深さが500〜3000オングストローム(好ましくは1000〜2000オングストローム)となる深さまで[(図12参照)]の形状で形成される。好ましくは異種基板が露出する程度の深さ、又は異種基板を上記の深さで削った形状であり、より好ましくは、異種基板を上記の深さで削った形状が好ましい。
【0027】
上記のように凹部底部に異種基板が露出されていると、凹部底部からの成長が抑制されやすくなり、凹部開口部から厚膜に成長する第2の窒化物半導体の転位を低減し易くなり好ましい。
更に、図12のように、異種基板が上記の深さで削られていると、凹部側面から成長する第2の窒化物半導体の接合部分での結晶の歪みを緩和して、転位の発生を防止でき、結晶性の良好な、面状態の良好な窒化物半導体を成長させることができ好ましい。接合部分での歪みの緩和は、図13の成長途中の模式的断面図(凹部内の窒化物半導体の成長の様子を示す)に示すように、削られている部分の異種基板上に発生するわずかな空隙が関与していると思われる。つまり、この空隙が、接合部分がわずかに下側に向かって成長する傾向を示すが、空隙があるために歪みが緩和されるために結晶性が良好となると思われる。更に削られている異種基板上に空隙が発生していると、転位の少ない凹部上部の表面と、転位の多い凸部上部の表面との区別がつきやすくなり、転位の少ない凹部上部表面にリッジ形状のストライプを形成し易くなり、製造工程での歩留まりの向上の点で好ましい。
【0028】
凹凸の形状は、凹部側面の長さや、凸部上部の幅と凹部底部の幅などは、特に限定されないが、少なくとも凹部内での縦方向の成長が抑制され、凹部開口部から厚膜に成長する第2の窒化物半導体が凹部側面から横方向に成長したものとなるように調整されていることが好ましい。
凹凸の形状をストライプ状とする場合、ストライプの形状として特に限定されないが、例えばストライプ幅(凸部上部の幅)を1〜20μm、好ましくは1〜10μmであり、ストライプ間隔(凹部底部の幅)を10〜40μm、好ましくは15〜35μmであるものを形成することができる。このようなストライプ形状を有していると、転位の低減と面状態を良好にする点で好ましい。更に、凹部の幅が、上記範囲であると、転位の少ない凹部上部にリッジ形状のストライプを形成する際に、凹部の中心部分を避けて、且つ転位の少ない部分に位置するように形成するのに好ましい。
凹部開口部から成長する第2の窒化物半導体3の部分を多くするには、凹部底部の幅を広くし、凸部上部の幅を狭くすることで可能となり、このようにすると転位の低減された部分を多くすることができる。凹部底部の幅を広くした場合には、凹部の深さを深めにすることが、凹部底部から成長する可能性のある縦方向の成長を防止するのに好ましい。
【0029】
第2の工程で凹凸を設ける方法としては、第1の窒化物半導体を一部分取り除くことができる方法であればいずれの方法でもよく、例えばエッチング、ダイシング等が挙げられる。
エッチングにより、第1の窒化物半導体2に部分的(選択的)に凹凸を形成する場合は、フォトリソグラフィー技術における種々の形状のマスクパターンを用いて、ストライプ状、碁盤目状等のフォトマスクを作製し、レジストパターンを第1の窒化物半導体2に形成してエッチングすることにより形成できる。フォトマスクは、エッチングして凹凸を形成後に除去される。
また、ダイシングで行う場合は、例えば、ストライプ状や碁盤目状に形成できる。
【0030】
第2の工程において窒化物半導体をエッチングする方法には、ウエットエッチング、ドライエッチング等の方法があり、平滑な面を形成するには、好ましくはドライエッチングを用いる。ドライエッチングには、例えば反応性イオンエッチング(RIE)、反応性イオンビームエッチング(RIBE)、電子サイクロトロンエッチング(ECR)、イオンビームエッチング等の装置があり、いずれもエッチングガスを適宜選択することにより、窒化物半導体をエッチングしてできる。例えば、本出願人が先に出願した特開平8−17803号公報記載の窒化物半導体の具体的なエッチング手段を用いることができる。
また、エッチングによって凹凸を形成する場合、エッチング面(凹部側面)が、図2に示すように異種基板に対して端面がほぼ垂直となる形状、又は順メサ形状や逆メサ形状でもよく、あるいは階段状になるように形成された形状等がある。好ましくは転位の低減や面状態の良好性などの点から、垂直、逆メサ、順メサであり、より好ましくは垂直である。
【0031】
また、第2の工程において、凹凸の形状をストライプ状とする場合に、ストライプを、図13に示すように、オリフラ面を例えばサファイアのA面とし、このオリフラ面の垂直軸に対して左右どちらかに、θ=0.1°〜1°、好ましくはθ=0.1°〜0.5°ずらして形成すると、成長面がより平坦な良好な結晶が得られ好ましい。ちなみに、図14のθが0°の場合は、表面が平坦にならない場合があり、このような状態の成長面に素子構造を形成すると、素子特性の低下が生じ易くなる傾向が見られる。表面が平坦であると歩留まりの向上の点でも好ましい。
【0032】
(第3の工程)
次に、図3は、エッチングにより凹凸を有する第1の窒化物半導体2上に、常圧以上の加圧条件下で、第2の窒化物半導体3を成長させる第3の工程を行った模式的断面図である。第2の窒化物半導体3としては、前記第1の窒化物半導体2と同様のものを用いることができる。第2の窒化物半導体3の成長温度は、第1の窒化物半導体2を成長させる場合と同様であり、このような温度で成長させる第2の窒化物半導体は単結晶となる。
また、第2の窒化物半導体を成長させる際に、不純物(例えばSi、Ge、Sn、Be、Zn、Mn、Cr、及びMg等)をドープして成長さる、または窒化物半導体の原料となるIII族とV族の成分のモル比(III/Vのモル比)を調整して成長させる等により、横方向の成長を縦方向の成長に比べて促進させ転位を低減させる点で好ましく、さらに第2の窒化物半導体の表面の面状態を良好にする点で好ましい。
【0033】
上記の常圧以上の加圧条件とは、常圧(意図的に圧力を加えない状態の圧力)から、装置などを調整し意図的に圧力を加えて加圧条件にした状態で反応を行うことである。具体的な圧力としては、常圧以上の圧力であれば特に限定されないが、好ましくは常圧(ほぼ1気圧)〜2.5気圧であり、好ましい圧力としては、常圧〜1.5気圧である。このような圧力の条件下で第2の窒化物半導体を成長させると、第2の窒化物半導体の表面の面状態を良好にする点で好ましい。
【0034】
また、第3の工程において、凹部内部では凹部の側面から横方向に成長するものと、凹部底部から縦方向に成長するものとがあると思われるが、成長し続ける過程で、凹部側面から成長した第2の窒化物半導体同士が接合し、凹部底部からの成長を抑制する。その結果、凹部開口部から成長した第2の窒化物半導体には転位がほとんど見られない。凹部底部からの縦方向の成長は、凹部側面からの横方向の成長に比べ、成長速度が遅いと思われる。また、凹部底部の表面が、サファイアなどの異種基板であると、凹部底部からの第2の窒化物半導体の成長が抑制され、凹部側面からの第2の窒化物半導体の成長が良好となり、転位の低減の点で好ましい。
【0035】
一方、凸部上部から成長した第2の窒化物半導体部分には、凹部開口部から成長するものに比べてやや多めの転位が見られるが、凸部上部に縦方向に成長を始める窒化物半導体も、縦方向に成長する速度よりも、凹部開口部に向かって横方向に成長する傾向があり、凹凸を形成しないで縦方向に成長させた場合に比べれば転位が低減する。また、本発明の第2及び第3の工程を繰り返すことで、凸部上部の転位をなくすことができる。また、凸部上部と凹部内部から成長した第2の窒化物半導体は、成長の過程で接合し、図4のようになる。
【0036】
更に、第3の工程において、第2の窒化物半導体を成長させる際に、圧力を常圧以上の加圧条件に調整することにより、第2の窒化物半導体の表面が異常成長の少ない平坦な良好な面状態となる。
【0037】
また、本発明において、第2及び第3の工程を繰り返す場合、図5に示すように、第1の窒化物半導体に形成した凹部上部に凸部が、第1の窒化物半導体に形成した凸部上部に凹部が、それぞれ位置するように第2の窒化物半導体に部分的に凹凸を形成する。そして凹凸を形成された第2の窒化物半導体上に第3の窒化物半導体4を成長させる。第3の窒化物半導体4は、全体的に転位の少ない窒化物半導体となり好ましい。第3の窒化物半導体としては第2の窒化物半導体と同様のものを成長させる。
また、第2及び第3の工程を繰り返す場合、第2の窒化物半導体の膜厚を、繰り返さない場合に比べて、やや薄く成長させ、第2の窒化物半導体に形成される凹部底部がサファイアなどの異種基板面となるように第2の窒化物半導体をエッチングすると、転位のより少ない面状態の良好な第3の窒化物半導体が得られ好ましい。
【0038】
また、第2の窒化物半導体5は、この上に素子構造となる窒化物半導体を成長させるための基板となるが、素子構造を形成するには異種基板を予め除去してから行う場合と、異種基板等を残して行う場合がある。また、素子構造を形成した後で異種基板を除去する場合もある。
異種基板等を除去する場合の第2の窒化物半導体5の膜厚は、50μm以上、好ましくは100μm以上、好ましくは500μm以下である。この範囲であると異種基板及び保護膜等を研磨除去しても、第2の窒化物半導体3が割れにくくハンドリングが容易となり好ましい。
【0039】
また異種基板等を残して行う場合の第2の窒化物半導体3の膜厚は、特に限定されないが、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。この範囲であると異種基板と窒化物半導体の熱膨張係数差によるウエハの反りが防止でき、更に素子基板となる第2の窒化物半導体5の上に素子構造となる窒化物半導体を良好に成長させることができる。
【0040】
本発明の窒化物半導体の成長方法において、第1の窒化物半導体2、及び第2の窒化物半導体3を成長させる方法としては、特に限定されないが、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚が100μm以下ではMOCVD法を用いると成長速度をコントロールし易い。また膜厚が100μm以下ではHVPEでは成長速度が速くてコントロールが難しい。
【0041】
また本発明において、第2の窒化物半導体3上には、素子構造となる窒化物半導体を形成することができるので、明細書内において第2の窒化物半導体を素子基板又は窒化物半導体基板と言う場合がある。
【0042】
また第1の工程における前記異種基板となる材料の主面をオフアングルさせた基板、さらにステップ状にオフアングルさせた基板を用いたほうが好ましい。オフアングルさせた基板を用いると、表面に3次元成長が見られず、ステップ成長があらわれ表面が平坦になり易い。更にステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていると、窒化物半導体のステップ面がレーザの共振器方向と一致し、レーザ光が表面粗さにより乱反射されることが少なくなり好ましい。
【0043】
更に好ましい異種基板としては、(0001)面[C面]を主面とするサファイア、(112−0)面[A面]を主面とするサファイア、又は(111)面を主面とするスピネルである。ここで異種基板が、(0001)面[C面]を主面とするサファイアであるとき、前記第1の窒化物半導体等に形成される凹凸のストライプ形状が、そのサファイアの(112−0)面[A面]に対して垂直なストライプ形状を有していること[窒化物半導体の(101−0)[M面]に平行方向にストライプを形成すること]が好ましく、また、オフアングルのオフ角θ(図11に示すθ)は0.1°〜0.5°、好ましくは0.1°〜0.2°が好ましい。また(112−0)面[A面]を主面とするサファイアであるとき、前記凹凸のストライプ形状はそのサファイアの(11−02)面[R面]に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましく、また(111)面を主面とするスピネルであるとき、前記凹凸のストライプ形状はそのスピネルの(110)面に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましい。
ここでは、凹凸がストライプ形状の場合について記載したが、本発明においてサファイアのA面及びR面、スピネルの(110)面に窒化物半導体が横方向に成長し易いので、これらの面に第1の窒化物半導体の端面が形成されるように第1の窒化物半導体2に段差を形成するために保護膜の形成を考慮することが好ましい。
【0044】
本発明に用いられる異種基板について図を用いて更に詳細に説明する。図6はサファイアの結晶構造を示すユニットセル図である。
まず本発明の方法において、C面を主面とするサファイアを用い、凹凸はサファイアA面に対して垂直なストライプ形状とする場合について説明する。例えば、図7は主面側のサファイア基板の平面図である。この図はサファイアC面を主面とし、オリエンテーションフラット(オリフラ)面をA面としている。この図に示すように凹凸のストライプをA面に対して垂直方向で、互いに平行なストライプを形成する。図7に示すように、サファイアC面上に窒化物半導体を選択成長させた場合、窒化物半導体は面内ではA面に対して平行な方向で成長しやすく、垂直な方向では成長しにくい傾向にある。従ってA面に対して垂直な方向でストライプを設けると、ストライプとストライプの間の窒化物半導体がつながって成長しやすくなり、図1〜図4に示したような結晶成長が容易に可能となると考えられるが詳細は定かではない。
【0045】
次に、A面を主面とするサファイア基板を用いた場合、上記C面を主面とする場合と同様に、例えばオリフラ面をR面とすると、R面に対して垂直方向に、互いに平行なストライプを形成することにより、ストライプ幅方向に対して窒化物半導体が成長しやすい傾向にあるため、結晶欠陥の少ない窒化物半導体層を成長させることができる。
【0046】
また次に、スピネル(MgAl2O4)に対しても、窒化物半導体の成長は異方性があり、窒化物半導体の成長面を(111)面とし、オリフラ面を(110)面とすると、窒化物半導体は(110)面に対して平行方向に成長しやすい傾向がある。従って、(110)面に対して垂直方向にストライプを形成すると窒化物半導体層と隣接する窒化物半導体同士が保護膜の上部でつながって、結晶欠陥の少ない結晶を成長できる。なおスピネルは四方晶であるため特に図示していない。
【0047】
また、以下に、オフアングルされたサファイア基板のステップに沿う方向が、サファイア基板のA面に対して垂直に形成されてなる場合について図11を用いて説明する。
ステップ状にオフアングルしたサファイアなどの異種基板は、図11に示すようにほぼ水平なテラス部分Aと、段差部分Bとを有している。テラス部分Aの表面凹凸は少なく、ほぼ規則正しく形成されている。このようなオフ角θを有するステップ状部分は、基板全体にわたって連続して形成されていることが望ましいが、特に部分的に形成されていてもよい。なおオフ角θとは、図11に示すように、複数の段差の底部を結んだ直線と、最上層のステップの水平面との角度を示すものとする。
また異種基板は、オフ角が0.1°〜0.5°、好ましくは0.1°〜0.2°である。オフ角を上記範囲とすると、第1の窒化物半導体2表面は細かな筋状のモフォロジーとなり、エピタキシャル成長表面(第2の窒化物半導体3表面)は波状のモフォロジーとなり、この基板を用いて得られる窒化物半導体素子は平滑で、特性も長寿命、高効率、高出力、歩留まりの向上したものが得られる。
【0048】
本発明の窒化物半導体素子(以下本発明の素子と言う場合がある。)について以下に説明する。
本発明の窒化物半導体素子は、前記した本発明の窒化物半導体の成長法により得られる第2の窒化物半導体3(窒化物半導体基板)上に、素子構造となる少なくともn型及びp型の窒化物半導体等が形成されてなるものである。本発明において、前記本発明の成長方法により得られる窒化物半導体上に素子構造を形成する場合、凹部上部に発光領域など(例えばレーザ素子においてはリッジ形状のストライプなど)が位置するように素子構造を形成することが、寿命特性等の素子特性が良好な素子を得るのに好ましい。
本発明の窒化物半導体素子を構成する窒化物半導体としては、特に限定されず、少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型の窒化物半導体が積層されていればよい。例えば、n型窒化物半導体層として、超格子構造を有するn型窒化物半導体層を有し、この超格子構造のn型層にn電極を形成することのできるn型窒化物半導体が形成されているもの等が挙げられる。活性層としては、例えばInGaNを含んでなる多重量子井戸構造の活性層が挙げられる。
また、窒化物半導体素子構造を形成するその他の構成は、例えば電極、素子の形状等、いずれのものを適用させてもよい。本発明の窒化物半導体素子の一実施の形態を実施例に示したが、本発明はこれに限定されない。
【0049】
本発明の窒化物半導体素子構造となる窒化物半導体を成長させる方法は、特に限定されないがMOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法は、MOCVD法であり、結晶をきれいに成長させることができる。しかし、MOCVD法は時間がかかるため、膜厚が厚い場合には時間の短い方法で行うことが好ましい。また使用目的によって種々の窒化物半導体の成長方法を適宜選択し、窒化物半導体の成長を行うことが好ましい。
【0050】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されない。
[実施例1]
実施例1における各工程を図1〜図4を用いて示す。また実施例1はMOCVD法を用いて行った。
【0051】
(第1の工程)
異種基板1として、2インチφ、C面を主面とし、オリフラ面をA面とするサファイア基板1を反応容器内にセットし、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、サファイア基板1上にGaNよりなるバッファ層(図示されていない)を約200オングストロームの膜厚で成長させる。
バッファ層を成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第1の窒化物半導体層2を2μmの膜厚で成長させる。(図1)
【0052】
(第2の工程)
第1の窒化物半導体層2を成長後、ストライプ状のフォトマスクを形成し、スパッタ装置によりストライプ幅(凸部の上部になる部)5μm、ストライプ間隔(凹部底部となる部分)10μmにパターニングされたSiO2膜を形成し、続いて、RIE装置によりSiO2膜の形成されていない部分の第1の窒化物半導体層2をサファイアが露出するまでエッチングして凹凸を形成することにより、凹部側面に第1の窒化物半導体2を露出させる(図2)。図2のように凹凸を形成した後、凸部上部のSiO2を除去する。なお、ストライプ方向は、図6に示すように、オリフラ面に対して垂直な方向で形成する。
【0053】
(第3の工程)
次に、反応容器内にセットし、常圧で、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープのGaNよりなる第2の窒化物半導体層3を15μmの膜厚で成長させる(図3及び図4)。
【0054】
第2の窒化物半導体層3を成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、アンドープのGaNよりなる窒化物半導体基板を得る。
【0055】
得られた第2の窒化物半導体層3(本発明の窒化物半導体基板)をCL(カソードルミネセンス)方法により観測すると、凸部上部は転位密度がやや多めであったが、凹部開口部の上部にはほとんど転位が見られず良好な結晶性を有している。更に第2の窒化物半導体層3の表面の面状態は、平坦で異常が少なく良好である。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、ストライプ幅(凸部の上部になる部):ストライプ間隔(凹部底部となる部分)を、3μm:15μm、3μm:20μmとする他は同様にして2種類の第2の窒化物半導体3を成長させた。
得られた第2の窒化物半導体3をCL方法により観察すると、いずれも実施例1と同様に凹部開口部の上部には転位がほとんど見られず、さらに第2の窒化物半導体の表面が良好な面状態である。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、第2の窒化物半導体の膜厚を8μmとする他は同様にして得られた第2の窒化物半導体3に、図5に示すように、第1の窒化物半導体に形成された凹部上部に、第2の窒化物半導体に形成される凸部が、また第1の窒化物半導体に形成された凸部上部に第2の窒化物半導体に形成される凹部が、それぞれ形成されるように、ストライプ状のフォトマスクを形成し、スパッタ装置によりストライプ幅(凸部の上部になる部)5μm、ストライプ間隔(凹部底部となる部分)10μmにパターニングされたSiO2膜を形成する。続いて、RIE装置によりSiO2膜の形成されていない部分の第2の窒化物半導体3をサファイアが露出するまでエッチングして凹凸を形成する。その後、凹凸を形成された第2の窒化物半導体3上に、第3の窒化物半導体4を成長させる。
得られた第3の窒化物半導体4をCL方法により観察すると、全体的に転位のほとんど見られない良好な面状態の窒化物半導体である。
【0058】
[実施例4]
実施例1において、第3の工程での圧力を1.5気圧、2気圧、2.5気圧に変更する他は同様にして第2の窒化物半導体3をそれぞれ成長させる。
得られた第2の窒化物半導体3は、いずれも実施例1と同等の良好な結果が得られる。
【0059】
[実施例5]
以下に、図8を用いて実施例5を説明する。図8は本発明の実施例1で得られた第2の窒化物半導体を基板として素子構造を形成してなる本発明の一実施の形態であるレーザ素子の構造を示す模式的断面図である。
実施例1で得られた第2の窒化物半導体3を窒化物半導体基板として以下の素子構造を積層成長させる。
【0060】
(アンドープn型コンタクト層)[図8には図示されていない]
窒化物半導体基板1上に、1050℃で原料ガスにTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニアガスを用いアンドープのAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層を1μmの膜厚で成長させる。
【0061】
(n型コンタクト層32)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアガスを用い、不純物ガスにシランガス(SiH4)を用い、Siを3×1018/cm3ドープしたAl0.05Ga0.95Nよりなるn型コンタクト層2を3μmの膜厚で成長させる。
【0062】
(クラック防止層33)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI(トリメチルインジウム)及びアンモニアを用い、不純物ガスにシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.08Ga0.92Nよりなるクラック防止層33を0.15μmの膜厚で成長させる。
【0063】
(n型クラッド層34)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.14Ga0.86NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ160回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚8000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるn型クラッド層34を成長させる。
【0064】
(n型ガイド層35)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるn型ガイド層35を0.075μmの膜厚で成長させる。
【0065】
(活性層36)
次に、温度を800℃にして、原料ガスにTMI、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させる。続いて、シランガスを止め、アンドープのIn0.11Ga0.89Nよりなる井戸層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を3回繰り返し、最後に障壁層を積層した総膜厚550オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層36を成長させる。
【0066】
(p型電子閉じ込め層37)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1019/cm3ドープしたAl0.4Ga0.6Nよりなるp型電子閉じ込め層37を100オングストロームの膜厚で成長させる。
【0067】
(p型ガイド層38)
次に、温度を1050℃にして、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、アンドープのGaNよりなるp型ガイド層8を0.075μmの膜厚で成長させる。
このp型ガイド層8は、アンドープとして成長させるが、p型電子閉じ込め層37からのMgの拡散により、Mg濃度が5×1016/cm3となりp型を示す。
【0068】
(p型クラッド層39)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMA、TMG及びアンモニアを用い、アンドープのAl0.1Ga0.9NよりなるA層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いて、TMAを止め、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなるB層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そして、この操作をそれぞれ100回繰り返してA層とB層の積層し、総膜厚5000オングストロームの多層膜(超格子構造)よりなるp型クラッド層39を成長させる。
【0069】
(p型コンタクト層40)
次に、同様の温度で、原料ガスにTMG及びアンモニアを用い、不純物ガスとしてCp2Mgを用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp型コンタクト層40を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0070】
反応終了後、反応容器内において、ウエハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層を更に低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、RIE(反応性イオンエッチング)を用いSiCl4ガスによりエッチングし、図9に示すように、n電極を形成すべきn側コンタクト層32の表面を露出させる。
次に図9(a)に示すように、最上層のp側コンタクト層40のほぼ全面に、PVD装置により、Si酸化物(主として、SiO2)よりなる第1の保護膜61を0.5μmの膜厚で形成した後、第1の保護膜61の上に所定の形状のマスクをかけ、フォトレジストよりなる第3の保護膜63を、ストライプ幅1.8μm、厚さ1μmで形成する。
次に、図9(b)に示すように第3の保護膜63形成後、RIE(反応性イオンエッチング)装置により、CF4ガスを用い、第3の保護膜63をマスクとして、前記第1の保護膜をエッチングして、ストライプ状とする。その後エッチング液で処理してフォトレジストのみを除去することにより、図9(c)に示すようにp側コンタクト層40の上にストライプ幅1.8μmの第1の保護膜61が形成できる。
【0071】
さらに、図9(d)に示すように、ストライプ状の第1の保護膜61形成後、再度RIEによりSiCl4ガスを用いて、p側コンタクト層40、およびp側クラッド層39をエッチングして、ストライプ幅1.8μmのリッジ形状のストライプを形成する。但し、リッジ形状のストライプは、図8に示すように、第1の窒化物半導体に形成した凹部上部にくるように形成される。
リッジストライプ形成後、ウェーハをPVD装置に移送し、図9(e)に示すように、Zr酸化物(主としてZrO2)よりなる第2の保護膜62を、第1の保護膜61の上と、エッチングにより露出されたp側クラッド層39の上に0.5μmの膜厚で連続して形成する。このようにZr酸化物を形成すると、p−n面の絶縁をとるためと、横モードの安定を図ることができ好ましい。
次に、ウェーハをフッ酸に浸漬し、図9(f)に示すように、第1の保護膜61をリフトオフ法により除去する。
【0072】
次に図9(g)に示すように、p側コンタクト層40の上の第1の保護膜61が除去されて露出したそのp側コンタクト層の表面にNi/Auよりなるp電極20を形成する。但しp電極20は100μmのストライプ幅として、この図に示すように、第2の保護膜62の上に渡って形成する。
第2の保護膜62形成後、図8に示されるように露出させたn側コンタクト層2の表面にはTi/Alよりなるn電極21をストライプと平行な方向で形成する。
【0073】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハのサファイア基板を研磨して70μmとした後、ストライプ状の電極に垂直な方向で、基板側からバー状に劈開し、劈開面(11−00面、六角柱状の結晶の側面に相当する面=M面)に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断して図8に示すようなレーザ素子とする。なお共振器長は300〜500μmとすることが望ましい。
得られたレーザ素子をヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みた。
その結果、室温においてしきい値2.5kA/cm2、しきい値電圧5Vで、発振波長400nmの連続発振が確認され、室温で1万時間以上の寿命を示す。また、第2の窒化物半導体の面状態が良好であるので、素子特性の良好なレーザ素子を歩留まりよく得られる。
【0074】
[実施例6]
以下、図10を元に実施例6について説明する。図10は本発明の成長方法により得られた窒化物半導体層を基板とする一実施の形態のレーザ素子の構造を示す模式断面図である。
【0075】
実施例1において、第2の窒化物半導体3を成長させる際に、Siを1×1018/cm3ドープして、膜厚を150μmとする他は同様にして、Siドープの第2の窒化物半導体3を得る。得られたウエハのサファイア基板等を研磨、除去し、第2の窒化物半導体3の単体とする。
【0076】
次に、サファイア基板を除去した面とは反対の面の第2の窒化物半導体層3(SiドープGaN)を主面とするウェーハをMOVPE装置の反応容器内にセットし、この第2の窒化物半導体層3の上に下記各層を形成する。
【0077】
(n側クラッド層43)
次に、Siを1×1019/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層、20オングストロームと、アンドープ(undope)のGaNよりなる第2の層、20オングストロームとを交互に100層積層してなる総膜厚0.4μmの超格子構造とする。
【0078】
(n側光ガイド層44)
続いて、Siを1×1017/cm3ドープしたn型GaNよりなるn型光ガイド層44を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0079】
(活性層45)
次に、Siを1×1017/cm3ドープのIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層、25オングストロームと、Siを1×1017/cm3ドープのIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層、50オングストロームを交互に積層してなる総膜厚175オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層45を成長させる。
【0080】
(p側キャップ層46)
次に、バンドギャップエネルギーがp側光ガイド層47よりも大きく、かつ活性層45よりも大きい、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.9Nよりなるp側キャップ層46を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0081】
(p側光ガイド層47)
次に、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層46より小さい、Mgを1×1018/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側光ガイド層47を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0082】
(p側クラッド層48)
次に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層、20オングストロームと、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなる第2の層、20オングストロームとを交互に積層してなる総膜厚0.4μmの超格子層よりなるp側クラッド層48を形成する。
【0083】
(p側コンタクト層49)
最後に、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層49を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0084】
反応終了後、反応容器内において、ウェーハを窒素雰囲気中、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図10に示すように、RIE装置により最上層のp型コンタクト層49と、p型クラッド層48とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とし、リッジ表面の全面にNi/Auよりなるp電極51を形成する。
【0085】
次に、図10に示すようにp電極51を除くp側クラッド層48、コンタクト層49の表面にSiO2よりなる絶縁膜50を形成し、この絶縁膜50を介してp電極51と電気的に接続したpパッド電極52を形成する。
【0086】
p側電極形成後、第2の窒化物半導体層3の素子構造が形成されていない表面全面に、Ti/Alよりなるn電極53を0.5μmの膜厚で形成し、その上にヒートシンクとのメタライゼーション用にAu/Snよりなる薄膜を形成する。
【0087】
その後、n電極側53からスクライブし、第2の窒化物半導体層3のM面(11−00、図6の六角柱の側面に相当する面)で第2の窒化物半導体層5を劈開し、共振面を作製する。共振面の両方あるいはどちらか一方にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとした。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、pパッド電極52をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度2.5kA/cm2、閾値電圧4.5Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、1万時間以上の寿命を示した。
【0088】
[実施例7]
実施例3で得られた第3の窒化物半導体4を基板として、実施例5と同様の素子構造を形成してレーザ素子を作製した。
得られたレーザ素子は実施例5と同様に良好な寿命特性を有している。また、リッジ形状のストライプを形成する位置を凹部上部に関係なく凸部上部に形成しても良好な特性を示す。
【0089】
[実施例8]
実施例1において、サファイア基板1として、2インチφ、オフアングル角θ=0.2°、ステップ段差(高さ)約1原子層、テラス幅Wが約40オングストロームのステップを有し、C面を主面とし、オリフラ面をA面として、ステップに沿う方向、すなわち段差の方向がこのA面に対して垂直な方向に設けてあるサファイア基板を用いる他は同様にして第2の窒化物半導体3を成長させる。
得られた第2の窒化物半導体3を基板として、実施例5と同様の素子構造を形成してレーザ素子を製造する。
得られたレーザ素子は、実施例4よりしきい値が低下し、より良好な寿命特性を有する。
【0090】
[実施例9]
実施例1において、第2の窒化物半導体3を成長させる際に、SiとMgの不純物を5×1017/cm3ドープする他は同様にして第2の窒化物半導体3を成長させる。得られた第2の窒化物半導体を実施例1と同様に観測すると、実施例1とほぼ同様に良好であったが、実施例1より更に転位が低減され、また空隙などの発生の防止も良好である。
更に、第2の窒化物半導体を基板とし、この上に実施例5と同様の素子構造を成長させてなるレーザ素子を作製する。得られたレーザ素子は、実施例5と同等の良好な結果が得られた。
【0091】
[実施例10]
実施例1において、凹部の幅を20μmとする他は同様にして第2の窒化物半導体3を成長させる。得られた第2の窒化物半導体3上に実施例5と同様の素子構造を成長させてレーザ素子を作製する。得られたレーザ素子は、実施例5とほぼ同等に良好な結果が得られた。また、リッジ形状のストライプを形成が実施例5より良好となり、歩留まりが向上する傾向がある。
【0092】
[実施例11]
実施例1において、凹凸を形成する際に、図12のようにサファイア基板を1200オングストローム削る他は同様にして、第2の窒化物半導体を成長させる。得られた第2の窒化物半導体3は、実施例1とほぼ同様に良好であるが実施例1より転位が少なく表面の面状態がより平坦となる。
更に第2の窒化物半導体上に実施例5と同様の素子構造を成長させて、レーザ素子を作製する。得られたレーザ素子は、実施例5とほぼ同等に良好であるが、やや実施例5より良好な素子特性を有する。
【0093】
[実施例12]
実施例11において、凹凸を形成する際に、図14のように、サファイアのA面をオリフラ面とし、この面からθ=0.3°ずらしてストライプを形成する他は同様にして第2の窒化物半導体を成長させる。得られた第2の窒化物半導体は、実施例11より表面の平坦性及び面状態が良好となる。
さらに、第2の窒化物半導体上に実施例5と同様の素子構造を成長させると、実施例5とほぼ同等に良好なレーザ素子が得られるが、実施例5より更に素子特性が良好となる。
【0094】
[比較例1]
実施例1において、第2の窒化物半導体を成長させる際の圧力を、ほぼ0.5気圧に減圧し成長させると、第2の窒化物半導体の表面にざらつきがあり、十分良好な面状態が得られなかった。
また、このようにして得られた表面にざらつきのある面状態の第2の窒化物半導体を基板として、実施例5と同様の素子構造を形成してレーザ素子を作製すると、レーザ発振しないもの、パルス発振のもの、または連続発振するが寿命特性が悪いもの等があり、歩留まりが低くなる。
【0095】
【発明の効果】
本発明は、上記の如く、凹凸を形成された窒化物半導体上にSiO2が形成されていないので、SiやO等の汚染を防止でき、転位が低減され結晶性が良好で、さらに面状態が良好な窒化物半導体を得ることができる窒化物半導体の成長方法を提供することができる。
更に、本発明は、結晶性及び面状態が良好で且つ転位の少ない窒化物半導体を基板とする寿命特性の良好な窒化物半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図6】サファイアの面方位を示すユニットセル図である。
【図7】保護膜のストライプ方向を説明するための基板主面側の平面図である。
【図8】本発明の方法による基板を用いた窒化物半導体LD素子の一構造を示す模式断面図である。
【図9】図9は、リッジ形状のストライプを形成する一実施の形態である方法の各工程におけるウエハの部分的な構造を示す模式的断面図である。
【図10】本発明の方法による基板を用いた窒化物半導体LD素子の一構造を示す模式断面図である。
【図11】本発明の方法による基板の一部を拡大して示した模式的断面図である。
【図12】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図13】本発明の方法の各工程において得られる窒化物半導体ウェーハの構造を示す模式的断面図である。
【図14】保護膜のストライプ方向を説明するための基板主面側の平面図である。
【符号の説明】
1・・・・異種基板
2・・・・第1の窒化物半導体
3・・・・第2の窒化物半導体
4・・・・第3の窒化物半導体
Claims (10)
- 窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板の上に、第1の窒化物半導体を成長させる第1の工程と、
第1の工程後、前記第1の窒化物半導体に部分的に凹凸を形成して凹部側面に窒化物半導体の横方向の成長が可能な面を露出させ、且つ凹部底面は異種基板を500〜3000オングストロームの深さで削って形成される第2の工程と、
第2の工程後、常圧以上の圧力条件下で、前記凹凸を有する第1の窒化物半導体上に、第2の窒化物半導体を成長させる第3の工程とを有することを特徴とする窒化物半導体の成長方法。 - 前記第3の工程の圧力が、常圧〜2.5気圧の圧力条件下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記第2の窒化物半導体を成長後に、前記第2及び第3の工程を繰り返して行う、但し、第2の窒化物半導体に形成される凹凸が、第1の窒化物半導体に形成された凹部上部に凸部が形成され、第1の窒化物半導体に形成された凸部上部に凹部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記異種基板が、サファイアのC面がステップ状にオフアングルされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のオフアングル角が、0.1°〜0.5°であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記ステップ状にオフアングルされているサファイア基板のステップに沿う方向(段差方向)が、サファイアのA面に対して垂直に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 前記第1の窒化物半導体に形成される凹凸が、ストライプ形状であり、更に前記ストライプ形状の凹凸がオリフラ面からの垂直軸に対して左右のいずれかに0.1°〜1°程度ずらして形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の窒化物半導体の成長方法。
- 異種基板の上に、第1の窒化物半導体を有し、該第1の窒化物半導体の成長面側から第1の窒化物半導体に部分的に凹凸を形成し、その上に、第2の窒化物半導体を有する窒化物半導体素子であり、
前記第1の窒化物半導体の凹部底面は、前記異種基板を500〜3000オングストロームの深さで削って形成されたものであることを特徴とする窒化物半導体素子。 - 前記異種基板は、サファイア、スピネル、SiC、ZnS、ZnO、GaAs、Siから選ばれることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体素子。
- 前記窒化物半導体素子において、前記第2の窒化物半導体上に少なくともn型窒化物半導体、活性層、及びp型窒化物半導体が積層されていることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体素子。
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