JP3673600B2 - 高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法 - Google Patents

高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロヘキセンを原料としてシクロヘキセンオキサイドを製造する方法に係り、特にシクロペンタンカルボアルデヒド(以下「CPAL」と略す)及びシクロペンタンカルボン酸(以下「CPCA」と略す)等の不純物の少ない高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法に関する。
本発明により得られるシクロヘキセンオキサイドは、溶剤等の添加剤、医・農薬の中間体、ポリマー原料の中間体等の用途に利用できる有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
純度の高いシクロヘキセンオキサイドを製造する方法として、シクロヘキセンに塩酸及び過酸化水素を作用させ、生成した2−クロロシクロヘキサノールに苛性ソーダを作用させ、得られたシクロヘキセンオキサイドを蒸留により精製し、純度99重量%(ガスクロマトグラフィー分析)のシクロヘキセンオキサイドを得る方法が知られている(例えば、特開昭46−2261号公報)。
【0003】
この方法は、シクロヘキセンを原料にして容易に99重量%を超える純度のシクロヘキセンオキサイドを製造できる点で優れているが、得られたシクロヘキセンオキサイドには不純物による臭気(特に不純物に関する記載はない)の問題があり、この点で必ずしも満足できる製造法であるとは言えない。
【0004】
そこで、本発明者らは、この製品のシクロヘキセンオキサイドが有する臭気の原因物質について鋭意検討した結果、この臭気の直接的な原因物質はシクロヘキセンからシクロヘキセンオキサイド(沸点:130℃)を製造する製造過程で副生し、蒸留では容易に分離除去することが困難であって、シクロヘキセンオキサイド中に不純物として微量含まれるCPCAであり、また、この臭気の間接的な原因物質はシクロヘキセンオキサイドの製造過程で副生し、蒸留では分離除去が困難であってシクロヘキセンオキサイド中に不純物として含まれ、空気との接触により酸化されてCPCAを生成するCPAL(沸点:136℃)であることを突き止めた。
【0005】
そして、臭気の少ないシクロヘキセンオキサイドの製品を得る方法として、このシクロヘキセンオキサイド中に不純物として含まれ、酸化されて臭気の直接的原因物質のCPCAに変わるCPALが空気酸化されるのを防止するため、フェノール系、硫黄系、リン系及びヒンダードアミン系の酸化防止剤を添加する方法を提案した(特願平8−186155号明細書)。
【0006】
この酸化防止剤を添加する方法によれば、CPALが空気酸化されてCPCAになることを防止し、これによって結果的に製品のシクロヘキセンオキサイド中に含まれて臭気の直接的な原因物質になるCPCAの含有量を低減せしめ、臭気の発生を防止することができるという利点はあるが、この方法は臭気の原因物質(直接的原因物質と間接的原因物質を含めて)そのものの副生を低減させるものではなく、しかも、酸化防止剤を添加するためにそれだけ純度が低下し、高純度化が要求される用途には不向きであるという問題がある。
【0007】
また、臭気の原因物質を分離除去する方法として、CPAL及びCPCAを含むシクロヘキセンオキサイドにヒドロキシルアミンを作用させ、処理液を蒸留精製することにより、例えばCPAL含有量12ppm及びCPCA含有量5ppm未満であって純度が99.8%(ガスクロマトグラフィー分析)という不純物含有量の少ない高純度シクロヘキセンオキサイドを得る方法を提案した(特願平8−186154号明細書)。
【0008】
この方法はシクロヘキセンオキサイドに含まれる臭気の原因物質であるCPAL及びCPCAを可及的に除去して高純度のシクロヘキセンオキサイドが得られるという点で優れているが、この方法はシクロヘキセンオキサイド中の不純物、特に臭気の原因物質を分離除去する精製蒸留法であり、反応混合物中から単離されたシクロヘキセンオキサイドを再度精製するために付加的にヒドロキシルアミン処理及び精製蒸留の工程を必要とし、工業的な製造においては不可避的に設備の増加や作業工程の増加をもたらし、製造コストが嵩んで経済的でないという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
かかる観点の下に、本発明者らは更に研究を進め、シクロヘキセンを原料としてシクロヘキセンオキサイドを製造する製造工程で臭気の原因物質となる不純物のCPCAやCPALの副生を可及的に防止し、これによって上述した従来技術のような臭気の問題がないだけでなく、先に提案した酸化防止剤添加方法や精製蒸留法におけるような問題もなく、高純度シクロヘキセンオキサイドを工業的に有利に製造することができる方法について検討した。
【0010】
そこで、先ず始めに、シクロヘキセンに次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を水素イオン濃度2<pH<7及び反応温度30〜70℃の条件下で作用させて2−クロロシクロヘキサノールを製造し(特開平7−196567号公報)、次いで得られた2−クロロシクロヘキサノールにアルカリを作用させてシクロヘキセンオキサイドを製造したところ、消費したシクロヘキセンに対する収率が78.3重量%でシクロヘキセンオキサイドが得られ、これを蒸留精製して得られた純度99.3%(ガスクロマトグラフィー)のシクロヘキセンオキサイドはそのCPAL濃度が3200ppmであってCPCA濃度が600ppmであり、この時点での臭気はかなり改善されていた。しかしながら、このシクロヘキセンオキサイドはそのCPAL濃度が3200ppmと高く、空気と接触するとCPCA濃度が上昇して臭気が悪化した。
【0011】
そこで、更に検討を進めた結果、意外なことには、シクロヘキセンに次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を水素イオン濃度7≦pH≦9の条件下で作用させて得られた2−クロロシクロヘキサノールを用いてシクロヘキセンオキサイドを製造した場合、得られたシクロヘキセンオキサイド中の臭気の直接的な原因物質CPCAだけでなく、間接的な原因物質CPALも含めてその副生を合計で1000ppm以下になるまで大幅に低減することができ、これによって臭気の発生を可及的に抑制した高純度のシクロヘキセンオキサイドを工業的に有利に製造できることを見い出した。
【0012】
従って、本発明の目的は、シクロヘキセンを原料としてシクロヘキセンオキサイドを製造する方法において、臭気の原因物質であるCPAL及びCPCAの副生を可及的に防止し、高純度シクロヘキセンオキサイドを収率良く工業的に有利に製造することができる高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、シクロヘキセンに次亜塩素酸塩水溶液及び酸を作用させて2−クロロシクロヘキサノールを生成せしめる第1反応工程と、この第1反応工程で得られた2−クロロシクロヘキサノールにアルカリを作用させてシクロヘキセンオキサイドを生成せしめる第2反応工程とを含むシクロヘキセンオキサイドの製造法において、上記第1反応工程の反応を、その反応系の水素イオン濃度を7≦pH≦9の範囲内に維持しながら反応温度30〜70℃の条件で行い、これによってCPAL及びCPCA等の不純物の副生を可及的に抑制することができる高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法である。
【0014】
本発明方法において、その第1反応工程で用いられる原料のシクロヘキセンとしては、特に限定されるものではなく、種々の方法で製造されたもの、例えばシクロヘキサノールを脱水したもの、クロロシクロヘキサンを脱塩化水素したもの、ベンゼンを部分水添したもの等を挙げることができる。また、このシクロヘキセンにはその製造に由来する原料や副生物が含まれていても差し支えなく、このような原料や副生物としては、例えばシクロヘキサノール、クロロシクロヘキサン、ベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロペンテン等が挙げられ、また、その含有量も数重量%から等量、場合によってはシクロヘキセンに対して数倍量存在してもそのまま用いることもできる。これらの原料や副生物は、第1反応工程あるいは第2反応工程の反応終了後の後処理工程で容易に分離除去することができる。
【0015】
本発明方法で用いる次亜塩素酸塩水溶液としては特に限定されるものではないが通常は次亜塩素酸ナトリウム水溶液が用いられ、この次亜塩素酸ナトリウム水溶液としては、一般に、苛性ソーダー水溶液に塩素ガスを導入して製造したものや、塩化ナトリウム水溶液を電解して製造したもの等を挙げることができる。また、本発明における次亜塩素酸ナトリウム水溶液中の次亜塩素酸ナトリウム濃度は、通常2〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。この次亜塩素酸ナトリウム濃度が低すぎると、生成する2−クロロシクロヘキサノールの濃度が低くなり生産効率が低下し、反対に、この次亜塩素酸ナトリウム濃度が高すぎると、1,2−ジクロロシクロヘキサン及び2,2’−ジクロロシクロヘキシルエーテル等の副生物が増加して目的の2−クロロシクロヘキサノールの収率が低下して好ましくない。
【0016】
次亜塩素酸塩を中和してクロロヒドリン化のためのフリーの次亜塩素酸を生成させるための酸としては、硫酸、リン酸、硝酸等の強酸を挙げることができ、好ましくは硫酸であって、塩酸の使用は好ましくない。塩酸を用いて次亜塩素酸ナトリウムを中和し、シクロヘキセンのクロロヒドリン化を行うと、生成するフリーの次亜塩素酸濃度が低下し、反応終了後の反応混合物中の2−クロロシクロヘキサノールの濃度が低くなって生産効率が低下するだけでなく、1,2−ジクロロシクロヘキサンや2,2’−ジクロロシクロヘキシルエーテル等の副生物が増加し、2−クロロシクロヘキサノールの収率が低下して好ましくない。
【0017】
本発明において、酸は通常水溶液として使用されるが、その酸水溶液における酸濃度については、例えば酸水溶液が硫酸水溶液である場合、通常3〜70重量%、好ましくは5〜60重量%である。この酸濃度が低すぎると、生成する2−クロロシクロヘキサノールの濃度が低くなり生産効率が低下し、反対に、この酸濃度が高すぎると、1,2−ジクロロシクロヘキサンや2,2’−ジクロロシクロヘキシルエーテル等の副生物が増加し、2−クロロシクロヘキサノールの収率が低下して好ましくない。
【0018】
本発明方法において、その第1反応工程はその反応系の水素イオン濃度pHを7≦pH≦9に維持することが必要である。この水素イオン濃度がpH7未満になると、最終的に得られるシクロヘキセンオキサイド中の不純物の含有量が増加し、臭気の原因物質CPAL及びCPCAの含有量を目標とする1000ppm以下、好ましくは800ppm以下に抑制するのが難しくなり、反対に、この水素イオン濃度がpH9を超えると、反応性が著しく低下して好ましくない。2−クロロシクロヘキサノールの収率を高めるという観点からは、反応系の水素イオン濃度を2<pH<7の範囲、特に3<pH<6の範囲に制御するのが望ましいが、最終的に得られるシクロヘキセンオキサイド中の臭気の原因物質CPAL及びCPCAの含有量を可及的に低減するという観点からは、多少の収率を犠牲にしても、反応液の水素イオン濃度を7≦pH≦9に維持する必要があり、更にCPAL及びCPCAの含有量を可及的に低減し、かつ、2−クロロシクロヘキサノールの収率を可及的に高めるという観点から、好ましくは水素イオン濃度pHが弱アルカリ性側、すなわち7<pH≦8の範囲であるのが望ましい。
【0019】
また、この第1反応工程では、その反応温度を30〜70℃、好ましくは35〜60℃に保持する。この反応温度は30℃以下になっても反応性及び収率に影響を与えないが、反応系の冷却のために必要とする費用が増加し、また、反応温度が70℃を越えると、1,2−ジクロロシクロヘキサンや2,2’−ジクロロシクロヘキシルエーテル等の副生物が増加して2−クロロシクロヘキサノールの収率が低下するほか、最終的に得られるシクロヘキセンオキサイド中の臭気原因物質CPAL及びCPCAの含有量が増加する。
【0020】
ところで、第1反応工程でのシクロヘキセンと次亜塩素酸ナトリウム及び酸との反応は十分に速く、例えば10℃あるいはそれ以下の温度でも特に長時間をかける必要はなく、逆に反応温度を高くして反応速度を速くしようとすると、副生物が増加して2−クロロシクロヘキサノールの収率が低下したり、シクロヘキセンの蒸気圧が高くなって反応の制御が難しくなるという問題が生じ、そして、この第1反応工程での反応には蒸発が伴うので、周囲温度あるいはそれ以下の温度に冷却するには冷却のための装置や冷媒に多大の費用を要する。しかしながら、本発明方法においては、反応系の水素イオン濃度pHを7≦pH≦9に維持しているので、特に冷却しなくても、あるいはごく僅かな冷却でも、周囲温度あるいはそれ以上ではあるが極端には高くない温度で収率をあまり低下させずに2−クロロシクロヘキサノールを得ることができる。
【0021】
本発明の第1反応工程は、反応系の水素イオン濃度が7≦pH≦9の範囲に維持されれば、反応器中に全ての原料を同時に仕込んで反応させてもよく、また、各反応原料を適宜分散させて反応器中に添加してもよい。例えば、回分反応で行う場合、先ず反応器に所定量のシクロヘキセンを仕込んだ後、反応混合物の水素イオン濃度が7≦pH≦9の範囲になるように制御しながら、所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液と硫酸とを同時に添加する方法や、反応器に所定量のシクロヘキセンと次亜塩素酸ナトリウム水溶液とを予め仕込んだ後、反応混合物の水素イオン濃度が7≦pH≦9の範囲になるように制御しながら、硫酸を添加する方法等が例示される。
【0022】
また、この第1反応工程での反応時間は、仕込み量、反応温度等によって異なるが、通常は10分から100時間で必要な原料を逐次添加した後、1分から10時間、更に反応を行えば良い。反応の進行は30℃程度の温度でも十分早く、特に長時間かける必要はない。
【0023】
第1反応工程での反応を連続的に行うことは望ましい形態の1つである。すなわち、シクロヘキセン、次亜塩素酸塩水溶液及び酸を同時に反応器に連続的に供給し、かつ、2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応器から連続的に抜き出す。反応器から反応混合物を抜き出す方法としては反応器の上部からオーバーフロー方式で行ってもよいほか、反応器の下部又は側面に取り付けた抜き出し口から一定速度で行うようにしてもよい。この連続反応の場合における反応時間、すなわち滞留時間についても、反応温度等によって異なるが、通常は1分から10時間の範囲でよい。
【0024】
更に、第1反応工程において、その反応はシクロヘキセンからなる油相と次亜塩素酸塩水溶液及び酸からなる水相との界面で行われるので、この反応を効率良くかつ円滑に進めるためには両者が良好な接触状態で共存するエマルジョン状態で行うのがよく、そのためには良好な混合状態下で反応させるのがよいほか、必要により反応に関与しない界面活性剤を添加してもよい。
【0025】
次に、本発明の第2反応工程は、第1反応工程で生成した2−クロロシクロヘキサノールにアルカリを作用させてシクロヘキサンオキサイドを生成せしめる工程である。そして、この第2反応工程では、第1反応工程の反応混合物をそのまま用いてもよいほか、この反応混合物を油水分離して2−クロロシクロヘキサノールを含む油相を回収し、この回収された反応混合物の油相をそのまま原料として用いてもよく、更に、反応混合物の油相から2−クロロシクロヘキサノールを分離し、この2−クロロシクロヘキサノールを精製し、あるいは、精製することなく原料として用いてもよい。
【0026】
また、この第2反応工程で用いられるアリカリは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩等が好ましく、具体的には例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。このアルカリの添加方法については、特に制限はないが、通常は水溶液や懸濁液の形態で反応に用いられ、その使用量についても特に制限はないが、通常は第1反応工程で用いられる次亜塩素酸塩に対して0.9倍モル当量以上である。添加するアルカリ量がこれより少ないと、未反応の2−クロロシクロヘキサノールが増加して収率が低下する。
【0027】
第2反応工程の2−クロロシクロヘキサノールとアルカリの反応も、上記第1反応工程のシクロヘキセンと次亜塩素酸塩及び酸との反応と同様に十分速く、例えば10℃あるいはそれ以下の温度でも特に長時間をかける必要はなく、例えば第1反応工程で得られた反応混合物の油相をそのまま用いる場合には、特に加温冷却の必要がないほか、必要により僅かに冷却してもよく、この反応温度が30℃より低くなってもその反応性や収率にほとんど影響を与えない。従って、反応温度は通常30〜70℃、好ましくは35〜60℃に保持するのがよく、この反応温度を30℃より低くすることは無用な冷却のための費用が増加することになり、反対に、反応温度が70℃を越えると、副反応として生成物のシクロヘキセンオキサイドが2次的に水と反応して1,2−シクロヘキサンジオールを生成する等の問題が生じ、副生物が増加してシクロヘキセンオキサイドの収率が低下する。
【0028】
この第2反応工程の反応も、上記第1反応工程の反応と同様に、水相及び油相の界面で進行するので、この反応を効率良くかつ円滑に進めるためには両者が良好な接触状態で共存するエマルジョン状態で行うのがよく、そのためには良好な混合状態下で反応させるのがよいほか、必要により反応に関与しない界面活性剤を添加してもよい。
【0029】
反応時間は、反応温度や攪拌条件等の反応条件によって異なるが、1分から10時間の間でよい。しかしながら、必要以上に長時間の反応時間をとると、生成物であるシクロヘキセンオキサイドが2次的に水と反応して1,2−シクロヘキサンジオールを生成する等の副生物の問題が生じるので好ましくない。
【0030】
本発明において、上記第2反応工程で得られた反応混合物から目的物のシクロヘキセンオキサイドを回収する方法については特に制限されないが、通常は次のような方法で行われる。
【0031】
すなわち、先ず始めに、第2反応工程で得られた反応混合物を油水分離し、シクロヘキセンオキサイドを含有する反応混合物の油相を回収する。この反応混合物の油相の回収は、反応混合物をそのまま遠心分離し、あるいは静置して水相と油相とに相分離させて油水分離し、水相については更に有機溶剤を用いて有機成分を抽出し、水相中のシクロヘキセン及びシクロヘキセンオキサイドを含む有機成分を回収する。この目的で用いられる有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、及びこれらのハロゲン化物等が挙げられ、これらは単独で若しくは併用して用いられる。特に好ましい有機溶剤としては、原料であるシクロヘキセンを用いることであり、これによってシクロヘキセンオキサイドの精製、未反応シクロヘキセンの回収、抽出溶剤の回収等の手間を軽減することができる。
【0032】
次に、このようにして回収された反応混合物の油相は蒸留に付され、目的物のシクロヘキセンオキサイドが分離回収される。この蒸留は回分式であっても連続式であってもよく、また、この蒸留で回収された目的物以外の未反応シクロヘキセンや有機溶剤等は通常再利用される。
【0033】
本発明においては、シクロヘキセンに次亜塩素酸塩水溶液及び酸を作用させる第1反応工程の反応系を水素イオン濃度7≦pH≦9の範囲に維持してクロロヒドリン化反応を行い、2−クロロシクロヘキサノールの合成を行っている。ここで、水素イオン濃度は、反応系での次亜塩素酸イオンの存在形態を支配する因子であると考えられ、例えばEncyclophedia of Chemical Technology, 3rd Ed., Vol. 8, pp.680, John Wiley & Sons, Inc. 1979によれば、次亜塩素酸イオンはpHによってその存在形態が変化し、pHの酸性側からアルカリ性側に向かって順次、塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンと変化する。
【0034】
ところで、シクロヘキセンに次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を作用させて2−クロロシクロヘキサノールを製造する方法(特開平7−196567号公報)において、その反応系の水素イオン濃度を2<pH<7、好ましくは3<pH<6に保持すると、2−クロロシクロヘキサノールが収率良く得られる。従って、この反応系の水素イオン濃度と2−クロロシクロヘキサノールの収率との相関関係から、このクロロヒドリン化反応における反応種は塩素や次亜塩素酸イオンではなくて次亜塩素酸であろうことが推測され、また、シクロヘキセンに塩素を作用させると、1,2−ジクロロシクロヘキサンが生成することも知られている。
【0035】
これらのことから、上記第1反応工程の反応系の水素イオン濃度を本発明の範囲7≦pH≦9に維持することは、シクロヘキセンのクロロヒドリン化反応における反応種である次亜塩素酸の濃度を制限することになり、このことはクロロヒドリン化反応の反応条件をより穏やかな条件にすることになり、このことが結果として不純物を生成する副反応を抑制し、最終的に得られるシクロヘキセンオキサイド中の不純物、特に臭気の原因物質であるCPAL及びCPCA、あるいはその前駆体の生成を抑制し、これらCPAL及びCPCAの含有量を減少せしめるものと考えられる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
【0037】
実施例1
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.3倍モルのシクロヘキセンを用い、また、反応液の水素イオン濃度が7≦pH≦9になるように硫酸を用いて、反応温度50℃及び滞留時間3時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し(第1反応工程)、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物に出発原料のシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い(第2反応工程)、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を蒸留して目的のシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0038】
〔クロロヒドリン化反応装置〕
1000mlの5口フラスコにメカニカル・スターラー、温度計及びpHメーターをセットした。原料供給用の滴下ロート3つに、それぞれ、シリコーン・ゴムチューブを取り付け、チューブ・ポンプを通してフラスコへチューブの先端を導入した。一方、反応液抜き出しのために、シリコーン・ゴムチューブをフラスコから、チューブ・ポンプを通して、1000mlメスシリンダーへ導入した。
【0039】
〔エポキシ化反応装置〕
1000mlの5口フラスコにメカニカル・スターラー及び温度計をセットした。原料供給用の滴下ロート1つにシリコーン・ゴムチューブを取り付け、チューブ・ポンプを介してフラスコ内へチューブの先端を導入した。
〔精製蒸留装置〕
ステンレス製螺旋状充填物を充填した蒸留塔(内径10mm×高さ150mm)を備えた真空(常圧〜減圧)蒸留装置を用いた。
【0040】
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
仕込み用として次亜塩素酸ナトリウム3モルを使用して別途調製した反応液を油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。次亜塩素酸ナトリウム0.5モル相当の油相73.0g中の組成はシクロヘキセン8.52g及び2−クロロシクロヘキサノール51.0gであり、同水相433g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール2.63gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは53.6gであった。
【0041】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分に攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を15時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン54.5g/3h(純度98%、0.650モル/3h)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/3h(濃度13.2重量%、0.500モル/3h)であり、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度が7≦pH≦9になるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約50℃にコントロールした。硫酸の全使用量は642g(1.31モル)であった。
【0042】
3時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相468g中の組成はシクロヘキセン80.6g及び2−クロロシクロヘキサノール261gであり、全反応液水相2355g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール9.8gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは271gであった。
【0043】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン72.1g(0.878モル)と2−クロロシクロヘキサノール217g(1.61モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン272g(3.25モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が73%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が68%であった。
【0044】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相468g(2−クロロシクロヘキサノール261g、1.94モル)及び全反応液水相2355g(2−クロロシクロヘキサノール9.8g、0.07モル)に苛性ソーダ水溶液780g(20.0重量%、3.90モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相389g中の組成はシクロヘキセン80.1g及びシクロヘキセンオキサイド182g(1.86モル)であって、全反応液水相3195g中の組成はシクロヘキセンオキサイド12.8g(0.13モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは195g(1.99モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率は100%であり、シクロヘキセンオキサイドの選択率は99%であった。
【0045】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相389gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物85.0gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留5.5gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド173g(蒸留収率95%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は500ppmであってCPCAの含有量は100ppmであり、純度は99.6%であった。
【0046】
比較例1
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.3倍モルのシクロヘキセンを用い、また、反応液の水素イオン濃度が6<pH<7になるように硫酸を用いて、反応温度50℃及び滞留時間3時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物に出発原料のシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を回収し蒸留してシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0047】
〔反応・蒸留装置〕
実施例1と同じものを用いた。
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
実施例1と同じものを用いた。
【0048】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分に攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を15時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン54.5g/3h(純度98%、0.650モル/3h)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/3h(濃度13.2重量%、0.500モル/3h)であり、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度が6<pH<7になるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約50℃にコントロールした。硫酸の全使用量は686g(1.40モル)であった。
【0049】
3時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相470g中の組成はシクロヘキセン57.5g及び2−クロロシクロヘキサノール323gであり、全反応液水相2395g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール10.2gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは333gであった。
【0050】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン49.0g(0.598モル)と2−クロロシクロヘキサノール269g(2.00モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン272g(3.25モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が82%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が75%であった。
【0051】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相470g(2−クロロシクロヘキサノール323g、2.40モル)及び全反応液水相2395g(2−クロロシクロヘキサノール10.2g、0.08モル)に苛性ソーダ水溶液800g(20.0重量%、4.00モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相390g中の組成はシクロヘキセン56.9g及びシクロヘキセンオキサイド226g(2.31モル)であって、全反応液水相3255g中の組成はシクロヘキセンオキサイド14.4g(0.15モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは240g(2.46モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率ば100%であり、シクロヘキセンオキサイドの選択率は99%であった。
【0052】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相390gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物61.9gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留8.0gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド212g(蒸留収率94%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は1500ppmであって、CPCAの含有量は350ppmであり、純度は99.5%であった。
【0053】
比較例2
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.1倍モルのシクロヘキセンを用い、反応液の水素イオン濃度が4<pH<6になるように硫酸を用いて、反応温度50℃及び滞留時間1時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物に出発原料のシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を蒸留して目的のシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0054】
〔反応・蒸留装置〕
実施例1と同じものを用いた。
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
実施例1と同じものを用いた。
【0055】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分に攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を6時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン46.1g/h(純度98%、0.550モル/h)、次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/h(濃度13.2重量%、0.500モル/h)、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度が4<pH<6になるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約50℃にコントロールした。硫酸の全使用量は819g(1.60モル)であった。
【0056】
1時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相485g中の組成はシクロヘキセン46.5g及び2−クロロシクロヘキサノール337gであって、全反応液水相2801g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール14.2gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは352gであった。
【0057】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン38.0g(0.462モル)と2−クロロシクロヘキサノール298g(2.21モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン277g(3.30モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が86%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が78%であった。
【0058】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相485g(2−クロロシクロヘキサノール337g、2.50モル)及び全反応液水相2801g(2−クロロシクロヘキサノール14.2g、0.11モル)に苛性ソーダ水溶液792g(20.0重量%、3.96モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相438g中の組成はシクロヘキセン37.4g及びシクロヘキセンオキサイド238g(2.43モル)であって、全反応液水相3620g中の組成はシクロヘキセンオキサイド15.2g(0.15モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは253g(2.58モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率は100%であり、シクロヘキセンオキサイドの選択率は99%であった。
【0059】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相438gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物42.9gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留6.0gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド234g(蒸留収率94%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は3200ppmであってCPCAの含有量は600ppmであり、純度は99.4%であった。
【0060】
比較例3
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.3倍モルのシクロヘキセンを用い、反応液の水素イオン濃度がpH≒1になるように硫酸を用いて、反応温度50℃及び滞留時間3時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物にシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を蒸留して目的のシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0061】
〔反応・蒸留装置〕
実施例1と同じものを用いた。
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
実施例1と同じものを用いた。
【0062】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を15時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン54.5g/3h(純度98%、0.650モル/3h)次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/3h(濃度13.2重量%、0.500モル/3h)、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度がpH≒1になるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約50℃にコントロールした。硫酸の全使用量は922g(1.88モル)であった。
【0063】
3時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相473g中の組成はシクロヘキセン83.3g及び2−クロロシクロヘキサノール248gであり、全反応液水相2628g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール13.2gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは261gであった。
【0064】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン74.8g(0.910モル)と2−クロロシクロヘキサノール208g(1.54モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン272g(3.25モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が72%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が66%であった。
【0065】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相473g(2−クロロシクロヘキサノール248g、1.84モル)及び全反応液水相2628g(2−クロロシクロヘキサノール13.2g、0.10モル)に苛性ソーダ水溶液780g(20.0重量%、3.90モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相392g中の組成はシクロヘキセン74.3g及びシクロヘキセンオキサイド176g(1.80モル)であって、全反応液水相3505g中の組成はシクロヘキセンオキサイド12.2g(0.12モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは188g(1.92モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率が100%であって、シクロヘキセンオキサイドの選択率が99%であった。
【0066】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相392gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物79.0gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留5.3gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド166g(蒸留収率94%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は5400ppmであってCPCAの含有量は1100ppmであり、純度は98.9%であった。
【0067】
比較例4
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.3倍モルのシクロヘキセンを用い、反応液の水素イオン濃度が9<pHになるように硫酸を用いて、反応温度50℃及び滞留時間3時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物にシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を蒸留して目的のシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0068】
〔反応・蒸留装置〕
実施例1と同じものを用いた。
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
実施例1と同じものを用いた。
【0069】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分に攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を15時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン54.5g/3h(純度98%、0.650モル/3h)次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/3h(濃度13.2重量%、0.500モル/3h)、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度が9<pHになるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約50℃にコントロールした。硫酸の全使用量は617g(1.26モル)であった。
【0070】
3時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相422g中の組成はシクロヘキセン155.4g及び2−クロロシクロヘキサノール185gであり、全反応液水相2380g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール6.9gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは192gであった。
【0071】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン146.9g(1.788モル)と2−クロロシクロヘキサノール138g(1.02モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン272g(3.25モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が45%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が70%であった。
【0072】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相422g(2−クロロシクロヘキサノール185g、1.37モル)及び全反応液水相2380g(2−クロロシクロヘキサノール6.9g、0.05モル)に苛性ソーダ水溶液780g(20.0重量%、3.90モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相356g中の組成はシクロヘキセン146.1g及びシクロヘキセンオキサイド129g(1.32モル)であり、全反応液水相3206g中の組成はシクロヘキセンオキサイド9.0g(0.09モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは138g(1.41モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率は100%であって、シクロヘキセンオキサイドの選択率は99%であった。
【0073】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相422gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物149.5gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留3.9gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド120g(蒸留収率93%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は700ppmであってCPCAの含有量は120ppmであり、純度は99.6%であった。
【0074】
比較例5
次亜塩素酸ナトリウムに対して1.3倍モルのシクロヘキセンを用い、反応液の水素イオン濃度が7≦pH≦9になるように硫酸を用いて、反応温度75℃及び滞留時間3時間の条件でクロロヒドリン化連続反応を実施し、生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応装置から抜き出し、次いで、この反応混合物にシクロヘキセンに対して1.2倍モルの苛性ソーダを仕込み、反応温度50℃でエポキシ化バッチ反応を行い、得られた反応混合物を油水分離し、その反応混合物の油相を蒸留して目的のシクロヘキセンオキサイドを得た。
【0075】
〔反応・蒸留装置〕
実施例1と同じものを用いた。
〔クロロヒドリン化仕込み反応液〕
実施例1と同じものを用いた。
【0076】
〔クロロヒドリン化連続反応〕
上記0.500モル相当の油相・水相の反応液を十分に攪拌しながらシクロヘキセン、次亜塩素酸ナトリウム水溶液及び硫酸を同時に滴下し、この反応成分を滴下しながら反応液を抜き出して連続反応を15時間実施した。滴下速度は、シクロヘキセン54.5g/3h(純度98%、0.650モル/3h)及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液282g/3h(濃度13.2重量%、0.500モル/3h)であって、硫酸(20重量%)については反応混合物の水素イオン濃度が7≦pH≦9になるようにコントロールし、また、反応液抜き出し速度は反応液量が一定となるようにした。反応温度は油浴でフラスコを温め、約75℃にコントロールした。硫酸の全使用量は637g(1.30モル)であった。
【0077】
3時間毎の反応液と反応終了後のフラスコ内反応液とを油相と水相とに分離し、それぞれをガスクロマトグラフィーで分析した。全反応液油相422g中の組成はシクロヘキセン102.0g及び2−クロロシクロヘキサノール208gであり、全反応液水相2395g中の組成は2−クロロシクロヘキサノール7.6gであった。全2−クロロシクロヘキサノールは、216gであった。
【0078】
連続反応部分の生成物は、全反応液組成から仕込み反応液組成を引くことにより、シクロヘキセン93.5g(1.138モル)と2−クロロシクロヘキサノール162g(1.20モル)とになる。従って、連続部分で使用したシクロヘキセン272g(3.25モル)を基準にすると、連続部分の平均反応成績はシクロヘキセン転化率が65%であって、2−クロロシクロヘキサノール選択率が57%であった。
【0079】
〔エポキシ化バッチ反応〕
全反応液油相422g(2−クロロシクロヘキサノール208g、1.55モル)及び全反応液水相2395g(2−クロロシクロヘキサノール7.6g、0.06モル)に苛性ソーダ水溶液780g(20.0重量%、3.90モル)を約50℃で1時間かけて添加した。全反応液油相351g中の組成はシクロヘキセン92.8g及びシクロヘキセンオキサイド146g(1.49モル)であり、全反応液水相3226g中の組成はシクロヘキセンオキサイド9.8g(0.10モル)であった。全シクロヘキセンオキサイドは156g(1.59モル)であった。2−クロロシクロヘキサノールの転化率は100%であって、シクロヘキセンオキサイドの選択率は99%であった。
【0080】
〔エポキシ化反応油相の蒸留〕
上記全反応液油相351gを精製蒸留装置に仕込み、常圧で25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を開始した。塔頂温度60〜82℃でシクロヘキセンと水の共沸混合物96.5gが得られた。また、圧力80mmHgで25℃から蒸留缶の温度を昇温させて蒸留を再開し、塔頂温度40〜60℃でシクロヘキセンオキサイドの初留4.7gを得、次いで塔頂温度64〜65℃でシクロヘキセンオキサイド147g(蒸留収率94%)を得た。得られたシクロヘキセンオキサイドのCPAL含有量は1700ppmであってCPCAの含有量は400ppmであり、純度は99.4%であった。
【0081】
以上の実施例1及び比較例1〜5の結果を下記の表1にまとめて示す。
【表1】
Figure 0003673600
【0082】
【発明の効果】
本発明方法によれば、シクロヘキセンを原料としてシクロヘキセンオキサイドを製造する方法において、臭気の原因物質であるCPAL及びCPCAの副生を可及的に防止することができ、これによって高純度のシクロヘキセンオキサイドを収率良く製造することができる。しかも、臭気の予防又は防止のために各種の酸化防止剤を使用したり、ヒドロキシアミン等の除去助剤を用いて精製を繰り返す必要もないことから、これら添加剤由来の有機物系や金属系の不純物が混入することもなく、また、工業的規模での製造に極めて有利である。

Claims (3)

  1. シクロヘキセンに次亜塩素酸塩水溶液及び酸を作用させて2−クロロシクロヘキサノールを生成せしめる第1反応工程と、この第1反応工程で得られた2−クロロシクロヘキサノールにアルカリを作用させてシクロヘキセンオキサイドを生成せしめる第2反応工程とを含むシクロヘキセンオキサイドの製造法において、上記第1反応工程の反応を、その反応系の水素イオン濃度を7≦pH≦9の範囲内に維持しながら反応温度30〜70℃の条件で行うことを特徴とする高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法。
  2. 第1反応工程で用いる酸が硫酸である請求項1に記載の高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法。
  3. 第1反応工程での反応が、シクロヘキセン、次亜塩素酸塩水溶液及び酸を反応器に連続的に供給すると共に生成した2−クロロシクロヘキサノールを含む反応混合物を反応器から連続的に抜き出す連続反応である請求項1又は2に記載の高純度シクロヘキセンオキサイドの製造法。
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