JP3671752B2 - 移動体用燃料電池システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体用燃料電池システムに関し、特に、燃料改質器で必要とされる組成の混合蒸気の生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の移動体用燃料電池システムとしては、例えば、特開平8−91804号公報に記載されたものが報告されている。
【0003】
これは、燃料改質に必要な水を水タンクに貯溜する構成とした場合における問題点、すなわち、寒冷地、具体的には氷点下の環境下に置かれた移動体用燃料電池システムを起動する際に、水、水タンク、水配管、及び水系バルブ類といった水系システムの解凍と暖機に膨大な熱エネルギーを必要としていた。
【0004】
このため、燃料電池システムの起動と停止を含めた効率が低下するのみならず、起動時間も長くなり、実用性が損なわれるおそれがあるといった問題を解決する必要があった。
【0005】
このため、水タンクに代わって、水とメタノールとの混合液を貯溜する混合液タンクを設け、この混合液タンク内の混合液の組成(メタノールと水との混合比率)が所定の値、具体的には燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成になるように制御することで、寒冷地での使用に耐えることができるようにした。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の移動体用燃料電池システムにあっては、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成と同一組成の混合液を蒸発器に供給した場合、過渡的に水が少なくなり、燃料の多い混合ガスが発生してしまうといった問題点があった。
【0007】
図7(a)は、燃料改質器で要する必要蒸気量、同図(b)は、蒸発器に供給した混合液の注入量、同図(c)は、蒸発器で生成された蒸気発生量をそれぞれ示している。特に、図7(c)から分かるように、蒸発器において、燃料改質器で必要とされる蒸気組成の混合蒸気が得られるまでに時間τを要してしていた。そして、混合液の供給初期で発生する混合蒸気の組成は、燃料(メタノール蒸気)が多く水(水蒸気)が少ないものとなっている。
【0008】
このため、このように水が少なく燃料の多い混合ガスが燃料改質器に供給された場合、燃料改質器において必要量の水素を含む改質ガスを生成することができないため、燃料電池は充分な電力を発生することができず、移動体の運転者のアクセル操作に追従できないといった問題があった。
【0009】
また、煤化反応が起こりやすくなるため、燃料改質器内の触媒の活性を低下させるとともに、場合によっては流路を閉塞するといった問題があった。
【0010】
さらに、場合によっては一部の燃料が改質されずに燃料改質器から排出され、燃料電池の特性を劣化させるといった問題もあった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的としては、燃料改質器で必要とされる組成の混合蒸気を常に生成することができ、発電効率の向上とシステムの長寿命化を図ることができる移動体用燃料電池システムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上記課題を解決するため、水を用いて燃料を改質する燃料改質器と、前記燃料改質器によって改質された水素を含む改質ガスと酸素を含むガスとを用いて電力を発生する燃料電池と、前記燃料電池から排出される排出ガスから水を回収する水回収器と、燃料を貯溜する燃料タンクと、前記水回収器によって回収された水と前記燃料タンク内の燃料との混合液を貯溜する混合液タンクと、前記混合液タンク内の混合液を蒸発させる蒸発器とを備えた移動体用燃料電池システムにおいて、前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを要旨とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記課題を解決するため、前記混合液タンク内の混合液の組成を前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも水過剰の組成にし、かつ、前記混合液タンク内の混合液と前記燃料タンク内の燃料とを前記蒸発器に供給するようにしておき、前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記燃料タンクから前記蒸発部に供給する燃料に流量を一時的に制限することによって、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを要旨とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、上記課題を解決するため、前記混合液タンク内の混合液の組成を前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成と同一にし、かつ、前記混合液タンク内の混合液を前記蒸発器に供給するようにしておき、前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記水回収部で回収された回収水を一時的に前記蒸発部に供給することによって、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを要旨とする。
【0015】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することで、燃料改質器で必要とされる組成の混合蒸気を常に生成することができ、発電効率の向上とシステムの長寿命化を図ることができる。
【0016】
請求項2記載の本発明によれば、燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整する手段として、混合液タンク内の混合液の組成を燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも水過剰の組成にし、かつ、混合液タンク内の混合液と燃料タンク内の燃料とを蒸発器に供給するようにしておき、燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、燃料タンクから蒸発部に供給する燃料に流量を一時的に制限することによって、蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することで、比較的簡単な構成で、燃料改質器で必要とされる組成の混合蒸気を常に生成することができ、発電効率の向上とシステムの長寿命化を図ることができる。
【0017】
請求項3記載の本発明によれば、燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整する手段として、混合液タンク内の混合液の組成を燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成と同一にし、かつ、混合液タンク内の混合液を蒸発器に供給するようにしておき、燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、水回収部で回収された回収水を一時的に蒸発部に供給することによって、蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することで、燃料改質器で必要とされる組成の混合蒸気を常に生成することができ、発電効率の向上とシステムの長寿命化を図ることができるとともに、耐寒性を向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る移動体用燃料電池システムの構成を示す図である。ここでは、移動体用燃料電池システムとして、燃料電池自動車に搭載される燃料電池システムを例にとる。特に、図1のシステムは、燃料改質器を有する燃料電池システムとバッテリとのハイブリッド燃料電池自動車の場合である。
【0020】
図1において、燃料改質器1は、水を用いて燃料であるメタノールを水蒸気改質し、水素を含んだ改質ガスを生成する。このとき、場合によっては、コンプレッサ15から空気が送り込まれ、メタノールの部分酸化による改質も行われる。水蒸気改質は吸熱反応であり、部分酸化は発熱反応である。
【0021】
燃料改質器1で生成された改質ガスとコンプレッサ15からの空気とは、燃料電池3のアノード、カソードそれぞれの電極に送られ、ここで改質ガス中の水素と空気中の酸素とを用いて発電が行われる。このとき、改質ガス中の水素と空気中の酸素は、燃料電池3内ですべてが消費されるわけではなく、一部を残して排出され、排出改質ガス及び排出空気としてコンデンサ5を介して燃焼器13に送られ、場合によっては、コンプレッサ15からの空気及びメタノールタンク7内のメタノールとともに燃焼される。燃焼器13での燃焼反応の熱は、メタノールや水を蒸発させる蒸発器11の熱源として、また、燃料改質器1での上記水蒸気改質の吸熱反応のための熱源として再利用される。
【0022】
コンデンサ5は、水回収器として機能するものであって、燃料電池の排気である排出改質ガス及び排出空気を冷却水で冷却し、排出改質ガス及び排出空気に含まれる水蒸気を凝縮し回収する。コンデンサ5で回収された回収水は、混合液タンク9に送られる。
【0023】
混合液タンク9は、燃料であるメタノールと水との混合液を貯溜するタンクである。メタノールは、メタノールの液体を貯溜するメタノールタンク(燃料タンク)7から供給され、水は、上記のようにコンデンサ5から供給される。混合液タンク9内の混合液は、蒸発器11に供給され、蒸発されてメタノール蒸気と水蒸気との混合ガスとなって、燃料改質器1に送られる。また、メタノールタンク7内のメタノールも直接蒸発器11に供給される。
【0024】
ここで、メタノールタンク7から蒸発器11に供給されるメタノール供給量(注入量)は、流量計17で計測し、混合液タンク9から蒸発器11に供給される混合液供給量(注入量)は、流量計19で計測している。流量計17,19は、当該燃料電池システムを制御するためのコントロールユニット21にそれぞれ接続されており、それぞれの測定信号をコントロールユニット21へ出力する。
【0025】
コントロールユニット21は、内部に制御プログラム及び要求注入量特性関数を記憶した制御ROMと、制御時のワークエリアとなるRAMを有しており、流量計17,19からの測定信号(フィードバック信号)を入力し、蒸発器11への液注入量(混合液タンク9からの混合液注入量とメタノールタンク7からのメタノール注入量)が所定の要求注入量関数に一致するように、制御信号を流量制御弁23,25に出力する(フィードバック制御)。
【0026】
流量制御弁23によって、メタノールタンク7から蒸発器11に供給されるメタノール供給量(注入量)が調整され、流量制御弁25によって、混合液タンク9から蒸発器11に供給される混合液供給量(注入量)が調整される。なお、流量制御弁23,25と流量計17,19とは、一体構造のもの(流量計付き流量制御弁)であっても良い。
【0027】
バッテリ27は、燃料電池3によって発電された余剰電力や燃料電池自動車が減速する際のモータ29による回生電力を蓄積するとともに、モータ29で消費される走行電力や、コンプレッサ15、燃料改質器1、燃焼器13で消費される補機電力などを賄うのに十分な発電が燃料電池3によって行われなかった場合には放電してモータ29や補機(コンプレッサ15、燃料改質器1、燃焼器13など)に給電し、不足電力を補う。これらの電力の配分は、電力調整器31を介して行われる。制御装置33は、アクセルペダル35の踏み込み量(アクセル開度)をポジションセンサ37によって検出した信号に基づいて、電力調整器31による電力配分を制御する。
【0028】
次に、図2に示す要求注入量特性関数を参照して、燃料改質器1が必要とする組成の混合蒸気を常に生成するための蒸発器11への液注入量制御動作を説明する。
【0029】
第1の実施の形態では、上記のように、混合液タンク9内に貯溜されている水とメタノールとの混合液とメタノールタンク7内に貯溜されているメタノールとを、蒸発器11に供給する。混合液タンク9内の混合液の組成(メタノールと水との混合比率)は、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成よりも水過剰である適当な一定の組成(混合比率)に調整されている。
【0030】
なお、混合液タンク9内の混合液の組成の調整は、例えば、メタノールと水との混合比率を計測する手段(比重センサと温度センサなど)を設けて、混合液の組成を正確に計測し、この計測値が所定の値となるように、混合液タンク9に流入するコンデンサ5からの回収水、及び/又は、メタノールタンク7からのメタノールの流入量を調整することによって行われる。
【0031】
ここでは、図7(a)に示す燃料改質器1の必要蒸気量に対する蒸発器11への液の注入量を、図2に示す特性関数に従って制御する。
【0032】
図2に示す区間bでは、メタノールタンク7から蒸発器11に注入されるメタノールと混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれるメタノールとを合計したメタノールの注入量と、混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれる水の注入量との組成比(混合比率)が、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成比と同じになっている。
【0033】
また、燃料改質器1での必要蒸気量の増加に伴い、液の注入量を増加させた際の初期の段階、すなわち図2に示す区間aでは、メタノールタンク7から蒸発器11へのメタノールの供給量を一時的に抑えることによって、メタノールタンク7から蒸発器11に注入されるメタノールと混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれるメタノールとを合計したメタノールの注入量と、混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれる水の注入量との組成比を、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成比よりも一時的に水過剰の組成にしている。
【0034】
なお、ここでの制御は、前述のように、通常のフィードバック制御であって、流量計17,19からの測定信号(フィードバック信号)をコントロールユニット21に入力し、蒸発器11への液注入量(混合液タンク9からの混合液注入量とメタノールタンク7からのメタノール注入量)が図2に示す要求注入量関数と一致するように、コントロールユニット21から制御信号を流量制御弁23,25に出力することによって行われる。
【0035】
次に、作用を説明する。
【0036】
図3は、水とメタノールとの大量の混合液を蓄液式の蒸発器11で蒸発させた場合の蒸気組成(メタノールのmol%)と混合液の組成(メタノールのmol%)との関係を示す図である。
【0037】
例えば、蒸気組成としてメタノールの組成が50mo1%の蒸気を発生させたい場合、図3から、混合液のメタノールの組成を約13mol%、つまり水過剰の組成にする必要がある。
【0038】
したがって、図7(c)において、蒸発器11に注入した混合液と同一の組成の混合ガスが発生するまでの時間τは、蒸発器11の気化伝熱面に形成される液膜について、先にメタノールが蒸発して水の過剰な液膜が形成されるまでの時間と考えることができる。
【0039】
したがって、図2に示す要求注入量特性関数によれば、初期の区間aにおいて水過剰の組成で蒸発器11への液の供給が行われるため、上記した水の過剰な液膜が速やかに形成され、その後はメタノールと水の蒸発分を補う分だけ液体が供給されることから、燃料改質器1で必要とされる組成の混合ガスを速やかに蒸発させることが可能となる。
【0040】
この結果、第1の実施の形態に関する効果としては、燃料改質器1での必要蒸気量が増加する際に、メタノールタンク7から蒸発器11に供給するメタノールの流量を一時的に制限することによって(図2参照)、蒸発器11に供給するメタノールと水との組成比を、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成比よりも一時的に水過剰の組成にすることで、燃料改質器1が必要とする組成の混合蒸気を常に生成することができ、燃料電池システムの発電効率を向上することができる。同時に、燃料電池3が充分な電力を発生することができるので、移動体の運転者のアクセル操作に追従することができる。
【0041】
また、メタノール(燃料)の組成が多い混合ガスの発生が防止されるので、煤化反応が起こりにくくなり、燃料改質器1内の触媒の活性の低下と流路の閉塞を防止することができ、燃料改質器1の寿命を向上することができる。同時に、一部の燃料が改質されずに燃料改質器1から排出されることがなくなるため、燃料電池3の特性劣化を防止することができ、燃料電池3の寿命を向上することができる。すなわち、燃料電池システムの長寿命化を図ることができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る移動体用燃料電池システムの構成を示す図である。なお、第2の実施の形態は、図1に示す第1の実施の形態に対応する移動体用燃料電池システムと同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略することとする。
【0043】
第2の実施の形態の特徴は、図4に示すように、混合液タンク9内に貯溜されている水とメタノールとの混合液とコンデンサ5で回収された回収水とを、蒸発器11に供給するようにしたことである。
【0044】
コンデンサ5から蒸発器11に供給される回収水供給量(注入量)は、流量計39で計測され、また、流量制御制御弁41によって流量調整される。この流量計39は、当該燃料電池システムを制御するためのコントロールユニット21に接続されており、コントロールユニット21へその測定信号を送り込む。
【0045】
また、コントロールユニット21は、内部の制御ROMに制御プログラム及び要求注入量特性関数を記憶しており、流量計19,39からの測定信号(フィードバック信号)を入力し、蒸発器11への液注入量(混合液タンク9からの混合液注入量とコンデンサ5からの水注入量)が所定の要求注入量関数に一致するように、制御信号を流量制御弁25,41に出力する(フィードバック制御)。
【0046】
ここでは、混合液タンク9内の混合液の組成(メタノールと水との混合比率)を、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成と同一にしている。
【0047】
そして、図7(a)に示す燃料改質器1の必要蒸気量に対する蒸発器11への液の注入量を、図5に示す特性関数に従って制御する。図5に示す区間dでは、コンデンサ5から蒸発器11に回収水を供給せず、混合液タンク9内の混合液のみを蒸発器11に供給するため、蒸発器11に供給されるメタノールと水との組成比(混合比率)は、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成比と同じになっている。
【0048】
また、燃料改質器1での必要蒸気量の増加に伴い、液の注入量を増加させた際の初期の段階、すなわち、図5に示す区間cでは、コンデンサ5から蒸発器11に回収水を一時的に供給することによって、混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれるメタノールの注入量と、混合液タンク9から蒸発器11に注入される混合液に含まれる水とコンデンサ5から蒸発器11に注入される回収水とを合計した水の注入量との組成比を、燃料改質器1で必要とされる混合ガスの組成比よりも一時的に水過剰の組成にしている。
【0049】
なお、ここでの制御もまた、前述のように、通常のフィードバック制御であって、流量計19,39からの測定信号(フィードバック信号)をコントロールユニット21に入力し、蒸発器11への液注入量(混合液タンク9からの混合液注入量とコンデンサ5からの回収水注入量)が図5に示す要求注入量関数と一致するように、コントロールユニット21から制御信号を流量制御弁25,41に出力することによって行われる。
【0050】
この結果、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態で説明したのと同じ理由によって、燃料改質器1で必要とされる組成の混合ガスを速やかに蒸発させることが可能となり、上述した第1の実施の形態に関する効果を得ることができる。
【0051】
さらに、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、混合液タンク9内の混合液の組成がメタノール(燃料)の濃い状態であるため、耐寒性が向上している。すなわち、図6は、混合液の組成(メタノールのmol%)と凝固点との関係を示しているが、同図から、例えば、燃料改質器1の必要とするメタノールと水との混合ガスの組成が50mo1%であるとした場合、第1の実施の形態では、混合液タンク1内の混合液の組成は燃料改質器1の必要とする混合ガスの組成よりも水が過剰の約13mol%であり(図3参照)、凝固点は約 -15℃であるのに対し、第2の実施の形態では、燃料改質器1の必要とする混合ガスの組成と同じ50mol%であり、凝固点は約 -90℃である。
【0052】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を逸脱しない限り、色々な変更が可能である。以下、その変更例を説明する。
【0053】
第1、第2の実施の形態では、燃料改質器1で必要とされる蒸気量が0からステップ状に増加する場合を例にとって説明してきたが(図7(a)参照)、これに限定されるわけではない。例えば、ある量からある量にステップ状に増加する場合、あるいはステップ状ではなくランプ状に増加する場合であっても、本発明は適用可能である。また、燃料改質器1が必要とする蒸気量を燃料改質器1の負荷と読み替えても良い。
【0054】
また、第1の実施の形態では、燃料改質器1で必要とされる蒸気量が増加する際の初期の区間aにおいて、メタノールの注入量をランプ状に増加させる関数を例にとって説明してきたが(図2参照)、この関数に限定されるわけではない。燃料改質器1で必要とされる蒸気量が増加する際の初期の区間aにおいて水が過剰となるようにメタノール(燃料)と水とが供給されればよく、例えば、メタノールの注入を時間的に遅らせても良いし、また、時間的に遅らせてからランプ状に増加させても良い。この点は、第2の実施の形態においても同様であって、この関数に限定されるわけではない。
【0055】
また、第1、第2の実施の形態では、燃料改質器1で必要とされる混合蒸気の組成が常に一定である場合を例にとって説明してきたが(図7(a)参照)、これに限定されるわけではない。燃料改質器1の負荷が増加する際に、一時的に水過剰の混合ガス組成が必要となる場合や、燃料改質器1の負荷又は温度によって混合ガスの組成を補正する場合にも、本発明は適用可能である。
【0056】
また、第1、第2の実施の形態において、蒸発器11に供給される混合液とメタノール(燃料)又は回収水とは、蒸発器11にこれらの液体を注入するインジェクタの直前で混合されても良いし、又は、それぞれがインジェクタで注入され霧化された状態で混合されても良いし、又は、場合によっては沸騰による混合であっても良い。
【0057】
また、特に、第2の実施の形態においては、コンデンサ5で回収された回収水を蒸発器11に供給する水供給ラインがあるため、氷点下の環境での凍結対策として、システム停止時に水供給ライン内の水を抜いたり、又は、メタノール(燃料)を水供給ライン内に注入するといった機構を設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る移動体用燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の要求注入量特性関数を示す図である。
【図3】水とメタノールとの混合液を蒸発器で蒸発させた場合の蒸気組成と混合液組成との関係を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る移動体用燃料電池システムの構成を示す図である。
【図5】第2の実施の形態の要求注入量特性関数を示す図である。
【図6】混合液の組成と凝固点との関係を示す図である。
【図7】従来技術の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1 燃料改質器
3 燃料電池
5 コンデンサ(水回収器)
7 メタノールタンク(燃料タンク)
9 混合液タンク
11 蒸発器
13 燃焼器
15 コンプレッサ
17,19,39 流量計
21 コントロールユニット
23,25,41 流量制御弁
27 バッテリ
29 モータ
31 電力調整器
33 制御装置
35 アクセルペダル
37 ポジションセンサ
Claims (3)
- 水を用いて燃料を改質する燃料改質器と、
前記燃料改質器によって改質された水素を含む改質ガスと酸素を含むガスとを用いて電力を発生する燃料電池と、
前記燃料電池から排出される排出ガスから水を回収する水回収器と、
燃料を貯溜する燃料タンクと、
前記水回収器によって回収された水と前記燃料タンク内の燃料との混合液を貯溜する混合液タンクと、
前記混合液タンク内の混合液を蒸発させる蒸発器とを備えた移動体用燃料電池システムにおいて、
前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを特徴とする移動体用燃料電池システム。 - 前記混合液タンク内の混合液の組成を前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも水過剰の組成にし、かつ、前記混合液タンク内の混合液と前記燃料タンク内の燃料とを前記蒸発器に供給するようにしておき、前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記燃料タンクから前記蒸発部に供給する燃料に流量を一時的に制限することによって、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを特徴とする請求項1記載の移動体用燃料電池システム。
- 前記混合液タンク内の混合液の組成を前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成と同一にし、かつ、前記混合液タンク内の混合液を前記蒸発器に供給するようにしておき、前記燃料改質器で必要とされる水と燃料とから成る混合ガスの要求量が増加する際に、前記水回収部で回収された回収水を一時的に前記蒸発部に供給することによって、前記蒸発器に供給される水と燃料との液組成を、前記燃料改質器で必要とされる混合ガスの組成よりも一時的に水過剰の組成に調整することを特徴とする請求項1記載の移動体用燃料電池システム。
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