JP3667434B2 - 免疫測定に用いる非特異反応抑制剤、非特異反応抑制方法および測定キット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は標識抗体を使用する免疫測定法において用いる、微量物質を正確に検出、定量するための障害となる非特異反応を抑制するための非特異反応抑制剤、これを用いる非特異反応抑制方法及びこれを含む免疫測定キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
抗原抗体反応を利用した免疫測定法は微量成分を特異的に検出あるいは精度よく測定できることから、臨床検査に広く利用されている。免疫測定法には一元放射免疫拡散法、比濁法、比ろう法、凝集法(血球やラテックスを担体として用いた方法)、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法等の種類があるが、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法は測定感度も高く、特に極微量成分の検出あるいは定量に多用されている。
【0003】
放射免疫測定法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法はそれぞれ放射性物質、酵素、蛍光物質を抗体に結合した標識抗体を用いる方法で、一般的には、抗体や抗原を不溶性担体に結合した固相化抗体または固相化抗原と組み合わせた固相法で使用される。固相法には「固相化抗体−抗原−標識抗体」複合物を作らせ測定するサンドイッチ法や、固相化抗原と検体中の遊離抗原が反応系内に添加された一定量の標識抗体に対して競合的に反応することを原理とする競合法がある。
【0004】
ところで、これらの免疫測定法においては、本来の目的とする特異的な抗原抗体反応以外の非特異反応により、測定値の信頼性が損なわれてしまうことがしばしば認められている。この現象は、検体中に含まれる抗原以外の成分が標識抗体と反応することによって引き起こされる。
【0005】
モノクローナル抗体を用いた測定系においても非特異反応が認められており、せっかく優れた特異性を持つモノクローナル抗体を得ることができたとしても、それを実際の測定系において使用する段階で、その性能を十分生かすことができないことが大きな問題となっている。
【0006】
従来より、非特異反応を抑制し正しい測定値を得るために色々な試みが行われてきた。例えば、測定すべき検体を加熱や適当な試薬により前処理したり、各種動物血清、免疫グロブリン画分、アルブミン、スキムミルク、ゼラチン、界面活性剤等を測定系に添加することが一般的に行われてきた。リュウマチ因子のように抗体のFc部位に結合することにより引き起こされる非特異反応を回避するためには、FabやF(ab’)2 等の抗体断片を特異反応に使用することも行われている。また、測定系に使用するモノクローナル抗体とは反応特異性が異なりかつ測定系に係わる反応を阻害しないモノクローナル抗体を測定系に添加することも行われている。
【0007】
特開平1−254869号公報には、測定対象に対し非特異性で、モノクローナル又はポリクローナル抗体から誘導された凝集体の使用が提案されている。この凝集体は該抗体のホモポリマーであっても、抗体断片あるいはアルブミンのような蛋白質やデキストランのような多糖類の巨大分子とのヘテロポリマーであってもよい。
【0008】
特開平2−152999号公報では、非特異反応の抑制のために、特異反応に使用するモノクローナル抗体を加熱処理などすることにより調製した、本来の抗体の特異活性は失っているが、非特異反応抑制活性は保持しているモノクローナル抗体由来物質が開示されている。
【0009】
しかし、これらの方法は非特異反応の抑制にある程度の効果はあるものの、一部の検体ではその効果はまだ不十分であり、実用上必ずしも満足できるものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況に鑑み、標識抗体を用いる免疫測定法において、測定に伴う非特異反応を簡便かつ効果的に抑制し、検体中の微量成分の正確な検出ならびに定量を実現するための非特異反応抑制剤とその使用方法を提供することが本発明の目的である。
また、非特異反応を防止するための有用な非特異反応抑制剤を含有する測定キットを提供することが本発明のもう一つの目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記した問題点を解決すべく非特異反応について鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、
(1)標識抗体を用いる免疫測定法において使用する非特異反応抑制剤であって、標識抗体に使用する抗体と同一の抗体の完全抗体および/または抗体断片を用いて得られる結合体からなり、抗体本来の特異反応活性を完全にもしくは実質的に喪失しているが非特異反応抑制活性は実質的に保持している非特異反応抑制剤、
(2)結合体が、共有結合させることにより製造されたものである上記(1)に記載の非特異反応抑制剤、
(3)結合体が、標識抗体に使用する抗体と同一の抗体の完全抗体および/または抗体断片とそれ以外の高分子物質とを用いて得られたものである上記(1),(2)のいずれかに記載の非特異反応抑制剤、
(4)抗体がモノクローナル抗体である上記(1)から(3)のいずれかに記載の非特異反応抑制剤、
(5)加熱処理、分解処理またはそれらの組み合わせによって抗体本来の特異反応活性が喪失させられた上記(1)から(4)のいずれかに記載の非特異反応抑制剤、
(6)検体中の抗原を標識抗体を用いて免疫測定する際に、上記(1)から(5)のいずれかに記載の非特異反応抑制剤を使用することを特徴とする非特異反応抑制方法、
(7)特異的な免疫反応工程を行う前に、検体と非特異反応抑制剤との間に反応を行わせることを特徴とする上記(6)に記載の非特異反応抑制方法、
(8)非特異反応抑制剤の共存下に、検体を測定するための特異的な免疫反応工程を行うことを特徴とする上記(6)に記載の非特異反応抑制方法、
(9)免疫測定がサンドイッチ法による測定であり、特異的な免疫反応工程の一つ以上の工程を非特異反応抑制剤の共存下で行わせることを特徴とする上記(6)に記載の非特異反応抑制方法、
(10)標識抗体及び上記(1)〜(5)のいずれかに記載の非特異反応抑制剤を含む免疫測定キット、
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において標識抗体は、代表的には、酵素、放射性物質、蛍光物質等の何らかの手段により定量可能なシグナルを出す物質を結合した抗体で、抗原抗体反応を行う溶液に可溶性のものを指すが、シグナルを出す物質を直接抗体に結合していなくても、アビジン−酵素複合体を結合するためのビオチンを結合した抗体や放射活性あるいは蛍光活性を有する金属イオン等と錯化合物を形成する能力のある化合物を結合した抗体で可溶性のものも含まれる。
【0013】
これらの標識抗体を用いる免疫測定法は、固相法であろうと液相法であろうと方法は問わない。固相法には正サンドイッチ法、逆サンドイッチ法、1段階サンドイッチ法等のサンドイッチ法や競合法が含まれる。液相法には、特公平7−72731号公報に開示されるような、酵素標識抗体を用いて抗原抗体反応を行わせ、標識抗体と抗原の会合の結果生じる酵素活性の変化により抗原量を測定する測定法が含まれる。また、標識物質が抗体に直接結合されていなくても、抗原抗体反応に続く反応工程で標識物質を結合するような測定法、例えば、ビオチニル化抗体を用いたサンドイッチ法による免疫反応工程の後に、アビジン−酵素複合体を反応させるような測定法も含まれる。
【0014】
本発明における非特異反応抑制剤は標識抗体に使用する抗体と同一の抗体の完全抗体および/または抗体断片(以下「同一抗体の抗体(断片)」という)より製造される。抗体はポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、抗体を産生する実際上任意の動物種、例えば家兎、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、マウスまたはラットなど由来の抗体が使用できる。
【0015】
標識抗体に使用される抗体の形態には完全抗体や、それを酵素処理や化学処理により切断したF(ab’)2 やFab’等のような抗体断片があるが、本発明の非特異反応抑制剤の製造に用いる抗体の形態は、抗体が標識抗体と同一であれば、標識抗体に使用した抗体の形態と同一の形態である必要はない。形態は特に限定されず、特異的結合部位を持たないFc断片であってもよい。なお、非特異反応は検体中に存在する測定対象以外の何らかの物質が標識抗体に反応して起こることを考慮すると、標識抗体に用いた抗体断片部位を含む同一抗体の抗体(断片)を用いるのが好ましい。
【0016】
抗体断片の作製は例えばパパイン、ペプシン、トリプシン等の酵素による消化又は還元剤によるS−S結合の切断又はこれらを組み合わせた公知の方法で行える。例えば完全抗体をパパインで消化するとFabとFc断片に切断できる。ペプシンで消化すればF(ab’)2 断片が得られ、さらに、2−メルカプトエチルアミンで還元すればFab’断片が得られる。完全抗体をジチオスレイトールや2−メルカプトエタノールで還元し、次いで、ヨードアセトアミドのようなSH試薬で処理すればL鎖とH鎖に切断できる。
【0017】
本発明における非特異反応抑制剤は同一抗体の抗体(断片)単独の結合体であっても、他の高分子物質との結合体であってもよい。同一抗体の抗体(断片)単独の結合体の場合、完全抗体のみのまたは抗体断片のみの結合体であっても、それらの混合物の結合体であってもよい。結合体を製造するために同一抗体の抗体(断片)とともに用いられる他の高分子物質としては、標識抗体に使用した抗体以外のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、アルブミン、ゼラチンなどの蛋白質、デキストラン、アミノデキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの多糖類またはその誘導体、末端をアミノ基で修飾したポリアルキレングリコール誘導体などの合成高分子などが用いられる。好ましい他の高分子物質としては標識抗体に使用した抗体以外のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体、アルブミン、ヒドロキシプロピルセルロース、等が挙げられる。又、他の高分子物質の分子量は1000〜1000000の範囲が好ましく、特に10000〜300000の範囲が好ましい。
【0018】
同一抗体の抗体(断片)はそれのみで、あるいは蛋白質、多糖類、または合成高分子物質等の他の高分子物質とともに、有機化学的手法、または生物学的親和性に基づく相互作用などを介して文献から公知の方法により結合体を製造することができる。
【0019】
有機化学的方法では、例えば、架橋試薬を用いて共有結合させることにより結合体を製造することができる。主な架橋試薬としてはカルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル化合物、マレイミド化合物、ピリジル・ジスルフィド化合物等があげられる。これらの架橋試薬を使用した結合体の製造は、例えば酵素標識抗体で酵素と抗体を結合する方法と同一の方法で行うことができ、石川らの「酵素免疫測定法第3版(医学書院、1987年)75〜126頁」やP.Tijssenの「エンザイムイムノアッセイ(生化学実験法11、東京化学同人、1989年)196〜251頁」等に詳細に記載されている酵素標識抗体の作製方法を参照すればよい。これらの試薬の多くは抗体および抗体とともに使用する高分子物質のアミノ基やチオール基を利用している。抗体のチオール基を利用する方法としては抗体を酵素および還元処理してFab’に断片化して抗体のヒンジ部分にあるチオール基を利用したり、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−4−メルカプトブチルイミデート、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート等によりチオール基を導入する方法等がある。また、架橋試薬としては主に2つの官能基を持ったものを使用し、
同じ官能基を2つ持つ同反応性二価試薬と異なる官能基を有する異反応性二価試薬がある。
【0020】
共有結合させることによる結合体の製造方法の例をいくつか説明する。グルタルアルデヒド法はグルタルアルデヒドが2つのアルデヒド基を持っていることから、同一抗体の抗体(断片)又はこれと他の高分子物質のアミノ基と反応して架橋させる方法である。過ヨウ素酸法は同一抗体の抗体(断片)又は他の高分子物質の糖鎖を過ヨウ素酸により酸化して生成したアルデヒド基と同一抗体の抗体(断片)又は他の高分子物質のアミノ基の反応により架橋する方法である。N,N’−o−フェニレンジマレイミド、N,N’−p−フェニレンジマレイミドやN,N’−オキシジメチレンジマレイミド等の2つのマレイミド基を有する架橋試薬を使用する方法ではチオール基により架橋が行われる。ビス−コハク酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等のような同反応性二価試薬はアミノ基を介して架橋が行われる。N−スクシンイミジル−2−マレイミドアセテート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドヘキサノエート、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スルホスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スルホスクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スルホスクシンイミジル−4−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドフェニル)−4−ブチレート等のマレイミド誘導体のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルは異反応性二価試薬で、同一抗体の抗体(断片)や他の高分子物質のアミノ基とチオール基を介して架橋させる。N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネートもアミノ基とチオール基の架橋に使われる。
【0021】
生物学的親和性を利用した結合体の製造方法の例としては、アビジンとビオチンの結合を利用した方法がある。例えば同一抗体の抗体(断片)とアルブミンなどの他の高分子物質の両方にビオチン分子を導入しアビジンにより架橋する方法や、あるいは両者の一方にアビジンを導入し、もう一方にビオチンを導入して架橋する方法がある。ビオチン分子の導入にはビオチニル−ε−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシミニドエステルなどが試薬として使われる。
【0022】
前述の方法により製造した結合体は、一般にかなり広い分子量分布をもっている。結合体は分子量が大きくなるほど非特異反応抑制効果が増大するが、さらに分子量が大きくなると沈殿を起こし不溶化するため、非特異反応抑制効果は逆に低下する。結合体の分子量は可溶性を保持している範囲であることが望ましい。結合体は異なる分子量を有する混合物であってもかまわないが、ゲル濾過、限外濾過や遠心分離などの公知の方法により分別し、希望の分子量にして使用することもできる。結合体(非特異反応抑制剤)の平均分子量は10万以上であることが好ましく、特に30万〜4000万の範囲であることが好ましい。又、結合体が同一抗体の抗体(断片)と他の高分子物質とを用いてえられるものである場合、同一抗体の抗体(断片)と他の高分子物質の使用割合は、モル比で1:0.01〜100の範囲であることが好ましく、特に1:0.1〜10の範囲であることが好ましい。
【0023】
同一抗体の抗体(断片)の特異活性は加熱処理、酵素による分解処理、酸・アルカリや還元剤等による化学処理、超音波処理などの公知の方法により喪失させることができる。また、これらの方法を組み合わせて行うことも可能である。同一抗体の抗体(断片)の特異活性を喪失させるための処理は、結合体を製造する前の同一抗体の抗体(断片)の段階で行ってもよいし、結合体にしてから処理してもよい。
【0024】
ここで「抗体本来の特異反応活性を実質的に喪失している」とは、測定の正確さおよび信頼性の観点から判断して支障のない程度に特異反応活性を喪失しているという意味である。特異反応活性を完全に喪失させるために過剰の強い処理を行えば、非特異反応抑制活性も失われる場合もあるので、その処理条件を適宜選択して、特異反応活性は実質的に喪失しているが、非特異反応抑制活性は保持されうる穏和な条件で処理する必要がある。
【0025】
この処理法の例として、最も簡便な方法の一つである加熱処理法を示す。この場合、pH3からpH12の範囲の適当な緩衝液中に同一抗体の抗体(断片)又は結合体を抗体濃度として10μg/mlから100mg/mlになるように溶解し、50℃から100℃で1分間〜48時間インキュベートすることによって非特異反応抑制剤は製造される。特異反応活性の喪失のしやすさは同一抗体の抗体(断片)又は結合体によってかなり異なり、処理条件は個々に検討しなければならないが、加熱処理の温度と時間の関係は一般的に言って、処理温度を高くすれば処理時間を短くする必要がある。酵素による分解処理の例としては、パパインやトリプシンにより完全抗体を消化し、ゲル濾過により分画してFc断片を得る方法がある。Fc断片は抗体の特異活性部位を失っており、特異反応活性を有しない。このFc断片を用いて、前記方法で結合体を製造することができる。
【0026】
本発明の非特異反応抑制剤の使用方法としては、標識抗体を用いる免疫測定法において行なう特異的な免疫反応工程の前に予め適当な緩衝液中で非特異反応抑制剤と検体を接触させ、適当な時間(例えば1分〜2時間)インキュベートする方法がある。この間に、検体中の非特異反応を起こす物質(非特異反応物質)は非特異反応抑制剤と反応し、特異的免疫反応工程での標識抗体との非特異反応活性は失われる。特異的免疫反応工程にはインキュベートを完了した検体と非特異反応抑制剤の混合液をそのまま用いればよい。
【0027】
さらに簡便な本発明の非特異反応抑制剤の使用方法は、非特異反応抑制剤の共存下に特異的免疫反応工程を行う方法である。例えば、最も一般的に用いられる正サンドイッチ法の場合、固相化抗体と検体中の抗原とを反応させる第一免疫反応工程の緩衝液に非特異反応抑制剤を添加するだけで、それ以外は何ら特別な工程を必要とせずに所望の効果を得ることができる。なぜなら、非特異反応が検出されるのは、抗体の特異的反応部位を介さずに「固相化抗体−非特異反応物質−標識抗体」サンドイッチ複合体を形成するためであるが、第一免疫反応中に非特異反応物質の標識抗体に対する反応活性が非特異反応抑制剤により吸収されるからである。さらに、抗体の特異反応部位を介して固定化された抗原と標識抗体とを反応させる第二免疫反応工程の緩衝液にも添加すれば、第一免疫反応工程で完全に吸収されなかった非特異反応物質も吸収されるため、測定の信頼性をより一層高めることができる。なお、通常は第一免疫反応工程の緩衝液に添加されていれば十分な効果が得られる。
【0028】
また、1段階サンドイッチ法においても免疫反応工程の緩衝液に非特異反応抑制剤を添加して反応させることにより、非特異反応は回避される。本発明の非特異反応抑制剤は結合体であるために標識抗体より非特異反応を起こす物質との結合力が高められている。また、標識抗体に比べて過剰量を添加しておけば非特異反応を起こす物質は優先的に非特異反応抑制剤と反応するので非特異反応は回避される。
【0029】
本発明の非特異反応抑制剤は、免疫反応工程の前に予め適当な緩衝液に添加して使用されるか、あるいは免疫反応工程の緩衝液に添加して使用される。非特異反応抑制剤の非特異反応物質と反応させる系における濃度は0.1〜200μg/mlであることが好ましくと、さらに好ましくは1〜50μg/mlである。使用される緩衝液は公知の通常免疫反応に使われる適当な緩衝液であってよい。また、緩衝液中に通常添加される助剤たとえば反応促進剤、洗浄剤または安定剤と共に使用することができる。さらに別の非特異反応抑制剤と共に用いることもできる。適当な緩衝液として例えばリン酸塩緩衝液20〜100mM pH6〜8またはトリス−塩酸50mM/NaCl 100mM pH7〜8などが使用できる。反応促進剤としては例えばデキストランサルフェートまたはポリエチレングリコールなど、洗浄剤としては例えばトリトンX−100、ツイーン20などを、また安定化剤としてアルブミン、スキムミルク、ゼラチンなどの蛋白質やアジ化ナトリウム、チメロサール、ケーソンCGなどの防腐剤を挙げることができる。
【0030】
本発明の他の対象は、標識抗体を用いた免疫測定法に使用する、標識抗体及び本発明の非特異反応抑制剤を含む測定キットに関するものである。一般に測定キットは標識抗体液、固相化抗体、標準物質などの試薬から構成され、さらに必要に応じて、サンドイッチ法で検体と固相化抗体を反応させるため緩衝液、酵素反応のための発色液と反応停止液、固相を洗浄するための洗浄液、検体の前処理剤などを含んで構成される。これらの構成試薬が凍結乾燥品の場合、復元のための溶液も添付される場合がある。
【0031】
本発明の非特異反応抑制剤は単独でキットの構成試薬にしてもよいし、他の構成試薬の成分としてもよい。しかし、測定操作を増やすことなしに非特異反応抑制効果が得られることを考慮すれば、構成試薬の一成分として添加するのが好ましい。通常本発明の非特異反応抑制剤は検体と固相化抗体を反応する緩衝液や標識抗体に添加してキットの構成試薬とする。これらの構成試薬が凍結乾燥品の場合には復元液に添加することもできる。標識抗体に対して非特異反応抑制剤は0.1〜1000重量倍用いるのが好ましく、特に1〜100重量倍用いるのが好ましい。
【0032】
固相法に基づくキットの場合、固相の種類や形状は問わない。公知の通常免疫測定キットに使われるものでよい。固相の例としてはプラスチック試験管、ポリスチレンビーズ、ポリスチレン粒子、ポリスチレンマイクロプレート、ポリエチレンテレフタレートマイクロプレート、ポリ塩化ビニルマイクロプレート、磁性粒子、ガラスビーズ、セルロース粒子、ニトロセルロース膜、セルロース濾紙、ナイロン膜などが挙げられる。イムノクロマトグラフィーなどを原理とする簡易測定キットの試験片を使用することも可能である。
【0033】
本発明の非特異反応抑制剤を用いる免疫測定法において使用される検体としては、例えば血清、血漿、髄液、唾液等の体液や尿、糞便抽出液等が挙げられ、又、測定物質としては、臨床検査に利用される物質、例えば体液中に含まれる、ヒトイムノグロブリン、ヒトアルブミン、ヒトフィブリノーゲン、β2-ミクログロブリン、フェリチン、C反応性蛋白、α−フェトプロテイン、癌胎児性抗原、CA19−9、塩基性フェトプロティン、組織ポリペプチド抗原、免疫抑制酸性蛋白、CA−50、膵癌胎児性抗原、シアリルLeX −i抗原、SCC抗原、CA15−3、CA72−4、シアリルTn、CA125、NCC−ST−439、γ−セミノプロティン、前立腺特異抗原、ニューロン特異エノラーゼ、肝炎ウイルス抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトーゲン、インスリン、などが挙げられる。
【0034】
【実施例】
次に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0035】
実施例1 同反応性二価試薬による非特異反応抑制剤の製造
抗ヒトCEAマウスモノクローナル抗体C43(サブクラス IgG1 、λ、純度95%以上)を2.5mg/mlの濃度で溶解した10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)1mlに2.5%グルタルアルデヒド水溶液を10μl加えて室温で撹拌しながら3時間反応した。さらに、0.2M L−リジン塩酸塩水溶液を0.1ml添加し、室温で撹拌しながら1時間反応した後、10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)に対して4℃で一夜透析した。その後10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)で希釈して、抗体濃度0.5mg/mlに調製し、水浴中で60℃、3時間インキュベートし、非特異反応抑制のための結合体(非特異反応抑制剤)を得た。
【0036】
実施例2 過ヨウ素酸法による非特異反応抑制剤の製造
5mgの抗ヒトCEAマウスモノクローナル抗体C43と1mgの牛血清アルブミを溶解した10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)1mlに、1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)200μl及び100mM過ヨウ素酸ナトリウム水溶液200μlを加えて室温で撹拌しながら3時間反応した。さらに、200mMエチレングリコール水溶液200μl及び200mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)200μlを加え、室温で撹拌しながら1時間反応した。その後、10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)に対して4℃で一夜透析した。透析物の分子量分布をHPLC(東ソー社製ゲル濾過カラムG3000SWXLとG6000SWXLを直列につなぎ、流速0.5ml/minの10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)を移動相として用い、280nmの吸光度を測定した。)で分析した結果を図1に示す。過ヨウ素酸法により結合体が形成されるとともに一部未反応の抗体及び牛血清アルブミンが含まれていることがわかる。
【0037】
この透析物の一部を採取し、10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)で希釈して、抗体濃度0.5mg/mlに調製し、水浴中で60℃、3時間インキュベートし、非特異反応抑制のための結合体(粗製物)(非特異反応抑制剤)を得た。残りの透析物を10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)を溶出液として、ファルマシア社製セファロースCL−6Bを充填したゲル濾過カラム(1.6cm×60cm)により精製し、分子量300,000以上の画分を集め、限外濾過により抗体濃度が0.5mg/mlになるまで濃縮した。濃縮液を水浴中で60℃、3時間インキュベートし、非特異反応抑制のための結合体(精製物)(非特異反応抑制剤)を得た。
【0038】
実施例3 異反応性二価試薬による非特異反応抑制剤の製造
2mgの牛血清アルブミンを溶解した100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)0.5mlに0.5M N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレートのN,N−ジメチルホルムアミド溶液20μlを添加し、室温で攪拌しながら1時間反応した後、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に対して4℃で一夜透析し、マレイミド基を導入した牛血清アルブミンを調製した。抗ヒトCEAマウスモノクローナル抗体C43の完全抗体10mgを含む100mM NaCl、100mM酢酸緩衝液(pH4.5)2mlにシグマ社製ペプシン0.2mgを加え、37℃で20時間消化した。その後、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を溶出液として、IBF社製ウルトロゲルAcA44を充填したゲル濾過カラム(2.6cm×90cm)によりF(ab’)2 を分画し、限外濾過により濃縮した。抗ヒトCEAマウスモノクローナル抗体C43のF(ab’)2 2mgを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)0.45mlに100mM 2−メルカプトエタノールアミンと5mM EDTAを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を50μl加えて、37℃で90分間反応し、5mM EDTAを含む100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を溶出液として、ファルマシア社製セファデックスG−25を充填したカラム(1.6cm×60cm)によりFab’を回収した。マレイミド基を導入した牛血清アルブミンと回収したFab’を混合し、30℃で90分間反応し、さらに50mMのN−エチルマレイミド 20μlを添加して30℃で30分間反応した。その後、10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)を溶出液として、ウルトロゲルAcA44を充填したゲル濾過カラム(1.6cm×70cm)により精製し、分子量100,000以上の画分を集め、限外濾過により抗体濃度が0.5mg/mlになるまで濃縮した。濃縮液を水浴中で60℃、3時間インキュベートし、非特異反応抑制のための結合体(非特異反応抑制剤)を得た。
【0039】
実施例4 過ヨウ素酸法による非特異反応抑制剤の製造
5mgの抗ヒトルイスY抗原マウスモノクローナル抗体S113(サブクラスIgM、純度95%以上)と1mgのヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製)を溶解した10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)1mlに、1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)200μl及び100mM過ヨウ素酸ナトリウム水溶液200μlを加えて室温で撹拌しながら3時間反応した。さらに、200mMエチレングリコール水溶液200μl及び200mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)200μlを加え、室温で撹拌しながら1時間反応した後、10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)に対して4℃で一夜透析した。この透析物を10mMリン酸生理食塩水(pH7.2)で希釈して、抗体濃度0.5mg/mlに調製し、水浴中で60℃、2時間インキュベートし、非特異反応抑制のための結合体(非特異反応抑制剤)を得た。
【0040】
実施例5 酵素免疫測定法に基づいたヒト血清中のCEA測定キットの作製と検体の測定
(1)西洋ワサビペルオキシダーゼ標識C43抗体(HRP−C43)
C43抗体のFab’は実施例3と同様の方法により調製した。一方、東洋紡社製西洋ワサビペルオキシダーゼ10mgを1.5mlの100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解し、125mM N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレートのN,N−ジメチルホルムアミド溶液100μlを加え、30℃で60分間撹拌しながら反応した。その後、100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を溶出液として、セファデックスG−25を充填したカラム(1.6cm×60cm)によりマレイミド基を導入した西洋ワサビペルオキシダーゼを回収した。Fab’とマレイミド基を導入した西洋ワサビペルオキシダーゼをモル比で1:1になるように混合し、4℃で20時間反応した。反応液を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)を溶出液として、ウルトロゲルAcA44を充填したゲル濾過カラム(2.6cm×90cm)で分画し、HRP−C43を得た。
【0041】
(2)C38抗体固相化ポリスチレンビーズ
抗ヒトCEAマウスモノクローナル抗体C38(サブクラス IgG1 、κ、純度95%以上)はC43抗体とは異なるCEA上のエピトープを認識する。この抗体を100mM炭酸緩衝液(pH9.5)に20μg/mlの濃度で溶解してビーズコーティング液とした。積水化学社製6.25mm径のポリスチレンビーズ1個あたり0.15mlの液量で、ビーズをコーティング液に浸け、4℃で20時間放置した。その後、コーティング液を捨て、ビーズを生理食塩水で洗浄した後、0.5%の牛血清アルブミン、0.02%のツイーン20を含む50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)に浸けて、4℃に保存した。
【0042】
(3)ヒト血清中CEAの測定キット
ヒト血清中のCEAの測定キットの構成試薬は以下の通りである。
標準液:0〜50ng/mlのCEA標品を含む1%ウシ血清アルブミン、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)
酵素標識抗体液:0.5μg/mlのHRP−C43を含む、0.5%牛血清アルブミン、0.5%マウス血清、0.02%ツイーン20、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)
固相化抗体ビーズ:C38抗体固相化ポリスチレンビーズ
発色液:30%過酸化水素0.2μlおよびベーリンガーマンハイム社製2、2’−アジノジ−(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)0.45mgを含む100mMクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0) 反応停止液:5%シュウ酸溶液
洗浄液:生理食塩水
【0043】
(4)ヒト血清中のCEAの測定と非特異反応を示す検体の選択
プラスチック試験管に健常者の血清またはCEA標準液を25μlとり、酵素標識抗体液を150μl加え、さらに、固相化抗体ビーズを1個入れて、室温で2時間インキュベートした。ビーズを洗浄液で洗浄後、別のプラスチック試験管に移し、発色液300μlを加え、室温で30分間インキュベートした。反応停止液2mlを加えた後に波長405nmにおける吸光度を測定した。濃度既知の標準液の吸光度から標準曲線を作成し、健常者血清中のCEA濃度を求めた。多数の健常者検体を測定し、50ng/ml以上に測定され、市販のCEA測定キット「CEA「ロシュ」−EIA(日本ロシュ社)」により5ng/ml以下に測定された検体No.188および検体No.357を非特異反応を示す検体として選択した。
【0044】
(5)血清中CEA測定における非特異反応抑制剤の効果
(3)のCEA測定キットの酵素標識抗体液に実施例1から実施例3で製造した非特異反応抑制剤を添加し、(4)と同様にして測定を行ない非特異反応の抑制効果を調べた。結果を表1に示す。本発明の非特異反応抑制剤が極めて有効であることが確認された。非特異反応の抑制効果は検体によって異なるが、抗体濃度として20μg/ml程度添加すれば十分な効果が得られた。また、実施例2の粗製品と精製品の比較では、精製により抗体と牛血清アルブミンの結合物だけとした精製品の方が多少効果が大きいことが示された。しかし、粗製物であっても十分効果が期待できることがわかった。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例6 酵素免疫測定法によるヒト血清中ルイスY抗原測定キットの作製と検体の測定
(1)西洋ワサビペルオキシダーゼ標識S113抗体(HRP−S113)
東洋紡社製西洋ワサビペルオキシダーゼ2mgを0.5mlの蒸留水に溶解し、50mM過ヨウ素酸ナトリウム0.1mlを加えて攪拌しながら室温で30分間反応した。さらに200mMエチレングリコール0.1mlを加えて30分間反応した。反応液を1mM酢酸緩衝液(pH4.5)に対して4℃で一夜透析した。6mgのS113抗体を200mM炭酸緩衝液(pH9.5)1mlに溶解し、透析物を加えて、室温で攪拌しながら3時間反応させた。200mMトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)0.1ml加え、室温で撹拌しながら1時間反応した。50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)を溶出液として、ファルマシア社製セファロースCL−4Bを充填したゲル濾過カラム(2.6cm×90cm)で分画し、HRP−S113を得た。
【0047】
(2)S113抗体固相化ポリスチレンビーズ
S113抗体を100mM炭酸緩衝液(pH9.5)に20μg/mlの濃度で溶解してビーズコーティング液とした。積水化学社製6.25mm径のポリスチレンビーズ1個あたり0.15mlの液量で、ビーズをコーティング液に浸け、4℃で20時間放置した。その後、コーティング液を捨て、ビーズを生理食塩水で洗浄した後、0.5%の牛血清アルブミン、0.02%のツイーン20を含む50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)に浸けて、4℃に保存した。
【0048】
(3)ヒト血清中ルイスY抗原の測定キット
標準液:ルイスY抗原を高濃度に有する癌患者の血清に任意の単位を設定し、1%ウシ血清アルブミン、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)で希釈して標準液とした。
緩衝液:0.5%牛血清アルブミン、0.5%マウス血清、0.02%ツイーン20、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)
酵素標識抗体液:1μg/mlのHRP−S113を含む、0.5%牛血清アルブミン、0.5%マウス血清、0.02%ツイーン20、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)
固相化抗体ビーズ:S113抗体固相化ポリスチレンビーズ
発色液:30%過酸化水素0.2μlおよびベーリンガーマンハイム社製2,2’−アジノジ−(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)0.45mgを含む100mMクエン酸リン酸緩衝液(pH4.0)
反応停止液:5%シュウ酸溶液
洗浄液:生理食塩水
【0049】
(4)ヒト血清中のルイスY抗原の測定と非特異反応を示す検体の選択
プラスチック試験管に健常者の血清および標準液を25μlとり、緩衝液150μlを加え、さらに、抗体固相化ビーズを1個入れて、37℃で2時間インキュベートした(第一免疫反応)。抗体固相化ビーズを洗浄液で洗浄した後、酵素標識抗体液を200μl入れて、37℃で1時間インキュベートした。(第二免疫反応)。抗体固相化ビーズを洗浄液で洗浄後、別のプラスチック試験管に移し、発色液300μlを加え、室温で30分間インキュベートした。反応停止液2mlを加えた後に波長405nmにおける吸光度を測定した。標準液の吸光度から標準曲線を作成し、健常者血清中のルイスY抗原濃度を求めた。健常者の血清のほとんどは低い値を示したがまれに高い値を示す検体があった。非常に高い値を示した健常者の検体No.214の希釈試験を行ったところ、血清中のルイスY抗原濃度は希釈により急激に低下し、健常者の抗原濃度レベルになったので非特異反応を示す検体であることがわかった。また、この検体を60℃で1時間加熱すると健常者の抗原濃度レベルを示すようになった。
【0050】
(5)血清中ルイスY抗原測定における非特異反応抑制剤の効果
(3)のルイスY測定キットの緩衝液に実施例4で製造した非特異反応抑制剤を添加し、(4)と同様にして測定を行い非特異反応の抑制効果を調べた。結果を表2に示す。本発明の非特異反応抑制剤が極めて有効であることが確認された。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例7 放射免疫測定法に基づいたヒト血清中のルイスY抗原測定キットの作製と検体の測定
(1) 125I標識S113抗体( 125I−S113)
2mg/mlのS113抗体を溶解した50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)50μlに1%グルコース水溶液25μlおよび0.25mCiのNEN社製Na 125Iを溶解した50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)25μlを加え、さらに、バイオラッド社製エンザイモビーズ懸濁液25μlを加えて室温で30分間反応した。1%重亜硫酸ナトリウム水溶液25μlを加えて反応を停止し、0.5%牛血清アルブミン、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)で平衡化したファルマシア社製PD−10カラムで 125I−S113を分画した。
【0053】
(2)ヒト血清中ルイスY抗原の測定キット
標準液、緩衝液、固相化抗体ビーズ、洗浄液は実施例6のキットと同一のものを用いた。
標識抗体液:0.1μg/mlの 125I−S113を含む、0.5%牛血清アルブミン、0.5%マウス血清、0.02%ツイーン20、50mMリン酸生理食塩水(pH7.4)
【0054】
(3)ヒト血清中のルイスY抗原の測定
プラスチック試験管に標準液および血清(検体No.214)を25μlとり、緩衝液150μlを加え、さらに、抗体固相化ビーズを1個入れて、37℃で2時間インキュベートした(第一免疫反応)。抗体固相化ビーズを洗浄液で洗浄した後、標識抗体液を200μl入れて、37℃で1時間インキュベートした(第二免疫反応)。ビーズを生理食塩水で洗浄後、別のプラスチック試験管に移し、パッカード社製ガンマカウンターで放射活性を測定した。
【0055】
(4)放射免疫測定法における血清中ルイスY抗原測定における非特異反応抑制剤の効果
(2)のルイスY測定キットの緩衝液に実施例4で製造した非特異反応抑制剤を添加し、(3)と同様にして測定を行い非特異反応の抑制効果を調べた。結果を表3に示す。本発明の非特異反応抑制剤が極めて有効であることが確認された。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、免疫測定法において非特異反応を排除できるため、偽陽性の削減および特異性の向上が達成され、信頼性の高い臨床検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】過ヨウ素酸法によるC43抗体とウシ血清アルブミン反応物のゲル濾過分析結果。横軸は溶出時間、縦軸は280nmの吸光度を示す。
Claims (10)
- 標識抗体を用いる免疫測定法において、使用する非特異反応抑制剤であって、標識抗体に使用する抗体と同一の抗体の完全抗体および/または抗体断片を用いて得られる結合体(ただし、酵素または不活化酵素との結合体を除く)からなり、抗体本来の特異反応活性を完全にもしくは実質的に喪失しているが非特異反応抑制活性は実質的に保持している非特異反応抑制剤。
- 結合体が、共有結合させることにより製造されたものである請求項1に記載の非特異反応抑制剤。
- 結合体が、標識抗体に使用する抗体と同一の抗体の完全抗体および/または抗体断片とそれ以外の高分子物質とを用いて得られたものである請求項1または2に記載の非特異反応抑制剤。
- 抗体がモノクローナル抗体である請求項1から3のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤。
- 加熱処理、分解処理またはそれらの組み合わせによって抗体本来の特異反応活性が喪失させられた請求項1から4のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤。
- 検体中の抗原を標識抗体を用いて免疫測定する際に、請求項1から5のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤を使用することを特徴とする非特異反応抑制方法。
- 特異的な免疫反応工程を行う前に、検体と非特異反応抑制剤との間に反応を行わせることを特徴とする請求項6に記載の非特異反応抑制方法。
- 非特異反応抑制剤の共存下に、検体を測定するための特異的な免疫反応工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の非特異反応抑制方法。
- 免疫測定がサンドイッチ法による測定であり、特異的な免疫反応工程の一つ以上の工程を非特異反応抑制剤の共存下で行わせることを特徴とする請求項6に記載の非特異反応抑制方法。
- 標識抗体及び請求項1から5のいずれか1項に記載の非特異反応抑制剤を含む免疫測定キット。
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